JP4431708B2 - ケイ酸イオンの高感度分離計測方法及びその装置 - Google Patents

ケイ酸イオンの高感度分離計測方法及びその装置 Download PDF

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本発明は、ケイ酸イオンの濃度を、0.01〜2.0mMの範囲で、高精度に計測することが可能な、分離計測方法及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、溶離液として水を用い、ケイ酸イオンと共存している強酸及び炭酸イオンを、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂カラムにより処理した後、弱酸性陽イオン交換樹脂カラムでのイオン排除作用により、ケイ酸イオンを共存する弱酸イオン(シアンイオン及びホウ酸イオン)から選択的に分離後、ケイ酸イオンを強電解質に変換するカラムとして、アルカリ金属イオンを吸着させた強酸性陽イオン交換樹脂カラム、及び検出器応答を増大させるカラムとして、強酸性陰イオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂カラムにより、イオン交換反応を作用させ、導電率検出及びUV吸光度を増大させ、0.1μmの検出限界及び広範囲な検量線の直線性を示す計測を実現する、ケイ酸イオンの分離計測方法及びその装置に関するものである。
本発明は、例えば、強電解質変換カラムを、カリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラムとし、検出器応答増大カラムを、硝酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムとした場合、予め、強酸及び炭酸イオンを、水酸化物イオン型弱塩基性陽イオン交換樹脂カラムにより処理したのち、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂カラムにより、ケイ酸イオンを、弱電解質であるケイ酸としてイオン排除作用により分離後、それを強電解質変換カラムにより、強電解質であるケイ酸カリウムに変換し、次に、検出器応答増大カラムにより約200〜250nmにおいて、高い吸光度係数を示す硝酸カリウムに変換し、UV吸光度検出するものである。一方、検出器応答増大カラムが水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムである場合、最終的に極限モル当量導電率の高い水酸化カリウムに変換されるため、高感度な導電率検出が可能となる。
従来、ケイ酸イオンのイオンクロマトグラフィーにおける検出器は、導電率検出器が一般的であるが、ケイ酸イオンは、炭酸イオンよりも更に弱い弱酸(ケイ酸イオンのpKa=9.86)であることから、極限モル当量伝導度が低いため検出応答が低くなり、定量することは困難であった。更に、イオン交換型イオンクロマトグラフィーを用いた場合は、溶存する炭酸及びホウ酸の影響を大きく受けるため、ピーク形状の再現性が低い。加えて、ケイ酸の計測で最も汎用されている、モリブデン酸アンモニウムを用いる比色法の場合(L.S.Clesceri, A.E. Greenberg, R.R. Trussell, Standard Medods, 17th edition, 1989, pp. 4-184 - 187.参照)、対象となる実際試料のほとんどが、共存するリン酸イオンの妨害があることから、複雑かつ熟練を要する前処理工程が要求されてきた。一方、本発明では、ケイ酸イオンを、導電率又はUV吸光度により検出するにあたり、他の溶剤を溶離液に添加することなく、炭酸イオンの妨害を避けながら、直接検出することが可能であり、0.01mM〜2.0mMの注入溶液濃度における広範囲な検量線の直線性を示す。更に、分離から検出までのプロセスが、水のみで達成できることから、2次汚染を生じない無(低)公害かつ簡便な計測方法を提供することも可能であり、環境測定における、オンサイトモニターへの展開が期待される。
ケイ酸イオンは、自然界に金属・炭素・ハロゲン等の種々な元素と、物理的あるいは化学的に結合し、海水、雨水、河川水、湖沼水等の環境水、水道水、ビール、ミネラルウォーター等の飲料水、あるいは、土壌、粘土、岩石の主成分として、あらゆる環境条件に存在する重要なイオンである。そのため、ケイ酸イオンの計測は、当然のことながら重要とされているが、多量の炭酸、ホウ酸、フッ素及びリン酸等と共存していることから、単独での計測は非常に難しいことが、以前から知られている。試料水中のケイ酸イオンの計測は、モリブデン酸アンモニウムを用いた比色法(非特許文献1参照)、塩酸あるいは過塩素酸を用いる重量測定法等が挙げられるが、この計測方法は、種々な環境水中に含まれるリン酸並びに強酸等の妨害を受けやすく、複雑な前処理を必要とする。また、導電率検出ノンサプレッサー型イオン排除型クロマトグラフィーあるいはイオン交換型イオンクロマトグラフィー(非特許文献2参照)では、炭酸水素イオンと検出ピークが重なり、酸による前処理が必要となり、加えて、その検出感度は、低い極限モル当量伝導度のために、導電率検出に対する応答が低く、検出限界が高いという問題点があった。
既に、炭酸水素イオンや脂肪族有機カルボン酸類等の、弱酸性イオンの計測における検出感度を上昇させるため、強酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離カラムを用い、溶離液を水として、イオン排除作用により、共存する強酸イオンから分離した後、カリウム型強酸性陽イオン交換樹脂カラムと、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムの順に、分離された炭酸水素イオンを通過させることによって、極めて高い導電率検出応答を有する水酸化カリウムに変換し、通常の10倍の検出応答の増大に成功している(非特許文献3参照)。また、溶離液を水とし、弱酸性陽イオン交換樹脂を、充填した分離カラムとして用い、共存イオン陰イオンから炭酸水素イオンを分離した後、分離カラムの後に接続されている、カリウム型強酸性陽イオン交換樹脂カラムと、ヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムの順に炭酸水素イオンを通過させることによって、吸光度係数の高いヨウ化カリウムに変換し、200〜240nmの波長領域において高感度に検出する装置の開発にも成功している(特許文献1参照)。
しかし、ケイ酸イオンを対象物質として適用した場合、酸化解離定数がpKa=9.86であり、そのため、検出応答に用いられたイオン交換カラム中での変換効率がかなり低いため、高感度検出を達成することができなかった。以前から、ケイ酸イオンの定量に対し、イオンクロマトグラフィーを計測手段とした、報告例はいくつかあるが、共存する炭酸イオン、リン酸イオン及びフッ化物イオン等の妨害を考慮しているものは少なかった(非特許文献4〜7)。それゆえ、前処理工程を最小限に抑えつつ、他のイオン種の妨害を避けながら、高精度にケイ酸イオンを分離検出する方法を構築し、更に広範囲の試料濃度において、高感度かつ高精度に定量が可能な計測装置の開発が必要であった。
特願2004-10261号 "Standard Medods, 17th edition", Edited by L.S. Clesceri, A.E. Greenberg, R.R. Trussell, eds., American Publish Health Association, Washington DC, 1989, pp. 4-184 - 187. "Standard Medods, 17th edition", Edited by L.S. Clesceri, A.E. Greenberg, R.R. Trussell, eds., American Publish Health Association, Washington DC, 1989, pp. 4-183 - 184. K. Tanaka, J.S. Fritz, Anal. Chem., 59, pp. 708 - 712 (1987). H.-B. Li, F. Chen, J. Chromatogr. A, 874, pp. 143 - 147 (2000). P. Jones, R. Stanley, Anal. Chim. Acta, 249, pp. 539 - 544 (1991). T. Okada, T. Kuwamoto, Anal. Chem., 57, pp. 258 - 262 (1985). H. Sakai, T. Fujiwara, T. Kumamaru, Bull. Chem. Soc. Jpn., 66, pp. 3401 - 3406 (1993).
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上述の諸問題を抜本的に解決することを可能とする、新しい分離計測方法を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、はじめに、共存する強酸あるいは弱酸イオンの妨害を除去するためのプレカラム及び、分離カラムの選択により、共存するイオン種から、イオン排除作用による選択的なケイ酸イオンの分離、ならびに検出ピークの良好な再現性を達成し、更に、分離カラムの後に接続される導電率増大カラム、あるいはUV吸光度増大カラムにより、各々分離された試料の、高感度化を図る方法を採用することにより、所期の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、共存する陰イオンの妨害を受けずに、高感度で、検出濃度範囲が広く、再現性の良い、ケイ酸イオンの分離計測方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、複雑な処理操作及び装置を必要としないケイ酸イオンの分離計測方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、水を溶離液とし、特別な薬品、有機溶媒等を必要としない、環境に優しい、ケイ酸イオンの分離計測方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、湖沼水、河川水、水道水、海水、飲料水、ボイラー水、超純水等に存在するケイ酸イオンの計測に幅広く適用することができる、ケイ酸イオンの分離計測方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、環境計測におけるオンサイトモニターとしての展開が期待される、導電率検出又はUV吸光度検出によるケイ酸イオンの高感度計測装置を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明、以下の技術的手段から構成される。
(1)水中に溶存するケイ酸イオンを、溶離液を水とするイオン排除型イオンクロマトグラフィーにより、迅速かつ高感度に分離計測する方法において、ケイ酸イオンを溶存する水を、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したプレカラムで処理して、ケイ酸イオンと共存する強酸及び弱酸を処理し、次いで、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離カラムで処理して、ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液にした後、その溶液中のケイ酸イオンを、導電率あるいはUV吸光度検出によって計測する水中に溶存するケイ酸イオンの分離計測方法であって、
ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液を、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラム、及び、無機陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムで順次処理することにより、ケイ酸イオンを、導電率あるいはUV吸光度検出による計測が可能な化合物に変換し、次いで、該化合物を、導電率あるいはUV吸光度検出によって計測することを特徴とする水中に溶存するケイ酸イオンの分離計測方法。
)ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液を、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラムにより、強電解質化合物に変換し、次いで、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムにより、ケイ酸イオンの検出応答(ピーク面積)を増大させ、次いで、導電率検出を行う、前記(1)に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
)強電解質変換カラムとして、ナトリウムイオン型又はカリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムにより、ケイ酸イオンを、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムに変換し、次いで、検出応答増大カラムとして、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムにより、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムに変換し、次いで、導電率検出を行う、前記()に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
)検出応答増大カラムとして、硝酸イオン型又はヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムにより、ケイ酸イオンを、200〜250nmにおいてUV吸光度を有する化合物に変換して、その吸光度極大波長においてUV吸光度検出を行うことを特徴とする、前記()に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
)水中に溶存するケイ酸イオンを、溶離液を水とするイオン排除型イオンクロマトグラフィーにより、迅速かつ高感度に分離し、計測する、ケイ酸イオンの分離計測装置であって、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したプレカラム、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離カラム、及び導電率あるいはUV吸光度検出による計測装置を順次設けたケイ酸イオンの分離計測装置であって、
水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂分離カラムに次いで、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラム、無機陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムを順次設けたことを特徴とするケイ酸イオンの分離計測装置。
)ケイ酸イオンの分離計測装置が、水道水、ミネラルウオーター又は湖沼水中に溶存するケイ酸イオンモニター装置である前記()に記載のケイ酸イオンの分離計測装置。
)ケイ酸イオンの分離計測装置が、医薬品製造工程における超純水の品質管理装置、又はボイラー水の品質管理装置である、前記()に記載のケイ酸イオンの分離計測装置。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、例えば、環境試料中のケイ酸イオンを対象とし、これを選択的、かつ高感度に分離計測することを特徴としている。本発明は、例えば、水道水、ミネラルウォーター、及び湖沼水中の、ケイ酸イオンモニターとして、その増減をモニターすること、医薬品製造工程において用いられる超純水の品質管理を行う項目の一つとして、超純水中のケイ酸イオンを高感度に計測すること、火力発電や工場等で用いられるボイラー水の品質管理を行う項目の一つとして、ボイラー水中のケイ酸イオンを高感度に計測すること等を目的として適用される。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明において、ケイ酸イオンの分離計測用に用いられるカラムとしては、例えば、 共存陰イオンを除去するプレカラム、ケイ酸イオンを分離する分離カラム、ケイ酸イオンを強電解質に変換する強電解質変換カラム、及び、検出感度を増大するための検出応答増大カラムより構成される。共存陰イオンの妨害プレカラムとしては、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムが例示される。また、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラムとしては、具体的には、例えば、リチウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂、ナトリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂、カリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂等を充填したカラムが例示される。更に、陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムとしては、具体的には、UV吸光度を増大する場合には、例えば、硝酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、亜硝酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、ヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、臭化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、モリブデン酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂等の、約200〜300nmの範囲に吸光度を有するイオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂が例示され、導電率を増大する場合には、例えば、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、硫酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、塩化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、臭化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、硝酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂等の高い極限モル当量導電率を有するイオンを吸着させた強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムが例示される。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、上記カラムと同等もしくは類似のもので、同効果の機能を有するものであれば同様に使用することができる。
本発明は、試料水中のケイ酸イオンを対象として、これを選択的、かつ高感度に計測するイオン排除型イオンクロマトグラフィーに使用する装置であって、ケイ酸イオンと共存する陰イオン、特に、炭酸水素イオン等の妨害を除去する水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム、ケイ酸イオンの分解能向上及び共存している陰イオンを水に変換する水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂カラム、弱電解質であるケイ酸を強電解質であるケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウムあるいはケイ酸カリウム等に変換するためのアルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラム、更に、導電率あるいはUV吸光度検出器の応答を増大させる陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を、この順序に組み合わせた、ケイ酸イオンの分離計測装置が使用される。上記カラムとして、上述の各種カラムを適宜選択して使用することができる。また、UV検出あるいは導電率検出を手段として、適宜の検出器を組み合わせて使用することができる。これらの手段により、試料水中のケイ酸イオンを対象とし、溶離液を、水あるいは水-メタノールの混合溶液とし、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂により、ケイ酸イオンと共存している強酸イオン及び炭酸水素イオンを、水酸化物型に変換し、分離カラムである水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂カラムにより、ケイ酸イオン以外の陰イオンを水に変換する。更に、ケイ酸イオンを高感度に検出するため、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラムにより、強電解質化合物、具体的には、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、あるいはケイ酸カリウム等に予め変換した後、導電率により検出する場合は、陰イオン強塩基性陰イオン交換樹脂カラムにより、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硝酸カリウム等の、高い極限モル当量導電率を有する化合物に変換して導電率検出が行われ、UV吸光度により検出する場合は、陰イオン強塩基性陰イオン交換樹脂カラムにより、例えば、ヨウ化リチウム、臭化ナトリウム、硝酸カリウム等の、広い検出波長領域において、高い吸光度係数を有する化合物に変換してUV検出が行われる。
本発明では、はじめに、被検試料水中に多く共存する、強酸・弱酸イオンを可能な限り除去し、ケイ酸イオンを効率よく検出するための課題を解決するために、好適には、分離カラムの前に、親水性ポリマーであるポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリヒドロキシアクリレート、及びポリビニルアルコール等を担体とする水酸化物イオンを吸着させた弱塩基性陰イオン交換樹脂カラムをプレカラムとして使用する。これにより、酸解離定数(pKa)5〜6以下の試料は、水溶離液中で電離し、速やかに強電解質である水酸化物イオン型に変換される。その際、ケイ酸イオンのような極めて弱い酸(pKa=9.86)は、ほとんど解離せず分子状態でプレカラムを通過する。次に、ケイ酸イオンのみを単独に分離検出するために、親水性ポリマーである、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリヒドロキシアクリレート、及びポリビニルアルコール等を担体とする水素イオンを吸着させた弱酸性陽イオン交換樹脂カラムを分離カラムとして使用する。これより、水酸化物イオン型の強電解質を、導電率検出及びUV吸光度検出にほとんど応答しない水に変換し、イオン排除作用によって溶存する他の陰イオンからケイ酸イオンのみを単独に検出することが可能になる。
実際には、本法において、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム(例えば、東ソー製TSKgel DEAE-5PW)をプレカラムとし、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂カラム(例えば、東ソー製TSKgel Super-IC-A/C)を分離カラムとして用い、いくつかの代表的な、陰イオン及びケイ酸イオンの水への変換効率を調べた結果を、表1に示す。これらの結果から、ケイ酸イオンを除く、強酸性陰イオンあるいは炭酸水素イオンを含めた弱酸性陰イオンが、分離カラムの前にプレカラムを接続することによって、ケイ酸イオン及び高濃度の炭酸水素イオンを除く試料は、ほぼ100%水に変換されていることがわかる。なお、プレカラムの長さ、粒径、交換容量が、いずれも分離カラムよりも大きい場合は、弱酸であるケイ酸及び炭酸イオンもほぼ100%水に変換された。
Figure 0004431708
表1に、水溶離液を用いた際の、導電率イオン排除型イオンクロマトグラフィーにより得られた、プレカラムの接続前と接続後の、陰イオンのピーク面積を示し、図1には、そのクロマトグラムを示す。
なお、この試験では、溶離液は水を用い、流速0.5mL/minで行い、導電率検出により各イオンを検出した。また、注入された陰イオン試料の濃度は全て5mMであり、注入量は100μLである。プレカラムは、東ソー性TSKgel DEAE-5PWの水酸化物イオン型 (4cm X 4.6 mmID)を使用し、分離カラムは、TSKGEL Super IC-A/Cの水素イオン型 (15cm X 6 mmID)を使用した。図1において、上図は、強酸イオン(1mM硫酸イオン+1mM塩化物イオン+1mM硝酸イオン)、下図は、弱酸イオン(1:0.1mMギ酸、2:0.1mM酢酸、3:0.1mMプロピオン酸、4:0.1mM酪酸、5:1mM炭酸、6:0.1mM吉草酸)であり、カラムの組み合わせについては、Aは、分離カラムのみ、Bは、プレカラム+分離カラムである。
次に、本発明では、分離後のケイ酸イオンの導電率及びUV吸光度検出における、感度増大の課題を解決するため、分離カラムの後に、リチウム、ナトリウム、及びカリウムイオン等のアルカリ金属イオンを吸着させた強酸性陽イオン交換樹脂カラムを接続する。これは、分離カラムを通過した弱電解質のケイ酸を、強電解質に変換することによって、次の検出応答増大カラムにおいて効率良くイオン交換を行い、速やかに高い吸光度を示す化合物あるいは高い極限モル伝導率を有する化合物に変換することを可能とする特徴を有することから、以後の説明では、このカラムを強電解質変換カラムとする。
例えば、検出器を導電率検出器とした場合、強電解質変換カラムとして、カリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラムを用い、導電率検出増大カラムとして、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムを用いてケイ酸イオンを計測する場合、はじめに、プレカラム及び分離カラムを通過する間に、共存するほかの陰イオンが水に変換され、ケイ酸イオンが単独で分離された後、強電解質変換カラムによりケイ酸カリウムに変換され、導電率増大カラムにより、最終的に極限モル当量伝導率が大変高い、水酸化カリウムに変換され、劇的な検出器応答の増大が可能となる。また、強塩基性陰イオン交換樹脂上に吸着させるイオンは、水酸化物イオンをはじめ、塩化物イオン、あるいは硫酸イオンといった高い極限モル当量伝導率を有する強酸の陰イオンであれば適用可能であり、いずれの場合も良好な結果が得られる。
検出器をUV吸光度検出器とした場合、強電解質変換カラムとして、例えば、カリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラムを用い、UV吸光度増大カラムとして、硝酸イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムを用いてケイ酸イオンを計測する場合、初めに、プレカラム及び分離カラムを通過する間に、共存するほかの陰イオンが水に変換され、ケイ酸イオンが単独で分離された後、強電解質変換カラムによりケイ酸カリウムに変換され、次いで、UV吸光度増大カラムにより、最終的に約200〜250nmの極大吸光度波長において高い吸光度係数を示す硝酸カリウムに変換されることにより、劇的な検出器応答の増大が可能となる。また、UV吸光度増大カラムである、強塩基性陰イオン交換樹脂上に吸着させるイオンは、硝酸イオンをはじめ、ヨウ化物イオン、あるいは臭化物イオンといった、200nm以上の広い波長領域において、UV吸光度を有する陰イオンであれば適用可能であり、いずれの場合も良好な結果が得られる。
共存する陰イオンを除去するためのプレカラムである弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム、及び弱酸性陽イオン交換樹脂分離カラムは、充填されたゲルのサイズが10μm以下であり、好適には3〜5μmであり、例えば、長さが各々4cm以上のものであれば、水溶離液あるいは水-メタノール混合溶離液において、流速が1mL/min以下の場合、ケイ酸イオンの分離、及び酸解離定数pKa=6以下の陰イオンを効率よく水に変換することができる。また、強電解質交換カラムに関しては、充填されたゲルのサイズが10μm以下であり、好適には3〜5μmであり、例えば、長さが各々10cm以上、好適には20〜30cmのものであれば、弱電解質のケイ酸を効率よく強電解物質に変換することができる。更に、検出応答増大カラムに関しては、UV検出及び導電率検出の両方において、長さにほとんど依存しない。そして、計測終了後の2次汚染の発生を最小限に抑えることについても、計測過程において水のみによって実施することから、100μLの注入試料以外はほとんど無(低)公害である。これにより、ケイ酸イオンの広範囲な検量線の直線性(約0.01〜2.0mM)と、検出限界の拡大(約0.1μm)が示され、雨水、湖沼水、河川水、水道水、海水、飲料水、ボイラー水あるいは超純水中に存在するケイ酸イオンの計測方法として、幅広い分野での実際試料への適用を可能になる。
本発明では、分離カラムの前に、試料水中に共存する陰イオンを、効率よく除去するための水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂カラムをプレカラムとし、分離カラムと検出器との間に、分析対象試料であるケイ酸イオンを,弱電解質から強電解質に変換するためのアルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂カラムを強電解質変換カラムとし、最終的に吸光度係数、あるいは、極限モル伝導率の大きい化合物に変換するための陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂カラムを、検出応答増大カラムとして接続することによって、通常のケイ酸イオンの検出に使用される、電気伝導度検出器で得られた結果の300倍以上の検出感度の増大を示すものである。
本発明において用いる、分離カラム後に接続される2本のカラムは1meq./mL以上の高交換容量を有するものであり、これらのカラムの寿命は、かなり長いものと考えられる。例えば、検量線作成において、0.01〜2.0mMまでのケイ酸イオンの標準試料8種類を各3回、ピーク面積並びに溶出時間の再現性を算出するため、1mMケイ酸イオンの標準試料を6回、そして、水道水、湖水、河川水、及び海水の実際試料を各3回の計42回を導電率検出及びUV吸光度検出各々においてカラムに注入した場合、いずれも再生処理することなく連続使用が可能である。再生処理について、分離カラムは、0.1M硫酸、塩酸、硝酸のいずれかの強酸を10分間通液することによって再生が可能になる。一方、検出器が導電率の場合、プレカラム、強電解質変換カラム及び検出器応答増大カラムを直列に接続し、0.1〜1M水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのいずれかの強塩基を10分間流通することによって、同時に再生することができる。また、検出器がUV吸光度である場合、プレカラムと強電解質変換カラムを直列に接続し、0.1〜1M水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのいずれかの強塩基を10分間流通し、UV吸光度増大カラムは、塩(硝酸カリウムやヨウ化物カリウム等)を10分間流通することによって、再生することができる。なお、カラムの再生処理の際の溶離液流速は、カラム圧を考慮し、1min/mL以下が望ましい。
本発明において計測されたケイ酸イオンの検出限界は、導電率検出において0.10μm、及びUV吸光度検出において約0.11μmであるため、環境から生体関連まで幅広い分野での実際試料に適用することが可能である。今後、更に、充填されるイオン交換樹脂の粒径を小さくするか、更に、前記とは異なった種類のポリマーを充填し、現状よりも高効率なイオン交換反応を作用することができれば、カラムの全体の長さを短く(10cm以下が望ましい)することができ、省スペース及び軽量なポータブル型イオンクロマトグラフィー装置にも導入することが可能となり、例えば、オンサイトでの環境水質モニタリング、超純水品質管理、及び上水・下水の品質管理モニター等として使用可能である。
本発明は、ケイ酸イオンの分離計測にあたり、(1)分離カラムのみを用いるときに比べ、極めて広範囲な検量線の直線性と、検出感度の増大が示されることから、体液、血液、雨水、河川水、海水、水道水、土壌水、地下水、そして飲料水といった、様々な試料中のケイ酸イオンの定量に適用することが可能である、(2)検出応答増大カラムに吸着させる陰イオンの種類によって、導電率検出器やUV吸光検出器の両方に対応でき、ケイ酸イオンを、数μmオーダーの微少濃度から数十mMオーダーまで幅広く、他の陰イオンの妨害を受けずに検出することができる、(3)複雑な実験操作過程を必要としない簡便かつ選択性の高いケイ酸イオンの高感度計測方法及びその装置を提供できる、(4)特別な薬品を一切使用することなく、種々な試料中のケイ酸イオンの高感度計測に対応する無(低)公害な水質モニタリング装置を提供できる、という格別の効果が奏される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、プレカラムとして水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムを用い、分離カラムとして水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラム、強電解質変換カラムとしてカリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂を用い、導電率増大カラムとして水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を、そしてUV吸光度増大カラムとしてヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したものを用いた。
(1)実験条件
イオンクロマトグラフは、UV-8020型吸光度検出器、CM-8020型導電率検出器、DP-8020型送液ポンプ、CO-8020型カラム恒温槽及びSD-8022型オンラインデガッサーで構成され、全て東ソー製のものを用いた。また、得られたデータの解析・管理は、専用のLC-8020-MODEL-IIデータプロセッサーを用いて行った。試料注入量は0.1mLとし、カラム温度は、40℃、溶離液流速は、0.5mL/minとした。
分離カラムは、親水性ポリマーである、ポリメタクリレートを担体とする弱酸性陽イオン交換樹脂TSKgel Super-IC-A/C (長さ15cm、内径6mm)を水素イオン型として用いた。プレカラムは、ポリメタクリレートを担体とする弱塩基性陰イオン交換樹脂TSKgel DEAE-5PW (長さ4cm、内径4.6mm)を水酸化物イオン型として用いた。強電解質変換カラムは、ポリスチレンジビニルベンゼンを担体とする強酸性陽イオン交換樹脂TSKgel SCX (長さ7.5cm、内径6mm)をカリウムイオン型として、導電率増大カラムは、ポリスチレンジビニルベンゼンを担体とする強塩基性陰イオン交換樹脂TSKgel SAX(長さ5cm,内径4.8mm)を水酸化物イオン型として用い、UV吸光度増大カラムでは、前記のものを、ヨウ化物イオン型として用い、溶離液を水とした。カラムの組み合わせは、Aは分離カラムのみ、Bは分離カラム+強電解質変換カラム、Cは分離カラム+強電解質変換カラム+導電率増大カラム、Dはプレカラム+分離カラム+強電解質変換カラム+導電率増大カラム、Eはプレカラム+分離カラム+強電解質変換カラム+UV吸光度増大カラムとした。
本発明のシステムの、フローシートを示す図2において、1はプレカラム(水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂)、2は分離カラム(水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂)、3は強電解質変換カラム(カリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂)、そして4は検出応答増大カラム(導電率では水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂、UVではヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂)である。
標準試料として用いた試薬(全て和光純薬製)は、目的に応じて適宜希釈して調製した。即ち、標準試薬として、ケイ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムを使用し、それぞれ、0.1M水溶液に調製し、適宜希釈して使用した。なお、溶離液及び標準試料に用いた水は、イオン交換後の蒸留水であり、水溶離液は、それらに含まれる溶存炭酸を除去するため、予め、超音波により30分間脱気処理した後、窒素ガス封入を10分間したものを用いた。海水は、名古屋港で採取し、固形物を孔径0.2μmのメンブランフィルターによって除去後、イオン交換後の蒸留水に100倍希釈したものを用いた。湖水は愛知池(愛知県東郷町)、河川水は庄内川(愛知県名古屋市)、水道水は本研究所(瀬戸市)から採取した。それらは、直ちに孔径0.2μmのメンブランフィルターによってろ過した後、本発明で使用するカラムに注入した。なお、これらの実際試料は、溶存する炭酸(炭酸水素イオンとして1mM以上)が多く含まれており、ケイ酸イオンの検出を妨害する恐れがあるため、1mM硫酸水溶液により10から100倍に希釈し、窒素ガス封入を10分間したものを用いた。
(2)実験方法及び結果
分離カラムの前後に接続されるイオン交換樹脂カラムによる、ケイ酸イオンの導電率増大検出及び共存する陰イオンの除去効果を検討するために、試料として硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、そしてケイ酸ナトリウム各1mM混合した標準試料を分離カラムに注入し、各々のカラム条件における導電率応答をモニターし、得られたクロマトグラムを比較した。図3(A)において示されるように、分離カラムのみでの陰イオン、特に、強酸性陰イオン1は、高い極限モル伝導率を有するために、かなり大きなピークとして検出されているが、ケイ酸イオン2のピークは、かなり弱い弱酸であるために、検出応答の小さいピークのみが検出された。図3(B)は、分離カラムの後に強電解質変換カラムを接続した場合は、弱酸イオンであるケイ酸イオンが、強電解質であるケイ酸カリウムに変換され、若干のピークの増大が見られた。
更に、導電率増大カラムを、強電解質変換カラムと検出器の間に接続したとき、直後でモニターされたクロマトグラムは、図3(C)に示されるように、ケイ酸イオンが強電解質である水酸化カリウムに変換されることによって、検出応答の増大が期待されたが、ケイ酸イオンの酸解離が十分なされていなかったと考えられ、この段階での検出感度の増大は見られなかった。
上記の問題を解決するために、前記に記載の表1で示されているように、水酸化物型弱塩基性陰イオン交換樹脂をプレカラムとして、分離カラムをプレカラムと接続したとき、殆どの陰イオン試料が水に変換され、ケイ酸イオンのみがその影響を殆ど受けなかった事実に基づき、上記の検出応答増大システムにある分離カラムの前に、そのプレカラムを接続し、ケイ酸イオンのピーク増大を試みた。その結果、図3(D)に示されるように、強酸の陰イオンは、ほとんど検出されなくなり、ケイ酸イオンのみの検出応答増大に関与するイオン交換作用が生じ、高い極限イオン当量伝導率を有する水酸化カリウムに効率よく変換されることによって、そのピークが劇的に増大し、検出応答(ピーク面積)が、分離カラムのみの340倍まで増大していることがわかった。これにより、ケイ酸イオンのみを検出することが可能となったが、仮に1mM以上の炭酸水素イオンが含まれているような実際試料を用いる場合、その検出を妨害することが予想されるため、予め、1mM硫酸水溶液によりpH3以下に保ち、10分間ほど窒素ガス封入し、炭酸を完全に除去したものを使用することを勧める。
前記同様のシステムを用い、導電率増大カラムの変わりに、ヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したUV吸光度増大カラムを接続した場合のケイ酸イオンのクロマトグラムを図3(E)に示す。この図に示されるように、前記の導電率増大に関する記載の内容と同様の効果得られ、UV吸光度を検出器とした場合でも、本発明が有効であることを実証している。
本発明では、上記のシステムにおける、水溶離液のみでのイオン排除分離及び検出応答の増大が可能であるが、溶離液流速が1mL/min以上になると、カラム圧は上昇し、カラム内に充填されたイオン交換樹脂に大きなダメージを与えるため、短時間内に検出する(例えば、10分以内)ことは、通常困難であるため、一般的に、メタノールやアセトニトリル等の有機溶媒を水溶離液に添加することがある。更に、有機溶媒の添加は、純水よりも粘性が低いことから、カラム内抵抗が減少し、イオン交換樹脂に対する負担が軽減される利点がある。ただし、ケイ酸試料の解離状態が水溶離液よりもさらに抑制されることから、検出感度は減少するが、感度よりもカラム寿命を考慮したい場合は、10%以下の有機溶媒を溶離液に添加することによって、更に長期間保存することができる。なお、これによってケイ酸イオンの溶出挙動(溶出時間並びにピーク形状等)が大きく変化することはない。
次に、図4はケイ酸イオンの注入濃度増大に伴うピークの増加をプロットしたものである(試料注入量100μL)。これより、導電率及びUV吸光度検出の両方において0.01〜2.0mMの濃度範囲で直線性が示された。なお、本システムにおける検出限界及びピーク検出における再現性は、以下の表2にまとめた。
Figure 0004431708
本発明おいて得られた、ケイ酸イオンの検出応答の検出限界及びピーク面積及び溶出時間の再現を示す。表2に示された値は、連続6回の測定で得られた結果を示している。検出限界及び再現性を検討する際に注入されたケイ酸イオンの濃度は1mMであり、検出限界は、シグナル/ノイズ比3で行っている。他の計測条件は図2の場合と同じである。
本発明の実際試料への応用として、種々な試料中のケイ酸イオンの定量に適用した。図5のイオンクロマトグラムに示されるように、湖沼水、河川水、海水及び水道水中に含まれているケイ酸イオンが、他の陰イオンに妨害を受けることなく、良好に検出されていることがわかる。さらに、本発明で得られた計測結果を同定するため、モリブデン酸ナトリウム、スルファミン酸及びクエン酸を用いる比色法により行った。その結果、表3に示されるように、ケイ酸イオンの計測結果がかなり一致していることがわかった。
Figure 0004431708
表3に種々な水試料中に含まれるケイ酸イオンの濃度を示す。比色においては、HACH社製シリカ計測用キットを用い試料中のケイ酸イオンを呈色させ、HACH社製の分光光度計DR4000型を用い、ケイ素として定量を行い、それに伴い、本発明による結果もケイ素として定量した。実際の試料水は、10倍に蒸留後の脱イオン水により希釈したものを注入試料として用いた。
本実施例から得られた利点として、分離カラム後に接続される2本のカラムは、1meq/mL以上の高交換容量を有するものであり、これらのカラムの寿命は、かなり長いものと考えられる。例えば、検量線作成において、0.01〜2.0mMまでのケイ酸イオンの標準試料8種類を各3回、ピーク面積並びに溶出時間の再現性を算出するため、1mMケイ酸イオンの標準試料を6回、そして、水道水、湖水、河川水、及び海水の実際試料を各3回、計42回カラムに注入した場合、いずれも再生処理することなく、連続使用が可能である。再生処理について、分離カラムは、0.1M硫酸、塩酸、硝酸のいずれかの強酸を10分間通液することによって再生が可能になる。検出器が導電率の場合、プレカラム、強電解質変換カラム及び検出器応答増大カラムを直列に接続し、0.1〜1M水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのいずれかの強塩基を10分間流通することによって、同時に再生することができる。なお、カラムの再生処理の際の溶離液流速は、カラム圧を考慮し、1min/mL以下で行うことを推奨する。
以上詳述したように、本発明は、環境水中のケイ酸イオンの特異的・選択的なイオン排除分離と、導電率及びUV吸光度に対する高感度な検出を同時に達成するものである。そのため、次のような特徴と展開が挙げられる。
このシステムにおける大きな特徴は、水素イオンを吸着した弱酸性陽イオン交換樹脂カラムと水溶離液の組合せによって、強酸イオンからケイ酸イオンを選択的に分離できることである。また、炭酸水素イオンのピークはケイ酸イオンの近傍に検出されるが、これは、硫酸あるいは塩酸によって試料溶液をpH3以下に調整した後、窒素ガスを3〜10分間封入することによって、炭酸水素イオンの完全除去を簡単に行うことができる。それ以外の実際試料の前処理に関しては、特別な化学薬品を用いることなく、水による希釈や固形物除去による前処理のみで分離カラムに注入でき、分離及び高感度検出が達成される。また、分離カラムの充填剤が、親水性ポリマー系の弱酸性陽イオン交換樹脂であるため、脂肪族カルボン酸のような不純物が共存しても、カラム内樹脂相とそれらとの疎水吸着を効果的に抑制でき、再現性のある実験及びカラムの長寿命化が期待できる。
本発明では、UV吸光度検出増大カラムの調整が、水酸化物イオン、硝酸イオンやヨウ化物イオン等の高いモル吸光度係数を有する陰イオンを含む強酸を用いることによって簡単に処理できるため、特別な反応薬品の調製、特別なコーティング等のスキームを必要とせず、扱うイオンクロマト装置が上記と異なったとしても対応が可能である。今後、カラム内に充填されるゲルの表面積が大きくなり、イオン交換容量を増幅させることが可能になれば、カラムの全長が数cmの大変コンパクトな形態になるため、環境計測におけるオンサイトモニターへの進展が十分に期待できる。
これにより、本発明は、海水、河川水、雨水等の環境水中や、水道水やミネラルウォーター等の飲料水中に数μmから数mMまでの広い範囲においてケイ酸イオンの計測ができる特徴を有するものである。更に、本発明のシステムにおいて用いられる溶離液が、脱イオン化した蒸留水であることから、2次汚染を極力低減させた計測法として大変有力である。また、本発明の特徴を生かし、環境計測システムの分野だけでなく、無(低)公害なものつくりを目指す新しい研究分野(グリーンケミストリー)における「2次汚染防止のための安全管理システム」へ展開することによって、一層の利用拡大が期待できる。
プレカラムと分離カラムの組み合わせによる強酸・弱酸イオンの除去効果を示す。 本発明の、各カラム及び検出器の配置の概略図を示す。 強電解変換カラム、検出応答増大カラムによるケイ酸イオンの溶出挙動、ならびに、更にプレカラムを設置した場合のケイ酸イオンの溶出挙動を示す。 本発明の、ケイ酸イオンの試料注入濃度の変化に伴うピーク面積の変化を示す。(◆)は導電率検出、(○)はUV吸光度検出による値である。 本発明による、海水及び河川水中のケイ酸イオンの測定結果を示す。Aは海水(100倍希釈)、Bは河川水(10倍希釈)であり、ケイ酸イオンのピークは矢印で示す。
符号の説明
(図1の符号)
1:ギ酸
2:酢酸
3:プロピオン酸
4:酪酸
5:炭酸
6:吉草酸)
(図2の符号)
1:プレカラム(水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂カラム)
2:分離カラム(水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂カラム)
3:強電解質変換カラム(強酸性陽イオン交換樹脂カラム)
4:検出応答増大カラム(強塩基性陰イオン交換樹脂カラム)
(図3の符号)
1:強酸性陰イオン
2:ケイ酸イオン

Claims (7)

  1. 水中に溶存するケイ酸イオンを、溶離液を水とするイオン排除型イオンクロマトグラフィーにより、迅速かつ高感度に分離計測する方法において、ケイ酸イオンを溶存する水を、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したプレカラムで処理して、ケイ酸イオンと共存する強酸及び弱酸を処理し、次いで、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離カラムで処理して、ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液にした後、その溶液中のケイ酸イオンを、導電率あるいはUV吸光度検出によって計測する水中に溶存するケイ酸イオンの分離計測方法であって、
    ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液を、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラム、及び、無機陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムで順次処理することにより、ケイ酸イオンを、導電率あるいはUV吸光度検出による計測が可能な化合物に変換し、次いで、該化合物を、導電率あるいはUV吸光度検出によって計測することを特徴とする水中に溶存するケイ酸イオンの分離計測方法。
  2. ケイ酸イオンを選択的に分離した溶液を、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラムにより、強電解質化合物に変換し、次いで、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムにより、ケイ酸イオンの検出応答(ピーク面積)を増大させ、次いで、導電率検出を行う、請求項1に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
  3. 強電解質変換カラムとして、ナトリウムイオン型又はカリウムイオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムにより、ケイ酸イオンを、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムに変換し、次いで、検出応答増大カラムとして、水酸化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムにより、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムに変換し、次いで、導電率検出を行う、請求項に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
  4. 検出応答増大カラムとして、硝酸イオン型又はヨウ化物イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムにより、ケイ酸イオンを、200〜250nmにおいてUV吸光度を有する化合物に変換して、その吸光度極大波長においてUV吸光度検出を行うことを特徴とする、請求項に記載のケイ酸イオンの分離計測方法。
  5. 水中に溶存するケイ酸イオンを、溶離液を水とするイオン排除型イオンクロマトグラフィーにより、迅速かつ高感度に分離し、計測する、ケイ酸イオンの分離計測装置であって、水酸化物イオン型弱塩基性陰イオン交換樹脂を充填したプレカラム、水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離カラム、及び導電率あるいはUV吸光度検出による計測装置を順次設けたケイ酸イオンの分離計測装置であって、
    水素イオン型弱酸性陽イオン交換樹脂分離カラムに次いで、アルカリ金属イオン型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した強電解質変換カラム、無機陰イオン型強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した検出応答増大カラムを順次設けたことを特徴とするケイ酸イオンの分離計測装置。
  6. ケイ酸イオンの分離計測装置が、水道水、ミネラルウオーター又は湖沼水中に溶存するケイ酸イオンモニター装置である請求項に記載のケイ酸イオンの分離計測装置。
  7. ケイ酸イオンの分離計測装置が、医薬品製造工程における超純水の品質管理装置、又はボイラー水の品質管理装置である、請求項に記載のケイ酸イオンの分離計測装置。
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