JP4431498B2 - 動物投与用ポリマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、動物(通常はヒト)に投与するポリマー組成物に関する。このポリマーは、特に、投与の間、水分を吸水する形態を有し、体内経路を閉塞させるように使用することが好ましい。この方法は、治療に用いられることが好ましいが、診断に用いられてもよい。
塞栓療法(embolotherapy)は、特定の血管を閉塞させるために、ある因子が放出する所望の位置に経動脈的なカテーテル手法を常時依拠する、インターベンション医療(interventional medicine)の発達しつつある分野である。この治療は、例えば、肝細胞癌などのある種の血管分布が過多した腫瘍へ血液供給を遮断するために用いられ、最近では、子宮筋腫における一般的な治療選択となっている。これは、動静脈奇形(AVM)として知られている動脈と静脈との間の異常なシャントを治療するため、静脈奇形を治療するため、術後の出血などを予防するためなどにも用いられる。
押込み可能なコイル、取り外し可能なコイル、及び電気的に取り外し可能なコイルを含む多数の承認された塞栓形成装置がある。取り外し可能なバルーン製品系もある。塞栓形成部位への経カテーテル送達を必要とする寒栓性材料の使用範囲もあり、この部位で寒栓性材料が血流に放出してこの血流を遮断する。これは、小さな粒子又は球状体を用いた血管の物理的な(一般的に、血栓形成による)遮断によって達成されるか、あるいは、液状の塞栓剤の場合では、ある種の相変化又は反応が流動性材料を設置して血管のキャストを形成することを必要とする。
最も一般的な粒状の塞栓剤は、1970年代前半から使用されているポリビニルアルコール(PVA)発泡粒子である。この材料は不規則な形状をし、塞栓形成に共通して用いられているマイクロカテーテルにおいて、凝集して閉塞を形成することができる。さらに、いくつかの場合において、PVA粒子は、その大きさに基づいて予想されるほど遠位まで塞栓形成しないことも知られている。このPVA粒子は、血管内の使用において長年許容されているが、PVAは、十分に生体適合性を有する材料ではない。PVAは、血小板に対して反応性を有し、PVAをヘパリンで修飾してこの効果を低減させることを扱った者もいる(例えば、非特許文献1参照。)。実は、塞栓形成された血管の大部分はしばしば血栓で満たされ、血栓の形成がPVA粒子の塞栓の可能性の一因となっている。これは、凝固障害を有し得る患者が、PVAを用いた場合に容易に血栓形成することができないという不利な点を有している。さらに、長期にわたる血栓の自己溶解により、標的血管が不要にも再疎通してしまう。PVAを分解するのには数ヶ月かかるので、中等度の炎症が引き起こされる。これは、長期の疼痛及び合併症の潜在的な原因となり得る。動物研究におけるいくつかの場合において、炎症を引き起こす塞栓剤は、皮膚から細片を取り除く方法とほとんど同じ方法で、血管から「排出される」ことが分かっている(例えば、非特許文献2参照。)。この場合も、数日から数ヶ月までの間において、望ましくない再疎通が生じ得る。
ホスホリルコリン(PC)ベースのポリマーは、当該技術分野において周知である。塞栓療法におけるホスホリルコリン(PC)ベースのポリマーの使用についての唯一の記載は、特許文献1及び特許文献2における多イオン複合体ゲルの形態である。
PCポリマーの粒子形態が記載されている。Ishiharaは、血流を通る薬物担体として、PCポリマー凝集物の使用について記載している(例えば、非特許文献3及び特許文献3参照。)。しかしながら、これらの凝集物は、設計によってナノにサイズ化され、最もよい血液適合性を有し、塞栓を形成することもない。
粒子含有カラムは、材料の血栓形成性を決定するのに用いられる。この目的のため、過去に、PCポリマーは溶媒蒸発技術によりクロスリンクポリ(メタクリル酸メチル)ビーズ上にコーティングされている(例えば、非特許文献4参照。)。ポリ(メタクリル酸メチル)は、水吸収性ではない。
さらに、Sugiyamaは、MPCが成長粒子を安定化させ、かつ、球状体中に取り込ませた表面に表出させる、乳化剤を用いない乳化重合によって一般的に作製されるホスホリルコリンを含有するミクロスフィアの調製について、広範にわたって報告している。例えば0.1〜10mol%のMPC含量を有するスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、及びスチレンから作製されるポリマーの球状粒子が記載されている(例えば、非特許文献5、非特許文献6、及び非特許文献7参照。)。これらのアクリル/スチレン性材料は比較的硬い。それらは水中油型乳化重合プロセスにより合成され、従ってこのポリマーは、有意な水膨潤性ではないと考えられる。生成物の粒子サイズは500nm未満であった。
非特許文献8には、全モノマーをベースとして5〜70重量%のSPP濃度範囲のN−(3−スルホプロピル)−N−メタクリルオミジルプロピル(N,N−ジメチルアンモニウムベタイン)(SPP)の存在下において、ペルオキソ二硫酸カリウムを用いたポリスチレンの水中油型乳化重合が記載されている。ラテックス生成物の粒子サイズは、開始剤及びベタインコモノマーレベルに依存していた。再度、重合開始前にすべてのモノマーは、水性連続相に分散した。ラテックス生成物の固体濃度は、約10重量%であった。
特許文献4において、Hwaらは、水性連続相中における、メタクリル酸エチル及びアクリルアミドを用いたN,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピルアンモニウム内部塩)(SPE)の共重合を記載している。Hwaは、準安定性の水中油型生成物を生成している。彼は、ラテックスの粒子サイズを記載していない。
特許文献5において、本発明者らは、疎水性コモノマー、イオン性コモノマー、又は反応性コモノマーなどのコモノマーを用いた両性イオンモノマーのコポリマーの範囲を記載している。このコポリマーは、モノマー及びポリマーが可溶な溶媒中にすべてのモノマーを一緒に溶解することによって形成され、沈殿技術によって回収される。生成物はマイクロエマルジョンであってもよいことが示唆されているが、乳化重合の例は示されていない。
WO−A−0029481 WO−A−0028920 JP−A−11−322948 US−A−3497482 WO−A−93/01221 Sefton, M.V. et al, Biomaterials, 1992; 13(7): 421-4 T.W.Clark, oral presentation: "Embolotherapy, materials, techniques and clinical applications", June 21-22, 2002, Pasadena, CA. Proc. Int. Symp. Controlled. Rel. Bioactive Mater., 1997,24th, 465-466 J. Biomed. Mater. Res., 24, 1069-1077, 1990 Polymer Journal (Tokyo, Japan), 1994, 26(5), 561-569 Polymer J. 1993, 25 (5), 521-527 J. Polymer Sci A: Polym. Chem. 1997, 35, 3349-3357 Zimehl et al, in Colloid Polym. Sci. (1990) 268,924-933
本発明は、水性液体を吸収するポリマーマトリクスの粒子を含有し、この粒子は40〜4000μmの範囲の直径を有し、この粒子表面は両性イオン基を表出することを特徴とする、新規な治療用組成物又は新規な診断用組成物を提供する。
この組成物は塞栓療法に用いられ得る。塞栓療法は、子宮筋腫塞栓形成、腫瘍周囲もしくは腫瘍切除部位周囲における血管の塞栓形成、拡張蛇行静脈もしくは精索静脈瘤の塞栓形成、動静脈奇形もしくは静脈奇形の塞栓形成、胃腸管出血の止血、ならびに切除前及び切除後の塞栓形成に対するものであり得る。あるいは、この治療は、動脈瘤の充填、組織の填塞、創傷の癒合、瘻孔の閉鎖、又は括約筋填塞の適応などの他の医療用途もしくは化粧品用途において用いられ得る。この組成物の診断的な用途には、循環をモニタリングする工程を含み得る。
ポリマーマトリクスは、例えば以下の投与条件下において、生分解性であってもよい。生分解性組成物は、塞栓形成が一時的に必要とされる場合において有用であり得る。しかしながら、このポリマーマトリクスは、投与後の条件下において、実質的に非生分解性であることが好ましい。組成物が実質的に非生分解性である場合、この組成物は、例えば、長期塞栓療法又は組織のバルク化に使用され得る。このポリマーは、in vivo条件下又は擬似性条件下において、少なくとも2年間は分解されないことが好ましい。好適な試験方法を考案することもできる。生分解は、このポリマーの性質及び任意のクロスリンク又は他の誘導化の程度により影響されることが知られている。これらは、以下の記載に基づき、当業者が選択することができる。
本発明の組成物は、粒子中に吸水させる成分として水性液体のみを含有し得るが、この組成物は、粒子を懸濁するのに十分な量の連続水性媒体をさらに含有することが好ましい。水性液体は、必要に応じて生理学的なpHに緩衝化させた生理食塩水であることが好ましい。この組成物は、さらに調製しないで体内へ導入するのに適していることが好ましく、従って無菌であることが好ましい。この組成物は、例えばカテーテル又は皮下針を介した注射によって、体内へ直接投与することができる容器に提供され得る。
両性イオン基は、リン酸アンモニウム、リン酸ホスホニウム、もしくは、リン酸スルホニウム、又はリン酸エステル両性イオン基であることが好ましく、より好ましくは下記一般式IIの基であり、
式中、部分A及びAは、同じであるか異なり、−O−、−S−、−NH−、又は原子価結合、好ましくは−O−であり、Wは、アンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムカチオン基を含有する基、及び好ましくはC1〜12−アルカンジイル基であるアニオン及びカチオン部分を結合している基であり、Wは、式−W−N 、−W−P 、−W−S 、又は−W−Hetの基であることが好ましく、Wは、1つ以上のエチレン性不飽和二重もしくは三重結合、二置換アリール(アリーレン)、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、もしくはアルキレンアリールアルキレン、シクロアルカンジイル、アルキレンシクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、又はアルキレンシクロアルキルアルキレンを任意選択により含有する1つ以上、好ましくは2〜6個の炭素原子のアルカンジイルであり、基Wは、1つ以上のフッ素置換基及び/又は1つ以上の官能基を任意選択により含有し、基Rは、同じであるか異なり、各々は、水素又は1〜4個の炭素原子のアルキル、好ましくはメチル又はフェニルなどのアリールであり、あるいは基Rの2つは、それらが結合している窒素原子と一緒に、5〜7個の原子を含有する脂肪族複素環式環を形成し、あるいは3つの基Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、5〜7個の原子を有する複素芳香族環を形成し、それらの複素芳香族環のいずれかの環は、各環中に5〜7個の原子を含有する別の飽和環又は不飽和環と縮合して縮合環構造を形成することができ、任意選択により基Rの1つ以上は、親水性官能基により置換され、基Rは、同じであるか異なり、各々は、R又は基ORであり、Rは、先に定義された通りであり、Hetは、芳香族窒素、芳香族リン、又は芳香族硫黄、好ましくは窒素を含有する環、例えば、ピリジンである。
一般的には、式IIの基は、好ましくは下記一般式IIIを有し、
式中、基Rは同じであるか異なり、各々は水素又はC1〜4アルキルであり、mは1〜4であり、基Rは好ましくは同じであり、好ましくはメチルである。
ホスホベタインをベースとする基において、Xは、下記一般式IVを有することができ、
式中、Aは、原子価結合、−O−、−S−、又は−NH−、好ましくは−O−であり、Rは、原子価結合(Aと一緒に)、又はアルカンジイル、−C(O)アルキレン−、もしくはC(O)NHアルキレン、好ましくアルカンジイルであり、該アルカンジイル鎖中に1〜6個の炭素原子を含有することが好ましく、Wは、S、PR、又はNRであり、基R又は基Rは各々、水素又は1〜4個の炭素原子のアルキルであり、あるいは2つの基Rはそれらが結合しているヘテロ原子と一緒に5〜7個の原子の複素環式環を形成し、Rは、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子のアルカンジイルであり、Aは、結合、NH、S、又はO、好ましくはOであり、Rは、ヒドロキシル、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、C7〜18アラルキル、C7〜18−アラルコキシ、C6〜18アリール、又はC6〜18アリールオキシ基である。
一般式IVの基を含有する化合物において、Aは、結合であり、Rは、C2〜6アルカンジイルであり、Wは、NRであり、各々のRは、C1〜4アルキルであり、Rは、C2〜6アルカンジイルであり、Aは、Oであり、Rは、C1〜4アルコキシであることが好ましい。
あるいは、Xは、アニオンがスルフェート基、スルホネート基、又はカルボキシレート基を含有する両性イオンであり得る。
このような基の一例は、下記一般式XIのスルホベタイン基であり、
式中、基R36は同じであるか異なり、各々は水素又はC1〜4アルキルであり、sは2〜4である。
基R36は、同じであることが好ましい。基R36の少なくとも1つはメチルであることもまた好ましく、基R36は両方ともメチルであることがより好ましい。
sは、2又は3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
カルボキシレート基を有する両性イオン基の別の例は、(アミン基及びカルボン酸基が結合している)アルファ炭素原子が生体適合性ポリマーの骨格にリンカー基を介して結合しているアミノ酸部分である。このような基は、下記一般式XIIによって表すことができ、
式中、Aは、原子価結合、−O−、−S−、又は−NH−、好ましくは−O−であり、R37は、原子価結合(任意選択によりAと一緒に)、又は1〜6個の炭素原子を含有することが好ましいアルカンジイル、−C(O)アルキレン−、もしくはC(O)NHアルキレン、好ましくはアルカンジイルであり、基R38は同じであるか異なり、各々は水素又は1〜4個の炭素原子のアルキル、好ましくはメチルであり、あるいは基R38の2つ又は3つは、それらが結合している窒素と一緒に、5〜7個の原子の複素環を形成するか、あるいは3つの基R38は、それらが結合している窒素原子と一緒に、各環中に5〜7個の原子を含有する縮合環複素環式構造を形成する。
カルボキシレート基を有する両性イオンの別の例は、カルボキシベタイン−N(R39(CHCOOであり、式中、R39基は同じであるか異なり、各々は水素又はR1〜4アルキルであり、rは、2〜6、好ましくは2又は3である。
両性イオン基は、コーティング材料の成分であり得るか、又はポリマーが非両性イオン含有ポリマーで形成されるポリマーマトリクスの表面に結合し得る。例えば、コーティングは、マトリクスポリマーの表面上へ吸収されるポリマーを含有し得る。このようなコーティングは、例えば、表面に共有結合することにより、あるいはコーティングがポリマーを含有する場合には表面でクロスリンクすることにより、使用条件下で安定でなければならない。あるいは、このポリマーはマトリクスポリマーと静電結合することができる。両性イオン基は、マトリクスポリマー上の基であり得るか、あるいはマトリクスポリマーの1つであり得る。例えば、このマトリクスポリマーは、両性イオン基を含有するポリマー及び両性イオン基を含有するポリマーとは異なる第2のポリマーのブレンドであり得る。
一般的に、この両性イオン基は、下記一般式Iのモノマーを含むエチレン性不飽和モノマーから形成されるマトリクスポリマー又はコーティングポリマーのいずれかのポリマー上のペンダント基であり、

YBX I

式中、Yは、HC=CR−CO−A−、HC=CR−C−A−、HC=CR−CH、RO−CO−CR=CR−CO−O、RCH=CH−CO−O−、RCH=C(COOR)CHCO−O、
から選択されるエチレン性不飽和基であり、Aは、−O−又はNRであり、Aは、結合、(CH、及び(CHSO−から選択され、Iは、1〜12であり、Aは、結合、−O−、O−CO−、CO−O、CO−NR−、−NR−CO、O−CO−NR−、NR−CO−O−から選択され、Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、Rは、水素、C1〜4アルキル、又はBXであり、Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、Bは、結合、又は1つ以上のフッ素置換基を任意選択により含有する直鎖または分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキサルキレン)基であり、Xは、両性イオン基である。
一般式Iの両性イオンモノマーにおいて、エチレン性不飽和基Yは、HC=CR−CO−A−であることが好ましいこのようなアクリル部分は、メタクリルであることが好ましく、すなわち、式中、Rがメチルであるか又はアクリルであり、すなわち、式中、Rは水素であることが好ましい。化合物は、(メタ)アクリルアミド化合物(式中、AはNRである)であり、この場合、Rは水素であることが好ましく、メチルはあまり好ましくなく、化合物がエステル、すなわち、式中、AがOであることがで最も好ましい。
一般式Iのモノマーにおいて、Yが好ましい(アルク)アクリル基である場合は特に、Bがアルカンジイル基であることが最も好ましい。このような基の水素原子のいくつかをフッ素原子で置換することができる場合、Bは無置換アルカンジイル基であることが好ましく、2〜6個の炭素原子を有する直鎖基であることが最も好ましい。
式中のXが一般式II(ただし、式中、Wは、W である)で表されるモノマーは、本発明者らの先の明細書WO−A−9301221に記載の通りにして製造することができる。ホスホニウム及びスルホニウムアナログは、WO−A−9520407及びWO−A−9416749に記載されている。
一般式IV基を含有するモノマーは、アミノ置換モノマーとホスホランとを反応させるJP−B−03−031718に記載の方法によって製造することができる。
特に好ましい両性イオンモノマーは、2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウムエチルリン酸内部塩である。
エチレン性不飽和モノマーはコモノマー、例えば、下記一般式Vの化合物をさらに含有することができ、
式中、R10は、水素、ハロゲン、C1〜4アルキル、及び基COOR14から選択され、R14は、水素及びC1〜4アルキルから選択され、R11は、水素、ハロゲン、及びC1〜4アルキルから選択され、R12は、水素、ハロゲン、C1〜4アルキル、及び基COOR14から選択されるが、但し、R10及びR12は両方ともCOOR14ではなく、R13は、C1〜10アルキル、C1〜20アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−(C1〜20アルキル)アミノカルボニル、C6〜20アリール(アルカリールを含む)、C7〜20アラルキル、C6〜20アリールオキシカルボニル、C1〜20−アラルキルオキシカルボニル、C6〜20アリールアミノカルボニル、C7〜20アラルキル−アミノ、ヒドロキシル、又はC2〜10アシルオキシ基であり、それらはいずれも、ハロゲン原子、アルコキシ、オリゴ−アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アミン(モノアルキルアミノ及びジアルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含む、ただし、アルキル基は置換されていてもよい)、カルボキシル、スルホニル、ホスホリル、ホスフィノ、(モノアルキルホスフィン及びジアルキルホスフィンならびにトリアルキルホスホニウムを含む)、両性イオン、ヒドロキシル基、ビニルオキシカルボニル及びその他のビニル置換基又はアリル置換基、ならびにトリアルコキシシリル基などの反応性シリル又はシリルオキシ基から選択される1つ以上の置換基を有していてもよく、あるいはR13及びR12又はR13及びR11は一緒に、−CONR15COを形成し、R15は、C1〜20アルキル基である。
基R10、R11、R12、及びR13の少なくとも2つはハロゲンであることが好ましく、又は水素原子であることがより好ましい。R10及びR11は両方とも水素原子であることが好ましい。一般式Vの化合物は、スチレンをベースとする化合物又はアクリルをベースとする化合物であることが特に好ましい。スチレンをベースとする化合物において、R13は、アリール基を表し、特に置換基がアミノアルキル基、カルボキシレート基、又はスルホネート基である置換アリール基を表す。コモノマーがアクリルタイプの化合物である場合、R13はアルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、又はアリールオキシカルボニル基である。このような化合物において、R13は、ヒドロキシ置換基を任意選択により有するC1〜20−アルコキシカルボニル基であることが最も好ましい。アクリル化合物は、一般に、式中のR12がメチルであるメタクリルである。
コモノマーは、例えば、C1〜24アルキル(アルク)−アクリレートもしくはアクリルアミド、モノヒドロキシ−C1〜6−アルキル(アルク)−アクリレートもしくはジヒドロキシ−C1〜6−アルキル(アルク)−アクリレート、又はアクリルアミド、オリゴ(C2〜3アルコキシ)C2〜18−アルキル(アルク)−アクリレート、又はアクリルアミド、アクリルアミドスチレン、酢酸ビニル、又はN−ビニルラクタムなどの非イオン性コモノマーであることが好ましい。
両性イオン基がマトリクスポリマー上のコーティングの形態である場合、例えば本発明者らの先の出願WO93/05081号に記載されるグラフト重合プロセスのようにして、マトリクスポリマーの存在下でエチレン性不飽和モノマーの重合を行うことができる。あるいは、両性イオンモノマーを含有するモノマーを予めポリマーに形成し、次いで、一般的には予め形成されたマトリクスポリマーの表面上にコーティングすることによってマトリクスポリマーと一体化することができる。コーティングポリマーとしての使用に好適であり、かつ、両性イオン基を含有する安定な結合ポリマーは、本発明者らの先の出願WO93/01221に記載されている。
両性イオン基がマトリクスポリマー上にある場合、マトリクスポリマーは、両性イオン基を含有するポリマーのみからなることができるか、あるいは両性イオン基を含有するポリマーと第2の異なるポリマーとの混合物を含有することができる。この第2のポリマー及び両性イオン基を含有するポリマーは、重合後混合することができるか、あるいは互いにクロスリンクさせてもさせなくてもよい。ポリマーの一方は、他方の予め形成されたポリマーの存在下で重合することによって形成することができる。両性イオン基を含有するポリマーとその他のポリマーとのブレンドの例は、WO−A−9414897に示され、適切な水吸収性、水不溶性、及び圧縮性を有するブレンドは、その文書に記載されるブレンドから選択され、粒子へと形成することができる。多イオン複合体は、ブレンドとみなすことができる。
マトリクスポリマーは、実質的にクロスリンクされていなくてもよい。例えば、ある割合の疎水性部分を有するポリマーは、このような部分の存在によって水不溶性となることができるが、それにも関わらず、水性液体を吸収することができ、本発明において有用となる。このようなマトリクスポリマーは、例えば、アルキル(アルク)−アクリレートもしくはアクリルアミド、又はあまり好ましくはないがスチレンなどの疎水性モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーで形成することができる。しかしながら、マトリクスポリマーはクロスリンクしていることが好ましい。これによって、十分な機械的安定性、水膨潤性、及び粘着性を有する粒子の形成が可能になり、本発明において有用となる。クロスリンクは静電的であってもよい。例えば、一方の極性の電荷をいくつか有するポリマーは、対イオンによって荷電された2価以上のクロスリンク剤、一般的には、極性が反対のペンダント電荷を有するポリマーを用いてクロスリンクしていてもよい。対イオンによって荷電されたポリマーのブレンドを多イオン複合体と称することができる。
静電的にクロスリンクしたポリマーマトリクスの特定の一実施態様は、ペンダント両性イオン基及びペンダントアニオン基又はカチオン基を有する第1のポリマー、ならびに、場合に応じて全体のカチオン電荷:アニオン電荷の比が2:1〜1:2の範囲となるような量でブレンドされたペンダントカチオン基又はアニオン基を有する第2のポリマーで形成された多イオン複合体である。アニオン電荷及びカチオン電荷のレベルは、ポリマーの反復単位をベースとして5〜100%の範囲であることが好ましい。溶媒の存在下で2つのポリマーを合わせてブレンドを形成し、次いで溶媒を除去することにより、このような多イオン複合体を形成することができる。水膨潤性かつ水不溶性のブレンドの形成に適切である好適なプロセスは、本発明者らの先の出願番号WO00/29481に記載されている。
マトリクスポリマーは共有結合によりクロスリンクしていることが好ましいが、この理由は、このような粒子はより高い機械的な安定性を有しているためである。マトリクスポリマーがエチレン性不飽和モノマーから形成される場合、クロスリンクは、重合プロセス中にクロスリンクを形成するジエチレン性不飽和モノマー又は多エチレン性不飽和モノマーをエチレン性不飽和モノマー中に含有させることによってでもよい。多価クロスリンク剤は、末端を有するポリマー、好ましくはペンダントエチレン性不飽和基を有するポリマーであるマクロマーであってもよい。クロスリンクモノマーを有する両性イオンモノマー及び非イオン性コモノマーを重合することによって形成され、かつ、本発明において使用される粒子を形成するのに好適であるクロスリンクしたポリマーは、WO−A−92に記載されている。あるいは、エチレン性不飽和モノマーは、重合工程中、より好ましくは重合工程に続いて、分子間クロスリンクを形成することが可能なペンダント官能基を有する1つ以上のモノマーを含有してもよい。このような官能性モノマーは、本発明者らの先の国際公開公報WO93/01221又はWO98/30615において、基底を成す表面と共有結合を形成することができるもの又は分子間クロスリンクを形成することができるものである定義されるもであれば任意のものでよい。
上述した通り、市販の粒子状塞栓療法用組成物は、クロスリンクしたポリビニルアルコール粒子を含有する。ドリバロン(Drivalon)の商用名で市販されている製品は、水性液体の存在下で膨潤する球状粒子を含有すると言われ、このマトリクスポリマーはアルデヒドによってクロスリンクしたポリビニルアルコールである。別のタイプの製品は、不規則な外部形状を有し、かつ、大きさが乾燥状態と吸水状態との間でほとんど変化することない発泡ポリビニルアルコールを含有する。この場合においても、ポリビニルアルコールは、例えば、グルタルアルデヒドなどのアルデヒドでクロスリンクしていると考えられている。別のポリビニルアルコールをベースとする粒子状組成物は、WO01/68720に記載されている。この粒子は、エチレン性不飽和ペンダント基の結合によって修飾された予め重合されたポリビニルアルコールをクロスリンクすることによって形成される。ペンダント基を形成するための反応は、先の米国出願公開第5508317号及び共通の優先権によるこれに関連する公表物に記載されている。エチレン性不飽和ペンダント基がラジカル開始反応によってクロスリンクして、この反応により、付加反応が分子間のエチレン性不飽和基の間で行われ、ポリビニルアルコールが水不溶性となるが水膨潤性にもなる。バルク固体としてクロスリンク生成物を粉砕することによるか、あるいは誘導体化ポリビニルアルコールを非溶媒中に分散してクロスリンクが開始される分散相を形成することによって粒子前駆体を形成するかのいずれかにより、粒子を形成することができる。この粒子は、非溶媒、例えば非極性有機溶媒から回収することができる。Thanoo et al, J. App. Biomat. (1991), 2, 67〜72に記載される方法により、分散相中でポリビニルアルコールのアルデヒドベースのクロスリンクを用いて粒子状材料を形成することもできる。
共有結合によりクロスリンクしたポリビニルアルコールは、予め形成した粒子を両性イオンを含有するコーティングポリマーでコーティングして安定なコーティングを形成することにより、両性イオン表面を備えることができる。コーティングプロセス及び好適なポリマーは、例えば、本発明者らの先の国際公開WO93/01221及びWO98/30615に記載されている。このコーティングは、吸水形態又は乾燥形態において予め形成されたクロスリンクポリビニルアルコール粒子を用いて実施してもよい。このコーティングは、粒子状形態における粒子(すなわち、粒子が懸濁されている連続液体媒体なし)を用いて実施してもよいし、あるいは、好ましくはコーティングポリマーを含有する液体懸濁媒体中で実施してもよい。好適な例を以下に記載する。
粒子状塞栓療法用組成物を形成するのに用いられている他のクロスリンクしたポリマーは、クロスリンクしたヒアルロン酸及び他の多糖類である。これらのポリマーはマトリクスポリマーとしても好適である。
本発明において、両性イオン基は表面に表出されていなければならず、そのことは、使用中に生物学的液体に暴露される表面が両性イオン基を保有していなければならないことを意味する。この両性イオン基の効果は、表面を非血栓形成性とすることである。従って、この表面は、一般的には、血栓形成性をもたらす成分に、具体的には両性イオン基を保有している血球自体に接触可能な表面である。ポリマーマトリクスが実質的に非多孔質である場合、すなわち、血液細胞又はましてや大きな生物分子によるアクセスができるほど十分に大きな孔を有していない場合、粒子は表面周辺上のみに両性イオン基を有してもよい。しかしながら、マトリクスが多孔質である場合、例えば、ポリビニルアルコールのスポンジタイプ材料である場合、さらに孔の表面も両性イオン基を備えている。従って、多孔質材料用のコーティングプロセスでは、コーティングが孔の表面上に沈着されるように、両性イオン基を含有するコーティング材料が孔の表面と接触することが可能にならなければならない。好適なプロセスを以下に例示する。
本発明において、両性イオン基がないこと以外は同様である表面と比較して、表面の血栓形成性を低減するように両性イオン基を備えた粒子によって塞栓を形成することができる組成物が製造されることは驚くべきことである。上述の通り、粒子状塞栓療法用組成物は、一つには粒子が循環中で留まる血栓を引き起こすゆえに、効果的であることが従来技術により示唆されている。通常の事象の過程において血栓が破壊される場合には、再疎通が起こるであろう。本発明によって、血栓溶解(自己分解)の際の早期の再疎通の影響を受けにくいより長く持続する塞栓を生成することが可能になる。
本発明の組成物のさらなる利点は、塞栓部位で任意の炎症性反応を最小にすることが期待されることである。これは、体の炎症性反応によって塞栓部位からそれらの面前に排出される従来技術の組成物で経験している問題を回避するはずである。これは、このような機構に起因する再疎通率を減少すると考えられている。
粒子は、例えば、マトリクスポリマー材料のバルク固体又はゲルを粉砕することによってあるいはマトリクスポリマーの小さな粒子を塊状又は顆粒状にすることによって形成された不規則な形状を有することができるが、粒子は実質的に球状の形状であることが好ましい。球状粒子では、移植部位での組織による炎症性反応又は他の副作用がより少ないと考えられている。
組成物中の粒子サイズは、意図する用途及び送達手段に基づいて選択される。例えば、組成物が塞栓療法に用いられる場合、塞栓形成される血管の直径に応じて粒子サイズを選択することができる。現在入手できる粒子状塞栓療法用組成物で知られている通り、施術者による使用のために組成物の範囲が与えられることが好都合であり、その各々は異なるサイズの範囲内の粒子を含有する。異なるメンバーの生成物におけるサイズは重複していてもよいのに対し、生成物内の粒子が単一プロセスで製造され、かつ、製造後にサイズに基づいて分離されることで、粒子サイズ間ではほとんど重複していないことが一般的には好都合である。
粒子の直径は、マルバーン・マルチサイザー(Malvern Multisizer)、デジタル画像分析、光学顕微鏡の使用を含む技術により、及び較正目盛り付レンズ(calibrated graticules)の使用により又は篩分けにより測定することができる。本発明の粒子は、例えば、吸収される生理食塩水を平衡状態にしたときに約40μmを上回るサイズを有する。すべての粒子は、十分に水を吸水させたときに100μmを上回る直径を有することが好ましく、例えば150μmを上回る直径を有する。粒子の最大サイズは最高で4000μmであることができ、実質的にすべての粒子は3000μm未満であることが好ましく、例えば最高で2000μmのサイズである。生成物の範囲が異なる粒子サイズを有する集団を含有する場合、好適なサイズの範囲は40〜100μm、100〜300μm、300〜500μm、500〜700μm、700〜900μm、900〜1200μm、1200〜1500μm、1500〜2000μm、及び2000〜2800μmである。
本発明は、治療又は診断のための動物投与用の組成物の製造において、本発明の第1の態様に関して上記に定義した粒子の使用をさらに提供する。
本発明のこの態様において、塞栓形成、例えば、子宮筋腫塞栓形成、腫瘍もしくは腫瘍切除部位周囲での血管の塞栓形成、拡張蛇行静脈もしくは精索静脈瘤の塞栓形成、動静脈奇形もしくは静脈奇形の塞栓形成、胃腸管出血の止血、瘻の塞栓形成、ならびに避妊目的でのファローピウス管及び精細管の塞栓形成方法において、この組成物を投与し得る。
好ましくはヒトである動物に投与される組成物は、連続液相のない膨潤したゲル粒子の形態であり得る。しかしながら、この組成物は、粒子を懸濁する連続水性液体を含有していることが好ましい。粒子は、例えば、膨潤した粒子と同じ密度(同種浮遊物)の連続水性相の使用によるか、連続相を粘稠にすることによるか、あるいは、例えば粒子をコーティングする安定剤の使用により、沈降に対して安定化することができる。動物への投与直前に、連続水性液体を乾燥又は一部吸水させた形態で供給された粒子に添加することができる。しかしながら、組成物は、使用可能な状態で提供されることが好ましく、従って一般的には無菌であり、この組成物を容器からカテーテル又は皮下針などによって直接投与することができる容器中に提供してもよい。
ポリマー組成物自体のいくつかは新規であってもよい。それらは、直接導入用以外の使用又は動物への投与に好適な組成物を構成するための使用を有していてもよい。本発明のさらなる態様によれば、水不溶性かつ水吸収性のポリマーのマトリクスであるコアを含有し、平衡状態で室温において生理食塩水を吸水させたときに40〜4000μmの範囲の直径を有し、かつ、その外部表面上に両性イオンを表出していることにより特徴づけられる新規なミクロスフィアを提供する。
いくつかの実施態様の新規な組成物の製造方法は、本発明の一部でもあり、特許請求の範囲の請求項30〜33に記載されている。
本発明のこの態様において、ミクロスフィアのサイズの分布は、最も小さい粒子の直径と最も大きい粒子の直径との間の相違が50μmと1000μmとの間であり、好ましくは100〜500の間であり、より好ましくは150〜300μmの間となるものである。異なるサイズ範囲を有する一連の集団はキットにおいて提供されてもよい。このようなキットにおける集団のサイズの範囲は、重複していても重複していなくてもよい。
このミクロスフィアは、治療又は診断による動物の治療方法における使用であることが好ましい。
動物に投与される組成物は、本発明の態様のいずれにおいても、用途に応じて選択される追加成分を含有してもよい。この組成物は、投与後の組成物位置のモニタリングを可能とする造影剤、例えば、放射線不透過剤又は核磁気共鳴造影剤を含有してもよい。この造影剤は粒子中で結合してもよいし、連続水性懸濁液に懸濁してもよい。例えば、動物被検体へ投与する前に、ビシペイク(Visipaque)、オムニペイク(Omnipaque)、リピオドール(Lipiodol)、又は他の市販の材料などの既知の放射線不透過造影剤を本発明の組成物と混合してもよい。この造影剤は非イオン性材料であることが好ましい。あるいは、この造影剤は、Benzina, A. et al., Biomat. (1994) 15(14) 1122-1128及びJ. Biomed. Mater. Res. (1996) 32(3), 459-466によって記載される通り、例えば、2−(2’−ヨードベンゾイル)メタクリル酸エチル又は2−(2’,3’,5’−トリヨードベンゾイル)メタクリル酸エチルなどのヨウ化モノマーを他のエチレン性不飽和モノマーと共重合することにより、マトリクスポリマー材料又はコーティングポリマーと共有結合させてもよい。あるいは、この造影剤は、例えば生成中に粒子が形成される成分によって分散させることにより、ポリマーマトリクスに共有結合せずに、ポリマーマトリクスを介して単に分散させてもよい。
さらに又はあるいは、この組成物は、この組成物中に薬物を存在させることができる。この薬物は、粒子を取り囲む水性連続相に懸濁してもよいし、及び/又はマトリクスポリマーと共有結合させることによるか、外部表面に共有結合又は静電結合させることによるか、あるいは疎水性ドメイン中に分配することにより、溶液中又は吸水させる水性液体中のいずれかの粒子内にあってもよい。薬物が粒子内にある場合、動物被検体への投与後により長い期間にわたってこの薬物を放出することができる。粒子状塞栓療法用材料を含有する薬物送達系は既知である。薬物をこのタイプの粒子状薬物送達系に組み入れる方法に関する汎用の一般知識及びこの薬物送達系からの放出を調節するための汎用の一般知識に基づき、当業者は本発明のこの実施態様を実施することができる。適切な薬物としては、例えば、抗生物質、血栓を形成することが望ましい場合には血栓形成剤、及び/又は例えば腫瘍の化学塞栓療法(chemoembolisation)用の細胞傷害薬又は細胞増殖抑止薬が挙げられる。薬物は、抗血管形成薬であってもよい。抗血管形成薬の送達に関するミクロスフィア送達系は、WO95/03036に記載されている。その明細書に記載される薬物のいずれも、本発明において特に腫瘍又は腫瘍切除部位の治療に用いることができる。
この組成物は、粒子塞栓療法の送達に現在使用されている器具を用いて投与される。この器具は、カテーテル又はシリンジに取り付けられた皮下針を含み得る。この器具は、送達される組成物の粒子サイズ及び粒子のエラストマー特性に応じて選択することができる。従って、送達中に組成物が流れる導管は、粒子が遮断されることなく通過できるサイズでなければならない。
水が吸収された形態の粒子は、投与されたときにある程度の弾性を有する。従って、この粒子に圧縮力が供される送達中に、この粒子は器具の導管内で変形することができる。粒子が規則的な形状を有している場合、特に実質的に球状である場合、このような任意の変形後にも粒子は回復しければならない。器具を介した送達の間、環境をシミュレートしようとする速度で膨潤形態の粒子に所定の圧力を施しながら圧縮の程度を測定する方法によって、弾性特性を調べることができる。この試験は弾性限界まで行うことができ、及び/又は圧力を取り除いて回復を測定することによって逆にすることができる。本発明者らは、粒子が、十分に水を吸水した場合、すなわち、生理食塩水で平衡化させた場合に、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%の水含量を有し、良好な弾性特性を有することを見出した。
付随の実施例において本発明をさらに例示する。
===参照実施例1:PC材料を用いた炎症の低減===
ヒト血液から得られる単核細胞の接着性を見るin vitro方法を用いて、PCをベースとする材料に対する潜在的な免疫応答を評価した。
36歳の健康な男性ボランティア(ドナーの格差に関連する問題を排除するために1人のドナー)から得られた24mLのヒト静脈血を、500μLの滅菌脱イオン水に溶解している12μgのヘパリン(シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)、プール、ドーセット州、英国)を含有する30mLのユニバーサル管(ビビー・スターリン社(Bibby Sterilin)、スタフォードシャー州、英国)中に回収した。次いで、ヒストペイク(Histopaque)1077(シグマ社、プール、ドーセット州、英国)を用い、製造者の方法論に従って血液分離を行った。ヘパリン化した血液を2つに分け、2つ清浄な一般的な遠心管中で、12.5mLのヒストペイク1077(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)上に注意深く層状にした。次いで、これらの管を室温(18〜26℃)において700gで30分間遠心した(デンレイ社(Denley)、BS400)。遠心分離後、単核細胞を含有する各管中の区別できる不透明/グレーの層を回収し、清浄な遠心管に移した。次いで、滅菌したPBS10mLを添加し、続いて室温において200gで10分間遠心分離することにより、細胞を洗浄した。遠心分離後、上清を取り除き、ペレット化した細胞をPBSに再懸濁し、次いで洗浄手順を2回繰り返した。洗浄後、最後に、10%ヒト血清、1%ペニシリン、及びストレプトマイシン(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)、ならびに1%L−グルタミン(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)を補足したRPMI1640培地(インビトロゲン社(Invitrogen)、ペイズリー(Paisley)、英国)10mLに細胞を再懸濁した。次いで、血球計数器(haemacytometer)を用いてこの細胞を計数した。
ポリ(エチレンテレフタラート)フィルムを、WO−A−9830615に記載の通りにして合成したモルで23:47:25:5の2−メタクリロイルオキシエチル−2’−トリメチルアンモニウムエチルリン酸内部塩(MPC):n−ドデシルメタクリレート:ヒドロキシプロピルメタクリレート トリメトキシシリルプロピルメタクリレートの4つのポリマーの5g/lのエタノール溶液でコーティングした。次いで、コーティングを乾燥し、加熱して、ポリマーを70℃の温度で一晩クロスリンクさせた。
次いで、総体積400μLの補足培地中で試験材料(ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)及びPCポリマーをコーティングしたPETを切断して1cmの試料としたもの)上に、1試料あたり2.5×10個の細胞で、細胞を直接に植えつけた。濃度は、細胞接着を良好な可視化が可能になるように十分に低く選択したが、細胞間の相互作用を最小にし、細胞凝集の形成が妨げられるように十分に希釈した。次いで、プレートを湿度インキュベーター(サンヨー(Sanyo)、ジェンコンス(Jencons)PLS、英国)中で37℃及び5%COにおいて一晩インキュベーションした。インキュベーション後、試料を滅菌PBSのアリコート0.5mLで3回洗浄した。次いで、接着した細胞を、室温において20分間、脱イオン水中で調製した4%(w/v)パラホルムアルデヒド(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)0.5mLを添加することによって固定した。次いで、試料を滅菌PBSのアリコート0.5mL中で再度3回洗浄した後、滅菌PBS中で調製した4%(w/v)BSA(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)0.5mLとともに室温において30分間インキュベーションした。次いで、試料を滅菌PBS0.5mLで3回洗浄した。
次いで、細胞をPBS中で調製した0.2%(v/v)Triton X-100(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)0.5mlを添加することによって透過化処理し、室温において8分間インキュベーションした。次いで、試料を上記の通りに滅菌PBS中で洗浄した。脱イオン水中で調製した9%(v/v)過酸化水素(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)0.5mLを各試料に添加し、4℃において一晩インキュベーションした。過酸化水素とともにインキュベーションした後、試料を滅菌PBS中で洗浄した。次いで、湿度チャンバー(滅菌PBS中に浸漬された濾紙(BDHラボラトリー・サプライズ社、プール、ドーセット州、英国)が並べられたペトリ皿(インビトロゲン社、ペイズリー、英国))中のパラフィルム片(BDHラボラトリー・サプライズ社(BDH Laboratory Supplies)、プール、ドーセット州、英国)の上に試料を置いた。
PBS中で1%FCS(インビトロゲン社、ペイズリー、英国)によって1:20希釈したCD68(マクロファージ特異的細胞表面受容体)一次抗体(ダコー社(DAKO)、ケンブリッジシャー州(Cambridgeshire)、英国)50μLを各試料に添加し、1時間室温でインキュベーションして、非特異的結合を阻害した。インキュベーション後、この試料をPBS40mL中に10回浸漬し、この浸漬プロセスをフレッシュなPBS中で2回繰り返した。次いで、高速染色キット(シグマ・アルドリッチ社、プール、ドーセット州、英国)をキットに同梱されている指示書に従って試料に適用し、ビオチン化二次抗体(緩衝生理食塩水中のヤギ抗マウス免疫グロブリン及び0.1%ナトリウムアジド)一滴(〜50μL)を各試料に添加し、室温において5分間インキュベーションした。次いで、試料を上記の通りにPBS中で洗浄した。
次いで、ペルオキシダーゼ試薬(緩衝生理食塩水中で共役されている)一滴(〜50μL)を各試料に添加し、室温において5分間インキュベーションした。試料を上記の通りにPBS中で洗浄し、基質試薬50μL(脱イオン水4mL、酢酸緩衝液(2.5M、pH5.0)2滴(〜100μL)、AECクロモゲン(N,N−ジメチルホルムアミド中の3−アミノ−9−エチルカルバゾール)2滴(〜100μL)、及び3%過酸化水素(脱イオン水中)1滴(〜50μL))を各々試料に添加した。次いで、試料をPBS中で再度洗浄し、最後に脱イオン水中で洗浄した後、ベクタシールド試料装着用物質(Vectasheild mountant)(ベクターラボ社(Vectorlabs)、ピーターバラ州(Peterborough)、英国)約20μLを用いて顕微鏡スライド上に備え付けた。接着性のマクロファージ及び単球細胞の数を光学顕微鏡(ラボールラックス(Laborlux)12、ライツ(Leitz)、ドイツ)を用いて倍率400倍の下で1視野あたりの計数を行った。1視野あたりの細胞の平均数は、1複製試料あたり30のランダムな視野から計数した。図1の結果は、倍率400倍の下で観察された1視野あたりの細胞の平均数(30の視野から得られたもの)及び18の複製試料から得られた標準誤差を示す。
PC1036と比較して有意により多くの数の単核細胞がPETに接着することが見い出された(スチューデントのt検定p<0.05、n=18)。
===参照実施例2:PC材料を用いた線維性被膜(fibrous capsule)の減少===
上記の参照実施例1で用いたクロスリンク可能なPCポリマーでコーティングしたステンレス鋼ロッドをウサギの筋肉内で移植し、線維性被膜形成をPEネガティブコントロール移植片から得られるものと比較した。13週目における移植片周囲での線維性被膜形成の統計分析によって、PCでコーティングした移植片ではカプセルが少なく、試料はしばしば成熟した脂肪組織によって取り囲まれていることが明らかになったが、このことはこの移植片が十分に寛容され、動物に許容されていることを示している(図2a及び図2b)。
カプセル形成のレベルを定義する従来のスコアリング方法を用いて、移植片を13週目で比較し(各々についてn=20)、PCコーティング試料及び対照試料ではそれぞれ0.25及び0.75のスコアを生じた(p=0.011)。PCコーティング試料では、13週目において存在するカプセルは有意に少なかった。
PCを用いて塞栓形成剤を修飾することにより、血栓形成の予防だけではなく(PC材料に対しては周知であり、広範に報告されている)、作用物質に対するより長期の炎症応答の減少も助けられるので、参照実施例1及び2で行った観察は本発明の特許請求の範囲の記載を裏付けている。
===実施例1:クロスリンクしたPCポリマーヒドロゲル塞栓形成粒子の調製===
参照実施例1で用いたポリマーとしての成分を有するクロスリンク可能なPCポリマーをWO−A−9830615で概説した通りに調製して単離し、アセトン中に沈殿させて回収した。回収した材料をオーブン中で70℃において4時間乾燥させクロスリンクさせた。一連の篩(クリスティソン社(Christison)、ゲーツヘッド(Gateshead)、英国、63〜830μm、ステンレス鋼、直径200mm)を用いて、粒子状材料をサイズ範囲に分けた。粒子が室温において水中で水和して平衡した場合、この粒子は50〜55%の範囲の水含量に達した。
図3の顕微鏡写真は、180〜355μmの範囲の篩分けされたサイズ(乾式篩分け)を有する乾燥試料及び水和した粒子の試料を示している。水和した粒子の水含量は、それらを生理食塩水中で室温において24時間水和することにより決定した。水和した粒子の試料をブロッティングし、乾燥し、次いで重量測定した。次いで、粒子をオーブン中で100℃において1時間乾燥し、再び重量測定した。重量の違いは、報告した平衡水含量である。本実施例の粒子は、50〜55%の平衡水含量を有していた。
===実施例2:クロスリンクしたPCポリマーヒドロゲル塞栓形成粒子の調製===
WO92/07885に一般的に記載されている通り、MPCが約7モル%で存在し、クロスリンク剤は約0.5モル%の量で存在する、エチレングリコールジメタクリレートとクロスリンクした2−ヒドロキシ−エチルメタクリレート中のMPCの溶液のバルク共重合により、代替のクロスリンクしたPCポリマーを調製した。バルクキセロゲル材料を粉砕して粒子とし、実施例1で記載した篩分け技術を用いてサイズ分けした。図4は、特定の開口の篩上で保持されているキセロゲル粒子(すなわち、水中で平衡化する前)の顕微鏡写真を示している。粒子は水和したときに急速に膨潤し、約60%の水含量に達した。
===実施例3:塞栓療法用のPCをベースとするミクロスフィアの調製===
エチルセルロース(エトキシ含量48%、アルドリッチ社)0.25gを500mlの攪拌反応容器中のジクロロメタン100g及びヘキサン50gの溶液に添加した。溶液を窒素で脱酸素化し、攪拌速度を250rpmに調整した。
別の容器中では、ジメチルアクリルアミド(アルドリッチ社)17.5g、メチレンビスアクリルアミド(アルドリッチ社)0.125g、及び蒸留水45.0gで溶液を構成した。この溶液にMPC7.5g及び過硫酸アンモニウム(アルドリッチ社)0.125gを添加した。次いで、この透明な水溶液を攪拌反応容器に添加した。
テトラメチルエチレンジアミン(アルドリッチ社)0.25gの添加前に、全ての内容物をさらに10分間脱酸素化した。重合が完了した後(約10℃の発熱)、反応容器の内容物を約2mmの篩を通して注ぎ、濾過によって球状粒子を溶媒から除いた。この粒子をアセトン及び蒸留水でさらに数回洗浄し、蒸留水中で保存した。370μm〜810μmの範囲で次第に減少していく開口を有する一連の篩を用いた湿式篩分け法を用いて、粒子をサイズ範囲に分けた。図5a〜図5cは、この方法により生じたいくつかの代表的な球状体を示し、図に示したマイクロメートルのサイズは粒子が保持されている篩の開口である。これらの顕微鏡写真においてそれらをより効果的に可視化するため、球状体をエオシンY又はリアクティブ・ブルー(Reactive Blue)などの種々の染料で染色した。水溶液中の水溶性の染料をポリマーで好適な期間コーティングし、次いで必要な場合には染料上の反応性基及びポリマーに適合する条件を施すことによって固定する。
===実施例4:UVクロスリンク法によるPCをベースとするミクロスフィアの調製===
1wt%アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤として用いて、エタノール中の30wt%MPC、50wt%ラウリルメタクリレート、10wt%ヒドロキシプロピルメタクリレート、及び10wt%アリルメタクリレートを含有するモノマー枯渇フリーラジカル重合技術により、ポリマーを合成した。この溶液をアセトン中に沈殿させると85%の白色ポリマーを生じ、これを真空中において一晩室温で乾燥させた。
ポリマー7.5g及びダロキュア(Darocure)UV開始剤0.1gを激しく攪拌しながらクロロホルム100gに溶解させた。250mlの丸底容器をオーバーヘッド攪拌器に備え付け、脱イオン水230mlを満たして過剰な渦が形成されることを回避した。攪拌水(150rpm)にポリマー溶液5gを添加すると、この溶液は直ぐに乳化して液滴を形成した。ポリマー溶液の粘性は、形成される球状の液滴のサイズ及び質の決定に非常に重要である。すべてのポリマー溶液を完全に添加したときに、UVランプのスイッチを入れ、容器を10分間照射した。得られた液滴は、アリルペンダント基をラジカル重合して、クロスリンクPCポリマー球状体(spheroids)にすることによるラジカル重合によって重合し、該球状体を篩分けして300〜900μmの範囲のサイズの試料を回収した。600μmの開口篩上で収集した球状体を図に示す。
===実施例5:PCをベースとする多イオン複合体塞栓形成粒子の調製===
ポリマーをWO−A−0029481で概説した方法に従って調製した。以下の式のアニオンポリマー及びカチオンポリマーを調製し、純水に溶解して、各々17.5wt%溶液を生成し、続いてこの溶液を1:1の体積で十分に混合し、同じwt%組成物のPC多イオン複合体(PIC)ゲルを得た:LMAは、ラウリルメタクリレート(n−ドデシル)メタクリレートであり、DMAは、N,N−ジメチルアクリルアミドである。カチオノマー:MPC25LMA15TEM60(TEM=コリンメタクリレートクロライド、Mw207)、アニオマー:MPC30DMA10SSS60(SSS=スチレンスルホン酸ナトリウム、Mw207)。
ゲルを120℃で一晩脱水し、得られたキセロゲルをある範囲の粒子サイズに粉砕した。実施例1で先に記載した通りに、粒子を篩分けによってサイズ範囲に分けた。図7は、分離後のキセロゲル粒子の顕微鏡写真を示し、この粒子は特定の開口サイズの篩上で保持されているものである。
粒子は水に暴露したときに急速に膨潤する。数時間後、粒子は一部合着して約70%の水含量を有するゲルとなるのが見て取れる。図8は、合着したゲル及び各キセロゲルの顕微鏡写真を示している。このタイプのヒドロゲルでは、穏やかに攪拌したときにデアグロメレーションが起こらないよう、キセロゲルを使用直前に水和し、かつ、ゲルが合着する前に組成物を送達することが必要である。
===実施例6:塞栓形成用のPCコーティングPVA発泡粒子===
参照実施例1に記載されたクロスリンク可能なポリマーの20wt%クロロホルム溶液中に、平均サイズ1000ミクロンのポリビニルアルコール(PVA)発泡粒子(コック社(Cook Inc.)、米国)を置いた。数分後、この溶液をデカントし、粒子を空気乾燥して溶媒を除去した。この粒子を70℃のオーブン中に置いてコーティングの硬化を行った。図9は、コーティング塗布前後の粒子の目視比較を示している。粒子のサイズ及び形状は実質的に変わっていないが、コーティングは幾分目に光る表面を読み取れる。
図10は、コーティングしていないPVA発泡粒のFT−IRスペクトルをPC−コーティングしたPVA発泡粒子のものと比較している。1729cm−1での追加の強度のピークは、メタクリレートPCポリマー中のエステル結合のカルボニルに特徴的なものであり、967cm−1及び789cm−1での他のシグナチャーピークは、ポリマーに特徴的なものであり、PVAに固有のものではないことに留意しなければならない。このことによって、PCポリマーによるPVA粒子のコーティングが実に上手くいったことが実証された。
===実施例7:塞栓形成用のPCコーティングPVAゲル球状体===
吸取り紙上に詰め物をして乾燥したが脱水されていないPVAゲル球状体(バイオキュア社(Biocure Inc)がWO−A−0168720の実施例2に従って製造したがアニオンコモノマーを含んでおり、膨潤したミクロスフィアを懸濁する連続水性液体を伴った水性組成物として供給される)を用いて、実施例6と同じ手順を繰り返した。コーティングを上記の通りにクロスリンクさせると、ゲル球状体の水和サイズが硬化工程中に約10分の1に縮小するのが観察された。脱水された球状体のFT−IRは、塗布されたPCコーティングに特徴的なカルボニル伸縮の存在を示している(図11)。コーティングした球状体は、水和したときにその元の寸法及び形状を回復していることが認められた。
===実施例8:ヒツジ肺モデルにおけるPCをベースとするミクロスフィアを用いた塞栓形成の評価===
実施例3に記載の通りに合成したPCをベースとするミクロスフィアを、短期ヒツジ肺塞栓形成モデルにおいてPVA粒子(コック社)と比較して評価した。
====材料及び設備====
(i)動物:3匹の妊娠していない成体Pre−Alpesヒツジ
i. 体重範囲40〜60kg
(ii)PC球状体(実施例3に記載の通り)
(iii)PVA粒子(コック社)
(iv)クオシナ(Qosina)又はBDHポリプロピレンシリンジ及び三方向連結具
(v) ビシペイク(Visipaque)320造影剤
(vi)テルモ社レッジエーロ(Terumo Leggiero)診断用カテーテル
PC球状体を青色に染色し、5mlのシリンジ中でPBS(インバークライド社(Inverclyde))に懸濁し、蒸気滅菌によってインハウスで滅菌した。PVA粒子は滅菌して供給した。各注入前に混合物を攪拌して均一な粒子懸濁液を維持した。混合物を合わせて、最大の直径3‐Fのマイクロカテーテルに注入した。テルモ社レッジエーロマイクロカテーテルは、比較的大きな内腔直径であるため好ましい。
====方法及び手順====
(i)麻酔
ヒツジには手順を行う前24時間は食事を与えなかった。体重1kgあたり15mgのチオペンタールナトリウム(ネスドナル社(Nesdonal);スペシア・ローヌ−プーランク(Specia Rhone−Poulenc)、パリ、フランス)の筋内注入によって麻酔を行った。各動物を背臥位に配置し、挿管し、1.5%ハロタン(トルフィールス社(Trofiels)ツーク、スイス)及び98.5%酸素(CFPO社、パリ、フランス)の混合物で麻酔し、ユニット(ロジック0.5;オーメダ社(Ohmeda)、スティートン(Steeton)、イングランド)で酸素供給した。呼気終末(End−tidal)COレベルを連続的に測定し、モニター(N1000;ネルコール社(Nellcor)、プレザントン、カリフォルニア州)により26mmHと36mmHとの間で維持した。95%より高いレベルで維持された末梢動脈酸素飽和を耳に付けられた探針によりモニタリングした。本手順の間、心電図を用いて各動物を連続的にモニタリングした。
(ii)塞栓形成手順
静脈大腿手法(venous femoral approach)を用いて、塞栓形成を行った。4‐F又は5‐Fの誘導針(introducer)のシースを大静脈中に置いた。心臓の右の腔へ大静脈の逆行性カテーテル挿入を行い、肺動脈の近位のカテーテル挿入を行った。5‐Fの誘導カテーテルを導入し、肺動脈分枝の非常に選択的なカテーテル挿入を行った。対照の血管造影図をとり、続いて粒子のフリーフロー中で塞栓形成する(造影剤と混合する)。繰り返し選択的な対照の血管造影図をとり、続いて非常に選択的に塞栓形成する。球状体/粒子を各々注入した後、カテーテルを食塩水2.5mlでパージした。血管造影図による評価で近位の動脈流が減少したとき、塞栓形成を停止した。各試料に対して、同じ終点の塞栓形成を用いた。
====即時評価====
以下の評価を直ぐに行った:
適用及び操作の容易性、塞栓形成の有効性(血管造影図による評価:閉塞レベル、動脈閉塞の程度)、終点、注入された球状体/粒子の体積、血管の塞栓形成時間、塞栓形成時の還流又は副作用、動物の体重(含入時にすべての動物に対して体重測定する)。
====結果====
PCミクロスフィア及びPVA粒子は両方とも、血管において効果的に塞栓を形成した。PVAは血管内で凝集してより近位での閉塞を生成する傾向があったのに対し、PCミクロスフィアはより遠くまで移動した。PVA粒子はカテーテル内で集塊及び凝集する傾向を有していたのに対し、圧縮性PCミクロスフィアは送達に関する問題はなかった。両方とも塞栓形成剤に対して許容できる形式で扱った。観察するのが容易である造影剤を用いて、同種浮遊混合物を保持する青色のPCミクロスフィアがシリンジ中に容易に見られた。PC球及びPVA粒子の両方とも、塞栓形成に対して許容し得る終点を生じた。
====組織病理学====
7日後に動物を屠殺し、塞栓形成された肺組織の断面図に対して病理学的な評価及び組織学的な評価を行った。直接10%中性緩衝化ホルマリンを気管内注入し浸漬し、2週間ホルマリンで染色することによって肺を固定した。種々の肺領域において肉眼による検査を行った。試料を一連のアルコール中で脱水し、キシレン中に設置し、パラフィン中に包埋し、3〜4μmの切片にした。各切片を顕微鏡スライド上に備え付け、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色によって染色し、光学顕微鏡下で調べた。PC球状体とPVA粒子との比較によって、PCミクロスフィアでは変わった組織反応がないことが示された。図12は、PC微小球状体及びPVA粒子を含有する塞栓形成血管由来の断面図を示している。
図12における断面図は、PC微小球状体の球形度及び如何にしてそれが血管の生来の形状に合致し維持するかを明らかにする。これは、粒子と組織との間のいくつかの空間が血栓で満たされている不規則な形状のPVA粒子とは対照的である。
図1〜図12まで説明なし。

Claims (29)

  1. 水不溶性かつ水吸収性のポリマーマトリクスであるコアを含有し、室温において平衡状態で生理食塩水を吸水させる場合、40〜4000μmの範囲の直径を有し、少なくとも30重量%の水含量を有するミクロスフィアであって、前記ポリマーマトリクスは下記一般式Iのモノマーを含有するエチレン性不飽和モノマーから形成されることを特徴とする、ミクロスフィア。
    YBX (I)
    (式中、Yはエチレン性不飽和基HC=CR−CO−A−であり、
    Aは−O−または=NRであり、
    Rは水素またはC1〜4アルキルであり、
    は水素、C1〜4アルキル、またはBXであり、
    Bは直鎖または分岐アルカンジイルであり、
    Xは下記一般式IIIの両性イオン基であり、
    は同じであるか異なり、各Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、mは1〜4である。)
  2. 生理食塩水を十分に吸水させる場合、少なくとも50重量%の水含量を有することを特徴とする、請求項1に記載のミクロスフィア。
  3. 前記ポリマーマトリクスが実質的に非生分解性であることを特徴とする、請求項1または2に記載のミクロスフィア
  4. 無菌であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のミクロスフィア
  5. 式中、該基Rは、同じであることを特徴とする、請求項4に記載のミクロスフィア
  6. 該基Rは、メチルであることを特徴とする、請求項5に記載のミクロスフィア
  7. 式中、Rは、水素又はメチルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のミクロスフィア
  8. 式中、Aは、O又はNHであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のミクロスフィア
  9. 前記エチレン性不飽和モノマーが、下記一般式Vのコモノマーをさらに含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のミクロスフィア
    (式中、R10は、水素、ハロゲン、C1〜4アルキル、及び基COOR14から選択され、
    14は、水素及びC1〜4アルキルから選択され、
    11は、水素、ハロゲン、及びC1〜4アルキルから選択され、
    12は、水素、ハロゲン、C1〜4アルキル、及び基COOR14から選択され、但し、R10及びR12は両方ともCOOR14ではなく、
    13は、C1〜10アルキル、C1〜20アルコキシカルボニル、モノ−(C1〜20アルキル)アミノカルボニルもしくはジ−(C1〜20アルキル)アミノカルボニル、C6〜20アリール(アルカリールを含む)、C7〜20アラルキル、C6〜20アリールオキシカルボニル、C1〜20−アラルキルオキシカルボニル、C6〜20アリールアミノカルボニル、C7〜20アラルキル−アミノ、ヒドロキシル、又はC2〜10アシルオキシ基であり、それらはいずれも、ハロゲン原子、アルコキシ、オリゴ−アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アミン(モノアルキルアミノ及びジアルキルアミノならびにトリアルキルアンモニウムを含み、アルキル基は置換されていてもよい)、カルボキシル、スルホニル、ホスホリル、ホスフィノ、(モノアルキルホスフィン及びジアルキルホスフィンならびにトリアルキルホスホニウムを含む)、両性イオン、ヒドロキシル基、ビニルオキシカルボニル及びその他のビニル置換基又はアリル置換基、ならびにトリアルコキシシリル基などの反応性シリル基又はシリルオキシ基から選択される1つ以上の置換基を有していてもよく、あるいは、
    13及びR12又はR13及びR11は一緒に、−CONR15COを形成し、R15は、C1〜20アルキル基である。)
  10. 前記コモノマーが非イオン性コモノマーであることを特徴とする、請求項9に記載のミクロスフィア
  11. 前記コモノマーがC1〜24アルキル(アルク)−アクリレートもしくは−アクリルアミド、モノヒドロキシ−もしくはジヒドロキシ−C1〜6−アルキル(アルク)−アクリレートもしくは−アクリルアミド、オリゴ(C2〜3アルコキシ)C2〜18−アルキル(アルク)−アクリレートもしくは−アクリルアミド、アクリルアミドスチレン、酢酸ビニル、又はN−ビニルラクタムであることを特徴とする、請求項10に記載のミクロスフィア
  12. 前記ポリマーマトリクスが、共有結合によりクロスリンクしていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のミクロスフィア
  13. 前記マトリクスポリマーが、二価以上のエチレン性不飽和モノマーを含有するエチレン性不飽和モノマーから形成されることを特徴とする、請求項12に記載のミクロスフィア
  14. 共有結合を形成させるために分子間反応が起こる条件が供される予め形成されたポリマー上の官能基の反応によって、共有結合によるクロスリンクが行われることを特徴とする、請求項12に記載のミクロスフィア
  15. 前記マトリクスポリマーが、ポリビニルアルコールをベースとすることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載のミクロスフィア
  16. 前記ポリビニルアルコールが、ラジカル重合によるペンダントエチレン性不飽和クロスリンク基の反応によりクロスリンクすることを特徴とする、請求項15に記載のミクロスフィア
  17. 塞栓を形成するための薬剤であって、
    前記薬剤は請求項1〜16のいずれかに記載のミクロスフィアを含有することを特徴とする薬剤
  18. 前記薬剤は前記ミクロスフィアを懸濁するのに十分な量の連続水性媒体を含有することを特徴とする、請求項17に記載の薬剤。
  19. 前記ミクロスフィアが実質的に球状であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の薬剤。
  20. 十分に水を吸水させる場合、前記ミクロスフィアの直径が150〜3000μmの範囲であることを特徴とする、請求項17〜19のいずれかに記載の薬剤。
  21. 穏やかな攪拌で前記ミクロスフィアが再分散しない範囲で、該ミクロスフィアが合着しないような室温で貯蔵上安定であることを特徴とする、請求項17〜20のいずれかに記載の薬剤。
  22. 子宮筋腫塞栓形成、腫瘍もしくは腫瘍切除部位周囲における血管の塞栓形成、拡張蛇行静脈もしくは精索静脈瘤の塞栓形成、動静脈奇形もしくは静脈奇形の塞栓形成、胃腸管出血の止血、瘻孔の塞栓形成、又は避妊目的でのファローピウス管もしくは精細管の塞栓形成のために前記組成物を投与することを特徴とする、請求項17〜21のいずれかに記載の薬剤。
  23. 請求項1〜16に記載のミクロスフィアの複数の集団を各々別の容器に含有するキットであって、該集団は、ミクロスフィアの直径の範囲で異なっていることを特徴とするキット。
  24. 室温において平衡状態で生理食塩水を吸水させる場合、前記ミクロスフィアの集団の各サイズの範囲が50〜1000μmであることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
  25. 異なる前記集団の直径が、実質的に互いに重複していないことを特徴とする、請求項24に記載のキット。
  26. 下記一般式Iの両性イオンモノマーと、液状モノマー混合物として混和性コモノマーとを含むエチレン性不飽和モノマーが連続液体溶媒中に分散して分散相を形成する工程、
    開始剤を添加して該分散相中でラジカル重合を開始する工程、
    及び該分散相にミクロスフィアの形状のポリマーマトリクスを製造する工程、
    前記ミクロスフィアを回収する工程
    を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載のミクロスフィアを製造する方法
    YBX I
    (式中、Yは、エチレン性不飽和基HC=CR−CO−A−であり、
    Aは、−O−又はNRであり、
    Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、
    は、水素、C1〜4アルキル、又はBXであり、
    Bは、直鎖または分岐アルカンジイルであり
    Xは、下記一般式IIIの両性イオン基であり、
    は同じであるか異なり、各Rは、水素又はC1〜4アルキルであり、mは1〜4である。)
  27. 前記エチレン性不飽和モノマーが2価以上の官能性クロスリンクモノマーを含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
  28. 前記モノマー混合物が水を含有することを特徴とする、請求項26又は27に記載の方法。
  29. 前記モノマー混合物の添加前に、前記非溶媒が油中水型安定剤を含有していることを特徴とする、請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
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