JP4429426B2 - 中空回転体の製造方法及び装置 - Google Patents

中空回転体の製造方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空ロール等の中空回転体の製造方法に関し、特に、中空回転体本体に対して筒状に形成した金属体(筒状金属体という)を嵌着させる工程を含んだ中空回転体の製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外周面に金属スリーブを取り付けた構成の中空回転体が使用されている。この構成の中空回転体の製造には通常、中空回転体本体と金属スリーブとを別個に製造し、その金属スリーブを焼ばめにより中空回転体本体に嵌着させる方法が採られていた。しかしながら、焼ばめを行うには、金属スリーブ内面と中空回転体本体外面を高精度に機械加工する必要があるばかりでなく、嵌合時にはきわめて小さいクリアランスでの難しい嵌合操作を必要とし、コスト高となるという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は先に、焼ばめを用いることなく、筒状金属体を中空回転体本体に容易に且つ生産性良く嵌着する方法として、中空回転体本体に筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体を増肉加工して内面側にも増肉させ、その増肉を利用して中空回転体本体外面に嵌着し、金属スリーブとする方法を開発し、特許出願した(特開平11−10447号公報参照)。この方法では、筒状金属体を中空回転体本体に対して挿入する際には単に遊嵌すればよいので、焼ばめを行う場合に比べて、中空回転体本体と筒状金属体の、互いに嵌合する面をあらかじめ高精度に機械加工する必要がなく、しかも、挿入作業がきわめて容易であり、低コストで製造できるという効果を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報に記載の方法にも次のような問題点のあることが判明した。すなわち、従来、中空回転体に冷却水を通して水冷ロールとして使用することがあり、その場合には、中空回転体本体の内面に防錆塗装するとか、ライニングを施すのが一般的であるが、内面に防錆塗装やライニングを施した中空回転体本体の外周面に、筒状金属体を遊嵌し、加熱、増肉させて嵌着させた場合、中空回転体本体も昇温してしまい、塗装やランニングが剥離するとか、劣化する等の問題が生じた。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みて為されたもので、内面に防錆塗装やライニング等を施した中空回転体本体に対しても、その塗装やライニングを剥離や劣化させることなく、筒状金属体を、特開平11−10447号公報に記載のような、加熱、増肉加工を利用して嵌着させることの可能な中空回転体の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した問題点を解決するため、内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体の外周面に遊嵌した筒状金属体を加熱、増肉させて中空回転体本体に嵌着させる際、中空回転体本体内部を冷却した状態としておくことを特徴とする。このように、中空回転体本体内部を冷却しておくことにより、中空回転体本体の外周面に嵌着する筒状金属体が増肉時の加熱により昇温し、高温状態で中空回転体本体に接触しても、中空回転体本体の内面はあまり昇温せず、これによって内面に施している防錆塗装又はライニングの剥離や劣化を防止できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施形態に係る中空回転体の製造方法は、内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体の外周に筒状金属体を遊嵌し、前記中空回転体本体の内部を冷却した状態で、前記筒状金属体の長手方向の小領域を加熱装置で環状に加熱して加熱部を形成し、該加熱部を前記筒状金属体の長手方向に移動させながら前記加熱部に軸線方向の圧縮力を付与して増肉させ、前記加熱部の後端部分を増肉直後に冷却手段により冷却媒体を噴射して冷却し、前記中空回転体本体に前記筒状金属体の増肉部を嵌着させてゆくことを特徴とする。そして、この構成により、中空回転体本体内面の昇温を抑制しながら、筒状金属体を増肉させて中空回転体本体外面に嵌着させることができ、中空回転体本体内面に施している防錆塗装又はランニングを剥離や劣化させることなく、筒状金属体を中空回転体本体外面に良好に嵌着させることができる。
【0008】
上記した製造方法において、筒状金属体の加熱部の後端部分を冷却するための冷却手段を、筒状金属体の円周方向に複数の区間に分割すると共にそれぞれの区間からの冷却媒体噴射量を可変とすることが好ましい。筒状金属体を加熱、増肉させ、増肉直後に冷却媒体を噴射して冷却する場合、円周方向に温度むらが生じやすく、例えば、筒状金属体を水平とした場合、冷却媒体の噴射量を円周方向に均等としても、筒状金属体に噴射された後の冷却媒体の流れが、筒状金属体の上、下、左右においてそれぞれ異なるため、温度むらが生じてしまう。この温度むらが生じると、筒状金属体に曲げ応力が生じ、曲がりが生じようとする。この時、内側に位置する中空回転体本体の剛性が十分に大きければ、筒状金属体の曲げ応力を支えて曲がり発生を防止できるが、剛性が不足すると、中空回転体本体も筒状金属体と共に曲がってしまう。そこで、前記したように、冷却手段を筒状金属体の円周方向に複数の区間に分割し、冷却媒体噴射量を可変とすると、各区間での冷却媒体噴射量を円周方向の温度むらが生じないような適正な値に設定することで、温度むらを抑制して曲がり発生を防止できる。
【0009】
また、筒状金属体を増肉させて中空回転体本体に嵌着させてゆく操作を行う間、前記中空回転体本体及び筒状金属体を回転させることが好ましい。中空回転体本体及び筒状金属体を回転させておくと、中空回転体本体内部の冷却効果が円周方向に均一となり、且つ筒状金属体の加熱部の後端部分の冷却も円周方向に均一となり、これにより円周方向の温度むらを抑制して中空回転体の曲がり発生を抑制できる。ここで、中空回転体本体及び筒状金属体を回転させる方法は、両者を共に回転自在に保持しておき、いずれか一方を回転させればよい。すなわち、筒状金属体の一部を増肉させて中空回転体本体に嵌着すれば、これによって両者は一体化されて一緒に回転することとなるので、中空回転体本体と筒状金属体のいずれか一方のみを回転駆動すればよい。
【0010】
上記した方法において、中空回転体本体の内部の冷却を行うには、中空回転体本体の内部に、その一端近傍から冷却媒体を供給し、他端近傍からその冷却媒体を排出することが好ましい。この構成とすると、常時、中空回転体本体内の全域を冷却媒体が流れるため、中空回転体本体を均一に且つ一定温度に冷却することができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る中空回転体の製造装置は、内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体を定位置に且つ回転可能に保持する中空回転体保持手段と、その中空回転体保持手段によって保持された中空回転体本体の外周に遊嵌される筒状金属体の一端を支持し、前記中空回転体本体の回転中心を中心として回転可能に且つ軸線方向には移動不能に設けられた第一回転台と、前記筒状金属体の他端を支持し、前記中空回転体本体の回転中心を中心として回転自在に且つ軸線方向に移動可能に設けられた第二回転台と、該第二回転台を介して前記筒状金属体を軸線方向に圧縮する圧縮装置と、前記筒状金属体の長手方向の小領域を環状に加熱する加熱装置と、その加熱装置を前記筒状金属体の軸線方向に移動させる加熱装置移動手段と、前記加熱装置が筒状金属体を加熱しながら移動する際、加熱された部分の後端部分に冷却媒体を噴射する冷却手段と、前記中空回転体本体の軸を介して前記中空回転体本体内に冷却媒体を通し、該中空回転体本体内部を冷却する中空回転体冷却手段とを具備するという構成を備えたものである。この構成により、中空回転体本体の外面に筒状金属体を遊嵌させ、且つ中空回転体本体内に冷却媒体を通して内部を冷却した状態で、筒状金属体を加熱、増肉させて中空回転体本体の外面に嵌着させることができ、更に、その嵌着動作中、中空回転体本体及び筒状金属体を回転させておくことができ、中空回転体本体内面の防錆塗装又はライニングの剥離や劣化を生じることなく、また、中空回転体に曲がりを生じることなく、中空回転体本体の外周面に筒状金属体を嵌着させることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係る方法の実施に用いる装置(増肉加工装置)を示す概略断面図であり、1は中空回転体本体である。この中空回転体本体1は、中空ロールの胴部を構成する円筒部1aと、その円筒部1aの両端近傍に取り付けられ、円筒部1a内に冷却媒体として冷却水を通すための空間1bを形成する隔壁1cと、軸1dを備えており、その軸1dには、冷却水の導入通路2aと、一方の隔壁1cの近傍に開口した供給口2bと、他方の隔壁1cの近傍に開口した排出口2cと、排出通路2dが形成され、空間1b内に矢印3で示すように冷却水を流すことの可能な構成としている。円筒部1aの内面には防錆塗装又はライニングが施されている。図示を省略しているが、軸1dを図示した位置に固定、保持するための手段が設けられており、これによって中空回転体本体1が所定位置に保持されている。なお、軸1d及び隔壁1cは、最終製品として製造する中空ロールの軸及び隔壁であってもよいし、この増肉加工装置に円筒部1aを取り付けるために一時的に円筒部1aに取り付けたものであってもよい。
【0013】
4は、中空回転体本体1の円筒部1aの外周面に遊嵌された筒状金属体、6は、筒状金属体4を円筒部1aに対して同心状に固定、保持する固定保持部材、8は、筒状金属体4の反対端を把持して筒状金属体4の長手方向(軸線方向)に移動可能な可動保持部材、9はその可動保持部材8を押圧して筒状金属体4に長手方向の圧縮力を作用させる油圧シリンダ等の圧縮装置、10は、筒状金属体4の長手方向の短区間を環状に加熱して赤熱状態の加熱部11とすることの可能な環状の加熱装置であり、ここでは誘導加熱コイルが使用されている。この加熱装置10は、筒状金属体4に沿って矢印A方向に移動する際に冷却水等の冷却媒体12を加熱部11の移動方向に関して後側となる部分に吹き付ける冷却手段13を備えている。
【0014】
この冷却手段13は、図2に示すように、筒状金属体4の円周方向に、上、下、右、左の4区間13a、13b、13c、13dに分割されると共に各区間に対する冷却媒体の供給路にそれぞれ別個に調整可能な流量調整弁(図示せず)を設けている。この構成により、冷却手段13の4区間13a、13b、13c、13dからの冷却媒体12の噴射量を、それぞれ所望の値に調整可能であり、各区間13a、13b、13c、13dからの冷却媒体噴射量を、水平に配置した筒状金属体4を均等に冷却できるように調整している。すなわち、水平に配置した筒状金属体4を冷却手段13からの冷却媒体を吹き付けて冷却する場合、筒状金属体4の上面では吹き付けられた冷却媒体が直ちに両側に流れ落ちるため、冷却効果が悪く、一方、筒状金属体4の左右の側面や下面では、吹き付けられた冷却媒体のみならず、上方から流れ落ちてくる冷却媒体によっても冷却されるため、冷却効果が良い。このため、筒状金属体4の温度は上面が高く、下面が低くなる傾向があり、これによって筒状金属体4には上部を凸にして大きく湾曲する力が作用する。そこで、冷却手段13の4区間13a、13b、13c、13dからの冷却媒体12の噴射量を、筒状金属体4の円周方向に冷却むらが生じないように、調整しておく。この調整は、あらかじめ実験によって求めた特性に基づいて行う。なお、必要に応じ、筒状金属体4の増肉中において曲がりの傾向を見ながら、噴射量を微調整することもできる。
【0015】
図1において、加熱装置10及び冷却手段13には、それらを筒状金属体4に沿って所望の速度で移動させる移動装置(図示せず)が連結されている。この移動装置としては、モータと送りねじを用いたもの、モータと送り用チェーンを用いたもの、油圧シリンダを用いたもの等任意である。中空回転体本体1の軸1dの一端には、冷却水を供給する冷却水供給管15が接続され、他端には連結管16が接続されている。この連結管16は、可動保持部材8に形成した冷却水通路17を介して排出管18に連結されており、その排出管18には流量調整用の弁19が設けられている。
【0016】
次に、図1に示す装置を用いた中空回転体の製造方法を説明する。あらかじめ、中空回転体本体1とそれに遊嵌させる筒状金属体4を製造する。この際、中空回転体本体1の円筒部1aの外周面及び筒状金属体4の内周面は、円筒部1aに筒状金属体4を遊嵌することができる寸法に形成しておけばよく、このため、焼ばめを行う場合のような正確な寸法精度に加工する必要はない。また、円筒部1aと筒状金属体4の互いに嵌合する面の表面状態としても、高度に平滑な仕上げを行う必要はなく、大きな歪みやさび、汚れを除去する程度の加工でよい。
【0017】
次に、図1に示すように、中空回転体本体1を所定位置に固定し、軸1dの一端に冷却水供給管15を、他端に連結管16を接続し、その後、その円筒部1aの外側に筒状金属体4を遊嵌し、その一端を固定保持部材6に固定、保持させると共に、その反対端を可動保持部材8に保持させる。次いで、中空回転体本体1内に冷却水を充満させ、且つ適当な流量で冷却水を通しておく。なお、図示したように中空回転体本体1を水平に配置した場合、中空回転体本体1の上方の部分に空気が残る場合がある。この残存空気が大きい冷却むらを生じさせる恐れのある場合には、中空回転体本体1を水平にセットする前に垂直に立てて空気を抜いておくとか、隔壁1cの適当な位置に空気抜き通路を形成しておき、その空気抜き通路を開いて空気を抜く操作を行っておく。
【0018】
次に、圧縮装置9で可動保持部材8を押圧して筒状金属体4に圧縮力を作用させ、この状態で、加熱装置10によって筒状金属体4の長手方向の短区間を環状に加熱して、塑性変形容易な赤熱状態の加熱部11とし、その加熱部11に圧縮力による増肉を生じさせながら、その加熱装置10を筒状金属体4に沿って矢印A方向に移動させ、同時に冷却手段13から冷却媒体12を加熱部11の後端部分に吹き付けて増肉直後の部分を冷却、固化する。これにより筒状金属体4が長手方向に連続的に増肉させられてゆき、内面側に増肉した部分は円筒部1aの外周面に嵌着される。かくして、加熱部11を円筒部1aの固定保持部材6側の端部から、反対側の端部まで移動させ、筒状金属体4に増肉加工を施すことにより、円筒部1aの外周面全長に、筒状金属体4の増肉した領域4aを嵌着させることができる。その後、中空回転体本体1を増肉加工装置から取り外し、円筒部1aの外周面に嵌着している筒状金属体(増肉した領域4a)の両端を、円筒部1aの両端に揃うように機械加工し、且つ外周面を所定寸法に機械加工する。これにより、中空回転体本体1の円筒部1aの外周面に、筒状金属体4を増肉させた領域4aを嵌着して形成した金属スリーブを被せた構成の中空回転体が製造される。
【0019】
上記した動作において、筒状金属体4を加熱、増肉させて中空回転体本体1の円筒部1aの外周面に嵌着させた時、筒状金属体4の高温に加熱された加熱部11が円筒部1aに接触してその部分を加熱、昇温させようとする。しかしながら、円筒部1aの内側には冷却水が充満していて、円筒部1aを冷却しているので、円筒部1aの内面はさほど昇温しない。これにより、この内面に形成している防錆塗装やライニングが劣化して剥がれることがない。また、上記したように、筒状金属体4を冷却するための冷却手段13の4区間13a、13b、13c、13d(図2参照)からの冷却媒体12の噴射量を、筒状金属体4の円周方向に冷却むらが生じないように、調整しているので、筒状金属体4に曲げ応力が発生せず、筒状金属体4及び円筒部1aに曲がりが発生しない。かくして、曲がりを生じることなく中空回転体本体1の円筒部1aに筒状金属体を良好に嵌着させることができる。
【0020】
なお、上記した実施例では、中空回転体本体1及び筒状金属体4を水平に配置した状態で、筒状金属体4を加熱、増肉させて円筒部1aに嵌着させているが、中空回転体本体1及び筒状金属体4の姿勢は水平に限らず、垂直としても良いし、或いは適当に傾斜した状態としてもよい。なお、中空回転体本体1及び筒状金属体4を垂直とした場合は、同じ高さの位置に冷却媒体が吹き付けられるため、冷却手段13からの冷却媒体噴射量を筒状金属体4の円周方向に均一とすれば、筒状金属体4を円周方向に均一に冷却できるはずである。しかしながら、現実には何らかの理由で温度むらが生じてしまい、しかも、その温度むらの発生は、水平に配置した場合のように、上下左右と言った決まった特性が無く、このため、予想できない。そこで、この場合には、温度むらによる曲がりの傾向を見ながら、噴射量を調整すればよい。また、円周方向の分割数を、実施例の4個よりも多くすることが好ましい。
【0021】
図3は、本発明の第二の実施形態に係る方法に用いる装置(増肉加工装置)を示す概略断面図である。この実施形態では、中空回転体本体1の軸1dを支持手段(図示せず)で図示した位置に回転自在に保持しており、その一端にギア21を取り付けると共に、そのギア21に回転装置23のギア24を噛み合わせて、回転駆動する構成としている。また、軸1dと冷却水供給管15の間及び軸1dと連結管16の間に、それぞれロータリージョイント25、26を介在させている。更に、筒状金属体4を保持するための固定保持部材6と可動保持部材8とに、それぞれ第一回転台28、第二回転台29を中空回転体本体1の中心軸線を中心として回転自在に保持させ、その第一回転台28、第二回転台29で筒状金属体4の両端をそれぞれ保持させている。その他の構成は、図1に示す実施例と同様である。
【0022】
図3に示す実施例でも、図1に示す実施例と同様に、中空回転体本体1内に冷却水を通して冷却した状態で、その外側に遊嵌した筒状金属体4を、一端から他端に向かって加熱装置10で加熱、増肉させてゆき、円筒部1aの外周面全長に嵌着させてゆく。この動作を行う間、回転装置23が中空回転体本体1をゆっくりと回転させており、これに追従して、筒状金属体4も中空回転体本体1と共にゆっくりと回転する。このため、例え、中空回転体本体1内の上部領域に空気が残っていて、中空回転体本体1に冷却むらが生じる恐れがある場合でも、中空回転体本体1の回転により円周方向の冷却むらが抑制され、温度むらに起因する曲がりの発生が防止される。また、冷却手段13による筒状金属体4の外面からの冷却むらも筒状金属体4の回転により解消され、筒状金属体4への曲がり発生も抑制される。かくして、この実施例では、中空回転体本体1内部の冷却や筒状金属体4の外面からの冷却に、さほど考慮を払わなくても、均一な冷却が行われ、曲がりを生じることなく、良好に筒状金属体4を中空回転体本体1に嵌着させることができる。
【0023】
なお、図3の実施例では、中空回転体本体1を回転装置23で回転駆動する構成としているが、この代わりに、図4に示すように、筒状金属体4を回転駆動する構成としてもよい。すなわち、図4において、中空回転体本体1は、単に回転自在に保持しておき、筒状金属体4の一端を保持する第一回転台28の外周にギア28aを形成し、回転装置23のギア24をそのギア28aに噛み合わせる構成としてもよい。この構成においても、図3の実施例と同様に、中空回転体本体1と筒状金属体4を回転させた状態で、筒状金属体4の中空回転体本体1に対する嵌着動作を行うことができ、曲がりを生じることがない。
【0024】
なお、図3、図4の実施例でも、筒状金属体4を冷却するための冷却手段13は、図2に示すような4区間に分割したものを用いてもよいが、回転によって温度むらを防止できるので、単に全周から冷却媒体をほぼ均一に噴射する構成のものを用いてもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体に対して筒状金属体を遊嵌し、その筒状金属体を加熱、増肉させて前記回転体本体に嵌着させる操作を行う際に、中空回転体本体の内部を冷却する構成としたことにより、筒状金属体の加熱、嵌着の際に、中空回転体本体の内面はさほど昇温せず、このため、中空回転体本体内面に施している防錆塗装又はライニングが剥離したり、劣化したりすることがなく、従って、内面に防錆塗装又はライニングを備えた中空回転体本体に対して支障なく筒状金属体を遊嵌させて、スリーブ付の中空回転体を製造できるという効果を有している。
【0026】
ここで、前記筒状金属体の加熱部の後端部分を冷却するための冷却手段を、筒状金属体の円周方向に複数の区間に分割すると共にそれぞれの区間からの冷却媒体噴射量を可変とする構成とすると、この構成によっても筒状金属体に生じる恐れのある円周方向の温度むらを抑制することができ、曲がりのない中空回転体を製造できるという効果が得られる。
【0027】
また、前記筒状金属体を増肉させて前記中空回転体本体に嵌着させてゆく操作を行う間、前記中空回転体本体及び筒状金属体を回転させる構成とすると、円周方向の温度むらを抑制することができ、中空回転体本体や筒状金属体の曲がり発生を防止することができ、従って、曲がりのない中空回転体を製造できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る方法の実施に用いる装置の概略断面図
【図2】図1に示す装置に用いた冷却手段の概略正面図
【図3】本発明の第二の実施形態に係る方法の実施に用いる装置の概略断面図
【図4】図3に示す装置の変形例を示す概略断面図
【符号の説明】
1 中空回転体本体
1a 円筒部
1b 空間
1c 隔壁
1d 軸
4 筒状金属体
6 固定保持部材
8 可動保持部材
9 圧縮装置
10 加熱装置
11 加熱部
12 冷却媒体
13 冷却手段
15 冷却水供給管
16 連結管
18 排出管
19 弁
21、24 ギア
23 回転装置
25、26 ロータリージョイント
28 第一回転台
29 第二回転台

Claims (5)

  1. 内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体の外周に筒状金属体を遊嵌し、前記中空回転体本体の内部を冷却した状態で、前記筒状金属体の長手方向の小領域を加熱装置で環状に加熱して加熱部を形成し、該加熱部を前記筒状金属体の長手方向に移動させながら前記加熱部に軸線方向の圧縮力を付与して増肉させ、前記加熱部の後端部分を増肉直後に冷却手段により冷却媒体を噴射して冷却し、前記中空回転体本体に前記筒状金属体の増肉部を嵌着させてゆくことを特徴とする中空回転体の製造方法。
  2. 前記冷却手段を、筒状金属体の周方向に複数の区間に分割すると共にそれぞれの区間からの冷却媒体噴射量を可変としたことを特徴とする請求項1記載の中空回転体の製造方法。
  3. 前記筒状金属体を増肉させて前記中空回転体本体に嵌着させてゆく操作を行う間、前記中空回転体本体及び筒状金属体を回転させることを特徴とする請求項1又は2記載の中空回転体の製造方法。
  4. 前記中空回転体本体の内部の冷却を、中空回転体本体の内部に、その一端近傍から冷却媒体を供給し、他端近傍からその冷却媒体を排出することで行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の中空回転体の製造方法。
  5. 内面に防錆塗装又はライニングを施した中空回転体本体を定位置に且つ回転可能に保持する中空回転体保持手段と、その中空回転体保持手段によって保持された中空回転体本体の外周に遊嵌される筒状金属体の一端を支持し、前記中空回転体本体の回転中心を中心として回転可能に且つ軸線方向には移動不能に設けられた第一回転台と、前記筒状金属体の他端を支持し、前記中空回転体本体の回転中心を中心として回転自在に且つ軸線方向に移動可能に設けられた第二回転台と、該第二回転台を介して前記筒状金属体を軸線方向に圧縮する圧縮装置と、前記筒状金属体の長手方向の小領域を環状に加熱する加熱装置と、その加熱装置を前記筒状金属体の軸線方向に移動させる加熱装置移動手段と、前記加熱装置が筒状金属体を加熱しながら移動する際、加熱された部分の後端部分に冷却媒体を噴射する冷却手段と、前記中空回転体本体の軸を介して前記中空回転体本体内に冷却媒体を通し、該中空回転体本体内部を冷却する中空回転体冷却手段とを具備する中空回転体の製造装置。
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