JP4421765B2 - アルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法に関し、さらに詳しく言えば低圧用アルミ電解コンデンサに用いられる陽極箔のエッチング処理技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、セットの小型化、高信頼性化にともない、アルミ電解コンデンサに対するユーザーからのニーズ(小型化、コストダウン)が急速に高まっており、それに用いられる電極箔も従来以上に単位面積当りの静電容量を高めることが求められている。
【0003】
上記電極箔の中でも、低圧用アルミ電解コンデンサに用いられる陽極箔は、アルミニウム箔を電気化学的、あるいは化学的にエッチング処理して表面積を拡大し、その後洗浄して水和皮膜を施し乾燥してエッチング箔とした後、陽極酸化による化成処理を施すことにより上記エッチング箔の表面に誘電体酸化皮膜層を形成して製造されている。
【0004】
上記アルミニウム箔のエッチング処理は、塩酸を主成分とする水溶液中で交流電流を印加してエッチング処理する工程を数回繰り返し行うことにより、アルミニウム箔の層内にエッチングピットを段階的に無数形成させるようにしたもので、各工程における電解液の組成および交流電流を印加する条件を工夫・改善して行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記アルミニウム箔を塩酸を主成分とする水溶液中で交流電流を印加してエッチング処理する工程において、交流電流の波形として正弦波形を用い、この正弦波形の周波数を規制することによりアルミニウム箔の表面積の拡大を図っているが、アルミニウム箔の表面積の拡大をやり過ぎると機械的強度が弱くなることから、アルミニウム箔の表面積をある領域までしか拡大することができないという課題を有している。
【0006】
また、上記交流電流の波形として、矩形波形、三角波形等を印加してエッチング処理することも試みられているが、更なる表面積の拡大を図ることができにくいのが現状である。
【0007】
さらに、エッチング箔を化成処理して形成される誘電体酸化皮膜層は、エッチング箔の表面に水和処理により形成された水和皮膜を種として誘電体酸化皮膜層が成長していくため、その水和皮膜の形成状態により誘電体酸化皮膜層の特性に大きく左右し、陽極箔の漏れ電流特性に大きなバラツキを生じるという課題を有している。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、アルミニウム箔の化学溶解反応、電気化学的反応、拡散現象を考慮して、緻密で高密度のエッチングピットを生成させて表面積を拡大し、静電容量および漏れ電流特性に優れたアルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に記載の発明は、塩酸を主成分として硫酸、蓚酸、硝酸、リン酸の少なくとも1種を含有する水溶液中で、交流電流の正弦波波形の正弦曲線が電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたときに、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1.05〜120の範囲とする正弦波の正弦曲線を変形した波形をアルミニウム箔に印加してエッチング処理を少なくとも2回以上行う工程と、このエッチング処理とエッチング処理との間に保護皮膜を形成させる中間処理を行う工程と、このアルミニウム箔を水和処理して不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気で熱処理する工程と、このアルミニウム箔の表面に陽極酸化により化成処理して誘電体酸化皮膜層を形成する工程とからなる製造方法としたもので、電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間により均一で緻密なエッチングピットを発生させて、次のピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間によりエッチングピットを高密度に成長させてアルミニウム箔の表面積の拡大を効率的に行うことができる。また、その後の水和処理により形成された水和皮膜を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気で熱処理することにより、次の陽極酸化による化成処理により均一で緻密な誘電体酸化皮膜層を形成することができるので、陽極箔の静電容量および漏れ電流特性を大幅に向上させることができるという作用を有する。
【0010】
なお、上記交流電流の変形正弦波は正負対称にするのが好ましい。また、変形正弦波は従来の正弦波形と実効電流値が同一なことから、矩形波や三角波の波形に比べて電気量当りの静電容量を高くすることができる。
【0012】
また、電流の立ち上がり部分の時間を1としたとき、立ち下がり部分の時間が120を越える(すなわち電流の立ち上がり部分の時間が短くなる)と、電流の立ち上がり部分での反応が急激になりエッチングピットを微細にしてしまう。また、立ち下がり部分の時間が1.05未満ではエッチングピットを均一に分散させることができなくなり、いずれもアルミニウム箔の表面積の拡大をすることができない。
【0013】
また、エッチング処理する交流電流のカソード電流とアノード電流の間に周波数の1周期以下の電流オフ時間を設け、カソード電流の印加後にオフ時間を設けることにより、アルミニウム箔の表面に付着したアルミニウム粉を拡散して、次に印加されるアノード電流でエッチングピットの成長の促進と径拡大を容易にすることができるので、次工程の化成処理での電気消費量を削減することができるという作用を有する。
【0014】
なお、カソード電流とアノード電流の間の電流オフ時間が周波数の1周期を越えるとエッチングピットの化学溶解が起こり、アルミニウム箔の表面積の拡大に繋がらない。
【0015】
また、エッチング処理する工程において、エッチング処理する工程を少なくとも2回以上行うようにし、そのエッチング処理とエッチング処理との間に保護皮膜を形成させる中間処理を行うようにした製造方法とすることにより、始めのエッチング処理により形成されたエッチングピットの表面を保護皮膜で覆うことにより、次のエッチング処理で始めのエッチング処理により形成されたエッチングピットを食い潰すことなく表面積の拡大を図ることができるので、より高密度のエッチングピットを形成することができるという作用を有する。
【0016】
上記エッチング処理する交流電流の周波数をエッチング処理する工程が増えるにしたがって低くするようにし、かつ5〜45Hzの範囲とする製造方法とすることにより、エッチングピットの成長とエッチングピット径の拡大を同時に行うことができるので、エッチングピットが同じ場所に重複して発生するのを防止して、アルミニウム箔の表面積の拡大を増加させることができるという作用を有する。
【0017】
なお、交流電流の周波数が45Hzを越えるとアルミニウム箔の表面を過剰にエッチングしてしまい表面積の拡大に繋がらないし、周波数が5Hz未満ではエッチングピットを均一に分散させることができない。
【0018】
また、中間処理はリン酸系を含有する水溶液中に浸漬処理するようにし、リン酸系を含有する水溶液中の温度を50℃から90℃の範囲とした製造方法とすることにより、始めのエッチング処理により形成されたエッチングピットの表面に容易に保護皮膜を形成させることができるという作用を有する。
【0019】
なお、リン酸系を含有する水溶液中の温度が90℃を越えるとエッチングピットの表面を溶解してしまうので、その後エッチング処理による表面積の拡大をすることができなくなり、温度が50℃未満では短時間で保護皮膜を形成することができない。
【0020】
また、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気をアルゴンガス、窒素ガス、水素ガスのいずれかで行うことにより、熱処理するときの酸素を低減させることができ、水和皮膜を緻密な酸化皮膜に形成させることができるという作用を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1および2に記載の発明について説明する。
【0022】
本実施の形態1におけるアルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法は、まず、厚さ100μm、純度99.98%のアルミニウム箔を用い、リン酸濃度が1.0wt%の90℃の水溶液に60秒間浸漬する。
【0023】
次に、塩酸5wt%、塩化アルミニウム2wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度30℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.1wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して300秒間エッチング処理を行った。
【0024】
このときの交流電流の電流密度を0.50A/cm2、周波数を40Hzとして、上記交流電流の変形正弦波は図1に示すように電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間とピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間が異なる変形正弦波とし、電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1.0,1.02,1.05,1.1,1.5,2.0,10,30,50,70,90,110,120,130として、それぞれエッチング処理した(上記電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1.0としたものは通常の正弦波形である)。
【0025】
次に、硫酸10wt%の60℃の水溶液で100秒間の浸漬処理を行い、続いて、エタノールアミン0.1%で50℃の水溶液で水和処理を行った後、250℃の窒素ガス雰囲気中(酸素濃度1.0%)で3分間の熱処理を行ってエッチング箔を得た。
【0026】
次に、このエッチング箔をアジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで20分間定電圧化成をし、その後500℃で2分間熱処理して、さらに、アジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで10分間定電圧化成して陽極箔を得た。
【0027】
以上のように作製された実施の形態1の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC-2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間とピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1:1の値を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表1)に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
この(表1)から明らかなように、変形正弦波を電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1.05〜120の範囲とすることにより、変形正弦波の電流値0からピーク電流までの立ち上がり部分によりエッチングピットを均一に密度を増やし、ピーク電流から0までの立ち下がり部分により無効なアルミニウムの溶解を防止できるために、エッチングピットを無駄なく成長させてアルミニウム箔の表面積の拡大を効率的に行うことができ、陽極箔の静電容量を向上させることができる。
【0030】
さらに、水和処理により形成された水和皮膜を不活性ガス雰囲気で熱処理することにより、次の陽極酸化による化成処理により均一で緻密な誘電体酸化皮膜層を形成することができるので、陽極箔の静電容量および漏れ電流特性を大幅に向上させることができる。
【0031】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項1および8に記載の発明について説明する。
【0032】
上記実施の形態1における窒素ガス雰囲気中の代わりに、アルゴンガス雰囲気中(酸素濃度2.0%)、水素ガス雰囲気中(酸素濃度1.0%)、大気中でそれぞれ熱処理(250℃で3分間)を行った以外は実施の形態1と同様にして陽極箔を作製した。
【0033】
なお、交流電流の変形正弦波は電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を110としてエッチング処理した。
【0034】
以上のように作製された実施の形態2の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC-2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は大気中で熱処理した陽極箔の静電容量を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表2)に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
(表2)から明らかなように、熱処理をするときに大気中よりもアルゴンガス雰囲気中または水素ガス雰囲気中で熱処理することにより、陽極箔の静電容量および漏れ電流特性を向上させることができる。
【0037】
これは、酸素の多い雰囲気で熱処理すると、水和皮膜が酸化皮膜になるときに雰囲気中の酸素により余分の酸化皮膜が形成されてしまい、化成処理でできる誘電体酸化皮膜層が緻密になりにくくなるからで、熱処理の雰囲気の酸素を低減させて余分の酸化皮膜の形成を抑制することにより、緻密な誘電体酸化皮膜層を形成することができて陽極箔の静電容量および漏れ電流を向上させることができるものである。
【0038】
なお、本発明は熱処理における酸素量を特に限定するものではないが、10%以下にすることにより余分の酸化皮膜の形成を抑制することができる。
【0039】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項3および4に記載の発明について説明する。
【0040】
本実施の形態3におけるアルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法は、まず、厚さ100μm、純度99.98%のアルミニウム箔を用い、リン酸濃度が1.0wt%の90℃の水溶液に60秒間浸漬する。
【0041】
次に、第1のエッチング処理として、塩酸5wt%、塩化アルミニウム4wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度35℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.17wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して150秒間エッチング処理を行った。
【0042】
このときの交流電流の電流密度を0.50A/cm2、周波数を50Hzとして、上記変形正弦波は図2に示すように電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を100とし、かつ交流電流のカソード電流とアノード電流の間に0,0.1/50,0.2/50,0.4/50,0.6/50,0.8/50,1.0/50,1.2/50秒の電流オフ時間を設けて、それぞれエッチング処理した。
【0043】
次に、リン酸カリウム5wt%、リン酸ナトリウム0.05wt%でアルミニウム濃度を0.02wt%に調整した85℃の水溶液に3分間浸漬して中間処理を行った。
【0044】
続いて、第2のエッチング処理として、塩酸5w%、塩化アルミニウム2wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度25℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.10wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して150秒間エッチング処理を行った。
【0045】
このときの交流電流の電流密度を0.35A/cm2、周波数を35Hzとして、上記変形正弦波として電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を50としてエッチング処理をした。
【0046】
次に、硫酸10wt%の60℃の水溶液で100秒間の浸漬処理を行い、続いて、エタノールアミン0.1%で50℃の水溶液で水和処理を行った後、250℃の窒素ガス雰囲気中(酸素濃度5.0%)で3分間の熱処理を行ってエッチング箔を得た。
【0047】
次に、このエッチング箔をアジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで20分間定電圧化成をし、その後500℃で2分間熱処理して、さらに、アジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで10分間定電圧化成して陽極箔を作製した。
【0048】
(比較例1)
上記実施の形態3において、第1のエッチング処理および第2のエッチング処理における交流電流の波形を正弦波形(電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間とピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間が1:1)にし、かつ交流電流のカソード電流とアノード電流の間の電流オフ時間を設けないでエッチング処理し、また中間処理を水洗した以外は実施の形態3と同様にして陽極箔を作製した。
【0049】
以上のように作製された実施の形態3および比較例1の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC−2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は比較例1の静電容量を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表3)に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
この(表3)から明らかなように、第1のエッチング処理と第2のエッチング処理の間に中間処理を行うことにより、陽極箔の静電容量を向上させることができる。また、第1のエッチング処理の交流電流のカソード電流とアノード電流の間に電流オフを入れることにより、アルミニウム箔の表面に付着したアルミニウム粉を拡散して、次に印加されるアノード電流でエッチングピットの成長の促進と径拡大が容易になるので、陽極箔の静電容量をさらに高めることができる。
【0052】
なお、第1のエッチング処理の交流電流のカソード電流とアノード電流の間の電流オフを周波数の1周期(本実施の形態3では1/50Hz)を越えると、アルミニウム箔の表面を溶解してしまうことから陽極箔の静電容量は高くならない。
【0053】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて、本発明の特に請求項5に記載の発明について説明する。
【0054】
上記実施の形態3における第1のエッチング処理の交流電流のカソード電流とアノード電流の間の電流オフを0とし、また、第2のエッチング処理する交流電流の周波数を5,10,15,20,25,30,35,40,45,50Hzで、それぞれエッチング処理した以外は実施の形態3と同様にして陽極箔を作製した。
【0055】
以上のように作製された実施の形態4の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC−2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は実施の形態3の比較例1の静電容量を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表4)に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
この(表4)から明らかなように、第2のエッチング処理するときの交流電流の周波数を第1のエッチング処理するときの交流電流の周波数よりも低くすることにより、第1のエッチング処理により形成されたエッチングピットを破壊することなく第2のエッチング処理によりさらなるエッチングピットを形成することができるので、高密度のエッチングピットを得ることができて陽極箔の静電容量を高くすることができる。
【0058】
なお、第2のエッチング処理における交流電流の周波数を5Hz以下にしても静電容量をさらに高くすることができないし、低周波数の交流電源が高価になることも考慮すると最適な周波数の範囲は5〜45Hzが好ましい。
【0059】
(実施の形態5)
以下、実施の形態5を用いて、本発明の特に請求項6および7に記載の発明について説明する。
【0060】
上記実施の形態3におけるリン酸カリウムの代わりにリン酸アンモニウムを用い、水溶液の温度を40,50,60,70,80,90,100℃でそれぞれ中間処理を行った以外は実施の形態3と同様にして陽極箔を作製した。
【0061】
なお、第1のエッチング処理の交流電流のカソード電流とアノード電流の間の電流オフを0としてエッチング処理した。
【0062】
以上のように作製された実施の形態5の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC−2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は実施の形態3の比較例1の静電容量を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表5)に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
この(表5)から明らかなように、中間処理をリン酸系を含有した水溶液を用い、その温度を50〜90℃の範囲にすることにより、比較例1の陽極箔よりも静電容量を高くすることができる。中間処理の温度が40℃では保護皮膜を充分に被覆することができず、また、100℃ではエッチングピットの表面を溶解してしまい、いずれも比較例1よりも多少静電容量を高くすることができるが顕著な効果を得ることができない。
【0065】
なお、リン酸系を含有する水溶液中にアルミニウムを含有することにより、始めのエッチング処理により形成されたエッチングピットの表面に容易に保護皮膜を形成させることができる。特に中間処理を数回行うときは、回数を重ねるごとにアルミニウム濃度を高くするのが好ましい。その最適な範囲は0.0015〜0.08wt%である。
【0066】
(実施の形態6)
以下、実施の形態6を用いて、本発明の特に請求項2および3に記載の発明の他の実施の形態について説明する。
【0067】
本実施の形態6におけるアルミ電解コンデンサ用電極の製造方法は、まず、厚さ100μm、純度99.98%のアルミニウム箔を用い、リン酸濃度が1.0wt%の90℃の水溶液に60秒間浸漬する。
【0068】
次に、第1のエッチング処理として、塩酸5wt%、塩化アルミニウム4wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度35℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.17wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して100秒間エッチング処理を行った。
【0069】
このときの交流電流の電流密度を0.50A/cm2、周波数を40Hzとして、上記変形正弦波は電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を120とし、かつ交流電流のカソード電流とアノード電流の間に0.2/50秒の電流オフ時間を設けてエッチング処理した。
【0070】
次に、リン酸カリウム5wt%、リン酸ナトリウム0.05wt%でアルミニウム濃度を0.02wt%に調整した85℃の水溶液に3分間浸漬して中間処理を行った。
【0071】
続いて、第2のエッチング処理として、塩酸5wt%、塩化アルミニウム2wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度30℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.10wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して100秒間エッチング処理を行った。
【0072】
このときの交流電流の電流密度を0.35A/cm2、周波数を30Hzとして、上記変形正弦波として電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を40としてエッチング処理をした。
【0073】
次に、リン酸カリウム5wt%、リン酸ナトリウム0.05wt%でアルミニウム濃度を0.02wt%に調整した85℃の水溶液に3分間浸漬して中間処理を行った。
【0074】
次に、第3のエッチング処理として、塩酸5wt%、塩化アルミニウム1wt%、硫酸0.1wt%、リン酸0.5wt%、硝酸0.2wt%に調整した温度20℃の電解液(電解液中のアルミニウム濃度を0.07wt%に調整)に上記アルミニウム箔を浸漬し、そのアルミニウム箔に変形正弦波の交流電流を印加して100秒間エッチング処理を行った。
【0075】
このときの交流電流の電流密度を0.25A/cm2、周波数を20Hzとして、上記変形正弦波として電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたとき、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を40,30,20,10,1.0,0.5,0.1として、それぞれエッチング処理をした。
【0076】
次に、硫酸10wt%の60℃の水溶液で100秒間の浸漬処理を行い、続いて、エタノールアミン0.1%で50℃の水溶液で水和処理を行った後、250℃の窒素ガス雰囲気中(酸素濃度3.0%)で3分間の熱処理を行って、第3のエッチング処理による交流電流の変形正弦波の違うエッチング箔をそれぞれ得た。
【0077】
次に、このエッチング箔をアジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで20分間定電圧化成をし、その後500℃で2分間熱処理して、さらに、アジピン酸アンモニウム15wt%で温度85℃の水溶液中で、化成電圧22Vで10分間定電圧化成して陽極箔を得た。
【0078】
(比較例2)
上記実施の形態6において、第1、第2および第3のエッチング処理における交流電流の波形を正弦波形(電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間とピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間が1:1)にしてエッチング処理し、また中間処理を水洗した以外は実施の形態6と同様にして陽極箔を作製した。
【0079】
以上のように作製された実施の形態6および比較例2の陽極箔について、静電容量および耐電圧はEIAJ規格(EIAJ RC−2364A準拠)に基づいて測定して、静電容量の値は比較例2の静電容量を100としたときの容量指数で表し、また、漏れ電流は定電圧(22V)検査の2分後の電流の値を示した結果を(表6)に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
この(表6)から明らかなように、第3のエッチング処理による交流電流の変形正弦波のピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を、第1および第2の交流電流のピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間よりも短くすることにより陽極箔の静電容量を高くすることができる。
【0082】
これは、第3のエッチング処理の変形正弦波を立ち上がり部分の波形を緩やかにすることにより、第1および第2のエッチング処理で形成したエッチングピットの成長の促進と、さらなるエッチングピットの生成を同時に効率的に行うことができるからである。
【0083】
なお、エッチング処理の工程を少なくとも2回以上行う場合は、交流電流の電流密度および周波数をエッチング処理の工程が進むにしたがって低くすることにより、アルミニウム箔の表面積の拡大をさらに図ることができ、高密度のエッチングピットを得ることができる。
【0084】
また、エッチング処理に用いる水溶液の温度も、エッチング処理の工程が進むにしたがって低くすることにより、エッチングピットを破壊することなくエッチングピットの密度を向上させることができる。そのときの最適な温度範囲は10〜50℃にするのが好ましい。
【0085】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、塩酸を主成分として硫酸、蓚酸、硝酸、リン酸の少なくとも1種を含有する水溶液中で、交流電流の波形を電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間とピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間が異なる変形正弦波をアルミニウム箔に印加してエッチング処理する工程と、このアルミニウム箔を水和処理して不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気で熱処理する工程と、このエッチング処理されたアルミニウム箔の表面に陽極酸化により化成処理して誘電体酸化皮膜層を形成する工程とからなる製造方法にすることにより、電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間により均一で緻密なエッチングピットを発生させて、次のピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間によりエッチングピットを高密度に成長させてアルミニウム箔の表面積の拡大を効率的に行うことができる。また、その後の水和処理により形成された水和皮膜を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気で熱処理することにより、次の陽極酸化による化成処理により均一で緻密な誘電体酸化皮膜層を形成することができるので、アルミ電解コンデンサの静電容量および漏れ電流特性を大幅に向上させる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における交流電流の変形正弦波を示す波形図
【図2】同実施の形態3における交流電流の変形正弦波を示す波形図
Claims (1)
- 塩酸を主成分として硫酸、蓚酸、硝酸、リン酸の少なくとも1種を含有する水溶液中で、交流電流の正弦波波形の正弦曲線が電流値0からピーク電流値までの立ち上がり部分の時間を1としたときに、ピーク電流値から電流値0までの立ち下がり部分の時間を1.05〜120の範囲とする正弦波の正弦曲線を変形した波形をアルミニウム箔に印加してエッチング処理を少なくとも2回以上行う工程と、このエッチング処理とエッチング処理との間に保護皮膜を形成させる中間処理を行う工程と、このアルミニウム箔を水和処理して不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気で熱処理する工程と、上記アルミニウム箔の表面に陽極酸化により化成処理して誘電体酸化皮膜層を形成する工程とからなるアルミ電解コンデンサ用電極箔の製造方法。
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