本発明は、新規レチノイドアゴニスト及びその合成方法に関する。本発明は、また、これらの新規レチノイドアゴニスト及びその医薬組成物の使用に関する。
レチノイドは、ビタミンAと構造的に類似しており、天然及び合成化合物の両方を含む。トランスレチノイン酸(“ATRA”)、9−シス−レチノイン酸、トランス3−4ジデヒドロレチノイン酸、4−オキソレチノイン酸、13−シス−レチノイン酸及びレチノールの全てのようなレチノイド化合物は、多数の炎症性、免疫性及び構造細胞に影響を与える多機能調節化合物である。
例えば、レチノイドは、上皮細胞の増殖、肺における形態発生、及びステロイド/甲状腺レセプタースーパーファミリーに属する一連のホルモン核レセプターを介する分化を調節する。レチノイドレセプターは、レチノイン酸レセプター(RAR)とレチノイドXレセプター(RXR)に分類され、それぞれ3つの特定のサブタイプ(α、β及びγ)からなる。
ATRAは、レチノイン酸レセプターの天然リガンドであり、α、β及びγサブタイプに同様の親和性で結合する。定量的構造活性関係が、数多くの合成RARα、β及びγレチノイドアゴニストで構築され、このことが、それぞれのRARサブタイプに選択的親和性をもたらす主な電子的及び構造的特性を説明している(Douget et al., Quant. Struct. Act. Relat., 18, 107, 1999)。
ATRAは9−シス−レチノイン酸が天然リガンドであるためにRXRに結合しない。また数多くの合成RXR及びRARα、β及びγレチノイドアゴニストが、当該技術において記載されている(例えば、Billoni et al., 米国特許第5,962,508号;Belloni et al., 国際特許公報第01/30326号、2001年5月3日発行;Klaus et al., 米国特許第5,986,131号;及びBernardon et al. 国際特許公報92/06948号、1992年4月30日発行を参照)。
肺組織以外の組織において、レチノイドは、通常、抗炎症効果を有し、上皮細胞の分化の進行を変えることができ、間質細胞マトリックス産生を阻害しうる。これらのレチノイドの生物学的効果により、乾癬、ざ瘡及び肥厚性皮膚瘢痕のような皮膚障害のための多くの局所用薬剤の開発につながってきた。レチノイドは、また、光線及び加齢により損傷を受けた皮膚の処置、例えば手術及び火傷による傷の治癒における使用(Mustoe et al., Science 237, 1333 1987; Sprugel et al., J. Pathol., 129, 601, 1987; Boyd, Am. J.Med., 86, 568, 1989)、並びに関節炎の処置用の抗炎症剤として使用されている。レチノイドの他の医療用途には、急性前骨髄球性白血病、腺癌及び扁平上皮癌、並びに肝線維症の抑制が含まれる。レチノイドは、また、前悪性上皮病変及び上皮由来の悪性腫瘍(癌腫)の処置に広く使用されている(Bollag et al., 米国特許第5,248,071号; Sporn et al., Fed. Proc. 1976, 1332; Hong et al., "Retinoids and Human Cancer" in The Retinoids: Biology, Chemistry and Medicine, M. B. Sporn, A. B. Roberts 及びD. S. Goodman (編) Raven Press, New York, 1994, 597-630)。しかし、多くの既知のレチノイドには選択性が欠けており、そのため、治療有効量が使用される場合、患者を死亡させるかもしれない多面性の有害な影響を及ぼす。したがって癌以外の疾患におけるレチノイドの治療用途は、有毒な副作用により限定されてきた。レチノイドの一般総説が、Goodman & Gilman の The Pharmacological Basis of Therapeutics", Chapters 63-64, 9th edition, 1996, McGraw-Hill で見出すことができる。
慢性閉塞性肺疾患(“COPD”)は、通常の呼吸を妨げる肺疾患の大集団を指す。米国の人口の約11%がCOPDに罹っており、入手可能なデータからCOPDの発症率が増加していることが示唆されている。現在、COPDが米国における死亡原因の第4位である。
COPDは、喘息、気腫及び慢性気管支炎から選択される少なくとも1種の疾患の存在により、肺が閉塞される疾患である。多くの場合、これらの状態が共存し、個別の症例においてどの疾患が肺閉塞を起こす原因であるか確定することが困難であるため、用語COPDが導入された(1987 Merck Manual)。臨床的には、COPDは、数ヶ月間変わらず、慢性気管支炎の場合は2年以上連続して持続する、減少した肺の呼吸流によって診断される。COPDの最も重篤な発症には、通常、気腫に特徴的な症状が含まれる。
気腫は、肺の気体交換構造(例えば、肺胞)が破壊される疾患であり、それが障害及び死亡の原因となりうる酸素化能不全を引き起こす。解剖学的には、気腫は、終末細気管支(例えば、呼吸管)の遠位における気室の永久拡大により定義され、これは、肺の弾性の低下、肺胞表面積及び気体交換の減少、並びに呼吸減退をもたらす肺胞破壊により特徴付けられる。したがって、気腫の特徴的な生理学的異常は、気体交換及び呼吸気流の低下である。
喫煙が気腫の最も一般的な原因であるが、他の環境毒素も肺胞破壊の一因となりうる。これらの有害物に存在する有害成分は、例えば、肺に存在するプロテアーゼインヒビターのような正常なの保護機構を圧倒する過剰量のプロテアーゼの放出を含む破壊作用を、作動させることができる。肺に存在するプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターの不均衡は、エラスチンマトリックスの破壊、弾性反跳の損失、組織損傷、及び継続的な肺機能低下を引き起こす。肺損傷の率は、肺における毒素の量を低下させること(例えば、禁煙)により減少することができる。しかし、損傷を受けた肺胞構造は修復されず、肺機能は回復しない。少なくとも四つの異なる型の気腫が第二小葉におけるその位置に応じて記載されており、汎小葉性気腫、小葉中心性気腫、遠位小葉性気腫及び瘢痕周囲型気腫である。
気腫の主な症状は、慢性の息切れである。気腫の他の重要な症状には、慢性の咳、酸素不足が原因で引き起こされる皮膚の着色、最小限の身体活動による息切れ、及び喘鳴が含まれるが、これらには限定されない。気腫と関連しうる更なる症状には、視覚異常、眩暈、呼吸の一時停止、不安、腫脹、疲労、不眠症及び記憶喪失が含まれるが、これらには限定されない。気腫は、通常、減少した異常な呼吸音、喘鳴、及び遷延性呼息を示す検診によって診断される。肺機能試験、血中酸素濃度の低下、及び胸部X線が、気腫の診断を確認するために使用することができる。
気腫の臨床適応症を覆す効果的な方法は、現在のところ当該技術において存在しない。幾つかの場合において、吸入器又は噴霧器により肺に送達される、気管支拡張剤、β−アゴニスト、テオフィリン、抗コリン作用剤、利尿剤、及びコルチコステロイドのような薬剤が、気腫により損傷を受けた呼吸作用を改善することができる。肺機能が、空気から十分な酸素を吸収できないほど重篤に損傷を受けている場合は、酸素処置が頻繁に使用される。重篤な気腫の患者を処置するため、肺縮小手術を使用することができる。ここで、肺の損傷部分を除去し、それにより肺の正常な部分がより十分に拡張することができ、増加された通気の恩恵を受けることができる。最後に、肺の移植が、気腫を有する個人に利用可能なもう一つの外科的代替案であり、それは、生活の質を増加するが、余命を著しく延ばすことはない。
肺胞は、未発達の肺の気体交換要素を構成する小嚢の分裂により、発育している間に形成される。霊長類における中隔及びその間隔の形成を制御する精確な機序は、現在のところ不明のままである。細胞外基質代謝と正常な上皮分化の両方を変更することができる、細胞挙動の多機能モジュレーターであるATRAのようなレチノイドは、ラットのような哺乳動物において重要な調節の役割を有する。例えば、ATRAは、一時的、空間的に選択的発現している特定のレチノイン酸レセプターに結合することにより、肺分化の重要な局面を調節する。異なるレチノイン酸レセプターサブタイプの協調的活性化は、新生ラットにおける肺の分岐、肺胞形成/中隔形成、トロポエラスチンの遺伝子活性化に関連する。
肺胞中隔形成の間、レチノイン酸貯蔵顆粒が、肺胞壁を取り囲む線維芽細胞間充織で増加し(Liu et al., Am. J. Physiol. 1993, 265, L430; McGowan et al., Am. J. Physiol., 1995, 269, L463)、肺におけるレチノイン酸レセプター発現がピークに達する(Ong et al., Proc. Natl. Acad. of Sci., 1976, 73, 3976; Grummer et al., Pediatr. Pulm. 1994, 17, 234)。新規エラスチンマトリックスの沈着及び中隔形成は、これらのレチノイン酸貯蔵顆粒の枯渇と平行に進行する。レチノイン酸の生後投与は、ラットにおいて肺胞の数を増加させることを示し、それは、ATRA及び他のレチノイドが、肺胞の形成を誘発しうるという概念を支持している(Massaro et al., Am. J. Physiol., 270, L305, 1996)。デキサメタゾン、副腎皮質ステロイドによる新生ラットの処置は、中隔形成を妨げ、幾つかのレチノイン酸レセプターのサブタイプの発現を減少させる。ATRAの補充量が、肺胞形成のデキサメタゾン阻害を防止することが示された。更にATRAは、発育中のラットの肺において、デキサメタゾンによるレチノイン酸レセプター発現、続く肺胞中隔形成の減少を防止する。
ATRAは、気腫の動物モデルにおいて、新しい肺胞の形成を誘発し、肺の弾性反跳をほとんど正常値に戻すことが報告されている(Massaro et al., Nature Med., 1997, 3, 675; "Strategies to Augment Alveolization," National Heart, Lung, and Blood Institute, RFA: HL-98-011, 1998; Massaro et al., 米国特許第5,998,486号)。しかし、Massaroは、ATRAが新しい肺胞を発生させることを報告しているが、これらの研究において、ATRA作用の機序は、不明確のままである。更に重要なことに、ATRAの使用が、懸念される幾つかの毒性又は悪影響を示す。
従って、ATRA又は他のレチノイドにおける毒性の問題がなく、皮膚障害、気腫及び癌の処置において有用な新規レチノイドアゴニストが、極めて望ましい。
本発明は、新規レチノイドアゴニスト、気腫、癌及び皮膚障害を処置又は予防する治療上活性な物質としてのその使用、気腫、癌及び皮膚障害の処置又は予防に適する医薬組成物を提供する。
一つの実施態様において、本発明は、構造式(I):
(式中、
nは0〜2の整数であり;
Xは、S、O又はNR3R4であり;
R3及びR4は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル若しくはシクロアルキル−アルキルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になってヘテロシクリル環を形成し;
Yは、−OR5、−SR5又は−NR6R7であり;
R5は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキルであり;
R6及びR7は、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル若しくはシクロアルキル−アルキルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になってヘテロシクリル環を形成し;
R1は、(C2〜C8)アルキルであり;
R2は、水素、アルキル、ヒドロキシ又はオキソであり;そして
R9は、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロ、シアノ、ニトロ又はアルコキシである)
で示される化合物、あるいはその塩、溶媒和物又は水和物を提供する。
本発明は、また、特定の慢性の閉塞性気道障害、特に、哺乳動物、特に喫煙する又は喫煙していたヒトにおける慢性気管支炎、気腫及び喘息を含む慢性の閉塞性肺疾患を処置又は予防するための、本発明の薬学的活性物質としての式Iの化合物の使用を包含する。好ましい実施態様において、本発明は、非毒性である本発明の化合物の治療有効投与量を使用する、哺乳動物の汎小葉性気腫、小葉中心性気腫、又は遠位小葉性気腫の処置又は予防を包含する。
本発明は、気腫、癌又は皮膚障害を処置又は予防するための、本発明の化合物の使用を包含する。更に本発明は、気腫、癌又は皮膚障害を処置又は予防するための、本発明の化合物の医薬組成物の使用を包含する。また本発明は、気腫、癌又は皮膚障害を罹患する、又はその危険性がある哺乳動物の肺に、本発明の化合物の配合物を送達するための、電気流体力学的エアゾール装置、エアゾール装置及び噴霧器の使用を包含する。
本発明は、また、本発明の化合物の局所用使用のみならず全身用使用、又はその組み合わせを包含する。経口、経粘膜又は非経口の投与方法により、そのどちらか、又は両方を達成することができる。前述したように、噴霧器、吸入器又は他の既知の送達装置による本発明の化合物を肺に直接送達する方法は、本発明に包含される。本発明の化合物を一つ以上の追加の療法と組み合わせて気腫、癌又は皮膚障害を処置する方法も、本発明に包含される。
本明細書中に使用されるように、用語「本発明の化合物」は、本明細書で開示されている式の範囲内における特定の化合物を含むが、これには限定されない、一般式(I)の化合物を意味する。本発明の化合物は、本明細書中でその化学構造及び/又は化学名により特定される。本発明の化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含んでよく、したがって二重結合異性体(いわゆる幾何異性体)、鏡像異性体又はジアステレオマーのような立体異性体として存在することができる。本発明によると、本明細書で示されている化学構造、したがって本発明の化合物は、対応する化合物の全ての鏡像異性体と立体異性体、すなわち立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何異性的に純粋、鏡像異性的に純粋、又はジアステレオマー的に純粋)及び鏡像異性体の混合物と立体異性体の混合物を包含する。鏡像異性体の混合物と立体異性体の混合物は、当該技術に既知の分離技術又はキラル合成技術のいずれかを使用して、その鏡像異性体成分に分離することができる。
「アシル」は、基−C(O)R(ここでRは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール又はアリールアルキルであり、ここでアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール及びアリールアルキルは本明細書中で定義されている)を意味する。代表的な例には、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル等が含まれるが、これらに限定されない。
「アシルアミノ」は、基−NR′C(O)R(ここでR′は、水素又はアルキルであり、そしてRは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール又はアリールアルキルであり、ここでアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール及びアリールアルキルは本明細書中で定義されている)を意味する。代表的な例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチル−カルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
「アルキル」は、炭素原子1〜8個の直状飽和一価炭化水素基、又は炭素原子3〜8個の分岐状飽和一価炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル等である。
「アルコキシ」は、基−OR(ここでRは、本明細書中で定義されているアルキル基である)を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等である。
「アルコキシカルボニル」は、基アルコキシ−C(O)−(ここでアルコキシは、本明細書中で定義されている)を意味する。
「アルキルアミノ」は、基−NHR(ここでRは、本明細書中で定義されているアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキル基を表す)を意味する。代表的な例には、メチルアミノ、エチルアミノ、1−メチルエチルアミノ、シクロヘキシルアミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
「アルキレン」は、炭素原子1〜10個の直状飽和二価炭化水素基、又は炭素原子3〜10個の分岐状飽和二価炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレン等である。
「アルキルスルホニル」は、基−S(O)2R(ここでRは、本明細書中で定義されているアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキル基である)を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等である。
「アルキルスルフィニル」は、基−S(O)R(ここでRは、本明細書中で定義されているアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキル基である)を意味し、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等である。
「アルキルチオ」は、基−SR(ここでRは、本明細書中で定義されているアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキル基である)を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等である。
「アリール」は、好ましくはアシル、アルキル、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルコキシ、アミノ、アリールオキシ、アジド、カルバモイル、シアノ、ジアルキルアミノ、エチレンジオキシ、ハロ、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メチレンジオキシ、ニトロ及びチオからなる群より選択される、1個以上の置換基、好ましくは1、2又は3個の置換基で場合により置換されている、一価単環式又は二環式芳香族炭化水素基を意味する。より詳細には、用語アリールには、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、メトキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル及びそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
「アリールアルキル」は、アルキル基の水素原子のうちの1個がアリール基で置換されている、本明細書中で定義されているアルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イル等が含まれるが、これらに限定されない。
「アリールオキシ」は、−O−アリール基(ここでアリールは、本明細書中で定義されている)を意味する。
「アリールアルキルオキシ」は、アリールアルキル−O−基(ここで、アリールアルキルは、本明細書中で定義されている)を意味する。
「カルバモイル」は、基−C(O)N(R)2(ここでそれぞれのR基は、独立して水素又は本明細書中で定義されているアルキルである)を意味する。
「カルボキシ」は基−C(O)OHを意味する。
「シアノ」は基−CNを意味する。
「シクロアルキル」は、3〜7個の環状の炭素の飽和一価環状炭化水素基を言及し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等である。
「シクロアルキル−アルキル」は、基−RaRb(ここでRaは、本明細書中で定義されているアルキレン基であり、そしてRbは、本明細書中で定義されているシクロアルキル基である)を意味し、例えば、シクロヘキシルメチル等である。
「ジアルキルアミノ」は、基−NRR′(ここでR及びR′は、独立して、本明細書中で定義されているアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキル基を表す)を意味する。代表的な例には、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジ−(1−メチル−エチル)アミノ)、(シクロヘキシル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシル)(エチル)アミノ、(シクロヘキシル)−(プロピル)アミノ、(シクロヘキシルメチル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシルメチル)(エチル)アミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードであり、好ましくはフルオロ及びクロロである。
「ハロアルキル」は、1個以上の同一又は異なるハロ原子で置換されているアルキル基を意味し、例えば、−CH2Cl、−CF3、−CH2CF3、−CH2CCl3等である。
「ヘテロアルキル」は、1個以上の水素原子が、−ORa、−NRbRc及び−S(O)nRd(ここでnは、0〜2の整数である)からなる群より選択される置換基で独立して置換されている、本明細書中で定義されているアルキル基を意味し、ヘテロアルキル基の結合点は、炭素原子を介していることが理解され、ここで、Raは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキルであり;Rb及びRcは、互いに独立して、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキルであり;そしてnが0の場合、Rdは、水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキルであり、nが1又は2の場合、Rdは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。代表的な例には、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピル等が含まれるが、これらに限定されない。
「ヘテロシクリル」は、1又は2個の環の原子が、N、O又はS(O)n(ここでnは、0〜2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環の原子がCである、3〜8個の環状の原子の飽和若しくは不飽和非芳香族環式基を意味する。ヘテロシクリル環は、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アシル、ハロ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノから選択される1、2又は3個の置換基で独立して場合により置換されていることができる。より詳細には、用語ヘテロシクリルには、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、ピロリニル、イミダゾリニル及びそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
「ヘテロシクリルアルキル」は、基−RaRb(ここでRaは、本明細書中で定義されているアルキレン基であり、そしてRbは、上記で定義されているヘテロシクリル基である)を意味し、例えば、テトラヒドロピラン−2−イルメチル、2−又は3−ピペリジニルメチル等である。
「ヒドロキシアルキル」は、1個以上のヒドロキシ基で置換されているが、同じ炭素原子が、1個以上のヒドロキシ基を有さない、本明細書中で定義されているアルキル基を意味する。代表的な例には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピル、好ましくは2−ヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル及び1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書中で使用されているように、用語「ヒドロキシアルキル」は、ヘテロアルキル基のサブセットを定義するために使用される。
「離脱基」は、合成有機化学において通常それと関連する意味、すなわち求核剤により置換されうる原子又は基を有し、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ及びヨード)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば、2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ等が含まれる。
「オキソ」は基(=O)を意味する。
「カルボキシ」は二価基(>C=0)を意味する。
「薬学的に許容されうる賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性であり、生物学的にも、それ以外にも望ましくないものでない、医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、薬学的使用に許容されうる賦形剤を含む。
本明細書及び請求項で使用される「薬学的に許容されうる賦形剤」は、そのような賦形剤の1個及び1個以上を含む。
化合物の「薬学的に許容されうる塩」は、薬学的に許容可能であり、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩には下記が含まれる:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸により形成される酸付加塩;又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ〔2.2.2〕−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等のような有機酸により形成される酸付加塩;あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン若しくはアルミニウムイオンにより置換されるか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等のような有機塩基と配位結合するかのいずれかの場合に形成される塩。
用語「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」は、本明細書中で交換可能で使用され、構造式(I)に基づいた活性親剤をインビボで放出するあらゆる化合物を指す。構造式(I)の化合物のプロドラッグは、構造式(I)の化合物に存在する1個以上の官能基を、修飾物がインビボで開裂して親化合物を放出しうるように修飾することにより調製される。プロドラッグは、構造式(I)の化合物におけるヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が、インビボで開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基を発生しうる任意の基と結合している、構造式(I)の化合物を含む。プロドラッグの例には、エステル類(例えば、酢酸塩、ギ酸塩及び安息香酸塩の誘導体)、構造式(I)の化合物におけるヒドロキシ官能基のカルバミン酸塩(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)等が含まれるが、これらに限定されない。
「保護基」は、分子マスクにおいて反応基と結合するとき、その反応性を減少又は抑制する、一群の原子を指す。保護基の例は、T. W. Green及びP. G. Futs, "Protective Groups in Organic Chemistry", (J. Wiley、第2版1991)、並びにHarrison et al., "Compendium of Synthetic Organic Methods", 1〜8巻(John Wiley and Sons 1971-1996) で見出すことができる。代表的なアミノ保護基には、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等が含まれるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシ保護基には、ベンジルのようにヒドロキシ基がアシル化されているか又はアルキル化されているかのいずれかであるもの、トリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるように、用語「哺乳動物」にはヒトが含まれる。用語「ヒト」及び「患者」は、本明細書中で交換可能で使用される。
気腫、癌又は皮膚障害を「処置する」又は気腫、癌又は皮膚障害の「処置」には、疾患を予防すること(すなわち疾患に曝されるか、罹患しやすくなりうるが、まだ疾患の症状を体感又は表していない哺乳動物において、疾患の少なくとも1つの臨床症状を発現させないこと)、疾患を抑制すること(すなわち疾患又は少なくとも1つの臨床症状の進行を阻止するか、減退させること)、あるいは疾患を緩和すること(すなわち疾患又は少なくとも1つの臨床症状を退行させること)が含まれる。予防すること、又は予防は、疾患又は障害の発現前の投与を包含する。
「治療有効量」は、疾患を処置するため哺乳動物に投与する場合、そのような疾患の処置を行うのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重篤度、並びに処置される哺乳動物の年齢、体重等に応じて変更される。
本発明の好ましい実施態様により詳細に参照を行う。
本発明は、新規化合物、並びに気腫、癌及び皮膚障害を有効に処置する、これらの新規化合物の薬学的に活性な物質としての使用を包含する。本発明は、天然及び合成レチノイドが治療レベルで使用される場合に伴う有害作用を低減するか、回避しながら、気腫及び関連する疾患、癌、並びに皮膚障害を処置することを包含する。治療レベルのレチノイドに伴う有害作用には、頭痛、発熱、皮膚及び膜乾燥、骨痛、嘔気及び嘔吐、精神障害及び胃腸障害のようなビタミンA過剰症の毒性作用が含まれるが、これらに限定されない。
一つの実施態様において、本発明は、構造式(I):
(式中、
nは0〜2の整数であり;
Xは、S、O又はNR3R4であり;
R3及びR4は、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル若しくはシクロアルキル−アルキルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になってヘテロシクリル環を形成し;
Yは、−OR5、−SR5又は−NR6R7であり;
R5は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−アルキルであり;
R6及びR7は、独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル若しくはシクロアルキル−アルキルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になってヘテロシクリル環を形成し;
R1は、(C2〜C8)アルキルであり;
R2は、水素、アルキル、ヒドロキシ又はオキソであり;そして
R9は、水素、アルキル、ハロアルキル、ハロ、シアノ、ニトロ又はアルコキシである)
で示される化合物、あるいはその薬学的に利用されうる塩、溶媒和物又は水和物を提供する。
一つの実施態様では、nは1である。
別の実施態様では、R1は、好ましくは(C4〜C8)アルキル、好ましくは(C4〜C6)アルキル、最も好ましくはペンチル、特にn−ペンチルである。
別の実施態様では、R2は、水素又はヒドロキシであり、好ましくは水素である。
別の実施態様では、R9は、水素又はハロであり、好ましくは水素である。
更に別の実施態様では、Xは、O又はSであり、好ましくはOである。
別の実施態様では、YはOR5であり、そしてR5は、好ましくは水素又はアルキルであり、より好ましくは水素である。
本発明の好ましい化合物は、nが1であり、R2が水素であり、そしてYがOR5であるものである。好ましくは、XはOであり、そしてYはOHである。
本発明の好ましい化合物には、下記の表1で示されたものが含まれる。
本発明の化合物は、スキーム1〜3で例示されている合成方法論により得ることができる。本発明の化合物及びその中間体の調製に有用な出発材料は市販されているか、周知の合成方法又は本明細書中で記載されている方法によって調製することができる。本発明の化合物を合成する、スキーム1〜3に例示されている方法以外のものは、当業者に直ちに明白となるであろう。したがって、本明細書中のスキームで示された方法は、包括的というよりむしろ例示的なものである。
スキーム1で例示しているように、芳香族アミン41を、トルフルオロアセチル化して(例えば、トリフルオロ酢酸無水物、塩基)、トリフルオロアミド43を得る。第二級トリフルオロアミド43のアルキル化(例えば、塩基、ハロゲン化アルキル)により、第三級トリフルオロアミド45を得て、それを次に脱保護して(例えば、水酸化物水溶液)、モノアルキルアミン47を得る。47をホスゲン又はホスゲン同等物で処理して、クロロギ酸49を得て、適切な芳香族アミンを加えることにより、それを式(I)の尿素に変換することができる。
スキーム2で例示しているように、芳香族アミン41を当業者に既知の多種多様な方法によりアセチル化して、アミド51を得ることができる。還元により(例えば、水素化アルミニウムリチウム)、第一級アミン47を得て、上記のようにそれをクロロギ酸49及び式(I)の尿素に変換することができる。
あるいはまた、スキーム3で例示しているように、芳香族アミン41を金属化し(例えば、n−ブチルリチウム)、そして、例えばハロゲン化アルキルで直接アルキル化して、第二級アミン47を得て、それを前述のように式(I)の尿素に変換することができる。第一級アミンから第二級アミンを調製する他の方法は、当業者に既知であり、本発明の化合物の調製に使用することができる。
本明細書中で開示されている本発明の化合物は、障害を受けた肺胞の修復、及び肺胞の中隔形成の促進に有用である。したがって、本発明の方法は、気腫のような肺疾患を処置するために使用することができる。本明細書中で開示されている本発明の化合物を使用する処置方法を使用して、癌及び皮膚障害を処置することもできる。
本発明の化合物のレチノイン酸レセプターアゴニスト選択性は、当業者に既知のリガンド結合アッセイを使用して測定することができる(Apfel et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1992, 89, 7129; Teng et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 2445; Bryce et al., 米国特許第5,807,900号、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。RARアゴニスト、特にRARγアゴニストによる処置は、肺胞マトリックスの修復及び中隔形成を促進し、それは気腫の処置において重要である。γ選択性ではないRARアゴニストは、気腫の処置に有効でありうることに留意すべきである。
遺伝子転写が、試験される特定のレチノイン酸レセプターへのリガンドの結合により開始される場合、レチノイドの遺伝子転写を活性化する能力であるトランス活性化は、当該技術で記載されている方法を使用して測定することができる(Apfel et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1992, 89, 7129; Bernard et al., Biochem. And Biophys. Res. Comm. , 1992, 186, 977、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。
光線及び加齢により引き起こされる皮膚障害の処置、及び傷の治癒の促進における本発明の化合物の適合性は、当該技術で記載されている方法により測定することができる((Mustoe et al., Science 237, 1333 1987; Sprugel et al., J. Pathol., 129, 601, 1987、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。当該技術で記載されている方法を使用して、ざ瘡又は乾癬のような皮膚障害を処置する本発明の化合物の有用性を測定することができる(Boyd, Am. J. Med., 86, 568, 1989及び記載中の参考文献; Doran et al., Methods in Enzymology, 190, 34, 1990、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。最後に、本発明の化合物の癌を処置する能力も、当該技術で記載されている方法により測定することができる(Sporn et al., Fed. Proc. 1976, 1332; Hong et al., "Retinoids and Human Cancer "in The Retinoids: Biology, Chemistry and Medicine, M. B. Sporn, A. B. Roberts 及び D. S. Goodman(編)Raven Press, New York, 1994, 597-630、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。
気腫若しくは関連する疾患、癌又は皮膚障害の処置又は予防に使用する場合、本発明の化合物を、単独、又は他の薬剤と組み合わせて投与又は塗布することができる。本発明の化合物は、また、本発明の他の化合物を含む他の薬学的に活性な薬剤と組み合せて投与又は塗布することができる。本発明の化合物は、それ自体又は医薬組成物として投与又は塗布することができる。特定の医薬配合物は、所望の投与方法により左右され、当業者にとって明白である。レチノイドアゴニストの局所又は全身投与用の数多くの組成物が、当該技術において既知である。これらの組成物の任意のものが、本発明の化合物と配合されうる。
本発明の化合物を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製剤、湿式粉砕、乳化、カプセル化、閉じ込め、又は凍結乾燥法により製造することができる。医薬組成物は、本発明の化合物を薬学的に使用できる製剤に加工することを容易にする、一種以上の生理学的に許容されうる担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を使用する従来の方法により、配合することができる。適切な配合は、選択される投与経路により左右される。
局所投与用には、本発明の化合物は、当該技術で周知の溶剤、ゲル剤、軟膏、クリーム剤、懸濁剤等として配合することができる。
全身用配合物には、注射による投与用に設計されたもの、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、鞘内又は腹腔内注射、並びに経皮、経粘膜、経口又は肺投与用に設計されたものが含まれる。全身用配合物は、気道粘液の粘膜毛様体クリアランスを向上させ、粘液の粘度を減少させる、更なる活性剤と組み合わせて製造することができる。これらの活性剤には、ナトリウムチャンネルブロッカー、抗生物質、N−アセチルシステイン、ホモシステイン及びリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。
注射用には、本発明の化合物は、水溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合しうる緩衝液中で配合することができる。溶液は、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような配合剤を含んでよい。
あるいはまた、本発明の化合物は、使用する前に適切なビヒクル、例えば、無パイロジェン滅菌水と共に構成される粉末の形態であってよい。
経粘膜投与には、透過される関門に適する浸透剤が配合物に使用される。そのような浸透剤は、当該技術で一般に既知である。
経口投与では、本発明の化合物は、当該技術で周知の薬学的に許容されうる担体と組み合わせて容易に配合することができる。そのような担体により、本発明の化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として、処置される患者の経口摂取用に配合することができる。例えば、粉末剤、カプセル剤及び錠剤のような固形経口配合物として、適切な賦形剤には、乳糖、ショ糖、マンニトール及びソルビトールのような糖類のような充填剤、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物、造粒剤及び結合剤が含まれる。所望であれば、崩壊剤を加えることができ、例えば、架橋ポロビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩である。所望であれば、固形投与形態を、標準の技術を使用して糖衣又は腸溶性にすることができる。経口投与用にレチノイドアゴニストを配合する方法が、当該技術で記載されている(例えば、the formulation of Accutane(商標登録), Physicians' Desk Reference 54th Ed., p. 2610, 2000参照)。
例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような液体経口製剤では、適切な担体、賦形剤又は希釈剤には、水、食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、油、アルコール、pH4〜pH6の僅かに酸性の緩衝液(例えば、約5.0mM〜約50.0mMの酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩)等が含まれる。加えて、風味剤、防腐剤、着色剤、胆汁酸塩、アシルカルニチン等を加えることができる。
口腔内投与では、組成物は従来の方法により配合された錠剤、ロゼンジ等の形態をとることができる。
本発明の化合物は、癌、気腫又は皮膚障害を処置するため、吸入により肺に直接投与することもできる(例えば、Tong et al., PCT出願、国際特許公報第97/39745号; Clark et al., PCT出願、国際特許公報第99/47196号参照、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。吸入による投与では、本発明の化合物を、多数の異なる装置により肺に都合よく送達することができる。例えば、適切な低沸騰噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体を含有する小型容器を用いる定量式吸入器(“MDI”)を使用して、本発明の化合物を肺に直接送達する。MDI装置は、3M Corporation、Aventis、Boehringer Ingleheim、Forest Laboratories、Glaxo-Wellcome、 Schering Plough及びVecturaのような多数の供給者から入手可能である。
あるいはまた、ドライパウダー吸入器(DPI)装置を使用して、本発明の化合物を肺に投与することができる(例えば、Raleigh et al., Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting, 1999,40, 397参照、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。DPI装置は、通常は、気体の爆発により容器内で乾燥粉末の雲を作り、次にそれを患者が吸引するというような構造を使用する。DPI装置も当該技術で周知であり、例えば、Fisons、Glaxo-Wellcome、Inhale Therapeutic Systems、ML Laboratories、Qdose及びVecturaを含む多数の販売業者から購入することができる。一般的な変形は複式投与DPI(“MDDPI”)系であり、一つ以上の治療量を送達することができる。MDDPI装置は、AstraZeneca、GlaxoWellcome、IVAX、Schering Plough、SkyePharma及びVecturaのような会社から入手可能である。例えば、吸入器又は空気吸入器で使用されるゼラチンのカプセル剤及びカートリッジは、本発明の化合物と、乳糖又はデンプンのようなこれらの系に適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して配合することができる。
本発明の化合物を肺に送達することに使用しうる他の型の装置は、例えば、Aradigm Corporationにより供給される液体噴霧装置である。液体噴霧系は、極めて小さな孔を使用して液体薬剤配合物をエアゾール化し、次にそれは肺に直接吸入されうる。
一つの好ましい実施態様では、噴霧装置を使用して本発明の化合物を肺に送達する。噴霧器は、例えば超音波エネルギーを使用して、容易に吸入されうる微細粒子を形成することにより、液体薬剤配合物からエアゾールを作成する(例えば、Verschoyle et al., British J. Cancer, 1999, 80, Suppl. 2, 96参照、これは参照することにより本明細書に組み込まれる)。噴霧器の例には、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltd.(Armer et al., 、米国特許第5,954,047号; van der Linden et al., 米国特許第5,950,619号; van der Linden et al., 米国特許第5,970,974号参照、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)Aventis 及びBatelle Pulmonary Therapeutics により供給される装置が含まれる。
別の好ましい実施態様では、電気流体力学的(“EHD”)エアゾール装置を使用して本発明の化合物を肺に送達する。EHDエアゾール装置は、電気エネルギーを使用して液体薬剤溶液又は懸濁液をエアゾール化する(例えば、Noakes et al., 米国特許第4,765,539号; Coffee,米国特許第4,962,885号; Coffee,PCT出願、国際特許公報第94/12285号; Coffee,PCT出願、国際特許公報94/14543号; Coffee,PCT出願、国際特許公報第95/26234号, Coffee,PCT出願、国際特許公報第95/26235号, Coffee,PCT出願、国際特許公報第95/32807号参照、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。本発明の配合の化合物の電気化学的特性は、この化合物を、EHDエアゾール装置により肺へ送達するときに最適化するための重要なパラメータであり、そのような最適化は、当業者により日常的に行われている。EHDエアゾール装置は、存在する肺送達技術よりも効率的に薬剤を肺に送達することができる。本発明の化合物を肺内送達する他の方法は、当業者に既知であり、本発明の範囲内である。
噴霧器及び液体噴霧装置及びEHDエアゾール装置による使用に適切な液体薬剤配合物は、通常、本発明の化合物を薬学的に許容されうる担体と共に含む。好ましくは、薬学的に許容されうる担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコール又はペルフルオロカーボンのような液体である。場合により、他の材料を加えて、本発明の化合物の溶液又は懸濁液のエアゾール特性を変えることができる。好ましくは、この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸のような液体である。エアゾール装置による使用が適切である液体薬剤溶液又は懸濁液の配合する他の方法は、当業者に既知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号; Biesalski、米国特許第5,556,611号参照、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。
本発明の化合物は、また、例えば、カカオ脂又は他のグリセリド類のような従来の座薬基剤を含有する座剤又は滞留浣腸のような直腸若しくは膣組成物に配合することができる。
前記の配合物に加えて、本発明化合物は、デポー製剤として配合することもできる。そのような長期作用配合物は、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉内)によるか、又は筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば本発明の化合物は、適切なポリマー若しくは疎水性材料と(例えば、許容されうる油中のエマルションとして)配合することができるか、イオン交換樹脂と配合することができるか、又は溶解性が不足している誘導体として、例えば、溶解性が不足している塩として配合することができる。
あるいはまた、他の医薬送達系を使用することができる。リポソーム及びエマルションが、本発明の化合物の送達に使用することができる送達ビヒクルのよく知られている例である。ジメチルスルホキシドのような特定の有機溶媒を使用することもできるが、通例著しい毒性という代償を払うことになる。本発明の化合物を制御放出系で送達することもできる。一つの実施態様では、ポンプを使用することができる(Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng., 1987, 14, 201; Buchwald et al., Surgery, 1980, 88, 507; Saudek et al., N. Engl. J. Med., 1989, 321, 574)。別の実施態様では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer 及び Wise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen 及び Ball (編), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Mncromol. Chem., 1983, 23, 61 参照;また、Levy et al., Science 1985, 228, 190; During et al., Ann. Neurol., 1989, 25, 351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71, 105 参照)。更に別の実施態様では、制御放出系を本発明の化合物の目標、例えば肺に近接して置くことができ、そのためごく僅かな全身投与量しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 上記, vol. 2, pp. 115 (1984) 参照)。他の制御放出系を使用することができる(例えば、Langer, Science, 1990, 249, 1527 参照)。
本発明の化合物が酸性である場合、上記配合物のいずれにも遊離酸、薬学的に許容されうる塩、プロ−ドラッグ、溶媒和又は水和物として含まれることができる。薬学的に許容されうる塩は遊離酸の活性を実質的に保持し、塩基と反応させて調製することができる。薬学的に許容されうる塩には、哺乳動物投与用として当該技術で知られている適切な既知のレチノイン酸の任意の塩が含まれる。薬学的塩は、対応する遊離酸形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒においてより可溶性である傾向がある。同様に、本発明の化合物は、上記配合物のいずれにも溶媒和、水和物又はプロ−ドラッグとして含まれることができる。好ましくはプロ−ドラッグには、芳香族エステル、ベンジルエステルのような加水分解しうるエステル誘導体、及びエチル、シクロペンチル等のような低級アルキルエステルが含まれる。他のプロ−ドラッグは、医薬技術の当業者に既知である。
本発明の化合物又はその組成物は、一般的に、意図される目的を達成するために有効な量で使用される。当然ながら、使用される量は、投与方法により左右されることが理解される。
気腫、癌又は皮膚障害の処置又は予防に使用するため、本発明の化合物又はその組成物は、治療有効量で投与又は塗布される。全身投与用の本発明の化合物の治療有効量は、本明細書の詳細な開示で見出すことができる。
本発明の化合物の薬物動態学的プロフィールは予測可能であり、線形薬物動態学理論を使用して記載することができる。重要なことに、本発明の化合物のヒトにおける薬物動態は、当業者により容易に測定することができる。当業者は、本発明の化合物の1回の経口投与後、当該技術で記載されている手順を使用して、標準薬物動態パラメータの範囲を測定することができる(例えば、Khoo et al., J. Clin. Pharm, 1982, 22, 395; Colburn et al., J. Clin. Pharm, 1983, 23, 534; Colburn et al., Eur. J. Clin. Pharm., 1983, 23, 689 参照)。当業者は、また、多回投与後、これらの状況下で本発明の化合物の誘導又は蓄積が起きるかどうかを測定するため、これらの薬物動態パラメータの値を、当該技術で記載されている手法を使用して測定することができる(Brazzel et al., Eur. J. Clin. Pharm., 1983, 24, 695; Lucek et al., Clin. Pharmacokinetics, 1985, 10, 38)。当業者は、上記手法により測定された薬物動態パラメータを、動物モデル投与データと一緒に使用して、哺乳動物(好ましくはヒト)の気腫、癌又は皮膚障害の処置に必要である、本発明の化合物の適切な全身投与レベルを見積もることができる。
投与量及び投与間隔を個別に調整して、治療効果を維持するために十分である、本発明の化合物の血漿レベルを提供することができる。注射による投与における通常の患者用量は、0.1μg〜約10.0mg、好ましくは約1.0μg〜約1.0mg、より好ましくは約10.0μg〜約300.0μg、最も好ましくは約50.0μg〜約200μgの範囲である。治療上有効な血清レベルは、一日量を一回、又は各日に多回投与することにより達成することができる。
投与される本発明の化合物の量は、当然、数ある要因の中で、処置される被検者、被検者の体重、罹患の重篤度、投与方法及び担当医の判断に左右される。例えば、投与量は、単回投与、多回適用又は制御放出により、医薬組成物で送達することがきる。投与は、断続的に繰り返すことができ、単独又は他の薬剤と組み合わせて提供することができ、そして気腫の有効な治療のために必要である限り続けられる。
好ましくは、本明細書中で記載されている本発明の化合物の治療有効投与量は、実質的に毒性を起こさずに治療上の利益を提供する。本発明の化合物の毒性は、標準的な薬学的手法を使用して測定することができ、当業者により容易に確認することができる。毒作用と治療効果との間の用量比が治療係数である。本発明の化合物は、他のレチノイドアゴニストと比較すると、好ましくは、気腫、癌又は皮膚障害の処置において、特に高い治療係数を示す。本明細書中で記載されている本発明の化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を有さない有効量を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される投与形態及び使用される投与経路に応じて、この範囲内で変更することができる。正確な配合、投与経路及び用量は、患者の状態を考慮して、個別の医者により選択することができる(例えば、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1 参照)。例えば、本発明の化合物の治療有効投与量は、経口又は肺に直接投与することができる。
本発明は、本発明の化合物及び組成物の調製を詳細に記載している下記の実施例を参照して、更に定義される。本発明の範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に対して多くの変更を実施することができることが、当業者には明白である。
実施例1:5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルアミン(1)の合成
無水酢酸85mL中の5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン(20.0g、106.2mmol)の0℃の溶液を、酢酸12.2mL、続いて硝酸(70%)11.1mLで処理して、室温に温めた。24時間後、反応混合物を氷水300mLに注ぎ、エーテルの3つの150mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物を、15%水酸化ナトリウム水溶液の4つの100mL部分、水の2つの200mL部分及び飽和塩化ナトリウム水溶液の1つの200mL部分で洗浄した。有機相を乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、6−ニトロ−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン(3)23.93g(97%)を淡黄色の固体として得た。
10%Pd/C 1.4gを、エタノール1L中の6−ニトロ−5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン(3)(23.93g、102.6mmol)の溶液に加えた。得られた懸濁液をH2の1気圧下に15時間保持した。次に反応混合物をセライト(2×)で濾過し、真空下で濃縮した。残渣をエーテル200mLに取り、MgSO4で乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮して、明褐色の固体を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5%〜20%、酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イルアミン(1)17.641g(85%)を淡黄色の固体として得た。融点:68〜69℃。
実施例2:4−〔3−ブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(5)の合成
テトラヒドロフラン(THF)30mL中の5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イルアミン(1)(0.3g、1.5mmol)の溶液を−78℃に冷却し、2.5M n−ブチルリチウム溶液(0.6mL)を滴加した。反応混合物を1時間かけて0℃に温めた。ヨードブタン(0.171mL)を0℃で加え、反応混合物を室温で15時間撹拌した。次に反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液50mLに注ぎ、酢酸エチルの3つの50mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、褐色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、ブチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(7)143mg(37%)を淡黄色の油状物として得た。
THF20mL中のブチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(7)(143mg、0.55mmol)の溶液を、トリホスゲン(0.35当量)57mgで処理し、還流下、3時間撹拌し、次に氷水50mLに注いだ。混合物を酢酸エチルの3つの50mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、ブチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−カルバモイルクロリド(9)368mgを得て、それを精製しないで使用した。
ピリジン30mL中のブチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−カルバモイルクロリド(9)(368mg、0.55mmol)の溶液を、p−アミノ安息香酸エチル(3当量)272mgで処理し、40℃で15時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して、橙色の油状物を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2.5%メタノール/ジクロロメタン)により精製して、エチル4−〔3−ブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(11)131mg(54%)を淡黄色の油状物として得た。
メタノール15mL、THF 5mL及び水5mL中のエチル4−〔3−ブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(11)(131mg、0.29mmol)の溶液を、水酸化リチウム(5当量)62mgで処理し、室温で8時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、残渣を濃HCl溶液で酸性化した。次に混合物を酢酸エチルの3つの20mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、黄色の固体を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、20%酢酸エチル/ヘキサン+数滴の酢酸)により精製して、4−〔3−ブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(5)34mg(28%)を淡黄色の固体として得た。MS(EI):(M++1)423
実施例3:4−〔3−ヘキシル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(13)の合成
ジクロロメタン20mL中の5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルアミン(1)(0.5g、2.46mmol)の溶液を、トリエチルアミン(1.5当量)0.51mL及び塩化ヘキサノイル(1当量)0.35mLで連続して処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、追加のジクロロメタン20mLで希釈し、水の2つの50mL部分及び飽和塩化ナトリウム水溶液の1つの50mL部分で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、ヘキサン酸(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミド(15)740mg(100%)を淡黄色の油状物として得た。
ジエチルエーテル(エーテル)20mL中のヘキサン酸(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミド(740mg、2.46mmol)の溶液を、水素化アルミニウムリチウム(LAH)400mgで処理し、混合物を90分間加熱還流した。0℃に冷却した後、水0.4mL、15%水素化ナトリウム水溶液0.4mL及び水1.2mLを連続して加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。MgSO4を加え、混合物を濾過し、真空下で濃縮して、淡黄色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、ヘキシル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(17)635mg(81%)を無色の油状物として得た。
トルエン10mL中のヘキシル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(17)(635mg、2.21mmol)の溶液を、トルエン中の20%ホスゲン溶液1.0mLで処理し、室温で9時間撹拌し、次に真空下で濃縮した。残渣をピリジン15mLで希釈し、p−アミノ安息香酸エチル(2当量)730mgで処理した。反応混合物を40℃で15時間加熱し、真空下で濃縮して、橙色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、10%酢酸エチル/ヘキサン、ドライパック)により精製して、エチル4−〔3−ヘキシル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(19)296mg(28%)を黄色の油状物として得た。
エタノール8mL中のエチル4−〔3−ヘキシル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(19)(296mg、0.62mmol)の溶液を、水3mL中の水酸化カリウム694mgで処理した。THF(2mL)を加え、混合物を45℃で2時間加熱した。反応混合物を水10mLで希釈し、濃HClでpHを2に調整し、次に酢酸エチルの3つの25mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、淡黄色の固体を得た。生成物をペンタン中で粉砕することにより精製し、4−〔3−ヘキシル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(13)231mg(83%)を淡黄色の固体として得た。融点:176.6〜177.1℃。
実施例4:4−〔3−ヘプチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(21)の合成
塩化ヘキサノイルを塩化ヘプタノイルに代える以外は、実施例3に記載の手順に従って、4−〔3−ヘプチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(21)を得た。MS(EI):(M-−1):463
実施例5:4−〔3−イソブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(23)の合成
塩化ヘキサノイルを塩化イソブチリルに代える以外は、実施例3に記載の手順に従って、4−〔3−イソブチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(23)を得た。MS(EI):(M-−1):421
実施例6:4−〔3−オクチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(25)の合成
塩化ヘキサノイルを塩化オクタノイルに代える以外は、実施例3に記載の手順に従って、4−〔3−オクチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2イル)−ウレイド〕−安息香酸(25)を得た。融点:165.8〜167.2℃。
実施例7:4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(27)の合成
ピリジン150mL中の5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イルアミン(1)(10.0g、49.3mmol)の溶液を0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物(34.2mL)を滴加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、酢酸エチル300mLで希釈し、水の2つの250mL部分で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、黄色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、1:6酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、2,2,2−トリフルオロ−N−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アセトアミド(29)15.05gを無色の油状物として得た。
ジメトキシスルホキシド(DMSO)105mL中の2,2,2−トリフルオロ−N−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アセトアミド(29)(15.05g、40.7mmol)の溶液を、水酸化カリウム(3.38g)で処理し、次に0℃に冷却した。DMSO15mL中のヨードペンタン(7.9mL)を、反応混合物に滴加し、温度を23℃に上昇させた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、水200mLで希釈し、エーテルの2つの200mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物を冷水の4つの200mL部分で抽出し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、褐色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、1:15酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、2,2,2−トリフルオロ−N−ペンチル−N−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アセトアミド(31)14.36gを淡黄色の油状物として得た。
エタノール140mL中の2,2,2−トリフルオロ−N−ペンチル−N−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アセトアミド(31)(13.6g、37.5mmol)の溶液を、水25mL中の水酸化カリウム(10.52g)の溶液で処理した。混合物を室温で2時間撹拌し、水100mLで希釈し、次に酢酸エチルの2つの250mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物を、冷水の6つの200mL部分で洗浄するか、又はpHが中性になるまで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、黄色の油状物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、ペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(33)9.86gを金色の油状物として得た。
THF20mL中のペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(33)(1.0g、3.6mmol)の溶液を、トリホスゲン(0.35当量)380mgで処理した。反応混合物を還流下、3時間撹拌し、氷水30mLに注ぎ、酢酸エチルの3つの30mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、ペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−カルバモイルクロリド(35)1.26gを白色の固体として得て、それを精製しないで使用した。
ピリジン20mL中のペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−カルバモイルクロリド(35)(900mg、2.6mmol)の溶液を、p−アミノ安息香酸エチル(3当量)481mgで処理し、40℃で15時間撹拌した。反応混合物を冷水100mLで希釈し、酢酸エチルの2つの100mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、橙色の油状物を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、エチル4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(37)260mgを淡黄色の油状物として得た。
エタノール10mL中のエチル4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(37)(360mg、0.77mmol)の溶液を、水2mL中の水酸化カリウム430mgで処理した。THF(2mL)を加え、混合物を45℃で2時間加熱した。反応混合物を水10mLで希釈し、濃HClでpHを2に調整し、次に酢酸エチルの3つの25mL部分で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、淡黄色の固体を得た。生成物をペンタン中で粉砕することにより精製し、4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(27)280mgを白色の固体として得た。融点:184〜186℃。
実施例8:3−フルオロ−4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(57)の合成
5.72gのNa2Cr2O7を含有する、水13mL中の3−フルオロ−4−ニトロトルエン(2g、12.82mmol)の溶液を、濃硫酸14.2mLを滴下して処理し、室温で1時間撹拌し、次に水20mLで希釈した。混合物を濾過し、回収した固体を、2%水酸化ナトリウム溶液50mL中で穏やかに加熱した。得られた溶液を冷却し、濾過し、濾液を濃HClで酸性化した。水相を酢酸エチルの2つの100mL部分で抽出し、合わせた抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液100mLで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、3−フルオロ−4−ニトロ安息香酸1.6g(68%)を黄色の固体として得た。
メタノール35mL中の3−フルオロ−4−ニトロ安息香酸(1.6g、8.65mmol)の0℃の溶液を、塩化チオニル1.27mLを滴下して処理し、室温で一晩撹拌し、揮発物質を真空下で除去した。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5%メタノール/ジクロロメタン)により精製して、メチル3−フルオロ−4−ニトロベンゾアートと3−メトキシ−4−ニトロ安息香酸(65)からなる3:2混合物1.7gを得た。この混合物を次の工程に直接使用した。
10%パラジウム担持炭150mgを、酢酸エチル50mL中のメチル3−フルオロ−4−ニトロベンゾアートと3−メトキシ−4−ニトロ安息香酸からなる上記混合物(1.7g)の溶液に加え、H2下(45psi)で2時間保持した。反応混合物をセライトで濾過し、真空下で濃縮した。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、10%メタノール/ジクロロメタン)により精製して、メチル4−アミノ−3−フルオロベンゾアート0.7gをオフホワイトの固体として得た。
トルエン6mL中のペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−アミン(51)(390mg、1.45mmol)の溶液を、トルエン中の20%ホスゲン溶液0.9mLで処理し、室温で12時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮して、ペンチル−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−カルバモイルクロリドを淡黄色の固体として得た。固体をピリジン5mLに溶解し、メチル4−アミノ−3−フルオロベンゾアート0.5gで処理し、40℃で3日間撹拌した。揮発物質を真空下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、20%酢酸エチル/ヘキサン)に付して、メチル3−フルオロ−4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート17mgを得た。
THF10mL/メタノール3mL/水3mL中のメチル3−フルオロ−4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−ベンゾアート(17mg)の溶液を、水酸化リチウム水和物(20mg)で処理した。混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水5mLで希釈し、濃HClでpHを2に調整した。混合物を3つの10ml部分のエーテルで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、褐色の固体を得た。生成物をヘキサン中で粉砕することにより精製し、3−フルオロ−4−〔3−ペンチル−3−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−2−イル)−ウレイド〕−安息香酸(57)12mgを黄色の固体として得た。融点:151〜157℃。
実施例9:本発明の化合物によるラットの肺における肺胞修復の測定
本発明の化合物は、エラスターゼ誘発気腫のラットモデルにおける、肺胞の修復に対するその効果を評価した(Massaro et al., Nature, 1997, Vol. 3, No. 6: 675; Massaro et al., 米国特許第5,998,486号)。好ましくは、動物を約8匹の処置群に分けた。約2U/グラム体重の膵エラスターゼ(ブタ由来、Calbiochem)を1回の点滴注入して、雄Sprague Dawleyラットに肺炎症及び肺胞損傷を誘発させた。
本発明の化合物を配合したMiglyolの都合のよい経口用量(好ましくは、約10.0mg/kg〜0.0001mg/kg)で動物を処置し、損傷を受けた21日後から始め、1日1回、経口投与した。対照群をエラスターゼにより惹起し、21日後、ビヒクル(Miglyol)で14日間処置した。最終投与の24時間後、動物を強い麻酔下で失血させて殺処理した。分析のため、血液を失血時に回収した。
10%中性緩衝ホルマリンの一定速度(1mL/グラム体重/分)の気管内点滴注入により、肺を膨張させた。処置の前に、肺を切除し、固定液に24時間浸漬した。標準的方法を使用して、5μmのパラフィン切片を調製した。切片をヘマトキシリンとエオシンにより染色した。肺胞測定を、コンピュータ化形態分析により、ラット1匹につき肺の4つの領域で実施した。1処置群当たりの平均値は、1処置群における全8匹のラットの1匹あたりの平均領域と、下記の数式により、エラスターゼ+ビヒクル処置群に対する修復率として表される、エラスターゼ障害の修復を合計して、決定することができる。
幾つかの場合では、処置群内のラットの変動性が大きすぎで、群平均が統計的に有意ではなかった。
化合物27の結果を図1に例示する。RARg特異性アゴニスト27の投与を受けたラットでは、肺胞修復は、低投与レベル(0.01又は0.001mg/kg)で有意(p<0.05)であった。
実施例10:RARアゴニストのトリグリセリドレベルに対する効果
60匹の雄 Wistar Hanラット(Charles Rivers Laboratories)をこの実験に使用した。受け取ったラットの体重は、200〜250gmで異なっていた。本試験に使用した化合物は、0.01%BHAと0.01%BHTを有する、Miglyol 812、バッチ000719、製品番号6330(Condea)に配合されていた。下記に例示した3個のRARアゴニストを、トリグリセリドレベルに対する効果に関して比較した。化合物39及び40は従来技術の化合物(Hashimoto, Yuichi; Kagechika, Hiroyuki; Kawachi, Emiko; Fukasawa, Hiroshi; Saito, Go; Shudo, Koichi. "Evaluation of differentiation-inducing activity of retinoids on human leukemia cell lines HL-60 and NB4" Biol. Pharm. Bull. (1996), 19 (10), 1322-1328; and Takagi, Kanji; Suganuma, Masami; Kagechika, Hiroyuki; Shudo,Koichi; Ninomiya, Mitsuo; Muto, Yasutoshi; Fujiki, Hirota." Inhibition of ornithine decarboxylase induction by retinobenzoic acids in relation to their binding affinities to cellular retinoid-binding proteins" J. Cancer Res. Clin. Oncol. (1988), 114 (3), 221-4 参照)であるが、化合物27は本明細書の実施例7で調製された化合物である。
動物に化合物27、39及び40又はビヒクル(1日当たり1.0mL用量を1回、合計10用量)を2週間経口投与した。投与量は、0.3mg/kg、1mg/kg、及び3mg/kgであった。動物を、全体の毒性(%体重変化及び粘膜皮膚)をモニターするために、1週間に2回計量した。
終末の血液回収の前に、動物を少なくとも4時間断食させた。実験の終わりに、ペントバルビタール(腹腔内)(30〜40mg)を使用して、動物に強い麻酔をかけた。血液化学(Quality Clinical Lab, Mountain View, CA)及びPK分析(終末)のために、5〜6mLの血液を心臓穿刺により回収した。腹部大動脈からの失血又は頸部脱臼により動物を安楽死させた。血漿を回収し、−20℃で保存した。
ラット血漿中に含まれるトリグリセリドの定量化を、確立した手法を使用して実施してもよい。簡潔には、トリグリセリド/GPOキットの製造者(Boehringer Mannheim #1488872)により記載されている指示に従って、血漿をリパーゼ及びグリセロキナーゼで連続して処理して、血漿トリグリセリドをジヒドロキシアセトンと過酸加水素に変換することができる。過酸化水素は、Hitachi 911 Chemistry Analyzer により比色的に定量化することができる。ラットでは、正常のトリグリセリドレベルは、約75mg/dl〜約175mg/dlである。トリグリセリド値は都合のよい毒性の尺度である。
結果を図2及び3に示す。
図2は、ビヒクル対照(100%)に対する百分率で表されているトリグリセリドレベルを示す。従来技術の化合物39及び40による処置では、化合物40の用量の増加に伴いトリグリセリドレベルを増加させながら、全ての用量レベルにおいてビヒクル対照(>100%)に対してトリグリセリドレベルを上昇させる結果となった。対照的に化合物27による処置は、トリグリセリドレベルを有意に上昇させず、高い用量でビヒクル対照(<100%)に対して低下させる結果となった。
実施例11:レチノイドレセプターに対する結合親和性及びレチノイドレセプターのトランス活性化
本発明の化合物のRAR結合親和性を、C. Apfel et al., Proc. Nat. Sci. Acad. (USA), 89: 7129-7133 (1992) で記載されているリガンド結合アッセイにより測定した。化合物は本発明アッセイにおいて活性であった。
試験される特定のレチノイン酸レセプター(α、β及びγ)それぞれのトランス活性化は、従来技術で記載されている方法を使用して測定することができる(Apfel et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1992, 89, 7129; Bernard et al., Biochem. And Biophys. Res. Comm., 1992, 186, 977)。本発明の選ばれた化合物のトランス活性化データを、従来技術の化合物39及び40と比較した。データは、本発明の化合物、特に化合物55及び27が、γレセプターを介する転写活性に対して予想外に選択的であり、それに対して従来技術の化合物は、パン−アゴニストであることを示した。
実施例12:本発明の化合物の経口配合物
表2は、本発明の化合物の錠剤投与剤形の成分を提示する。
活性成分(すなわち本発明の化合物)を、均一の混合物が形成されるまで、乳糖と混合する。残りの成分を乳糖混合物と十分に混合し、次に混合物を1錠の錠剤に圧縮する。
実施例13:本発明の化合物の経口配合物
気腫の処置に適する本発明の化合物のカプセル剤を、表3で提示される成分を使用して製造することができる。
上記の成分を十分に混合し、ハードシェルゼラチンカプセルに充填する。
実施例14:本発明の化合物の懸濁剤用配合物
表4で示される上記成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
実施例15:本発明の化合物の注射用配合物
表5で示される上記成分を混合して、注射用配合物を形成する。
実施例16:本発明の化合物の注射用配合物
実施例17:本発明の化合物の鼻腔用配合物
実施例18:13−シス−レチノイン酸の吸入用配合物
本発明の化合物を、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンに、溶媒を蒸発させることなく注意深く溶解し、得られた溶液を濾過し、密閉容器に保存する。得られた溶液及び噴射ガスを、当業者に既知の方法を使用して、表8で示される百分率で調合するためにエアゾール缶に導入することができる。1スプレー当たり100μgから300μgの間で放出するように設計された絞り弁を使用して、本発明の化合物の正確な用量を送達することができる。
実施例19:本発明の化合物の吸入用配合物
Cremaphor RH 40は、BASF corporationから購入することができる。他の乳化剤又はソリュタイザーは当業者に知られており、Cremaphor RH 40の代わりに、水性溶媒に加えることができる。本発明の化合物、乳化剤、1,2−プロピレングリコール及び水を一緒に混合して、溶液を形成する。上記の液体配合物を、例えば、適切なキャリアーガス(例えば、窒素又は二酸化炭素)と共に加圧ガスエアゾールに使用することができる。
実施例20:本発明の化合物のEHD配合物
本発明の化合物、乳化剤、プロピレングリコール及び水を一緒に混合して、溶液を形成する。上記液体配合物を、当該技術で既知の典型的なEHD装置で使用することができる。
上記記載の本発明の実施態様は、単に例示的であることを意図しており、当業者は、本明細書中で記載されている特定の手法に対する数多くの同等物を認知するか、慣例の実験以上を行うことなく、確認することができる。そのような同等物は、全て本発明の範囲内であると考慮され、請求項に包含される。