図1は、本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成を前面側から見たときの斜視図であり、同図(A)は不使用時の状態を示し、同図(B)は使用時の状態を示す。なお、以下の説明において、「左右」及び「前後」はインクジェット式プリンタの前面側から見たときの方向をいうものとする。このインクジェット式プリンタ100は、扁平な直方体状の筐体110を備えた携帯性の高い薄型プリンタである。筐体110は、略平面的に形成された下ケース111と、この下ケースと略同一寸法の上ケース112を備えている。
下ケース111は、上面が開放された器状に形成されており、内部にプリンタの主要構成部品が収納される。上ケース112は、下ケース111より深さが浅い器状に形成されており、上ケース112の開放下面が下ケース111の開放上面に向くようにして下ケース111と結合される。下ケース111及び上ケース112は、金属またはプラスチックにより形成されている。金属で形成する場合は、プレス加工等により周壁と一体で成形し、もしくは別体で成形して溶接もしくは接着剤により接着等する。プラスチックで形成する場合は、射出成形等により周壁と一体で成形し、もしくは別体で成形して接着剤により接着等する。そして、下ケース111と上ケース112は、図示しないネジもしくはスナップフィット等による締結等により両側に別途装着される一対のフレーム101、101a(図2参照)を介して結合されている。
このインクジェット式プリンタ100の携帯性を高めるには、下ケース111と上ケース112を備えた筐体110の厚さ寸法を可能な限り薄くし、かつ筐体110の縦横寸法を可能な限り小さくすれば良く、特に筐体110の厚さ寸法、すなわち下ケース111と上ケース112の間隙の精度は重要である。上述した構成によれば、下ケース111と上ケース112の間隙の精度はフレーム101、101aの厚さ方向の精度のみにより決まるため、間隙の精度が出し易く、また間隙の精度管理も容易となる。なお、スナップフィットによるフレーム101、101aとの締結を採用することにより、下ケース111と上ケース112の取り外し・組み付け作業が簡易になるので、紙詰まり等のエラー解除や部品交換等の修理を迅速に完了させることができる。
さらに、下ケース111は、周壁の前面側の略中央部が排紙口113として切り欠かれ、周壁の背面側の略中央部がインクカートリッジの挿抜口114として切り欠かれている。上ケース112は、略中央部に矩形状の給紙口115が穿設されている。そして、この給紙口115には、給紙口115を塞ぐ大きさの給紙扉116が嵌め込まれている。この給紙扉116は、前端部を軸としてケース面から上方に鋭角の角度範囲で旋回自在に上ケース112に軸支持されており、旋回により後端側が持ち上がって給紙口115が開くようになっている。
また、上ケース112の上には、蓋と紙受けを兼ねた用紙ホルダ117が配設されている。この用紙ホルダ117は、上ケース112の略中央部を背面側から前面側にかけて覆う大きさに形成されており、後端部を軸としてケース面から上方に鈍角の角度範囲で旋回自在に下ケース111に軸支持されている。用紙ホルダ117は、図1(A)に示すように、前方に旋回して上ケース112の略中央部に背面側から前面側にかけて形成されている凹部118に嵌め込まれることにより蓋として機能し、図1(B)に示すように、後方に旋回して手前に傾斜した状態で停止することにより紙受けとして機能するようになっている。これにより、インクジェット式プリンタ100を使用しないときは用紙ホルダ117をコンパクトに収納しておくことができる。なお、この用紙ホルダ117の開閉と給紙扉116の開閉は、図示しないリンク機構により連動するようになっている。
以上のような外観構成のインクジェット式プリンタ100を携帯性の高い薄型プリンタとするために、下ケース111と上ケース112の間隙に収納されているプリンタの主要構成部品の配設位置が工夫されている。すなわち、プリンタを構成する用紙供給部、用紙排出部、記録部、カートリッジ収納部、駆動制御部及びヘッド吐出特性回復部等の各機能部は、下ケース111上に互いに隣接しつつ直に配置されている。以下、図面を参照して、それらの詳細を説明する。
図2は、上記インクジェット式プリンタ100の内部構造を示す斜視図、図3は、その平面図、図4は、そのA−A線断面図、図5は、図3の左側面図、図6は、前面右側の更に詳細な内部構造を示す斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、本発明の特徴的な部分を含む用紙供給部及び用紙排出部120と、記録部140、カートリッジ収納部160、駆動制御部170及びヘッド吐出特性回復部180等が、下ケース111の内部に収納されている。各機能部の詳細を以下順次説明する。
用紙供給部及び用紙排出部120は、図2〜図4に示すように、紙受けとして機能している用紙ホルダ117から給紙口115を通り、インク受け部143を通って排紙口113へ至る紙経路に沿って用紙を搬送する機能を有しており、上流側から下流側にかけて以下の部材が順に配設されている。すなわち、給紙扉116に固定された可動紙案内上121a及びこの可動紙案内上121aの下部において上述したリンク機構を介して対向配設されている可動紙案内下121b、上下に所定間隔を空けて対向配置されている固定紙案内上122a及び固定紙案内下122b、上下に対向配置されている1本の紙送りローラ123a及び複数個の従動ローラ123b、上下に対向配置されている複数個の排紙スターホイール124a及び1本の排紙ローラ124bが、背面側から前面側にかけて配設されている。
可動紙案内上121a及び可動紙案内下121bは、板金で形成され、前端部を軸として下ケース111の面から上方に鋭角の角度範囲で旋回自在に下ケース111に軸支持されており、用紙ホルダ117の開閉と連動して後端部が上下に旋回するようになっている。固定紙案内上122a及び固定紙案内下122bは、板金で形成され、下ケース111に図示しないネジもしくはスナップフィット等による締結等により固定されている。
紙送りローラ123aの軸及び排紙ローラ124bの軸は、各両端が下ケース111の両側に別途装着される一対のフレーム101、101aに、負荷軽減のために図6に示す軸受123aa、124bbを介して軸支持されている。このフレーム101、101aは、プラスチックで形成されており、図示しないネジもしくはスナップフィット等による締結等により下ケース111に装着されている。なお、紙送りローラ123aの外周面には、搬送時の摩擦係数を高めるためにゴムやセラミック粒子等が被覆され、排紙ローラ124bの外周面には、搬送時の摩擦係数を高めるために複数のゴムローラが嵌入されている。紙送りローラ123aと従動ローラ123bは、給紙口115から挿入される用紙を挟持して送り出すようになっている。
また、従動ローラ123bは、紙送りローラ123aの下方に軸に沿って複数配列され、下ケース111に固定されている従動ローラ受け台125に係止されており、図示しない1枚の板バネにより紙送りローラ123aに当接されて付勢されている。排紙スターホイール124aは、排紙ローラ124bの軸に沿って複数配列され、下ケース111に固定されている排紙スターホイール受け台126に係止されており、図示しない捩りコイルバネ等により1つおきに排紙ローラ123bに当接されて付勢されている。排紙スターホイール124aと排紙ローラ124bは、紙送りローラ123aと従動ローラ123bから搬送されてくる用紙を挟持して送り出すようになっている。ここで、本発明の特徴的な部分である従動ローラ123bと排紙ローラ124bの間に架け渡されているベルト10(図7、図8参照)について図を参照して説明する。
図7は、用紙供給部及び用紙排出部120の周辺を表から見た斜視図、図8は、それを裏から見た斜視図である。従動ローラ(第1の媒体送りローラ)123bと排紙ローラ(第2の媒体送りローラ)124bの間には、複数本のベルト10が所定間隔を空けて架け渡されている。これにより、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの加工公差により回転速度差が発生しても、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの間に架け渡されたベルト10がその回転速度差を吸収して一定搬送速度とすることができる。したがって、従来のように用紙が紙送りローラ123aと排紙ローラ124bの間で挟持されて搬送されても、用紙に引張力は働かず、高精度な搬送を行うことができる。また、ピンの無い複数のベルトにより用紙を搬送するので、通常の用紙を高精度に搬送することができる。また、用紙がインクで湿ってコックリングが発生し波打っても、複数のベルト10の隙間に入り込むので用紙が浮き上がることは無く、高精度な搬送及び記録を行うことができる。
このベルト10は、例えばステンレス等の金属の薄板で形成されている。これにより、搬送精度に直接関わるベルト10の加工精度を高めることができる。また、ベルト10の表面には、ゴムやセラミック粒子等が被覆されている。これにより、搬送時の摩擦係数を高めて搬送精度を向上させることができる。さらに、ベルト10には、複数の孔が穿設されている。これにより、ベルト10の下方に吸引手段を配設すれば、孔を通して用紙をベルト10に吸着させることができ、さらに搬送精度を高めることができる。
また、ベルト10間には、後述するインク受け部143が配設され、その中には不織布やスポンジ等で成るインク吸収体143aが敷き詰められている。特に、インク吸収体143aが用紙の側縁に対応するようにベルト10を配設することにより、縁無し印刷を行うときに吐出されたインクのうち用紙から外れたインクをインク吸収体143aで確実に吸収させることができ、用紙の汚染等を防止することができる
なお、例えば排紙ローラ124bにベルト10のガイド溝等を形成しておくことにより、ベルト10が従動ローラ123bや排紙ローラ124bからずれたり外れたりする事態を防止することができる。また、紙送りローラ123aと従動ローラ123bが上下逆に配設されたプリンタの場合は、ベルト10を紙送りローラ123aと排紙ローラ124bの間に架け渡すようにすれば良い。
また、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの間に略ローラ全長にわたってベルトを架け渡すようにしても、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの回転速度差を吸収して一定搬送速度とすることができるので、高精度な搬送を行うことができる。また、後述するように紙送りローラ123a(従動ローラ123b)と排紙ローラ124bは、搬送駆動力伝達機構130により回転制御されるが、紙送りローラ123a(従動ローラ123b)のみ回転制御して、排紙ローラ124bはベルト10により回転制御するようにしても良い。
このような構成において、用紙は、用紙ホルダ117から可動紙案内上121a及び可動紙案内下121bの間と固定紙案内上122a及び固定紙案内下122bの間を通り、ベルト10上、すなわち紙送りローラ123aからインク受け部143を通って排紙ローラ124bへと搬送されることになる。ここで、図4の一点鎖線で示すように、上記各部材121a等により形成される用紙の搬送経路Lは、略U字状となるように形成されている。したがって、搬送途中の用紙は、紙送りローラ123a付近を最下端として前後に湾曲した形状となるので、紙送りローラ123aと排紙ローラ124bの間に位置する用紙の部分はインク受け部143に押し付けられることになる。このため、インク受け部143上の用紙の部分と後述する記録ヘッド142との距離を常に一定に保持することができるので、記録精度を向上させることができる。
さらに、用紙供給部及び用紙排出部120は、図2、図3及び図5に示すように、紙送りモータ127及び搬送駆動力伝達機構130が、下ケース111の左側面側に配設されている。紙送りモータ127は、下ケース111の背面側であって下ケース111の左側面と可動紙案内下121bとの間に配設されているフレーム101に取り付けられており、例えばDCモータやステッピングモータが使用される。
搬送駆動力伝達機構130は、紙送りモータ127の正逆回転の駆動力を紙送りローラ123a及び排紙ローラ124bへ伝達して回転制御する機能を有しており、下ケース111の背面側から前面側にかけて以下の部材が順に配設されている。すなわち、紙送りモータ127の軸に嵌入された第1ギア131a、フレーム101に取り付けられて第1ギア131aと噛み合う第2ギア131b、この第2ギア131bと同軸に嵌入された第1プーリ132a、フレーム101に取り付けられた第1テンションプーリ132b、紙送りローラ123aの軸に嵌入された第2プーリ132c、第1プーリ132aから第1テンションプーリ132bを介して第2プーリ132cに掛けて架け渡されたベルト133が配設されている。
そして、第2プーリ132cと同軸に嵌入された第3プーリ134a、フレーム101に取り付けられた第2テンションプーリ134b、排紙ローラ124bの軸に嵌入された第4プーリ134c、第3プーリ134aから第2テンションプーリ134bを介して第4プーリ134cに掛けて架け渡されたベルト135が配設されている。そして、第2ギア131bと同軸には、用紙の搬送位置を検出するためのロータリーエンコーダスケール128が配設されている。そして、ロータリーエンコーダスケール128の磁気情報を読み取るロータリーエンコーダ129が、フレーム101に取り付けられている。なお、搬送駆動力伝達機構130は、ベルト機構の代わりにギア輪列を使用してもよい。
以上のような紙送りモータ127及び搬送駆動力伝達機構130によれば、各部材が略水平に配置されているので、インクジェット式プリンタ100を薄型化することができる。また、紙送りローラ123a及び排紙ローラ124b等はロータリーエンコーダ129による検知信号に基づいて駆動制御されるので、用紙を高精度に搬送することができる。なお、この用紙としては、普通紙、専用紙、推奨OHPシート、光沢紙、光沢フィルム、ラベルシート、官製葉書等が利用できる。
記録部140は、図2〜図4に示すように、インク受け部143上に搬送されてきた用紙の部分に対して記録する機能を有しており、紙送りローラ123aと排紙ローラ124bの間から固定紙案内上122a及び可動紙案内上121aに掛けて以下の部材が配設されている。すなわち、用紙の搬送直交方向(主走査方向)に移動可能なキャリッジ141、このキャリッジ141の下端面に取り付けられた記録ヘッド142、キャリッジ141の下方で移動方向に沿って配設されたインク受け部143、キャリッジ141の移動を案内するキャリッジガイド軸144、記録ヘッド142とインクカートリッジを繋ぐインクチューブ145が配設されている。
キャリッジ141は、図4に示す後部に形成されている軸受け部141aがキャリッジガイド軸144に摺動自在に貫装され、図4に示す前部に装着されている板バネ141bが排紙スターホイール受け台126を摺動自在に挟持している。キャリッジ141は、インクジェット式プリンタ100が非記録状態であるオフ状態もしくはスタンバイ状態のときは図2及び図3に示す待機位置(ホームポジション)に位置しており、記録状態のときはホームポジションを離脱して搬送されてくる用紙の両側端部間をキャリッジモータ146等によりキャリッジガイド軸144と排紙スターホイール受け台126に沿って往復移動するようになっている。
記録ヘッド142は、ブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、イエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等の各色のインクを吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド142は、各色毎のインクチューブ145に繋がる複数の圧力発生室とそれらに繋がるノズルを備えており、例えば圧電素子や発熱素子等により圧力発生室内の圧力を変動させて、圧力発生室内に貯留されているインクをノズルから吐出させるようになっている。なお、本実施形態ではインクチューブ145からはインクが加圧供給されるので、記録ヘッド142内部は減圧弁により負圧にされてインク漏れが防止されている。
インク受け部143は、紙送りローラ123aと排紙ローラ124bの間であってキャリッジ141の下方で移動方向に沿って延びる矩形容器状に形成されている。このインク受け部143の中には、不織布やスポンジ等で成る図7に示すインク吸収体143aが敷き詰められている。そして、インク受け部143は、下ケース111に対して図示しないネジやスナップフィット等により着脱自在に装着されている。特に、いわゆる縁無し印刷を行うときに、吐出されたインクのうち用紙から外れたインクはインク吸収体143aに吸収されるが、吸収量が飽和状態に近づいたときはインク受け部143全体を簡単に取外すことができるので、インク吸収体143aを容易に交換することができる。
キャリッジガイド軸144は、固定紙案内上122aの上方に配設されている。このキャリッジガイド軸144は、両端が下ケース111の両側に別途装着される一対のフレーム101、101aに軸支持されている。すなわち、キャリッジガイド軸144は、紙送りローラ123aの軸及び排紙ローラ124bの軸を軸支持している一対のフレーム101、101aに軸支持され、さらに紙送りローラ123a及び排紙ローラ124bと略同一平面上となるように配設されている。そして、キャリッジガイド軸144、紙送りローラ123a、排紙ローラ124bは、この順で搬送上流側から順に配設されているので、キャリッジ141は、紙送りローラ123aと干渉しないように紙送りローラ123aを跨ぐ形で配設されている。
一般的なプリンタのキャリッジガイド軸、紙送りローラ及び排紙ローラを軸支持するフレームは、1枚の板金を折り曲げて製作されている。そして、紙送りローラと排紙ローラの各一端は、同一の折り曲げ部分に取り付けられているが、キャリッジガイド軸の一端は、別の折り曲げ部分に取り付けられている。このため、板金の平坦度や各折り曲げ部分の曲げ精度が低いと、各軸に捩れが発生したり、各軸間の平行度が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態のフレーム101、101aは、プラスチックで形成されており、キャリッジガイド軸144、紙送りローラ123a、排紙ローラ124bの各両端は、同一の一対のフレーム101、101aに取り付けられている。したがって、フレーム101、101aの成形精度のみを管理することにより、各軸の捩れの発生を防止し、各軸間の平行度を高精度に維持することができる。また、本実施形態のキャリッジガイド軸144、紙送りローラ123a、排紙ローラ124bは、略同一平面上に配設され、キャリッジ141は、紙送りローラ123aと干渉しないように紙送りローラ123aを跨ぐ形で配設されているので、インクジェット式プリンタ100を薄型化することができる。
インクチューブ145は、上記各色用のチューブが束ねられて可動紙案内上121aの上面に配設されており、各一端が対応する各色のインクカートリッジ161、162に繋がれ、各他端が対応する各色の記録ヘッド142に繋がれている。そして、インクチューブ145は、加圧された各色のインクをインクカートリッジ161、162から記録ヘッド142に送るようになっている。このインクチューブ145は、キャリッジ141の移動時にキャリッジ141等と干渉せず、かつ折れ曲ったり交差したりしないように、可動紙案内上121aの上面に略U字状に湾曲させて配設されている。なお、可動紙案内上121aは、後端部が略L字状に折り曲げられており、この折り曲げ部121aaが、キャリッジ141の移動時にインクチューブ145が可動紙案内上121aの後方へ飛び出さないように堰き止める機能を有している。
さらに、記録部140は、図2〜図4に示すように、キャリッジモータ146が下ケース111の右側面側に配設され、移動駆動力伝達機構150がキャリッジガイド軸144に沿って配設されている。キャリッジモータ146は、下ケース111の右側面側であってキャリッジ141の後方に取り付けられており、例えばDCモータやステッピングモータが使用される。
移動駆動力伝達機構150は、キャリッジモータ146の正逆回転の駆動力をキャリッジ141へ伝達して移動制御する機能を有しており、固定紙案内上122aの上方であってキャリッジガイド軸144の後方及びキャリッジガイド軸144と紙送りローラ123aとの間に以下の部材が配設されている。すなわち、キャリッジモータ146の軸に嵌入された図6に示す第1プーリ151aと左側のフレーム101aの近傍に軸支持された第2プーリ151bが、キャリッジガイド軸144の後方に配設されている。
さらに、各プーリ151a、151b間に架け渡されたキャリッジベルト152が、固定紙案内上122aの上方と固定紙案内下122bの下方を通過して回動するように配設、すなわち回動しているキャリッジベルト152の中を用紙が通過するように配設されている。このように用紙の搬送経路を各プーリ151a、151b間に架け渡されたキャリッジベルト152の間に設けることにより、インクジェット式プリンタ100を薄型化することができる。このベルト機構としては、歯付きベルトと歯付きプーリが高精度であるため望ましいが、平ベルトとプーリでも良い。なお、固定紙案内上122aは、後端部が略L字状に折り曲げられており、この折り曲げ部122aaが、チューブ145が固定紙案内122aの前方へ飛び出し、キャリッジベルト152と干渉する事がないよう止める機能を有している。
さらに、キャリッジ141の移動位置を検出するためのリニアエンコーダスケール147が、キャリッジ141の下方であってキャリッジガイド軸144と紙送りローラ123aとの間に配設されている。そして、リニアエンコーダスケール147の磁気情報を読み取るリニアエンコーダ148が、キャリッジ141の下面に取り付けられている。キャリッジ141が紙送りローラ123aを跨ぐ形で配設されていることから、キャリッジ141の下方であってキャリッジガイド軸144と紙送りローラ123aとの間にはデッドスペースが形成されることになるが、上述したような配置を取ることによりデッドスペースを無くすことができる。以上のようなキャリッジモータ146及び移動駆動力伝達機構150によれば、キャリッジベルト152に連結されたキャリッジ141はリニアエンコーダ148による検知信号に基づいて駆動制御されるので、キャリッジ141に搭載された記録ヘッド142を高精度に往復移動させることができる。
カートリッジ収納部160は、図2、図3、図5に示すように、ブラックのインクカートリッジ161とカラーのインクカートリッジ162を収納して各色インクを記録ヘッド142へ供給する機能を有しており、可動紙案内上121a及び可動紙案内下121bと下ケース111の背面の間に以下の部材が配設されている。すなわち、各インクカートリッジ161、162を抜き差し自在にそれぞれ保持するカートリッジホルダ163、164、各インクカートリッジ161、162内のエアー圧力を調整するバルブ機構165が配設されている。
インクカートリッジ161、162は、図5に示すように、例えば硬質プラスチック材料で直方体状に形成された外装ケース161a、162a内に、例えば可撓性材料で袋状に形成されて内部にブラックインクまたはイエロー、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ等の各色のインクが充填されたインクタンク161b、162bが密閉されている。インクタンク161b、162bは、インクチューブ145を介して記録ヘッド142に送る各色のインクを貯留しているが、本実施形態のインクチューブ145は比較的細くて流路抵抗が大きいため、ポンプ機構200から導入されるエアーにより加圧されるようになっている。
外装ケース161a、162aの前面中央部には、インク供給口161c、162cが形成されている。インク供給口161c、162cは、内部のインクタンク161b、162bとインク穴を介して接続されている。ロッド161d、162dは、略十字形状の断面をしており、インクタンク161b,162b内のインクが流出して該インクタンク161b,162bがつぶれた場合にもインクタンク161b,162bのフィルムとロッド161d,162dの間に流路を確保して、インクの流出経路を確保する構造である。そして、インク供給口161c、162cには、ゴムバルブ161e、162eが圧縮バネ161f、162fを介して嵌め込まれている。ゴムバルブ161e、162eは、例えば熱可塑性エラストマ等で円板状に形成されている。
カートリッジホルダ163、164は、図5に示すように、インクカートリッジ161、162のインク供給口161c、162cを開閉するインク供給針163a、164aが、下ケース111の背面側を向くようにして配設されている。これにより、インクカートリッジ161、162をカートリッジホルダ163、164に対して抜き差しするのみで、カートリッジホルダ163、164のインク供給針163a、164aをインクカートリッジ161、162のインク供給口161c、162cに対して出し入れすることができる。
この出し入れについてさらに詳細に説明すると、インクカートリッジ161、162をカートリッジホルダ163、164に挿入すると、インク供給針163a、164aがゴムバルブ161e、162eに当接してゴムバルブ161e、162eをインク供給口161c、162cの奥側へ押し込む。これにより、ロッド161d、162dの先端側面に穿孔されている供給口が開放され、インクタンク161b、162b内の各色毎のインクをインク供給針163a、164aを介して対応する各色毎のインクチューブ145に流れ込ませることができる。
一方、インクカートリッジ161、162をカートリッジホルダ163、164から引き出すと、インク供給針163a、164aがゴムバルブ161e、162eから外れ、圧縮バネ161f、162fの作用によりゴムバルブ161e、162eがインク供給口161c、162cの手前側へ押し出される。これにより、ロッド161d、162dの先端側面に穿孔されている供給口がゴムバルブ161e、162eにより閉鎖され、インクタンク161b、162b内の各色毎のインクの流出を止めることができる。
このカートリッジホルダ163、164に保持されるインクカートリッジ161、162、紙送りモータ127、キャリッジモータ146は、略同一平面上に配設されているので、インクジェット式プリンタ100を薄型化することができる。また、カートリッジホルダ163、164は、用紙ホルダ117の旋回軸側に配設されており、ここにインクカートリッジ161、162を保持することにより用紙ホルダ117下方に生じるデッドスペースを有効活用してインクジェット式プリンタ100を薄型化のみならずインクジェット式プリンタ100全体を小型化することができる。
バルブ機構165は、インクタンク161b、162bに掛かるエアー圧を調整する機能を有しており、エアー圧を所定の圧力で維持するチェックバルブ(逆止弁)、エアー圧が所定の圧力から増加してしまうことを防止するリリーフバルブ(圧力制御弁)、このリリーフバルブと並列に配設されたソレノイドバルブを備えている。インクタンク161b、162bが加圧された状態でインクカートリッジ161、162をカートリッジホルダ163、164から引き出すと、同様に加圧されているインクチューブ145内のインクが逆流してインク供給針163a、164aから吹き出してくる。そこで、インクカートリッジ161、162内のエアーを外部へ逃がすことにより上記吹き出しを防止するためにソレノイドバルブは設けられている。
駆動制御部170は、図2〜図4に示すように、紙送りモータ127、キャリッジモータ146、ポンプモータ、バルブ機構165、記録ヘッド142の各駆動を制御する機能を有しており、下ケースの左背面側から可動紙案内上121aに掛けて以下の部材が配設されている。すなわち、図示しない各種電子部品が実装された基板を内蔵する基板ケース171、基板からの制御信号を伝送するフレキシブルフラットケーブル(FFC)172及びフレキシブルプリントケーブル(FPC)173が配設されている。この基板及びカートリッジホルダ163、164に保持されるインクカートリッジ161、162は、略同一平面上に配設されているので、インクジェット式プリンタ100を薄型化することができる。
基板における下ケース111背面側には、各種のケーブルを配線することが可能なコネクタ、例えば電源コネクタ、USBポート、パラレル(RS232C)ポート等が配設されている。FFC172は、基板のコネクタと紙送りモータ127、キャリッジモータ146、ポンプモータ、バルブ機構165等の各コネクタとを電気的に接続しており、基板からの制御信号を伝送する。FPC173は、基板のコネクタと記録ヘッド142のコネクタとを電気的に接続しており、基板からの制御信号を伝送する。このFPC173は、キャリッジ141の移動時にキャリッジ141等と干渉せず、かつ折れ曲ったり交差したりしないように、可動紙案内上121aの上面に略U字状に湾曲されて配設されている。なお、可動紙案内上121aは、後端部が略L字状に折り曲げられており、この折り曲げ部121aaが、キャリッジ141の移動時にFPC173が可動紙案内上121aの後方へ飛び出さないように堰き止める機能を有している。
ヘッド吐出特性回復部180は、図6に示すように、記録ヘッド142のインクの吐出を良好な状態に保つ機能を有しており、下ケース111の右側面側の前面側から背面側に掛けて以下の部材が配設されている。すなわち、記録ヘッド142のノズル面を覆うキャップ181、記録ヘッド142のノズル面を拭うワイパ182、キャップ181及びワイパ182を上下させる上下機構190、図2及び図3に示すキャップ181から廃インクとエアーを吸引するポンプ機構200が配設されている。
図9(A)、(B)は、上記キャップ181、ワイパ182、上下機構190の詳細を角度を変えて見たときの斜視図である。キャップ181は、ゴム等の軟質材により器状に形成されており、記録ヘッド142がホームポジションに位置しているときに、インク乾燥や埃、塵の混入等によるノズルの目詰まり等を防止するために、上下機構190により上昇して記録ヘッド142のノズル面を封止するようになっている。このキャップ181の底面には、ノズルから吐出される廃インクを回収するための複数の穴181aと、キャップ181内の負圧を大気解放するための図示してないソレノイドバルブにつながる穴181bが穿孔されている。そして、穴181aは、パイプ183aを介してポンプ機構200に接続されている。なお、キャップ181内の負圧は穴181bからパイプ183bを介して図示しないソレノイドバルブにより開放されるようになっている。なお、図示してはいないが、図7のキャップ181の内部には薄いインク吸収材が敷かれ、該インク吸収材の平面方向ガイドをキャップ181内の凸部181cによって行っている。ワイパ182は、ゴム等の軟質材によりブレード状に形成されており、記録ヘッド142がホームポジションに戻ってくるときに、記録ヘッド142のノズル面に付着しているインクや埃、塵等を除去して用紙の汚染等を防止するために、上下機構190により上昇してノズル面を払拭するようになっている。
上下機構190は、キャップ181を上下動させるキャップレバー191、キャップレバー軸192、キャップレバーバネ193、キャップレバーカム194と、ワイパ182を上下動させるワイパレバー195、ワイパレバー軸196、ワイパレバーバネ197、ワイパレバーカム198等を備えている。この上下機構190は、排紙ローラ124bに嵌入されたワンウェイクラッチ199と遊び機構199aにより排紙ローラ124bが2回逆転して遊んだ後にキャップレバーカム194とワイパレバーカム198を回転させてキャップ181及びワイパ182を上下動させるようになっている。
キャップレバー191は、一端に挿入されたキャップレバー軸192を中心に上下に旋回自在となっている。そして、キャップレバー軸192に挿入されたキャップレバーバネ193により常に上方に付勢されており、排紙ローラ124bに嵌入されたキャップレバーカム194により押し下げられてキャップレバー191の上面に取り付けられているキャップ181を上下動させるようになっている。
ワイパレバー195は、一端に挿入されたワイパレバー軸196を中心に上下に旋回自在となっている。そして、ワイパレバー軸196に挿入されたワイパレバーバネ197により常に上方に付勢されており、排紙ローラ124bに嵌入されたワイパレバーカム198により押し下げられてワイパレバー195の上面に取り付けられているワイパ182を上下動させるようになっている。このように、キャップ181及びワイパ182は、バネとカムとにより直線的に上下動されるので、記録ヘッド142を封止する際や払拭する際の位置決めが容易であって押付け力が安定し、また、小スペースに配設することができる。
ポンプ機構200は、ポンプモータ201、吸引駆動力伝達機構202、ギアポンプ203を備えている。ポンプモータ201は下ケース111に取り付けられており、例えばDCモータやステッピングモータが使用される。吸引駆動力伝達機構202は、ポンプモータ201の正回転の駆動力をギアポンプ203へ伝達して回転制御する機能を有しており、この例ではプーリ202aとベルト202bで構成されているが、ギアで構成しても良い。ギアポンプ203は、キャップ181からパイプ183aを介して廃インク及びエアーを吸引してインクカートリッジ161、162へ送り込む。なお、インクカートリッジ161、162へ送り込まれた廃インクは、インクカートリッジ161、162に内蔵されているインク吸収体に吸収され、インクカートリッジ161、162へ送り込まれたエアーは、インク吸収体を通過して外装ケース161a、162aとインクタンク161b、162bの隙間に送り込まれる。
以上のような構成のインクジェット式プリンタ100において、用紙に記録する場合の動作を説明する。なお、インクジェット式プリンタ100とコンピュータ等との接続配線や電源プラグの接続は既に完了しているものとする。先ず、ユーザは、図1(A)に示す状態で指を用紙ホルダ117の前端に掛け、用紙ホルダ117を持ち上げ後方へ旋回させて図1(B)に示す状態にする。このとき、用紙ホルダ117の旋回に追従して、可動紙案内上121a及び可動紙案内下121bが旋回するとともに給紙扉116が旋回して給紙口115が開口される。
続いて、ユーザは、用紙の先端側を給紙口115から差し込み、用紙の先端が紙送りローラ123aと従動ローラ123bの接触部に当接するまで挿入する。これにより、用紙の後端側は用紙ホルダ117に沿って保持されるので、用紙は手前に傾斜した状態でセッティングされることになる。そして、インクジェット式プリンタ100をスタンバイ状態にし、コンピュータ等から記録指令を入力する。
すると、用紙は、可動紙案内上121a及び可動紙案内下121bと固定紙案内上122a及び固定紙案内下122bに案内されつつ、紙送りローラ123aと従動ローラ123b上のベルト10との間に挟持されて副走査方向である前方へ送り出される。そして、用紙がインク受け部143に達すると、キャリッジ141の主走査方向への移動が開始される。すなわち、ホームポジションに位置してしたキャリッジ141は、ホームポジションを離脱して搬送されてくる用紙の両端部間を往復移動する。
このとき、記録ヘッド142は、副走査方向に搬送されつつある用紙に対し例えば圧電素子により圧力発生室内の圧力を変動させて、圧力発生室内に貯留されているインクをノズルから吐出して、用紙上に所定の文字や画像等を記録する。このときの記録ヘッド142の走査タイミングやインク吐出タイミングは、駆動制御部170の基板により制御され、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等が実行されるようになっている。そして、用紙は、排紙スターホイール124aと排紙ローラ124b上のベルト10との間に挟持されて更に前方へ送り出され、最終的に記録が完了した用紙は排紙口113から外部へ排紙される。
上述したインクジェット式プリンタ100によれば、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの間であって、搬送直交方向に所定間隔を空けて架け渡された複数のベルト10を備えているので、従動ローラ123bと排紙ローラ124bの回転速度差が発生してもベルト10で吸収して回転速度を一定にすることができ、また、用紙が波打った場合でもベルト10間の隙間で吸収して浮き上がりを防止することができ、用紙の搬送精度を高めることができる。
10 ベルト、100 インクジェット式プリンタ、101、101a フレーム、110 筐体、111 下ケース、112 上ケース、113 排紙口、114 挿抜口、115 給紙口、116 給紙扉、117 用紙ホルダ、120 用紙供給部及び用紙排出部、121a 可動紙案内上、121b 可動紙案内下、122a 固定紙案内上、122b 固定紙案内下、123a 紙送りローラ、123b 従動ローラ、124a 排紙スターホイール、124b 排紙ローラ、125 従動ローラ受け台、126 排紙スターホイール受け台、127 紙送りモータ、130 搬送駆動力伝達機構、140 記録部、141 キャリッジ、142 記録ヘッド、143 インク受け部、144 キャリッジガイド軸、145 インクチューブ、146 キャリッジモータ、147 リニアエンコーダスケール、148 リニアエンコーダ、150 移動駆動力伝達機構、152 キャリッジベルト、160 カートリッジ収納部、161、162 インクカートリッジ、170 駆動制御部、171 基板ケース、172 FFC、173 FPC、180 ヘッド吐出特性回復部、181 キャップ、182 ワイパ、190 上下機構、200 ポンプ機構