JP4419448B2 - 医療用チューブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、輸液・輸血、体外循環などに用いる回路において、適度な柔軟性をもった医療用チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、輸液・輸血、体外循環の際用いられる回路においては、多くは、可塑化塩化ビニル樹脂(以下、PVCともいう)が使用されている。可塑化PVCは、長年の使用実績があり、その透明性、加工性、経済性等の点で、他の合成樹脂では代替えし難い色々なメリットがある。しかし、可塑化PVCはその反面、生体への可塑剤の溶出や廃棄・焼却の際の有害物質の生成が問題となっている。
【0003】
さらに、多くの医療施設では、輸液セットや延長チューブ、カテーテルなどの医療用チューブの基材として、可塑化PVCが利用されているが、輸液用薬液・薬剤として、ニトログリセリン、アクチノマイシン、ニトロール等、を含有する場合に、可塑化PVC製チューブ表面への吸着が認められる。上記のような薬液は微量投与を行うことが多いため、基材への吸着によって、生体への薬効が予定通りのものとならない危険性がある。可塑化PVCは、一般的に以上のようなの問題点を指摘されているため、溶出し易い低分子可塑剤を含まず、且つ薬剤吸着の起こり難い軟質ポリオレフィンを用いた製品が考案されてきた。
【0004】
しかしながら、これらのポリオレフィンは疎水性が高いため、チューブ内腔が液に馴染み難い(濡れ難い)。そのため、チューブ内に液が流れる際、液体に溶存している気体等から気泡が発生し易く、また、発生した気泡はチューブ内面に付着し易い。さらに、チューブ内面が液に馴染んでいないため、付着した気泡は流れ難い。以上のような理由で、輸液セットや液体流通回路はプライミング液の充填が困難となり、さらに、付着気泡が輸液ポンプ等の気泡センサーに検出されて、不具合を生じることがある。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−250265号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術が有する欠点、即ち▲1▼基材表面の疎水性、濡れ難さ、▲2▼基材表面への気泡の付着と付着気泡の除去し難さ、▲3▼吸着性薬液(薬剤)を使用した場合の基材への薬液吸着、等の問題を解消した医療用チューブを提供することにある。即ち、使用者にとって使い易く、安全性の高い医療用チューブを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明において、以下に示すような手段によって、解決できた。即ち、本発明は、合成高分子である基材に、両親媒性のポリマーを添加してなるものであり、両親媒性のポリマーの添加量は、合成高分子基材100重量部に対し0.01〜3重量部であり、かつ両親媒性のポリマーとしてポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸‐ホルマリン重縮合体、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレンアセトステアリルヒドロキシリスチレンエーテル、ヒドロキシリエチルエチルセルロース、エチレンオキサイド‐エチレンビニルアルコール共重合体のうちのいずれかを用いたことを特徴とする気泡除去用チューブである。
【0008】
本考案の医療用チューブは、両親媒性のポリマーが添加されていることで、疎水性の鎖が合成樹脂製基材と相溶し、親水性の鎖が基材表面に配向する。従って、液体と接するチューブ内面は、親水性となり濡れ性が向上し、その結果、気泡の付着が抑制される。さらに、添加剤の一部が疎水性ポリマーで、合成樹脂と相溶性があるため、添加剤のブルームやブリードがなく、医療用途として安全性が高い。
【0009】
【発明の実施の形態】
(請求項1の補正に伴い変更)
本考案に用いられる両親媒性ポリマーは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸‐ホルマリン重縮合体、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレンアセトステアリルヒドロキシリスチレンエーテル、ヒドロキシリエチルエチルセルロース、エチレンオキサイド‐エチレンビニルアルコール共重合体の中から選択される。上記の両親媒性のポリマーの中でも、安全性、加工性、コスト低減などの点から、エチレンオキサイド‐エチレンビニルアルコール共重合体が特に好ましい。
【0010】
一方、好ましい医療用チューブ基材としては、薬液の吸着性や加工性、経済性などの点から、スチレン系エラストマー、1-2ポリブタジエン系樹脂などが挙げられる。
【0011】
1-2ポリブタジエン系樹脂を基材の例として、上記の両親媒性ポリマーを添加した場合について、説明する。これらの両親媒性ポリマー(特にエチレンオキサイド-エチレンビニルアルコール共重合体)は、1-2ポリブタジエン系樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部添加することで、濡れ性の改善に効果が認められる。好ましくは、0.02〜1重量部である。添加量が0.01重量部未満の場合、チューブの濡れ性が十分ではなく、気泡付着回避の効果が低い。また、添加量が3重量部を超えると、チューブの透明性に影響を及ぼす。
【0012】
さらに、本考案のチューブは、その柔軟性を変化させるため、例えばポリエステル系可塑剤等の高分子可塑剤を加えることもできる。また、1-2ポリブタジエン系樹脂は予め、滑剤や老化防止剤を添加しておくのが望ましい。
【0013】
【実施例】
1.サンプルの作製
(1)実施例
1-2ポリブタジエン(RB810、JSR株式会社製)に、エチレンオキサイド-エチレンビニルアルコール共重合体(スミエード300K、住友化学工業株式会社製)を表-1に示す添加量で配合し、30mm押出し成型機〔L/D(Length/Diameter)=26〕を用いて、成型温度140〜160℃で、内径×外径=3.2×4.5mm及び4.5×6.0mmのチューブを作製した。
【0014】
(2)比較例
実施例で用いたものと同じ1-2ポリブタジエンに両親媒性ポリマーを添加せず、実施例と同じ方法でチューブを作製した。
【0015】
【表1】
Figure 0004419448
【0016】
2.実験
実験(1)
実施例▲1▼〜▲3▼及び比較例で作製したチューブ〔3.2(内径)×4.5(外径)mm〕で輸液セットを組みたて、エチレン・オキサイドガスによる滅菌後、常法により、500〜1000mlの生食バックを接続して、落差1mにて点滴速度80mL/hで輸液を行った。目視でチューブを観察したところ、実施例のチューブには気泡の付着は殆ど見られなかったが、比較例のチューブでは、点滴筒とチューブの接続部や流量調節器下部付近に気泡の付着が顕著に見られた。
【0017】
同様に、径の異なるチューブ〔4.5(内径)×6.0(外径)mm〕で、血液回路を作製し、γ線滅菌を行った後、透析装置を接続して、牛血を用いて、プライミング操作を行った。実施例では、内面に発生した気泡は、コッヘル等で軽く叩くことで速やかに下流に流れたが、比較例では、気泡の離脱は上記の操作では容易でなく、コッヘル等で強く、激しく叩くことが必要であった。
【0018】
実験(2)
実施例▲1▼〜▲3▼で作製したチューブを、エチレンオキサイド滅菌または、γ線滅菌後、厚生労働省告示の基準の溶出物試験を実施したところ、表−2,表−3に示すように各規準に適合していた。
【0019】
【表2】
(滅菌済み輸液セット基準)
Figure 0004419448
【0020】
【表3】
(透析型人工腎臓装置承認基準)
Figure 0004419448
【0021】
【発明の効果】
上記構成の医療用チューブは、チューブ内腔に液体を流した際、速やかに濡れ、気泡が下流に流れるなど、プライミングが容易となる。また、通液の際、液体中の溶存気体が気泡として発生しても、気泡が付着しにくくなっており、結果的に回路内に装着した気泡センサーや人体に影響を及ぼすような大量の気泡の発生が回避できる。
【0022】
また、基材として、可塑化PVCを使用しない場合は、可塑剤の溶出を懸念することが無く、生体適合性に優れた医療用器具となる。即ち、可塑剤が液中に溶出し難いので、可塑剤の溶出に起因する様々な問題(例えば、成長ホルモンへの影響等)が改善される。さらに、可塑化PVCに吸着し易い薬液(薬剤)のための投与手段(チューブ)として、有用である。

Claims (5)

  1. 合成高分子である基材に、両親媒性のポリマーが添加されており、両親媒性のポリマーの添加量は、合成高分子基材100重量部に対し0.01〜3重量部であり、前記両親媒性のポリマーとして、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸‐ホルマリン重縮合体、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレンアセトステアリルヒドロキシリスチレンエーテル、ヒドロキシリエチルエチルセルロース、エチレンオキサイド‐エチレンビニルアルコール共重合体のうちのいずれかを用いたことを特徴とする、気泡除去用チューブ。
  2. 前記合成高分子の基材が、ポリオレフィンからなる請求項1に記載の気泡除去用チューブ。
  3. 前記合成高分子の基材が、1−2ポリブタジエン系樹脂からなる請求項1に記載の気泡除去用チューブ。
  4. 前記気泡除去用チューブが、ニトログリセリン、アクチノマイシンのいずれかを含有する薬液をその内腔に流通する目的に使用されるものである請求項1〜3のいずれかの項に記載の気泡除去用チューブ。
  5. 前記気泡除去用チューブが、輸液ポンプに装着して使用される請求項4に記載の気泡除去用チューブ。
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