JP4417530B2 - セラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、放電加工電極と被加工材との間の放電によって被加工材を加工する放電加工方法に関するものであり、特にセラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8はセラミック被覆層を有する金属部材の例であるガスタービン用のブレードの一例を示す横断面図である。図8において、ブレード61は外表面を高温ガスに曝されるため、例えばNi基合金またはCo基合金のような耐熱合金によって製造されると共に、その表面にセラミック被覆層(遮熱コーティング、Thermal Barrier Coating(TBC))62を被着させると共に、内部に空洞63を設け、更に空洞63と連通する冷却孔64を設けて、空洞63から圧縮空気等を噴出し、セラミック被覆層62の表面に冷却フィルムを形成するようにしている。この場合、セラミック被覆層62の厚さ寸法は、例えば0.2〜0.7mm、冷却孔64の直径寸法は、例えば1mmに形成される。
【0003】
上記のような冷却孔64を加工する場合、セラミック被覆層62が極めて硬質であるため、通常のドリル加工では、例えば超硬合金からなるドリルを使用しても不可能である。一方、放電加工により上記のような難加工材であるセラミックスを放電加工する方法が提案されている。
【0004】
その一例として、例えば特開昭63−150109号公報に記載されるように、予め加工すべきセラミックスからなる被加工体の表面に導電体層を形成しておき、この導電体層の加工によって生じた加工液中の炭素および導電体層の導電体粉がセラミックスに付着ないし含浸させられて形成された導電層および/または放電によってセラミックスが高温となることによって形成された導電層と、加工電極との間に放電を発生させることにより放電加工を行なうものがある。
【0005】
また他の例としては、例えば特開平8−229740号公報に記載されるように、セラミックスの表面に導電性炭化物を形成できる金属層を設けるか、またはセラミックスの表面に多層の金属層を形成させ、少なくともその1層を導電性炭化物を形成できる金属層とし、最外層を比電気抵抗率の低い金属層として放電加工をするものである。
【0006】
更にセラミック被覆層を有する金属部材に微細な孔を加工する方法が提案されている。その一例として、例えば特開平10−202431号公報に記載されるように、セラミック被覆層の表面に導電性と弾力性を有するカーボンシートを介して導電体を配設し、この導電体の表面にパイプ状の放電加工電極を配設し、放電加工電源の−側を放電加工電極に接続し、+側を導電体と金属部材に接続し、放電加工電極の中空部から加工液を噴射させ、放電加工電極を回転させながら放電加工を行なうものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記第1の方法においては、放電加工によって逐次形成されるべきセラミックス中の導電層が不安定であり、放電加工が円滑に進行しないことがあるという問題点がある。
【0008】
一方、第2の方法においては、導電性炭化物を形成できる金属として、W、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、Hfの1種または2種以上が望ましいとしているが、これらの金属は比較的高価なものであると共に、これらの金属層は例えば溶射、蒸着、メッキ等の手段によって形成できるものの、金属層をセラミックスの表面に密着するように形成しなければならず、金属層の形成が煩雑であり、かつその形成に長時間を要するという問題点がある。
【0009】
更に第3の方法においては、放電加工によって逐次形成されるべきセラミック被覆層中の導電体層が不安定となり易く、放電加工が円滑に進行しないことがあるという問題点がある。すなわち、上記セラミック被覆層中の導電体層は、比較的高抵抗のものであり、この部分における放電電圧の降下があると共に、アーク放電若しくはそれに近い現象が発生するため、放電開始点の検出ができないことも原因していると認められる。
【0010】
また放電加工電極を回転させる必要があるため、単一または少数の孔を放電加工する場合はともかくとして、多数の孔を効率よく放電加工する場合には、作業が煩雑となるという問題点もある。
【0011】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点を解決し、セラミック被覆層を有する金属部材を容易に、かつ円滑に加工できる放電加工方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明においては、セラミック被覆層を有する金属部材の加工部位およびその近傍のセラミック被覆層の表面に導電性粒子を含有するペーストを塗布して導電層を形成すると共に、この導電層と前記金属部材とを電気的に接続し、導電層およびセラミック被覆層を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧を金属部材を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧より導電層およびセラミック被覆層による電圧降下に相当する分だけ高く設定し、放電加工電極と被加工体である前記導電層、セラミック被覆層との間の放電開始を検出してそれ以降所定の時間放電加工電極と前記被加工体との間に放電電圧を印加させ、放電加工電極により前記導電層およびセラミック被覆層を貫通し、引き続き、放電開始を検出するしきい値電圧を金属部材を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧に変更し、放電加工電極と金属部材との間の放電開始を検出して放電電圧を印加させ、放電加工電極が導電層およびセラミック被覆層を貫通した後において、放電加工電極と導電層およびセラミック被覆層との間の間隙を金属部材の放電加工の拡大代またはそれ以上に相当する間隙に形成し、前記金属部材の少なくとも一部を除去する、
という技術的手段を採用した。
【0016】
上記の発明において、セラミック被覆層をジルコニアまたはジルコニアを含有するセラミックスによって形成することができる。
【0017】
また上記の発明において、導電性粒子をカーボンおよび/またはグラファイトによって形成することができる。
【0018】
更に上記の発明において、金属部材を耐熱鋼または耐熱合金によって形成することができる。また更に上記の発明において、金属部材がガスタービンブレードを構成し、このガスタービンブレードに冷却孔を形成することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態における被加工物の例を示す横断面図、図2は図1におけるA方向要部矢視図であり、同一部分は前記図8と同一の参照符号で示す。図1および図2において、1は導電層であり、例えばカーボンおよび/またはグラファイトのような導電性粒子を含有するペーストを、加工すべき冷却孔64の直上およびその近傍に塗布して形成される。
【0020】
次に2は通電子であり、例えば銅板のような導電金属板により、複数個の櫛歯3を設けて形成し、セラミック被覆層62の表面に固着し、櫛歯3を前記導電層1と接続すると共に、通電子2は例えば図示省略したリード部材を介してブレード61(金属部材)と電気的に接続する。
【0021】
なおブレード61は、Ni基合金またはCo基合金のような耐熱合金によって形成し、セラミック被覆層62はジルコニア(ZrO2 )を溶射等の手段によってブレード61の表面に例えば0.2〜0.7mmの厚さに形成されている。この場合、ジルコニアには立方晶の安定な温度領域を広げるために、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、イットリア(Y2 O3 )等の安定化剤を所定量含有させる。
【0022】
次に導電層1を構成する導電性粒子としては、金属よりも高電気抵抗を有するカーボン、グラファイト等が望ましく、また侵入型金属炭化物MC(MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W等)のような導電性炭化物であってもよい。
【0023】
本発明の実施の形態においては、グラファイト粉70〜80重量%と水その他の液体30〜20重量%とを混合したペースト(必要に応じて接着剤を添加)を使用して、セラミック被覆層62の加工部位およびその近傍に厚さ0.3〜1.0mmの帯状に塗布し、例えば121℃で3〜5時間加熱して乾燥固化させた。
【0024】
なお、通電子2は上記導電層1を構成するペーストの塗布前にセラミック被覆層62上に設けて、ペーストによって櫛歯3の部分を埋め込んでもよく、またペーストを塗布後、通電子2の櫛歯3の部分をペーストの上から押し込んでもよい。ペーストの乾燥固化によって、導電層1と通電子2の櫛歯部分とは完全に密着して、両者は機械的にも電気的にも完全に接続され得る。
【0025】
図3は本発明の実施の形態における放電加工の態様を模式的に示す説明図であり、同一部分は前記図1および図2と同一の参照符号で示す。図3において、4は放電加工電極であり、例えば銅または黄銅により例えば外径0.7mmの管状に形成し、上端部をマニホールド5と接続し、下端部を前記図1および図2のように形成した導電層1と対向させる。そして図示省略した放電加工電源の(+)側を放電加工電極4と接続し、(−)側をブレード61と接続する。なお導電層1とブレード61とは前記のように通電子2(図示せず)を介して電気的に接続してある。
【0026】
次にマニホールド5から放電加工電極4の中空部に水またはケロシン等の加工液を噴射させながら、放電加工電極4とブレード61との間に所定の放電電圧を印加して放電加工を行なった(放電加工条件 Ip=13A、τon=4μsec、τoff =40μsec)。
【0027】
上記の放電加工により、図3においてまず導電層1に破線にて示されるように冷却孔64が放電加工され、この放電加工によって発生した熱がその下層のセラミック被覆層62に伝播されて加熱され、700〜800℃になり、ジルコニアからなるセラミック被覆層62は導電性を持つようになる。従って放電加工電極4が導電層1を貫通した後、引続きセラミック被覆層62に対して放電加工が行なわれ、このセラミック被覆層の貫通後、更にブレード61が放電加工され、冷却孔64が加工されるのである。
【0028】
比較例として、図1および図2における通電子2を除去し、帯状の導電層1の両端部をブレード61の端部と電気的に接続して上記と同様の放電加工を行なった。この結果、両端部の近傍においては放電加工が円滑に進行するものの、中間部、すなわちブレード61との電気的接続点から遠隔の部分においては放電加工が円滑に進行せず、特にセラミック被覆層62において著しいという現象が認められた。
【0029】
上記のような非所望な現象が発生する原因としては、導電層1の電気抵抗率が金属のそれと比較して大であるため、導電層1における放電加工電圧・電流が適切でなく、このためセラミック被覆層62に伝播される熱もまた不充分であるため、セラミック被覆層62の導電性が不充分であることが考えられる。また導電層1の放電加工が完了した後におけるセラミック被覆層62における放電加工時の放電加工電圧が不充分であるため、いわゆるアーク放電(集中放電)状態が発生していることも考えられる(正常加工の場合より低電圧、大電流であることが認められた)。これに対して、前記のように通電子2を設けたことにより、加工部位の如何に拘らず、放電加工が円滑にかつ均等に進行することが確認されたものであり、通電子2の設置は大いに意義があるものである。
【0030】
図4および図5は各々ブレード61およびセラミック被覆層62を放電加工する場合の電圧および電流と時間との関係を示す波形図である。なお図5はブレード61を放電加工する場合と同一条件でセラミック被覆層62を放電加工した場合の好ましくない状態の波形図を示している。図4および図5において、EO,ET,Eは夫々直流電源の電圧、放電開始を検出するしきい値電圧および放電電圧、IP は放電加工電極と被加工体との間に流れる電流ピーク値、τonは電圧パルス幅、τoff は休止時間である。
【0031】
まず図4において、ブレード61のような金属材料を放電加工する場合には、放電加工電極と被加工体との間に電圧EO を印加して放電加工電極と被加工体との間隙を徐々に制御送りによって減少させると、所定の値の位置において放電が開始される。この場合の電圧EO は80〜100V、Eは20〜30V、ET は40〜50Vであるのが通常である。従って放電開始が検出されて、パルス幅τonに相当する時間内に放電加工が継続され、その後τoff 時間休止させ、再び電圧EO が印加される。なお一般にτon=1〜1000μsec ,τoff =10〜1000μsec に設定することができる。上記のような波形が反復して継続する場合は、放電加工が安定して進行していると認められる。
【0032】
一方、ブレード61を放電加工する場合と同一条件でセラミック被覆層62を放電加工しようとする場合には、図5に示すように、電源電圧EO を印加後、所定の電極間隙値に到達すると放電が開始されるが、この時の放電電圧Eは放電開始を検出するしきい値電圧ET よりも大となってしまう。従って放電開始が検出されず、未だ放電が開始しないものとみなされて、例えば放電加工電極は被加工体側に送り続けられ、遂には短絡することになり、パルス幅τonが長くなり、所定の放電加工条件における加工ができないことになる。
【0033】
すなわち、セラミック被覆層62は、その直上の導電層1(図3参照)の放電加工により加熱されて導電性が付与されるものの、金属材料と比較すると電気抵抗が大であるため、電圧降下があり、この電圧降下分が放電電圧(E=20〜30V)に付加される。従って、セラミック被覆層62を加工する場合には、例えば60Vのような高電圧(しきい値電圧40〜50Vと比較して)を設定しておいて放電加工が行なわれることになる。すなわち、しきい値電圧をET' として金属材料に対するしきい値電圧ET より、上記セラミック被覆層62による電圧降下に相当する分だけ高く設定しておいて、放電開始時点を正しく把握させることが必要となる。図5において、しきい値電圧ET' を、E0 >ET' >ET >Eのように選定すれば、図4の場合と同様な形で正常な加工が行なわれてゆくことになる。本発明においては、このように、しきい値電圧を正しい値になるようにして、放電加工を行うのである。
【0034】
図6は本発明の実施の形態におけるトランジスタパルス回路の例を示す要部説明図である。図6において、11は直流電源であり、例えば交流入力を変圧器を介して降圧して、整流することによりDC80〜100Vの直流電圧を印加するものである。12はトランジスタであり、直流電源11からの直流電圧をスイッチングしてパルスを発生するものであり、マイクロ秒単位のオンオフ制御が必要であるため、高周波高出力トランジスタが使用される。
【0035】
13は制御回路であり、トランジスタ12からなるスイッチング回路に、パルス幅、休止時間を指令する発振回路、加工間隙を制御するサーボ回路や、休止時間を延長して定常アークを防止する回路等から構成される。17は電流制限可変抵抗であり、放電加工電極14と被加工体15との間に流れる電流のピーク値IP を設定するものである。16は放電開始検出器であり、放電加工電極14と被加工体15との間の放電開始時刻を検出するものであり、この信号により前記制御回路13におけるτonがスタートする。
【0036】
上記のようにして、図5におけるしきい値電圧ET よりも高いしきい値電圧ET' が設定されるから、放電加工電極14と被加工体15との間の放電開始が正確に検出され、パルス幅(τon)が所定の値に保持されて正常な放電加工が行なわれるのである。このようにして、図3におけるセラミック被覆層62を放電加工電極4が貫通した後においては、ブレード61、すなわち金属部材に対する放電加工条件に設定されて、引続き放電加工が継続されるのである。
【0037】
図7は本発明の実施の形態における放電加工の態様を模式的に示す説明図であり、同一部分は前記図3と同一の参照符号にて示す。図7において、放電加工電極4が導電層1およびセラミック被覆層62に対して放電加工を行ない、かつこれらを貫通すると、引続きブレード61に対して放電加工を行なうのであるが、この場合には若干の工夫を要するのである。
【0038】
導電層1およびセラミック被覆層62に対する放電加工条件と、ブレード61に対する放電加工条件とが異なるため、導電層1およびセラミック被覆層62を放電加工電極4が貫通した後は、しきい値電圧ET' をしきい値電圧ET に変更することを含めて放電加工条件を変更する必要があるが、この場合単純に放電加工条件を変更すると下記のような非所望な現象が発生するのである。
【0039】
まず、導電層1およびセラミック被覆層62に対しては、例えば放電加工条件はIP =40A,τon=10μsec であり、この場合放電加工電極4と冷却孔64との間の加工拡大代δ1 は、例えば0.05〜0.1mmである。一方、ブレード61に対する放電加工条件は、例えばIP =20A,τon=100μsec として、放電加工電極4の消耗を抑制している。この場合の放電加工電極4と冷却孔64との間の加工拡大代δ2 は0.2〜0.3mmである。
【0040】
従って、放電加工電極4が導電層1およびセラミック被覆層62を貫通後において、放電加工条件を直ちにブレード61のそれに変更すると、図7に示す状態において放電加工電極4の側面と導電層1およびセラミック被覆層62との間において更に放電加工が行なわれることになる。この場合の放電加工条件はブレード61に対するものであり、導電層1およびセラミック被覆層62に対するものより厳しいものであり、特にセラミック被覆層62にクラックが発生したり、アーク放電に移行する懸念が大である。
【0041】
そこで本発明においては、図7における状態で予め導電層1およびセラミック被覆層62に対する放電加工条件により、これらに対して揺動加工を行ない、放電加工電極4の周囲に拡大代δ2 またはそれ以上に相当する間隙を形成するのである。この場合の揺動加工は、放電加工電極4と被加工体である上記の層との間に相対移動を行なわせればよく、必ずしも放電加工電極4のみを揺動させるものには限定されない。また、上記揺動加工に代えて、放電加工電極4をより小径のものと交換してもよい。
【0042】
上記のようにして、導電層1およびセラミック被覆層62との間に、ブレード61に対する放電加工条件によって形成されるべき加工拡大代δ2 を形成した後、放電加工条件を変更してブレード61に対して放電加工を行なえば、導電層1およびセラミック被覆層62に何等の悪影響を与えることなく、ブレード61に冷却孔64を形成することができるのである。
【0043】
上記の実施の形態においては、通電子2を櫛歯状に形成した例について記述したが、これに限らず他の形状のものであってもよく、要するに導電層1に所定の放電加工電圧を、その位置に拘らず均等に印加できるものであればよい。
【0044】
またセラミック被覆層62を形成するセラミックスとしては、導電層1の放電加工による発生熱の伝播によって加熱されて導電性が付与されるジルコニアまたはジルコニアを含有するセラミックスが望ましいが、他の絶縁性セラミックスであってもよい。このような絶縁性セラミックスの場合には、導電層1の放電加工によって発生した炭化物の付着堆積ないし含浸によって絶縁性セラミックスの表面に導電体層が形成されて放電加工が進行するのである。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、以上記述のような構成および作用であるから、下記のような効果を奏することができる。
(1)加工部位およびその近傍に設けるべき導電層は、導電性粒子を含有するペーストの塗布によって形成されるため、被加工材の表面が非平面のものまたは複雑な形状を呈するものであっても、容易かつ精度よく形成し得ると共に、その厚さ寸法も任意に設定できる。
(2)通電子によって導電層と金属部材とを電気的に接続して放電加工を行なうものであるため、加工部位の如何に拘らず、所定の放電加工電圧が均等に印加され、放電加工が円滑に進行し、高精度の加工が可能である。
【0046】
(3)導電層およびセラミック被覆層を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧を、金属部材を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧より、導電層およびセラミック被覆層による電圧降下に相当する分だけ高く設定することにより、放電開始を正確に検出することができ、導電層およびセラミック被覆層、特に後者の放電加工を安定した状態でかつ円滑に行なうことができる。
【0047】
(4)セラミック被覆層の放電加工完了後において、放電加工電極と導電層およびセラミック被覆層との間の間隙を、金属部材の放電加工の拡大代より大に形成することにより、セラミック被覆層に対する非所望な余剰の放電加工が行なわれるのを防止し、セラミック被覆層にクラックその他の損傷を与えるのを防止すると共に、金属部材に対する放電加工を円滑に継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における被加工物の例を示す横断面図である。
【図2】図1におけるA方向要部矢視図である。
【図3】本発明の実施の形態における放電加工の態様を模式的に示す説明図である。
【図4】ブレード61を放電加工する場合の電圧および電流と時間との関係を示す波形図である。
【図5】セラミック被覆層62を放電加工する場合の電圧および電流と時間との関係を示す波形図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるトランジスタパルス回路の例を示す要部説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における放電加工の態様を模式的に示す説明図である。
【図8】セラミック被覆層を有する金属部材の例であるガスタービン用のブレードの一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 導電層
4 放電加工電極
62 セラミック被覆層
Claims (5)
- セラミック被覆層を有する金属部材の加工部位およびその近傍のセラミック被覆層の表面に導電性粒子を含有するペーストを塗布して導電層を形成すると共に、
この導電層と前記金属部材とを電気的に接続し、
導電層およびセラミック被覆層を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧を金属部材を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧より導電層およびセラミック被覆層による電圧降下に相当する分だけ高く設定し、
放電加工電極と被加工体である前記導電層、セラミック被覆層との間の放電開始を検出してそれ以降所定の時間放電加工電極と前記被加工体との間に放電電圧を印加させ、放電加工電極により前記導電層およびセラミック被覆層を貫通し、
引き続き、放電開始を検出するしきい値電圧を金属部材を放電加工する場合の放電開始を検出するしきい値電圧に変更し、
放電加工電極と金属部材との間の放電開始を検出して放電電圧を印加させ、放電加工電極が導電層およびセラミック被覆層を貫通した後において、放電加工電極と導電層およびセラミック被覆層との間の間隙を金属部材の放電加工の拡大代またはそれ以上に相当する間隙に形成し、前記金属部材の少なくとも一部を除去する
ことを特徴とするセラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法。 - セラミック被覆層がジルコニアまたはジルコニアを含有するセラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載のセラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法。
- 導電性粒子がカーボンおよび/またはグラファイトからなることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法。
- 金属部材が耐熱鋼または耐熱合金からなることを特徴とする請求項1ないし3何れかに記載のセラミック被覆層を有する金属部材の放電加工方法。
- 金属部材がガスタービンブレードを構成し、このガスタービンブレードに冷却孔を形成することを特徴とする請求項1ないし4何れかに記載のセラミック被覆層を有するタービンブレードの放電加工方法。
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