JP4412904B2 - エアバッグ - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
この発明は、長尺の銅荒引線をコイル状に巻いた銅荒引線コイルをトラック輸送する際に、銅荒引線コイルの荷姿が崩れることを防止するためのエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、線材、金属帯板、合成樹脂フィルムの長尺材は、製造工程の最後にコイル状に巻き取られた荷姿とされる。長尺材をコイル状に巻き取ったものをコイルと呼ぶ。
図7は、例えば電気用銅荒引線をコイル状に巻き取ったコイル1を示すもので、中心に中空部1aを持つ円筒形状であり、複数箇所においてコイル厚み部分を結束バンド2で結束した荷姿となっている。なお、銅荒引線コイルの実際の外観はコーナー部が丸まった荷姿となるが、簡略化して角のある形で示した。
【0003】
上記の銅荒引線コイル1をそのままトラック、貨車等の輸送媒体に積載すると、中空部1aを持つ形状であるため、輸送中にコイル1の形状が崩れることがある。そこで、従来は、鉄製のパレットおよびこれに付帯するガイド枠等からなる輸送用治具に積載し、さらに鋼帯やプラスチックバンド等の結束バンドで締めけて、荷姿崩れを防止していた。
【0004】
ところで、荷姿保持が目的ではないが、例えば製紙会社から新聞社等の印刷会社へ紙ロールを船舶輸送する際に、紙ロールを積載する船倉の壁面にエアバッグを取り付け、紙ロールを積載後にエアバッグに空気を注入して、紙ロールを外側から締め付けることにより、あるいはさらに、紙ロール間の隙間にも空気を注入したエアバッグを詰め込むことにより、紙ロールの荷崩れするのを防止することが行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のパレット式の輸送用治具は、そのほとんどが鉄等の重量物で構成され重量が大なので、風袋重量分としての輸送コストが高く、また、1つの輸送用治具に対して、積載できるコイル1の形状および寸法の範囲に制約があるという問題がある。
また、コイル1を目的地に輸送した後は、この輸送用治具の返却あるいは回送が必要であり、非常に手間がかかるだけでなく、返却あるいは回送のための輸送コストがかかるという問題もある。
また、一度使用した絞め具は再利用ができないので、目的地において廃棄処理が必要となるが、できれば廃棄物が生じないことが望ましい。
【0006】
また、エアバッグで貨物の周囲から締め付ける方法を荷姿保持の目的に適用する場合、船倉等のようにエアバッグを支える適当な壁面がある箇所には適用できるが、そうでない場合には別途壁面を設ける必要があり、かえって煩雑になる。また、銅荒引線コイル等の重量物は、これをエアバッグで外側から締め付けて、荷姿保持することはあまり有効でない。
【0007】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、特にトラック輸送の際に銅荒引線コイルの荷姿が崩れることを適切に防止できるとともに、取り扱いが容易であり、またトラック輸送にかかるコストを大幅に削減することができ、さらに廃棄物が生じることのないトラック輸送が可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1の発明は、エアの注入・排出により膨張・収縮可能であり、銅荒引線コイルの中空部に収縮状態で挿入されエアを注入されることで前記銅荒引線コイルの中空部内で膨張し中空部内面を外方に押圧することにより銅荒引線コイルの荷姿形状を単独で保持する、銅荒引線コイルの1段積みでのトラック輸送に用いられる荷姿形状保持用のエアバッグであって、円筒面部とシート材自体は円形である天面部と同じくシート材自体は円形である底面部とからなる略円筒形状をなすゴム製のエアバッグ本体と、前記エアバッグ本体の円筒面部外周に貼り付けたゴム製の本体補強シートと、エアバッグ本体の天面部外面及び底面部外面にそれぞれ、前記本体補強シートの上端縁又は下端縁との境界部に隙間ができてエアバッグ本体が露出する態様で貼り付けたゴム製の上下面補強シートと、前記天面部に設けられたエア注入口とを備えるとともに、トラック輸送時に、トラック上に置かれた銅荒引線コイルの中空部内に当該エアバックを収容し膨張させるとともに、銅荒引線コイルを固定バンドでトラック側に固定して用いられるものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2は、請求項1のエアバッグにおいて、本体補強シートが、ゴム層とその両側のポリウレタン層との3層構造をなすことを特徴とする。
【0011】
請求項3は、請求項1または2のエアバッグにおけるエアバッグ本体の素材が、天然ゴム層とその両側のクロロプレンゴム層との3層構造をなすことを特徴とする。
【0012】
請求項4は、請求項1、2または3のエアバッグにおける上下面補強シートが、天然ゴム層とその両側のクロロプレンゴム層との3層構造をなすことを特徴とする。
【0013】
請求項5は、請求項1、2、3または4のエアバッグにおける天面部に、エアバッグ内部のエア圧力を制限するための安全弁を設けたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態のエアバッグ10を膨張状態で示した斜視図、図2は同正面図である。このエアバッグ10は、前述した電気用銅荒引線のコイル1を輸送する際に用いるものであり、膨張状態で円筒面部10aと天面部10bと底面部10cとを持つ略円筒形状をなし、かつ天面部10bにエア注入口11を備え、エアの注入・排出により膨張・収縮可能である。なお、天面部10bおよび底面部10cは、膨張状態では図示のように膨らんでいるが、素材シート自体は単なる円形である。また、天面部10bには、エアバッグ10の内部圧力が過大になることを制限するための安全弁12、および、エアバッグ10の取り扱いのための布製の取っ手13を設けている。
【0015】
前記エアバッグ10は、図3に示した要部の一部切り欠き図のように、エアバッグ10自体の形状と同じく円筒面部15aと天面部15bと底面部15cとを持つ円筒形状のエアバッグ本体15と、エアバッグ本体15の円筒面部15aの外周に貼り付けた本体補強シート16と、エアバッグ本体15の天面部15bおよび底面部15cにそれぞれ貼り付けた上下面補強シート17とからなっている。なお、エアバッグ10の円筒面部10aと天面部10bまたは底面部10cとの境界部分は、図示の通り、補強シート16、17はなくエアバッグ本体15だけの1層なので、必要な箇所が補強されながら、エアバッグ10の膨張収縮が容易な構造となっている。
【0016】
前記エアバッグ本体15はゴム製であるが、実施形態のものは、図4(イ)に示すように、天然ゴム層151とその両側のクロロプレンゴム層152との3層構造をなしている。このようなゴムの3層構造により、膨張収縮が容易な弾性・柔軟性とともに、膨張収縮の繰り返しに耐える耐久性を持つ構造となっている。
【0017】
前記本体補強シート16は、例えば、多硫化ゴム等のゴム層161とその両側のポリウレタン層162との3層構造をなしている。この本体補強シート16は、多硫化ゴム層161で膨張収縮が容易な弾性・柔軟性を持たせ、表面のポリウレタン層162により、耐摩耗性を持たせている。
エアバッグ10をコイル1の中空部1a内で膨張させる際、エアバッグ10とコイル1とがこすれるので、ゴム製であるエアバッグ本体15がコイル1に直接接触していると損傷する恐れがある。しかし、エアバッグ10のコイル1と直接接触する部分が、前記の通り耐摩耗性に優れたポリウレタン層を表面に持つ本体補強シート16なので、エアバッグ10が損傷することは少なく、耐久性を向上させることができる。
また、輸送中はエアバッグ10とコイル1とが長時間にわたり直接接触し続けることになるが、ゴム製のエアバッグ本体15が銅であるコイル1に直接接触していると、ゴムと銅とが長時間接触し続けることになり、輸送媒体内の温度等の環境条件によっては、ゴムであるエアバッグ本体15が硫化変色し劣化するおそれがある。しかし、コイル1にはポリウレタン層162を持つ本体補強シート16が接触して、ゴム製のエアバッグ本体15はコイル1と直接接触しないので、エアバッグ本体15の硫化変色を防止できる。
【0018】
前記上下面補強シート17は、コイル1と接触しないので、エアバッグ本体15と同じ材料、例えば、天然ゴムの両面にクロロプレンゴムを貼り合わせた3層構造のものを用いることができる。しかし、必ずしもエアバッグ本体15と同じ材料である必要はない。
【0019】
上記エアバッグ10によりコイル1の荷姿形状を保持する場合、コイル1の中空部1a内に、エアが入っていない収縮状態のエアバッグ10を挿入し(図5(イ)参照)、例えば図示せぬエアポンプによりエア注入口11からエアバッグ10内にエアを供給して、エアバッグ10が中空部1aの内面を適度の圧力で外方に押圧するまで膨張させる(図5(ロ)参照)。これにより、輸送中にコイル1の荷姿が崩れることを防止できる。
【0020】
上記エアバッグ10は従来の鉄製のパレット式の輸送用治具と比べて著しく軽量であり、かつ、単体でコイル1の荷姿形状を保持することができるので取り扱いが容易である。また、コイル1の中空部1aの内面を適度の圧力で押圧するまで膨張させることができればよいので、種々のサイズのコイル1に適用することができ、従来の輸送用治具のように、コイル1のサイズによって使用できないという問題は少ない。
また、万一エアバッグ10が破損してしまった場合には、エアバッグ10と同じあるいはそれに類する素材のシート片をエアバッグ10の破損部分に貼り付けるだけで、容易にエアバッグ10を修復することができるので、多数回、長期にわたって使用することができる。
【0021】
上述のように荷姿形状が保持されたコイル1は、図6に示すように、例えばフック付きの固定バンド20を用いて、トラックに容易に積載することができる。すなわち、トラックの床面21に置いた陣木22の上にコイル1を置き、トラック側の引っ掛け部23に引っ掛けた固定バンド20をコイル1およびエアバッグ10の上に引き回し、締め付けて、コイル1およびエアバッグ10を上から押さえ付けるようにして固定する。これにより、コイル1の荷姿が崩れないようにかつみだりに動かないように輸送できる。
また、コイル1を輸送した後に、返却あるいは回送する必要のあるものはエアバッグ10のみであり、このエアバッグ10は軽量であり、エアをすべて排出すると非常にコンパクトに折りたたむことができるので、従来の輸送用治具と比べて返却あるいは回送が容易となるとともに、返却あるいは回送にかかる輸送コストを大幅に削減することができる。
また、固定バンド20は、コイル1をトラックに固定できれば十分なので汎用のものでよく、従来の輸送用治具における廃棄処分が必要な締め付けバンドと異なり、何度でも繰り返して使用することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明のエアバッグは銅荒引線コイルの1段積みでのトラック輸送に用いられる荷姿形状保持用のエアバッグであり、円筒面部とシート材自体は円形である天面部と同じくシート材自体は円形である底面部とからなる略円筒形状をなすゴム製のエアバッグ本体と、前記エアバッグ本体の円筒面部外周に貼り付けたゴム製の本体補強シートと、エアバッグ本体の天面部外面及び底面部外面にそれぞれ、前記本体補強シートの上端縁又は下端縁との境界部に隙間ができてエアバッグ本体が露出する態様で貼り付けたゴム製の上下面補強シートと、前記天面部に設けられたエア注入口とを備えるとともに、トラック輸送時に、トラック上に置かれた銅荒引線コイルの中空部内に当該エアバックを収容し膨張させるとともに、銅荒引線コイルを固定バンドでトラック側に固定して用いられるものなので、次のような種々の効果を奏する。
<1>従来の鉄製のパレットやガイド等を使用する輸送用治具のような重量大なる特別な治具を必要とせず、極めて軽量である。このように軽量なエアバッグのみで銅荒引線コイルの荷姿形状を保持することができるので取り扱いが容易であり、風袋重量分としての輸送コストを大幅に削減することができる。
<2>使用後は、エアを抜いてコンパクトに折り畳めるので、返却あるいは回送が極めて容易である。したがって、その点でも輸送コストを削減することができる。
<3>エアバッグが破損した場合には、破損部にゴム等のシート片を貼り付けるだけで修復することができるので、メンテナンスが容易であり、また、多数回、長期にわたって使用することができる。
また、天面部外面及び底面部外面にそれぞれ設けた上下面補強シートにより、エアバッグの天面部および底面部の損傷を防止できる。また、円筒面部と天面部または底面部との境界部分をエアバッグ本体のみとしているので、必要な箇所を補強しつつ、エアバッグの膨張収縮が容易な構造となる。
【0024】
請求項2のエアバッグによれば、銅荒引線コイルに直接接触する部分がポリウレタン層となるので、ゴム製のエアバッグ本体が銅に直接接触して硫化変色することを防止できる。
請求項3のエアバッグによれば、膨張収縮が容易な弾性・柔軟性とともに、膨張収縮の繰り返しに耐える耐久性の高いエアバッグが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のエアバッグの膨張状態の斜視図である。
【図2】図1のエアバッグの正面図である。
【図3】図1のエアバッグの要部の一部切り欠き図である。
【図4】(イ)は上記エアバッグにおけるエアバッグ本体の素材構造を示す詳細断面図、(ロ)は本体補強シートの素材構造を示す詳細断面図である。
【図5】図1のエアバッグを用いてコイルの荷姿形状を保持する要領を説明するもので、(イ)はエアバッグにエアを注入する前、(ロ)はエアバッグにエアを注入した後を示す図である。
【図6】図1のエアバッグにより荷姿保持したコイルをトラックに積載した状態を示す正面図である。
【図7】本発明の対象とする貨物の一例である銅荒引線のコイルの斜視図である。
【符号の説明】
1 コイル(貨物)
1a 中空部
10 エアバッグ
10a 円筒面部
10b 天面部
10c 底面部
11 エア注入口
12 安全弁
13 取っ手
15 エアバッグ本体
15a 円筒面部
15b 天面部
15c 底面部
151 天然ゴム層
152 クロロプレンゴム層
16 本体補強シート
161 多硫化ゴム層
162 ポリウレタン層
17 上下面補強シート
20 固定バンド
Claims (5)
- エアの注入・排出により膨張・収縮可能であり、銅荒引線コイルの中空部に収縮状態で挿入されエアを注入されることで前記銅荒引線コイルの中空部内で膨張し中空部内面を外方に押圧することにより銅荒引線コイルの荷姿形状を単独で保持する、銅荒引線コイルの1段積みでのトラック輸送に用いられる荷姿形状保持用のエアバッグであって、
円筒面部とシート材自体は円形である天面部と同じくシート材自体は円形である底面部とからなる略円筒形状をなすゴム製のエアバッグ本体と、前記エアバッグ本体の円筒面部外周に貼り付けたゴム製の本体補強シートと、エアバッグ本体の天面部外面及び底面部外面にそれぞれ、前記本体補強シートの上端縁又は下端縁との境界部に隙間ができてエアバッグ本体が露出する態様で貼り付けたゴム製の上下面補強シートと、前記天面部に設けられたエア注入口とを備えるとともに、
トラック輸送時に、トラック上に置かれた銅荒引線コイルの中空部内に当該エアバックを収容し膨張させるとともに、銅荒引線コイルを固定バンドでトラック側に固定して用いられるものであることを特徴とするエアバッグ。 - 前記本体補強シートが、ゴム層とその両側のポリウレタン層との3層構造をなすことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
- 前記エアバッグ本体の素材は、天然ゴム層とその両側のクロロプレンゴム層との3層構造をなすことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
- 前記上下面補強シートが、天然ゴム層とその両側のクロロプレンゴム層との3層構造をなすことを特徴とする請求項1、2または3記載のエアバッグ。
- 前記天面部にエアバッグ内部のエア圧力を制限するための安全弁を設けたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のエアバッグ。
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