JP4411610B2 - 底質改良装置および底質改良工法 - Google Patents

底質改良装置および底質改良工法 Download PDF

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Description

本発明は、海底、湖底、川底等の水底を水流によって耕耘し、底質を改良する底質改良装置および底質改良工法に関する。
近年、底質の悪化に起因する魚介類の漁獲の減少や海草類の収穫の減少が大きな問題になっている。この底質の悪化は、現象として細粒分の堆積による貧酸素化、固結化、富栄養化等として現われ、貧酸素水塊の発生原因にもなっている。そこで最近、水底を積極的に耕耘して底質を改良することが種々行われている。中でも、水深の深い場所でも実施可能であり、かつ、効率および経済性の面でも優れていることから、水流(ジェット水流)によって水底を耕耘する水流方式が注目されている。
そして従来、上記水流方式の水底耕耘技術としては、例えば、特許文献1または特許文献2に記載されるものがあった。このうち、特許文献1に記載されるものは、海水を噴出する噴出部材(噴流装置)を台船から起重機で吊って海底に降ろし、ポンプで汲み上げた海水を前記噴出部材に圧送して、水流を海底に向けて噴出させながら、該噴流装置をワイヤを介して台船にけん引させるようにしている。また、特許文献2に記載されるものは、台船上に微細気泡混合装置を配置し、台船から水底に降ろした水底耕耘装置(噴流装置)に前記微細気泡混合装置から微細気泡混合水(酸素富化水)を圧送し、水流を海底に向けて噴出させながら、該噴流装置をロープを介して台船にけん引させるようにしている。
特開2004−19180号公報 特開2003−265063号公報
しかしながら、上記各特許文献に記載される水流方式の水底耕耘技術によれば、何れもソリ部(特許文献1)やベース部(特許文献2)を介して噴流装置を水底上で滑走させるようにしているため、水底に存在する不陸や障害物の影響で噴流装置が上下方向や水平方向へ揺動し、蛇行する虞もあって、安定して水底耕耘を行うことができない、という問題があった。また、噴流装置の噴出高さが、前記ソリ部やベース部によって一義的に定まるため、底質の性状によって噴出高さを調整して耕耘厚みを変えたい場合には、噴流装置を再組立てしなければならず、臨機に対応できない、という問題もあった。なお、特許文献2に記載のものでは、障害物を避けるため、噴流装置をフロートで吊ることも行っているが、このような対策では、水流噴出による推力の影響もあって噴流装置の水中での揺動が避けられず、根本的な解決に到らない。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、水底の不陸や障害物に影響されることなく安定してかつ効率よく水底耕耘を行うことができると共に、耕耘厚みの変更にも容易に対応できる底質改良装置および底質改良工法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る底質改良装置は、台船上に、水に空気を溶解および混入させて酸素富化水を得る気液混合装置を配置し、前記台船から水底近傍に下ろした噴流装置に前記気液混合装置から前記酸素富化水を圧送し、該噴流装置から噴出する水流によって水底を耕耘する底質改良装置において、前記噴流装置を、前記台船に形成した開口部を挿通して上下方向に延ばした鋼製櫓の下端部に配設し、前記櫓を駆動手段により昇降動させるようにしたことを特徴とする。
上記のように構成した底質改良装置においては、台船の開口部を挿通して延ばした鋼製櫓の下端部に噴流装置を設けているので、噴流装置を、水底上で滑走させることなく櫓を介して台船と一体に移動させることができ、したがってその移動は安定する。また、昇降手段により櫓を昇降させて噴流装置の設置高さを任意に変更することできる。
本底質改良装置においては、上記気液混合装置を、水域の表層水を噴流装置へ圧送する給水管に配管接続し、該気液混合装置で得た酸素富化水を前記給水管内の水と合流して噴流装置へ圧送するようにしてもよく、この場合は、噴流装置から勢いを有する大量の水を噴出させて、効率よく水底を耕耘することができる。
本底質改良装置においてはまた、噴流装置が、台船の幅方向に形成した開口部に合せて長尺に形成されており、鋼製櫓が、前記噴流装置の両端部に位置して2基設けられる構成とすることができ、この場合は、長尺の噴流装置により効率よく水底の耕耘を行うことができる。
上記課題を解決するため、本発明に係る底質改良工法は、台船に形成した開口部を挿通して上下方向に延ばした鋼製櫓の下端部に噴流装置を取付け、前記櫓を駆動手段により下降させて前記噴流装置を水底近傍に位置決めし、台船上に配置した気液混合装置で得た酸素富化水を前記噴流装置に圧送して、該噴流装置から水底に向けて水流を噴出しながら台船を移動させて水底を耕耘することを特徴とする。この場合、前記気液混合装置で得た酸素富化水を、別途ポンプ圧送される水域の表層水と合流して噴流装置へ圧送するようにしてもよい。
本発明に係る底質改良装置および底質改良工法によれば、水底の不陸や障害物に影響されることなく安定してかつ効率よく水底耕耘を行うことができると共に、耕耘厚みの変更にも容易に対応できるので、利用価値が著しく向上する。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明の1つの実施形態としての底質改良装置を示したものである。これらの図において、1は台船であり、台船1のほぼ中央部分には、その幅方向に長尺をなす矩形の開口部2が形成されている。本底質改良装置は、前記台船1上の一端側に配置された気液混合装置3と、前記開口部2を挿通して上下方向に延ばされた2基の鋼製櫓4、4と、この2基の鋼製櫓4、4の下端部に共通に固設された2台の噴流装置5、5と、気液混合装置3から噴流装置5へ水を圧送する給水ホース(給水管)6と、前記各櫓4を同期して昇降駆動する駆動手段7、7とから概略構成されている。
上記2基の鋼製櫓4、4は、開口部2の両端部を囲むように台船1上に配設したコ字形のガイド部材8によってガイドされて、直立姿勢を維持するようになっている。上記各駆動手段7は、台船1上に配置されたウインチ9と、前記ガイド部材8の上端の片側に配置された第1の滑車10と櫓4の下端部の片側に設けられた第2の滑車11とを備えている。この駆動手段7において、前記ウインチ9から繰出されたワイヤ12は、前記第1の滑車10から第2の滑車11に掛け回されると共に、その一端が前記ガイド部材8の上端の他側に固結されている。これにより2台のウインチ9を同期して回転させると、ワイヤ12が繰出しまたは巻取りされ、これに応じて2基の鋼製櫓4、4が一体的に昇降動するようになる。各櫓4は、ここでは、深い水深(一例として、10数mm)の海底(水底)Aに下端を到達させた状態で、その上端部がガイド部材8の上方に延在する十分なる長さを有している。
なお、台船1上の一端側にはGPSアンテナ13を備えた操作室14が配設されており、この操作室14内には、図示を省略するが、前記GPSアンテナ13からGPS信号を取込んで台船1の位置を演算する演算装置を始め、台船1を操船するための操船制御装置、前記櫓4用のウインチ9を制御する制御装置等が配設されている。また、台船1上の他端側には、前記櫓4の昇降に応じて給水ホース6を誘導する起重機15が搭載されている。
ここで、上記各噴流装置5は大径のパイプからなっており、その2台が上記2基の鋼製櫓4、4間に前記台船1の開口部2から食み出さないように平行に橋架されている。各噴流装置5は、台船1の開口部2の大きさ合せてその長さが設定されており(一例として、10m程度)、その下面側には、所定の大きさを有する噴出口16(図3)が長手方向に所定のピッチで配列して多数形成されている。この場合、2台の噴流装置4の相互間で、1/2ピッチずつずれるように噴出口16の位置が設定されている。一方、各噴流装置5の上面側の長手方向の中間部位には、給水ホース6から分岐した分岐管6aが接続される流入口17(図2)が形成されている。
本実施形態において、上記気液混合装置3および給水ホース6を含む給水系は、図3に示されるように構成されている。すなわち、前記給水ホース6の一端部はストレーナ18を介してポンプ(水中ポンプ)19に接続されている。この水中ポンプ19は、図1にも示されるように、台船1の外壁の喫水下に固定されており、その取水口19aから水域の表層水を吸入できるようになっている。給水ホース6の口径は、一例として150mm程度となっており、これにより上記噴流装置4に対し、大量の表層水をポンプ圧送できるようになる。
一方、気液混合装置3は、2台のポンプ20、21を有する主配管22と、下流側のポンプ(渦巻きポンプ)21をバイパスして主配管22に接続された副配管23とを備えており、その副配管23にはインジェクタ24が介装されている。主配管22は、その一端が前記水中ポンプ19とほぼ同じ高さレベルに位置決めされると共に、その他端が前記給水ホース6の途中に接続されている。2台のポンプ20、21の運転により水域の表層水が主配管22内に吸入され、この表層水の一部が副配管23内に流入し、インジェクタ24を通過して主配管22に還流する。インジェクタ24には空気吸込管25が接続されており、前記副配管23に流入した水がこのインジェクタ24を通過する間に、該水に空気が溶解および混入される。この空気が溶解および混入された水は、下流側のポンプ21内でさらに撹拌され、これにより多量の空気が溶解および混入された酸素富化水が前記給水ホース6内に圧送される。なお、この種の気液混合装置については、特許2516172号公報に詳細に記載されており、ここでは、同公報に記載されたものと実質的に同じ気液混合装置3を用いている。なお、前記主配管22および副配管23としては、一例として、口径30mm程度のものが用いられる。
以下、上記のように構成した底層改良装置による底層改良工法について説明する。
底層改良に際しては、先ず台船1を曳船等により改良場所の上方海域に誘導し、図示を略すアンカーを投錨して台船1の位置を固定する。次に、GPSアンテナ13から取込んだGPS信号を利用して台船1の位置を確認しながら、ウインチ操作により台船1を海底耕耘の開始位置にの上方に位置決めし、次に、各駆動手段7、7を構成するウインチ9、9を同期して回転させ、2基の鋼製櫓4、4をガイド部材8をガイドにして下降させる。そして、櫓4下の2台の噴流装置5、5が海底Aの上面からわずか離間する位置まで櫓4を下降させたらウインチ9を停止し、次に、水中ポンプ19と気液混合装置3内の2台のポンプ20、21の運転を開始する。すると、水中ポンプ19の運転により水域の表層水が大径の給水ホース6を通して噴流装置5へ圧送される。一方、気液混合装置3内の2台のポンプ20、21の運転により同じく表層水に空気を溶解および混入された酸素富化水が主配管22を通して前記給水ホース6に圧送される。これにより酸素富化水を含む水が2台の噴流装置5へ圧送され、図1に示されるように各噴流装置5の噴出口16から海底Aに向けて水流(ジェット水流)が噴出する。
底質が悪化した海底Aは、通常図1に示されるように、原地盤B上に細粒分が堆積、固化した固結層Cとこの上に堆積したヘドロ層Dとを有する多層構造となっており、上記した噴流装置5からのジェット水流によってヘドロ層Dを含む固結層Cが掘削撹拌され、海底耕耘が開始される。そして、この海底耕耘の開始と同時にウインチ操作により台船1を耕耘方向Fへ所定の速度で移動させる。すると、前記噴流装置5が台船1と一体に耕耘方向Fへ移動し、これにより水底耕耘が進み、噴流装置5の通過跡には細粒分が混り合った改良層Eが形成される。この海底耕耘は、ウインチ操作で移動できる台船1の移動範囲内で連続に進行し、これにより、噴流装置5の全長と台船1の移動距離とで決まる広範な改良層E、一例として幅10m、長さ150mを有する改良層Eが形成される。一方、前記噴流装置5は、海底Aとわずかの間隔を保ちながら安定して移動するので、耕耘厚みは一定となり、形成された改良層Eの厚みも一定となる。本実施形態においては特に、水中ポンプ19から大量の表層水が噴流装置5へ圧送されるので、勢いを有する大量の水が噴流装置5からジェット水流として噴出され、この結果、前記固結層Cがかなりの厚み(例えば、1m程度)を有していても確実に掘削撹拌される。
しかして、上記ジェット水流中には、気液混合装置3で得られた酸素富化水が含まれており、前記改良層E中には、酸素が十分に供給され、これにより貝類の生息環境が著しく改善される。また、酸素富化水が水中に放出されることで、微細気泡が多量に発生し、水底A付近に酸素を高濃度に含む富酸素水塊が発生し、これにより魚類の生息環境が著しく改善される。微細気泡は、浮上しにくい性質を有しているので、改良層Eの上方の水域は長期にわたって富酸素状態を維持し、この結果、改良層E内はもちろん、改良層Eの上方水域は豊富な漁場として、並びに海草類の繁殖場として再生する。
なお、上記実施形態においては、鋼製櫓4下に2台の噴流装置5を設けるようにしたが、この噴流装置5の数は任意であり、1台でも3台以上でもよい。また、給水ホース6から各噴流装置5に対する水の分配は、上記実施形態におけるように長手方向の中間部位の一箇所(流入口17)だけでなく、長手方向の複数箇所に対して行ってもよいことはもちろんである。また、使用する鋼製櫓4の数も任意であり、1基であっても3基以上であってもよい。また、鋼製櫓4を昇降動させる駆動手段7も任意であり、前記ウインチ9による駆動方式に代えて他の方式、例えば、ラックピニオン機構等による電動方式、あるいはクレーンによる吊下方式を採用してもよい。また、上記実施形態においては、ウインチ操作により台船1を移動させながら海底耕耘を行うようにしたが、この台船1を移動させる方式は任意であり、例えば、曳船により曳行しても、あるいは自走式としてもよい。
さらに、上記実施形態においては、気液混合装置3で得た酸素富化水を、別途ポンプ圧送される表層水と合流して噴流装置5へ圧送するようにしたが、本発明は、気液混合装置3で得た酸素富化水のみを噴流装置5へ圧送するようにしてもよく、この場合は、水底により効率よく酸素を供給できる。また、この気液混合装置3においては、取入れ空気の一部または全部を純酸素に代えてもよいもので、この場合は、さらに効率よく水底に酸素を供給することができる。
本発明の1つの実施形態としての底質改良装置の全体構造とその使用態様とを一部断面として示す側面図である。 図1に示した底質改良装置の平面図である。 本底質改良装置内の給水系を示す模式図である。
符号の説明
1 台船
2 開口部
3 気液混合装置
4 鋼製櫓
5 噴流装置
6 給水ホース
7 櫓の駆動手段
9 ウインチ
19 ポンプ(水中ポンプ)
22 気液混合装置用主配管
23 気液混合装置用副配管
24 インジェクタ
A 海底
B 原地盤
C 固結層
D ヘドロ層
E 改良層

Claims (5)

  1. 台船上に、水に空気を溶解および混入させて酸素富化水を得る気液混合装置を配置し、前記台船から水底近傍に下ろした噴流装置に前記気液混合装置から前記酸素富化水を圧送し、該噴流装置から噴出する水流によって水底を耕耘する底質改良装置において、前記噴流装置を、前記台船に形成した開口部を挿通して上下方向に延ばした鋼製櫓の下端部に配設し、前記櫓を駆動手段により昇降動させることを特徴とする底質改良装置。
  2. 気液混合装置を、水域の表層水を噴流装置へ圧送する給水管に配管接続し、該気液混合装置で得た酸素富化水を前記給水管内の水と合流して噴流装置へ圧送することを特徴とする請求項1に記載の底質改良装置。
  3. 噴流装置が、台船の幅方向に形成した開口部に合せて長尺に形成されており、鋼製櫓が、前記噴流装置の両端部に位置して2基設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の底質改良装置。
  4. 台船に形成した開口部を挿通して上下方向に延ばした鋼製櫓の下端部に噴流装置を取付け、前記櫓を駆動手段により下降させて前記噴流装置を水底近傍に位置決めし、台船上に配置した気液混合装置で得た酸素富化水を前記噴流装置に圧送して、該噴流装置から水底に向けて水流を噴出しながら台船を移動させて水底を耕耘することを特徴とする底質改良工法。
  5. 気液混合装置で得た酸素富化水を、別途ポンプ圧送される水域の表層水と合流して噴流装置へ圧送することを特徴とする請求項4に記載の底質改良工法。

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