JP4406862B2 - Rfidシステム及びrfidタグの上貼り方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)システム及びRFIDタグの上貼り方法に関し、特に、書籍にタグを貼付して管理するRFIDシステム及びRFIDタグの上貼り方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ICチップを備えたタグとリーダ/ライタとの間でデータの交信を行うRFIDシステムが普及している。このRFIDシステムは、タグ及びリーダ/ライタの各々に備えたアンテナを用いてデータの交信を行うため、タグをリーダ/ライタから数cm乃至数十cm離しても通信可能であり、また、汚れや静電気等に強いという長所から、工場の生産管理、物流の管理、入退室管理等の様々な分野に利用されるようになってきている。
【0003】
このRFIDシステムは、電磁的方法によってデータの交信を行うため、磁束を通過する材料で構成された物品に貼付する場合は、タグを物品の内部に取り付けたり、タグを取り付けた物品を重ねて配列した状態でも使用できることから図書館における書籍等の管理等にも利用することができる。例えば、特開平10−275183号公報には、図書の表紙、裏表紙あるいは図書の中に綴じられたページのいずれかに取り付けられたRFID図書ラベルと、RFID図書ラベルのデータを非接触で読み取るRFID読み取り装置とを備える図書館システムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−275183号公報(第4−7頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記RFIDシステムでは、タグはコイルとコンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数がリーダ/ライタの搬送波と一致するように設定されており、タグを該周波数で共振させて内部に記憶された情報を読み取ることによってタグが識別されるが、何らかの理由でタグに記憶された情報を変更する場合やタグが故障した場合にはタグを交換する必要がある。
【0006】
この場合、以前に貼付されたタグを剥がしてから新たなタグを貼り付ける方法が一般的であるが、通常、タグは物品から容易に脱離しないように接着剤や粘着性材料によって物品に固定されているため、タグを物品から剥がすのは容易ではなく、タグの交換に時間がかかってしまう。特に、タグを貼付する物品が書籍のような紙を材料として形成される物品の場合、タグを剥がすとタグを貼付した部分の紙まで剥がれてしまい、書籍の価値を著しく損なってしまったり、場合によっては書籍を破損してしまうという問題もある。
【0007】
そこで、以前に貼付されたタグを剥がすことにより生じる上記問題を回避するために、タグを剥がすことなく新たなタグを貼付する方法も考えられるが、この場合、新たなタグを上貼りすると以前に貼付されたタグと新たに貼付したタグ同士が相互に干渉して共振周波数が大きくシフトしてしまい、その結果、通信距離が大幅に低下してしまうという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、以前に貼付されたタグの上に新たなタグを上貼りした場合でもタグ同士の相互干渉を抑制することができるRFIDシステム及びRFIDタグの上貼り方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のRFIDシステムは、基材上の配線により構成されたコイルと単体として形成又はICに内蔵されたコンデンサとからなる共振回路を含むタグと、リーダ又はリーダ/ライタとを用いて非接触でデータの通信を行うRFIDシステムにおいて、物品に予め貼付され、その共振回路を構成する前記コイルと前記コンデンサとの接続部分の少なくとも一箇所が切断されることで無効化された第1のタグの上に第2のタグが貼付されることで、前記第1のタグと前記第2のタグとの相互干渉が抑制された状態で、前記第2のタグと前記リーダ又はリーダ/ライタとの間でデータの交信が行われるものである。
【0010】
本発明においては、前記第1のタグと前記第2のタグとの間にスペーサが配設され、該スペーサにより前記第1のタグと前記第2のタグとの間の寄生容量が低減され、相互干渉が抑制される構成とすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記コイルの軸方向から見て、少なくとも前記第1のタグ及び前記第2のタグの前記コイルが完全には重ならないように、前記第2のタグの貼付位置が設定される構成とすることができ、前記第2のタグは、前記第1のタグに対して180度回転した状態で貼付される構成とすることもできる。
【0012】
また、本発明においては、前記第1のタグ又は前記第2のタグの少なくとも一方の前記コイル内側領域に、磁束を遮断する部材で構成されたシートが配設されている構成とすることもできる。
【0013】
また、本発明においては、前記物品は書籍であり、前記タグはラベル型タグとすることができる。
【0014】
また、本発明は、基材上の配線により構成されたコイルと単体として形成又はICに内蔵されたコンデンサとからなる共振回路を含むタグと、リーダ又はリーダ/ライタとを用いて非接触でデータの通信を行うRFIDシステムにおける、物品に予め貼付されている第1のタグの上に第2のタグを上貼りする方法であって、前記第1のタグの共振回路を構成する前記配線の少なくとも一箇所を切断することで無効化した後、前記第1のタグの上に前記第2のタグを貼付するものである。
【0015】
このように、本発明は、物品に予め貼付された第1のタグの上にそのまま新たな第2のタグを貼付するのではなく、第1のタグの共振回路を構成する配線の少なくとも一箇所を切断することにより、第1のタグ及び第2のタグのコイルの磁束が鎖交することにより生じるインダクタンスの変動や、コイル同士の重畳による寄生容量に起因するインダクタンスの変動を抑制することができ、これにより第2のタグを用いてデータの交信を行うことができる。また、第1のタグと第2のタグとの間にスペーサを介在させたり、第1のタグと第2のタグのコイルが完全に重ならないように配置したり、第1のタグ又は第2のタグの少なくとも一方のコイル内側に磁束を遮断するシートを介在させることにより、更に第1のタグと第2のタグの相互干渉を抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
従来技術で示したように、RFIDシステムは各種物品の管理に利用されているが、RFID用タグを交換する必要が生じた場合、以前に貼付したタグを剥がしてから新たなタグを貼付する方法では、通常タグは容易に脱離しないように接着剤や粘着性部材で物品に固定されているため、容易にタグを剥がすことができず、タグを貼付する物品が紙で構成される書籍等の場合には書籍を破損してしまうという問題があった。この問題を回避するために以前に貼付したタグの上に新たなタグを貼付する方法も考えられるが、この場合、両方のタグが相互に干渉してタグの共振周波数がシフトしてしまい、通信距離が低下してしまうという問題があった。
【0017】
そこで、本発明では、予め貼付されたタグを剥がさずに無効化(存在しないものと)し、その上に新たなタグを上貼りすることにより、共振周波数のシフトを抑制し、上貼りしても通信距離を低下させず、直貼りした場合と同程度の通信距離を確保できるようにしている。この無効化の方法としては、予め貼付されたタグの共振回路を構成する配線の少なくとも一箇所を切断し、必要に応じて、予め貼付されたタグと新たに貼付するタグとの間にスペーサを介在させて両タグの間隔を大きくしたり、各々のタグのコイルが重ならないように新たに貼付するタグの貼付領域を設定したり、少なくとも一方のタグのコイル内側に磁束を遮断するシートを介在させるという方法を用いる。これにより、特に書籍等の物品にタグを貼付するシステムにおいて、書籍を損傷することなく、簡便かつ確実にRFIDタグの取り付けが可能となるという効果が得られる。
【0018】
【実施例】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の実施例に係るRFIDシステム及びRFIDタグの上貼り方法ついて、図1乃至図10を参照して説明する。図1は、RFIDシステムの全体構成を模式的に示す図であり、図2は、無効化するタグと上貼りするタグとの関係を示す斜視図である。また、図3乃至図5は、タグの構造及びその切断位置を示す平面図であり、図6は、タグの構造及び切断する深さを説明するための断面図である。また、図7はスペーサを介在させた構造を示す斜視図、図8は非磁性シールを貼付する構造を示す平面図、図9はタグのコイル位置をずらして設置する構造を示す平面図であり、図10は本発明の効果を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、RFIDシステム1は、リーダ/ライタ用アンテナ3aを備えたリーダ又はリーダ/ライタ(以下、リーダ/ライタ3として説明する。)と、ラベル型、コイン型、シート型等のタグ2(以下、ラベル型タグとして説明するが、コイル軸が基材面に略直交する構造であればよい。)とからなり、リーダ/ライタ3には、送受信信号を変換するための通信回路部3bと送受信信号をデコードするための演算処理部3cとを備えている。また、タグ2は、その内部にコイルとコンデンサとにより構成される共振回路4を備え、タグ2側でも信号を生成する場合には、共振回路4にデータの演算、記憶を行うIC5が接続され、内蔵する電源又はリーダ/ライタ3から供給される電源を用いて駆動される。
【0020】
このRFIDシステム1におけるリーダ/ライタ3とタグ2とのデータ通信は、所望の通信周波数(例えば、13.56MHz)により行われるため、タグ2の共振回路4の共振周波数を通信周波数に正確に設定する必要がある。ここで、タグ2が単独状態で使用される場合には、上記所定の周波数となるようにコイルやコンデンサを設計し、かつ、製造後にトリミング用コンデンサをカットするなどの処置により正確に共振周波数を合わせ込むことができるが、図2に示すように、物品9に予め貼付されたタグ(以下、無効化するタグ2aと呼ぶ。)上に新たなタグ(以下、上貼りするタグ2bと呼ぶ。)を貼付する場合には、タグ同士に相互干渉が生じる。
【0021】
このタグ同士の相互干渉には以下の二つがある。その一つはコイルの鎖交磁束が鎖交するために生じるコイルのインダクタンス(実効値)の増加であり、もう一つはコイル同士が重畳することで生じる寄生容量によるコイルのインダクタンス(実効値)の増加である。従って、タグを上貼りする場合にはこの二つの干渉を抑制する手段を講じる必要がある。
【0022】
そこで本発明では、無効化するタグ2aの共振回路4を構成する配線を所定の位置で切断するという方法を用いる。具体的に説明すると、一般的にラベル型タグは、図3に示すように、フレキシブルな絶縁性シートからなる基板6の両面に設けられたAlやCu等の導電膜をエッチングにより除去したり、スクリーン印刷により導電性ペーストを塗布することにより、コイル4aや櫛形電極7、対向電極8、幹部電極10からなるコンデンサ4bを形成し、コイル4aとコンデンサ4bとを接続することによって共振回路4が形成される。そこで、共振回路4の任意の位置、例えば、コイル4aとコンデンサ4bを接続するためのブリッジ部分11を切断することによりタグを無効化することができる。このブリッジ部分11は無効化するタグ2aの隅に位置し、場所を特定しやすく切断作業が容易であるという特徴があり、この部分を切断することにより容易にコイル4aとコンデンサ4bとを分断してタグを無効化することができる。
【0023】
なお、無効化するタグ2aは図の構造に限定されず、コイル4aの巻回数、巻回位置、コンデンサ4bの構造、コイル4aとコンデンサ4bの接続構造や位置等は任意である。また、ここでは櫛形電極構造のタグを用いているが、これは、パターン形成段階におけるエッチングやスクリーン印刷の精度等の製造上の誤差により生じるパターン形状の個体差を調整するためであり、このような調整機構を備えていない構造であってもよい。
【0024】
このようにコイル4aとコンデンサ4bとの接続部分(ブリッジ部分11)を切断することにより、コイル4aの鎖交磁束が鎖交するために生じるコイル4aのインダクタンスの増加を抑制することができるが、この方法では配線が巻回されたコイル4aはそのまま存在しているため、コイル同士が重畳することで生じる寄生容量によるコイル4aのインダクタンスの増加を抑制することができない。そこで、図4に示すように、コイル4aの始端から終端に至る経路の任意の位置でコイル4aを切断する構成とすることもでき、コイル部分12で切断することにより、上記寄生容量によるコイルのインダクタンスの増加を抑制することが可能となる。
【0025】
また、図3及び図4は、コンデンサが別体として設けられた構造のタグであるが、図5に示すように、コンデンサがIC5に内蔵されている構造のタグについても、コイル4aとIC5とを接続するためのブリッジ部分11を切断したり、コイル4aの始端から終端に至る経路の任意の位置でコイル4aを切断することによりタグを無効化することができる。
【0026】
なお、図4及び図5では、コイル4aの5箇所を切断する構成としているが、切断箇所の数及び位置は任意であり、少なくとも一箇所でコイル4bのループが切断されていればよいが、コイル4aを細かく切断すればするほど、相互干渉を抑制する効果を向上させることができる。その場合、ブリッジ部分11は切断されていても切断されていなくてもよい。
【0027】
また、ブリッジ部分11やコイル部分12を切断する方法は特に限定されないが、図6に示すように、無効化するタグ2aは、粘着層15を介してインレー16、ポリプロピレン等からなる保護シート17が積層されて形成され、書籍の紙13の上に無効化するタグ2aが貼付され、その上が保護膜14で覆われた構造となっているため、書籍を傷つけることなく配線を確実に切断するためには、インレー16が切断できるように切断の深さが調整できる切断手段を用いることが好ましく、このような切断手段として刃の突出量を簡単に調整できるカッター等が好適である。
【0028】
このように無効化するタグ2aの共振回路4を構成する配線を少なくとも一箇所で切断することによって上貼りするタグ2bの共振周波数の変動を抑制することができるが、更に相互干渉の影響を抑制するには、図7に示すように、無効化するタグ2aと上貼りするタグ2bとの間にスペーサ18を挿入する方法もあり、スペーサ18を挿入することによりコイル同士の間隔を大きくして寄生容量を低減することができる。なお、このスペーサ18の厚さ、形状等は任意であるが、比誘電率が低い材料が望ましく、スペーサ18を厚くすればするほどコイル同士の間隔が大きくなり、寄生容量を低減する効果を大きくすることができる。
【0029】
また、共振回路4のコイル4aを分断したり、スペーサ18を挿入したとしても物理的に寄生容量を完全になくすことはできないため共振周波数が若干低下する。そこで、相互干渉を確実に防止するために、例えば、図8に示すように、上貼りする前に無効化するタグ2aのコイル4a内側に磁束を遮断する材料で構成される任意の大きさの非磁性シール19を貼ったり、上貼りするタグ2bのコイル4aの内側に任意の大きさの非磁性シール19等を貼る方法を用いることもでき、非磁性シール19を介在させることにより、両コイルの鎖交磁束を遮断もしくは抑制することができる。
【0030】
また、上貼りするタグ2bのコイル4aが無効化するタグ2aのコイル4aと完全に重ならないように上貼りするタグ2bを貼付位置を設定することにより、鎖交磁束を減少させてインダクタンスの増加を抑制することもできる。例えば、無効化するタグ2aとコイル4aの形状の異なるタグを用いて上貼りしたり、同一形状のタグを用いる場合は、上貼りするタグ2bを無効化するタグ2aとずらして貼付したり、コイル4aがタグ内で非対称に形成されている場合には、図9に示すように、上貼りするタグ2bを180°反転させて貼付することによってコイル4aの重なり部分の面積を小さく又は重ならないようにして鎖交磁束を減少させて相互作用を抑制することも可能である。
【0031】
また、上記いずれの方法によってもインダクタンスの増加(すなわち、共振周波数の低下)が所望の範囲内に収まらない場合には、上貼りするタグ2bの共振周波数を予め高くしておくこともできる。
【0032】
このように本発明は、無効化するタグ2aの共振回路4を構成する配線を少なくとも一箇所で切断する構造を基本として、更にスペーサ18を介在させたり、磁束を遮断する非磁性シール19を少なくとも一方のタグのコイル4aの内側に貼り付けたり、コイル4aの重なり部分の面積を小さくすることにより鎖交磁束や寄生容量によるコイル4aのインダクタンスの増加を抑制し、これにより上貼りするタグ2bの共振周波数の低下を抑制することができる。以下、本発明の効果を確認するために第1乃至第4の実施例に示す実験を行った。これらの実験の内容及び結果について説明する。
【0033】
[実施例1]
まず、無効化するタグ2aのコイル4aを切断する方法の効果を確認するために、中型の書籍(20cm×15cm×2cm)の裏表紙内側に、共振周波数f0が13.68MHzに設計されたラベル型のタグ(86mm×54mm)を貼付した後、共振回路4のブリッジ部分11のみを切断して無効化し、その上に、同型書籍に貼付すると共振周波数が13.61MHz(Q=28)となるように設計された同一種類のラベル型タグをコイル4a同士が完全に重なるように上貼りした試料を作成し、上貼り前後の共振周波数f0を測定した。また、比較のために、共振回路4を切断することなく、同型書籍に貼付すると共振周波数が13.51MHz(Q=28)となるように設計された同一種類のラベル型タグをコイル同士が完全に重なるように上貼りした試料を作成し、同様に上貼り前後の共振周波数f0を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より、共振回路4のブリッジ部分11を切断することにより、コイル4aの鎖交磁束が鎖交するために生じるコイル4aのインダクタンスの増加が抑制され、その結果、共振周波数f0の変化量(低下量)が小さくなることが確認できた。
【0036】
[実施例2]
次に、中型の3書籍(20cm×15cm×2cm)の裏表紙内側に、各々共振周波数foが13.54MHzに設計されたラベル型タグ(86mm×54mm)を貼付した後、ブリッジ部分11とそれ以外のコイル部分12を4箇所、15箇所、64箇所切断して無効化し、その上に、同型書籍に貼付すると共振周波数f0が13.55MHz(Q=30)、13.61MHz(Q=24)、13.59MHz(Q=25)となるように設計された同一種類のラベル型タグをコイル同士が完全に重なるように上貼りした試料を作成し、上貼り前後の共振周波数f0を測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、ブリッジ部分11のみならず、コイル部分12も切断することにより、第1の実施例に比べて共振周波数f0の変化量が小さくなっており、また、切断箇所数が増加するに従って共振周波数f0の変化量が徐々に小さくなっていることが分かる。これは、鎖交磁束によるインダクタンスの増加の抑制に加えて、コイル同士が重畳することで生じる寄生容量によるコイル4aのインダクタンスの増加も抑制されるためと考えられる。なお、各々の試料におけるQ値の低下量は各々3、−1、0であり、Q値の変化量も徐々に小さくなっており、通信距離の低下も抑制されていることが確認できた。
【0039】
[実施例3]
次に、中型の3書籍(20cm×15cm×2cm)の裏表紙内側に、各々共振周波数f0が13.67MHzに設計されたラベル型タグ(86mm×54mm)を貼付した後、それぞれブリッジ部分11のみを切断して無効化し、その上に、厚みtが異なる(t=0.1mm、0.3mm、0.7mm)のスペーサ18を貼付してから、同型書籍に貼付すると共振周波数f0が各々13.63MHz(Q=28)、13.64MHz(Q=27)、13.62MHz(Q=27)となるように設計された同一種類のラベル型タグをコイル同士が完全に重なるように上貼りした試料を作成し、上貼り前後の共振周波数f0を測定した。その結果を表3及び図10に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表3及び図10より、スペーサ18の厚みの増加に伴って共振周波数f0の変化量が小さくなっていることが分かる。これは、タグの間隔が大きくなるに従ってコイル4a同士の寄生容量が低下するためと考えられる。
【0042】
[実施例4]
次に、中型の書籍(20cm×15cm×2cm)の裏表紙内側に、共振周波数f0が13.56MHzに設計されたラベル型タグ(86mm×54mm)を貼付した後、共振回路4のブリッジ部分11のみを切断して無効化し、同型書籍に貼付すると共振周波数f0が13.74MHz(Q=25)となるように設計された同一種類のラベル型タグを180°反転させてコイル同士が完全に重ならない(コイル内側に1.3cm2せり出す)ように上貼りした試料を作成し、上貼り前後の共振周波数f0を測定した。その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
表4より、コイル同士が完全に重ならないようにタグを上貼りすることにより、単にブリッジ部分11を切断した試料(第1の実施例)に比べて共振周波数f0の変化量は小さくなっていることが分かる。これは、コイルの鎖交磁束が減少するためと考えられる。また、Q値の低下量は0であり、このような構成により直貼りした場合と同程度の通信距離が確保できることが確認できた。
【0045】
[実施例5]
次に、裏表紙内側にラベル型タグ(86mm×54mm)が貼付された6冊の書籍(B5版、厚さ1cm)を製本(合本)する際に、各書籍に貼付したラベル型タグのブリッジ部分11及びコイル部分12の4箇所の計5箇所を切断して無効化し、その上に、同型書籍に貼付すると共振周波数f0が13.81MHz(Q=26)になるように設計された同一種類のラベル型タグをコイル同士が完全に重なるように上貼りした試料を作成し、端部に位置する書籍に貼付したラベル型タグの上貼り前後の共振周波数f0を測定した。また、比較のためにラベル型タグの共振回路4を切断しない6冊の書籍についても同様に端部に位置する書籍に貼付したラベル型タグの上貼り前後の共振周波数の変化を調べた。その結果を表5に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
表5より、ブリッジ部分11及びコイル部分12を4箇所、計5箇所切断した書籍に貼付したタグの共振周波数f0の変化量は小さく、ラベル型タグが貼付された複数の書籍を製本(合本)する場合でも同様の効果が得られることを確認した。また、5箇所切断した書籍に貼付したタグのQ値の低下量は1であるのに対し、切断していない書籍に貼付したタグでは、Q値の低下量は3であり、共振回路4を切断することにより通信距離の低下も抑制されることを確認した。これにより、例えば、月刊誌をまとめて1冊に製本する際に各月分のラベルを剥がす必要がなくなり、図書館システムにおけるタグの取付作業を支援することができる。
【0048】
なお、上記各実施例では、タグを設置する物品として、図書館等で貸し出される書籍を例にして説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、任意の物品に適用することができ、特に、予め貼付されたタグを容易に剥がすことができない物品に適用することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のRFIDシステム及びタグの上貼り方法によれば、以前に貼付されたタグに新たなタグを上貼りする場合であっても上貼りするタグの共振周波数のシフトを抑制することができる。
【0050】
その理由は、無効化するタグの共振回路を構成する配線の少なくとも1箇所を切断することにより、コイルの鎖交磁束が鎖交するために生じるコイルのインダクタンスの増加やコイル同士が重畳することで生じる寄生容量に起因するコイルのインダクタンスの増加が抑制され、タグ同士の相互干渉を抑制することができるからである。また、無効化するタグと上貼りするタグの間にスペーサを挿入したり、無効化するタグ又は上貼りするタグの少なくとも一方のコイルの内側に磁束を遮断する非磁性シールを貼り付けたり、無効化するタグと上貼りするタグのコイル同士が完全に重なることがないように貼り付け位置を調整することにより、更にタグ同士の相互干渉を抑制することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】RFIDシステムの構成を模式的に示す図である。
【図2】無効化するタグと上貼りするタグの関係を示す斜視図である。
【図3】タグの構造及びその切断位置を示す平面図である。
【図4】タグの構造及びその切断位置を示す平面図である。
【図5】コンデンサがICに内蔵されるタグの構造及びその切断位置を示す平面図である。
【図6】タグの構造及び切断する深さを説明するための断面図である。
【図7】無効化するタグと上貼りするタグとの間にスペーサを挿入する構造を示す図である。
【図8】無効化するタグ又は上貼りするタグのコイル内側に非磁性シールを貼付する構造を示す図である。
【図9】無効化するタグと上貼りするタグのコイル位置をずらして配置する構造を示す図である。
【図10】無効化するタグと上貼りするタグとの間に挿入するスペーサの厚さと共振周波数の変化量との相関を示す図である。
【符号の説明】
1 RFIDシステム
2 タグ
2a 無効化するタグ
2b 上貼りするタグ
3 リーダ/ライタ
3a リーダ/ライタ用アンテナ
3b 通信回路部
3c 演算処理部
4 共振回路
4a コイル
4b コンデンサ
5 IC
6 基板
7 櫛形電極
8 対向電極
9 物品(書籍)
10 幹部電極
11 切断位置(ブリッジ部分)
12 切断位置(コイル部分)
13 書籍の紙
14 保護膜
15 粘着層
16 インレー
17 保護シート
18 スペーサ
19 非磁性シール
Claims (15)
- 基材上の配線により構成されたコイルと単体として形成又はICに内蔵されたコンデンサとからなる共振回路を含むタグと、リーダ又はリーダ/ライタとを用いて非接触でデータの通信を行うRFIDシステムにおいて、
物品に予め貼付され、その共振回路を構成する前記コイルと前記コンデンサとの接続部分の少なくとも一箇所が切断されることで無効化された第1のタグの上に第2のタグが貼付されることで、前記第1のタグと前記第2のタグとの相互干渉が抑制された状態で、前記第2のタグと前記リーダ又はリーダ/ライタとの間でデータの交信が行われることを特徴とするRFIDシステム。 - 基材上の配線により構成されたコイルと単体として形成又はICに内蔵されたコンデンサとからなる共振回路を含むタグと、リーダ又はリーダ/ライタとを用いて非接触でデータの通信を行うRFIDシステムにおいて、
物品に予め貼付され、その共振回路を構成する前記コイルの巻回部分の少なくとも一箇所が切断されることで無効化された第1のタグの上に第2のタグが貼付されることで、前記第1のタグと前記第2のタグとの相互干渉が抑制された状態で、前記第2のタグと前記リーダ又はリーダ/ライタとの間でデータの交信が行われることを特徴とするRFIDシステム。 - 前記第1のタグと前記第2のタグとの間にスペーサが配設され、該スペーサにより前記第1のタグと前記第2のタグとの間の寄生容量が低減され、相互干渉が抑制されることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDシステム。
- 前記コイルの軸方向から見て、少なくとも前記第1のタグ及び前記第2のタグの前記コイルが完全には重ならないように、前記第2のタグの貼付位置が設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のRFIDシステム。
- 前記第2のタグは、前記第1のタグに対して180度回転した状態で貼付されることを特徴とする請求項4記載のRFIDシステム。
- 前記第1のタグ又は前記第2のタグの少なくとも一方の前記コイル内側領域に、磁束を遮断する部材で構成されたシートが配設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のRFIDシステム。
- 前記物品は書籍であり、前記タグはラベル型タグであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のRFIDシステム。
- 基材上の配線により構成されたコイルと単体として形成又はICに内蔵されたコンデンサとからなる共振回路を含むタグと、リーダ又はリーダ/ライタとを用いて非接触でデータの通信を行うRFIDシステムにおける、物品に予め貼付されている第1のタグの上に第2のタグを上貼りする方法であって、
前記第1のタグの共振回路を構成する前記配線の少なくとも一箇所を切断することで無効化した後、前記第1のタグの上に前記第2のタグを貼付することを特徴とするRFIDタグの上貼り方法。 - 前記第1のタグの切断箇所は、前記コイルと前記コンデンサとの接続部分を含むことを特徴とする請求項8記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記第1のタグの切断箇所は、前記コイルの巻回部分を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記第1のタグと前記第2のタグとの間にスペーサを配設し、該スペーサにより前記第1のタグと前記第2のタグとの間の寄生容量を低減し、相互干渉を抑制することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一に記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記コイルの軸方向から見て、少なくとも前記第1のタグ及び前記第2のタグの前記コイルが完全には重ならないように、前記第2のタグの貼付位置を設定することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一に記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記第2のタグを、前記第1のタグに対して180度回転した状態で貼付することを特徴とする請求項12記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記第1のタグ又は前記第2のタグの少なくとも一方の前記コイル内側領域に、磁束を遮断する部材で構成されたシートを配設することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一に記載のRFIDタグの上貼り方法。
- 前記物品は書籍であり、前記タグはラベル型タグであることを特徴とする請求項8乃至14のいずれか一に記載のRFIDタグの上貼り方法。
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