JP4404220B2 - 気体状況予測装置、方法、プログラム、および拡散状況予測システム - Google Patents
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Description
この拡散状況予測システムにおいては、まず、気象GPV(Grid Point Value)データやAMEDAS等の気象観測データに基づいて、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより、事故発生(例えば、放射性物質の外部放出)時点から所定時間先の時点までの演算期間に渡り、一定時間間隔で多数の評価地点の気流要素(風向、風速等)を求め、この気流要素を用いて拡散計算を行うことにより、事故源から放出された物質の拡散状況を予測している。
まず、図8に示すように、原子力発電所などが設置されているなどして、その周辺における気流要素を緻密に予測する必要がある場合、原子力発電所が設置されている地点(例えば、Xで示した地点)を含む所定の領域を特定領域A3として設定する。そして、この特定領域A3を含むとともに、その面積が段階的に拡大される複数の拡大領域A2(A2>A3であり、以下「中領域」という。)、A1(A1>A2であり、以下「大領域」という。)を設定する。例えば、大領域A1は500km四方に、中領域A2は、100km四方に、特定領域A3は50km四方に設定される。
まず、初期条件としてGPVデータを空間内挿補間したデータを用い、境界条件としてGPVデータを空間・時間内挿補間したデータを用いる。そして、これらデータを用いて気象に関する偏微分方程式を解くことにより、大領域A1における各評価地点の気流要素を演算する。
続いて、中領域A2における評価地点の気象要素を以下の処理手順により演算する。まず、初期条件としては、中領域A2における評価地点のうち、大領域A1に設定した評価地点と同じ位置にあるものは、大領域A1の演算において既に求められているので、そのデータをそのまま流用し、その他の評価地点においては、流用したデータを内挿補間したデータを用いる。次に、境界条件としては、中領域A2の境界上の評価地点のうち、大領域A1に設定した評価地点と同じ位置にあるものは、大領域A1のデータを流用し、その他の境界上の評価地点では、流用したデータを内挿補間したデータを用いる。そして、これら初期条件、境界条件を用いて、気象に関する偏微分方程式を解いて各評価地点の気流要素を演算する。
同様に、特定領域A3における評価地点における初期条件、境界条件を、上述した中領域A2と同様の手順により求め、求めた初期条件、境界条件を用いて、気象に関する偏微分方程式を解くことにより、各評価地点の気流要素を演算する。
更に、上記特許文献1には、演算開始時点から所定時間先までの演算期間に渡って、連続的に上述した大領域A1、中領域A2、及び特定領域A3における気流要素を予測する場合、上記演算期間を複数の分割演算期間に分割し、各分割演算期間の演算を複数の演算装置に振り分けて同時並行して進めることにより、演算時間の短縮を図る技術が開示されている。
しかしながら、上述した気流要素の求め方では、膨大な計算時間を要するため、現状に即さず実現性に乏しいという問題があった。
本発明は、注目地点を含む注目領域の気体状況を予測する気体状況予測装置であって、各大気条件と各前記大気条件下における前記注目領域の気流場データとを対応付けて記憶する記憶手段と、前記注目領域を含むとともに前記注目領域よりも広い領域である拡大領域内に設定された複数の評価地点における気象要素を、気象モデル計算を用いて求める気象モデル演算手段と、前記気象モデル演算手段によって求められた前記気象要素から前記注目領域の大気条件を決定し、この大気条件に対応する気流場データを前記記憶手段から抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記気流場データを前記気象モデル演算手段によって求められた前記気象要素を用いて修正する修正手段とを具備する気体状況予測装置を提供する。
このように、大気条件とその大気条件下における注目領域の気流場データを予め記憶手段に記憶しておくので、気象モデル演算手段は注目領域のレベルまで気象モデル計算による気流場を求めることが不要となり、処理時間の短縮を図ることが可能となる。
また、注目領域における気流場データは、気象モデル演算手段により求められた拡大領域における評価地点の気象要素を用いて修正されることにより、気象要素が反映されたデータとされることとなる。また、記憶手段から抽出される気流場データは、そのときの気象要素が反映された気流場データであり、更に、この気流場データが、そのときの気象要素を用いて修正されることにより、精度の高い気流場データを得ることができる。
気象モデル演算手段が用いる気象モデル計算手法は、例えば、RAMS、MM5、WRFなどである。また、気象要素とは、例えば、気温、気圧、湿度、風向、風速、乱流エネルギー、降水量、雲量、雲形、日射、放射、日照、視程、および積雪などの少なくとも1つをいう。
上記拡大領域は、注目領域を含む領域、つまり、注目領域と一致する場合も含まれる。ただし、拡大領域内における評価地点は、注目領域よりも粗く設定されている。
あるいは、上記抽出手段は、前記気象モデル演算手段によって求められた拡大領域内の気象要素から注目領域内に該当する複数の評価地点、例えば、注目領域の境界面における複数の気象要素を抽出し、これら気象要素に基づいて、例えば、これを平均化することにより、前記注目領域の大気条件を決定することとしてもよい。
このような構成によれば、抽出手段によって求められた注目領域の気流場データは、出力手段を介して出力されることとなる。これにより、この気流場データを用いた拡散計算が可能となる。
同化に用いる計算手法の一例としては、ナッジング手法、最小二乗法などが挙げられる。同化は、気象モデル演算手段によって求められた注目領域内の気象要素全てを対象として行ってもよいし、注目領域の境界面における気象要素のみを対象として行うこととしてもよい。
流体力学モデルの一例としては、例えば、K・ε、LES、DNSなどが挙げられる。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る拡散状況予測システムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る拡散状況予測システムは、原子力発電所などが設置されている注目地点を含む所定の領域である注目領域の気体状況を予測し、予測した気体状況を用いて注目地点Xから放出された拡散物質の拡散状況を予測するシステムである。
この拡散状況予測システムは、いわゆるコンピュータシステムであり、CPU(中央演算処理装置)1、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置2、ROM(Read
Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置(記憶手段)3、キーボードやマウスなどの入力装置4、及びディスプレイ、プリンタなどの出力装置5、外部の装置と通信を行う通信部6などを備えて構成されている。
図4は、本実施形態に係る拡散状況予測システムの機能ブロック図である。図4に示すように、拡散状況予測システムは、気体状況を予測する気体状況予測装置10と、物質の拡散状況を予測する拡散状況予測装置20とを備えている。
これら各部により実現される各種機能は、拡散状況予測システムが備えるCPU1が補助記憶装置3に格納されている気体状況予測プログラムをRAMなどに読み出し、実行することにより、実現されるものである。
以下、拡散状況予測システムにより実現される気体状況予測方法および拡散状況予測方法について図4および図5を参照して説明する。
具体的には、気象モデル演算部11は、通信装置7(図1参照)を介して気象データベース7に接続し、上記評価期間における気象データ、例えば、全国規模の気象観測データであるGPVデータをダウンロードする。続いて、このGPVデータに基づいて初期条件および境界条件を決定し、ネスティング手法を用いて順次、高解像度の気象要素を求める。
このようにして、GPVデータに対応する大きさの拡大領域R1における初期条件及び境界条件が決定されると、これら条件を用いて、大気現象を解析する偏微分方程式であるRAMSコードで示されている風速場解析の基本方程式を差分解演算し、この変数を差分解(つまり、10分間隔の各評価地点における気象要素)として出力する。
抽出部12は、このようにして気流場データを抽出すると、抽出した気流場データを修正部13に出力する。
修正部12は、例えば、拡大領域RN−1における各評価地点の気象要素と気流場データとを同化させることにより、気流場データを修正する。このとき、例えば、気流場データのうち、風の成分のみを対象として同化を行う。この同化手法としては、ナッジング法を使用することができる。
この気流場データの同化は、例えば、注目領域における境界面付近の評価地点のみを対象としてもよいし、或いは、拡大領域RN−1と注目領域RNとで共通する全て或いは任意の評価地点を対象としてもよい。
更に、補助記憶装置3から抽出される気流場データは、そのときの気象要素が反映された気流場データであり、更に、この気流場データは、そのときの気象要素を用いて修正されるので、精度の高い気流場データを得ることが可能となる。
特に、上述した風成分と乱流エネルギーに関しては、これらの気象要素が拡散状況予測装置20における拡散計算において重要な要素となるので、風成分と乱流エネルギーとを修正することにより、拡散状況予測装置20における拡散状況の予測精度を更に向上させることが可能となる。
この最小二乗法は、ある格子点(i,j,k)におけるモデルAの物理量をXai,j,k、モデルBの物理量をXbi,j,kとした場合、全格子点を対象とする場合、以下の(4)式で表されるMが最小となる係数αを求め、この係数αを同化前の計算値に乗算することにより、同化後の計算値を得る。
この気流場データの同化は、例えば、注目領域における境界面付近の評価地点のみを対象としてもよいし、或いは、拡大領域RN−1と注目領域RNとで共通する全て或いは任意の評価地点を対象としてもよい。
また、同化するデータは、上記風の気流場データの他、乱流エネルギー、温度、湿度などの他の気象要素に対して行うこととしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る拡散状況予測システムは、抽出部12の機能が、上述した第1の実施形態に係る拡散状況予測システムと異なる。
以下、本実施形態に係る拡散状況予測システムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
そして、抽出した2つの気流場データを線形結合することにより、注目領域の気流場データを求める。
Φnew=αΦs+βΦt (6)
上記(6)式において、α、βは、平均風向と平均風向を挟む2つの風向との関係で決定される重み付け値である。なお、上記線形結合については、公知の技術を用いることが可能である。
そして、抽出部12は、上述のようにして注目領域の気流場データを求めると、この気流場データを修正部13に出力する。
また、上記実施形態では、修正部13が、抽出部12から入力された線形結合後の気流場データと、気象モデル演算部11から入力された拡大領域RN−1における各評価地点の気象要素とを同化させ、同化後の気流場データを出力部14に出力することとしたが、これに代えて、修正部13は、このような同化処理を行わずに、抽出部12から入力された線形結合後の気流場データをそのまま出力部14へ出力することとしてもよい。このように、同化処理を省略することとしてもよい。
更に、上記実施形態では、拡大領域RN−1内における注目領域RNの境界面における気象要素のみを用いて平均風向と平均大気安定度とを求めていたが、これに代えて、注目領域RN内の全ての評価地点における気象要素を用いて平均風向と平均大気安定度とを求めることとしてもよい。
例えば、上述した実施形態では、大気安定度と風向との組み合わせによって大気条件を決定していたが、大気条件を特定するための気象要素はこれらの要素に限定されない。
また、上述の実施形態では、10分刻みで気象要素を求める場合について述べたが、気象要素を求める時間間隔はこの例に限られない。
2 主記憶装置
3 補助記憶装置
4 入力装置
5 出力装置
6 通信部
7 気象データベース
10 気体状況予測装置
11 気象モデル演算部
12 抽出部
13 修正部
14 出力部
15 拡散計算部
20 拡散状況予測装置
Claims (10)
- 注目地点を含む注目領域の気体状況を予測する気体状況予測装置であって、
各大気条件と各前記大気条件下における前記注目領域の気流場データとを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記注目領域を含む拡大領域内に設定された複数の評価地点における気象要素を、気象モデル計算を用いて求める気象モデル演算手段と、
前記気象モデル演算手段によって求められた前記気象要素から前記注目領域の大気条件を決定し、この大気条件に対応する気流場データを前記記憶手段から抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記気流場データを前記気象モデル演算手段によって求められた前記気象要素を用いて修正する修正手段と、
を具備する気体状況予測装置。 - 前記抽出手段は、前記気象モデル演算手段によって求められた前記気象要素から前記注目領域の大気条件を求め、この大気条件に近い2つの気流場データを前記記憶手段から抽出し、抽出した気流場データを線形結合することにより、注目領域の気流場データを計算する請求項1に記載の気体状況予測装置。
- 前記抽出手段により抽出または計算された前記気流場データを出力する出力手段を備える請求項1または請求項2に記載の気体状況予測装置。
- 前記修正手段は、前記拡大領域内に含まれる前記注目領域の気象要素と、前記抽出手段からの前記気流場データとを同化させる請求項1から請求項3のいずれかに記載の気体状況予測装置。
- 前記修正手段によって修正された後の前記気流場データを出力する出力手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の気体状況予測装置。
- 前記修正手段は、前記気流場データの風成分または/および乱流エネルギーを用いて同化を行う請求項1から請求項5のいずれかに記載の気体状況予測装置。
- 前記気流場データは、流体力学モデルを用いて求められたものである請求項1から請求項6のいずれかに記載の気体状況予測装置。
- 請求項1から請求項7に記載の気体状況予測装置を備え、
前記気体状況予測装置により求められた前記注目領域における気流場データを用いて拡散計算を行う拡散状況予測システム。 - 注目地点を含む注目領域の気体状況を予測する気体状況予測方法であって、
前記注目領域を含むとともに前記注目領域よりも広い領域である拡大領域内に設定された複数の評価地点における気象要素を、気象モデル計算を用いて求める気象要素計算過程と、
前記気象要素計算過程において求めた前記気象要素に基づいて前記注目領域の大気条件を決定する大気条件決定過程と、
各大気条件と各前記大気条件下における前記注目領域の気流場データとが予め対応付けられている記憶装置から、前記大気条件決定過程にて決定した大気条件に該当する気流場データを抽出する抽出過程と、
前記抽出過程により抽出された前記気流場データを前記気象要素計算過程によって求められた前記気象要素を用いて修正する修正過程と、
を備える気体状況予測方法。 - 注目地点を含む注目領域の気体状況を予測するための気体状況予測プログラムであって、
前記注目領域を含むとともに前記注目領域よりも広い領域である拡大領域内に設定された複数の評価地点における気象要素を、気象モデル計算を用いて求める気象要素計算処理と、
前記気象要素計算処理において求めた前記気象要素に基づいて前記注目領域の大気条件を決定する大気条件決定処理と、
各大気条件と各前記大気条件下における前記注目領域の気流場データとが予め対応付けられている記憶装置から、前記大気条件決定処理にて決定した大気条件に該当する気流場データを抽出する抽出処理と、
前記抽出処理により抽出された前記気流場データを前記気象要素計算処理によって求められた前記気象要素を用いて修正する修正処理と、
をコンピュータに実行させるための気体状況予測プログラム。
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