JP4403477B2 - 画像処理装置及び画像処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は画像処理装置及び画像処理方法に関し、例えば撮影した画像から被写体領域を抽出する画像処理装置及び画像処理方法に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、撮影した画像から被写体領域を抽出する領域分割方法として、いくつかの方法が提案されており、それらは大分して2つの方法に分類される。
【0003】
第1の方法は、1枚の画像を用いて領域分割を行う方法であり、例えば近傍の画素値の類似度に基づいて領域を分割する方法や、画像の色空間をクラスタリングして領域を分割する方法等がある。
【0004】
第2の方法は、複数の画像から被写体の距離情報を算出し、当該距離情報に基づいて領域分割を行う方法である。
【0005】
例えば、2つの撮像系で撮像した2枚の画像を用い、両眼視差に基づいて画像の奥行き情報を得て、当該奥行き情報に基づいて領域を分割する方法がある。この方法の場合、比較的精度の高い領域分割を行うことができるが、2つの撮像系が必要であり、また2枚の画像間での対応点を検出するために多くの演算が必要となる。
【0006】
これに対して、1つの撮像系から得た複数の画像から画像の奥行き情報を得る方法として、DFD(Depth From Defocus)と呼ばれる方法が一般に知られている。DFDは、画像のぼけ情報から被写体の距離を推定する方法であり、複数の撮像系を必要としないことや、複雑な演算を必要としないといった利点を有している。
【0007】
このDFDの原理を図5を用いて説明する。図5において、対象物体Aまでの距離a0は、当該対象物体Aが合焦する位置b0が既知であれば、レンズRの焦点距離fから、(1)式を用いて算出することができる。
【0008】
【数1】
Figure 0004403477
【0009】
DFDにおいては、撮像面位置と対象物体Aの合焦位置とが異なることを前提として、撮像面上に投影された像のぼけの程度から合焦位置b0を求め、これを(1)式に代入することにより、対象物体Aまでの距離a0を算出する。
【0010】
いま、撮像面がb1にある場合、距離a0の物体表面上の点は撮像面上において錯乱円と呼ばれる円形に拡散し、(2)式で表される像i1を形成する。
【0011】
【数2】
Figure 0004403477
【0012】
ここで、*は畳込演算を示す。またhd1は拡散の状態を示す関数PSF(Point Spread Function :点広がり関数)であり、撮像面と合焦位置との距離b0−b1に比例する錯乱円直径d1に依存する。そこで、錯乱円直径d1をパラメータとするPSFのモデルを仮定し、観測画像i1から錯乱円直径d1を推定する。但し(2)式からも分かるように、観測画像i1は対象物体の像i0に依存しているため、このままでは錯乱円直径d1を求めることができない。
【0013】
そこで、異なる撮像面位置b2における観測画像i2を撮像し、画像の周波数領域上における観測画像i1と観測画像i2との比を取ることにより、(3)式のように観測画像とPSFの関係を導くことができる。
【0014】
【数3】
Figure 0004403477
【0015】
ここで、I1、I2、I0、Hd1、Hd2はそれぞれ観測画像i1及びi2、合焦画像i0、PSFhd1及びhd2のフーリエ変換である。この(3)式と図5の幾何学的関係により、対象物体Aに依存することなく錯乱円直径d1及びd2を算出することができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このようにDFDは、原理的に簡単な装置及び演算によって被写体までの距離を算出することが可能であるが、その一方で、PSFのモデル化や周波数分析の方法によって推定精度が制約されるという問題がある。
【0017】
例えば、(3)式を用いて距離を推定するためには、PSFに具体的な関数を与える必要があるが、実際のPSFはカメラのアイリス(絞り)形状に依存するため、一般に単純な関数で表すことは困難であり、またアイリス形状の精密なモデル化は、演算量の増大を招くことになるという問題がある。
【0018】
また、(3)式における錯乱円直径と周波数成分の関係は周波数毎に変化するため、距離の推定精度を向上するためには高い周波数分解能で周波数成分を抽出する必要があるが、このことは演算量の増大を伴うとともに、空間分解能を犠牲にするという問題がある。
【0019】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で画像の領域分割を行い得る画像処理装置及び画像処理方法を提案しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、画像を領域分割して所望の被写体領域を抽出する画像処理装置において、同一の被写体に対して、互いに異なる2つのフォーカスを用いて撮像することによって焦点が円形に拡散した錯乱円を有する第1の画像及び第2の画像を撮像する撮像手段と、第2の画像に対してそれぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより第2の画像に対するそれぞれ異なる複数の第2の周波数成分を抽出し、第1の画像を遅延させた後それぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより第1の画像に対するそれぞれ異なる複数の第1の周波数成分を抽出する周波数成分抽出手段と、同一中心周波数を有するバンドパスフィルタによって抽出された複数の第1の周波数成分及び複数の第2の周波数成分に対して第1の演算式を用いて演算することによって第1の画像に対応する複数の第1の錯乱円の直径及び第2の画像に対応する複数の第2の錯乱円の直径を算出する錯乱円直径算出手段と、複数の第1の錯乱円の直径及び複数の第2の錯乱円の直径に対して第2の演算式を両方用いて演算することによってレンズから被写体が合焦する撮像面位置までの合焦距離を複数算出し、当該合焦距離に対して第3の演算式を用いて演算することによってレンズから被写体までの複数の被写体距離を算出する被写体距離算出手段と、複数の被写体距離に対して予め設定された複数の閾値を用いることにより被写体領域を複数の領域に分割した複数のラベル画像を生成する領域分割手段とを設けた。
【0022】
この結果、第1の画像及び第2の画像に対して複数の錯乱円直径が求められるので、複数の被写体距離を簡易な構成及び簡易な演算で精度よく算出でき、被写体距離に対応した被写体領域分割処理を行なうことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0024】
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態の構成
図1において、1は全体として本発明の第1の実施の形態による画像処理装置を示し、撮像手段としての撮像装置10は、まず第1の撮像面位置で撮像対象を撮像し、第1の画像信号i1(x,y)をメモリ11に供給する。続いて撮像装置10は第2の撮像面位置で撮像対象を撮像し、第2の画像信号i2(x,y)を周波数分析器12A〜12Cに供給する。
【0025】
ここで、第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)は輝度信号でなり、(x,y)は画像上の位置を表す座標である。また、第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)はそれぞれ撮像面位置が異なるため、焦点ずれによるぼけの程度がそれぞれ異なる。
【0026】
メモリ11は第1の画像信号i1(x,y)を遅延させ、第2の画像信号i2(x,y)に同期して周波数分析器12D〜12Fに供給する。
【0027】
周波数成分抽出手段としての周波数分析器12A、12B及び12Cは、それぞれ入力した第2の画像信号i2(x,y)に対して固有の中心周波数でバンドパスフィルタ処理を施し、それぞれ画像上の各位置(x,y)に対応する周波数成分I2(x,y,w0)、I2(x,y,w1)及びI2(x,y,w2)を生成し、それぞれ対応する距離算出器13A、13B及び13Cに出力する。
【0028】
同様に周波数成分抽出手段としての周波数分析器12D、12E及び12Fは、それぞれ入力した第1の画像信号i1(x,y)に対して固有の中心周波数でバンドパスフィルタ処理を施し、それぞれ画像上の各位置(x,y)に対応する周波数成分I1(x,y,w0)、I1(x,y,w1)及びI1(x,y,w2)を生成し、それぞれ対応する距離算出器13A、13B及び13Cに出力する。
【0029】
図2は周波数分析器12Aの構成を示し、他の周波数分析器12B〜12Fも同一の構成を有している。周波数分析器12Aにおいては、撮像装置10から供給された第1の画像信号i1(x,y)をハイパスフィルタ21に入力する。ハイパスフィルタ21は、第1の画像信号i1(x,y)の直流成分を除去し、ガボアフィルタ22A〜22Cに供給する。
【0030】
ガボアフィルタ22A〜22Cは、(4)式に示す2次元複素数正弦波関数と2次元ガウス関数の積によって構成される。
【0031】
【数4】
Figure 0004403477
【0032】
このガボアフィルタ22A〜22Cは、ガウス関数の標準偏差sで制限された局所領域内において、それぞれ異なる方向tan-1(wy/wx)に沿って中心周波数w=(wx2 +wy2 1/2 で変化する周波数成分を第1の画像信号i1(x,y)から抽出し、それぞれ対応する絶対値算出器23A〜23Cに供給する。一般に、低い空間周波数成分を抽出するためには画像上においてより広い範囲の情報を用いる必要があるため、(4)式の標準偏差sは中心周波数wに応じて、(5)式のように与えられる。
【0033】
【数5】
Figure 0004403477
【0034】
絶対値算出器23A〜23Cは、それぞれ入力した周波数成分を絶対値化し、加算器24に供給する。加算器24は、絶対値算出器23A〜23Cから入力した、それぞれ方向性の異なる周波数成分を加算し、かくして周波数分析器12Aは角周波数wの周波数成分I2(x,y,w0)を生成して距離算出器13A(図1)に供給する。
【0035】
図1において、周波数成分比較手段としての距離算出器13A、13B及び13Cは、それぞれ入力した撮像面位置の異なる2つの周波数成分I1(x,y,w0)及びI2(x,y,w0)から、(6)式に基づいて、第1の撮像面位置に対応する第1の錯乱円直径d1(x,y)及び第2の撮像面位置に対応する第2の錯乱円直径d2(x,y)を算出する。
【0036】
【数6】
Figure 0004403477
【0037】
ここで、mはn=1のときm=2、n=2のときm=1となる整数である。またbnはレンズから撮像面までの距離、Dはアイリスの直径であり、これらは予め既知な値である。
【0038】
また、r(x,y)は各画像の周波数成分I1(x,y,w0),I2(x,y,w0)に依存した値であり、焦点ずれによるぼけのPSFを(7)式のガウス関数で近似し、またガウス関数の標準偏差sのp倍を錯乱円の半径と定義することにより、(8)式で与えられる。
【0039】
【数7】
Figure 0004403477
【0040】
【数8】
Figure 0004403477
【0041】
そして距離算出器13A、13B及び13Cは、それぞれ(6)式で得られた錯乱円直径を図5から求まる(9)式に代入することにより画像上の位置(x,y)に投影された被写体が合焦する撮像面位置b0を算出する。
【0042】
【数9】
Figure 0004403477
【0043】
さらに距離算出器13A、13B及び13Cは、それぞれ撮像面位置b0を(1)式に代入することにより被写体距離a0(x,y)を算出し、それぞれ対応するラベル算出器14A、14B及び14Cに供給する。
【0044】
領域分割手段としてのラベル算出器14A、14B及び14Cは、それぞれ入力した被写体距離a0(x,y)に対して予め設定された閾値を用いて閾値処理し、その結果に基づいて、画像上の各点(x,y)に対して領域を表すラベルを貼り付けてラベル画像L(x,y,w0)、L(x,y,w1)及びL(x,y,w2)を生成し、ラベル補正器15に供給する。
【0045】
例えば、閾値としてT0、T1、T2、……(T0<T1<T2……)が与えられている場合、ラベル画像L(x,y,wk)は次式で与えられる。
【0046】
【数10】
Figure 0004403477
【0047】
領域分割手段としてのラベル補正器15は、それぞれ異なる中心周波数に基づいて得られたラベル画像L(x,y,w0)、L(x,y,w1)及びL(x,y,w2)を統合し、最終的な領域分割結果を表すラベル画像L(x,y,)を生成する。
【0048】
図3はラベル補正器15を示し、ラベル修正器15A及び15Bで構成される。ラベル修正器15A及び15Bは、ある中心周波数wkに対応したラベル画像L(x,y,wk)の各位置におけるラベルを(11)式を用いて修正し、修正ラベル画像L’(x,y,wk)を生成する。
【0049】
【数11】
Figure 0004403477
【0050】
ラベル修正器15A及び15Bは、ある中心周波数wkに対応したラベル画像L(x,y,wk)に対して、中心周波数が一段階低い修正済みのラベル画像L’(x,y,wk+1)を調べ、局所領域R内の単一のラベルのみが存在する位置(x’,y’)を検出してL(x’,y’,wk)の値をL’(x’,y’,wk+1)で置き換える。ラベル補正器15は、ラベル修正器15A及び15Bによってこの修正を中心周波数の低いラベル画像から順次繰り返し、最終的に得られた修正ラベル画像L’(x,y,w0)を、領域分割の結果としてのラベル画像L(x,y)として出力する。なお、最低中心周波数wN(本実施例の場合はwN=w2)に対する修正ラベル画像は、L’(x,y,wN)=L(x,y,wN)として与えられる。
【0051】
すなわちラベル修正器15Aはラベル画像L(x,y,w1)に対して、修正ラベル画像L’(x,y,w2)を調べて局所領域R内の単一のラベルのみが存在する位置(x’,y’)を検出し、L(x’,y’,w1)の値をL’(x’,y’,w2)で置き換えて修正ラベル画像L’(x,y,w1)を生成し、これをラベル修正器15Bに供給する。
【0052】
ラベル修正器15Bはラベル画像L(x,y,w0)に対して、修正ラベル画像L’(x,y,w1)を調べて局所領域R内の単一のラベルのみが存在する位置(x’,y’)を検出し、L(x’,y’,w0)の値をL’(x’,y’,w0)で置き換えて修正ラベル画像L’(x,y,w0)を生成し、これをラベル画像L(x,y)として出力する。
【0053】
かくして画像処理装置1は、撮像装置10で撮像して得られた第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)について、被写体までの距離に基づいて画像の領域を分割してラベル画像L(x,y)を生成する。
【0054】
(1−2)第1の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、画像処理装置1は、撮像装置10によって撮像対象を2つの異なる撮像面位置で撮像し、焦点ずれによるぼけの程度が異なる第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)を生成する。
【0055】
周波数分析器12A、12B及び12Cは、第2の画像信号i2(x,y)に対して、ハイパスフィルタ21及びガボアフィルタ22A〜22Cを用いてそれぞれ異なる中心周波数でバンドパスフィルタ処理を施して周波数成分を抽出し、それぞれ周波数成分I2(x,y,w0)、I2(x,y,w1)及びI2(x,y,w2)を生成して対応する距離算出器13A、13B及び13Cに出力する。
【0056】
また周波数分析器12D、12E及び12Fは、第1の画像信号i1(x,y)に対してそれぞれ異なる中心周波数でバンドパスフィルタ処理を施して周波数成分を抽出し、それぞれ周波数成分I1(x,y,w0)、I1(x,y,w1)及びI1(x,y,w2)を生成して対応する距離算出器13A、13B及び13Cに出力する。
【0057】
距離算出器13A、13B及び13Cは、撮像面位置が異なる2つの画像信号から同一の中心周波数で抽出された2つの周波数成分を用いて画像上の各位置におけるぼけの錯乱円直径を算出し、当該錯乱円直径に基づいて画像上の各位置の被写体距離a0(x,y)を算出し、それぞれ対応するラベル算出器14A、14B及び14Cに供給する。
【0058】
ラベル算出器14A、14B及び14Cは、それぞれ被写体距離a0(x,y)に対して予め設定された閾値を用いて閾値処理し、画像上の各点に対して領域を表すラベルを貼り付けたラベル画像L(x,y,w0)、L(x,y,w1)及びL(x,y,w2)を生成し、ラベル補正器15に供給する。
【0059】
ラベル補正器15は、それぞれ異なる中心周波数に基づいて得られたラベル画像L(x,y,w0)、L(x,y,w1)及びL(x,y,w2)を統合し、最終的な領域分割結果を表すラベル画像L(x,y)を生成する。
【0060】
以上の構成によれば、異なる撮像面位置で撮像された第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)に対してバンドパスフィルタ処理を施して周波数成分を抽出し、当該周波数成分を用いて画像上の各位置における被写体距離を算出した後当該被写体距離を閾値処理することにより、簡易な構成及び簡易な演算で被写体領域分割処理を行うことができる。
【0061】
(2)第2の実施の形態
(2−1)第2の実施の形態の構成
図1において、2は全体として本発明の第2の実施の形態による画像処理装置を示し、ローパスフィルタ16A〜16D及びダウンサンプル器17A〜17Dを有していること、及び周波数分析器18A〜18F内のガボアフィルタが全て同一の中心周波数wを有していること以外は、第1の実施の形態による画像処理装置1と同一である。
【0062】
撮像手段としての撮像装置10は、まず第1の撮像面位置で撮像対象を撮像し、第1の画像信号i1(x,y)をメモリ11に供給する。続いて撮像装置10は第2の撮像面位置で撮像対象を撮像し、第2の画像信号i2(x,y)を周波数分析器18A及びローパスフィルタ16Aに供給する。
【0063】
ローパスフィルタ16Aは、第2の画像信号i2(x,y)に対して固有の周波数でローパスフィルタ処理を施して高周波成分を削減し、ダウンサンプル器17Aに出力する。ダウンサンプル器17Aは、第2の画像信号i2(x,y)に対して垂直及び水平方向について1画素おきの間引き処理を行って間引き画像信号i2(x/2,y/2)を生成し、周波数分析器18B及びローパスフィルタ16Bに供給する。ここでローパスフィルタ16Aは、第2の画像信号i2(x,y)の高周波成分を削減することにより、ダウンサンプル器17Aにおける間引き処理によるエリアシングの発生を回避する。
【0064】
同様にローパスフィルタ16Bは、間引き画像信号i2(x/2,y/2)に対して固有の周波数でローパスフィルタ処理を施して高周波成分を削減し、ダウンサンプル器17Bに出力する。ダウンサンプル器17Bは、間引き画像信号i2(x/2,y/2)に対して垂直及び水平方向について1画素おきの間引き処理を行って間引き画像信号i2(x/4,y/4)を生成し、周波数分析器18Cに供給する。
【0065】
周波数成分抽出手段としての周波数分析器18A、18B及び18Cは、それぞれ入力した第2の画像信号i2(x,y)、間引き画像信号i2(x/2,y/2)及び間引き画像信号i2(x/4,y/4)に対して同一の中心周波数wでバンドパスフィルタ処理を施し、それぞれ周波数成分I2(x,y,w)、I2(x/2,y/2,w)及びI2(x/4,y/4,w)を生成して対応する距離算出器13A、13B及び13に供給する。
【0066】
ここで、周波数分析器18Bに供給される間引き画像信号i2(x/2,y/2)は、周波数分析器18Aに供給される第2の画像信号i2(x,y)に比べて、垂直及び水平方向について1/2の画素数となっている。このため周波数分析器18Bは、等価的にw/2の周波数成分を抽出することになる。同様に、周波数分析器18Cに供給される間引き画像信号i2(x/4,y/4)は、周波数分析器18Aに供給される第2の画像信号i2(x,y)に比べて、垂直及び水平方向について1/4の画素数となっている。このため周波数分析器18Cは、等価的にw/4の周波数成分を抽出することになる。
【0067】
すなわち、周波数分析器18Aを0段目とし、周波数分析器18Bを1段目とすると、k段目の周波数分析器はwk=w/2k の周波数成分を抽出する。
【0068】
ここで、間引き画像信号i2(x/2,y/2)は第2の画像信号i2(x,y)に比べて垂直及び水平方向に1/2の画素数であるから、周波数分析器18Bは周波数分析器18Aに比べて周波数成分の算出における演算量が少なくなり、同様に周波数分析器18Cは周波数分析器18Bに比べて周波数成分の算出における演算量が少なくなる。このため画像処理装置2は、第1の実施の形態の画像処理装置1に比べて少ない演算量で同一の処理を行うことができる。
【0069】
一方、メモリ11は、第1の画像信号i1(x,y)を遅延させ、第2の画像信号i2(x,y)に同期して周波数分析器18D及びローパスフィルタ16Cに供給する。
【0070】
ローパスフィルタ16Cは、第1の画像信号i1(x,y)に対して固有の周波数でローパスフィルタ処理を施して高周波成分を削減し、ダウンサンプル器17Cに出力する。ダウンサンプル器17Cは、第1の画像信号i1(x,y)に対して垂直及び水平方向について1画素おきの間引き処理を行って間引き画像信号i1(x/2,y/2)を生成し、周波数分析器18E及びローパスフィルタ16Dに供給する。
【0071】
同様にローパスフィルタ16Dは、間引き画像信号i1(x/2,y/2)に対して固有の周波数でローパスフィルタ処理を施して高周波成分を削減し、ダウンサンプル器17Dに出力する。ダウンサンプル器17Dは、間引き画像信号i1(x/2,y/2)に対して垂直及び水平方向について1画素おきの間引き処理を行って間引き画像信号i1(x/4,y/4)を生成し、周波数分析器18Fに供給する。
【0072】
周波数成分抽出手段としての周波数分析器18D、18E及び18Fは、それぞれ入力した第1の画像信号i2(x,y)、間引き画像信号i1(x/2,y/2)及び間引き画像信号i1(x/4,y/4)に対して同一の中心周波数wでバンドパスフィルタ処理を施し、それぞれ周波数成分I1(x,y,w)、I1(x/2,y/2,w)及びI1(x/4,y/4,w)を生成し、対応する周波数成分比較手段としての距離算出器13A、13B及び13に供給する。
【0073】
距離算出器13Aは、周波数成分I1(x,y,w)及びI2(x,y,w)に基づいて被写体距離a0(x,y)を算出し、ラベル算出器14Aに供給する。
【0074】
また距離算出器13Bは、周波数成分I1(x/2,y/2,w)及び周波数成分I2(x/2,y/2,w)に基づいて被写体距離a0(x/2,y/2)を算出し、ラベル算出器14Bに供給する。
【0075】
同様に距離算出器13Cは、周波数成分I1(x/4,y/4,w)及び周波数成分I2(x/4,y/4,w)に基づいて被写体距離a0(x/4,y/4)を算出し、ラベル算出器14Cに供給する。
【0076】
領域分割手段としてのラベル算出器14A、14B及び14Cは、それぞれ入力した被写体距離a0(x,y)、a0(x/2,y/2)及びa0(x/4,y/4)に対して予め設定された閾値を用いて閾値処理し、その結果に基づいて、画像上の各点に対して領域を表すラベルを貼り付けてラベル画像L(x,y,w)、L(x/2,y/2,w)及びL(x/4,y/4,w)を生成し、ラベル補正器15に供給する。
【0077】
領域分割手段としてのラベル補正器15は、ラベル画像L(x,y,w)、L(x/2,y/2,w)及びL(x/4,y/4,w)を統合し、最終的な領域分割結果を表すラベル画像L(x,y)を生成する。
【0078】
ここでラベル画像L(x,y,w)、L(x/2,y/2,w)及びL(x/4,y/4,w)は、ダウンサンプル器16A〜16Dによる間引き処理によって、それぞれ画素数が異なる。このためラベル補正器15は各ラベル画像の画素数の違いを考慮して、(12)式を用いてラベルの修正を行いラベル画像L(x,y)を生成する。
【0079】
【数12】
Figure 0004403477
【0080】
(2−2)第2の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、画像処理装置2は、撮像装置10によって撮像対象を2つの異なる撮像面位置で撮像し、焦点ずれによるぼけの程度が異なる第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)を生成する。
【0081】
そして画像処理装置2は、第2の画像信号i2(x,y)及び第1の画像信号i1(x,y)をそれぞれ対応する周波数分析器18A及び18Dに供給するとともに、第2の画像信号i2(x,y)及び第1の画像信号i1(x,y)をそれぞれ縦横1/2に間引き処理して対応する周波数分析器18B及び18Eに供給し、さらに第2の画像信号i2(x,y)及び第1の画像信号i1(x,y)をそれぞれ縦横1/4に間引き処理して対応する周波数分析器18C及び18Fに供給する。
【0082】
周波数分析器18A〜18Fは、それぞれ画像信号に対して同一の中心周波数でバンドパスフィルタ処理を施して周波数成分を抽出し、対応する距離算出器13A、13B及び13Cに出力する。
【0083】
距離算出器13A、13B及び13Cは、撮像面位置が異なる2つの画像信号から同一の中心周波数で抽出された2つの周波数成分を用いて画像上の各位置におけるぼけの錯乱円直径を算出し、当該錯乱円直径に基づいて画像上の各位置の被写体距離a0(x,y)、a0(x/2,y/2)及びa0(x/4,y/4)を算出し、それぞれ対応するラベル算出器14A、14B及び14Cに供給する。
【0084】
ラベル算出器14A、14B及び14Cは、それぞれ被写体距離a0(x,y)、a0(x/2,y/2)及びa0(x/4,y/4)に対して予め設定された閾値を用いて閾値処理し、画像上の各点に対して領域を表すラベルを貼り付けたラベル画像L(x,y,w)、L(x/2,y/2,w)及びL(x/4,y/4,w)を生成し、ラベル補正器15に供給する。
【0085】
ラベル補正器15は、それぞれ異なる画素数のラベル画像L(x,y,w)、L(x/2,y/2,w)及びL(x/4,y/4,w)をを統合し、最終的な領域分割結果を表すラベル画像L(x,y)を生成する。
【0086】
以上の構成によれば、異なる撮像面位置で撮像された第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)をそれぞれ縦横1/2及び1/4に間引き処理して周波数成分を抽出し、当該周波数成分を用いて画像上の各位置における被写体距離を算出した後当該被写体距離を閾値処理することにより、周波数成分抽出処理の演算量を削減し、簡易な構成及び簡易な演算で被写体領域分割処理を行うことができる。
【0087】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、輝度信号でなる第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)に基づいて被写体領域分割を行うようにしたが、本発明はこれに限らず、カラー信号に基づいて被写体領域分割を行うようにしても良い。
【0088】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、第1の画像信号i1(x,y)をメモリ11で遅延し、第2の画像信号i2(x,y)に同期して後段の周波数分析器に供給するようにしたが、本発明はこれに限らず、ブロックマッチング方法等による画像の位置ずれ補正手段をメモリ11と後段の周波数分析器の間に設け、撮像時における手ぶれ等による、第1の画像信号i1(x,y)と第2の画像信号i2(x,y)との位置ずれを補正するようにしても良い。
【0089】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、距離算出器で算出した被写体距離について複数の閾値で閾値処理し、画像を複数の領域に分割したが、本発明はこれに限らず、距離算出器で算出した被写体距離について、一つの閾値で閾値処理し、画像を背景領域及び被写体領域に分割するようにしても良い。
【0090】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)に対して、それぞれ3つの周波数分析器で周波数成分を抽出するようにしたが、本発明はこれに限らず、第1の画像信号i1(x,y)及び第2の画像信号i2(x,y)に対してそれぞれ2つの周波数分析器で周波数成分を抽出したり、あるいはそれぞれ3つ以上の周波数分析器で周波数成分を抽出するようにしても良い。
【0091】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、撮像面位置の異なる2つの画像信号を用いて被写体領域を抽出するようにしたが、本発明はこれに限らず、撮像面位置の異なる2つ以上の画像信号を用いて被写体領域を抽出するようにしてもよい。
【0092】
【発明の効果】
上述のように本願発明によれば、画像を領域分割して所望の被写体領域を抽出する画像処理装置において、同一の被写体に対して、互いに異なる2つのフォーカスを用いて撮像することによって焦点が円形に拡散した錯乱円を有する第1の画像及び第2の画像を撮像する撮像手段と、第2の画像に対してそれぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより第2の画像に対するそれぞれ異なる複数の第2の周波数成分を抽出し、第1の画像を遅延させた後それぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより第1の画像に対するそれぞれ異なる複数の第1の周波数成分を抽出する周波数成分抽出手段と、同一中心周波数を有するバンドパスフィルタによって抽出された複数の第1の周波数成分及び複数の第2の周波数成分に対して第1の演算式を用いて演算することによって第1の画像に対応する複数の第1の錯乱円の直径及び第2の画像に対応する複数の第2の錯乱円の直径を算出する錯乱円直径算出手段と、複数の第1の錯乱円の直径及び複数の第2の錯乱円の直径に対して第2の演算式を両方用いて演算することによってレンズから被写体が合焦する撮像面位置までの合焦距離を複数算出し、当該合焦距離に対して第3の演算式を用いて演算することによってレンズから被写体までの複数の被写体距離を算出する被写体距離算出手段と、複数の被写体距離に対して予め設定された複数の閾値を用いることにより被写体領域を複数の領域に分割した複数のラベル画像を生成する領域分割手段とを設けるようにしたことにより、異なるフォーカスで撮像した第1の画像及び第2の画像に対してそれぞれ中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより得られた複数の錯乱円直径を用いて被写体距離が求められるので、複数の被写体距離を簡易な構成及び簡易な演算で精度よく算出でき、かくして簡易な演算で被写体領域分割処理をし得る画像処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による画像処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】周波数分析器の構成を示すブロック図である。
【図3】ラベル補正器の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による画像処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】DFDの原理を示す略線図である。
【符号の説明】
1、2……画像処理装置、10……撮像装置、11……メモリ、12A〜12F、18A〜18F……周波数分析器、13A〜13C……距離算出器、14A〜14C……ラベル算出器、15……ラベル補正器、16A〜16D……ローパスフィルタ、17A〜17D……ダウンサンプル器、21……ハイパスフィルタ、22A〜22C……ガボアフィルタ、23A〜23C……絶対値算出器、24……加算器。

Claims (3)

  1. 画像を領域分割して所望の被写体領域を抽出する画像処理装置において、
    同一の被写体に対して、互いに異なる2つのフォーカスを用いて撮像することによって焦点が円形に拡散した錯乱円を有する第1の画像及び第2の画像を撮像する撮像手段と、
    上記第2の画像に対してそれぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより上記第2の画像に対するそれぞれ異なる複数の第2の周波数成分を抽出し、上記第1の画像を遅延させた後それぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより上記第1の画像に対するそれぞれ異なる複数の第1の周波数成分を抽出する周波数成分抽出手段と、
    同一中心周波数を有する上記バンドパスフィルタによって抽出された上記複数の第1の周波数成分及び上記複数の第2の周波数成分に対して第1の演算式(1)を用いて演算することによって上記第1の画像に対応する複数の第1の錯乱円の直径d1及び上記第2の画像に対応する複数の第2の錯乱円の直径d2を算出する錯乱円直径算出手段と、
    Figure 0004403477
    dn:錯乱円直径
    mはn=1のときm=2,n=2のときm=1となる整数
    bnはレンズから撮像面までの距離
    u=b2−b1、v=b2+b1
    D:レンズの絞り直径
    r:第1の周波数成分及び第2の周波数成分に依存する値
    上記複数の第1の錯乱円の直径及び上記複数の第2の錯乱円の直径に対して第2の演算式(2)を両方用いて演算することによってレンズから上記被写体が合焦する撮像面位置までの合焦距離(b0)を複数算出し、当該合焦距離に対して第3の演算式(3)を用いて演算することによって上記レンズから上記被写体までの複数の被写体距離(a0)を算出する被写体距離算出手段と、
    Figure 0004403477
    d1、d2:錯乱円直径
    b1、b2:レンズから撮像面までの距離
    b0:合焦距離
    D:レンズの絞り直径
    Figure 0004403477
    f:レンズの焦点距離
    a0:レンズから被写体までの距離
    b0:合焦距離
    上記複数の被写体距離に対して予め設定された複数の閾値を用いることにより被写体領域を複数の領域に分割した複数のラベル画像を生成する領域分割手段と
    を具える画像処理装置。
  2. 上記領域分割手段は、上記被写体距離算出手段によって算出された上記被写体距離に対し所定の1つの閾値を用いて上記ラベル画像を生成することにより、上記被写体領域と背景領域とに分割する
    求項1に記載の画像処理装置。
  3. 画像を領域分割して所望の被写体領域を抽出する画像処理方法において、
    同一の被写体に対して、互いに異なる2つのフォーカスを用いて撮像することによって焦点が円形に拡散した錯乱円を有する第1の画像及び第2の画像を撮像する撮像ステップと、
    上記第2の画像に対してそれぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより上記第2の画像に対するそれぞれ異なる複数の第2の周波数成分を抽出し、上記第1の画像を遅延させた後それぞれ互いに中心周波数の異なる複数のバンドパスフィルタによるフィルタリングを施すことにより上記第1の画像に対するそれぞれ異なる複数の第1の周波数成分を抽出する周波数成分抽出ステップと、
    同一中心周波数を有する上記バンドパスフィルタによって抽出された上記複数の第1の周波数成分及び上記複数の第2の周波数成分に対して第1の演算式(1)を用いて演算することによって上記第1の画像に対応する複数の第1の錯乱円の直径d1及び上記第2の画像に対応する複数の第2の錯乱円の直径d2を算出する錯乱円直径算出ステップと、
    Figure 0004403477
    dn:錯乱円直径
    mはn=1のときm=2,n=2のときm=1となる整数
    bnはレンズから撮像面までの距離
    u=b2−b1、v=b2+b1
    D:レンズの絞り直径
    r:第1の周波数成分及び第2の周波数成分に依存する値
    上記複数の第1の錯乱円の直径及び上記複数の第2の錯乱円の直径に対して第2の演算式(2)を両方用いて演算することによってレンズから上記被写体が合焦する撮像面位置までの合焦距離(b0)を複数算出し、当該合焦距離に対して第3の演算式(3)を用いて演算することによって上記レンズから上記被写体までの複数の被写体距離(a0)を算出する被写体距離算出ステップと、
    Figure 0004403477
    d1、d2:錯乱円直径
    b1、b2:レンズから撮像面までの距離
    b0:合焦距離
    D:レンズの絞り直径
    Figure 0004403477
    f:レンズの焦点距離
    a0:レンズから被写体までの距離
    b0:合焦距離
    上記複数の被写体距離に対して予め設定された複数の閾値を用いることにより被写体領域を複数の領域に分割した複数のラベル画像を生成する領域分割ステップと
    を有する画像処理方法。
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