JP4403469B2 - 合成樹脂製中空容器の把手体とそれを用いた把手付きの合成樹脂製中空容器 - Google Patents

合成樹脂製中空容器の把手体とそれを用いた把手付きの合成樹脂製中空容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を2軸延伸ブロー成形した把手付きの中空容器に係わり、特に、PET樹脂プリフォームを中空容器にブロー成形する際に、射出成形により別体に成形したPET樹脂製の把手を容器本体の胴部にインサート成形をすることにより一体に成形してなる把手付きの大型中空容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活水準が向上するのに従って、生活習慣も変化してきて、酒やジュースその他の清涼飲料物が日常的に大量に消費されるようになり、これ等を収容する容器も使い捨て型の安価で大量生産が容易な合成樹脂製の容器が使用されるようになり、その形状も次第に大型のものとなるのに伴って、その重量も次第に重いものとなって容器の持ち運びが不便になると同時に、容器から小さな容器にその内容物を注いで移す場合にも不便さを感ずるようになった。
【0003】
このような大型で重量のある容器を持ち易くするには、容器に把手を付ければよいが、従来から使用されている洗剤や石油等を収容した大型の把手付き容器は、ポリエチレンや塩化ビニール等の熱可塑性樹脂からなるパリソンを容器にブロー成形する際に、把手部分も容器本体と一体に同時成形した把手付きの大型容器を成形したものが知られている。
【0004】
しかし、上記のようなポリエチレンや塩化ビニール等からなる容器は、洗剤や石油等を収容して使用するのには適しているが、ジュースやその他の飲料のように殺菌加熱を必要とする飲食物を収容するのには、可塑剤等の人体に有害な添加物が溶出したり、また、加熱により容器が変形したりして不適当である。
そこで、近年は、飲食物を充填した容器を加熱殺菌する必要がある容器には、加熱殺菌温度に耐え得るポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いてブロー成形した容器が、広く一般的に使用されるようになってきた。
【0005】
更には、PET樹脂からなる容器は、可塑剤を添加しないでもブロー成形ができることから、食品を収容する容器としては安全性やガスバリヤー性に於いても従来品より優れており、また、透明性や機械的な強度等をも備えているので多用されている。
特に、ジュース等の飲料品は高温下で充填してから殺菌することが必要であることから、これ等に使用される容器としては耐熱性が要求されるが、PET樹脂容器は、ブロー成形した後でヒートセットを行うことにより耐熱性を付与することが可能であることから、必要不可欠なものになってきている。
【0006】
しかし、このように耐熱性と安全性を備えたPET樹脂容器をブロー成形するのに、ポリエチレンや塩化ビニール樹脂容器の場合のように把手と容器本体とを一体に同時成形して、把手付きのPET樹脂容器とすることはPET樹脂の特性からして非常に困難なことである。
従って、現在使用されているPET樹脂製の大型中空容器にあっては、異種材料樹脂を用いて射出成形等により別体に成形しておいた把手を、PET樹脂からなるプリフォームをブロー金型にセットして中空容器にブロー成形する際に同時にインサート成形を行って、容器の胴壁面に組付ける方法が取られてきた。
【0007】
ところで、従来から使用されているPET樹脂製の把手付き大型中空容器として典型的なものとしては、特開平2−191156号公報に記載されたようなものが広く知られている。
それは図13に示したように、握り板部52とその両端から横方向に突出せしめた嵌着部53とから概略コの字状に形成した把手体51の嵌着部の先端に外方向に突起54を設けた形状のものをポリプロピレン樹脂等の射出成形により別体に成形しおいて、PET樹脂を射出成形したプリフォームをブロー成形型により中空容器にブロー成形する際に、前記把手体51を容器本体50の胴部上部側壁面に形成される把手取付け用の凹部55に同時にインサート成形を行って取付けて、前記把手体51の突起54が前記把手取付け凹部55の上下面の最奥部に係合せしめて、図12に示すように、前記握り板部52の外側面が容器胴部の外側面と同一面となるように把手体51が装着されてなる把手付きの中空容器に成形したものである。
【0008】
ところで、上記のようなコの字形をした把手体51は、構造が簡単であるから容易に、且つ、安価に成形することができて、また、容器の胴壁部への取付けも簡単であるが、しかし、その一方では運搬時の荷崩れや使用時の不注意等による事故等で、容器が把手方向側から床面に衝突するように落下した場合には、握り板部52面で衝撃力を受けて撓むので、その衝撃力が嵌着部53の突起54面に集中することになるので、容器の当該部分にひび割れが発生し易いという問題があった。
【0009】
そこで、このような欠点を改良したものが色々と考えられているが、出願人はその一例として、特開平7−223254号公報に記載するような把手付きの大型容器を既に提案しているところである。 それらの容器は、概略的に図14に示すように、PET樹脂からなる容器本体60の胴部に形成される把手取付け凹部67の上下面に把手体61を組付けるための一対の組付け腕板63a,63bを板状の把手部62の上下端部に連設すると共に、該両組け腕板63a,63bの前端部間を板片状をした取付け凹部の壁面への組付き梁板65により連結して概略O字形をした環状の把手体61に、前記上組付け腕板63aの前端部に上向きの突片64aを突設すると共に、下組付け腕板63bの前端部に下向きの突片64bを突設した構造にポリプロピレン樹脂等を射出成形した把手体を設けたものである。
【0010】
上記のような構造に成形したポリプロピレン等の硬質合成樹脂からなる把手体61は、ブロー成形装置の金型内に保持した状態で、PET樹脂から成形してなるプリフォームをブロー金型内に装填して中空容器にブロー成形する際にインサート成形されて、容器本体60の胴部上部側壁面に形成される把手取付け用の凹部67の上下面に形成される凹穴部把手体61の一対の組付け腕板63a,63bに設けた上向きの突片64aと下向きの突片64bとがそれぞれ嵌合、固定されて、図のような把手付きの大型容器に成形されたものである。
【0011】
このようにして成形された把手付きの大型容器に於いては、把手体61と容器本体60との間にガタ付くこともなく、把手体が抜け出ることがないように組付けられており、また、上下の組付き板63a,63b間に組付き梁板65が連結されているので、容器が床面に把手部62側から落下して、把手部に直接衝撃力を受けた場合にも、上下組付き板に外向きの強い力が作用して間隔が変形することもないので、組付け部分で容器にひび割れが発生するようなこともなく、非常に安全性に優れた把手付きの大型容器である。
【0012】
ところで、近年、大量消費に伴って大量に排出される容器等の廃棄物の処理が社会問題となるようになって、資源の有効利用が求められるようになって、全国の自治体に於いて使用済みの各種容器やその他の物品の回収と再資源化が行われるようになっているが、その対象中にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂容器も含まれている。
そこで、このような自治体の要望に応えるべく使用済みの廃棄されたPET樹脂容器を回収したものを、産業資源として各企業が再利用化(リサイクル)するには、回収した廃棄物から不純物を含まない純然たるPET樹脂のみを取り出すことが必須の要件であり、異物が混入したPET樹脂は再生材料としての価値が無いものになる。
【0013】
しかし、現在使用されている各種のPET樹脂容器入りの製品には、印刷された色々なラベルが貼られていたり、密封用の蓋に金属が用いられていたり、また、把手体にはポリプロピレン等の異なる材質の樹脂が用いられていたりして、産業資源としてのリサイクルを考慮して製造されている製品に比べて多くの問題があって、リサイクルの円滑化を阻んでいる。
【0014】
回収したPET樹脂に異物が混入すると、再生材料としての価値が無くなるので、純然たるPET樹脂のみを取り出して回収する手段としては、ラベル付きのPET樹脂容器からインクや紙等を分離するには、苛性ソーダで溶解して分離することにより可能であり、また、ポリプロピレンや金属を分離するには比重により分離することが可能であるが、そのためには大がかりな設備は必要になるので、零細なリサイクル業者にとっては設備に費用がかかり過ぎて、純粋なPET樹脂のみを回収することは不可能な状況になっている。
【0015】
以上のような諸般の事情を考慮に入れると、把手付きのPET樹脂容器に於いても、把手体には容器本体と同じ材質のPET樹脂を使用し、更には、密封蓋体やその他の部分にもPET樹脂を使用して、容器全体をPET樹脂とすることが最適であり、また、ラベルには、容器本体から剥がし易いタックラベルを使用する等の手段を採ると、設備が少ない業者であってもリサイクルが可能になり、産業資源としての再利用が進むので、このような全てにPET樹脂を用いた容器の開発が必要となってきた。
【0016】
そこで、現在、把手付きのPET樹脂製の容器が最も多く使用されている大型容器について、従来のポリプロピレン(PP)樹脂等の異種の硬質樹脂製の把手に代えて容器本体と同種のPET樹脂製の把手を用いた容器を開発すべく、従来の成形方法に従った色々な形状をしたPET樹脂の把手を取り付ける試作実験を繰り返し行ってみた。
まず、図13に示すようなコの字形をした従来構造の把手体を、PET樹脂を射出成形して成形した後、図1に示すように、該把手体14をブロー成形装置の金型にセットしてから、PET樹脂からなるプリフォームを金型内に装填してブロー成形を行うと同時にインサート成形して、把手体の突起部を容器本体の胴部が包み込むように成形して取り付けた結果、以下のような問題点が発生することがわかった。
【0017】
(1)把手体の材質がPP樹脂等からPET樹脂に代えたことにより、ブロー成形する際に、把手体とプリフォームとが接触する部分から破裂して、ほとんどの容器が裂けてしまった。(これは、ガラス転移点以上に加熱されたPET樹脂は、相互に溶着性があって非常に滑りが悪くなるためであり、120 ℃近くまで加熱されたプリフォームと把手体とのPET樹脂同士が重なると接着剤で付けたようになってしまうことから理解できる。)
(2)PET樹脂同士では非常に滑りが悪いために、成形できた容器でも、成形途中の把手体とプリフォームとの接した部分に当たり傷ができて、容器に成形された場合には数倍に拡大されるので、外観的に不良なものとなる。
(3)ブロー成形に起因する特徴で、把手体の突起部の内側の上側面は賦形性が悪いが、下側面は賦形性が良くなるために、この下側部分は窪んで図15に示したようにノッチ部59が発生すると共に、落下時の衝撃力により矢印で示すように変形して、この部分より割れが発生する。
以上のように、現在使用されているPP樹脂製等の把手体を、そのまま形状にしたPET樹脂製の把手体に代えただけで、PET樹脂からなるプリフォームをブロー成形してPET樹脂製把手付を取り付けた容器に成形したのでは、ブロー成形時の容器の破裂や、把手体とプリフォームとの擦れ傷、更に、落下時の衝撃による容器壁の亀裂の発生等の問題を引き起こすことになる。
【0018】
そこで、上記したような問題点が発生する原因について詳しく調査した結果、以下のような原因に基づいていることがわかった。
(1)の滑りが悪くなる原因について
従来の把手体の構造は、把手体の突起部が組付き板から垂直に立ち上がっているが、その高さが高すぎると、その隅角部より穴あきが発生した。また、発生する場所は、突起部の左右の位置には関係がなくて、成形条件により突起部の上側より破裂したり、下側より破裂したりした。
(2)の把手体によりプリフォームに当たり傷ができる原因について
把手体にプリフォームが当たってから延伸される量が多くなると、成形時に容器が破裂し易くなる。即ち、容器の径方向が大きくなると、把手体にプリフォームが当たってから延伸される量が多くなるため、容器が破裂し易くなるからである。
また、成形型内の把手体とプリフォームとの距離が近いと擦れ傷が発生し安くて、距離が遠くなるとプリフォームが延伸されてから把手に組付けられるので、薄肉になって破裂し易くなる他に、把手の取り付け強度が低下する。即ち、両者の間の距離を近づけると破裂はしにくくなるが、距離が近過ぎると成形時に擦れ傷が発生する。
(3)落下時の亀裂の原因について
把手体をコの字形にした場合、把持体部に落下時の衝撃力を受けると突起部に集中するので、当該部分から亀裂が発生し易くなり、また、落下衝撃のバックリングが把持部の裏側に発生するので突起部から亀裂が発生し易い。
【0019】
PET樹脂を射出成形して、図12及び図14に示した如き従来の把手体と同一の構造をした把手体を成形したものを、単に従来と同様の成形方法によるブロー成形によりインサート成形したのでは、把手体と容器本体とが同じ樹脂であることから、膨張変形する容器本体の胴壁部の滑りが悪くて破裂し易いことから、プリフォームの滑りを良くするために次のようなことを試みた。
(a)把手体の表面にシリコン等の潤滑剤を塗布したり、または、把手体の表面を表面処理して滑らかにしてみたが、成形効果としてはあまり効果が認められず、また、潤滑剤を塗布したものは、把手体の取り付け強度にバラツキが見られると共に強度の低下も認められる。
(b)把手体の取り付け突起部の高さを低くしたり、小さくしてみたが、把手体の取り付け強度が低下して、抜け易くなるので実用的でないことが分かった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、PET樹脂から成形してなるプリフォームを、ブロー成形金型内に装着して中空容器にブロー成形すると同時に、該成形金型内にセットしておいたPET樹脂でできた把手体をインサート成形して、PET樹脂製の容器本体にPET樹脂からなる把手体を取り付けた大型中空容器をブロー成形する際に、延伸膨張されるプリフォームと固定された把手体との間の滑りを良くすることにより、ブロー成形時に容器が破裂しないようにすると共に、容器本体の胴壁面に把手体による擦り傷が発生しないようにしてブロー成形して、また、成形された把手付きの容器は、強い外力が加わっても把手体が容器本体から抜けることがなくて、且つ、落下した場合に落下衝撃により容器の壁面に亀裂が入らないようにしたものを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記したような問題点を解決するために、本願の発明は、プリフォームと把手体との間の滑りを良くするのに、PET樹脂からなる把手体の構造を、その組付け板に垂設する突起部の立ち上がり面を滑らかな形状に形成すると共に、該突起部とプリフォームとが接触する部分の面積が少ない形状に形成する。
また、プリフォームと把手体との間でこすれに基づく容器面の擦り傷が発生しないようにするために、両者の間隔を従来よりも遠ざけて、均一な距離になるようにセットしておいて成形する。
更に、落下時の衝撃による把手部のバックリングにより容器の壁面に亀裂が入らないようにするために、把手体の組付け板間に補強梁をブリッジ状に設けて環状構造にして、組付け板が変形しないようにする。
【0022】
【発明の実施の態様】
本願発明は、PET樹脂を射出成形することにより、把手板42の上下端部に一対の組付け腕板43(43a,43b)を設けて略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に突起部44(44a,44b)を外向きに突設せしめて形成した把手体41に於いて、前記突起部43a,43bが組付け板44a,44bから立ち上がる側面44cに傾斜を付けて滑らかな形状にして、その高さもやや低くした形状に形成すると共に、前記組付け腕板43a,43b間には補強梁45がブリッジ状に設けられて、図3(a),(b)に示すような構造に形成した把手体41を成形する。
【0023】
上記のように成形してなる把手体41を、図1及び図2に示したようにブロー成形型10にセットした後、該成形金型内にPET樹脂を用いて成形してなるプリフォームPを装填してから、通常のブロー成形操作を行ってインサート成形することにより、把手体41が容器の胴部に取り付けられた把手付きの大型中空容器を成形する。
このようにして成形した把手付き中空容器は、図3(c)に示すように把手体41’の組付け腕板43’から取付け突起部44’を垂直に立ち上げた構造をした従来の把手体41’と同じように、突起部44’の上部及び下部に直角状の隅角部44’d,44’eが存在する構造をした把手体41’のものに比べれば、プリフォームが延伸ブローされる際に隅角部で抵抗を受けることがなくて成形性が向上して、ブロー成形時に容器が破裂するのを完全ではないが防ぐことができて、また、成形した容器の落下時の衝撃力による破損を防ぐこともできる。
しかし、まだ容器壁には把手体による擦れ傷が残るものがあり、改善の余地が認められるので、本願の発明であるPET樹脂からなる把手体を大型中空容器に組付けるために、以下のような種々の工夫を行った。
【0024】
【実施例】
そこで、本願の発明であるPET樹脂からなる把手付きの大型中空容器に関するいくつかの実施例を示して、以下に図面を参照しつつ説明する。
実施例1.
把手板42の上下端部に一対の組付け腕板43を設けて略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板43に組付け突起部44を外向きに突設した構造の把手体41に於いて、前記組付け腕板43(43a,43b)から立ち上げた組付け突起部44(44a,44b)の端面44cに傾斜を付けて滑らかな形状に形成して、更に、前記突起部44の裏側となる前記組付け腕板43間を補強梁45でブリッジ状に連結して、図3(a),(b)に示すような構造にした把手体41を、PET樹脂の射出成形により成形した。
【0025】
このようにして成形した把手体41を、図1及び2に示すように、ブロー成形型10にセットした後、該成形型内にPET樹脂を射出成形したプリフォームPを装着してからブロー成形操作を行うことにより、把手体41を中空容器の胴部にインサート成形して把手付きの大型中空容器に成形した。
その結果、従来型のものに比べて成形性がかなり向上して、ブロー成形時に容器が破裂することが少なくはなったが、まだ完全とは言えず、把手体による擦れ傷が若干は認められた。
その理由として、このようにした把手体41の突起部44(44a,44b)は緩やかな面で形成されてはいるが、まだいくらか角部が取り残されているようで、また、前記突起部44の表面がプリフォームPの中心線に対して平行な面になるような平坦面で形成されていることから、ブロー成形時にプリフォームの肉厚が伸び難い点があるのではないかと考えられる。
【0026】
実施例2.
実施例1で用いたような把手体41に代えて、図4に示すように、把手板32の上下端部に一対の組付け腕板33a,33bを設けて略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に組付け突起部34a,34bを外向きに突設した構造を把手体31に於いて、前記組付け腕板33(33a,33b)から立ち上げる組付け突起部34(34a,34b)の端面34cを大きな円弧状に形成して、全く隅角部がない滑らかな形状にすると共に、該突起部34の表面はプリフォームPの中心線に対して外向きになるように傾斜した面をなして、且つ、該突起部の裏側になる前記組付け板33間を補強梁35でブリッジ状に連結した構造とし、把手体31をPET樹脂の射出成形により成形した。
【0027】
このようにして成形した把手体31を、実施例1と同じようにしてブロー成形型10にセットした後、該成形型内にPET樹脂を射出成形したプリフォームPを装着してからブロー成形操作を行って、把手体31を中空容器の胴部にインサート成形した把手付きの大型中空容器に成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂するような事態は実施例1の場合に比べて一層少なくなり、把手体による擦れ傷も発生しにくくなったが、これは把手体31の組付け突起部34の端面34cの外形を円弧状にして、隅角部が全くないものにすると同時に、組付け突起部34の表面がプリフォームの中心線に対して傾斜した面となるようにしたことにより、ブロー成形時にプリフォームの接触面を滑り易くしたことによる効果と考えることができる。
【0028】
実施例3.
実施例1で用いた図3に示すような構造に形成した把手体41に於いて、組付け突起部44(44a,44b)の表面がプリフォームPと接する部分の表面に、図5(d)に示すような縦溝凹凸面44d’を形成した把手体41を、PET樹脂の射出成形により成形した後、該把手体をブロー成形型にセットして、実施例1と同様に把手付きの大型中空容器をブロー成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂することが非常に少なくなると共に、把手体による壁面の擦れ傷も非常に小さなものになったが、その理由としては、突起部44の面がプリフォームPと接触する面積が少なくなって、両者間の滑り性が高められたことによるものと考えられる。
【0029】
実施例4.
同様に、実施例1で用いた把手体41の突起部44の表面を、図5(b)に示すような円柱状凹凸面44b’が形成された把手体41を構成して、該把手体を実施例1と同様の成形方法により把手付きの大型中空容器をブロー成形した。
その結果、プリフォームPと接触する突起部44の表面積が小さくなったためか、ブロー成形時に容器が破裂することがほとんど無くなると共に、把手体による容器壁面の擦れ傷もほとんどなくて、実施例3に於ける場合よりも良い結果をが得ることができた。
【0030】
実施例5.
実施例1に於ける把手体41の突起部44の表面を、図5(a)に示すように突起部面の中心線から両側に約45度の角度で外向きに開くようにして縦溝状凹凸面44a’を形成した把手体41を構成して、該把手体を実施例1と同様の成形方法により把手付きの大型中空容器をブロー成形した。
その結果、プリフォームPと接触する突起部44の表面の凹凸面がプリフォームの膨張方向になっているためか、ブロー成形時に容器が破裂することも無く、把手体による壁面の擦れ傷もほとんど認められずに、実施例3に於けるものよりも良い結果をが得ることができたが、その理由としては、突起部の凹凸面の形状がプリフォームの膨張方向に向いているから、突起部とプリフォームとの間の滑り性が良くなったものと考えられる。
【0031】
実施例6.
実施例1に於ける把手体41の突起部44の表面を、図5(c)に示すように突起部面の先端中央部を中心とする同心状円のにした円弧溝状凹凸面44c’を形成した把手体41を構成して、該把手体を実施例1と同様の成形方法により把手付きの大型中空容器をブロー成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂することも無く、把手体による壁面の擦れ傷もほとんど認められずに、実施例5に於けるものと同様の良い結果をが得ることができた。
【0032】
実施例7.
続いて、実施例2で用いた突起部の外形を円弧状に形成すると共に表面をプリフォーム中心に対して傾斜せしめた構造の把手体に於いて、前記突起部24がプリフォームPと接する部分の平坦面に、実施例3の場合と同じく図5(d)に示したものと同じ形状の縦溝状凹凸面24dを設けて、図6に示したような形状にした把手体21をPET樹脂の射出成形により成形して後、該把手体21をブロー成形型10にセットしてから、実施例1と同様にブロー成形して把手付きの大型中空容器を成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂することも無く、また、把手体による壁面の擦れ傷もほとんど認められずに、実施例3に於ける場合よりも良い結果をが得ることができた。
更に、上記の把手体21に於いて、図7に示したように、組付け突起部24’の表面に設けた縦溝状凹凸面24d’の周縁部を滑らかな平坦面で縁取りした構造にした把手体21’は、一層プリフォームの滑りが良くて、容器壁面に擦れ傷が全く認められず、より良い結果を得ることができることが分かった。
【0033】
実施例8〜10.
同様にして、上記の実施例2で用いた図4に示すような構造をした把手体31に於いて、その端面を円弧状に形成した突起部の前面がプリフォームと接触する平坦面を、上記した実施例4乃至6に於ける表面形状と同じように、図5(a)に示す形状(実施例8)、図5(b)に示す形状(実施例9)、図5(c)に示す形状(実施例10)に成形したそれぞれの把手体を用いて、実施例7と同じようにブロー成形して把手付きの大型中空容器を成形したみたところ、いずれの把手体の場合も、実施例4乃至6に於ける把手体を用いたものよりも良い結果を得ることができた。
【0034】
これらの結果から、把手体の組付け腕板から立ち上げた組付け突起部の端面に傾斜を付けて滑らかな形状に形成した図3に示す構造の把手体41よりも、把手体の取り付け腕板から立ち上げる組付け突起部の端面を大きな円弧状に形成して、隅角部がない滑らかな形状にした図4に示す構造の把手体31について、更に、組付け突起部の表面に溝等を設けて、ブロー成形時にプリフォームと接する突起部表面の接触面積を少なくしたり、また、突起部の表面に設けた溝等の周縁に平坦な縁部を設けることにより、一層成形性が向上することも分かった。
【0035】
しかし、上記のようにして突起部の接触面積を少なくした把手体を用いて中空容器を成形したとしても、従来品よりも大型の容器を成形する際には容器の直径が大きくなり、プリフォームが把手体に接触してから延伸される量も大きくなるので、ブロー成形時に容器壁に亀裂が発生し易くなって、容器の破裂を完全に防ぐことは困難であることが分かった。
従って、プリフォームが把手体に接触してから延伸される量を少なくするため、把手体21の突起部の背面に、図8に示すように、Rをつけると共に、過延伸を防止する壁部29を設けることによりブロー成形時の破裂を抑えることができるが、把手体21の突起部24と過延伸防止壁29との距離Lは近い方が有利ではあるが、近過ぎると賦形性が悪くなるため、L=15〜25mmが好ましいことが分かった。
【0036】
また、プリフォームと把手体との距離が近いと、把手体による壁面の擦れ傷が発生し易くなるが、逆に遠くなるとプリフォームが延伸されてから把手体に絡みつくため薄肉となり、破損し易くなったり、強度も低下する。
ところが、上記したいずれの実施例に於いても、把手体の組付け板の突起部のプリフォームと接する面は、図6に示すように平坦面に形成されているから、これ等の把手体をインサート成形する際には、プリフォームと把手体との間の距離は、把手体の突起部面の中央部とその両端部の位置とでは異なることになるので、どうしてもブロー金型にセットする際に中央部は近づけた状態にならざるを得ない。
そこで、把手体の突起部24の表面を、図9,10に示すように曲面にして、プリフォーム面と対向する突起部面が湾曲した面に形成することにより、両者の間の距離dを全ての位置で等しくなるように改善することができる。
特に、前記突起部24の表面を、プリフォームの外周と同心円状になるような曲面に形成した場合には、プリフォームPと把手体21の突起部24との間の距離Dを均一に保つようにすることができて、更に良い効果を得ることができるものと考えことができる。
【0037】
実施例11.
把手板12の上下端部に一対の組付け腕板13を設けてコの字状に形成すると共に該取り付け腕板に組付け突起部14を外向きに突設して構造の把手体11に於いて、前記取り付け腕板13から立ち上げる組付け突起部14の端面14cを大きな円弧状に形成して、隅角部が全くない滑らかな形状にすると共に、組付け突起部14の前面をプリフォームの壁面と近似した同心円状の曲面に形成して、且つ、前記突起部の前記組付け腕板間13を補強梁15でブリッジ状に連結して、図10に示すような環状構造をした把手体11を、PET樹脂の射出成形により成形した。
【0038】
このようにして成形したPET樹脂の把手体11を、図1及び2に示すように、ブロー成形型10にセットした後に、該成形型内にPET樹脂の射出成形により成形したプリフォームPを装着してからブロー成形操作を行うことにより、前記把手体11を中空容器の胴部にインサート成形した把手付きの大型中空容器を成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂することはなくなって、把手体との接触による擦れ傷も実施例2に比べて少なくなったが、これは、把手体11の組付け突起部14の端面14cの外形を滑らかな円弧状にして、隅角部をなくしたことに加えて、組付け腕板の突起部14の表面をプリフォームPと同じような曲面としたことで、突起部14の中央面とプリフォームPとの間を一定に保つことができると共に、従来のものよりも等しい距離に離すことができたことによるものと考えられ、また、その場合の距離は通常5mm前後が適していることが分かった。
【0039】
実施例12.
続いて、実施例11で用いたように突起部の端面の形状を円弧状に形成すると共に、該突起部の前面を湾曲せしめた構造にしたの把手体11に於いて、更に、該突起部14' がプリフォームPと接する部分の表面を、実施例7の場合と同じように、図11に示すような縦溝状凹凸面14d' を設けた構造にして、該把手体11' をPET樹脂の射出成形により成形した後に、該把手体をブロー成形型10にセットしてから、実施例11と同様にブロー成形して把手付きの大型中空容器をインサート成形した。
その結果、ブロー成形時に容器が破裂することも無く、把手体による壁面の擦れ傷もほとんど認められずに、実実施11に於けるものよりも良い結果をが得ることができた。
【0040】
実施例13.
同様にして、上記の実施例で用いた構造をした把手体11’に於いて、その突起部14’の前面がプリフォームと接する部分の表面を、縦溝状凹凸面14’に代えて、図5(a)に示す形状(44a’)や図5(b)に示す形状(44b’)、図5(c)に示す形状(44c’)にした把手体をPETと同じようにブロー成形して把手付きの大型中空容器に成形したものについて、上記した各実施例と比較検討してみた。
その結果、いずれの把手体についても、実施例12と同様に上記した実施例1乃至11に於ける場合のものよりも非常に良い結果を得ることができた。
【0041】
以上の結果から、把手体の組付け突起部の端面を円弧状に形成することにより、急激に延伸膨張されるプリフォームの隅角部での擦れ傷をなくして破裂を防止することができ、また、該突起部の表面を凹凸状に形成してプリフォームとの接触面積を少なくすることにより、摩擦抵抗による破裂を無くすことができ、更に、前記突起部の前面形状をプリフォームと同心状の湾曲した面に形成することにより、突起部と延伸されるプリフォームとの距離を適正な均一なものに保持することができて、擦れ傷及び破裂の発生を防止することができ、また、前記突起部の背面に過延伸を防止する壁部を設けることにより破裂を防止することができるとの結論を得ることができた。
【0042】
【発明の効果】
本願発明のような構造をした把手体は、延伸膨張するプリフォームに接する容器への組付け部である突起部を、滑らかで摩擦抵抗が非常に小さい形状にしたので、把手体と容器本体とが同一の樹脂材料から構成される場合であっても、把手体の突起部とプリフォームとが即座に接着したり、プリフォームに擦り傷ができたりすることもなく、特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いてブロー成形する際に、容器の破裂を発生することなしに把手付きの中空容器を成形することが可能になった。
また、把手体と容器本体とを同一の樹脂材料を用いて成形することができるので、回収した使用済の容器を再利用するのに分別するための工程と設備が必要でなくなるので、リサイクルの費用を低減することができて、資源としての再利用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の把手体をインサート成形する際の成形金型の縦断面図である。
【図2】図1に示す成形金型の横断面図である。
【図3】本願発明の先行技術を示す図である。
【図4】本願発明の把手体の第一実施例の形状を示す図である。
【図5】本願発明の把手体の取り付け突起部の前面の色々な形状を示した図である。
【図6】図5に示す把手体の変形例を示す図である。
【図7】図5に示す把手体の改良例を示す図である。
【図8】本願発明の把手体の他の実施例の形状を示す図である。
【図9】本願発明の把手体を説明するための図である。
【図10】本願発明の把手体の別の実施例の形状を示す図である。
【図11】図10に示す把手体の変形例を示す図である。
【図12】従来の把手体を用いた容器の周知例である。
【図13】従来の把手体を示す図である。
【図14】従来の把手体を改良したものを設けた容器を示す図である。
【図15】従来の把手体を設けた場合の容器壁の説明図である。
【符号の説明】
10 成形金型
11,11’ 把手体
12,12’ 把手板
13,13’ 組付け腕板
14,14’ 組付け突起部
15,15’ 補強梁
44’ 取付け突起部
44a’,44d’ 縦溝状凹凸面
44b’ 円柱状凹凸面
44c’ 円弧溝状凹凸面
60 本発明の先行例を示す容器
61 本発明の把手体の先行例
P プリフォーム

Claims (8)

  1. 把手板の上端及び下端部に一対の組付け腕板を設けて概略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に組付け突起部を外向きに突設してポリエチレンテレフタレート樹脂製の中空容器本体の上部側壁面に組付け可能に形成されたポリエチレンテレフタレート樹脂からなる把手体であって、前記付け腕板から立ち上げた組付け突起部は、その端面を滑らかな円弧状に形成すると共に、該突起部がプリフォームと接触する面に形成した多数の溝状の凹凸を縦方向に平行な溝状に形成して、前記突起部とプリフォームとの接触面を少なくして滑り性を高めて、前記突起部の裏側となる前記組付け板間に補強梁を設けて環状に連結した把手体を構成してなることを特徴とするブロー成形に適したポリエチレンテレフタレート樹脂製中空容器の把手体。
  2. 把手板の上端及び下端部に一対の組付け腕板を設けて概略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に組付け突起部を外向きに突設してポリエチレンテレフタレート樹脂製の中空容器本体の上部側壁面に組付け可能に形成されたポリエチレンテレフタレート樹脂からなる把手体であって、前記付け腕板から立ち上げた組付け突起部は、その端面を滑らかな円弧状に形成すると共に該突起部がプリフォームと接触する面に形成した多数の溝状の凹凸を把手体の中心線の位置から両側へ外向きに傾斜せしめた平行な溝状に形成して、前記突起部とプリフォームとの接触面を少なくして滑り性を高めて、前記突起部の裏側となる前記組付け板間に補強梁を設けて環状に連結した把手体を構成してなることを特徴とするブロー成形に適したポリエチレンテレフタレート樹脂製中空容器の把手体。
  3. 把手板の上端及び下端部に一対の組付け腕板を設けて概略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に組付け突起部を外向きに突設してポリエチレンテレフタレート樹脂製の中空容器本体の上部側壁面に組付け可能に形成されたポリエチレンテレフタレート樹脂からなる把手体であって、前記付け腕板から立ち上げた組付け突起部は、その端面を滑らかな円弧状に形成すると共に、該突起部の前面に形成した多数の溝状の凹凸を把手体の中心線の位置から外向きに同心円状をした円弧の溝状に形成して、前記突起部とプリフォームとの接触面を少なくして滑り性を高めて、前記突起部の裏側となる前記組付け板間に補強梁を設けて環状に連結した把手体を構成してなることを特徴とするブロー成形に適したポリエチレンテレフタレート樹脂製中空容器の把手体。
  4. 把手板の上端及び下端部に一対の組付け腕板を設けて概略コの字状に形成すると共に、該組付け腕板に組付け突起部を外向きに突設してポリエチレンテレフタレート樹脂製の中空容器本体の上部側壁面に組付け可能に形成されたポリエチレンテレフタレート樹脂からなる把手体であって、前記付け腕板から立ち上げた組付け突起部は、その端面を滑らかな円弧状に形成すると共に、該突起部の前面に形成した多数の溝状の凹凸を円柱状をした突起に形成して、前記突起部とプリフォームとの接触面を少なくして滑り性を高めて、前記突起部の裏側となる前記組付け板間に補強梁を設けて環状に連結した把手体を構成してなることを特徴とするブロー成形に適したポリエチレンテレフタレート樹脂製中空容器の把手体。
  5. 前記組付け突起部のプリフォームに接する面は、プリフォームの中心線に対して外向きに傾斜した面に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂中空容器の把手体。
  6. 前記組付け突起部のプリフォームに接する面を、プリフォーム面に対向するような湾曲面に形成してなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂中空容器の把手体。
  7. 前記組付け突起部の背面側の組付け腕板が把手板に接合する部分に過延伸防止壁を設けてなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂中空容器の把手体。
  8. 前記組付け突起部のプリフォームが接触する面に、多数の溝状の凹凸を形成して接触面積を少なくすると共に、その周縁部を平坦面に形成してなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂中空容器の把手体。
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