JP4401838B2 - 保護具及び鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼管用の保護具及びこの保護具を装着した鋼管に関するものである。
従来、図10に示すような鋼管10が油ガス田の坑井の掘削や仕上げ等において使用されている。鋼管10は両管端に雄螺子12をそれぞれ有する。一方の管端の雄螺子12には内周面に雌螺子16を有する鋼管継手14を螺合させて装着してあり、複数の鋼管10を連続してつなぎこむことを可能とする構成を有する。
かかる鋼管10を輸送する場合、管端にある雄螺子12や鋼管継手14の雌螺子16が搬送時に加えられる打撃等により損傷することを防止するとともに、雄螺子12や雌螺子16に錆が発生することを防止する必要がある。このため、鋼管10の輸送時には、図11に示す保護具20を雄螺子12や雌螺子16に螺合させて装着している。
鋼管の保護具には、例えば、全体を鋼により形成したものがある(従来例1)。この鋼製の保護具は、鋼管の雄螺子や鋼管継手の雌螺子と螺合可能な螺子を有し、鋼管に装着可能となっている。
また、鋼管の保護具には、鋼と樹脂とを組み合わせて形成したものもある(従来例2)(例えば、特許文献1を参照)。鋼管の雄螺子を保護するための保護具は、鋼製筒状体の内側に樹脂製ライニング材を有し、樹脂製ライニング材に鋼管の雄螺子と螺合可能な雌螺子が形成されている。鋼管継手の雌螺子を保護するための保護具は、鋼製筒状体の外側に樹脂製ライニング材を有し、樹脂製ライニング材に鋼管継手の雌螺子と螺合可能な雄螺子が形成されている。
さらに、鋼管の保護具には全体を樹脂により形成したものもある(従来例3)(例えば、特許文献2を参照)。この樹脂製の保護具の一端が衝撃吸収部を形成しており、鋼管の雄螺子や鋼管継手の雌螺子に加わる衝撃をこの衝撃吸収部が変形して吸収する。
実開昭53―33011号公報 米国特許US6196270B1号明細書
しかしながら、従来例1の保護具にあっては、鋼管の雄螺子や鋼管継手の雌螺子に装着された保護具に衝撃力が加わった場合に、保護具の螺子と鋼管の雄螺子や鋼管継手の雌螺子との間で焼き付きを生じ、その取り外しが困難となるという不具合があった。また、この保護具は重量物であり加工や取り扱い等が容易ではないことに加えて、衝撃力を受けて損傷した保護具を廃棄処理する場合の負担が大きいという不具合もあった。
また、従来例2の保護具にあっては、保護具の螺子は硬質合成樹脂製ライニング材等によって形成されており、鋼製の保護具のように保護具の螺子と鋼管の雄螺子等との間で焼き付きを生じることはないものの、以下の不具合があった。すなわち、鋼と樹脂とを組み合わせているので、保護具の製造工程が複雑化し、製造コストが高くなってしまう。また、鋼製の筒状体が重量物であるので、保護具全体の重量も重くなってしまう。さらに、衝撃力を受けて損傷した保護具を廃棄処理する場合、鋼製部分と樹脂製部分の分別が困難であり、鋼や樹脂を再利用することが困難であり、また、焼却処理に付することもできず、地中に埋設処理せざるを得ず、環境公害の一因となっていた。
さらに、従来例3の保護具にあっては、保護具の螺子と鋼管の雄螺子等との間で焼き付きを生じることはなく、重量物ともならず、廃棄処理が容易となってはいるものの、以下の不具合があった。すなわち、樹脂製の保護具が鋼管の雄螺子等に装着されるのは、屋内等の温和な環境下においてであるが、油ガス田においては屋外で野積み状態にあった鋼管から保護具を取り外さなければならない。極寒の地の油ガス田では極低温の環境下で保護具を取り外すこととなるが、かかる環境下では保護具を形成する樹脂が収縮しているので、保護具の螺子と鋼管の雄螺子等との間でいわゆるかじりを生じ、保護具を取り外せないという不具合があった。
本発明は、上記した従来の技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、軽量で、衝撃吸収能力に優れ、使用後の処理負担を軽減でき、低温環境下でも容易に取り外し可能な保護具を提供するとともに、保護具を装着して輸送途上で管端の螺子に損傷や錆を生じることを防止可能とした鋼管を提供することである。
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。
請求項1の発明に係る保護具は、鋼管の管端に装着される樹脂製の保護具であって、前記樹脂は、樹脂の全量100質量部に対し、高密度ポリエチレンを50〜95質量部及び芳香族ポリアミド繊維を〜50質量部含有し、前記保護具は、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有するペレット、および高密度ポリエチレンのペレットを混合して形成され、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有する前記ペレットがその長さが5〜50mmであり、該ペレット内の芳香族ポリアミド繊維はペレットとほぼ同じ長さを有する
請求項2の発明に係る保護具は、鋼管の管端に装着された鋼管継手に装着される樹脂製の保護具であって、前記樹脂が高密度ポリエチレンを50〜95質量部及び芳香族ポリアミド繊維を〜50質量部含有し、前記保護具は、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有するペレット、および高密度ポリエチレンのペレットを混合して形成され、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有する前記ペレットは、その長さが5〜50mmであり、該ペレット内の芳香族ポリアミド繊維はペレットとほぼ同じ長さを有する
請求項1又は請求項2の発明によると、保護具を形成する樹脂が安価な高密度ポリエチレンを50〜95質量部含有しているので、保護具の製造コストが安価となる。また、高密度ポリエチレンは常温から極低温の広い温度範囲で優れた耐衝撃強度を有しており、耐薬品性にも優れるので、保護具には、常温から極低温の温度範囲において優れた耐衝撃強度が付与されるとともに、優れた耐薬品性も付与される。さらに、高密度ポリエチレンは結晶性が高いので、保護具の成型時に、速い固化速度が得られ、優れた成型性が得られる。
高密度ポリエチレンとしては、例えば、エチレン、又は、エチレンと少量のαオレフィンとの混合物を原料とし、有機金属触媒の存在下、30気圧以下等の比較的低圧条件で重合され、密度が0.94〜0.97g/cm3であるポリエチレンを挙げることができる。
保護具を形成する樹脂において、高密度ポリエチレンの含有量が50質量部未満であると、保護具の耐衝撃強度、耐薬品性が高まらない。また、保護具の成型時に、速い固化速度を得ることができず、成型された保護具に反りが発生しやすくなり、保護具の表面がざらついたものとなりやすい。高密度ポリエチレンの含有量が98質量部を超えると、低温環境下において、保護具の収縮率が高密度ポリエチレンの影響を大きく受けることとなり、保護具の収縮率を小さく抑制できない。したがって、高密度ポリエチレンの含有量を50〜95質量部とする。なお、高密度ポリエチレンの含有量を60〜95質量部とすることがより好ましく、高密度ポリエチレンの含有量を80〜95質量部とすることが一層好ましい。
芳香族ポリアミド繊維は、剛直な分子鎖が長手方向に配向しており、線膨張率が極めて低いので、保護具が芳香族ポリアミド繊維を含有すると、低温環境下における保護具の収縮率が小さくなる。また、芳香族ポリアミド繊維に延伸処理や熱処理を施しておくと、芳香族ポリアミド繊維の耐衝撃強度が向上し、かかる芳香族ポリアミド繊維を含有する保護具の耐衝撃強度も向上するので好ましい。
芳香族ポリアミド繊維として、例えば、パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロライドから合成されるポリパラフェニレンテレフタルアミド、メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドから合成されるポリメタフェニレンイソフタルアミド、パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロライドと3、4オキシジフェニレンジアミンとから合成されるコポリパラフェニレン3、4オキシジフェニレンテレフタルアミド等を挙げることができ、パラ系芳香族ポリアミド繊維、パラ系コポリマー芳香族ポリアミド繊維、メタ系芳香族ポリアミド繊維のいずれであってもよい。これらの芳香族ポリアミド繊維は、優れた耐熱性や耐衝撃強度を有し、保護具にも優れた耐熱性や耐衝撃強度を付与するので好ましい。また、保護具を形成する樹脂は一種類の芳香族ポリアミド繊維を含有するものであっても、複数種類の芳香族ポリアミド繊維を含有するものであってもよい。
保護具を形成する樹脂において、芳香族ポリアミド繊維の含有量が2質量部未満であると、低温環境下における保護具の収縮率を小さく抑制できない。また、芳香族ポリアミド繊維の含有量が50質量部を超えると、成型加工が難しくなり、また、表面性状も悪くなる。したがって、芳香族ポリアミド繊維の含有量を〜50質量部とする。なお、芳香族ポリアミド繊維の含有量を〜40質量部とすることが好ましく、芳香族ポリアミド繊維の含有量を〜20質量部とすることが一層好ましい。
請求項3の発明に係る保護具は、請求項1又は請求項2に記載の保護具であって、前記樹脂の全量100質量部に対し、0.001〜5質量部の紫外線吸収剤及び0.001〜5質量部の光安定剤が添加されている。
紫外線吸収剤を添加することにより、保護具が紫外線によって劣化することが防止される。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトアリアゾール類やベンゾフェノン類を挙げることができる。
光安定剤を添加することにより、保護具が太陽光等を浴びて変質することが防止される。光安定剤として、例えば、ヒンダードアミン類を挙げることができる。
保護具を形成する樹脂において、紫外線吸収剤の含有量が0.001質量部未満であると、保護具が紫外線によって劣化することを充分に防止できない。また、紫外線吸収剤の含有量が5質量部を超えると、強度が低下して好ましくない。したがって、紫外線吸収剤を添加する量を0.001〜5質量部とする。
また、保護具を形成する樹脂において、光安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、保護具が太陽光等を浴びて変質することを充分に防止できない。また、光安定剤の含有量が5質量部を超えると、強度が低下して好ましくない。したがって、光安定剤を添加する量を0.001〜5質量部とする。
さらに、本発明に係る保護具には、紫外線吸収剤及び光安定剤に加えて、例えば、各種樹脂、各種樹脂の重合体、紫外線吸収剤、光安定剤、相溶化剤、酸化防止剤、加工安定剤、着色剤、顔料、顔料、染料、滑剤、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭素粉、炭素繊維、金属繊維等を、添加剤として保護具を形成する樹脂に添加することができる。
各種樹脂や各種樹脂の重合体を添加することにより、耐候性を向上させたり、意匠性を向上させたり、強度を向上させたりすることができる。各種樹脂や各種樹脂の重合体として、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリオレフィン類、オレフィン系やスチレン系の熱可塑性エストラマー、ナイロン、ポリエステルポリカーネート等のエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
相溶化剤を添加することにより、保護具中で高密度ポリエチレンの均一化が促進される。相溶化剤として、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンを挙げることができる。
酸化防止剤を添加することにより、保護具が酸化して劣化することが防止される。酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール類やフォスファイト類を挙げることができる。
加工安定剤を添加することにより、保護具の成型性が向上する。加工安定剤として、例えば、フォスファイト系化合物等を挙げることができる。
着色剤、顔料、顔料又は染料を添加することにより、保護具の区別が容易となる。
滑剤を添加することにより、加工時の剥離性が改善される。
タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭素粉を添加することにより、保護具の収縮率が更に改善される。
炭素繊維、金属繊維を添加することにより、保護具の耐衝撃強度が向上する。
請求項4の発明に係る保護具は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保護具であって、前記高密度ポリエチレンが、温度190℃、荷重21.18Nの測定条件下において、0.1〜20.0g/10minのメルトマスフローレートを有する。
高密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)が、JIS K6922−2:1997に規定される温度190℃、荷重21.18N(2.16kgf)の測定条件下において、0.1g/10min未満となると、高密度ポリエチレンの分子量が大きくなりすぎ、溶融状態での流動性が低下し、保護具を射出成型等で成型するときに成型不良を生じやすくなる。なお、以下の説明において、MFRの値はすべて温度190℃、荷重21.18Nの測定条件下におけるものとする。高密度ポリエチレンのMFRが、20.0g/10minを超えると、高密度ポリエチレンの分子量が小さくなりすぎ、耐衝撃強度が低下する。したがって、高密度ポリエチレンのMFRを0.1〜20.0g/10minとする。
請求項の発明に係る保護具は、請求項1、請求項3〜請求項のいずれか1項に記載の保護具であって、前記鋼管の管端にある雄螺子と螺合可能な雌螺子を有する。
請求項の発明によると、保護具が鋼管の管端の雄螺子と螺合すると、鋼管の管端の雄螺子は、優れた耐衝撃強度を有するとともに低温環境下における収縮率が小さな保護具によって覆われ保護される。
請求項の発明に係る鋼管は、請求項1、請求項3〜請求項のいずれか1項に記載の保護具が、前記鋼管の管端にある雄螺子に装着されている。
請求項の発明によると、鋼管を搬送する際、鋼管の管端にある雄螺子は保護具により保護されており、輸送中の損傷は防止される。また、保護具の耐衝撃強度が優れているため、軽量化、コンパクト化が可能で、保護具を装着した鋼管全体が長大化することもない。さらに、保護具は樹脂製であり、再使用不可能となった保護具を容易に焼却などにより廃棄処理できる。また、低温環境下においても、鋼管の管端にある雄螺子から保護具を取り外す作業が容易に行われる。
請求項の発明に係る保護具は、請求項2〜請求項のいずれか1項に記載の保護具であって、前記鋼管継手の雌螺子と螺合可能な雄螺子を有する。
請求項の発明によると、保護具が鋼管に装着された鋼管継手の雌螺子と螺合すると、鋼管継手の雌螺子は保護具によって覆われ保護される。
請求項の発明に係る鋼管は、請求項2〜請求項、請求項のいずれか1項に記載の保護具が、前記鋼管に装着された鋼管継手の雌螺子に装着されている。
請求項の発明によると、一方の端部に鋼管継手を装着した鋼管において、鋼管継手の雌螺子は保護具により保護されており、輸送中の損傷は防止される。また、保護具の耐衝撃強度が優れているため、軽量化、コンパクト化が可能で、保護具を装着した鋼管全体が長大化することもない。さらに、保護具は樹脂製であり、再使用不可能となった保護具を容易に焼却などにより廃棄処理できる。また、低温環境下においても、鋼管の管端にある雄螺子から保護具を取り外す作業が容易に行われる。
本発明は、上記のような保護具及び保護具を装着した鋼管であるので、軽量で、耐衝撃強度に優れ、使用後の処理負担を軽減でき、低温環境下でも容易に取り外し可能な保護具を提供できるとともに、保護具を装着して輸送途上で管端の螺子に損傷や錆を生じることを防止可能とした鋼管を提供できるという効果がある。
本発明を実施するために最良の第1の実施の形態を図1から図3に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係る保護具の長手方向断面図、図2は保護具製造の説明図、図3は保護具において衝撃吸収部が衝撃力を吸収して変形する状態説明図である。
図1に示す樹脂製の保護具20は、鋼管10の管端の雄螺子12を保護する雄螺子用のものである。鋼管10の構成は従来のものと同様である。
保護具20は円筒形をなし、円筒の長手方向両端には環状をなす端面22a、22bがある。一方の端面22a側の円筒内周は、鋼管10の雄螺子12と螺合可能に形成された雌螺子28を有する。円筒内周面24と雌螺子28の境界には段部31が形成されている。段部31より端面22b側にある円筒部分が衝撃吸収部38を形成している。段部31を境として、衝撃吸収部38における円筒内径は雌螺子28での円筒内径よりも小さくなっている。また、衝撃吸収部38での円筒内径は鋼管10の内径より小さく、保護具20の外径は鋼管10の外径よりも大きくなっている。
保護具20の端面22b上には一対の溝32が円周方向に180°の間隔をおいて形成されており、保護具20を鋼管10に着脱させる際に、溝32に係合させた工具により保護具20を旋回させることが可能に構成されている。
端面22bの外周側縁34の稜は丸められており、端面22bと円筒外周面26とはなだらかな曲面によって連続している。この曲面は長手方向断面においてRの曲率半径を有する。同様に、端面22bの内周側縁36の稜も長手方向断面において曲率半径Rを有する曲面により丸められている。この曲率半径Rの大きさは0.5〜4.0mmとなっている。
端面22bは円筒の長手方向に垂直な面に対して傾斜し、外周側縁34から内周側縁36に向かって窪んでおり、端面22bの傾斜角度θは、1〜30°の範囲内にある。
そして、保護具20が鋼管10の雄螺子12と螺合して雄螺子12を覆っており、鋼管10の管端より衝撃吸収部38が長手方向外側へ突出している。
また、保護具20を形成する樹脂は、樹脂全量100質量部に対し、MFRが0.1〜20.0g/10minの高密度ポリエチレンAを80〜97質量部、芳香族ポリアミド繊維Bを3〜20質量部、紫外線吸収剤Cを0.001〜5質量部、光安定剤Dを0.001〜5質量部含有している。
次に、保護具20の成型について説明する。
図2に示すように、芳香族ポリアミド繊維Bによって強化された高密度ポリエチレンAのペレットP1と、高密度ポリエチレンAのペレットP2とを、タンブラーを用いて混合し、成型原料混合物Mを得、成型原料混合物Mから保護具20が成型される。なお、ペレットP2には紫外線吸収剤C及び光安定剤Dが添加されている。成型原料混合物Mから保護具20を成型するにあたっては、射出成型、射出圧縮成型、押出成型等の方法を用いる。
ペレットP1は長さが5〜50mm程度の略円柱状をなしており、ペレットP1中において、芳香族ポリアミド繊維BがペレットP1の長手方向に略平行に並んでおり、芳香族ポリアミド繊維B同士の間に高密度ポリエチレンAが充填された構造となっている。この芳香族ポリアミド繊維BはペレットP1とほぼ同じ長さを有している。以下、ペレットP1とほぼ同じ長さの芳香族ポリアミド繊維Bのことを長繊維と称することとする。
ペレットP2は長さが5〜50mm程度の略円柱状をなしている。
混合するペレットP1、P2の各量、ペレットP1中における高密度ポリエチレンA及び芳香族ポリアミド繊維Bの各含有量、ペレットP2中における紫外線吸収剤C及び光安定剤Dの各含有量は、成型原料混合物M全体中において、樹脂全量100質量部に対し、高密度ポリエチレンAが80〜97質量部、芳香族ポリアミド繊維Bが3〜20質量部、紫外線吸収剤Cが0.001〜5質量部、光安定剤Dが0.001〜5質量部含有されるような値とされている。
また、ペレットP1は以下の方法によって製造される。高密度ポリエチレンAの融点以上、且つ、芳香族ポリアミド繊維Bの融点未満の温度まで加熱した含浸ダイに、溶融した高密度ポリエチレンAと、紡糸後に延伸処理を施されて高い耐衝撃強度を有するアラミド繊維Bの連続繊維とを導入し、アラミド繊維B同士の間に高密度ポリエチレンAを含浸させ、アラミド繊維Bを含浸ダイから冷却しながら引き取り、引き取ったアラミド繊維Bを5〜50mm程度の長さに切断する。
加熱される含浸ダイの温度は特に限定されるものではないが、アラミド繊維Bに対する高密度ポリエチレンAの含浸性を確保し、高密度ポリエチレンAの熱分解を防止するために、140〜350℃とすることが好ましい。なお、含浸ダイの温度を180〜300℃とすることがより好ましく、200〜280℃とすることがより一層好ましい。
次に保護具20の作用について説明する。
保護具20を成型するにあたっては、ペレットP1、P2の高密度ポリエチレンAは固化速度が速いので、保護具20は優れた成型性を有する。高密度ポリエチレンAのMFRが0.1〜20.0g/10minであるので、成型時の溶融状態における流動性が充分に高く、成型不良を生じるおそれがない。ペレットP1、P2を混合して成型原料混合物Mとし、成型原料混合物Mから保護具20を成型しているので、保護具20中にアラミド繊維Bを多く含有させることが容易である。成型原料混合物Mは、高密度ポリエチレンAを80〜97質量部含有しているので、成型後の保護具20に反りが生じたりすることはなく、保護具20の表面にざらつきが生じることもない。また、保護具20を一体射出成型により製造する場合、その製造工程は簡便なものとなり、製造コストが安くなる。さらに、保護具20は樹脂製であるので、重量も軽量化されてその取り扱いが容易となっている。
鋼管10の輸送にあたっては、船舶、列車、トラックにより輸送することが一般的であり、これらの輸送手段への積み下ろしにはクレーンがよく用いられる。クレーンを用いた鋼管10の積み下ろしでは、横揺れが頻繁に発生し、船倉や荷台の柱や壁等に鋼管10の端部が当たる場合が多い。そして、柱や壁等に鋼管10の端部が衝突した場合、鋼管10の管端に装着した保護具20に衝撃力が働く。また、油ガス田の掘削現場においても、クレーンを用いて鋼管10の搬送が行われ、鋼管10の端部は様々な物と衝突し、鋼管10の管端に装着した保護具20に衝撃力が働く。
保護具20は、樹脂全量100質量部に対し、高密度ポリエチレンAを50〜95質量部、芳香族ポリアミド樹脂Bを〜50質量部含有しているので、高い耐衝撃強度を有し
ている。また、保護具20に含有されている芳香族ポリアミドBは長繊維となっているので、保護具20の耐衝撃強度はより高まっている。したがって、保護具20の衝撃力が働いても、保護具20はその衝撃力に耐え得る。
衝撃吸収部38の変形によるエネルギー吸収機構を図3を参照しつつ説明する。なお、図3では、押しつぶされて変形する前の保護具20の形状を一点鎖線で示した。
まず、保護具20に、長手方向の衝撃力が加わると、最初、衝撃力は端面22bの外周側縁34上の2つの位置X、Yに働く。保護具20の端面22bが傾斜角度θで内側に向かって窪んでいるため、傾斜角度θに応じて円筒の径方向外側へ衝撃力の分力が位置X、Yに働く。その結果、位置X、Y近傍の衝撃吸収部38が径方向外側へ変形して径方向外側へ撓む。衝撃吸収部38の位置X、Yが外側へ撓むために、他の位置Z、Wの衝撃吸収部38が位置Xあるいは位置Yの方向へ引っ張られて径方向内側へ変形して撓む。すなわち、保護具20において、衝撃力が加わった位置(位置X、Y)以外の衝撃吸収部38も変形し、このときの変形抗力が、径方向外側へ衝撃力の分力を吸収する。
したがって、保護具20において、衝撃力のエネルギーの一部が、衝撃力が加えられた位置以外の衝撃吸収部38を変形させるために消費され、衝撃力のうち長手方向に沿って作用する力が軽減される。その結果、衝撃吸収部38の長手方向の変形量は小さくなり、鋼管10の管端部の保護効果は向上する。
また、鋼管10を船舶等により輸送するとき等、鋼管10の端部が船倉や荷台の柱や壁等と衝突し、鋼管10の長手方向に対して傾斜する方向の衝撃力が鋼管10の端部に加わる場合もある。鋼管10の管端に装着した保護具20の端面22bは、径方向外側の外周側縁34から径方向内側の内周側縁36にかけて傾斜して窪んでいるので、衝撃力は衝撃吸収部38の外周側縁34にまず働く。衝撃吸収部38において衝撃力を受けて変形可能な容積は、外周側縁34近傍の方が内周側縁36近傍よりも大きい。この衝撃力は、大きな変形量が衝撃吸収部38の外周側縁34において発生することによって直ちに吸収される。したがって、鋼管10はその長手方向に対して傾斜する方向の衝撃力からも保護具20によって保護されている。
さらに、保護具20は、端面22bの外周側縁34及び内周側縁36はなだらかな曲面によって形成されているので、シャープな縁を有する場合に比べて衝撃力が一点に集中することは避けられており、応力集中による割れが発生しにくい。
したがって、保護具20は高い耐衝撃性を有して損傷しにくくなっており、また、保護具20が損傷してしまった場合でも、樹脂製品として簡単に廃棄処理できる。
鋼管10は、輸送中や材料ヤードでの保管中に、野積み状態とされていることが多く、また、油ガス田の掘削現場でも野積み状態とされ、太陽光線にさらされることが多い。鋼管10の管端に装着した保護具20も太陽光線にさらされるが、保護具20を形成する樹脂中には紫外線吸収剤C及び光安定剤Dが含有されているので、保護具20が太陽光線によって劣化したり変質することは防止されている。
鋼管10が野積み状態とされる油ガス田の掘削現場が極寒地である場合、保護具20を形成する樹脂中には芳香族ポリアミド繊維Bが3〜20質量部含有されているので、保護具20の収縮率は小さく抑制され、保護具20の雌螺子28と鋼管10の雄螺子12との間でかじりを生じることは防止され、作業員が保護具20を鋼管10から容易に取り外すことができる。
また、保護具20を形成する樹脂中には、樹脂全量100質量部に対し、高密度ポリエチレンAが80〜97質量部含有されているので、保護具20は耐薬品性を有し、鋼管10の雄螺子12に塗布される薬剤によって保護具20が変質等することも防止されている。
次に、本発明を実施するために最良の第2の実施の形態を図4に基づいて説明する。なお、第1の実施の形態の構成と同様の構成については、同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
図4に示す樹脂製の保護具は、鋼管10の管端の雄螺子12に装着される鋼管継手14の雌螺子16を保護する雌螺子用の保護具20である。鋼管10及び鋼管継手14の構成は従来のものと同様である。
保護具20の構成は以下の点を除いて、第1の実施の形態における保護具の構成と同様である。すなわち、端面22a側の円筒外周は鋼管継手14の雌螺子16と螺合可能に形成された雄螺子30を有する。雄螺子30と外周面26の境界には段部31が形成されている。段部31より端面22b側にある円筒部分が衝撃吸収部38を形成している。段部31を境として、衝撃吸収部38における円筒外径は、雄螺子30での円筒外径よりも大きくなっている。また、衝撃吸収部38における円筒外径は鋼管継手14の外径よりも大きい。
そして、鋼管10の一方の管端に鋼管継手14が装着されており、鋼管継手14の雌螺子16と保護具20の雄螺子30とが螺合して雌螺子16は保護具20により覆われ、鋼管継手14の端部より保護具20の衝撃吸収部38が長手方向外側へ突出している。
保護具20を形成する樹脂は、第1の実施の形態における樹脂と同様であり、保護具20の成型も、第1の実施の形態における保護具の成型と同様である。
次に保護具20の作用について説明する。
保護具20を成型するにあたって、ペレットP1、P2が奏する作用、保護具20を形成する樹脂が奏する作用は、第1の実施の形態のものと同様である。
鋼管10に装着された鋼管継手14の端部に衝撃力が加わる場合、保護具20が奏する作用は、第1の実施の形態のものと同様である。
野積み状態とされ太陽光線にさらされる鋼管10において、保護具20が奏する作用は、第1の実施の形態のものと同様である。
鋼管10が極寒地で野積み状態とされている場合、保護具20が奏する作用は、第1の実施の形態のものと同様である。
保護具20を形成する樹脂が奏するその他の作用は、第1の実施の形態のものと同様である。
なお、図1に示す第1の実施の形態に係る保護具20及び図4に示す第2の実施の形態に係る保護具20は、本発明に係る保護具の一例を示したものであり、図1又は図4に示す保護具に限定されるものではないことは勿論である。
例えば、図1の保護具の衝撃吸収部をなす円筒の内側にカバー40を設けて塞いだ構成とし、保護具を装着した鋼管内に水等の進入を防止することが可能である(図5の変形例1を参照)。
また、変形例1と同様に、図4の保護具の衝撃吸収部をなす円筒の内側や雄螺子を形成した部分の円筒の内側にカバー等を設けて塞いだ構成とし、保護具を装着した鋼管内に水等の進入を防止することも可能である
また、第1の実施の形態において、保護具20は円筒内周に雌螺子28を有するが、代わりに、保護具20の円筒内周の構成を図7の変形例に示すものとすることが可能である。すなわち、保護具20の円筒内周に雌螺子を形成せず、円筒内周を平滑な面とする。保護具20を鋼管10の雄螺子12に装着すると、雄螺子12が保護具20の円筒内周面に噛み込み、保護具20が雄螺子12から外れることは防止される。
同様に、第2の実施の形態において、保護具20は円筒外周に雄螺子30を有するが、代わりに、保護具20の円筒外周の構成を図8の変形例に示す構成とすることが可能である。すなわち、保護具20の円筒外周に雄螺子を形成せず、円筒内周を平滑な面とすることも可能である。保護具20を鋼管継手14の雌螺子16に装着すると、雌螺子16が保護具20の円筒外周面に噛み込み、保護具20が雌螺子16から外れることは防止される。
(実施例)
次に、本発明に係る保護具の効果を検証すべく、以下の実施例1〜10の保護具に対して以下の試験を行った。各実施例1〜10の保護具は、第2の実施の形態において説明した保護具20である。
実施例1の保護具20は、7.3cm(2−7/8インチ)径の鋼管10に装着される鋼管継手14の雌螺子16に対応したサイズを有する。保護具20は、ペレットP1とペレットP2とを混合して成型原料混合物Mとし、成型原料混合物Mから成型したものである。ペレットP1とペレットP2は、それぞれ、11mmの長さを有し、以下の表1に示す組成を有する。ペレットP1は、高密度ポリエチレンA1(三井化学社製、MFR:0.3g/10min)を50質量部、芳香族ポリアミド繊維B1(ダイセル化学社製コポリパラフェニレン3、4オキシジフェニレンテレフタルアミド、平均繊維径:12μm)の長繊維を50質量部含有する。ペレットP2は、高密度ポリエチレンA1からなる。なお、これらのペレットP1、P2には、紫外線吸収剤C及び光安定剤Dが添加されていない。1kgのペレットP1と9kgのペレットP2とをタンブラーで混合して成型原料混合物Mとし、成型原料混合物Mから保護具20を射出成型した。射出成型に用いた射出成型機のシリンダー温度は170℃である。製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA1を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を5質量部含有している(表2を参照)。
Figure 0004401838
Figure 0004401838
施例の保護具は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1を20質量部、ペレットP2を80質量部用いて製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA1を90質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を10質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1を50質量部、ペレットP2を50質量部用いて製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA1を75質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を25質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1のみを100質量部用いて製造された保護具
20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA1を50質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を50質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1及びペレットP2は、それぞれ、高密度ポリエチレンA2(三井化学社製、MFR:5.0g/10min)を含有し、製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA2を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を5質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1及びペレットP2は、それぞれ、高密度ポリエチレンA3(三井化学社製、MFR:7.0g/10min)を含有し、製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA3を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を5質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、ペレットP1及びペレットP2は、それぞれ、高密度ポリエチレンA4(三井化学社製、MFR:18.0g/10min)を含有し、製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA4を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を5質量部含有している。
実施例の保護具20は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、成型原料混合物Mとして、1kgのペレットP1と、9kgのペレットP2と、10gの紫外線吸収剤(旭電化工業(株)製紫外線吸収剤アデカスタブ1413)と、15gの光安定剤(旭電化工業(株)製光安定剤アデカスタブLA−77Y)との混合物を用いた。そして、製造された保護具20は、樹脂全量100質量部
に対し高密度ポリエチレンA1を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B1を5質量部含有し、紫外線吸収剤が0.1質量部、光安定剤が0.15質量部添加されている。
実施例1〜に示す保護具20に対して、以下に説明する落重衝撃試験及び取り外し容易性試験を行った。
落重衝撃試験で使用した試験装置は、図9に示す構成を有する落重衝撃試験装置50である。落重衝撃試験装置50は、長さ15cm、直径3.8cmの鋼製棒54を有し、鋼製棒54が錘52の下部に取り付けられており、落重衝撃試験装置50内で錘52とともに鋼製棒54を鋼管10の鋼管継手14に装着された保護具20の衝撃吸収部38上に落下させて衝撃力を与えることができる。錘52の質量と落下高さは変更可能であり、保護具20に加えられる衝撃力のエネルギー量を調整可能となっている。なお、図9は、鋼製棒54の長手方向から見たものである。
実施例1〜の各保護具20に対して、落重衝撃試験装置50を用いて落重衝撃試験を行った。落重衝撃試験では、落重衝撃試験装置50内で鋼管10を垂直に立てて、鋼管10の長手方向の衝撃力を鋼管10に装着した各保護具に加えた(図9参照)。各試験における錘52の落下高さは鋼製棒54の下端から保護具20の上端までの垂直距離として、その落下高さを61cmとし、室温と−46℃の2つの試験温度の条件下で各試験を行った。
そして、保護具20により保護された鋼管継手14の端面や雌螺子16に損傷が生じなかった場合において、錘52の質量及び鋼製棒54の質量の合計値の最大値と、落下高さとから、保護具20に加えられた衝撃力のエネルギー量の最大値を算出した。なお、以下の説明において、保護具20に加えられた衝撃力のエネルギー量の最大値を最大吸収エネルギーという。
−46℃の条件下で落重衝撃試験を行うにあたっては、各保護具20の衝撃吸収部38に熱電対を埋め、ドライアイスで保護具20を−75℃に冷却してから室温の落重衝撃試験装置50内にセットした。そして、熱電対で保護具20の温度をモニタし、その温度が−46℃まで上昇した時点で直ちに錘52と鋼製棒54を落下させた。
また、実施例1〜の各保護具20に対して、取り外し容易性試験を行った。取り外し容易性試験では、−46℃の条件下で落重衝撃試験を行った場合と同様に、衝撃吸収部38に熱電対を埋めた各保護具20を、室温で鋼管継手14の雌螺子16に装着した。装着時に各保護具20に加えた締め付けトルクは30Nmとした。そして、保護具20を−30℃よりも低温状態にあるコンテナ内に3時間放置してから室温で放置し、熱電対で保護具20の温度をモニタし、その温度が−30℃まで上昇した時点で、鋼管継手14から保護具20を取り外し、保護具20を取り外すために必要であったトルクを取り外しトルクとして測定した。取り外しトルクが100Nm以下であれば、取り外し可能と判断した。
なお、比較のため、以下の比較例1〜に示す各保護具に対しても、実施例1〜と同
様に落重衝撃試験及び取り外し容易性試験を行った。
比較例1〜4の各保護具は、以下の点を除いて、実施例1の保護具20と同じものである。
比較例1の保護具は、ペレットP2のみから射出成型したものであり、ペレットP2は高密度ポリエチレンA1のみからなる(表1及び表2を参照)。
比較例2の保護具は、ペレットP2のみから射出成型したものであり、ペレットP2は、高密度ポリエチレンA2のみからなる(表1及び表2を参照)。
比較例3の保護具も、ペレットP2のみから射出成型したものであり、ペレットP2は、高密度ポリエチレンA3のみからなる(表1及び表2を参照)。
比較例4の保護具も、ペレットP2のみから射出成型したものであり、ペレットP2は、以下の表3に試験結果を示す。
比較例5の保護具は、以下の点を除いて、実施例1のものと同じものである(表1及び表2を参照)。すなわち、保護具は、芳香族ポリアミド繊維の長繊維を含んだペレットP1の代わりに図6に示すペレットP3から成型して製造されたものである。ペレットP3は11mmの長さを有し、9.5kgの高密度ポリエチレンA1と0.5kgの芳香族ポリアミド繊維B2(帝人社製コポリパラニン3、4オキシジフェニレンテレフタルアミド、平均繊維径:12μm、平均繊維長:3mm)の短繊維とを2軸押出機で溶融混練してペレットとしたものであり、高密度ポリエチレンA1を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B2を5質量部含有する。そして、製造された保護具20は、樹脂全量100質量部に対し高密度ポリエチレンA1を95質量部、芳香族ポリアミド繊維B2を5質量部含有している。なお、平均繊維長が数mm程度で、且つ、平均繊維長がペレットよりも短い芳香族ポリアミド繊維のことを短繊維と称する。
Figure 0004401838
最初に、落重衝撃試験の結果を表3を参照しつつ説明する。
MFRが0.3g/10minである高密度ポリエチレンA1を用いた実施例1〜4及び比較例1を比較する。芳香族ポリアミド繊維B1の含有量が、樹脂全量100質量部に対し〜10質量部である実施例1、2の場合、室温での最大吸収エネルギーが1047Jである。芳香族ポリアミド繊維B1の含有量が、樹脂全量100質量部に対し25〜50質量部である実施例及びの場合、室温での最大吸収エネルギーが1270Jである。芳香族ポリアミド繊維を含有していない比較例1の場合、室温での最大吸収エネルギーが1047Jである。したがって、芳香族ポリアミド繊維を含有することによって、耐衝撃性が向上することが確認された。
次に、取り外し容易性試験の結果を表3を参照しつつ説明する。
−30℃の環境下で、実施例1〜実施例の各保護具20を鋼管継手14の雌螺子16から取り外すために必要であった取り外しトルクは45Nm以下であり、保護具20と鋼管継手14との間でかじりを生じることなく、容易に取り外し可能であった。
長繊維の芳香族ポリアミド繊維を含有する実施例1〜8の各保護具20においては、保護具20中の芳香族ポリアミド繊維の含有量と取り外しトルクとの間に相関性が見られる。すなわち、芳香族ポリアミド繊維の含有量が増加するにしたがって、取り外しトルクが減少している。芳香族ポリアミド繊維の含有量が樹脂全量100質量部に対し25質量部以上である実施例及び実施例の各保護具20では、取り外しトルクが40Nmと最も小さい。芳香族ポリアミド繊維の含有量が樹脂全量100質量部に対し5〜10質量部である実施例1、実施例、実施例及び実施例の各保護具20では、取り外しトルクが45Nmとなっている
また、短繊維の芳香族ポリアミド繊維を含有する比較例5の保護具においては、取り外しトルクが55Nmとなっている。これに対して、実施例1の保護具20は、芳香族ポリアミド繊維の含有量、高密度ポリエチレンのMFRが、比較例5の保護具20と同じ値となっているが、取り外しトルクが45Nmとなっている。これは、実施例1の保護具20中の芳香族ポリアミド繊維が長繊維であるからと考えられる。すなわち、実施例1の保護具20において、1本当たりの芳香族ポリアミド繊維の長繊維によって収縮を妨げられる高密度ポリエチレンの体積が、比較例5の保護具20において、1本当たりの芳香族ポリアミド繊維の短繊維によって収縮を妨げられる高密度ポリエチレンの体積よりも大きいからである。
さらに、光安定剤及び紫外線吸収剤を含有する実施例の保護具20と、光安定剤及び紫外線吸収剤を含有しない実施例1の保護具20とを比較すると、実施例の保護具20の最大吸収エネルギーが室温で1047J、−46℃で1270J、取り外しトルクが45Nmであり、実施例1の保護具20の最大吸収エネルギー及び取り外しトルクと同じ値である。したがって、光安定剤及び紫外線吸収剤を添加しても、本発明の効果が損なわれないことが確認された。
他方、芳香族ポリアミド繊維を含有していない比較例1〜比較例4の各保護具においては、各保護具と鋼管継手14の雌螺子16との間にかじりを生じ、100Nm以上のトルクを保護具にかけても、保護具を雌螺子16から取り外すことはできなかった。
第1の実施の形態に係る保護具の長手方向断面図である。 保護具製造の説明図である。 保護具において衝撃吸収部が衝撃力を吸収して変形する状態説明図である。 第2の実施の形態に係る保護具の長手方向断面図である。 変形例1に係る保護具の長手方向断面図である。 比較例5に係るペレットの構造図である。 変形例に係る保護具の長手方向断面図である。 変形例に係る保護具の長手方向断面図である。 落重衝撃試験における試験装置の構成図である。 従来の鋼管の側面図である。 従来の保護具を装着した鋼管の側面図である。
符号の説明
10 鋼管
12 鋼管の雄螺子
14 鋼管継手
16 鋼管継手の雌螺子
20 保護具
22a、22b 端面
24 円筒内周面
26 円筒外周面
28 保護具の雌螺子
30 保護具の雄螺子
31 段部
32 溝
34 外周側縁
36 内周側縁
38 衝撃吸収部
40 カバー
50 落重衝撃試験装置
52 錘
54 鋼製棒
A 高密度ポリエチレン
B 芳香族ポリアミド繊維
M 成型原料混合物
P1、P2、P3 ペレット

Claims (8)

  1. 鋼管の管端に装着される樹脂製の保護具であって、前記樹脂は、樹脂の全量100質量部に対し、高密度ポリエチレンを50〜95質量部及び芳香族ポリアミド繊維を5〜50質量部含有し、前記保護具は、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有するペレット、および高密度ポリエチレンのペレットを混合して形成され、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有する前記ペレットがその長さが5〜50mmであり、該ペレット内の芳香族ポリアミド繊維はペレットとほぼ同じ長さを有することを特徴とする保護具。
  2. 鋼管の管端に装着された鋼管継手に装着される樹脂製の保護具であって、前記樹脂が高密度ポリエチレンを50〜95質量部及び芳香族ポリアミド繊維を5〜50質量部含有し、前記保護具は、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有するペレット、および高密度ポリエチレンのペレットを混合して形成され、芳香族ポリアミド繊維と高密度ポリエチレンとを含有する前記ペレットは、その長さが5〜50mmであり、該ペレット内の芳香族ポリアミド繊維はペレットとほぼ同じ長さを有することを特徴とする保護具。
  3. 0.001〜5質量部の紫外線吸収剤及び0.001〜5質量部の光安定剤が添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護具。
  4. 前記高密度ポリエチレンが、温度190℃、荷重21.18Nの測定条件下において、0.1〜20.0g/10minのメルトマスフローレートを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護具。
  5. 前記鋼管の管端にある雄螺子と螺合可能な雌螺子を有することを特徴とする請求項1、請求項3〜請求項4のいずれか1項に記載の保護具。
  6. 請求項1、請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の保護具が、前記鋼管の管端にある雄螺子に装着されていることを特徴とする鋼管
  7. 前記鋼管継手の雌螺子と螺合可能な雄螺子を有することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の保護具
  8. 請求項2〜請求項4、請求項7のいずれか1項に記載の保護具が、前記鋼管に装着された鋼管継手の雌螺子に装着されていることを特徴とする鋼管
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