JP4401254B2 - 磁気粘性流体流動型制振装置 - Google Patents

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本発明は、磁界により粘度が増し流動抵抗が高まる特性を有する磁気粘性流体を利用し、振動に伴うピストンの移動により磁気粘性流体を磁界中に流通させて振動を減衰させる磁気粘性流体流動型制振装置に関するものである。
従来、磁気粘性流体を用いた制振装置は、シリンダ内を第1及び第2の隔室に区画するピストンに、シリンダを出入り自在に挿入されたピストンロッドが結合し、シリンダの内部に磁気粘性流体が充填されている。ピストンには狭い流通路を有すると共に、電磁石が固定され、流通路に磁界を形成してここでの磁気粘性流体の流動抵抗により振動を減衰させている(特許文献1参照)。
また、シリンダの両隔室間にバイパス管を連通させ、内蔵の電磁石で磁界を形成してこの中に磁気粘性流体を流通させると共に、シリンダの外部に別途設けたリザーバでシリンダの両隔室に磁気粘性流体を供給する制振装置がある(特許文献2参照)。
特表2000−514161号公報 特開2001−165229号公報
上記従来の制振装置における前者にあっては、ピストンの流通路に沿って電磁石を設けるので、振動に対する制振荷重を高めるために電磁石を増やすと、ピストンの長大化を招く。液中のピストンから電磁石のコイルにつながるリード線の引き出し部にシールを必要とする。ピストンの低振幅運動を吸収するために、シリンダの一方の隔室に、柔軟な隔壁で仕切って圧縮気体を充填した蓄圧室を隣接しているが、補給用の磁気粘性流体を貯め置くリザーバ機能がないし、継続する振動や電磁石への通電に伴う発熱により、磁気粘性流体が熱膨張すると、圧縮気体自体も熱膨張して変性するし、磁気粘性流体の増減を許容できる柔軟な容積変動が不十分であり、内圧が上昇して、所期の制振効果を維持できなかったり、装置の耐荷重の低下をもたらすことがある。また、振動が収まり、隔室間で内圧が偏った状態におかれると、次に到来する振動に対応できないことがある。
後者にあっては、リザーバをシリンダの外部に設けるので、嵩張って余計な設置スペースを確保する必要がある。また、リザーバに出入りする磁気粘性流体に内圧をかける手段を設けていないので、瞬発的な応答性に欠ける。
そこで、本発明は、設置個所に応じて簡単に特性を調整できるし、コンパクトで小型に構成でき、電磁石に通じるリード線を容易に引き出せ、さらに熱膨張により特性が影響されず、所期の制振効果を持続し、振動に対して迅速に対応できる磁気粘性流体流動型制振装置を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、第1の発明においては、図1に示すように、支持体又は被支持体の一方に連結され、内部に磁気粘性流体を充填したシリンダ1内に、軸線方向に移動可能なピストン3を挿入して第1及び第2の隔室9,10に区画し、このピストン3にピストンロッド2を固定し、シリンダ1の一端側に出入り自在に挿入し、支持体又は被支持体の他方に連結する。また、シリンダ1の外側に磁界発生器5を設けて、第1及び第2の隔室9,10に連通させ、磁界発生器5内の磁界中に磁気粘性流体を流通させる。さらにシリンダ1の一方の隔室9にアキュムレータ6を連通させて磁気粘性流体を収容させ、磁気粘性流体の過不足を調整させる。アキュムレータ6はピストン2に結合し、内部に収容した磁気粘性流体を加圧するばね6bを係止した蓋体6aにより収容部6cを弾力的に拡大、縮小可能に構成する。
第2の発明においては、図2及び図3に示すように、磁界発生器5を、シリンダ1周りに間隔を置いて同心状に設けた。
第3の発明においては、図4に示すように、アキュムレータ6とこれにつながる隔室9との間に、磁気粘性流体の緩慢な流通を許容する一方、急激な流通を阻止するように開閉し、閉じたときも内圧を逃がすオリフィス13bを有するポペット弁13を設けた。
本発明は、磁界発生器をシリンダの外部に設ける構造のため、磁気粘性流体の粘度を変化させる磁石を流通路に沿って設けても、ピストンの長大化を招くことはなく、コンパクトに構成できる。電磁石の数や磁界強度の加減により振動に対する荷重を広い範囲で調整できる。磁界発生器に電磁石を内蔵させる場合には、コイルに通じるリード線を液中にさらすことなく容易に引き出すことができる。温度変化等により、磁気粘性流体の体積が増減しても、アキュムレータで体積変化を吸収できるし、磁気粘性流体を一定圧に維持でき、装置の耐荷重の低下をもたらすことなく、所期の制振効果を継続して発揮でき、振動に迅速に対応できるし、シリンダ内にアキュムレータを設けるので、外部に余計なスペースを必要としない。磁界発生器をシリンダ周りに間隔を置いて同心円状に設ければさらにコンパクトになる。
本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。
図1において、制振装置は、図示しない構築物のような支持体又は被支持体に引手7及び支持筒4を介して連結されるシリンダ1と、被支持体又は支持体に引手8を介して連結され、シリンダ1に軸線方向へ出入り自在に挿入されたピストンロッド2と、ピストンロッド2の端部に固定されたピストン3と、シリンダ1の外周に設けられた磁界発生器5と、ピストン3を挟んでピストンロッド2と反対側に延長して設けられたアキュムレータ6とを備えている。
シリンダ1の内部は摺動自在に気密に嵌合するピストン3によって隔室9,10に仕切られる。シリンダ1の内部及びシリンダ1と磁界発生器5との隙間で形成される流通路11には磁気粘性流体が充填される。隔室9,10には流通路11が連通している。
磁界発生器5は、シリンダ1周りにわずかに間隔をおいて同心状に配置され、両端部をシリンダ1の端壁に固定されている。図2及び図3に示すように、この磁界発生器5とシリンダ1との間には環状の流通路11が形成される。磁界発生器5の内壁には、流通路11に電磁石12が軸線方向に複数固定されている。この電磁石12のリード線12cは、磁界発生器5の一端部外側面の引出し口5aから引き出されて図示しない電源部に接続される。電磁石12は、半径方向に磁界を形成するように環状鉄心12aとコイル12bとが軸線方向へ互いに隙間なく並べられている。電磁石12とシリンダ1との間の流通路11を通じて磁気粘性流体が流通する。電磁石12の鉄心12aに対向するシリンダ1の外側部位には周方向の磁極1aが突設されており、磁束が集中する。電磁石12は振動に対する制振荷重に対応して磁界発生器5の内壁に必要数設けられる。なお、流通路11に磁界を形成するための電磁石は永久磁石でもよい。
図4に示すように、アキュムレータ6は、ピストン3に固定されると共にシリンダ1の他端壁を貫通して摺動自在に支持され、シリンダ支持筒4内に挿入される。アキュムレータ6は円筒状を成し、内部に蓋体6aが軸線方向へ摺動自在に気密に嵌合して磁気粘性流体が収容される液室6cが形成される。液室6cにはシリンダ1の隔室9につながる連通路6dが開口している。蓋体6aはアキュムレータ6の一端に係止された圧縮ばね6bにより液室6cを狭める方向に押されている。従って、液室6cの磁気粘性流体に内圧をかけ、温度変化などにより磁気粘性流体に過不足が生じた場合に、内圧により体積増減分を蓋体6aの変位により調整される。連通路6cの途上には、弁13が設けられている。弁13は、例えば流体の急激な流れを阻止するが、緩慢な流れを許容するように開閉動作を行うポペット弁などが用いられる。弁13の弁体13aには閉成時にも僅かな流通を許容して前後の圧力を均一化するオリフィス13bが設けられている。
この制振装置は、例えば図5に示すように鉄道車両の車体14と台車15との間に設置され、振動によりシリンダ1とピストンロッド2との間に相対的変位が生じると、ピストンロッド2がシリンダ1内に押し込まれ、あるいはそれから引き出され、ピストン3が移動する。ピストン3の変位により隔室9,10の容積が変動して、その内部の磁気粘性流体が流動する。例えば図1においてピストン3が左行すると、磁気粘性流体がピストン3に隔室9から押し出されて磁界発生器5内を流通し、隔室10へ移動する。このとき、磁界発生器5の狭い流通路11で流れが絞られると共に、電磁石12と磁極1aとの間に形成された磁界によって磁気粘性流体の粘度が増して流動抵抗が大きくなり、ピストン3の移動を妨げて振動を減衰させる。なお、制振荷重は、コイルに流れる電流を加減制御したり、電磁石12自体の数を適宜変更することで調整することが可能である。
アキュムレータ6は、常時ばね6bにより液室6cを狭める方向に蓋体6aを押しているので連通路6dを通じて磁気粘性流体全体に内圧が作用している状態にあるので、振動に対して追従し易く、即応性がある。継続的な振動や電磁石12の通電、あるいは外気温の影響などが原因で磁気粘性流体の体積の増減が生じた場合に、ばね6bが内圧変化に応じて蓋体6aを変位させて液室6cの容積を調整する。連通路6dを通じてシリンダ1の隔室9と液室6cとの間を流通する磁気粘性流体は、弁13により例えば流体の急激な流れを阻止して磁界発生器5における上記制振動作を妨げることがないが、磁気粘性流体の温度変化に伴う体積変動による緩慢な流れを無理なく許容するように開閉動作を行う。制振動作後の隔室9,10の内圧は弁13のオリフィス13bを通じて均等に保たれる。
本発明は、種々の制振対象に適用でき、特にコンパクトに装置を設置でき、荷重調整した所期の制振効果を継続して発揮させるのに有効である。
磁気粘性流体流動型制振装置の縦断面図である。 図1のII−II断面図である。 磁界発生器の縦断面図である。 アキュムレータの縦断面図である。 鉄道車両の車体と台車の間に設置された制振装置を示す概略図である。
符号の説明
1 シリンダ
1a 磁極
2 ピストンロッド
3 ピストン
4 支持筒
5 磁界発生器
5a 引出し口
6 アキュムレータ
6a 蓋体
6b ばね
6c 液室
9 隔室
10 隔室
11 流通路
12 電磁石
13 弁
13a 弁体
14 鉄道車両の車体
15 鉄道車両の台車

Claims (2)

  1. 支持体又は被支持体の一方に連結され、内部に磁気粘性流体を充填したシリンダと、
    このシリンダ内を第1及び第2の隔室に区画し、シリンダ内を軸線方向に移動可能なピストンと、
    一端が支持体又は被支持体の他方に連結され、前記シリンダを出入り自在に貫通し途上に前記ピストンが固定されたピストンロッドと、
    前記シリンダの外部に設けられ、シリンダ内の第1及び第2の隔室に連通し、内部に形成した磁界中に前記磁気粘性流体を流通させる磁界発生器とを具備する磁気粘性流体流動型制振装置において、
    前記磁界発生器は、前記シリンダ周りに間隔を置いて同心状に設けられ、 前記ピストンロッドには、前記シリンダの一方の隔室に連通して前記磁気粘性流体の過不足を調整するように磁気粘性流体を出入り可能に収容し、内部に収容した磁気粘性流体を加圧するばねが係止された蓋体を有する弾力的に拡大、縮小可能なアキュムレータを備えていることを特徴とする磁気粘性流体流動型制振装置。
  2. 前記アキュムレータとこれにつながる隔室との間には、磁気粘性流体の緩慢な流通を許容する一方、急激な流通を阻止するように開閉し、閉じたときも内圧を逃がすオリフィスを有するポペット弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁気粘性流体流動型制振装置。
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