JP4397750B2 - 水圧転写シート及び金属調成形品の製造方法 - Google Patents

水圧転写シート及び金属調成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形品に金属調の装飾を施すための水圧転写シート、及びその水圧転写シートを用いた金属調成形品の製造方法に関するものである。なお、金属調成形品とは、金属光沢を呈する装飾が施された成形品のことである。
自動車の内装品、家電製品又はOA機器等には、表面に木目調や金属調(金属光沢)の装飾が施された成形品が利用されている。これらの成形品は複雑な三次元形状を有するものが多く、従来より、その複雑な形状からなる成型品に意匠性の高い装飾を簡便に施す方法が検討されている。
そうした装飾方法として、水圧を利用した水圧転写法が知られている。水圧転写法は、水溶性又は水膨潤性の樹脂からなる基材シート上に、木目調又は金属調の装飾模様を有する転写層が形成された水圧転写シートを用い、その転写層を水圧を利用して成形品の表面に転写する方法である。より詳しくは、水圧転写シートの基材シート側の面が水面に向くようにその水圧転写シートを水面に浮かべた後、その水圧転写シートの上方から水中に向かって成形品を押し入れてその成形品の表面に転写層を転写させる方法である。この水圧転写法によれば、水面に浮かべた水圧転写シートの基材シートが水に溶解又は膨潤するので、成形品を水中に押し入れたときに、その基材シート上の転写層が、任意形状に追従する水圧の作用により成形品の表面に密着する。
成形品に金属調の装飾を施すための水圧転写シートとして、圧延や電鋳等により作製した金属箔を転写層とした水圧転写シートが考えられる。しかし、この水圧転写シートでは、金属箔が成形品に接着し難く、また、剛性の大きい金属箔を成形品の表面形状に水圧だけで追従させることが難しいという問題がある。この問題に対し、転写層である金属箔の上に接着剤成分を含む活性剤を塗布することにより、成形品への接着性を付与し、さらに、転写層である金属箔の厚さを薄くしてその剛性を小さくすることにより、成形品の表面形状への追従性を向上させた水圧転写シートが考えられている。
しかしながら、上記の水圧転写シートは、成形品への接着性及び三次元形状からなる成形品への追従性は向上するものの、成形品に対して十分な追従性を示す程度まで金属箔の厚さを薄くすると、転写時の水圧により金属箔に破断や亀裂が生じたり、転写された金属箔にしわが生じ易くなったりするという問題があった。
この問題に対して、金属粉末と透明バインダー(インキ又は塗料)とからなる金属光沢層を含む水圧転写シートが提案されている(特許文献1を参照)。この水圧転写シートは、転写層を構成する金属光沢層が樹脂成分を含んでいるので、転写時に発生する破断や亀裂を防ぐことができると共に、転写後のしわの発生も防ぐことができるとされている。なお、同文献には、金属粉末として、樹脂フィルム表面に金属蒸着膜を形成したものを破砕した形態の粉末も記載されている。
特開昭61−40200号公報(第4頁右下欄等)
しかしながら、特許文献1に記載の水圧転写シートに含まれる金属粉末は金属を破砕して作製されたものであるので、粉末状の金属粉末が転写層中に含まれることにより、その転写層が転写された成形品は、転写層中の金属粉末が光を乱反射し、艶のないマット状の金属光沢又は金粉や銀粉を撒いたような砂目状の金属光沢を帯びたものとなってしまう。したがって、このような水圧転写シートを用いて成形品に鏡面性の高い金属光沢を施すことはできなかった。
また、上記特許文献1において、金属粉末として樹脂フィルム表面に金属蒸着膜を形成したものを破砕した粉末を用いた場合、その粉末は平坦面を含み且つその厚さは約10〜20μmとなる。この粉末の厚さは、金属蒸着膜が形成される樹脂フィルムの製造可能な厚さ(およそ10μm以上)に規制されている。そうした粉末を含む転写層が成形品に転写されたとき、粉末の平坦面は成形品表面の面内方向と平行又は略平行に配向して重なり合うが、前記のように粉末の厚さが約10〜20μmであるので、成形品表面にある粉末が積層して各粉末間に前記厚さ程度の段差が生じる。この段差は可視光の波長(0.38μm〜0.78μm)に比べて一桁以上大きいので、光の乱反射が起こり易く、その結果、得られた金属調成形品は、艶のないマット表面又は金粉や銀粉を撒いたような砂目状表面となり、鏡のような金属光沢(鏡面性の高い金属光沢)を施すことができないという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、成形品に鏡面性の高い金属調の装飾を施すことができる水圧転写シートを提供することにある。また、本発明の他の目的は、その水圧転写シートを用いた金属調成形品の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の第1形態に係る水圧転写シートは、水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート上に金属光沢層を含む転写層が形成されている水圧転写シートであって、前記金属光沢層は非水溶性の透明バインダー樹脂100重量部に対して鱗片状の金属薄片が30重量部以上300重量部以下の配合割合で構成されており、当該金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であり当該金属薄片の平坦面の算術平均高さRaも0.01μm〜0.08μmの範囲内であり、前記基材シートの前記転写層側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることを特徴とする。
この発明によれば、金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であるので、転写層が成形品表面に転写された際に、転写層中で重なり合う鱗片状の金属薄片間の段差をその厚さと同じ程度に小さくすることができる。その結果、段差が可視光の波長(0.38μm〜0.78μm)よりも一桁小さくなるので、光の乱反射が起こり難く、成形品の表面に鏡面性の高い金属調の装飾を施すことができる。なお、段差とは、本発明の水圧転写シートの転写層が成形品に転写された際に、転写層中の鱗片状の金属薄片の観察側の面と、その鱗片状の金属薄片上に重なる他の鱗片状の金属薄片の観察側の面との膜厚方向の距離のことであり、通常、金属薄片の平均厚さとほぼ同じになる。
この発明によれば、基材シートの転写層側の面の表面粗さが算術平均高さRaで0.1μm以下であるので、転写層の基材シート側の面の表面粗さもほぼ同じになる。そのため、水圧転写によって転写層が成形品表面に転写された際に、その転写層の外表面の表面粗さも上記算術平均高さとほぼ同じになる。その結果、水圧転写後の成形品表面が平滑になり、得られた金属調成形品は光の乱反射が抑制されて更に鏡面性が高くなる。
上記目的を達成するための本発明の第2形態に係る水圧転写シートは、水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート上に、水溶性樹脂からなる目止め層と、金属光沢層を含む転写層とが順に形成されている水圧転写シートであって、前記金属光沢層は非水溶性の透明バインダー樹脂100重量部に対して鱗片状の金属薄片が30重量部以上300重量部以下の配合割合で構成されており、当該金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であり当該金属薄片の平坦面の算術平均高さRaも0.01μm〜0.08μmの範囲内であり、前記目止め層の前記転写層側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることを特徴とする。
この発明によれば、金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であるので、転写層が成形品表面に転写された際に、転写層中で重なり合う鱗片状の金属薄片間の段差をその厚さと同じ程度に小さくすることができる。その結果、段差が可視光の波長(0.38μm〜0.78μm)よりも一桁小さくなるので、光の乱反射が起こり難く、成形品の表面に鏡面性の高い金属調の装飾を施すことができる。また、この発明によれば、目止め層の転写層側の面の表面粗さが算術平均高さRaで0.1μm以下であるので、転写層の目止め層側の面の表面粗さもほぼ同じになる。そのため、水圧転写によって転写層が成形品表面に転写された際に、その転写層の外表面の表面粗さも上記算術平均高さとほぼ同じになる。その結果、水圧転写後の成形品表面が平滑になり、得られた金属調成形品は、光の乱反射が抑制されて更に鏡面性が高くなる。
上記目的を達成するための本発明の金属調成形品の製造方法は、上記本発明の水圧転写シートを前記基材シート側の面が水面に向くように水面に浮かべた後、当該水圧転写シートの転写層側から水中に成形品を押し入れて当該成形品の表面に前記転写層を転写させることを特徴とする。
この発明によれば、水面に浮かべた水圧転写シートの上方から成形品を水中に押し入れて転写を行うので、可視光の波長よりも一桁小さい段差で配列した金属薄片を成形品表面に密着させることができる。得られた金属調成形品は、その表面の段差が光の乱反射を起こし難いので、表面の鏡面性が高くなる。
以上説明したように、本発明の第1形態に係る水圧転写シートによれば、転写層が成形品表面に転写された際に転写層中で重なり合う鱗片状の金属薄片間の段差をその厚さと同じ程度に小さくすることができるので、段差が可視光の波長よりも一桁小さくなる。その結果、光の乱反射が起こり難く、成形品の表面に鏡面性の高い金属調の装飾を施すことができる。また、転写層の基材シート側の面の表面粗さを算術平均高さRaでほぼ0.1μm以下の小さな値とすることができるので、水圧転写によって転写層が成形品表面に転写された際に、水圧転写後の成形品表面が平滑になり、得られた金属調成形品の光の乱反射を抑制して鏡面性を更に高くすることができる。
また、本発明の第2形態に係る水圧転写シートによれば、上記の第1形態に係る水圧転写シートの効果と同様の効果を奏する。すなわち、重なり合う金属薄片間の段差が可視光の波長よりも一桁小さくなるので、光の乱反射が起こり難く、成形品の表面に鏡面性の高い金属調の装飾を施すことができる。また、水圧転写によって転写層が成形品表面に転写された際に、水圧転写後の成形品表面が平滑になり、得られた金属調成形品の光の乱反射を抑制して更に鏡面性を高くすることができる。
また、本発明の金属調成形品の製造方法によれば、可視光の波長よりも一桁小さい段差で配列した金属薄片を成形品表面に密着させることができるので、得られた金属調成形品の光の乱反射を抑制して鏡面性を高くすることができる。
以下、本発明の水圧転写シート及びその水圧転写シートを用いた金属調成形品の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
(第1形態に係る水圧転写シート)
図1は、本発明の第1形態に係る水圧転写シートの一例を示す断面図である。図2(A)は、本発明の水圧転写シートの転写層に含まれる鱗片状の金属薄片の一例を示す模式図であり、図2(B)は、その転写層中での鱗片状の金属薄片の状態を示す模式断面図である。
本発明の第1形態に係る水圧転写シート1は、図1に示すように、水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート2上に、金属光沢層を含む転写層3が形成されている。この水圧転写シート1においては、転写層3を構成する金属光沢層が鱗片状の金属薄片5及び非水溶性の透明バインダー樹脂7から少なくとも構成されており、その金属薄片5の平均厚さTが0.01μm〜0.08μmの範囲内であることに特徴がある。なお、図1及び図2に示す第1形態に係る水圧転写シートは、転写層3が金属光沢層のみで構成された態様であり、転写層は実質的に金属光沢層を指している。以下、水圧転写シートを構成する各層について説明する。
[基材シート]
基材シート2は、水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成されている。この基材シート2は、水圧転写シート1の基材シート側が水面に向くようにその水圧転写シート1を水面に浮かべることによって水に溶解又は膨潤する。基材シート2が溶解又は膨潤することにより、基材シート2上に設けられた転写層3が展延し易くなるという特徴がある。
基材シート2を形成する水溶性又は水膨潤性の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、基材シート2には、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
好ましい基材シート2としては、鹸化されたポリビニルアルコール樹脂と澱粉とを混合した樹脂に、必要に応じてゴム成分を添加したものが用いられる。
本発明の第1形態に係る水圧転写シート1において、その基材シート2は、転写層3側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることが好ましい。
この表面粗さを持つ基材シート2は、基材シート2に隣接して設けられる転写層3の基材シート2側の面を算術平均高さRaで0.1μm以下の平滑な面にすることができる。こうして得られた転写層3の基材シート2側の面は、光の波長(0.38μm〜0.78μm)よりも小さい表面粗さを有する平滑な面となる。その結果、図5及び図6に示す態様で成形品8に転写された転写層3は、視認される側の最表面が平滑になって光の乱反射が抑制されるので、得られた金属調成形品9の金属光沢の鏡面性が向上する。
基材シート2の転写層3側の面の表面粗さはできるだけ小さいことが好ましい。その表面粗さの下限値は特に設定されないが、製造技術や製造コストの観点から、算術平均高さRaで0.01μm程度であることが好ましい。なお、本明細書でいう算術平均高さRaは、JIS−B0601−2001(ISO4287−1997準拠)に従って算出した値である。
基材シート2は、Tダイ押出法や溶液流延法等で形成される。Tダイ押出法は、上記の樹脂を加熱し、溶融した樹脂をTダイからキャスティングドラムに押出してシート状又はフィルム状に成形する方法であり、溶液流延法は、上記樹脂を溶媒(水、有機溶剤等)で溶解又は分散させた溶液又は分散液をキャスティングドラムに流延した後、その溶剤を乾燥させてシート状又はフィルム状に成形する方法である。Tダイ押出法や溶液流延法により、算術平均高さRa0.1μmの表面を有する基材シート2を形成するには、使用するキャスティングドラムの表面粗さを、JIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下とすることが望ましい。なお、基材シート2の厚さは、通常30〜100μm程度である。
[転写層]
転写層3は、水圧転写時に成形品に転写される層であり、成形品に金属調の装飾を付与することができるように構成されている。すなわち、転写層3は、鱗片状の金属薄片と非水溶性の透明バインダー樹脂とから少なくとも構成された金属光沢層を有している。転写層3は、金属光沢層のみから構成されるものであってもよいし、金属光沢層以外の層をさらに有するものであってもよい。金属光沢層以外の層としては、成形品の金属光沢を損なわない限りにおいて、例えば、着色剤を含む非水溶性の透明バインダー樹脂層を挙げることができる。この層は、全面ベタ状でも部分的に形成された模様状でもよい。
最初に、透明バインダー樹脂について説明する。金属光沢層を構成する非水溶性の透明バインダー樹脂として、例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂又は塩素化ポリプロビレン等を用いることができる。
セルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(硝化綿)、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロビオネート等が用いられる。また、アクリル樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等が用いられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
ウレタン樹脂は、主としてポリオールとポリイソシアネートとを反応させて生成される。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート若しくはジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアンーネート、又は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート若しくはイソホロンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環式)イソシアネートが用いられる。なお、これらのポリイソシアネートは、付加体又は3量体や5量体等の多量体の形で用いることもできる。また、これらのポリイソシアネートは、必要に応じ、予めアルコール類やフェノール類等と可逆的に結合させた、いわゆるブロックイソシアネートの形態で用いられてもよい。ウレタン樹脂の形態としては、1液型ウレタン樹脂とした形態及び2液硬化型ウレタン樹脂とした形態等を挙げることができる。1液型ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを予め線状高分子となるように重合した熱可塑性ウレタン樹脂であり、溶剤で溶解希釈されて用いられる。また、2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤としイソシアネートを硬化剤として混合した転写層用塗工液を調整し、この塗工液を基材シート2に印刷又は塗工した後に両者を反応させて得られるウレタン樹脂である。
次に、鱗片状の金属薄片について説明する。金属光沢層を構成する鱗片状の金属薄片は、図2(A)に示すように、不規則な形状からなる鱗片状の金属薄片である。
鱗片状の金属薄片としては、金属の薄片又は合金の薄片が用いられ、その材質としては、アルミニウム、金、銀、銅、チタン、クロム、ニッケル、錫、インジウム等の金属、及び、ニッケルクロム、ステンレス、真鍮等の合金が挙げられる。これらの中でもアルミニウムが好ましく用いられる。アルミニウムは、可視光線全域で高い反射率を有し、且つ安価で製造及び入手が容易であるという利点がある。
鱗片状の金属薄片5の平均厚さTは、0.01μm〜0.08μmの範囲内である。この範囲内の平均厚さTの金属薄片は、金属光沢層を含む転写層3が成形品8に転写された際に金属光沢層中で重なり合う金属薄片同士の段差dがその平均厚さTと同程度に小さくなる。前記の平均厚さTと同程度の段差dは、光の波長(0.38μm〜0.78μm)よりもほぼ一桁小さくなる。その結果、転写された後の成形品は、金属光沢層に照射した光(外光)が乱反射し難くなって良好な金属光沢を有し、鏡面性の高い外観となる。なお、この段差dは、転写層3が成形品8に転写された際に、転写層3に含まれる鱗片状の金属薄片5の観察者側の面と、その鱗片状の金属薄片5に重なる他の鱗片状の金属薄片5’の観察者側の面との膜厚方向の距離dのことである(図3を参照)。
鱗片状の金属薄片5の平均粒径を、平面視したときの平担面6の最長径aとその最長径aに直交する径bとの平均値で表したとき、その平均粒径が10μm以上であることが好ましい。10μm以上の平均粒径からなる金属薄片5は、金属光沢層を含む転写層3が成形品8に転写された際に、単位面積あたりの金属薄片間の段差dの数が、それ未満の平均粒径の場合に比べて少なくなる。その結果、転写された後の成形品は、金属光沢層に照射した光(外光)が乱反射し難くなって良好な金属光沢を有し、鏡面性の高い外観となる。
なお、鱗片状の金属薄片5の平坦面6の表面粗さはできるだけ小さいことが好ましく、例えば算術平均高さRaで約0.08μm以下であることが好ましい。こうした表面粗さの金属薄片5は、その平坦面6が高い鏡面性を呈するので、転写された後の成形品は、金属光沢層に照射した光(外光)が乱反射し難くなって良好な金属光沢を有し、鏡面性の高い外観となる。なお、金属薄片5の平坦面6の表面粗さの下限は、製造技術上の理由から、算術平均高さRaで約0.01μm程度である。
鱗片状の金属薄片5の作製方法としては、先ず樹脂フィルムを準備し、次いでその樹脂フィルム上に剥離剤を塗布し、剥離剤の上に蒸着、無電解めっき又はスパッタリング等の方法を用いて所望の金属又は合金の薄膜を形成した後、形成した金属又は合金の薄膜を樹脂フィルムから剥離し、剥離した薄膜をサンドミル、ダイノーミル等のビーズミル等で粉砕することにより得ることができる。
鱗片状の金属薄片5の平坦面6を上記の表面粗さとするには、樹脂フィルムの表面粗さを算術平均高さRaで0.08μm以下にして金属薄片を作製したり、粉砕時のせん断応力を最小限にして金属薄片を作製したりすることが好ましい。また、鱗片状の金属薄片としては、金属粒子を圧延することにより得られる金属フレークを用いることもできる。
次に、金属光沢層について説明する。金属光沢層は、上記の透明バインダー樹脂と鱗片状の金属薄片とを少なくとも有する層であり、本発明の水圧転写シートを構成する転写層3の全て又はその一部を構成する層である。
金属光沢層は、金属光沢層形成用塗工液を基材シート上に塗布又は印刷等することにより形成される。金属光沢層形成用塗工液は、少なくとも鱗片状の金属薄片5と透明バインダー樹脂7と溶剤とを含んでいる。鱗片状の金属薄片と透明バインダー樹脂は上述した通りである。溶剤については、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、又は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサノン等が用いられる。これらの溶剤は、用いられる透明バインダー樹脂に応じて適宜選択され、単独であっても混合されたものであってもよい。
金属光沢層形成用塗工液中の金属薄片の配合割合は、透明バインダー樹脂100重量部に対して、30重量部以上、300重量部以下であることが好ましい。なお、金属光沢層形成用塗工液に含有させることができる他の材料としては、着色剤(顔料、染料等)、体質顔料、紫外線吸収剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤等の添加剤等を挙げることができ、これらの添加剤は、転写層3の鏡面性を損わない範囲で必要に応じて添加される、
こうした金属光沢層形成用塗工液を基材シートに塗布又は印刷等した後に溶剤を乾燥することにより、転写層の全て又は一部を構成する金属光沢層を形成することができる。形成する金属光沢層は、全面ベタ状の層であっても所定のパターンからなる模様状の層であってもよい。金属光沢層の厚さは、通常1〜30μmである。塗工方法としては、ロールコート法、グラビアロールコート法、バーコート法等を適用することができる。また、印刷方法としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、活版印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インキジェット印刷法、静電写真印刷法等を適用することができる。
こうして形成された金属光沢層中の金属薄片5は、重力、対流又は塗工機や印刷機によるせん断応力等の作用により、その平坦面6が基材シート2の面内方向と平行又は略平行に配向する(図2(B)を参照)。
(第2形態に係る水圧転写シート)
図4は、本発明の第2形態に係る水圧転写シートの一例を示す断面図である。本発明の第2形態に係る水圧転写シート11は、図4に示すように、水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート2上に、水溶性樹脂からなる目止め層4と、金属光沢層を含む転写層3とが順に形成されている。
この水圧転写シート11においては、図1及び図2(B)に示す第1形態と同様に、転写層3の全部又は一部を構成する金属光沢層が鱗片状の金属薄片5及び非水溶性の透明バインダー樹脂7から少なくとも構成されており、その金属薄片5の平均厚さTが0.01μm〜0.08μmの範囲内であることに特徴があると共に、目止め層4の転写層側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることに特徴がある。
この第2形態に係る水圧転写シートにおいて、基材シート2、金属光沢層を含む転写層3、及びその金属光沢層に含まれる鱗片状の金属薄片5及び透明バインダー樹脂7等は、第1形態に係る水圧転写シートで説明したものと同じであるので、以下においては、異なる構成である目止め層4について説明する。
[目止め層]
目止め層4は、図4に示すように、基材シート2と転写層3との間に設けられて、成形品8に転写された転写層3の観察側の面を平滑にさせる役割を有する。この目止め層4は、金属調成形品9を製造する際に除去される。
目止め層4の転写層3側の面の表面粗さは、JIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることが好ましい。この表面粗さの目止め層4は、成形品に転写された転写層3の観察側(視認される側)の面が平滑になり、転写層3での光の乱反射が抑制される。その結果、金属調成形品9の表面が金属光沢となり、その鏡面性が向上する。こうした表面粗さの目止め層4は、基材シート2の転写層3側の面の算術平均高さRaが0.1μmより大きい場合に、基材シート2と転写層3との間に設けられることが望ましく、得られる金属調成形品9の鏡面性を向上させることができる。
目止め層4は水溶性の樹脂で形成されており、金属調成形品9を製造する際に、水で容易に除去することができる。水溶性の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性のウレタン樹脂、又は、アクリル系樹脂とカゼインとを混合した樹脂等が用いられる。目止め層4には、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。
目止め層4は、水溶性の樹脂を溶剤で溶解又は分散させた目止め層用塗工液を基材シート2に塗工し、塗膜を乾燥させることにより形成される。溶剤としては、目止め層4を形成する際に基材シート2が溶解又は膨潤するのを防ぐ観点から、基材シート2を溶解又は膨潤させない有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤としては、上述の金属光沢層形成用塗工液で用いられたのと同様の有機溶剤を用いることができる。また、塗工方法としては、ロールコート法、グラビアロールコート法等が挙げられる。目止め層4の厚さは、1〜30μm程度であることが好ましい。
(金属調成形品の製造方法)
図5は、本発明の金属調成形品の製造方法を説明する概略図である。本発明の金属調成形品の製造方法は、図5に示すように、上述した本発明の水圧転写シート1を基材シート2側の面が水面Wに向くようにその水面Wに浮かべた後、水圧転写シート1の転写層3側から水中に成形品8を押し入れてその成形品8の表面に転写層3を転写させることに特徴を有する。
この製造方法において、水圧転写シート1の転写層3側から水中に成形品8を押し入れてその成形品8の表面に転写層3を転写させる工程を、水圧印加工程という。本発明では、この水圧印加工程の前に、転写層3上に活性剤を塗布するための活性化工程を設けてもよい。また、水圧印加工程の後に、転写層3と共に成形品8に転写された基材シート2と目止め層4を除去するための脱膜工程を設けてもよいし、成形品8に転写された転写層3を保護するための保護膜を形成する塗装工程を設けてもよい。以下、活性化工程、水圧印加工程、脱膜工程及び塗装工程について順に説明する。
[活性化工程]
活性化工程は、本発明の水圧転写シート1の転写層3上に活性剤を塗布し、転写層3の少なくとも一部を溶解又は膨潤して軟化させる工程である。この活性化工程により、水圧転写シート1を複雑な三次元形状からなる成形品8に追従させ易くすることができる。また、転写層3が成形品8に付着し易い状態になるので、転写層3と成形品8とを接着させ易くすることができる。
活性剤としては、金属光沢層を含む転写層3中の透明バインダー樹脂を溶解又は膨潤させる溶剤を用いる。このような溶剤としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
活性剤は、転写層3が成形品8に接着する水圧印加工程が完了するまでの間に蒸発せず、且つ、成形品8を浸蝕することのないものであることが好ましい。このような活性剤は、活性剤自体の粘度が変化し難く、その調整が容易となる。その結果、活性剤の塗工手段を幅広く選択することができる。さらに、水圧印加工程に時間を要した場合であっても、活性剤中の溶剤が蒸発し難くいので、転写層3と成形品8との接着をより安定化させることができる。
活性剤としては、上記に例示した溶剤に下記の樹脂を含有させたものを用いることができる。溶剤に含有させる樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル若しくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル重合体、ポリスチレン若しくはスチレン誘導体等によるスチレン系重合体、ポリ酢酸ビニル等のビニルエステル重合体、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸若しくはフマル酸等の不飽和カルボン酸類のエステル誘導体の重合体、上記不飽和カルボン酸類のニトリル誘導体の重合体、上記不飽和カルボン酸類の酸アミド誘導体の重合体、上記不飽和カルボン酸類の酸アミド誘導体のN−メチロール誘導体、上記不飽和カルボン酸類の酸アミド誘導体のN−アルキルメチロールエーテル誘導体、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、2−ヒドロキシエチル−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレート、エチレンやエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等の単量体の単独重合体若しくは上記単量体の共重合体等の熱可塑樹脂、上記単独重合体若しくは共重合体等の初期縮合物、天然樹脂、ロジン若しくはその誘導体、セルロース誘導体、天然ゴム若しくは合成ゴム、及び、石油樹脂等の樹脂が挙げられる。このような樹脂は、上記の溶剤中に5〜60質量%程度添加される。
活性剤を水圧転写シート1の転写層3上に塗工する方法としては、例えば、グラビアオフセットコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法等が挙げられる。活性剤の塗工量は、2〜30g/m程度であり、好ましくは3〜15g/m程度である。
水圧転写シート1への活性剤の塗工は、水圧転写シート1を水面に浮遊させる前に行ってもよく、また、水圧転写シート1を水面に浮遊させた後に行ってもよい。なお、水圧転写シート1を水面に浮遊させるには、枚葉の水圧転写シート1を1枚ずつ浮遊させてもよく、また、水を1方向に流し、その水面上に連続帯状の水圧転写シート1を連続的に供給して浮遊させてもよい。
[水圧印加工程]
水圧印加工程は、図5に示すように、水圧転写シート1を基材シート2側の面が水面Wに向くようにその水面Wに浮かべた後、水圧転写シート1の転写層3側から水中に成形品8を押し入れてその成形品8の表面に転写層3を転写させる工程である。
この工程により、水圧転写シート1の転写層3と成形品8とが接着し、成形品8に転写層3が転写される。この工程では、基材シート2が水に膨潤又は溶解することによりその基材シート2上の転写層3が展延するので、転写層3が成形品8の三次元形状に容易に追従して接着する。その結果、平板状の成形品だけでなく複雑な三次元形状を有する成形品に対しても、転写層3を簡便に転写することができる。
水は、成形体に水圧を印加するためのものである。その水は、使用する水圧転写シート1の基材シート2が溶解又は膨潤し易い温度に調整されていることが好ましい。例えば、基材シート2が澱粉を含む樹脂で形成されている場合には、水温を40〜50℃とすることが好ましい。また、水には、基材シート2を溶解させて転写層3からの基材シート2の除去を促進させるための添加剤を添加してもよい。基材シート2が澱粉を含む樹脂で形成されている場合には、添加剤として、例えばアミラーゼ等を添加することができる。
なお、成形品8の材料としては、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、繊維素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂ほか、鉄、アルミニウム、銅等の金属、陶磁器、ガラス、琺瑯等のセラミックス、木材等を用いることができ、成形品8の形状は、平面形状である二次元形状であってもよいし、凹凸形状や曲面形状等の三次元形状であってもよい。
この工程において、基材シート2が水膨潤性の樹脂で形成されている場合には、基材シート2は転写層3と一体となって成形品8に転写される。また、基材シート2が水溶性の樹脂で形成されている場合にも、水に完全に溶解せずに残存した基材シート2が転写層3と一体となって成形品8に転写されることがある。このような場合には、成形品8から基材シート2を除去するために次に述べる脱膜工程を行う必要がある。また、本発明の第2の形態に係る水圧転写シート1を用い、目止め層4が転写層3と一体となって成形品8に転写される場合も同様に、脱膜工程により成形品8から目止め層4を除去する必要がある。
[脱膜工程]
脱膜工程は、水圧転写シート1の基材シート2や目止め層4が転写層3と共に成形品8上に転写されている場合に、その基材シート2や目止め層4を除去する工程である。したがって、基材シート2及び目止め層4が成形品8に転写されなかった場合にはこの工程は不要である。
基材シート2や目止め層4の除去は、例えば、シャワー水で成形品8を洗浄することにより行われる。この際、転写層3は非水溶性の樹脂で形成されているので、シャワー水では除去されずに成形品8上に残存する。シャワー水による洗浄条件は、基材シート2や目止め層4を形成する樹脂の種類等により異なるが、通常は水温が15〜60℃、洗浄時間が0.5〜10分間であることが好ましい。脱膜工程後、成形品8を十分乾燥させることにより、転写層3が成形品8に転写された金属調成形品9を得ることができる。
[塗装工程]
塗装工程は、得られた金属調成形品9の表面に保護膜を形成する工程であり、この工程により、転写された転写層3を傷や汚染等から保護し、金属調成形品9の表面強度を向上させ、また、金属調成形品9の金属光沢の鏡面性を調整することができる。
保護膜を形成する樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ケイ素系樹脂等を挙げることができる。ウレタン樹脂としては、上述した転写層3の透明バインダー樹脂と同様ものを用いることができる。保護膜は、上記の樹脂を溶剤で希釈した保護膜用塗工液を金属調成形品9の転写層3上に塗工して形成される。塗工方法としては、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り及び浸漬等の塗工法を挙げることができる。保護膜の厚さは、1〜30μmであることが好ましい。
(金属調成形品)
図6は、上述した本発明の水圧転写シートを用いて製造された金属調成形品の一例を示す断面図である。図7は、金属調成形品を平面視したときの鱗片状の金属薄片の状態を示す平面拡大図である。
本発明の水圧転写シート1、11を用いて製造された金属調成形品9は、成形品8の表面に転写層3が転写されたものである。その金属調成形品9を巨視的に見ると、図7に示すように、鱗片状の金属薄片5が成形品表面と平行又は略平行になるように配向し、成形品表面に隙間なく重なっている。
図3を参照して既に説明したように、金属調成形品9を製造するための本発明の水圧転写シートは、鱗片状の金属薄片5の平均厚さTが0.01μm〜0.08μmの範囲内であるので、金属光沢層を含む転写層3が成形品8に転写された際に金属光沢層中で重なり合う金属薄片同士の段差dがその平均厚さTと同程度に小さくなる。この平均厚さTと同程度の段差dは、光の波長(0.38μm〜0.78μm)よりもほぼ一桁小さいので、製造された金属調成形品9は、金属光沢層に照射した光(外光)が乱反射し難くなって良好な金属光沢を有し、鏡面性の高い外観となる。
なお、本発明の水圧転写シートを用いて製造される金属調成形品9は、鱗片状の金属薄片を含む塗料を成形品に直接塗布して製造された金属調成形品よりも良好な金属光沢を有し、鏡面性の高い外観となる。その理由は、水圧転写シート1の転写層3に含まれる鱗片状の金属薄片5は基材シート2との界面に近づくほど密に重なり合っており、こうした転写層3が成形品8に転写されると、金属薄片5が密に重なり合う側の面が金属調成形品9の表面となり、その面が光の乱反射を防いで鏡面となるからである。一方、塗布により金属調成形品を製造する場合においては、インキ中の鱗片状の金属薄片は成形品8に近くなるほど密に重なり合い、視認される側の面に近くなるほど粗に重なり合うからであり、その結果、金属調成形品の視認される側の面の金属薄片は光を乱反射させ易く、金属光沢が劣り鏡面性が低下する。
以下、本発明を実施例と比較例に基づいて更に詳しく説明する。
(実施例1)
鱗片状の金属薄片として、アルミニウム蒸着膜を破砕した平均粒径20μmのアルミニウム箔細片(平均厚さT:0.04μm、)を用いた。この鱗片状の金属薄片の表面粗さは、JIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.01μmであった。この算術平均高さRaは、JIS−B0601−2001に従い、表面粗さ測定機を用いて測定した結果から算出した。なお、以下の基材シートや目止め層の表面粗さも同様の方法で算出した。
透明バインダー樹脂として、ニトロセルロース5質量部とアルキド樹脂1質量部とを用い、この透明バインダー樹脂100質量部中に鱗片状の金属薄片200質量部を超音波分散で練肉して分散させ、これを酢酸エチルとトルエンとの混合溶剤で希釈して金属光沢層用塗工液を調整した。なお、この実施例1では、金属光沢層のみが転写層となるので、金属光沢層用塗工液は、そのまま転写層用塗工液となる。
基材シートとして、けん化率65%のポリビニルアルコール及び澱粉を主成分とする水膨潤性のシート(厚さ:40μm)を用いた。この基材シートの一方の面の表面粗さは、JIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.08μmであった。この基材シートの上記表面粗さを有する面に、転写層用塗工液である金属光沢層用塗工液をグラビア印刷法により印刷し、その後、この塗膜を乾燥させて厚さ3μmの転写層を有する水圧転写シートを作製した。
次に、作製した水圧転写シートの転写層側の面に、活性剤A(メチルカルビトールセロソルブアセテート:80質量部、アルキド樹脂:15質量部、沈降性炭酸バリウム粉末:5質量部)をグラビアロールコート法により塗工した後、この水圧転写シートを、基材側が水面に向くようにしてその水面に浮かべた。
1分間が経過した後に、図8に示す三次元形状のABS樹脂からなる成形品を水圧転写シートの上方から水中に押し入れて、水圧により水圧転写シートを成形品に密着させた。その後、水圧転写シートが密着した成形品を水中から取り出し、40℃の温水シャワーで30秒洗浄した後、清水シャワーで洗浄して、成形品に付着した基材シートを除去した。その後、転写層が転写された成形品を乾燥させて、金属調成形品を製造した。
参考例1
基材シートの算術平均高さRaを0.3μmとした以外は実施例1と同様にして、参考例1の水圧転写シートを作製した。次に、この水圧転写シートを用い、実施例1と同様にして金属調成形品を製造した。
参考例2
基材シートの算術平均高さRaを1μmとした以外は実施例1と同様にして、参考例2の水圧転写シートを作製した。次に、この水圧転写シートを用い、実施例1と同様にして金属調成形品を製造した。
参考例3
基材シートの片面に目止め層を形成し、その目止め層上に転写層を形成した以外は参考例2と同様にして、参考例3の水圧転写シートを作製した。目止め層は、目止め層用塗工液B(水溶性アクリル樹脂:8質量部、カゼイン:120質量部、イソプロピルアルコール(溶剤):適量希釈)を、基材シートの片面にグラビアリバースロールコート法を用いて乾燥時の厚さが5μmとなるように塗工し、塗膜を乾燥させて形成した。目止め層の転写層が形成される側の面の表面粗さは、JIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.2μmであった。次に、この水圧転写シートを用い、実施例1と同様にして金属調成形品を製造した。
(比較例1)
鱗片状の金属薄片に代えて平均粒径14μmで平均厚さ2μmのリーフィングタイプのアルミニウム粉末を使用した以外は実施例1と同様にして、比較例1の水圧転写シートを作製した。次に、この水圧転写シートを用い、実施例1と同様にして金属調成形品を製造した。
(鏡面性の評価)
実施例1、参考例1〜3、及び比較例1で得られた金属調成形品の鏡面性を、目視観察にて比較評価した。その結果を表1に示す。実施例1及び参考例1〜3の水圧転写シートを用いて製造された金属調成形品は、比較例1の水圧転写シートを用いて製造された金属調成形品と比較して、良好な金属光沢を呈した鏡面となっており、粒子感は認められなかった。また、鏡面性について相対比較すると、鏡面性の高い方から、実施例1、参考例3参考例1参考例2の順であった。比較例1の水圧転写シートを用いて製造された金属調成形品は、粒子状(銀粉乃至は銀砂粒を散布した表面のごとき状態)の金属光沢であり、各実施例及び参考例に比べて金属光沢に劣り、鏡面性も明らかに不足していた。
Figure 0004397750
本発明の第1形態に係る水圧転写シートの一例を示す断面図である。 (A)は本発明の水圧転写シートの転写層に含まれる鱗片状の金属薄片の一例を示す模式図であり、(B)はその転写層中での鱗片状の金属薄片の状態を示す模式断面図である。 金属光沢層中で重なり合う金属薄片同士の段差dを説明する概略図である。 本発明の第2形態に係る水圧転写シートの一例を示す断面図である。 本発明の金属調成形品の製造方法を説明する概略図である。 本発明の水圧転写シートを用いて製造された金属調成形品の一例を示す断面図である。 金属調成形品を平面視したときの鱗片状の金属薄片の状態を示す平面拡大図である。 金属調の装飾を施す成形品の形状を説明するための斜視図である。
符号の説明
1、11 水圧転写シート
2 基材シート
3 転写層(金属光沢層)
4 目止め層
5、5’ 鱗片状の金属薄片
6 平坦面
7 透明バインダー樹脂
8 成形品
9 金属調成形品
T 平均厚さ
a 平担面の最長径
b 平担面の最長径に直交する径
W 水面

Claims (3)

  1. 水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート上に金属光沢層を含む転写層が形成されている水圧転写シートであって、
    前記金属光沢層は非水溶性の透明バインダー樹脂100重量部に対して鱗片状の金属薄片が30重量部以上300重量部以下の配合割合で構成されており、当該金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であり当該金属薄片の平坦面の算術平均高さRaも0.01μm〜0.08μmの範囲内であり、
    前記基材シートの前記転写層側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることを特徴とする水圧転写シート。
  2. 水溶性又は水膨潤性の樹脂で形成された基材シート上に、水溶性樹脂からなる目止め層と、金属光沢層を含む転写層とが順に形成されている水圧転写シートであって、
    前記金属光沢層は非水溶性の透明バインダー樹脂100重量部に対して鱗片状の金属薄片が30重量部以上300重量部以下の配合割合で構成されており、当該金属薄片の平均厚さが0.01μm〜0.08μmの範囲内であり当該金属薄片の平坦面の算術平均高さRaも0.01μm〜0.08μmの範囲内であり、
    前記目止め層の前記転写層側の面の表面粗さがJIS−B0601−2001による算術平均高さRaで0.1μm以下であることを特徴とする水圧転写シート。
  3. 請求項1又は2に記載の水圧転写シートを前記基材シート側の面が水面に向くように水面に浮かべた後、当該水圧転写シートの転写層側から水中に成形品を押し入れて当該成形品の表面に前記転写層を転写させることを特徴とする金属調成形品の製造方法。
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