JP4397708B2 - 磁気共鳴力顕微鏡および磁気共鳴力顕微鏡用磁気チップ - Google Patents

磁気共鳴力顕微鏡および磁気共鳴力顕微鏡用磁気チップ Download PDF

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Description

磁気共鳴力顕微鏡(MRFM)、および、MRFMに使用される磁気チップに関する。
磁気共鳴力顕微鏡(MRFM:Magnetic Resonance Force Microscopy)は、核磁気共鳴法を用いた画像処理装置である磁気共鳴イメージング装置(MRI:Magnetic Resonance Imaging)と、試料表面の原子像を観察する原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)の技術を融合させた、原子レベルの空間分解能が期待されるMRI装置である。現在、いくつかのグループがその開発を行なっている開発途上の装置であり、現時点での到達空間分解能は、20nmと言われている。この装置の目的の1つは、単一の遺伝子、単一の蛋白質、単一の生体分子など、極微小試料に対して、その立体構造を画像化し、解析することである。
図1に、MRFMの基本原理を示す。AFMの要素技術は、光ファイバー1、カンチレバー2、試料台3、および図示しないレーザー装置であり、MRIの要素技術は、高周波(RF)コイル4、カンチレバー2の先端に装着された磁気チップ5、および図示しない静磁場発生装置である。尚、図1の例では、カンチレバー2側に磁気チップ5、試料台3側に試料6が取り付けられた構成となっているが、これは、逆に、カンチレバー2側に試料6、試料台3側に磁気チップ5が取り付けられた構成であっても良い。このような構成において、MRIに必須な勾配磁場は、高透磁率磁性材料(永久磁石を含む)で作られた磁気チップ5により、空間均一性のきわめて悪い磁場として与えられる。
MRFMの動作は、次の通りである。MRFMにおける磁気共鳴現象は、外部の静磁場発生装置により与えられた静磁場と、磁気チップ5が発生する勾配磁場との和で定義される試料内静磁場と、RFコイル4により照射される高周波磁場の周波数との一意的関係によって決まる共鳴条件が成立したときに発生する。
共鳴条件が成立していない場合、カンチレバー2は、上記静磁場によって分極された試料の磁化と、磁気チップ5により発生された勾配磁場の積で与えられる磁気力を感じて、磁化と勾配磁場が存在しないときに定義される熱平衡状態の位置から撓んでいる。共鳴条件が成立すると、減少した分極磁化によって磁気力が弱められ、カンチレバー2が熱平衡状態時の位置方向へと戻る。この際に発生する磁気力の変化を磁気共鳴力と呼ぶ。
MRFMにおける測定量は、このカンチレバー振幅変位量であり、光干渉法や光てこ法を用いて変位量を測定する。磁気チップ5を試料6の上で走査することにより、試料6上の各位置における磁気共鳴力強度分布を得ることができる。この磁気共鳴力強度分布を、既知の磁場分布および勾配磁場分布を考慮しながらコンピュータ処理を施すことで、実空間像を再現する。
米国特許第5266896号公報。
特公平7−69280号公報。
日本応用磁気学会誌、第22巻、第1号、19頁(1998)。
Journal of Applied Physics, Vol. 79, p. 1881 (1996)。
このようなMRFM装置では、上述した磁気共鳴力を増加させることが、検出感度の向上に必要である。磁気力(ベクトルF)は、磁化(ベクトルM)と試料位置での磁場(ベクトルH)の内積で表わされるZeemanポテンシャルを、試料位置(ベクトルr)で微分した量で与えられる。例えば、磁気力のβ方向成分は、
Figure 0004397708
(1)
で記述される。ここで、α、βは、直交座標系におけるx、y、zのいずれかを表わす。式(1)から明らかなように、磁気力の強度を増加させるには、一般には、共鳴磁場強度を強くし、試料の磁化を増加させるとともに、磁場勾配∂Hα/∂βの増加を図る必要がある。MRFM測定では、サブミクロンの分解能を要求しているため、従来の技術であるMRI装置に使用されている磁場勾配強度よりも10000倍以上大きな10−3T/μmを超える勾配強度が必要である。
MRI装置の特徴を併せ持つMRFM装置を使った3次元立体画像、もしくは透視画像を得るためには、上記磁気チップが発生する共鳴磁場曲面と試料が交差する条件下で試料ステージを3次元走査し、共鳴磁場曲面の形状と試料形状、ならびに、試料内スピン分布に依存した磁気共鳴力の分布図である“磁気共鳴力マップ”を取得する必要がある。そして、磁気チップによる共鳴磁場分布を考慮しながら、測定された磁気共鳴力マップにコンボリューション演算処理を行ない、実空間における実画像を再現する(非特許文献2)。
従って、限られた試料ステージの走査範囲内で、画像処理に必要とされる磁気共鳴力マップを取得するためには、図2(a)のような、試料がいつまでも共鳴磁場曲面の内部に存在し続けるような状況は避け、図2(b)のように、試料サイズの数倍の走査範囲で試料が共鳴磁場曲面の外部に移動できることが望ましい。よって、この共鳴磁場曲面の形状は、曲率が大きい、より鋭い曲面を持つ共鳴磁場分布である必要がある。
この共鳴磁場曲面の形状は、特に磁気チップの形状に大きく依存し、共鳴磁場分布の曲率が大きい、すなわち、より鋭い曲面を持つ共鳴磁場分布を発生させるためには、磁気チップの先端をより鋭くすることが必要である。しかしながら、現在、それら微小磁気チップの形状を整える確立した技術は、特願2003−349832の技術を除いては存在せず、実験においては、先端が適度に尖った形状の粒子を選別するか、または、粒子をイオンビームによって研磨・成形して、カンチレバーに装着している状況である。従って、磁気チップによって周囲に生じる磁場強度分布を再現性良く供給できる可能性は、極めて少ない。
本発明は、微小永久磁石が周囲に発生する静磁場分布と同等の静磁場分布は、局所的には、大きな磁石の一部を同等量削除すれば得られることに着目し、従来の加工技術で容易に形成でき、局所的に見れば、微小永久磁石が周囲に発生する静磁場分布と同等の静磁場分布を再現性良く与え、かつ、その静磁場曲面が、極めて先鋭化された磁気チップ単体による曲面とほとんど同等の高曲率磁場強度曲面となるような磁気チップを備えたMRFM、および、MRFM用磁気チップを提供することにある。
この目的を達成するため、本発明にかかるMRFMは、
磁気チップによって発生される静磁場内に試料を配置すると共に、試料に高周波磁場を照射することにより、試料に磁気共鳴を起こさせ、その結果、試料と磁気チップとの間に誘起される磁気共鳴力を検出する磁気共鳴力顕微鏡であって、
前記磁気チップとして、表面に凹部を形成した強磁性体製の磁気チップを用い、試料を前記磁気チップの凹部に近接させて配置するようにしたことを特徴としている。
また、試料にRF磁場を照射するRFコイルと、
表面に凹部を設けた強磁性体製の磁気チップと、
該磁気チップを積載する走査台と、
試料を保持すると共に当該試料を前記磁気チップの凹部に近接させて設置可能であり、かつ、前記磁気チップの凹部に近接させて試料を設置したときに、前記RF磁場と前記静磁場とにより試料に誘起される磁気共鳴力を、みずからの撓みとして検出することができるカンチレバーと
を備えたことを特徴としている。
また、前記強磁性体は、永久磁石であることを特徴としている。
また、前記強磁性体は、永久磁石または電磁石で励磁された高透磁率磁性材料であることを特徴としている。
また、前記高透磁率磁性材料は、純鉄であることを特徴としている。
また、前記凹部の形状は、円柱状の小孔であることを特徴としている。
また、本発明にかかるMRFM用磁気チップは、
強磁性体の端面に凹部を設け、該強磁性体が作る磁場中に局所的に磁場歪みを発生させ、局所的に磁場強度曲面の曲率を大きくしたことを特徴としている。
また、前記強磁性体は、永久磁石であることを特徴としている。
また、前記強磁性体は、永久磁石または電磁石で励磁された高透磁率磁性材料であることを特徴としている。
また、前記高透磁率磁性材料は、純鉄であることを特徴としている。
また、前記凹部は、円柱状の小孔であることを特徴としている。
磁気チップによって発生される静磁場内に試料を配置すると共に、試料に高周波磁場を照射することにより、試料に磁気共鳴を起こさせ、その結果、試料と磁気チップとの間に誘起される磁気共鳴力を検出する磁気共鳴力顕微鏡であって、前記磁気チップとして、表面に凹部を形成した強磁性体製の磁気チップを用い、試料を前記磁気チップの凹部に近接させて配置するようにしたので、極めて先鋭化された磁気チップを備えたMRFMと同等の性能を持つMRFMを提供することが可能になった。
また、強磁性体の端面に凹部を設け、強磁性体が作る磁場中に局所的に磁場歪みを発生させ、局所的に磁場強度曲面の曲率を大きくしたので、加工の極めて困難な先鋭な強磁性体針を用いることなく、従来の加工技術で容易に形成でき、局所的に見れば、微小永久磁石が周囲に発生する静磁場分布と同等の静磁場分布を再現性良く与え、かつ、静磁場曲面が、極めて先鋭化された磁気チップ単体による曲面とほとんど同等の高曲率磁場強度曲面となるようなMRFM用磁気チップを提供することが可能になった。
本発明にかかるMRFM用磁気チップを含む磁気共鳴力顕微鏡は、カンチレバーに装着保持された試料に対し、ステージに装着保持した、本発明にかかる特殊な磁気チップを走査し、磁気共鳴力マップを測定することを前提としている。
まず始めに、円柱状の永久磁石を用意する。円柱状磁石の上端面の表面荒さは、今から穿とうとする小孔の直径よりも平坦であることが望ましい。この円柱状磁石の中心軸に沿って、円柱状の小孔を穿つ。以下、計算例を参考にしながら、小孔の存在が局所磁場分布に及ぼす効果を説明する。
尚、数値計算においては、表面荒さを完全な平坦と仮定した。また、磁束密度B=0.77T(単位:テスラ)を用いて、円柱対称軸方向と平行に磁化を分極させた。また、磁石周囲に発生する分極磁化方向Zの静磁場強度を計算するに当たっては、磁石内部を微小片に分割後、それらを磁気双極子と考え、指定した空間位置で、各磁気双極子が発生する双極子磁場強度を加算することにより、静磁場強度を評価した。更に、磁石表面に形成した小孔によって、その周囲の静磁場分布が変更を受けても、小孔周辺の磁気モーメントの方向・強度は、小孔を空ける前の磁気モーメントの方向・強度に等しいと仮定した。この仮定は、やや理想化され過ぎているが、本質は変わらない。
図3は、直径2mm、厚さ1mmの永久磁石(図中、四角にて表示。紙面上向きに磁化が分極していると仮定した)が周囲に発生する静磁場分布を等高線表示したものである。図の濃淡が薄くなるにつれて、磁場強度が強くなることを示している。磁場強度がゼロから±0.1Tの領域では、等高線は±0.01T間隔で、また、磁場強度がそれ以上の領域では、等高線は±0.1T間隔で描かれている。縦軸と横軸の座標単位はm(メートル)である。
一方、直径0.1mm、厚さ0.1mmの微小円柱磁石が周囲に発生する磁場強度分布を図4に示す。表示範囲は、図3の座標範囲の1/10になっている。図3を計算したときと同様に、紙面上向きに磁化を分極させた。また、磁場強度がゼロから±0.1Tの領域では、等高線は±0.01T間隔で、また、磁場強度がそれ以上の領域では、等高線は±0.1T間隔で描かれている。縦軸と横軸の座標単位はm(メートル)である。
図5は、図3で表示した直径2mm、厚さ1mmの磁石表面から、中心軸に沿って、図4で示した直径0.1mm、厚さ0.1mmの微小円柱磁石のサイズに相当する磁石を、表面から取り除いたときの静磁場強度分布である。図3と同じ表示範囲で見る限り、磁場強度分布に、何ら変化は見られない。しかし、微小円柱磁石が取り除かれた部位の近傍の磁場強度分布は、大きな変更を受けている。
図6は、図5の磁石において、微小円柱磁石が取り除かれた部位の近傍の磁場強度(単位:T)の分布を、拡大して表示したものである。また、図7は、微小円柱磁石が取り除かれた部位の近傍の磁場強度分布を、磁石の円柱の中心軸方向に表示した図である。図の中心から左側が磁石の内部方向、図の中心から右側が磁石の外部方向である。微小円柱磁石を取り除く前と、取り除いた後とを比較するために、微小円柱磁石を取り除く前の静磁場強度分布、微小円柱磁石を取り除いた後の静磁場強度分布、取り除かれる微小円柱磁石自身の発生する静磁場強度分布を、合わせて表示している。
図7を見ると明らかなように、微小円柱磁石を取り除く前に較べ、微小円柱磁石を取り除いた後の静磁場強度分布は、微小円柱磁石を取り除くことによって穿たれた小孔の近傍で、大きく変更されている。更に、小孔を空けられた磁石近傍の静磁場強度分布は、同じ方向に分極した直径0.1mm、厚さ0.1mmの微小円柱磁石が発生する静磁場強度分布と較べ、オフセット値を境に、正負を逆転させたような形状となっている。また、小孔を空けた磁石表面から0.2mm離れたあたりから、静磁場強度分布の値が、微小円柱磁石を取り除く前の静磁場強度分布の値に漸近していく様子も分かる。
図8は、図5の磁石において、微小円柱磁石が取り除かれた部位の近傍の磁場勾配分布を、拡大して表示したものである。また、図9は、微小円柱磁石が取り除かれた部位の近傍の磁場勾配(単位:T/m)の分布を、磁石の円柱の中心軸方向に表示した図である。図の中心から左側が磁石の内部方向、図の中心から右側が磁石の外部方向である。微小円柱磁石を取り除く前と、取り除いた後とを比較するために、微小円柱磁石を取り除く前の磁場勾配、微小円柱磁石を取り除いた後の磁場勾配、取り除かれる微小円柱磁石自身の発生する磁場勾配を、合わせて表示している。
図9を見ると明らかなように、微小円柱磁石を取り除く前に較べ、微小円柱磁石を取り除いた後の磁場勾配分布は、微小円柱磁石を取り除くことによって穿たれた小孔の近傍で、大きく変更されている。更に、小孔を空けられた磁石近傍の磁場勾配分布は、同じ方向に分極した直径0.1mm、厚さ0.1mmの微小円柱磁石が発生する磁場勾配分布と較べ、元の円柱状永久磁石が発生する磁場勾配の値を境に、正負を逆転させたような形状となっている。また、小孔を空けた磁石表面から0.2mm離れたあたりから、磁場勾配分布の値が、微小円柱磁石を取り除く前の磁場勾配分布の値に漸近していくようすも分かる。
以下、図10〜図12は、それぞれ円柱状永久磁石(直径2mm、厚さ1mm)に穿つ小孔の寸法を変えたときの、小孔近傍の静磁場強度分布と磁場勾配分布を等高線表示したものである。図10は、小孔の寸法が、直径0.1mm、深さ0.5mmの例、図11は、小孔の寸法が、直径0.1mm、深さ0.03mmの例、図12は、小孔の寸法が、直径0.3mm、深さ0.3mmの例である。
これらの図においても、微小円柱磁石を取り除く前に較べ、微小円柱磁石を取り除いた後の静磁場強度分布と磁場勾配分布は、微小円柱磁石を取り除くことによって穿たれた小孔の近傍で、大きく変更されていて、同じ方向に分極した微小円柱磁石が発生する静磁場強度と磁場勾配分布を、元の円柱状永久磁石が発生する静磁場強度の値と磁場勾配の値を境に、正負を逆転させたような形状となっている。また、小孔を空けた磁石表面から0.1〜0.3mm離れたあたりから、静磁場強度分布と磁場勾配分布の値が、微小円柱磁石を取り除く前の静磁場強度と磁場勾配分布の値に漸近していくようすも共通している。
図13は、本発明にかかる磁気チップを供えたMRFMの一実施例である。基本構成は、図1とほぼ同じであるが、図の繁雑化を避けるために、必須の構成要素である、カンチレバー2の撓みを検出するための光ファイバーとレーザー装置、および、試料6にRF磁場を照射するRFコイルは、図から省略して描いてある。
図中6は試料である。試料6は、カンチレバー2の先端に取り付けられて、本発明にかかる磁気チップ、すなわち、円柱状小孔を穿った孔空き永久磁石7の小孔の開口部近傍に対向配置させられている。孔空き永久磁石7の形状には、円柱状(左図)、四角柱状(右図)など、さまざまな形状が考えられる。また、孔は、有底であっても良いし、あるいは、永久磁石7の底面まで貫通していても良い。孔空き永久磁石7は、走査台8の上に載せられていて、カンチレバー2に取り付けられた試料6に対し、x、y、zの3方向に、自由に走査させられるようになっている。
永久磁石7の表面に空けられた小孔の直径は、永久磁石の上端面の表面積よりも充分小さな大きさとする。また、永久磁石の上端面の表面荒さは、孔の寸法よりも充分平坦であることが必要である。これらの条件は、永久磁石の外部形状で決定される静磁場強度分布の歪みによって、孔の形状によって決定される孔の周囲の静磁場強度分布が影響されず、孔の形状によって決定される対称性を持つ局所的静磁場強度分布を得るためである。
孔の深さは、孔の周囲に発生する静磁場強度分布が、所望の曲面を持つ程度に設定される。例えば、孔の直径と同程度、または、より深い方が、孔による静磁場強度分布の曲率は顕著になる。すなわち、孔の存在による静磁場強度分布の影響は、深い孔の方が、永久磁石表面よりも遠方まで届く。また、磁場勾配強度も、孔の深い方が大きい。
一方、浅い孔では、その影響が小さく、静磁場強度の曲率、および、磁場勾配強度も小さい。また、浅い孔によって形成された静磁場強度分布は、深い孔の場合よりも、より孔の開口近傍で、孔を持たない元の永久磁石の静磁場強度分布に漸近する。
尚、図13の例では、カンチレバー2側に試料6、走査台8側に永久磁石7が取り付けられた構成となっているが、これは、重たい永久磁石7をカンチレバー2側に取り付けると、永久磁石7の自重により、カンチレバー2の応答速度が鈍くなってしまうので、それを回避するのが目的である。
図14は、本発明にかかる磁気チップを供えたMRFMの別の実施例である。基本構成は、図1とほぼ同じであるが、図の繁雑化を避けるために、必須の構成要素である、カンチレバー2の撓みを検出するための光ファイバーとレーザー装置、および、試料6にRF磁場を照射するRFコイルは、図から省略して描いてある。
図中6は試料である。試料6は、カンチレバー2の先端に取り付けられて、本発明にかかる別の磁気チップ、すなわち、円柱状小孔を穿った孔空き純鉄9の小孔の開口部近傍に対向配置させられている。孔空き純鉄9の形状には、円柱状(左図)、四角柱状(右図)など、さまざまな形状が考えられる。また、孔は、有底であっても良いし、あるいは、純鉄9の底面まで貫通していても良い。孔空き純鉄9は、永久磁石10を介して、走査台8の上に載せられていて、カンチレバー2に取り付けられた試料6に対し、x、y、zの3方向に、自由に走査させられるようになっている。
尚、図14に示すように、純鉄9は、純鉄に限定されるものではなく、ニッケル、コバルトなど、鉄属元素、または、それらを含む合金に代表されるような、高帯磁率磁性材料であれば、何でも良い。この孔空き高帯磁率磁性材料は、下部に配置された永久磁石10により、分極させる。尚、この励磁源は、永久磁石10に限定されるものではなく、例えば、電磁石のようなものを用いても良い。従って、孔空き純鉄9は、励磁源からの磁場を所望の形状に整える、一種のポールピースとしての役割を果たすものである。
純鉄9の表面に空けられた小孔の直径は、純鉄の上端面の表面積よりも充分小さな大きさとする。また、純鉄の上端面の表面荒さは、孔の寸法よりも充分平坦であることが必要である。これらの条件は、純鉄の外部形状で決定される静磁場強度分布の歪みによって、孔の形状によって決定される孔の周囲の静磁場強度分布が影響されず、孔の形状によって決定される対称性を持つ局所的静磁場強度分布を得るためである。
孔の深さは、孔の周囲に発生する静磁場強度分布が、所望の曲面を持つ程度に設定される。例えば、孔の直径と同程度、または、より深い方が、孔による静磁場強度分布の曲率は顕著になる。すなわち、孔の存在による静磁場強度分布の影響は、深い孔の方が、永久磁石表面よりも遠方まで届く。また、磁場勾配強度も、孔の深い方が大きい。
一方、浅い孔では、その影響が小さく、静磁場強度の曲率、および、磁場勾配強度も小さい。また、浅い孔によって形成された静磁場強度分布は、深い孔の場合よりも、より孔の開口近傍で、孔を持たない元の永久磁石の静磁場強度分布に漸近する。
尚、図13の例では、カンチレバー2側に試料6、走査台8側に純鉄9と永久磁石10が取り付けられた構成となっているが、これは、重たい純鉄9と永久磁石10をカンチレバー2側に取り付けると、純鉄9と永久磁石10の自重により、カンチレバー2の応答速度が鈍くなってしまうので、それを回避するのが目的である。
図15は、上記実施例2に示されている方法を用いてMRFM測定を行ない、試料DPPH(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl、サイズ:20×20×10μm3)に対し、観測された磁気共鳴力マップである。測定には、非調和変調法(例えば、Rev. Sci. Instrum., Vol. 66, p. 2853 (1995)を参照)を用いた。磁気チップの磁場発生源には、直径1mm、厚さ1mmのサマリウム・コバルト永久磁石を用い、その表面に、直径0.2mm、深さ0.2mmの孔を空けた直径1mm、厚さ1mmの純鉄を装着し、分極させた。図の中で、2つの円弧状の帯で表わされた強度分布の中間位置が、714ガウス(0.0714T)の磁場強度に相当する。
MRFM装置で使用可能な磁気チップに広く利用できる。
MRFM装置の基本原理を示す図である。 従来のMRFM装置の磁気チップ近傍を拡大した図である。 円柱状永久磁石が発生する静磁場強度分布の一計算例を示す図である。 微小磁石が発生する静磁場強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に小孔を穿ったときの静磁場強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の静磁場強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の静磁場強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の磁場勾配強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の磁場勾配強度分布の一計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の静磁場強度分布と磁場勾配強度分布の別の計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の静磁場強度分布と磁場勾配強度分布の別の計算例を示す図である。 円柱状永久磁石の表面に穿たれた小孔近傍の静磁場強度分布と磁場勾配強度分布の別の計算例を示す図である。 本発明にかかるMRFM用磁気チップの一実施例を示す図である。 本発明にかかるMRFM用磁気チップの別の実施例を示す図である。 本発明にかかるMRFM用磁気チップを用いた一実験結果を示す図である。
符号の説明
1:光ファイバー、2:カンチレバー、3:試料台、4:高周波コイル、5:磁気チップ、6:試料、7:孔空き永久磁石、8:走査台、9:純鉄、10:永久磁石

Claims (11)

  1. 磁気チップによって発生される静磁場内に試料を配置すると共に、試料に高周波磁場を照射することにより、試料に磁気共鳴を起こさせ、その結果、試料と磁気チップとの間に誘起される磁気共鳴力を検出する磁気共鳴力顕微鏡であって、
    前記磁気チップとして、表面に凹部を形成した強磁性体製の磁気チップを用い、試料を前記磁気チップの凹部に近接させて配置するようにしたことを特徴とする磁気共鳴力顕微鏡。
  2. 試料にRF磁場を照射するRFコイルと、
    表面に凹部を設けた強磁性体製の磁気チップと、
    該磁気チップを積載する走査台と、
    試料を保持すると共に当該試料を前記磁気チップの凹部に近接させて設置可能であり、かつ、前記磁気チップの凹部に近接させて試料を設置したときに、前記RF磁場と前記静磁場とにより試料に誘起される磁気共鳴力を、みずからの撓みとして検出することができるカンチレバーと
    を備えた磁気共鳴力顕微鏡。
  3. 前記強磁性体は、永久磁石であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気共鳴力顕微鏡。
  4. 前記強磁性体は、永久磁石または電磁石で励磁された高透磁率磁性材料であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気共鳴力顕微鏡。
  5. 前記高透磁率磁性材料は、純鉄であることを特徴とする請求項4記載の磁気共鳴力顕微鏡。
  6. 前記凹部の形状は、円柱状の小孔であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気共鳴力顕微鏡。
  7. 強磁性体の端面に凹部を設け、該強磁性体が作る磁場中に局所的に磁場歪みを発生させ、局所的に磁場強度曲面の曲率を大きくしたことを特徴とする磁気共鳴力顕微鏡用磁気チップ。
  8. 前記強磁性体は、永久磁石であることを特徴とする請求項7記載の磁気共鳴力顕微鏡用磁気チップ。
  9. 前記強磁性体は、永久磁石または電磁石で励磁された高透磁率磁性材料であることを特徴とする請求項7記載の磁気共鳴力顕微鏡用磁気チップ。
  10. 前記高透磁率磁性材料は、純鉄であることを特徴とする請求項9記載の磁気チップ。
  11. 前記凹部の形状は、円柱状の小孔であることを特徴とする請求項7記載の磁気チップ。
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