JP4397540B2 - 癌の骨転移治療法選択のための画像診断用薬剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨シンチグラフィによる癌の溶骨型又は混合型骨転移の検出と治療法の選択を目的とした99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸の使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌の骨転移の有無は予後を左右する大きな要因であり、原発巣の治療方針にも影響を与える。また、骨転移及び随伴症状に対する治療の選択肢も広がりつつあるので、骨転移の有無や広がりの診断は治療方針決定の中で重要な位置を占める。骨転移は頻度の高低を問わなければあらゆる癌に見られるが、一般に骨転移の頻度が高いとされる乳癌、前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、腎癌などでは他の癌に比べ骨転移診断の重要性が高いと言えるであろう。
【0003】
一口に骨転移といっても病理学的には造骨型、溶骨型、両者の混在する混合型、造骨も溶骨も見ない骨梁間型の4類型に分類され、骨転移の頻度が高い癌のうち、前立腺癌は造骨型、腎癌、甲状腺癌は溶骨型、肺癌は溶骨型か混合型、乳癌は混合型の比率が高いと言われている。先の4類型のうち、破骨細胞の出現を条件とする骨吸収が特徴的な溶骨型は骨破壊に至りやすく、その分骨転移による疼痛出現も他型に比べ有意に高いといわれている。また、乳癌では骨転移の見られた患者のうち造骨型の患者の生存期間が最も長く、混合型、溶骨型の順に生存日数が短くなると言われており、転移のタイプの把握も重要と考えられる。
【0004】
骨シンチグラフィは、癌患者の骨転移の有無を検索するために一般的に使用されている。通常は、99mTc−MDP(methylene diphosphonate)、99mTc−EHDP(ethane hydroxy−diphosphonate)、99mTc−HMDP(hydroxymethylene diphosphonate)などの99mTc標識ビスフォスフォネート(99mTc−BP)を画像診断剤として静注し、シンチグラムを撮像する。かかる99mTc−BPの骨集積については、その機序は明確でないが、造骨部位への高い集積が認められており、造骨型の骨転移検出には優れている。しかしながら、99mTc−BPは、溶骨型骨転移部位を陽性描出しないと言われており、この点が問題である。
【0005】
これに対し、99mTc−ジメルカプトコハク酸(99mTc−DMS)は、3価の99mTc−DMSが腎臓の画像診断剤として良く知られている一方で、5価の99mTc(V)−DMSについては、甲状腺癌(MTC)、骨肉腫、各種軟部組織の良性及び悪性腫瘍などの腫瘍部位へ集積することが報告されており、特開昭56−7725号公報では、99mTc(V)−DMSを腫瘍スキャニング剤として用いることが提案されている。また、99mTc(V)−DMSは、各種癌に起因する骨転移部位を陽性描出することも報告されている。
【0006】
このように、99mTc(V)−DMSは、癌集積性と共に骨集積性を持つ多核錯体であり、癌集積性についてはpH感受性の関与が推測されているが、骨集積については溶骨性転移部位へ集積しているであろうとの臨床報告があるものの、その集積機序は現在のところ不明である。
【0007】
ところで、腫瘍の骨転移に伴う骨破壊は、腫瘍細胞からの蛋白分解酵素による直接的な破壊と活性化された破骨細胞を介した破壊によると考えられている。近年、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、アレンドロネートなどのビスフォスフォネート化合物が、骨吸収を抑制することが明らかとなり、骨粗鬆症や腫瘍骨転移などに伴う骨破壊の防止に有効とされている。この骨吸収抑制作用の機序は十分に解明されているわけではないが、ビスフォスフォネート化合物が破骨細胞に直接又は間接的に作用し、破骨細胞を不活性化又は減少させた結果であると言われている。したがって、破骨細胞に特異的に取り込まれる化合物を利用した診断法が確立されれば、近年開発されているビスフォスフォネート化合物など破骨細胞を標的とする治療法の適応となる患者の的確な選択が可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の如き状況を鑑み、破骨細胞に特異的に取り込まれる化合物により癌の溶骨型又は混合型骨転移の的確な画像診断を可能にし、さらにそれに基づく治療法の選択を可能にすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の、目的を達成するために、発明者らは、99mTc(V)−DMSの骨転移部位への集積機序について鋭意研究した結果、従来画像診断剤として用いられている99mTc−BPが骨芽細胞に多く取り込まれる一方で破骨細胞にはほとんど取り込まれないのに対し、(1)99mTc(V)−DMSは99mTc−BPよりも骨芽細胞への取り込みが低い一方で特に大量に破骨細胞に取り込まれること、(2)この99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込み量は低pH下において著しく増大すること、(3)上記(2)の現象が酸性環境下における破骨細胞機能の活性化に関与していると考えられること、(4)99mTc(V)−DMSは破骨細胞への取り込みにおいてリン酸と同様の挙動を取り、破骨細胞の無機リン酸輸送に関係するNa+依存性リン酸トランスポータを介して破骨細胞に取り込まれること、(5)99mTc(V)−DMSは生体内においても破骨細胞の分布に一致した分布をすることを見出し、99mTc(V)−DMSが骨芽細胞よりも破骨細胞に優先的に取り込まれることについての確証を得るに至り、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明によれば、99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸を有効成分として含有する癌の骨転移治療法選択のための画像診断用薬剤が提供される。癌の骨転移には、破骨細胞の局在と活性亢進が見られる溶骨型又は混合型の骨転移と破骨細胞の寄与がない又は低いと考えられている造骨型又は骨梁間型の骨転移とがある。99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸は破骨細胞に特異性が高いので、溶骨型又は混合型の骨転移が正確に鑑別されるようになり、破骨細胞を標的とする治療法の適用可否を決定できる。
【0011】
破骨細胞を標的とする治療法としては、破骨細胞に直接又は間接に作用して骨吸収を抑制する又は骨疼痛を軽減・除去するなどの治療効果が期待できるものであれば種類は問わないが、ビスフォスフォネート化合物による治療が代表例として挙げられる。
【0012】
ビスフォスフォネート化合物とはP−C−P骨格を有するジェミナルビスフォスフォネートを指すが、治療薬としてはエチドロネート、クロドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、オルパドロネート、ゾレドロネート、チルドロネート、ネリドロネート、リセドロネート、YH592、EB−1053など多くのものが市販ないし臨床開発の段階にある。
【0013】
これ以外に、骨親和性のある89SrCl2などを静脈内投与し癌骨転移部位を生体内照射することにより骨転移に伴う疼痛を効率的に除去する治療も行われている。89SrCl2は造骨型の骨転移部位への集積性が高いが、同様の目的で臨床応用が試みられている186Re又は188Re標識ジメルカプトコハク酸は破骨細胞の局在する溶骨型又は混合型の骨転移への集積性が高いと予測される。これらの骨疼痛除去製剤の選択にあたっても99mTc(V)−DMSを用いた画像診断は有用である。
【0014】
本発明の他の局面によれば、99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸を有効成分として含有する画像診断用薬剤を患者に投与してシンチグラムを撮像することからなる破骨細胞の局在性診断方法が提供される。
【0015】
破骨細胞の局在を精査する診断は、破骨細胞による骨吸収が亢進する疾患が対象となり得るが、骨粗鬆症や溶骨型又は混合型の癌骨転移が代表的な対象疾患となる。
【0016】
治療法選択の場合においても、局在性診断の場合においても、99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸を有効成分として含有する画像診断用薬剤を単独で用いても目的は達せられるが、99mTc−BPを含有する診断剤と併用して破骨細胞の関与をより正確に評価してもよい。
【0017】
本発明で用いる99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸は、ジメルカプトコハク酸と塩化第一スズなどの還元剤を含み、炭酸水素ナトリウム緩衝液などでアルカリ性に調整した溶液に、99mTc過テクネチウム酸溶液を混合することにより得られる。例えば、Kobayashi H et al. Eur J Nuc Med 22: 559−562 (1995)に開示されているように市販の腎シンチグラフィー製剤(99mTc(III)−DMS)調整用キットに炭酸水素ナトリウム緩衝液を加えてアルカリ性に調整した後99mTc過テクネチウム酸溶液を混合することにより容易に製造することができる。この時、少量の酸素を作用させ99mTc(III)−DMS及び過剰の第一スズを酸化することにより放射化学的純度を向上させることが可能である。しかしながら、医薬の調製は本来専用のキットでなされるべきであり、この目的でYomodaI et al. 核医学 24: 77−82 (1987)に開示されている99mTc(V)−DMS専用の標識用キットがある。このキットはジメルカプトコハク酸と塩化第一スズなどを凍結乾燥された状態でバイアル中に封入しており、これに少量の炭酸水素ナトリウム緩衝液を混合した99mTc過テクネチウム酸溶液を添加することによって99mTc(V)−DMSを調製できる。
【0018】
このようにして調製された99mTc(V)−DMS製剤を通常は静脈内に100MBqから1500MBq、好ましくは200MBqから1000MBq、より好ましくは350MBqから750MBq投与する。投与量は患者体重等を勘案して適宜増減される。
【0019】
投与後30分から5時間、好ましくは1時間から4時間、より好ましくは2時間から3時間の間に全身の前面及び後面像又は全身の分割像、必要に応じて特定部位のスポット像や断層像(SPECT像)などのシンチグラムを撮像する。こうして得られたシンチグラムに基づき目的とする診断と治療法の選択を行う。
【0020】
【発明の効果】
本発明により活性な破骨細胞の有無や局在部位が特定可能となり、破骨細胞を標的とする治療法の適用可否を確実に決定できるようになる。これにより無駄な治療を減ずることが可能となり、医療経済上のメリットも大である。また、患者にとっても有効な治療法を選択できる確率が上がる一方で、効かない治療を継続することによって有効な治療を受ける機会を逸するリスクを低減できる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0022】
実施例1
99m Tc(V)−DMSの調製
ジメルカプトコハク酸1.36mgを含む水溶液にテクネチウムジェネレータから溶出した99mTc過テクネチウム酸溶液(18.5〜370MBq)を加え、さらに7%炭酸水素ナトリウム溶液0.285mLを加えて全液量を2.5mLとした後、0.1Mの塩酸溶液で調製した0.01Mの塩化第一スズ溶液0.02mLを加えて15分間室温放置した。一連の操作は全て窒素ガス雰囲気下で行った。こうして得た99mTc(V)−DMSの放射化学的純度はn−ブタノール・酢酸・水混液(3:2:3)又はアセトンを展開溶媒としシリカゲル薄層板を用いる薄層クロマトグラフ法により測定した。放射化学的純度は93〜95%であった。
【0023】
なお、以下の実験で比較に用いた99mTc−HMDPは市販の標識キットにテクネチウムジェネレータから溶出した99mTc過テクネチウム酸溶液を加えることにより調製した。
【0024】
実施例2
99m Tc(V)−DMSの破骨細胞、骨芽細胞への取り込み
細胞培養 骨芽細胞は、高橋らの方法(Takahashi et al. Endocrinology 123: 2600−2602 (1988))に従い、マウス新生仔頭頂骨より酵素による段階消化を行うことにより単離し、α−MEM(10%牛胎児血清)で6〜8日間培養したものを実験に用いた。また、破骨細胞は、高橋らの方法(Takahashi et al. Endocrinology 122: 1373−1382 (1988))に従い、コラーゲンコーティングしたディッシュ上にて骨芽細胞様細胞と骨髄細胞を6〜8日間、α−MEM(10%牛胎児血清、10−8MビタミンD3、pH6.2)を用いて共存培養することにより得た。破骨細胞は酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ染色により同定した。
【0025】
細胞への取り込み実験 骨芽細胞、もしくは共存培養により得られた破骨細胞を35%Percollを用いて分離し、3時間37℃、5%CO2/95%Air条件下でα−MEM(10%牛胎児血清)を用いてインキュベーションしたものを、pH7.4のインキュベーションバッファー(10mM HEPES, 5mM glucose, 150mM NaCl, 5mM KCl, 1.8mM MgSO4, 1mM CaCl2)で3回洗浄し、さらに同バッファーで37℃、30分間プレインキュベーションした。その後、99mTc(V)−DMSを129.5kBq/mLの濃度で含むインキュベーションバッファーを浸透させ、5分、10分、30分及び60分後に氷冷したインキュベーションバッファーで3回洗浄し、0.2N NaOHで細胞を融解して細胞内に取り込まれた放射能をガンマカウンターで測定した。放射能測定後、細胞融解液に含まれる蛋白量をBCA Protein Assay Kit(Pierce社製)を用いて測定し、単位蛋白質量あたりの99mTc(V)−DMS取り込み量(%dose/mg protein)を求めた。99mTc−HMDPについても同様の実験を行い、比較した。結果を図1及び図2に示した。
【0026】
図1と図2の対比から、99mTc(V)−DMSは99mTc−HMDPよりも骨芽細胞への取り込みが低い(図1)一方で、特に大量に破骨細胞に取り込まれる(図2)ことがわかる。
【0027】
実施例3
99m Tc(V)−DMSの破骨細胞、骨芽細胞への取り込みに対するpHの影響
実施例2に示した方法において、インキュベーションバッファーのpHを6.2、6.6、7.0、7.4、7.8、8.2とし、99mTc(V)−DMS取り込みのインキュベーション時間を10分間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞、骨芽細胞への取り込みに対するpHの影響を検討した。99mTc−HMDPについても同様の実験を行い、比較した。結果を図3及び図4に示した。
【0028】
図3と図4の対比から、骨芽細胞への取り込み量については何れのpHにおいても99mTc(V)−DMSと99mTc−HMDPの間に有意差は認められない(図3)が、99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込み量は低pH下において著しく増大する(図4)ことがわかる。
【0029】
実施例4
99m Tc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対する細胞外pHの影響
実施例2に示した方法において、プレインキュベーション(pre−incubation)にpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMSを添加するバッファーにはpH6.2のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMS取り込み(uptake)のインキュベーション時間を10分間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みを測定した。
【0030】
実施例3で得られた、プレインキュベーション及び99mTc(V)−DMS取り込み時のpHが共に6.2である場合、7.4である場合と比較し、取り込みに対する外部pH(pHe)の影響を検討した。結果を図5に示した。
【0031】
図5から、破骨細胞においてプレインキュベーション、取り込みともpH6.2のバッファで行った場合、99mTc(V)−DMSの取り込みが上昇することがわかる。さらに、取り込みが上昇するためにはある程度の時間破骨細胞が酸性環境に置かれることも必要であることがわかる。一般に破骨細胞は酸性環境において活性化することが報告されている(Tamura T et al. JBone Miner Res 8: 953−960 (1993))ことから、低pHにおける取り込みの増加には、破骨細胞の活性化が関与していると考えられる。
【0032】
実施例5
99m Tc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対するナトリウムイオン依存性リン酸トランスポータの関与
実施例2に示した方法において、プレインキュベーションにpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMSを添加するバッファーにはリン酸濃度([Pi])を0mM、0.05mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM又は5.0mMに調節したpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMS取り込みのインキュベーション時間を5分間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みを測定した。
【0033】
また、99mTc(V)−DMSを添加するバッファーにナトリウムイオン依存性リン酸トランスポーター阻害剤であるphosphonoformic acid(PFA)を1mM又は5mM含むpH7.4のインキュベーションバッファーを用いて同様の測定を行った。結果を図6及び図7に示した。
【0034】
さらに、99mTc(V)−DMSを添加するバッファーにはナトリウムイオン濃度([Na+])を0.1mMから150mMに調節したpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMS取り込みのインキュベーション時間を30秒間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みを測定した。結果を図8に示した。
【0035】
実施例6
99m Tc(V)−DMSの破骨細胞への取り込み;K 2 H 32 PO 4 との比較pHの影響 実施例2に示した方法において、インキュベーションバッファーのpHを6.2、6.6、7.0、7.4、7.8、8.2とし、99mTc(V)−DMS取り込みのインキュベーション時間を30秒間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対するpHの影響を検討した。K2H32PO4についても同様の実験を行い、99mTc(V)−DMSとK2H32PO4の挙動を比較した。結果を図9に示した。
【0036】
陽イオンの影響 実施例2に示した方法において、プレインキュベーションにpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMSを添加するバッファーにはナトリウムイオン(Na+)150mM、カリウムイオン(K+)150mM又はコリン(Choline)150mM含むpH7.4のインキュベーションバッファーを用い、99mTc(V)−DMS取り込みのインキュベーション時間を30秒間として99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みを測定した。
【0037】
K2H32PO4についても同様の実験を行い、99mTc(V)−DMSと
K2H32PO4の挙動を比較した。結果を図10に示した。
【0038】
なお、図10においては、99mTc(V)−DMS、ナトリウムイオン150mMの結果を対照として他の結果を相対値で表示した。
【0039】
図6〜10から、99mTc(V)−DMSは破骨細胞への取り込みにおいてリン酸と同様の挙動を取り、破骨細胞の無機リン酸輸送に関係するNa+依存性リン酸トランスポータを介して破骨細胞に取り込まれることが示唆された。
【0040】
実施例7
186 Re(V)−DMSの破骨細胞への取り込み;
99mTcは半減期が6時間でかつガンマ線放出核種であるためオートラジオグラフィには不向きである。この点を考慮し、Tcの同属元素であるReの放射性同位体を用いて生体内における99mTc(V)−DMSの破骨細胞への集積性を評価した。
【0041】
Horiuchiらの方法(Nucl Med Biol 26: 771−779(1999))に従い調製した186Re(V)−DMSをWistar系雄性ラットに1匹あたり370kBq投与し、3時間後に屠殺した。膝関節を摘出した後、厚さ30μmの標本を作製しオートラジオグラフィに供した。さらに同部位から厚さ20μmの標本を作製し、破骨細胞マーカーの酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ又は骨芽細胞マーカーのアルカリフォスファターゼを染色により検出した。オートラジオグラフィと染色の結果を比較し、99mTc(V)−DMSの破骨細胞への集積性を評価した。結果を図11〜図13に示した。
【0042】
図11〜図13から、186Re(V)−DMSの分布(図11)は破骨細胞の分布(図12)と良く一致することがわかり、99mTc(V)−DMSの破骨細胞への集積性が特異的であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 99mTc(V)−DMS(▲)と99mTc−HMDP(◆)の骨芽細胞への取り込み量を経時的に示すグラフ。
【図2】 99mTc(V)−DMS(▲)と99mTc−HMDP(◆)の破骨細胞への取り込み量を経時的に示すグラフ。
【図3】 99mTc(V)−DMS(▲)と99mTc−HMDP(◆)の骨芽細胞への取り込み量とpHとの関係を示すグラフ。
【図4】 99mTc(V)−DMS(▲)と99mTc−HMDP(◆)の破骨細胞への取り込み量とpHとの関係を示すグラフ。
【図5】 99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対する細胞外pHの影響を示すグラフ。
【図6】 99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対するリン酸濃度の影響を示すグラフ。
【図7】 99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対するナトリウムイオン依存性リン酸トランスポーター阻害剤の影響を示すグラフ。
【図8】 99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対するナトリウムイオン濃度の影響を示すグラフ。
【図9】 99mTc(V)−DMS(●)とK2H32PO4(○)の破骨細胞への取り込み量とpHとの関係を示すグラフ。
【図10】 99mTc(V)−DMSの破骨細胞への取り込みに対する陽イオンの影響を示すグラフ。
【図11】 実施例7において186Re(V)−DMSを投与したラットから得られた標本(膝関節)のオートラジオグラフィ写真(生物の形態)。
【図12】 実施例7において186Re(V)−DMSを投与したラットから得られた標本(膝関節)の酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ染色写真(生物の形態)。
【図13】 実施例7において186Re(V)−DMSを投与したラットから得られた標本(膝関節)のアルカリフォスファターゼ染色写真(生物の形態)。
Claims (2)
- 99mTc(V)−ジメルカプトコハク酸を有効成分として含有する、癌の溶骨型又は混合型の骨転移を造骨型又は骨梁間型の骨転移と鑑別して診断するための画像診断用薬剤。
- 99m Tc(V)−ジメルカプトコハク酸を有効成分として含有する、破骨細胞を骨芽細胞と鑑別して撮像するための画像診断用薬剤であって、 99mTc−BPを含有する診断剤と併用して、骨芽細胞の撮像と対比できるようにした、画像診断用薬剤。
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