JP4392275B2 - 更生管の位置調整用スペーサ及びこれを用いた位置調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、既設管とこの既設管を修復ないし更生する更生管の隙間に挿入され更生管の位置調整を行うための位置調整用スペーサ及びこれを用いた位置調整方法に関する。
下水管などの既設管内で外径が既設管の内径より少し小さな更生管を設け、更生管外周と既設管の内壁面の隙間に充填材を充填し硬化させて複合管を構築することにより、既設管を修復したり更生する既設管更生方法が知られている。その既設管更生工事において、通常は既設管内での更生管の上下左右方向の位置を既設管と同心の位置から少し下方にずれた位置で、その外周の下端が既設管の管底に接する位置に調整して更生管を固定する必要がある。
これは、更生管の管底を可能な限り既設管の管底に近付けて低くして既設管内の流体の流れを確保するためと、既設管の損傷の大部分は、その上側部分に生じるので、上側で充填材を厚くして強度を強くするためである。これに対して更生管は、プラスチック材からなることから比重が充填材より小さく、充填材に浮いてしまうので、これを下方に押えるために、上記のように位置調整する必要がある。
従来では、このような更生管の位置調整のために、スペーサとして必要な高さ(厚さ)に加工した角材を更生管の外周と既設管内壁面の隙間に挟み込ませる方法が採用されていた。また、下記の特許文献1では、更生管を構成するブロック体(セグメント部材)に、スペーサを構成するボルトが更生管外周から突出する方向とその逆方向に進退できるように螺合されており、このボルトをねじ回して更生管外周から突出する長さを加減することにより、更生管の位置調整を行う方法が採用されている。
特開2003−286742号公報
しかしながら、上記のスペーサとして角材を用いる方法では、更生管外周と既設管内壁の隙間の寸法に合わせて幾種類もの高さ寸法の角材を用意しなければならない。また、上記のボルトから構成されるスペーサの場合は、更生管を構成するブロック体に前記ボルト用のねじ孔を加工しなければならず、しかも後工程でそのねじ孔の孔埋めが必要となる。いずれにしても更生管の位置調整に工数がかかってしまい、位置調整を簡単に短時間で行うことができないという問題があった。
本発明の課題は、既設管更生工事における既設管内での更生管の位置調整を、簡単に短時間で適切に行うことができる位置調整用スペーサ及びこれを用いた位置調整方法を提供することにある。
本発明の位置調整用スペーサ(請求項1)は、
既設管とこの既設管を更生する更生管との隙間に挿入され、更生管の既設管に対する位置を調節する更生管の位置調整用スペーサであって、
挿入方向の奥側が高くなるように所定角度で傾斜した第1のクサビ状部材と、
第1のクサビ状部材の傾斜角度と同角度で傾斜し、第1のクサビ状部材に傾斜角度面を合わせて重ねられる第2のクサビ状部材と、
第2のクサビ状部材を、第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動可能にし、逆方向には移動できないように複数の係止位置で係止する係止手段とを有し、
第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対し挿入方向に前記複数の係止位置に順次移動させることにより、スペーサ全体の高さが順次段階的に高くなるようにしたことを特徴とする。
また、本発明の位置調整方法(請求項9)は、
上記位置調整用スペーサを、既設管と更生管の隙間に挿入して更生管の位置調整を行う位置調整方法であって、
前記第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して前記挿入方向手前側寄りの位置に重ねた状態でスペーサ全体を既設管と更生管の隙間に挿入した後、第2のクサビ状部材を挿入方向に押圧して第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させることにより、順次スペーサ全体の高さを段階的に所望の高さまで増大させて更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする。
また、本発明の位置調整方法(請求項10)は、
既設管を更生する更生管を敷設する既設管更生工事において、請求項1から8までのいずれか1項に記載の位置調整用スペーサを用いて前記更生管の位置調整を行う位置調整方法であって、
前記第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して前記挿入方向手前側寄りの位置に重ねた状態でスペーサ全体を前記既設管の内壁面と更生管の外周との隙間に挿入した後、第2のクサビ状部材を挿入方向に押圧して第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させることにより、スペーサ全体の高さを順次段階的に所望の高さまで増大させて更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする。
本発明によれば、位置調整用スペーサを構成する第2のクサビ状部材を、第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させるという極めて簡単な作業だけで、スペーサ全体の高さを所望の高さまで増大させて位置調整を行うことができ、異なる隙間寸法に対応して、更生管の高さ方向の位置調整を極めて簡単に短時間でおこなうことができる。特に既設管更生工事において、更生管の既設管に対する垂直方向の位置調整に好適であり、その位置調整を簡単に短時間で行え、後工程で特別な作業が必要になることもない。さらに、スペーサは、第1と第2のクサビ状部材という2種類だけの部材だけで構成され、簡単で安価なスペーサとすることができる。
以下、図を参照して本発明の実施例を説明する。ここでは、上述した下水管などの既設管の更生工事における既設管内での更生管の位置調整に関わる実施例を示す。なお、実施例では既設管も更生管も円管として説明するが、それぞれの管の管長方向に直交する断面形状が例えば矩形など円形以外の形状である場合の位置調整についても本発明を適用できる。また、更生管が文字通り管として断面形状が閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形など片側が開いた形状である場合も適用できる。
実施例の既設管更生工事では、図11及び図12に示すように、下水管などの既設管4内で、外径が既設管4の内径より少し小さな更生管3が敷設される。その敷設は、複数のセグメント部材1を周方向に連結してなるリング状の管ユニット2を既設管の長さ方向に順次連結して行われる。
図1はこのセグメント部材1の全体の上面、図2は図1中の矢印C方向に見た側面、図3は図1中のA−A線に沿った断面、図4はセグメント部材1の下面を示している。
セグメント部材1は、管ユニット2を周方向に複数等分、例えば5等分したものに相当し、所定幅で所定角度分、例えば72度分の円弧状に湾曲した内面板101と、その円弧の周方向に沿った両側縁に沿って外方に向かって立設された側板102,103と、円弧の両端縁に沿って外方に向かって立設された端板104,105と、これらの内側において内面板101の外側面上でその周方向に沿って2枚ずつ外方に向かって立設された背の高い外側の補強板106及び背の低い内側の補強板107とを透明なプラスチックで一体成形したものとして構成されている。
内面板101の円弧の周方向の両端部には2つの開口部101aが形成されている。これは、セグメント部材1どうしの連結用のボルト6(図8及び図9参照)の締め付け作業を内側から行うためのものである。
側板102,103には、それぞれボルト挿通孔102a,103aが上記円弧の周方向に所定間隔で複数(ここでは14個)形成されている。その径は、図10に示す管ユニット2を既設管の長さ方向に連結するためのボルト9の頭ないしナット10の径より僅かに大きくなっている。
端板104,105には、セグメント部材1どうしの連結用のボルト6(図8及び図9参照)を挿通するためのボルト挿通孔104a,105aが補強板106,107により幅方向に5つに区分された部分のそれぞれの中央部の上下に2つずつ形成されている。また、図7に示すように、端板104の外側面にはV字形の溝104cと、上側が溝で下側が凸部になった嵌合部104dが上下方向の中央部と下端部のそれぞれで幅方向に延びて形成されている。また、端板105の外側面には溝104cと嵌合部104dのそれぞれと逆の形状の凸部105cと嵌合部105dが対応する位置に形成されている。
補強板106,107はセグメント部材1全体の機械的強度を補強するものであり、それぞれに管ユニット2を連結するためのボルト9(図10参照)を挿通するための複数のボルト挿通孔106aと切り欠き部107aが側板102,103のボルト挿通孔102a,103aのそれぞれに対応する位置に形成されている。ボルト挿通孔106aの径は、ボルト9の軸部分の径よりごく僅か大きいが、ボルト9の頭ないしナット10の径より小さくなっている。
また、側板102,103の内側面と補強板106,107の両側面(補強板107の一方は片側面のみ)には、それぞれの変形を防ぐために側方に張り出した複数の小さな凸板102b,103b,106b,107bが隣り合うボルト挿通孔102a,103a,106a及び切り欠き部107aの間の位置のそれぞれに互い違いになるように形成されている。これらは、図5(図1の矢印D方向の矢視図)及び図6(図1中のB−B線に沿った断面図)に示すように、直角三角形に形成され、その底辺が内面板101に連続している。このような形状とした理由は、既設管更生工事において、最終的に構築される既設管4と更生管3と充填材からなる複合管の強度をより向上させるために、不図示の鉄筋を既設管4の内壁面に沿って周方向に円形に架設する場合に、鉄筋を避けるためである。
また、図6に示すように、側板102の外側面の下端部には上側が溝で下側が凸部とされた嵌合部102c、側板103の外側面の下端部には嵌合部102cと逆の形状の嵌合部103cが内面板101の側縁に沿ってその全長に渡って形成されている。
以上の構造からなるセグメント部材1を用いた既設管更生工事では、まず図11に示す既設管4に連通するマンホール5にセグメント部材1を搬入するが、その前に図10に示すように管ユニット2の連結用のボルト9をセグメント部材1に固定しておく。
ボルト9を固定するには、まずボルト9をセグメント部材1の側板102,103の一方、例えば側板102のボルト挿通孔102aから挿入して、補強板106,107のボルト挿通孔106a及び切り欠き部107aと側板103のボルト挿通孔103aに挿通させ、ボルト9の頭が側板102側の補強板106に当接する位置まで挿入する。そして側板103から外側に突出するボルト9の先端側からナット10を螺合させ、側板102側の補強板106に当接する位置に締め付け、さらに円筒状の位置決め部材19をボルト9の先端側から挿通させて側板103側の補強板106に当接する位置まで挿入することにより、ボルト9が固定される。位置決め部材19はボルト9をボルト挿通孔103aと同心に位置決めするとともに、後述のように連結される管ユニット2どうしのボルト挿通孔102a,103aの位置を合わせるためのものである。
なお、ボルト9の固定本数はボルト挿通孔102aなどの数の半数以下とし、ボルト挿通孔の1個ないし複数個置きに固定する。また、固定されたボルト9の側板103から突出する部分の長さがセグメント部材1の幅(側板102の外側面から側板103の外側面まで)より僅かに小さくなるようにボルト9の長さが設定されている。
このようにしてボルト9を固定した複数のセグメント部材1を図7〜図9に示すようにして周方向に連結する。すなわち、まず図7中で左側のセグメント部材1の端板105の凸部105cと嵌合部105dを右側のセグメント部材1の端板104の溝104cと嵌合部104dに嵌合させて端板104,105どうしを密着させる。次に、図8,図9に示すボルト6を右側のセグメント部材1の内面板101の開口部101aから入れて端板104,105のボルト挿通口104a,105aに挿通し、左側のセグメント部材1の開口部101aからナット7を入れてボルト6に螺合させ、端板105に締め付けることにより、セグメント部材1,1どうしが連結される。連結後、開口部101aを塞ぐ不図示の蓋を開口部101aに嵌合し、不図示の係合構造と接着などにより固定する。
このようにして複数のセグメント部材1を順次周方向に連結して図11に示す管ユニット2を組み立てる。そして順次組み立てた管ユニット2を既設管4内の更生位置まで搬入し、順次長さ方向に連結して更生管3を組み立て敷設する。
図10は、管ユニット2どうしをボルト9により連結する様子を示しており、左側の管ユニット2を右側の管ユニット2に連結するには、まず右側の管ユニット2のセグメント部材1の側板103から突出しているボルト9を左側の管ユニット2のセグメント部材1のボルト9が固定されていない部分の側板102と補強板106,107のボルト挿通孔102a,106a及び切り欠き部107aに挿通させ、位置決め部材19をボルト挿通孔102aに挿入させるようにして、左側の管ユニット2のセグメント部材1の側板102を右側の管ユニット2のセグメント部材1の側板103に押し付け、図6に示した嵌合部102cを嵌合部103cに嵌合させて側板102,103を密着させる。ここで、右側の管ユニット2のセグメント部材1から突出したボルト9の先端部は左側の管ユニット2のセグメント部材1の側板103の内側近傍に達するので、ボルト挿通孔103aからナット10をボルト9の先端部に螺合させて側板103の隣りの補強板106に締め付けることにより、左側の管ユニット2が右側の管ユニット2に固定され、連結される。このようにして、図11から図12に示した様に、管ユニット2を順次連結して更生管3を組み立て、その長さを延ばして更生管を既設管に敷設する。
ところで、敷設した更生管3は、前述のように、プラスティック材からなり比重が小さく充填材に浮くので、これを下方に押えて既設管4と同心の位置から少し下方にずれた位置で、その外周の下端が既設管4の管底に接する位置に位置調整する必要がある。このため、本実施例では、管ユニット2を複数個連結して更生管3を所定長さ(例えば1m位)組み立てる毎に、図13に示すスペーサ13を更生管3の上側外周の複数箇所においてその外周と既設管4の内壁面の間に挿入して位置調整する。
スペーサ13は、図14に上面側を示す第1のクサビ状部材14と図15に下面側を示す第2のクサビ状部材15を図17ないし図18に示すように上下に重ねて構成され、さらにその高さが不足な場合は、図16に上面側を示すかさ上げ部材16を図20ないし図21に示すようにその下に重ねて構成される。そして図14〜図16及び図19,図21に示す矢印A方向をスペーサ挿入方向として、各部材14,15ないし16の長さ方向の一方向をスペーサ挿入方向に合わせて更生管3の外周と既設管4の内壁面との間に挿入される。なお、これらの部材14,15,16は、中空のプラスチック成型品または金属成型品として形成される。
図14に示す第1のクサビ状部材14は、全体の外形がほぼクサビ形状であって、上面が矢印Aのスペーサ挿入方向(部材14の長さ方向の一方向)の手前側が低く奥側が高くなるように、例えば10度弱程度の緩い所定角度で上下に傾斜している。その上面の幅方向の中央部には所定幅のガイド溝14aが上面の傾斜線方向に沿って直線状に形成され、その底面には多数の歯14bが傾斜線方向に沿って例えば数mm程度の短い所定ピッチで鋸歯状に形成されている。歯14bの断面形状は三角形であり、その三角形の上側の2辺において、クサビ状部材14の挿入方向奥側となる辺が挿入方向に対し略垂直で、手前側となる辺が傾斜している(図17,図18参照)。
また、クサビ状部材14の上面には、2つの長孔14cがガイド溝14aの幅方向の両側の近傍のそれぞれにおいて上面の最大傾斜線方向に沿って直線状に形成されている。また、クサビ状部材14には2つの足14d,14eが部材14の長さ方向の両端部のそれぞれの下端部に形成されており、その幅方向の中央部には切り欠き部14fが形成されている(足14eの切り欠き部は不図示)。
図15に下面側を示す第2のクサビ状部材15は、全体の外形がほぼクサビ形状であって、長さと幅が第1のクサビ状部材14と同じであり、下面がクサビ状部材15の長さ方向に対して第1のクサビ状部材14の上面とほぼ同じ角度で上下に傾斜しており、スペーサ挿入方向の手前側が低く奥側が高くなるように傾斜している。ただし、図15ではクサビ状部材15の下面側が示され、上下逆に示されているので、その高低も逆に示されている。
クサビ状部材15の下面の幅方向の中央部には凸部15aが下面の傾斜線方向に沿って直線状に形成され、その下面には複数の歯15bが第1のクサビ状部材14の歯14bのピッチの整数倍の大きなピッチ(例えば10〜20mm程度)で形成されている。歯15bの断面形状は歯14bに対応した三角形であるが、逆向きであり、その三角形の下側の2辺において、クサビ状部材15の挿入方向奥側となる辺が挿入方向に対し傾斜し、手前側となる辺が略垂直になっている。なお、凸部15aの幅は第1のクサビ状部材14のガイド溝14aよりごく僅か小さくなっている。また、凸部15aの高さ(突出量)はガイド溝14aの深さに対応している。
また、クサビ状部材15の下面には、2本の短い円柱形の突起15cが凸部15aの両側で部材15の挿入方向の中央より手前側寄りの位置のそれぞれに形成されており、この突起15cのそれぞれの前後に長孔15d,15eが傾斜線方向に沿って直線状に形成されている。また、クサビ状部材15の挿入方向の先端部15aの上側にはアール(丸み)がつけられている。
図16に示すかさ上げ部材16は、全体の外形がほぼ長方形の枠状であって、長さと幅がクサビ状部材14,15と同じであり、上面が長さ方向に対して水平である。そして、長さ方向と幅方向に対称であり、長さ方向の何れをスペーサ挿入方向としてもよい。かさ上げ部材16の長さ方向に沿った両側には所定の高さH3(図20参照)の壁16gが形成されている。また、かさ上げ部材16の上面には2つの大きな長方形の孔16aが長さ方向に延びて形成され、その間に仕切り壁16bが両側の壁16gと同じ高さH3で形成されている。また、上面の長さ方向の両端部において幅方向の両側には段差部16cが形成され、その間に凸部16dが形成されている。また、かさ上げ部材16の長さ方向の両端部のそれぞれの下端部には足16eが形成され、その幅方向の中央部には切り欠き部16fが形成されている。
第1と第2のクサビ状部材14,15のみでスペーサを構成する場合、第2のクサビ状部材15の凸部15aを第1のクサビ状部材14のガイド溝14aに嵌合させ、突起15cのそれぞれを長孔14cのそれぞれに挿入させるようにして、図17から図18に示すように、クサビ状部材15の下面をクサビ状部材14の上面の上に重ねる。凸部15aは溝14aに対してその長さ方向に摺動可能に嵌合される。この嵌合により、クサビ状部材14,15の長さ方向が合わされるとともに、幅方向の位置も合わされ、クサビ状部材15が幅方向にずれたり、脱落したりすることが阻止される。
このように重ねると、クサビ状部材15のクサビ状部材14と重なり合う部分の歯15bのそれぞれがクサビ状部材14の多数の歯14bのいずれかと係合するが、図18(B)に矢印Aで示すようにクサビ状部材15を挿入方向に押圧すると、係合し合う歯14b,15bの形状により、歯15bが歯14bを乗り越えられるので、係合が外れ、クサビ状部材15をクサビ状部材14に対して挿入方向に移動させることができる。なお、ガイド溝14aと凸部15aを介してクサビ状部材15の挿入方向への移動が案内される。また、その移動範囲は、クサビ状部材15の突起15cがクサビ状部材14の長孔14cの挿入方向手前側の端縁に当接する位置(以下、最小ポジションという)から挿入方向奥側の端縁に当接する位置(以下、最大ポジションという)までの範囲に制限される。
上記のようにクサビ状部材15は挿入方向へは移動可能であるが、歯14b,15bが係合した状態では、クサビ状部材15を挿入方向の逆方向に引いても、歯14b,15bの形状により、歯15bが歯14bに引っかかって係止されるため、クサビ状部材14に対して挿入方向と逆方向には移動させることはできない。
このような構造により、クサビ状部材15を挿入方向に押圧することで、クサビ状部材14に対して、最小ポジションから最大ポジションまで、順次、歯14bのピッチに対応するピッチで、挿入方向と逆方向には移動できないように係止される位置のそれぞれへ移動させることができる。このように、第1と第2のクサビ状部材の歯どうしの係合により、第1と第2のクサビ状部材を複数の係止位置で係止させる係止手段が得られ、各係止位置で異なるスペーサ高さを実現することができる。
図18の(a)はクサビ状部材15が最小ポジションにあり、(b)は最大ポジションにある状態を示している。最小ポジションの状態では、クサビ状部材14,15の合計の高さ(両者からなるスペーサ全体の高さ)が符号H1で示す最小の高さとなり、それからクサビ状部材15を挿入方向へ移動させるほど、クサビ状部材15がクサビ状部材14の傾斜した上面に沿って登るので、合計の高さが高くなり、最大ポジションで符号H2で示す最大の高さとなる。クサビ状部材15を最小ポジションから最大ポジションまで、順次、歯14bのピッチに対応するピッチで移動させることにより、クサビ状部材14,15の合計の高さを最小高さH1から最大高さH2まで、歯14bのピッチに対応したクサビ状部材14の上面の傾斜による高さの小さなピッチ(例えば1mmより小さなピッチ)で段階的に所望の高さに設定することができる。
以上のようなクサビ状部材14,15のみを重ねて構成するスペーサを用いて更生管3の位置調整を行う場合、図18(a)に示すようにクサビ状部材15をクサビ状部材14上でスペーサ挿入方向手前側寄りの位置で最小ポジションとなる位置に重ねた状態で、図19に示すように既設管4の内壁面と更生管3の外周との隙間に挿入し、更生管3を構成するセグメント部材1の2枚の補強板106にクサビ状部材14の足14d,14eを係合させてクサビ状部材14,15を更生管3の外周上にセットする。そして、クサビ状部材15を矢印Aで示す挿入方向に押圧して、クサビ状部材14に対して挿入方向に移動させることにより、クサビ状部材14,15の合計の高さ、すなわちスペーサ全体の高さを順次前述したごく小さなピッチで段階的に増大させ、その高さが所望の隙間の寸法に対応した所望の高さになる例えば破線で示す位置まで移動させて位置調整することができる。
なお、クサビ状部材15の先端部15fの上側にアールがついているので、先端部15fが既設管4の内壁面に引っかからず、クサビ状部材15をスムーズに移動させることができる。また、クサビ状部材14の上面とクサビ状部材15の下面は同角度で傾斜しているため、クサビ状部材15の上面は水平となり、既設管4の内壁面に安定して面接触させることができ、これによりクサビ状部材14,15からなるスペーサを既設管4の内壁面と更生管3の外周との隙間に安定して挟み込ませることができる。なお、クサビ状部材14の足14d,14eが2枚の補強板106にガタなく係合するようにこれらの寸法関係を設定しておく。
こうしてクサビ状部材14,15からなるスペーサにより更生管3の位置調整を行うことができるが、スペーサにより設定しようとする上記隙間の寸法がクサビ状部材14,15の最大ポジションでの全体の高さ寸法H2より大きい場合は、その不足分の寸法に応じて、クサビ状部材14の下にかさ上げ部材16を図20に示すように1つ、あるいは図21に示すように複数重ねる。
このとき、図14に示すクサビ状部材14の両端部の足14d,14eとその切り欠き部14fのそれぞれを図16に示すかさ上げ部材16の両端部の段差部16cと凸部16dのそれぞれに係合させてクサビ状部材14をかさ上げ部材16上に重ねることにより、クサビ状部材14がかさ上げ部材16上から長さ方向ないし幅方向にずり落ちることはない。
また、かさ上げ部材16を複数重ねる場合は、上のかさ上げ部材16の両端部の足16eとその切り欠き部16fのそれぞれを下のかさ上げ部材16の両端部の段差部16cと凸部16dのそれぞれに係合させて重ねることにより、上のかさ上げ部材16が下のかさ上げ部材16上からずり落ちることはない。
また上のかさ上げ部材16は、その両側の壁16gと仕切り壁16bの下面が下のかさ上げ部材16の両側の壁16gと仕切り壁16bの上面に接して、下のかさ上げ部材16上に支持される。従って、かさ上げ部材16を複数重ねる場合、かさ上げ部材16を1つ重ねる毎に、図21に示すスペーサ全体の高さH4を図20に示す仕切り壁16bと両側の壁16gの高さH3ずつ高くすることができる。
かさ上げ部材16の両端部の足16eは、図19に示したクサビ状部材14の両端部の足14d,14eと同様に、セグメント部材1の2枚の補強板106にガタなく係合できるものとし、これを係合させて、クサビ状部材14,15とかさ上げ部材16を重ねてなるスペーサを更生管3の外周上にセットし、先述したクサビ状部材14,15のみからなるスペーサの場合と同様に、クサビ状部材15を押圧してクサビ状部材14に対し挿入方向に移動させることにより、順次スペーサ全体の高さを段階的に所望の高さまで増大させて、更生管3の位置調整を行うことができる。
更生管3の敷設を行いながら以上のようなスペーサによる位置調整を管ユニット2の複数個分で1m位の長さ毎に行い、更生管3の全長の敷設と位置調整が終了したら、下記の充填材の充填時に更生管3の変形を防ぐための不図示の支柱を更生管3内に数m位の間隔で上下に垂直、及び左右に水平に設置する。その後、図13に示すように、充填材12を既設管4の内壁面と更生管3の外周の隙間のスペース及び更生管3を構成するセグメント部材1の内面板101の外側のスペースに充填する。充填材12は、セメントモルタル、あるいはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂などを主材とするレジンモルタルなどからなる。その充填は、更生管3の長さの数m毎に、これを構成する上側のセグメント部材1の適当な位置に孔1aを形成して、これに充填用ホース11を接続し、このホース11から充填材12を注入して行う。なお、この充填の前に、組み立てた更生管3の全長の両端の外周と既設管4の内壁面の隙間を不図示のレジンパテやモルタルからなるシール材で塞いでおく。
なお、クサビ状部材14,15とかさ上げ部材16のそれぞれに孔14c,15d,15e,16aなどが形成されているので、更生管3の位置調整に用いたクサビ状部材14,15ないしかさ上げ部材16からなるスペーサ内に充填材12が流れ込むので、スペーサ内に空洞ができることはない。
充填材12の充填が終了した後、充填材12が凝結して硬化したら、孔1aをシール材で塞ぎ、不図示の支柱を撤去するなどして既設管更生工事が完了する。
以上のような実施例によれば、第2のクサビ状部材15を第1のクサビ状部材14に対して最小ポジションの位置に重ねた状態でスペーサ全体を既設管4の内壁面と更生管3の外周との隙間に挿入して更生管3の外周上にセットした後、クサビ状部材15を挿入方向に押圧してクサビ状部材14に対して挿入方向に移動させるという極めて簡単な作業だけで、スペーサ全体の高さを所望の高さまで増大させて位置調整を行うことができ、更生管3の位置調整を極めて簡単に短時間で行うことができる。また、従来の特許文献1に記載されたボルトから構成されるスペーサの場合のようなボルト用のネジ孔の加工は不要であり、後工程でそのネジ孔を孔埋めするような特別な作業も不要である。さらに、第1と第2のクサビ状部材14,15のみ、あるいはこれにかさ上げ部材16を加えただけの2ないし3種類の部材だけで構成され、従来の角材などからなるスペーサのように幾種類もの高さ寸法のものを用意することなく、3種類の部材を用意するだけで異なる隙間寸法に対応して位置調整を適切に行うことができる。
なお、上述した実施例のスペーサの構造において第1と第2のクサビ状部材14,15の上下を逆にし、部材14をその足14d,14eを取って第2のクサビ状部材とし、部材15に足をつけて第1のクサビ状部材としてもよい。
また、第2のクサビ状部材15の既設管に向かう面は、傾斜のない平面となっており、既設管と更生管の隙間に挿入したとき、厳密な意味では、既設管の内周面とは面接触にならないので、既設管と対向する面を、周方向に湾曲させ既設管の内周面と同じ曲率の曲面にしてさらに、面接触を高めるようにしてもよい。また、第1のクサビ状部材14の歯14bの傾斜方向ピッチは、第2のクサビ状部材15の歯15bの傾斜方向ピッチと異なっているが、同じピッチとすることもできる。
なお、本発明による位置調整用スペーサ及びこれを用いた位置調整方法は、既設管更生工事における更生管の位置調整に限らず、固定物と位置調整される物との隙間にスペーサを挿入して行う位置調整に広く用いることができることは勿論である。
本発明の実施例の既設管更生工事で既設管内に組み立てられる更生管を構成するセグメント部材の構造を示す上面図である。 図1中の矢印C方向から見た側面図である。 図1中のA−A線に沿った断面図である。 セグメント部材の下面図である。 図1中の矢印D方向の矢視図である。 図1中のB−B線に沿った断面図である。 セグメント部材どうしの連結方法を説明する縦断側面図である。 セグメント部材どうしを連結した状態を示す縦断側面図である。 セグメント部材どうしを連結した状態を示す横断平面図である。 セグメント部材を連結して構成された管ユニットどうしの連結方法を説明する一部波断断面図である。 既設管へのセグメント部材の搬入と管ユニットを連結して更生管を敷設する様子を示す断面図である。 更生管の全長が敷設された様子を示す断面図である。 敷設された更生管の外周と既設管の内壁面との隙間のスペースに充填材を注入する様子を示す断面図である。 更生管の位置調整用のスペーサを構成する第1のクサビ状部材の構造を示す斜視図である。 スペーサを構成する第2のクサビ状部材の下面側の斜視図である。 スペーサを構成するかさ上げ部材の斜視図である。 第1と第2のクサビ状部材を重ねる様子を示す説明図である。 重ねた状態でスペーサ全体の高さが最小になる最小ポジション(A)と最大になる最大ポジション(B)を示す説明図である。 スペーサにより更生管の位置調整を行う様子を示す説明図である。 第1と第2のクサビ状部材とかさ上げ部材を重ねる様子を示す説明図である。 第1と第2のクサビ状部材と2つのかさ上げ部材を重ねた状態を示す説明図である。
符号の説明
1 セグメント部材
2 管ユニット
3 更生管
4 既設管
5 マンホール
6 セグメント部材連結用のボルト
7 セグメント部材連結用のナット
9 管ユニット連結用のボルト
10 管ユニット連結用のナット
11 充填用ホース
12 充填材
13 スペーサ
14 第1のクサビ状部材
14a ガイド溝
14b 歯
14c 長孔
14d,14e 足
15 第2のクサビ状部材
15a 凸部
15b 歯
15c 突起
16 かさ上げ部材

Claims (10)

  1. 既設管とこの既設管を更生する更生管との隙間に挿入され、更生管の既設管に対する位置を調節する更生管の位置調整用スペーサであって、
    挿入方向の奥側が高くなるように所定角度で傾斜した第1のクサビ状部材と、
    第1のクサビ状部材の傾斜角度と同角度で傾斜し、第1のクサビ状部材に傾斜角度面を合わせて重ねられる第2のクサビ状部材と、
    第2のクサビ状部材を、第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動可能にし、逆方向には移動できないように複数の係止位置で係止する係止手段とを有し、
    第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対し挿入方向に前記複数の係止位置に順次移動させることにより、スペーサ全体の高さが順次段階的に高くなるようにしたことを特徴とする更生管の位置調整用スペーサ。
  2. 前記第1のクサビ状部材の傾斜面には所定ピッチで歯が形成され、前記第2のクサビ状部材の傾斜面には第1のクサビ状部材の歯と係合する歯が前記所定ピッチと同じ又は異なるピッチで形成され、前記係止手段が、第1と第2のクサビ状部材の歯どうしの係合により実現されることを特徴とする請求項1に記載の位置調整用スペーサ。
  3. 前記第1のクサビ状部材の傾斜面と第2のクサビ状部材の傾斜面の一方には直線状の溝、他方には前記溝に摺動可能に嵌合する直線状の凸部が傾斜線の方向に沿って形成され、その嵌合により、前記第1と第2のクサビ状部材の長さ方向が合わされると共に幅方向の位置が合わされ、前記溝と凸部を介して第1のクサビ状部材に対する第2のクサビ状部材の前記挿入方向への移動が案内されることを特徴とする請求項1または2に記載の位置調整用スペーサ。
  4. 前記第1と第2のクサビ状部材の歯の一方は前記直線状の溝に、他方は前記直線状の凸部に形成されることを特徴とする請求項3に記載の位置調整用スペーサ。
  5. 前記第1のクサビ状部材の傾斜面と第2のクサビ状部材の傾斜面の一方には直線状の長孔、他方には前記長孔に挿入される突起が形成され、前記長孔と突起を介して、第1のクサビ状部材に対する第2のクサビ状部材の前記挿入方向の移動範囲が規制されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の位置調整用スペーサ。
  6. 前記第1のクサビ状部材の長さ方向の両端部の下端部には、更生管に係合させる足が形成されることを特徴とする請求項1に記載の位置調整用スペーサ。
  7. さらに、前記第1のクサビ状部材の下に、スペーサ全体の高さを高くするためのかさ上げ部材が設けられることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の位置調整用スペーサ。
  8. 前記かさ上げ部材には、その上側に重なる前記第1のクサビ状部材またはかさ上げ部材と係合する係合部と、下側に重なるかさ上げ部材と係合する係合部が形成されたことを特徴とする請求項7に記載の位置調整用スペーサ。
  9. 請求項1から8までのいずれか1項に記載の位置調整用スペーサを、既設管と更生管の隙間に挿入して更生管の位置調整を行う位置調整方法であって、
    前記第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して前記挿入方向手前側寄りの位置に重ねた状態でスペーサ全体を既設管と更生管の隙間に挿入した後、第2のクサビ状部材を挿入方向に押圧して第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させることにより、順次スペーサ全体の高さを段階的に所望の高さまで増大させて更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする更生管の位置調整方法。
  10. 既設管を更生する更生管を敷設する既設管更生工事において、請求項1から8までのいずれか1項に記載の位置調整用スペーサを用いて前記更生管の位置調整を行う位置調整方法であって、
    前記第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して前記挿入方向手前側寄りの位置に重ねた状態でスペーサ全体を前記既設管の内壁面と更生管の外周との隙間に挿入した後、第2のクサビ状部材を挿入方向に押圧して第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させることにより、スペーサ全体の高さを順次段階的に所望の高さまで増大させて更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする更生管の位置調整方法。
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