JP4390669B2 - 海洋生物の付着及び成長を抑制する方法及びシステム - Google Patents

海洋生物の付着及び成長を抑制する方法及びシステム Download PDF

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本発明は、海水を用いて復水器などの装置を冷却するための冷却水系統内において海洋生物の付着及び成長を抑制するための方法、及びシステムに関する。
冷却水として海水を利用する火力発電所においては、海から海水を取り入れて復水器に供給する取水路や、復水器を通った海水を海へ放出するための放水路の内部に貝などの海洋生物が付着し易い。かかる海洋生物の付着量が多くなると、冷却水の流路が塞がれて冷却性能が低下するなどの不具合を招くおそれがある。そこで、従来より、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されるように、次亜塩素酸ナトリウム溶液や二酸化塩素等の塩素系薬剤を冷却水の流路に注入することにより、流路において海洋生物の付着及び成長を抑制することが行われている。
特開7−265867号公報 特開11−37666号公報
上述のように、火力発電所において冷却水として利用された後の海水は海へ放出されるが、環境保全のために、海への放出水に含まれる塩素濃度(残留塩素濃度)は一定の協定値以下であることが要求される。従って、海洋生物を除去するための塩素系薬剤の注入量も、上記の要求を満足できるように制限しなければならない。一方、上記特許文献1及び特許文献2に開示される手法では、薬剤の注入を一箇所で行っているため、注入箇所から下流にいくにつれて、塩素の分解等により塩素濃度が低下し、注入箇所から一定の範囲でしか、十分な効果を期待できない。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、冷却対象設備を海水により冷却するにあたり、海へ放出される海水中の塩素濃度を低く抑えつつ、冷却水流路の広範囲に亘って海洋生物の付着及び成長を効果的に抑制できるようにすることを目的とする。
上記の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、冷却水として海から海水を取り入れて冷却対象設備に供給し、この冷却対象設備を通った後の海水を海へ放出するための冷却水流路内において海洋生物の付着及び成長を抑制する方法であって、
前記冷却水流路に冷却水の流れの方向に沿って塩素系薬剤を注入するための複数の薬剤注入部を設け、それら複数の薬剤注入部を、前記取水路を流れる冷却水が各薬剤注入部の間を流れるのに要する時間に基づいて決定したタイミングで順次切り替えながら前記冷却水流路内へ塩素系薬剤を注入することを特徴とする。
本発明によれば、冷却水流路に冷却水の流れの方向に沿って複数の薬剤注入部が設けられ、この複数の薬剤注入部を順次切り替えながら冷却水流路内へ塩素系薬剤が注入される。従って、広範囲に亘って海洋生物の付着及び成長を抑制することができる。また、複数の薬剤注入部を、前記取水路を流れる冷却水が各薬剤注入部の間を流れるのに要する時間に基づいて決定したタイミングで順次切り替えることで、塩素系薬剤が過剰に注入されることがなくなり、海へ放出される海水の残留塩素濃度が協定値を越えるのを防ぐことができる。
また、請求項に記載された発明は、冷却水として海から海水を取り入れて冷却対象設備に供給し、この冷却対象設備を通った後の海水を海へ放出するための冷却水流路内において海洋生物の付着及び成長を抑制するシステムであって、
前記冷却水流路内の冷却水の流れの方向に沿って設けられた、塩素系薬剤を注入するための複数の薬剤注入部と、
前記複数の薬剤注入部を、前記取水路を流れる冷却水が各薬剤注入部の間を流れるのに要する時間に基づいて決定したタイミングで順次切り替えながら、前記冷却水流路内へ塩素系薬剤を注入させる制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、海へ放出される海水中の塩素濃度を低く抑えつつ、冷却水流路の広範囲に亘って海洋生物の付着及び成長を効果的に抑制することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係わる火力発電所10の概略平面図である。同図に示すように、火力発電所10は海2に臨む敷地に建設されている。火力発電所10には、例えば、燃料貯蔵設備12、LNGタンク14、発電設備16等の各種設備が設けられている。本実施形態では、発電設備16に設けられた復水器18を海水で冷却するものとしており、海2から海水を取り込んで復水器18へ供給するための取水路20と、復水器18を通った海水を海2へ放出するための放水路22とが設置されている。海水は取水路20の先端の取水口24から取り込まれ、取水路20を流れて復水器18を通過し、放水路22を流れてその先端の放水口26から海2へ放出される。なお、取水路20及び放水路22が本発明の「冷却水流路」に相当する。
上記のように、取水路20及び放水路22には海水が流れるため、流路内には貝等の海洋生物が付着・繁殖しやすい。そして、流路内に多量の海洋生物が付着すると、流路が塞がれて十分な流量が得られなくなる等のために冷却性能が低下するおそれがある。特に、取水路20については、低い水温の海水を取り込めるように、取水口24が陸地からかなり離れた沖合に設けられるため、取水路20は非常に長くなって、海洋生物の付着の影響を受けやすい。
そこで、本実施形態では、取水路20の取水口24近傍の地点で、取水路20に、塩素系薬剤として次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入することにより、取水路20や放水路22内壁面における貝などの海洋生物の付着や成長を抑制することとしている。ただし、次亜塩素酸ナトリウムに限らず、例えば、二酸化塩素などの他の塩素系薬剤を用いてもよい。
図2は、取水路20及び放水路22からなる冷却系統28を模式図的に示す。同図に示す如く、復水器18と取水路20との接続部には、海水ポンプ30が設けられており、この海水ポンプ30により海水が取水口24から取水路20へ吸入される。また、取水路20の取水口24の近傍には、薬剤注入部32が設けられている。この薬剤注入部32は、取水路20の流れに沿って複数箇所に設けられている。また、放水路22の放水口26の近傍には、海2へ放出される海水中の残留塩素濃度を検出する残留塩素濃度計34が設けられている。残留塩素濃度計34による検出信号は無線又は有線で陸地上に設けられた監視装置へ送られる。
図3は、薬剤注入部32の構成を示す。同図に示す如く、薬剤注入部32は、取水路20の内部に注入口41を有する注入管40、注入管40に次亜塩素酸ナトリウム溶液を供給する薬剤供給装置42、注入管40に設けられたバルブ44、バルブ44の動作を制御する制御部46により構成されている。また、制御部46は、例えば、薬剤供給装置42からの薬剤の流量を制御することにより、注入管40を流れる薬剤の流速と取水路20を流れる冷却水の流速とがほぼ同じになるようにする。薬剤供給装置42は、海水ポンプ30から供給された海水を電解して、次亜塩素酸ナトリウム溶液を生成する。ただし、薬剤供給装置42は、既成の次亜塩素酸ナトリウム溶液を貯蔵しておいて、それを供給するものであってもよい。
図3に示す例では、注入管40の先端が海水の下流側へ向けて屈曲され、その先端に注入口41が設けられている。なお、図4に示すように、注入管40の先端部の断面が注入口41へむけて次第に拡がるように構成してもよい。また、図5に示すように、注入管40を屈曲させずに、その下流側側面に設けた穴を注入口41としてもよい。このように、注入口41として様々な構成が考えられる。
なお、注入管40は、取水路20の断面の両側面及び上面に沿って配置されるものとする。このように、取水路20の底面に注水管40を配置しないのは、取水路20の底部には汚泥が堆積するので、これを避けた位置で次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入するためである。また、注入管40は複数本設けてもよく、薬剤供給装置42及び制御部46は、薬剤注入部32A〜32Cに共通に備えられる。この例では、3つの薬剤注入部32A,32B,32Cが設けられた場合を示しているが、薬剤注入部32の個数はこれに限らず、取水路20の流れに沿って複数の薬剤注入部32が設けられればよい。
次に、図6(a)〜図6(c)を用いて本実施形態の薬剤注入方法を詳細に説明する。なお、図6(a)〜図6(c)においては、注入管40及びバルブ44の構成をより詳細に示している。同図に示すように、複数(同図の例では3個)の薬剤注入部32A〜32Cに対応して、注入管40A〜40Cが設けられており、その先端に注入口41A〜41Cが設けられる。そして、以下に詳細に説明するように、注入管40A〜40Cの接続状態をバルブ44A,44Bによって切り替えることで、薬剤注入部32A〜32Cの何れから薬剤注入を行うかを切り替えることができるようになっている。
ポンプ30は、取水路20から海水を汲み上げて薬剤供給装置42に供給する。薬剤供給装置42は、この海水を電気分解して次亜塩素酸ナトリウムを生成し、バルブ44A,44Bの切替状態に応じて注入管40A〜40Cの何れかの先端の注入口41A〜41Cから取水路20へ薬剤を注入する。
バルブ44Aは、薬剤供給装置42を注入管40Aに接続させる第1の状態と、薬剤供給装置42を注入管40Bに接続させる第2の状態とを取ることができる。また、バルブ44Bは、注入管40Bを注入管40C及び注入口41Bに接続させる第1の状態と、注入管40Bを注入管40Cから切り離すと共に、注入口41Bに接続させる第2の状態と、注入管40Bを注入管40Cに接続させると共に注入口41Bから切り離す第3の状態を取ることができる。これらバルブ44A,44Bの状態の切り替え動作は、制御部46により制御される。
図6(a)は、薬剤注入部32Aから薬剤が注入される状態を示している。すなわち、この状態では、バルブ44Aが第1の状態とされ、バルブ44Bが第1の状態とされることで、薬剤供給装置42から注入管40Aを通して薬剤注入部32Aの注入口41Aから薬剤が注入される。
この図6(a)に示す状態から、バルブ44Aを第2の状態に切り替えると共に、バルブ44Bを第2の状態に切り替えると、薬剤供給装置42が薬剤注入部32Aから切り離されると共に、注入管40Bを介して注入口41Bに接続される。これにより、薬剤注入部32Bの注入口41Bから薬剤が注入される(図6(b)参照)。
さらに、この状態からバルブ44Bを第3の状態に切り替えると、薬剤供給装置42が注入口41Bから切り離されると共に、注入管40B及び注入管40Cを介して注入口41Cに接続される。これにより、薬剤注入部32Cの注入口41Cから薬剤が注入される(図6(c)参照)。
このように、バルブ44A,44Bの状態を切り替えることにより、薬剤注入部32A〜32Cを順次切り替えて薬剤注入を行うことができる。なお、各状態において、薬剤注入が行われていない注入管40は、ポンプ30によって汲み上げられた海水でパージされている。また、注入管40を流れる次亜塩素酸ナトリウムの流速は、例えば、取水口24を流れる海水の流速と等しくなるように設定されている。このように両者の流速を等しくしておけば、次亜塩素酸ナトリウム溶液が、上流側と下流側との両方から重複して注入されることがない。例えば、取水路20内の冷却水が薬剤注入部32Aから薬剤注入部32Bまで流れるのに時間Tだけかかるとすると、図6(a)に示すように薬剤が薬剤注入部32Aから注入されていた状態から、図6(b)に示すようにバルブを切り替えた場合、バルブを切り替えてから薬剤注入部32Bによる薬剤注入が始まるまでの時間もTとなる。このため、上流側の薬剤注入部32Aで薬剤が注入された冷却水が下流側の薬剤注入部32Bを通過するまで薬剤注入部32Bによる薬剤注入は行われず、冷却水の同じ部分に両方の薬剤注入部32A,32Bから重複して薬剤が注入されて塩素濃度が過剰となるのを防止できるのである。そのため、協定値を越える残留塩素濃度を有する海水が、海2へ放出されるのを防ぐことができる。
図7は、薬剤注入部32の他の構成例を示す。この例では、注入管40から取水路24へ至る流路が複数設けられており、各流路にはバルブ44(A〜C)が設けられている。そしてこれらのバルブ44(A〜C)の開閉は、制御部46により制御されている。このような構成として、バルブ44(A〜C)をタイミングよく開閉し、薬剤を注入するような構成としても同様の効果を得ることができる。
以上のように、薬剤注入部32の構成として様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
図8は、取水路20に設けられた薬剤注入部32A、32B、32Cを、流れに沿って順次切り替えて次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入したときの冷却水系統28の各部における残留塩素の濃度分布を示す図である。同図に示すように、薬剤注入部32Aから次亜塩素酸ナトリウム溶液が注入されると、取水路20の取水口24での残留塩素濃度は高くなる。この濃度は下流側へ向かうにつれて次第に低下し、やがて効果的な除去効果が得られなくなる。本発明は、このような下流側での除去効果の低減を防ぐために、流れに沿って順次次亜塩素酸ナトリウムを注入して、残留塩素濃度を一定値以上に保つことが可能な範囲(つまり、生物付着防止効果の得られる範囲)を拡大している。一方、放出口26から海2へ放出される海水の残留塩素濃度は、例えば、注入する次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度や注入位置などの諸条件を決定して、協定値以下に設定できる。
このように、本実施形態では、取水路20の流れに沿って設けた薬剤注入部32を順次切り替えて次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入することにより、海2へ放出される海水中の塩素濃度を低く抑えつつ、冷却水流路の広範囲に亘って海洋生物の付着及び成長を効果的に抑制できるようにする
また、上記実施形態では、火力発電所の復水器を冷却対象設備として冷却するものとしたが、本発明は復水器に限らず、海水を用いて各種設備を冷却する場合に広く適用が可能である。
本発明の一実施形態に係わる火力発電所の概略平面図である。 取水路、放水路からなる冷却水系統を模式的に示す図である。 薬剤注入部の詳細構成を示す図である。 注入管の注入口の構成例を示す図である。 注入管の注入口の別の構成例を示す図である。 取水路に設けられた複数の薬剤注入部の構成例を示す図である。 取水路に設けられた複数の薬剤注入部の他の構成例を示す図である。 冷却水系統各部における残留塩素濃度と取水路内の距離との関係を示す図である。
符号の説明
2 海
10 火力発電所 12 燃料貯蔵設備
14 LNGタンク 16 発電設備
18 復水器 20 取水路
22 放水路 24 取水口
26 放水口 28 冷却水系統
30 海水ポンプ
32(32A〜32C) 薬剤注入部
34 残留塩素濃度計
40(40A〜40C) 注入管
41(41A〜41C) 注入口
42 薬剤供給装置
44(44A〜44C) バルブ
46 制御部

Claims (2)

  1. 冷却水として海から海水を取り入れて冷却対象設備に供給し、この冷却対象設備を通った後の海水を海へ放出するための冷却水流路内において海洋生物の付着及び成長を抑制する方法であって、
    前記冷却水流路に冷却水の流れの方向に沿って塩素系薬剤を注入するための複数の薬剤注入部を設け、それら複数の薬剤注入部を、前記取水路を流れる冷却水が各薬剤注入部の間を流れるのに要する時間に基づいて決定したタイミングで順次切り替えながら前記冷却水流路内へ塩素系薬剤を注入することを特徴とする方法。
  2. 冷却水として海から海水を取り入れて冷却対象設備に供給し、この冷却対象設備を通った後の海水を海へ放出するための冷却水流路内において海洋生物の付着及び成長を抑制するシステムであって、
    前記冷却水流路内の冷却水の流れの方向に沿って設けられた、塩素系薬剤を注入するための複数の薬剤注入部と、
    前記複数の薬剤注入部を、前記取水路を流れる冷却水が各薬剤注入部の間を流れるのに要する時間に基づいて決定したタイミングで順次切り替えながら、前記冷却水流路内へ塩素系薬剤を注入させる制御部と、を備えることを特徴とするシステム。
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