JP4389504B2 - 電気機械装置、電気機械光変調装置、および画像表示装置 - Google Patents

電気機械装置、電気機械光変調装置、および画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に機械的共振周波数成分を有する機械要素を具備し、電気的駆動信号によって機械的駆動がなされる電気機械素子が設けられて成る電気機械装置、電気機械光変調装置、および画像表示装置に関わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体レーザおよび周辺技術の著しい発展により、MEMS(Micro Electro−Mechanical System)素子と呼称される、機械的な動作機構と電気回路を統合した微細素子が開発されるようになった。MEMS素子は、例えば半導体のチップないしは基板内に、稼動部分となる機械要素を盛り込む技術による素子であり、中でも、回折格子により構成される所謂GLV(Grating Light Valve)による光変調素子(GLV素子)は、例えばカラー投影に利用した場合、従来のブラウン管方式に比べて、国際照明委員会(CIE)の1931色度図の面積比で2倍以上という広い範囲の色表現が可能であるため、注目されている。
【0003】
このGLV素子の、例えば張力による復元力を有するマイクロリボンなどの機械要素においては、静電場などにより機械要素の駆動がなされる。
マイクロリボンのような機械要素においては、例えば静電場の印加または遮断の直後に機械的共振周波数をもって振動し、一定の時間を経て振動が減衰する。一般的なMEMS素子の機械要素は、寸法が0.1μm(ミクロン)〜数100nmと小さく、それに対して共振周波数は、一般的な機械の共振周波数(<<10kHz以下)に比べてはるかに高く、例えば100kHz〜数GHzに及ぶ。このようにMEMS素子は共振周波数が高いことから、その機械的応答速度は、1μ秒(マイクロ秒)前後の実現が可能である。
【0004】
しかし一方で、上述の機械要素の振動における機械的共振周波数は、静電場の制御に用いられる電気的信号によって共振が助長される周波数でもあるため、この共振の低減もしくは回避が必要となる。
【0005】
このMEMS素子における機械要素の共振について、MEMS素子の一種である光変調素子すなわち電気機械光変調素子としてのGLV素子を例に説明する。このGLV素子は、例えば図16Aにその概略斜視図を示す素子構成ユニット44を有する。素子構成ユニット44は、回折格子を構成する機械要素すなわちマイクロリボン72が、基板71の上に、互いに平行配列されて、例えば両端が支持されて成る。これらマイクロリボン72は、例えば6本を1組とし、これらマイクロリボン72の配列部下に差し渡って、基板71上に、共通の対向電極73が、マイクロリボン72との間に、所要の間隙を保持するように形成されて成る。
【0006】
そして、これらのマイクロリボン72は、素子構成ユニットにおいて1つおきのマイクロリボンが可動マイクロリボンとされ、これら可動マイクロリボン72と対向電極73との間に所要の信号電圧を印加することによって静電場を形成し、これらリボン72の中央部が基板71に向かって移行するようになされる。
こうして形成される可動マイクロリボンと固定マイクロリボンの相対位置関係によって回折格子が形成され、図16Bに示すように、入射光Liの存在下で回折光(図においては±1次光±Lrのみを示している)が発生される。
【0007】
GLV素子などのMEMS素子は、上述した機械応答速度の速さを利用して例えば光変調素子としての機能をもたせ、画像表示や通信などを行うものである。GLV素子は、例えば図17にその概略図を示すように、素子構成ユニット44を、複数1次元的に配列した1次元光変調素子とすることができる。この1次元光変調素子により形成される1次元画像を、その1次元方向と直交する方向に走査(スキャニング)することによって、2次元画像が得られるものである。
【0008】
スキャニングは、例えばガルバノミラーによるスキャナの例えば往復回転によってなされるが、その往復に関してはいくつかの手法が用いられる。
例えば、図18Aに示すように、往路においてのみスキャニングを行い、区間Δ(デルタ)aを復路(戻り時間;フライバック時間)としてスキャニングを繰り返す手法がある。この場合、区間Δ(デルタ)aの始まりと終わりとが過渡期に相当する。
また、例えば、図18Bに示すように、往路と復路の両方でスキャニングを行い、区間Δ(デルタ)bを反転時間として設ける手法がある。この場合、区間Δ(デルタ)bが過渡期に相当する。
【0009】
このようなスキャニングの過渡期において、例えば電気的信号の導入によって、可動マイクロリボンの動作の制御がなされる。
すなわち、GLV素子においては、例えばマイクロリボンの変位がなされていない状態では、図19Aに示すように入射光は反射されるのみで、回折光が発生することはない。このとき、図19Bに示すように、電圧Vは印加されておらず(V=0)、電気的駆動信号は与えられていない。
これに対し、図20Aに示すように、可動マイクロリボンの変位がなされた状態、すなわち図20Bに示すように電圧Vが印加された(V=VON)、つまり電気的駆動信号が与えられた状態では、相互のマイクロリボンの位置関係によって回折格子が形成され、入射光Liの1次回折光±Lrが発生する。
【0010】
マイクロリボンの変位は電気的駆動信号の有無によって二極的になされるのが理想であるが、電気的駆動信号の入力/停止の直後、例えば図21Bに示すような、電圧変化の生じた直後においては、電気的駆動信号の周波数が電気機械光変調素子の機械要素の機械的共振周波数成分に近い場合、可動マイクロリボンが変位する際の、静電場によって与えられる力とマイクロリボン自体が有する復元力とによって発生する共振が、導入された電気的駆動信号によって助長されてしまう(図21A)。
そして、この共振は、一定の時間を経て減衰し、信号入力直後においては図22Aに示すように、また、信号停止直後においては図22Bに示すように、一定の時間を経て減衰し、その後、リボンは本来目的とする光変調状態もしくは非光変調状態に至るものである。
【0011】
繊細な濃淡表現が可能であるGLV素子においては、このような共振は直接に光変調に影響し、例えば図23に示すような、スキャニングにおける時間的位置、すなわち表示画像における空間的位置による光変調むらの発生など、画質の低下を招くことになる。
すなわち、電気機械光変調素子においては、上述したように機械応答速度の速さを利用して光変調素子としての機能がなされるものであるが、スキャニングにおいては、表示される画像の1ピクセルあたりの通過時間が定められており、この時間よりも十分早く上述の振動が減衰しない場合には、隣接ピクセルに対するクロストークが発生し、これが画像全体の解像度の低下や残像の発生の原因となる。
【0012】
このクロストークの発生特性に関して説明する。マイクロリボンの過渡特性による回折光強度の時間変化すなわち1ピクセルあたりのスキャニング時間に対する隣接ピクセルにおける平均光強度の変化は、[数1]により表される。
【0013】
【数1】
Figure 0004389504
ここで、[数1]において、strは初期リボン位置、trmは最終リボン位置、ResFはリボン共振周波数、Tauはリボンの機械減衰係数、λ(ラムダ)は光源波長、tは時間である。
よって隣接ピクセルへの影響であるクロストークは立ち上がり(あるいは立下り)直後のピクセル1区間の通過時間内で上記式を平均化した値となり、その結果は図24の概略図に示すようになる。
図24に示した曲線81と82とは、ひとつの素子構成ユニットにおける、電気的駆動信号入力が開始されると同時に隣接する素子構成ユニットへの電気的駆動信号入力の停止がなされた場合と、ひとつの素子構成ユニットにおける、電気的駆動信号入力が停止されると同時に隣接する素子構成ユニットへの電気的駆動信号入力の開始がなされた場合とにおける、単位ピクセル通過時間ごとの平均光強度を示す曲線である。
この図に示されたように、1ピクセルあたりのスキャニング時間が少ない場合には、リンギングによる隣接ピクセル干渉は特に顕著となる。
【0014】
この電気機械光変調素子における機械要素の振動を抑制する方法としては、例えばマイクロリボン周囲の雰囲気に粘性の高いものを用いる、或いはMEMS素子の共振周波数を駆動信号の周波数帯域より十分高くなるよう製造する、などの方法が考えられるが、雰囲気の粘性を高くした場合にはMEMS素子の駆動信頼性の低下が、共振周波数が高くなるよう製造した場合には駆動電圧の上昇や機械要素の可動範囲の制限が、それぞれ発生してしまう。
【0015】
この問題に対し、振動発生後に逆位相のパルス波を導入することで、この振動を低減するという方法の提案がなされた(例えば特許文献1参照)。
【0016】
【特許文献1】
特開2001−174720号、請求項1、および段落番号[0014]。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、素子構成ユニットの数の増大化を図る場合、必然的に単位時間あたりのマイクロリボン動作回数を増やすことが求められるが、上述した共振を回避しない限り、動作回数の増加による画質向上と共振による画質低下が共存することとなり、実質的な画質向上は、制限を免れない。
また、GLV素子に限らず、MEMS素子は一般に微細な構造を有するため、構造内部で生じた不具合に対して、内部にそれを解決する機能を持たせることは難しく、また適切でない。
そして、電気機械光変調素子は上述のように素子構成ユニットが1次元的に配列される構成をとり得るものであるが、例えば通常のテレビ画像であれば素子構成ユニットは500個以上必要であり、またHDTV(High Difinition Television)においては1000個以上配列されることが求められる。また、電気機械光変調素子は半導体製造における微細製造技術を用いて製作されるのが一般的であるため、素子構成ユニットに対して、共振に対する解決手段を別途設けることは現実的でない。
【0018】
本発明は、電気機械装置、電気機械光変調装置および画像表示装置におけるMEMS素子すなわち電気機械素子に係わる諸問題の解決を図るものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明による電気機械装置は、電気的駆動信号によって駆動される電気機械装置であって、機械的共振周波数成分を有する機械要素を具備する電気機械素子と、該電気機械素子を駆動する駆動信号の信号源と、この信号源からの駆動信号から上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段、すなわち例えばRC(抵抗容量)回路による高周波遮断回路とを有する。
【0020】
また、本発明による電気機械装置においては、上述の機械要素の少なくとも一部が電気的駆動信号によって駆動変位され得る。
そして、本発明による電気機械装置においては、機械要素の駆動は、電気的駆動信号による静電駆動によってなされ得る。
また、本発明による電気機械装置においては、電気機械素子と、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とが、一体として形成され得る。
そして、本発明による電気機械装置においては、上述の共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段は、高周波遮断回路より構成され得る。
【0021】
本発明による電気機械光変調装置は、電気的駆動信号によって駆動される電気機械光変調装置であって、機械的共振周波数成分を有する機械要素を回折格子とする光変調素子を構成する電気機械光変調素子と、この電気機械光変調素子を駆動する駆動信号の信号源と、この信号源からの駆動信号から上述の共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とを有する。
【0022】
また、本発明による電気機械光変調装置においては、上述の機械要素は、その少なくとも一部の要素が電気的駆動信号によって駆動変位されるものであり、機械要素の変位によって、入射光の変調がなされるものである。
また、本発明による電気機械光変調装置においては、機械要素の駆動は、上述の電気的駆動信号による静電駆動によってなされ得る。
そして、本発明による電気機械光変調装置においては、電気機械光変調素子と、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とが、一体として形成され得る。
そして、本発明による電気機械光変調装置においては、上述の共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段は、高周波遮断回路より構成され得る。
【0023】
本発明による画像表示装置は、電気的駆動信号によって駆動される電気機械光変調装置から成る。
また、本発明による画像表示装置においては、機械的共振周波数成分を有する機械要素を具備する電気機械素子と、この電気機械素子を駆動する電気的駆動信号の信号源と、その共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とを有する。
そして、本発明による画像表示装置においては、上述の機械要素の変位によって、入射光の変調がなされる光変調機構を有する。
【0024】
本発明による電気機械装置、電気機械光変調装置、および画像表示装置においては、信号源からの電気的駆動信号から機械素子の共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段を設けて、機械要素を駆動する電気的信号が機械要素に到達する前に、この機械要素の共振周波数成分に相当する信号を遮断ないし減少させるものであるから、電気機械素子の共振を回避ないしは低減でき、この共振発生による素子の動特性の低下が改善される。
すなわち、この手段は、例えばRC回路による高周波遮断回路によって構成するが、この回路の遮断周波数は、(抵抗値×容量/2π)で与えられることから、RおよびCの設定によって、遮断周波数が機械要素の共振周波数よりも低いように設定することにより、上述の共振周波数成分の遮断ないし減少がなされる。
【0025】
本発明における電気機械素子および電気機械光変調素子においては、駆動に要する電力は通常極めて小さく(<<nW)、これに対して共振周波数は上述のように高いため、例えばRC回路による高周波遮断回路を構成する抵抗およびコンデンサは、充分現実的に製造可能な抵抗およびコンデンサとすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明による電気機械装置の実施の形態例として、電気機械光変調装置を示して説明するが、本発明は、この実施の形態例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0027】
本発明による電気機械装置すなわち電気機械光変調装置1の実施の形態例を、図1の概略構成図を参照して説明する。
この電気機械光変調装置1は、例えば機械的共振周波数成分を有する機械要素5例えばマイクロリボンから成る光変調素子を構成する電気機械光変調素子2例えばGLV素子と、この電気機械光変調素子を駆動する電気的駆動信号の信号源3と、この信号源3からの電気的駆動信号から上述の共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段例えばRC回路による高周波遮断回路4とを有する。
ここで、電気機械光変調素子は、上述したように、例えば図16Aにその概略斜視図を示す複数の機械要素例えばマイクロリボン72が、基板71の上に、互いに平行配列されて、例えば両端が支持されて成る。これらマイクロリボン72は、例えば6本を1組とし、これらマイクロリボン72の配列部下に差し渡って、基板71上に、共通の対向電極73が、マイクロリボン72との間に、所要の間隙を保持するように形成されて成る。
そして、これらのマイクロリボン72は、素子構成ユニットにおいて1つおきのマイクロリボンが可動マイクロリボンとされ、これら可動マイクロリボン72と対向電極73との間に所要の電圧を印加することによって、これらリボン72の中央部が基板71に向かって移行するようになされる。
こうして形成される可動マイクロリボンと固定マイクロリボンの相対位置関係によって回折格子として機能し、図16Bに示すように、入射光の存在下で回折光の発生をなし得るものである。
信号源3からの駆動信号によって、電気機械光変調素子2が光変調を行うための機械要素例えばマイクロリボン5の駆動、すなわち変位がなされ、回折格子が形成されることから、電気機械光変調素子2が光変調素子として機能し得るものである。
上述したように、高周波遮断回路4において、信号源3からの駆動信号のうち、機械要素例えばマイクロリボン5の共振周波数に相当する成分が遮断ないし減少されることによって、機械要素例えばマイクロリボン5に対し、この共振周波数成分が与えられないことから、共振が低減もしくは回避される。
【0028】
次に、本発明による電気機械光変調装置における、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段による、上述した機械要素の共振の低減もしくは回避について、図2Aおよび図2Bを参照して説明する。
【0029】
図2Aにおいて、曲線6および曲線7は、それぞれ本発明による光変調装置と、従来技術による光変調装置とにおける、上述した駆動信号の入力が開始される前後の光変調の様子を示している。
本発明による光変調装置においては、駆動信号の入力開始の後、従来技術においてみられたような光変調状態/非光変調状態間の繰り返し変動すなわち共振はみられず、スムーズに光変調状態へと移行している。更に、その結果として、従来技術に比べて、光変調状態への移行時間も短縮されている。
【0030】
次に、図2Bにおいて、曲線8および曲線9は、それぞれ本発明による光変調装置と、従来技術による光変調装置とにおける、上述した駆動信号の入力が停止される前後の光変調の様子を示している。
本発明による光変調装置においては、駆動信号の入力停止の後、従来技術においてみられたような光変調状態/非光変調状態間の繰り返し変動すなわち共振はみられず、スムーズに非光変調状態へと移行している。更に、その結果として、従来技術に比べて、非光変調状態への移行時間も短縮されている。
【0031】
次に、本発明による電気機械光変調装置の第1の実施の形態例を、図3を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
この実施の形態においては、電気機械光変調装置1が、電気機械素子例えば電気機械光変調素子2と、機械要素を駆動する電気的駆動信号の信号源3と、高周波遮断回路4とを有して成る。高周波遮断回路4は、抵抗10と、電気機械光変調素子が形成された基板例えば半導体Si基板に形成された容量14とより構成される。
この例において、容量14は、電気機械光変調素子に電気的駆動信号を供給する信号源3と、この電気的駆動信号が供給される電気機械光変調素子の回折格子の構成要素すなわち機械要素との結線の上面または下面のいずれか少なくとも一方に対向して導電体11を形成し、この導電体11と結線との間に形成される分布容量によって容量14を構成した場合である。
そして、この抵抗10と、導電体11による容量14とによる高周波遮断回路4は、これによる遮断周波数がGLV素子の回折格子の構成要素すなわち機械要素の共振周波数を下回るように形成される。
信号源3からの、電気機械光変調素子2内の機械要素を駆動する駆動信号の、電気機械素子2の機械要素の共振周波数に相当する成分は、例えば抵抗10と導電体11とによって構成される高周波遮断回路によって遮断ないし減少をなされる。
【0032】
次に、本発明による電気機械光変調装置の第2の実施の形態例を、図4を参照して説明する。
〔第2の実施の形態〕
この実施の形態においては、電気機械光変調装置1が、電気機械素子例えば電気機械光変調素子2と、電気機械光変調素子を駆動する電気的駆動信号の信号源3と、高周波遮断回路4とを有して成る。この高周波遮断回路4は、例えば電気機械光変調素子と一体に形成した抵抗10と容量14とより構成される。
この例において、容量14は、電気機械光変調素子2に電気的駆動信号を供給する信号源3と、この電気的駆動信号が供給されるGLVの回折格子の構成要素すなわち機械要素との結線の上面または下面のいずれか少なくとも一方に対向して導電体11を形成し、この導電体11と結線との間に形成される分布容量によって構成した場合である。すなわち、この実施の形態においては、抵抗と容量の分散回路が形成されるものである。
そして、この抵抗10と導電体11とによる高周波遮断回路4は、これによる遮断周波数がGLVの回折格子の構成要素すなわち機械要素の共振周波数を下回るように形成される。
信号源3からの、電気機械光変調素子2内の機械要素を駆動する駆動信号の、電気機械光変調素子2の機械要素の共振周波数に相当する成分は、例えば抵抗10と導電体11とによって構成される高周波遮断回路によって遮断ないし減少をなされる。
そして、この例においては、高周波遮断回路4が、直列的に複数配置される抵抗と導電体とによって構成されるため、電気機械素子2内の機械要素の共振周波数に相当する成分の遮断ないし減少が、より正確かつ厳密な制御を以ってなされ得る。
【0033】
次に、本発明による電気機械光変調装置の第3の実施の形態例を、図5を参照して説明する。
〔第3の実施の形態〕
この実施の形態においては、電気機械光変調装置1が、電気機械素子例えば電気機械光変調素子2と、電気機械光変調素子を駆動する電気的駆動信号の信号源3と、高周波遮断回路4と、増幅器13とを有して成る。高周波遮断回路4は、例えば抵抗と容量とより構成される。これらが、例えば増幅器13が形成される半導体集積回路に組み込まれて形成される。
そして、この場合においては、高周波遮断回路4は、これによる遮断周波数がGLVの回折格子の構成要素すなわち機械要素の共振周波数を下回るように形成される。
信号源3からの、電気機械光変調素子2内の機械要素を駆動する駆動信号の、電気機械光変調素子2の機械要素の共振周波数に相当する成分は、例えば高周波遮断回路によって、遮断ないし減少をなされる。
この場合、信号源3からの、共振周波数成分の遮断ないし減少をなされた駆動信号は、増幅器13によって、電気機械光変調素子2の機械要素の共振周波数に相当しない成分を増幅をなされて、電気機械光変調素子2に供給される。
すなわち、この例では、必要かつ十分な駆動信号の伝達が、上述の機械要素に対する駆動信号の到達を妨げない形でなされる。
【0034】
以上の実施の形態例において示したように、本発明による電気機械装置、電気機械光変調装置、および画像表示装置においては、上述の機械要素の共振周波数に相当する成分が単に遮断ないし減少をなされるだけでなく、必要に応じて、機械要素に到達する駆動信号を増幅するなど、使用態様を望ましい種々の構成とし得るものである。
また、電気機械光変調素子を構成する機械要素は、このようなマイクロリボンによるものに限られるものではなく、例えば所謂ブレーズによって回折格子を形成する方式のものなどとすることもできる。
【0035】
次に、本発明による電気機械装置としての電気機械光変調装置の一例の具体的構造を、その理解を容易にするために、その製造方法の一例と共に説明する。この例においては、電気機械素子と、共振周波数成分を遮断ないし減少させる高周波遮断回路4とを、同一基板上に形成した場合であり、その製造プロセスを、図6〜図14を参照して説明する。
【0036】
図6は、目的とする電気機械光変調装置の一例の一製造過程における要部の上面図を示す。図7A〜Cは、この図6で示す過程に至る工程の、図6におけるa−a´線上の断面図を示す。
この例においては、まずSi基板21上に、この基板21の表面酸化によるSiOによって第1の絶縁層22を形成する(図7A)。次に、この第1の絶縁層22上に、全面的に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)によって多結晶Si層23を形成する(図7B)。次に、この多結晶Si層23をパターンエッチングして、例えば最終的に回折格子の構成要素を形成する領域下の対向電極23sと、最終的に抵抗とそのコンタクト部を構成する抵抗層23rを残して他部を除去する。その後、表面熱酸化して、これらの表面に例えばSiOより成る第2の絶縁層25を形成する。
尚、図7Cにおいては、最終的に容量が形成される領域を容量部とし、その両側に抵抗と機械要素例えばマイクロリボンが形成される領域を、それぞれ抵抗部とリボン部として模式的に示した。
【0037】
次に、図8A〜Cで示す工程が採られる。
この工程では、上述の工程で形成されたリボン部側の第2の絶縁層25上に、多結晶Si層31を多結晶Si層23におけると同様に例えばCVDおよびパターンエッチングによって形成する(図8A)。この場合、目的とするリボン(回折格子の構成要素)の固定端に透孔が形成される。
そして、例えばスパッタにより第3の絶縁層32を全面的に形成する。この抵抗部側の多結晶Si層23rの上部の第2の絶縁層25および第3の絶縁層32をエッチングによって除去する(図8B)。
その後、全面的に例えばスパッタによってAl層33を全面的に形成する(図8C)。
【0038】
次に、図9に上面図を示すように、Al層33をパターンエッチングして、最終的に複数のリボンを形成するリボン形成領域33aと、これより延長してリボンの端子導出部33cと、容量形成の下層電極部33bと、抵抗形成部33eとを残して他部を除去する。
【0039】
図10Aは、図9のb−b´線の断面図で、上述の工程により、Si基板21上に、第1の絶縁層22と、多結晶Si層23sと、第2の絶縁層25と、多結晶Si層31と、第3の絶縁層32と、リボン形成領域33aとが積層された状態が示されている。
そして、例えば、上面からのドライエッチングにより、最終的に得るリボンを区分する溝を形成し、多結晶Si層31の一部が表面に露出した状態とすると共に、リボンを形成する領域33aと第3の絶縁層32とをカットして、各々独立した、それぞれ絶縁層32によって裏打ちされたリボン成型領域33dによって構成されたマイクロリボン(機械要素)72が形成される(図10B)。ここで、溝は多結晶Si層31に達していればよく、必ずしも31を掘削していなくともよい。
その後、例えばドライエッチングにより、多結晶Si層31の除去がなされる(図10C)。これにより、電気機械光変調装置1において、各マイクロリボン72の、例えば静電駆動による垂直方向への移行保持が可能となる。
この工程により形成される要部の概略上面図を、図11に示す。
【0040】
図12Aは、続く工程における断面図を示す。図13は、この図12Aで示す工程より形成される、要部の概略上面図である。
この例においては、上述の製造工程で形成したAl層33の容量部に、例えばCVDによる酸化シリコンなどの容量形成用絶縁膜34が形成される。
【0041】
図12Bは、上述の製造工程に続く工程における断面図を示す。図14は、この図12Bで示す工程により形成される、要部の概略上面図である。
この工程においては、容量形成用絶縁膜34の上面に、Al層33のうち容量部に位置する下層電極33dの対向電極35と、固定マイクロリボンの固定電位を与える電極36とを、それぞれ例えばスパッタ等により形成する。
このようにして、絶縁膜34を挟んで対向する下層電極33bと対向電極35との間に、容量14が形成され、一方、多結晶Si層33rによって抵抗11が形成され、高周波遮断回路4が形成される。
なお、図14に示したように、可動マイクロリボンと固定マイクロリボンおよびそれぞれのリボン端子導出部33cは、マイクロリボン72からみて交互に配するのが、装置の空間的構成上望ましい。
【0042】
本発明による電気機械装置および電気機械光変調装置においては、例えば上述したような製造工程によって、電気機械素子と、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とが一体とされた構造が形成され得る。
【0043】
次に、本発明による画像表示装置の実施の形態例を、図15を参照して説明する。
この例においては、画像表示装置51は、例えば3箇所の光源部61a、61b、61cと、これら光源部からの光を変調する機能を有する、本発明による電気機械光変調装置1と、変調された光を反射/合成するダイクロイックミラー63および64と、合成された光を投影光として導入する投影レンズ65と、投影光の例えば水平方向へのスキャニングを行うスキャナ66と、スキャニングされた投影光が像を形成するスクリーン67とを有する。また、この例においては、ミラー68および集光レンズ69が併設されて成る。
【0044】
本発明による画像表示装置においては、電気機械光変調装置1内の電気機械光変調素子2において、機械要素の共振が回避ないし低減を図られることから、良好な応答性による適切な光変調がなされ、スキャナ66によるスキャニングで生成する、スクリーン67上の投影像の画質劣化の回避が図られるものである。
【0045】
【発明の効果】
本発明による電気機械装置および電気機械光変調装置においては、信号源からの電気的駆動信号の、各装置内の素子を構成する機械要素の共振周波数成分が遮断ないしは減少をなされるため、機械要素の共振の回避ないしは低減が図られる。
したがって、本発明による画像表示装置においては、動作回数の増加による画質向上と共振による画質低下との共存が回避されることから、実質的な画質向上に対する制限の緩和が図られる。
【0046】
更に、本発明による電気機械装置、電気機械光変調装置および画像表示装置においては、電気機械素子と、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とが、例えば同一基板上に一体として形成されることから、製造工程の簡略化や断線の回避による歩留まりの向上が図られるなど、本発明構成によれば、重要かつ多くの効果をもたらすことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電気機械装置の代表例としての電気機械光変調装置の、一例の概略模式図である。
【図2】本発明による電気機械光変調装置の一例における、共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段による、機械要素の共振抑制に関する測定結果の概略図である。
【図3】本発明による電気機械光変調装置の、一例の概略構成図である。
【図4】本発明による電気機械光変調装置の、別の一例の概略構成図である。
【図5】本発明による電気機械光変調装置の、別の一例の概略構成図である。
【図6】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の、一製造工程における概略上面図である。
【図7】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の一製造工程における、一部の概略断面図である。
【図8】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の一製造工程における、一部の概略断面図である。
【図9】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の、一製造工程における概略上面図である。
【図10】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の一製造工程における、一部の概略断面図である。
【図11】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の、一製造工程における概略上面図である。
【図12】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の一製造工程における、一部の概略断面図である。
【図13】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の、一製造工程における概略上面図である。
【図14】本発明による電気機械光変調装置の一例における、電気機械素子内の要部の、一製造工程における概略上面図である。
【図15】本発明による、電気機械光変調装置から成る画像表示装置の一例の概略構成図である。
【図16】電気機械素子内の素子構成ユニットの概略斜視図、および素子構成ユニットにおける、マイクロリボンの変位と回折光発生との関係を示す概略図である。
【図17】本発明による電気機械装置および電気機械光変調装置を構成する、各素子内の素子構成ユニットの配列構成例を示した概略図である。
【図18】本発明による電気機械光変調装置を用いた画像表示における、スキャニングの例を示した概略図である。
【図19】本発明による電気機械光変調装置における、駆動信号の入力がなされていない状態でのマイクロリボンの相対位置および電圧印加の状態を示す概略図である。
【図20】本発明による電気機械光変調装置における、駆動信号の入力がなされている状態でのマイクロリボンの相対位置および電圧印加の状態を示す概略図である。
【図21】本発明による電気機械光変調装置における、駆動信号の入力がなされる前後でのマイクロリボンの相対位置および電圧印加の状態を示す概略図である。
【図22】機械要素の一例すなわちマイクロリボンの、駆動信号の入力および停止がなされた直後の、GLVを構成する各リボンの共振状態の一例を示す概略図である。
【図23】機械要素の一例すなわちマイクロリボンの共振による、投影像の画質に対してスキャニングにより発生する影響の一例を示す概略図である。
【図24】本発明による電気機械光変調装置を有する画像表示装置における、クロストークによる隣接ピクセル干渉とスキャニングの速度との関係を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・電気機械光変調装置、2・・・電気機械素子、3・・・信号源、4・・・高周波遮断回路、5・・・機械要素、6・・・本発明における電気機械素子への信号入力開始前後の回折光強度波形、7・・・従来技術における電気機械素子への信号入力開始前後の回折光強度波形、8・・・本発明における電気機械素子への信号入力停止前後の回折光強度波形、9・・・従来技術における電気機械素子への信号入力停止前後の回折光強度波形、10・・・抵抗、11・・・導電体、12・・・基板、13・・・増幅器、14・・・容量、21・・・Si基板、22・・・第1の絶縁層、23・・・多結晶Si層、23r・・多結晶Si(抵抗部側)、23s・・・多結晶Si(リボン部側)、25・・・第2の絶縁層、31・・・多結晶Si層、32・・・第3の絶縁層、33・・・Al層、33a・・・リボン形成領域、33b・・・下層電極、33c・・・リボン端子導出部、33d・・・リボン成型領域、33e・・・抵抗形成部、34・・・容量形成用絶縁膜、35・・・対向電極、36・・・電極、44・・・素子構成ユニット、45・・・素子構成ユニット配列例、51・・・画像表示装置、61a・・・光源部、61b・・・光源部、61c・・・光源部、63・・・ダイクロイックミラー、64・・・ダイクロイックミラー、65・・・投影レンズ、66・・・スキャナ、67・・・スクリーン、68・・・ミラー、69・・・集光レンズ、71・・・基板、72・・・機械要素(マイクロリボン)、73・・・対向電極、81・・・曲線、82・・・曲線

Claims (10)

  1. 電気的駆動信号によって駆動される電気機械装置であって、
    機械的共振周波数成分を有する機械要素を具備する電気機械素子と、該電気機械素子を駆動する電気的駆動信号の信号源と、該信号源からの駆動信号から上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とを有し、
    上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段は、上記電気機械素子と一体に形成された複数の直列配置された抵抗と容量とからなるものを複数並列に配置させて成ることを特徴とする電気機械装置。
  2. 上記機械要素は、その少なくとも一部の機械要素が上記電気的駆動信号によって駆動変位されることを特徴とする請求項1に記載の電気機械装置。
  3. 上記機械要素の駆動は、上記電気的駆動信号による静電駆動によることを特徴とする請求項1に記載の電気機械装置。
  4. 上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段が、高周波遮断回路であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械装置。
  5. 電気的駆動信号によって駆動される電気機械光変調装置であって、
    機械的共振周波数成分を有する機械要素を回折格子とする光変調素子を構成する電気機械光変調素子と、該電気機械光変調素子を駆動する電気的駆動信号の信号源と、該信号源からの駆動信号から上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とを有し、上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段は、上記電気機械光変調素子と一体に形成された複数の直列配置された抵抗と容量とからなるものを複数並列に配置させて成ることを特徴とする電気機械光変調装置。
  6. 上記機械要素は、その少なくとも一部の要素が上記電気的駆動信号によって駆動変位されることを特徴とする請求項5に記載の電気機械光変調装置。
  7. 上記機械要素の変位によって、入射光の変調がなされることを特徴とする請求項5に記載の電気機械光変調装置。
  8. 上記機械要素の駆動は、上記電気的駆動信号による静電駆動によることを特徴とする請求項5に記載の電気機械光変調装置。
  9. 上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段が、高周波遮断回路であることを特徴とする請求項5に記載の電気機械光変調装置。
  10. 電気的駆動信号によって駆動される電気機械光変調装置を有する画像表示装置であって、
    機械的共振周波数成分を有する機械要素を具備する電気機械素子と、該電気機械素子を駆動する駆動信号の信号源と、該信号源からの駆動信号から上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段とを有し、上記共振周波数成分を遮断ないし減少させる手段は、上記電気機械素子と一体に形成された複数の直列配置された抵抗と容量とからなるものを複数並列に配置させて成り、上記機械要素の変位によって入射光の変調がなされる電気機械光変調装置を有することを特徴とする画像表示装置。
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