JP4387678B2 - キャストコート紙の製造方法及び凝固液供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、ゲル化法キャストコート紙の製造工程において、キャストドラムの曇り、ドラムへの塗被層剥離等が少なく、連続操業性に優れる、白紙光沢度の高いキャストコート紙の製造方法及びキャストコート紙を製造するための凝固液供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
キャストコート紙の製造法は、原紙表面に塗料を塗被した後、塗被層が湿潤状態のまま直ちにフォーミングロールによってキャストドラムに圧着させる直接法と、塗料を塗被した後、塗膜を凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラムに圧着させるゲル化法と、塗料を塗被した後一旦乾燥させて乾燥塗被面を得、その後塗被面を水または適当な再湿潤液で再湿可塑化させ、キャストドラムに圧着させる再湿潤法に大別される。
【0003】
直接法は、湿潤塗被層がキャストドラムに圧着された際、塗料中の水分が急激に沸騰して塗被層を破壊し、無数の微細なピンホールを発生させてしまうため、ピンホールのない良好な面状が要求される粘着ラベル用途や工程紙用途のキャストコート紙の製造に利用することは困難である。
【0004】
一方ゲル化法は、再湿潤法のように塗被層を一旦乾燥固化することなく、可塑性のあるゲル状態で凝固した後、キャストドラムに圧着、乾燥させるために嵩高く、ポーラスで軟らかい塗被層を形成する特徴がある。したがって、このゲル化法で製造したキャストコート紙は、外的な圧力に対して変形し易いため、例えば、任意の幅にカットして巻き取りを製品化するワインダー処理工程において、ワインダードラムに押し付けられて一定の加圧下で巻き取られる際、塗被層が変形して白紙光沢度が低下する問題点がある。また巻き取られる際に、幅方向で紙厚が厚い部分は巻径が厚くなり、余計な集中加重を受けるため、その部分だけ白紙光沢度が著しく低下する問題が生じる。その他、ワインダー処理後においても、包装工程や製品の搬送、運搬工程においても製品巻き取りを転がすことは避けられないが、その際にも圧力を受けて塗被層が変形して、白紙光沢度が低下する場合も起こる。
【0005】
近年では、より荷重のかからない状態で、かつ低張力下で軟らかく巻き取りを巻き取ることができるワインダーが使用されるようになってきたため、白紙光沢度低下の問題もかなり改善されるようになってきたが、特にゲル化法で製造したキャストコート紙では、依然としてワインダー処理工程、あるいはそれ以後の工程において、紙の幅方向の不均一性に起因する不均一な白紙光沢度低下が問題となっている。したがって一般的にゲル化法でキャストコート紙を製造する場合には、塗被直後の段階で可能な限り白紙光沢度を高くすべく鋭意努力がされている。
【0006】
またゲル化法の場合、前述のごとく塗被層を一旦乾燥固化することなく、可塑性のあるゲル状態で凝固した後、キャストドラムに圧着、乾燥させるため、連続的に操業していくにつれて、凝固浴へ送液するタンク内に回収再利用される凝固液の中に塗被層からの成分が溶出してきたり、また経時的に凝固液中の成分が温度変化により揮発していく場合もある。このように連続操業を続けていくにつれて凝固液の性質が徐々に変化していくことにより、塗被層の凝固性(剥離性)が徐々に劣ってくるため、キャストドラムの表面に塗被層の一部が剥離して取られ始め薄く白く曇った状態になってくる。同時に塗被後の白紙光沢度も徐々に低下してくる。この状態を長く続けていくと、最後にはキャストドラムに塗被層が急激に取られ断紙してしまう。したがって、ある程度キャストドラム表面の曇りが進行し、白紙光沢度が低下し始めたら、キャストドラムに剥離剤を塗布し研磨するためにマシンを一旦停止しなければならなくなってしまう。
【0007】
以上よりゲル化法キャストコート紙の製造にあたっては、操業中の経時的な変化を常に注視し、より長い時間連続操業を続け生産効率を上げるための努力が鋭意行われている。近年操業中の変化を注視する例としては、連続的にオンラインで白紙光沢度の変化を計測したり、塗被層の剥離により発生する微小な欠陥を画像解析可能な高性能欠陥検出器で監視したりする手段が用いられるようになってきている。また一方では塗被液や凝固液の組成・配合を最適化することによってキャストドラムが曇らない剥離性の優れた処方の検討が鋭意行われている。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−168789号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況に鑑み、本発明はキャストドラムの曇り、ドラムへの塗被層剥離等が少なく連続操業性に優れ、白紙光沢度の高いキャストコート紙の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記のごとく連続操業を続けていくにつれて凝固液の性質が徐々に変化し、塗被層の凝固性(剥離性)が徐々に劣ってくるため、キャストドラムの表面に塗被層の一部が剥離して取られ始め薄く白く曇った状態になってくる。本発明者等は、凝固液の性状変化を常時監視し、コントロールする手法について鋭意検討した結果、電磁誘導方式の電導度計を使用し、凝固浴へ送液するタンク内の凝固液の導電率を55〜95mS/cmの範囲内に制御することによって、キャストドラムの曇りの発生を抑え、白紙光沢度の低下をなくすことができることを認めた。
【0011】
本発明のゲル化法キャストコート紙の製造方法は、顔料及び接着剤を主成分とする塗料を原紙に塗被した後、塗膜を凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラム鏡面に圧着、乾燥させる前記ゲル化法キャストコート紙の製造方法において、凝固液を凝固浴へ送液し、該凝固浴から回収した凝固液を前記凝固浴に循環させ、その循環させる凝固液の導電率(電磁誘導式電気導電率)を55〜95mS/cmの範囲内に保持し、前記導電率が55mS/cm未満となった場合には、新鮮な凝固液を補充し、前記導電率が95mS/cmを超える場合には、新鮮な凝固液を補充することなく、凝固液を循環させること特徴とするキャストコート紙の製造方法である。
【0012】
また、本発明の凝固液供給装置は、顔料及び接着剤を主成分とする塗料を原紙に塗被した後、塗膜を凝固液を有する凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラム鏡面に圧着、乾燥させるゲル化法キャストコート紙を製造するための、凝固液供給装置において、前記凝固液供給装置は、電磁電導度計を設置した凝固液供給タンク及び前記凝固液供給タンクに接続された新鮮な凝固液の貯蔵タンクからなり、前記凝固液供給タンクは、凝固液供給ラインを通って凝固浴に接続されており、前記凝固浴は、凝固液回収ラインを通って前記凝固液供給タンクに接続されており、それにより、前記凝固浴より回収された凝固液は、前記凝固液供給タンクに移送され、かつ、凝固浴に循環されており、
ここで、前記電磁電導度計により凝固液供給タンク中の凝固液の導電率を測定して、その値が、55mS/cm未満である場合、前記貯蔵タンクより新鮮な凝固液を凝固液供給タンクへ移送してその値を55〜95mS/cmの範囲内になるようにし、係る範囲内の凝固液を凝固浴へ移送しかつ循環させ、その値が、95mS/cmを超える場合、前記貯蔵タンクから新鮮な凝固液を凝固液供給タンクへ移送することなく、前記凝固液供給タンクから凝固浴へ凝固液を移送しかつ循環させる、ことを特徴とする凝固液供給装置である。また、前記凝固浴と前記供給タンクの間に沈降タンクを設置することができ、使用済み凝固液を系外に抜き出すことができる。
【0013】
以下発明の詳細を示す。
本発明者等は、凝固液の性状変化について、(1)凝固液のPHや温度の変化 (2)電導度の変化 を追跡調査し、キャストドラムの曇り、塗被層の剥離取られの発生との関係について検討を重ねた結果、PHや温度の変化とは必ずしも明確な相関性が見出せなかったが、電導度との相関性があることを認めた。そこで更に種々最適な電導度測定装置について検討した。電極に電流を流して電導度を測定する方法や電磁誘導を利用して導電率を測定する方法について種々比較検討した結果、電磁誘導方式の電導度計を使用した場合が、キャストドラムの曇り、塗被層の剥離取られの発生と最も相関が高いことを見出した。この電導度計検出器は、図1及び2に示したように重ね合わせた2つのトランスを絶縁ケースに入れた構造で、これを凝固液中に浸し、電磁誘導を利用して導電率を測定するものである。
【0014】
図1では、電磁電導度計によって電磁誘導式電気導電率を測定し、その値を目標として設定された導電率と比較し、その結果に基づいて供給タンクの入り口に設置されている電磁弁を開閉操作を行う。
【0015】
このタイプの電導度計を用いて測定した導電率と操業性の比較検討をした結果、導電率が55mS/cmより小さくなるとキャストドラムを注視すると薄っすらと曇りが発生し始め、白紙光沢度がしだいに低下していくことを認めた。この状態で更に操業を続け、導電率が低下していくと塗被層がキャストドラムに取られ始め、ドラムは一層白く曇り、最後には全幅で塗被層が取られ断紙する。
【0016】
この原因としては、凝固液成分の塩溶液濃度が低下し、塗被液中の不純成分が凝固液中に溶出してくるために凝固性が低下して曇りが発生するものと考えられる。
【0017】
また導電率は高く安定していることが望ましいが、連続操業中95mS/cmより大きい電導度を維持するためには、高濃度の凝固液を常時凝固液中に添加し続ける必要が生じ操業が煩雑になる上、取り扱い安全上も好ましくなく、コストアップにもなる。また白紙光沢度も導電率を95mS/cm より高く維持しても変化がない。
【0018】
なお、導電率が55〜95mS/cmの範囲内にある場合は、貯蔵タンクより新鮮な凝固液を凝固液供給タンクへ移送してもよいし、また、移送しないことで係る範囲を保持することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において、キャスト塗被に使用する顔料を特に規定するものではないが、一般的に使用されるカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、サチンホワイト、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、プラスチックピグメント等を一種または二種以上混合して使用される。また、離型剤としてステアリン酸カルシウム等脂肪酸もしくは高級脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、高級アルコール、ワックスエマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、ノニオン系界面活性剤等が使用される。その他適宜必要に応じ、色味付け染料、蛍光染料、消泡剤等助剤も併用される。
【0020】
また、塗被液中に使用する接着剤としては、カゼイン、スチレン・ブタジエン系ラテックス、エチレン・酢ビ系ラテックス、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコールや大豆蛋白、合成蛋白や各種デンプン系接着剤等が使用される。
【0021】
また凝固液には、ギ酸、ホウ酸、イタコン酸、リンゴ酸、アクリル酸等の塩類(カルシウム塩やアンモニウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等)が使用される。また適宜各種離型剤、界面活性剤、染料定着剤、耐水化剤が併用される。
【0022】
本発明で使用される原紙としては、一般の印刷用塗被紙やキャストコート紙に用いられる坪量50〜300g/m2の原紙であり、目的により上質紙、中質紙を選択して使用する。またキャストコート紙表面に下塗り塗被したものや、裏面にも塗被したような塗被紙も原紙として使用できる。
【0023】
原紙へのキャストコート紙の塗被量は、原紙の片面当たり固形分で10〜30g/m2の範囲で塗被するのが好ましい。かくして原紙上に形成された塗被層は凝固液によって凝固され、加熱された鏡面ドラムに圧接されて製造される。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、これらによって本発明は何等制約を受けるものではない。なお、例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0025】
〈評価方法〉
(1)電導度計:東亜DKK製電磁導電率計MDM-300(変換器)及び検出器(ME-11T)を使用し、凝固浴に凝固液を送液するタンク内の導電率を測定し、操業状況との関連性を確認していった。
【0026】
*)変換器仕様
・電源:DC24V
・伝送出力:DC 4〜20mA
・導電率測定範囲:0〜100mS/cm(25℃)
(2)白紙光沢度
塗被液を塗被、乾燥後の製品の白紙光沢度をJIS P-8142に従い角度75°で測定した。
[実施例1]
シリカ100部及びコロイダルシリカ20部に消泡剤、防腐剤を適宜加えて水に分散させ固形分濃度30%の顔料スラリーを調製した。これに消泡剤としてヂシアンジアミド0.8部を加え、アンモニアを用いて溶解したカゼイン水溶液(固形分濃度10%)6部及び、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス7部及びスチレンアクリル樹脂18部、ウレタン樹脂22部を加え、離型剤としてポリエチレンエマルジョンを3部配合し、最後に水、アンモニアを加えて固形分濃度30%の塗被液を調製した。
【0027】
また凝固液としてギ酸アンモニウム100部に対し、染料定着剤を75部、ポリエチレンワックスエマルジョン10部、界面活性剤4部添加し、水で希釈して11%固形分濃度の凝固液を調製した。
【0028】
上記の方法により調製した塗被液を用い、坪量110g/m2の広葉樹晒しクラフトパルプ単独配合原紙の片面に、乾燥塗被量が17g/m2となるように塗被液をロールコータで塗被し、次いで凝固液に接触させて塗被層を凝固させた。その後直径760mmのプレスロールと表面温度105℃、直径3660mmのキャストドラムにプレス圧150kg/cmで圧着し、乾燥後テークオフロールでキャストドラムから剥離してキャストコート紙を製造した。
【0029】
この際連続操業時の凝固液送液タンク内の導電率は、75mS/cmであった。
[比較例1]
連続操業時の凝固液送液タンク内の導電率は、50mS/cmであった。
[比較例2]
連続操業時の凝固液送液タンク内の導電率は、40mS/cmであった。
【0030】
【発明の効果】
以上の結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1は、ドラムの曇りもなく、白紙光沢度も高いレベルを維持しており、引き続き連続操業が可能であった。
これに対して比較例1は、ドラムを注視すると薄っすらと曇っている傾向が認められ、白紙光沢度も低下気味であった。比較例2は、塗被層がドラムに取られ白く曇った状態であり、白紙光沢度の低下も顕著のため、連続操業不能でマシンを停止することになった。
【0033】
従って、本発明により導電率を指標に管理製造されたキャストコート紙は、品質の低下もなく生産効率が向上し、その効果は極めて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のキャストコート紙の製造に使用する凝固液供給装置の概略図である。
【図2】 本発明で導電率を測定するために使用する検出部の構造を示す。
【図3】 本発明で導電率を測定するために使用する検出器の概略図である。
Claims (4)
- 顔料及び接着剤を主成分とする塗料を原紙に塗被した後、塗膜を凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラム鏡面に圧着、乾燥させるゲル化法キャストコート紙の製造方法において、
前記凝固浴へ送液するタンク内の凝固液の導電率が55〜95mS/cmの範囲内に制御することを特徴とするキャストコート紙の製造方法。 - 顔料及び接着剤を主成分とする塗料を原紙に塗被した後、塗膜を凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラム鏡面に圧着、乾燥させるゲル化法キャストコート紙の製造方法において、
凝固液を凝固浴へ送液し、該凝固浴から回収した凝固液を前記凝固浴に循環させ、その循環させる凝固液の導電率を55〜95mS/cmの範囲内に保持し、前記導電率が55mS/cm未満となった場合には、新鮮な凝固液を補充し、前記導電率が95mS/cmを超える場合には、新鮮な凝固液を補充することなく、凝固液を循環させること特徴とするキャストコート紙の製造方法。 - 顔料及び接着剤を主成分とする塗料を原紙に塗被した後、塗膜を凝固液を有する凝固浴に通し変形可能な可塑性を持ったゲル状態に凝固させた後、キャストドラム鏡面に圧着、乾燥させるゲル化法キャストコート紙を製造するための、凝固液供給装置において、
前記凝固液供給装置は、電磁電導度計を設置した凝固液供給タンク及び前記凝固液供給タンクに接続された新鮮な凝固液の貯蔵タンクからなり、前記凝固液供給タンクは、凝固液供給ラインを通って凝固浴に接続されており、前記凝固浴は、凝固液回収ラインを通って前記凝固液供給タンクに接続されており、それにより、前記凝固浴より回収された凝固液は、前記凝固液供給タンクに移送され、かつ、凝固浴に循環されており、
ここで、前記電磁電導度計により凝固液供給タンク中の凝固液の導電率を測定して、その値が、55mS/cm未満である場合、前記貯蔵タンクより新鮮な凝固液を凝固液供給タンクへ移送してその値を55〜95mS/cmの範囲内になるようにし、係る範囲内の凝固液を凝固浴へ移送しかつ循環させ、その値が、95mS/cmを超える場合、前記貯蔵タンクから新鮮な凝固液を凝固液供給タンクへ移送することなく、前記凝固液供給タンクから凝固浴へ凝固液を移送しかつ循環させる、ことを特徴とする凝固液供給装置。 - 前記凝固浴と前記供給タンクの間に沈降タンクを設置する請求項3記載の凝固液供給装置。
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