JP4387642B2 - 残留電荷除去方法及び残留電荷除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空装置内で使用される静電吸着装置に関し、特にガラス基板等の絶縁性の吸着対象物を吸着する静電吸着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の静電吸着装置においては、吸着動作後においても吸着力が残存することが知られている。
【0003】
この残留吸着力は、プロセスの条件や吸着対象物の種類、あるいは印加電圧や吸着時間により変動するが、吸着対象物が例えばシリコンウェハーのようなほぼ導体とみなせるような材料からなる場合は、吸着動作終了後に、残留吸着力に応じた逆極性の電圧を、電圧及び時間をパラメータとして吸着電極に印加することによって低減させ、これにより吸着対象物を静電吸着装置からスムーズに離脱させることが可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年の半導体装置や液晶、プラズマディスプレイに代表されるフラットパネルの製造装置のプロセスにおいては、絶縁性材料であるガラス基板を静電吸着装置によって基板を保持し、搬送したり、成膜時のステージクランプに利用している。
【0005】
一般に、基板がガラスのような絶縁性基板の場合、静電チャック上への搬送時、及び吸着動作時に基板と静電チャック表面が僅かながら擦れ合い、接触、摩擦帯電を生じるが、従来、このような残留電荷は、上述したような吸着電極への逆極性の電圧印加では除去できなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、絶縁性材料からなる吸着対象物における残留電荷を除去する技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、所定の吸着電極を有する静電吸着装置を用い、絶縁性の吸着対象物における残留電荷を除去する方法であって、真空中において、前記吸着電極に所定の電圧を印加して前記絶縁性の吸着対象物を静電吸着した後、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにした状態で前記絶縁性の吸着対象物の表面を所定のイオン化した除電用ガスに曝すことにより、当該絶縁性の吸着対象物の表面に残留した正負の電荷をそれぞれ中和させる工程を有する残留電荷除去方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにした後に前記絶縁性の吸着対象物を前記除電用ガスに曝す工程を有するものである。
請求項3記載の発明は、請求項1において、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにする前に前記絶縁性の吸着対象物を前記除電用ガスに曝す工程を有するものである。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかの方法に用いる残留電荷除去装置であって、前記静電吸着装置が配置される真空槽と、前記真空槽に所定の除電用ガスを導入するガス導入部とを有する残留電荷除去装置である。
請求項5記載の発明は、請求項4において、前記静電吸着装置が、前記吸着対象物を搬送するように構成されているものである。
【0008】
本発明においては、吸着電極に対する電圧の印加をオフにした状態で絶縁性の吸着対象物を所定の除電用ガスに曝すことによって、電離、イオン化した除電用ガスの電荷が、吸着対象物の正負の残留電荷に吸着されてそれぞれ瞬時に中和され、吸着対象物の除電が行われる。
【0009】
その結果、本発明によれば、吸着動作終了後に、残留電荷の低減された状態で吸着対象物を搬送し又は種々の処理を行うことが可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る残留電荷除去方法及び残留電荷除去装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る残留電荷除去装置の一実施の形態を適用したスパッタリング装置の概略構成図である。
図1に示すように、この残留電荷除去装置装置1は、図示しない真空排気系に接続されたチャンバー(真空槽)2を有し、このチャンバー2内の上部には、成膜材料であるターゲット3が配置されている。
【0012】
このターゲット3は、チャンバー2の外部に設けられコンピュータ10によって制御される直流電源11に接続されている。ターゲット3は、チャンバー2に対して絶縁され、プロセス中においてマイナスにバイアスされるようになっている。
【0013】
チャンバー2内のステージ4上には、ガラス基板5を吸着保持するための静電チャック(静電吸着装置)6が設けられている。
【0014】
静電チャック6は、一対の吸着電極6a、6bを配して構成され、これら吸着電極6a、6bは、チャンバー2の外部に設けられた静電チャック電源12に接続されている。
【0015】
静電チャック電源12は、印加電圧の極性反転及び印加時間のタイマー機構を有し、コンピュータ10からの命令によってシーケンスがコントロールできるようになっている。
【0016】
さらに、本実施の形態においては、チャンバー2の外部にガス供給源20が設けられている。このガス供給源20は、コンピュータ10からの命令によって所定のタイミングでチャンバー2内に所定の除電用ガスを導入できるように構成されている。
【0017】
本発明の場合、除電用ガスの種類は特に限定されることはないが、プロセスへの悪影響を及ぼさない観点からは、Ar、N2、He等の不活性ガスを用いることが好ましい。
【0018】
このような構成においてガラス基板5の残留電荷を除去するには、図示しない搬送ロボットによってガラス基板5を真空槽2内に導入し、静電チャック6によってガラス基板5を吸着保持した状態で真空排気を行ってチャンバー2内の圧力を所定の圧力にする。
【0019】
この場合、チャンバー2内の圧力は特に限定されることはないが、プロセス条件に応じて、1×10-3〜10-4Paにすることが好ましい。
【0020】
そして、静電チャック6の吸着電極6a、6bに対する電圧の印加をオフにするとともに、ガス供給源20からチャンバー2内に除電用ガスを導入してガラス基板5の表面を除電用ガスに曝すようにする。
【0021】
この場合、除電用ガス導入後のチャンバー2内の圧力は特に限定されることはないが、除電を端時間で効率よく行うという装置スループットの観点からは、1×10-2Paより大きく大気圧以下にすることが好ましい。
【0022】
また、本発明の静電チャック6の電圧印加をオフにするタイミングとチャンバー2内に除電用ガスを導入するタイミングの先後は問わず、どちらが先であってもよい。
【0023】
ただし、静電チャック6の電圧印加をオフにする前にチャンバー2内に除電用ガスを導入する場合には、除電用ガスの反応を防止するため、除電用ガス導入後のチャンバー2内の圧力を1×10-2〜100Paにすることが好ましい。
【0024】
そして、真空槽2内に導入された除電用ガスは、ガラス基板5の表面に残留している正負の電荷によってイオン化され、この電離、イオン化した電荷が、それぞれの残留電荷と吸着することによって瞬時に中和され、ガラス基板5の除電が行われる。
【0025】
その結果、本発明によれば、吸着動作終了後に、残留電荷の低減された状態でガラス基板5を搬送し又は種々の処理を行うことが可能となる。
【0026】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、除電用ガスとして、予めイオナイザー装置によってイオン化したガスや、成膜プロセスでのプラズマによってイオン化したガスを用いることも可能である。
【0027】
また、上述の実施の形態においては、スパッタリング装置を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、CVD装置、エッチング装置、イオン注入装置等、あるいは静電チャックを使った搬送機構など、静電チャック機構を具備するすべての装置において適用可能である。
【0028】
さらに、吸着対象物は絶縁性のものであればその種類は問わず、また、静電吸着装置の種類、構成等についても限定されないものである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに詳細に説明する。
図2は、ガラス基板の静電吸着後における残留吸着力の実測値を示すグラフである。
ここでは、ガラス基板を±3kVで60秒吸着し、印加電圧オフ後の経過時間をパラメータとして基板を離脱させる際の残留吸着力を実測した。
【0030】
また、残留吸着力は、真空中において、基板を静電チャック上に載置し、基板に取り付けたフックを垂直方向に引き上げることで基板を離脱させ、そのときの張力をロードセルによって測定した。
【0031】
図2のグラフAから理解されるように、印加電圧をオフにすると、放置した経過時間に対し電荷量が減少しているが、30秒以降は減少の傾きが小さくなり、60秒以降では残留吸着力が一定になり、放置しても除去できない残留吸着力が存在することを示している。
【0032】
このため、ガラスのような絶縁性材料基板であっても吸着力が残存し、スループットの短縮化を要する半導体装置やフラットパネル製造装置に搭載し使用するためには、吸着動作終了後、残留吸着力を直ちに除去する手段が必要であることを示している。
【0033】
一方、グラフBから理解されるように、逆極性の電圧を印加すると、却って残留吸着力が大きくなってしまう。
【0034】
図3は、ガラス基板の静電吸着後基板を離脱させる際に真空槽内にArガスを導入した場合の残留吸着力の実測値を示すグラフである。
この場合、吸着及び測定の条件は、図2の場合と同一である。
【0035】
図3のグラフDから理解されるように、何もせずに放置した場合(グラフC)と比較し、残留吸着力が除去できている。これは、ガラス基板に残留している正負の電荷によってArガスがイオン化され、電離、イオン化した電荷が、それぞれの残留電荷と吸着し、中和され除電が行われていることを示している。
【0036】
さらには、イオナイザーによって予め電離イオン化したArガスを導入した場合も同じく残留吸着力を除去可能であることが確認された。
【0037】
図4は、ガラス基板の静電吸着後基板を離脱させる際に真空槽内に異なる種類のガスを導入した場合の残留吸着力の実測値を示すグラフである。
この場合、吸着及び測定の条件は、図2の場合と同一である。
【0038】
図4から理解されるように、何もせずに放置した場合(グラフE)と比較し、ガスの種類をN 2 、He(グラフF)に変えた場合であっても、Arガスの場合と同様にガラス基板の除電を行うことができた。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、絶縁性の吸着対象物の除電を行うことができるので、吸着動作終了後に、残留電荷の低減された状態で吸着対象物を搬送し又は種々の処理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る残留電荷除去装置の一実施の形態を適用したスパッタリング装置の概略構成図
【図2】ガラス基板の静電吸着後における残留吸着力の実測値を示すグラフ
【図3】ガラス基板の静電吸着後基板を離脱させる際に真空槽内にArガスを導入した場合の残留吸着力の実測値を示すグラフ
【図4】ガラス基板の静電吸着後基板を離脱させる際に真空槽内に異なる種類のガスを導入した場合の残留吸着力の実測値を示すグラフ
【符号の説明】
1…残留電荷除去装置 2…チャンバー(真空槽) 6…静電チャック(静電吸着装置) 6a、6b…吸着電極 20…ガス供給源
Claims (5)
- 所定の吸着電極を有する静電吸着装置を用い、絶縁性の吸着対象物における残留電荷を除去する方法であって、
真空中において、前記吸着電極に所定の電圧を印加して前記絶縁性の吸着対象物を静電吸着した後、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにした状態で前記絶縁性の吸着対象物の表面を所定のイオン化した除電用ガスに曝すことにより、当該絶縁性の吸着対象物の表面に残留した正負の電荷をそれぞれ中和させる工程を有する残留電荷除去方法。 - 請求項1において、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにした後に前記絶縁性の吸着対象物を前記除電用ガスに曝す工程を有する残留電荷除去方法。
- 請求項1において、前記吸着電極に対する電圧の印加をオフにする前に前記絶縁性の吸着対象物を前記除電用ガスに曝す工程を有する残留電荷除去方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかの方法に用いる残留電荷除去装置であって、
前記静電吸着装置が配置される真空槽と、前記真空槽に所定の除電用ガスを導入するガス導入部とを有する残留電荷除去装置。 - 請求項4において、前記静電吸着装置が、前記吸着対象物を搬送するように構成されている残留電荷除去装置。
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