JP4385186B2 - バイオエタノールの原料としてのオイルパーム材の利用 - Google Patents

バイオエタノールの原料としてのオイルパーム材の利用 Download PDF

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Description

本発明は、木質系バイオマスのエネルギー利用に関する。より詳細には、オイルパーム材を、バイオエタノールの原料として利用することに関する。
近年、地球環境問題が深刻化している。その中でも最も解決が急がれているものの一つとして温暖化が挙げられる。この問題を解決する手段の1つとしてバイオマスエネルギーの利用が注目されている。バイオマスエネルギーによって排出されるCOは植林などにより再固定されるため、カーボンニュートラルとなるからである。
オイルパームは、西アフリカ原産で、東南アジアで多く栽培されているヤシの一種であり、その果実からとれるヤシ油(パームオイル)は、食品、化成品等の分野で広く利用されている。オイルパームは、植え付け後25〜30年で果実の採取量が減少し、また樹高が大きくなると収穫作業の能率が低くなるために経済寿命があり、約25年毎に再植林される。
再植林の際、大量の古木は、エクスカベイター(切削機)で押し倒し、樹幹の部分を厚さ10cm程度にスライスして農園内に放置されるか、又は焼却処分されている。
オイルパーム材の利用方法については、いくつかの試みがある。鋸刃の磨耗が激しい上に製材の狂いが大きいために、製材化には適さないと考えられている一方で、パルプ、燃料、粗飼料化等の検討がされている(非特許文献1〜4)。しかしながら、いずれも実用化には至っていない。
一方、伐採したばかりのオイルパーム材は約10%の遊離の糖と、25%の澱粉を含んでおり、ショ糖、グルコース、フルクトースが主な遊離糖で、なかでもショ糖は最も含有量が多く全樹幹に分布していることが分かっている(非特許文献1)。しかしながら、オイルパーム材の、糖の供給源としての利用に関する報告はない。
他方、建築解体材などの建設系の廃木材、公園、街路樹及び一般家庭の庭などからの剪定材、並びに森林からの間伐材等に関しては、エネルギーに変換して利用する方法が検討されてきている。例えば、木材を直接燃焼して発電に用いる方法、木材を熱化学変換してガス化、熱分解又は液化する方法、生物化学的変換して、発酵によりエタノール、又は嫌気性消化によりメタンを生産する方法などである。エタノール生産に関しては、日本においては、収集ルート及び量の確保の面からみて有望な建設系の廃木材の利用について、検討が進みつつある(特許文献1〜5)。
特開2004-337099号公報 特開2005-52020号公報 特開2005-117942号公報 特開2006-87350号公報 特開2006-149343号公報 松田敏誉、富村洋一;熱帯林業 No.24 (1992) 37-46 石田元彦;熱帯林業 No.31 (1994) 34-43 MOHD.Nor B.MOHD YUSOFF,K.C.KHOO, T.W.Lee, The Malaysian Forester Vol.47,No.1(1984)28-42 坂志郎ら、 「バイオマス・エネルギー・環境」 ipc (2001) 117-119
本発明者らは、オイルパーム材のエネルギー利用について検討してきた。そして、木質材料をエネルギーに変換する種々の方法から、エタノールに変換する方法を選択した。なぜなら、木質材料中に一番多く含まれるのが糖成分であり、グルコースを発酵させて得られるエタノールにはグルコースのエネルギーの91%が保存されるという点で優れているからである。
一方で、本発明者らは、現在検討されている建設系の廃木材などの木質系バイオマスからのエタノール生産においては、糖化工程で硫酸を用いる方法が主流であるが、硫酸の使用には、装置の腐食、糖の回収率低下、酸の回収、安全性といった問題があることにも着目した。そして、硫酸を使用せずに環境に負荷を与えない処理により、オイルパーム材の糖化を行う方法を鋭意検討した。
その結果、オイルパーム材の微粉化・オートクレーブ処理抽出物中の糖量は15〜40%に達し、適切な部位を用いることとすれば、サトウキビにも匹敵するエタノール原料となることが分かった。さらに、糖抽出に際しては、酵素処理と圧搾処理を組み合わせることにより、多大のエネルギーを要する微粉化・オートクレーブ処理に相当する抽出効率が得られることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、すなわち、木質系バイオマスからエタノールを製造する方法において:
木質系バイオマスとしてヤシ科植物木材を用い;
(a) ヤシ科植物木材を圧搾して、圧搾液を生成する工程;
(b) ヤシ科植物木材又は圧搾粕を、アミラーゼ処理上有効な温度でアミラーゼ処理して、単糖を含む処理液を生成する工程;そして
(c) 圧搾液及び処理液を発酵処理して、エタノールを生成する工程
を含む、前記製造方法を提供する。
[ヤシ科植物木材]
本発明において木質系バイオマス原料として用いられるのは、ヤシ科植物の木部(木材ということもある。)である。本明細書で「ヤシ科植物」というときは、特別な場合を除き、ヤシ目(Arecales)、ヤシ科(Arecaceae (Palmae))に属する植物をいい、これには、アブラヤシ属(Elaeis)、シュロ属(Trachycarpus)、ビロウ属(Livistona)、Washingtonia、ナツメヤシ属(Phoenix)、 ココヤシ属(Cocos)、トウ属(Calamus)、サゴヤシ属(Metroxylon)、属(Areca ビンロウ)、サトウヤシ属(Arenga)、ニッパヤシ属(Nypa)、ヤエヤマヤシ属(Satakentia)、ノヤシ属(Clinostigma)の植物が含まれる。アブラヤシ属の植物には、オイルパーム(アブラヤシということもある。)(Elais guineensis)、中南米の熱帯域原産のElais oleiferaが含まれる。
本発明においては、木質系バイオマス原料としてヤシ科植物木材を用いるが、原料には、ヤシ科植物の果実、及び果実からオイルを圧搾した際に生じる果実の圧搾粕等を加えてもよい。
[圧搾工程]
本発明は、ヤシ科植物木材を圧搾して、圧搾液を生成する工程を含む。
圧搾工程は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、サトウキビから糖液を搾る際に用いられる圧搾機を転用してもよい。
圧搾の際の条件は、当業者であれば適宜設定することができ、例えば、サトウキビの圧搾の際に用いられる条件をそのまま適用してもよい。本発明においては、本発明の酵素処理工程において充分に酵素を作用させるとの観点からは、圧搾工程によりヤシ科植物木材の繊維をほぐすことができれば充分であるため、サトウキビの糖液を得る際より穏やかな条件で実施してもよい。搾出率向上のためには、圧搾の際に注水してもよい。
圧搾工程に投入されるヤシ科植物木材は、適当な大きさに切断することができる。通常、オイルパームの古木は、再植林に際して、エクスカベイター(切削機)で、押し倒し、樹幹の部分を厚さ10cm程度にスライスされるが、本発明の圧搾処理へは、このスライスされた樹幹を供することができる。現有のエクスカベイターの利用は、高価かつ多大なエネルギーを消費する微粉砕機の導入を必要としない点で有用である。
圧搾工程に投入されるヤシ科植物木材は、細断又は粉砕してもよい。
圧搾液は、必要に応じ、ろ過等の操作により固体を除いて、発酵処理工程に供してもよい。必要に応じ、圧搾液の濃縮を行ってもよい。
圧搾工程は、必要に応じ、繰り返し行ってもよい。圧搾工程は、後述する酵素処理工程の前に行うことができるが、酵素処理工程の後に行ってもよく、また、酵素処理工程の前及び後に行ってもよい。
圧搾工程は、糖を含む圧搾液を生成するほか、ヤシ科植物木材の繊維をほぐし、酵素処理工程における糖の溶出を容易とする作用がある。
[酵素処理工程]
本発明は、ヤシ科植物木材又は圧搾粕を、アミラーゼ処理上有効な温度でアミラーゼ処理して、単糖を含む処理液を生成する工程を含む。
アミラーゼ処理は、ヤシ科植物木材に対して行うことができ、また、圧搾工程から生じる圧搾液及び/又は圧搾粕に対して行うことができる
アミラーゼ処理は、水系溶媒中で行うことができ、水系溶媒としては、水を用いることができる。アミラーゼ処理の際、ヤシ科植物木材及び/又は圧搾粕と溶媒との比、及びアミラーゼの使用量は、当業者であれば適宜設定することができる。
本明細書で「アミラーゼ」というときは、特別な場合を除き、デンプンを加水分解することができる酵素をいう。アミラーゼには、α−アミラーゼ(液化酵素ということもある)、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼが含まれる。
本発明には、複数のアミラーゼを、同時に又は順に、用いることができる。本発明に使用することができるアミラーゼは、続く発酵処理工程で使用する微生物の基質となりうる糖を生じることができるものであれば、特に制限はないが、発酵処理工程において、最も好ましい基質はグルコースであるので、非還元性末端から特定数のグルコース単位を切り離していくエキソ型であって、かつ遊離するグルコース単位が1の酵素である、グルコアミラーゼを少なくとも1種類使用することが好ましい。グルコアミラーゼとしては、菌類由来のものが知られている。本発明には、グルコアミラーゼ以外に、β−アミラーゼ、α−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等も使用可能である。
本発明においては、好ましくは耐熱性アミラーゼを用いる。耐熱性アミラーゼとしては、好ましくは70℃以上で安定に作用するもの、より好ましくは80℃以上で安定に作用するもの、さらに好ましくは90℃以上で安定に作用するものを用いるとよい。そのためには、至適温度が、70℃以上であるもの、より好ましくは80℃以上であるもの、さらに好ましくは90℃以上であるものを用いるとよい。このような耐熱性アミラーゼを用いる場合、アミラーゼ処理は、70℃〜100℃、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは90℃〜100℃で行うことができる。
本発明においては、α−アミラーゼ及びグルコアミラーゼを組み合わせて、同時に用いることができる。このような組み合わせを用いる場合、アミラーゼ処理は、40℃〜70℃、好ましくは40℃〜60℃、より好ましくは50℃〜60℃で行うことができる。前述の耐熱性アミラーゼを用いる場合、比較的高温での処理が必要となるが、α−アミラーゼ及びグルコアミラーゼを組み合わせることで、比較的低温での処理が可能となり、投与エネルギーを節減できるというメリットがある。また、アミラーゼ処理とグルコアミラーゼ処理を同時に用いることで、2段階の処理を1段で行うことができ、プロセスが簡略化できるというメリットがある。
本発明に用いることができるアミラーゼの具体例は、本明細書の予備実験及び実施例を参考にすることができる。
アミラーゼは、他の酵素、例えばセルラーゼと、同時に又は順に、組み合わせて用いることもできる。
アミラーゼ処理の際の、アミラーゼの添加量、温度、pH、時間等の条件は、使用する酵素に応じ、適宜設定することができる。例えば、本明細書の予備実験3のように、Kleistase T5を用いる場合は、用いる水系溶媒のpHで、75〜100℃、0.3〜10時間処理することができる。また、Glucozymeを用いる場合は、pHを4.5〜6.5に調整し、40〜70℃で、1〜72時間処理することができる。また実施例5のように、クライスターゼ T10Sを用いる場合は、用いる水系溶媒のpHで、75〜100℃、0.25〜10時間、処理することができる。また、スミチーム ASを用いる場合は、pHを3.5〜5.5に調整し、40〜80℃で、0.25〜10時間処理することができる。
酵素処理工程は、続く発酵工程において微生物によるエタノール変換が可能な糖を生成する作用がある。
本明細書で「糖」というときは、特別な場合を除き、単糖(例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース)、二糖(例えば、スクロース(ショ糖)、マルトース)、オリゴ糖、多糖(例えば、澱粉、セルロース、ヘミセルロース)を含む。糖は、通常、Cm(H2O)nの一般式で表わすことができる。本明細書で「単糖」というときは、特別な場合を除き、炭素数に制限はなく、三炭糖(トリオース)、四炭糖(テトロース)、五炭糖(ペントース)、六炭糖(ヘキソース)、七炭糖(ヘプトース)を含む。
従来の木質系バイオマスを原料とするエタノール生産においては、糖化工程として、硫酸を使用して加水分解を行うのが通例である。硫酸の使用は、装置の腐食、糖の回収率の低下、酸回収の必要性といった観点からは好ましくない。しかしながら、本発明者らの詳細な検討により、ヤシ科植物木材の特定の部分には熱水抽出によりエタノール発酵に充分な糖が抽出可能であることが分かった。したがって、本発明においては、基本的には硫酸は使用する必要がない。
[発酵処理工程]
本発明はさらに、圧搾液及び処理液を発酵処理して、エタノールを生成する工程を含む。本発明の方法における発酵処理工程においては、主として糖又は単糖が、微生物発酵によりエタノールに変換される。
この工程においては、六炭糖又は五炭糖(好ましくは六炭糖)を消化してエタノールを生産することができる微生物を利用することができる。微生物は、複数の、種又は株を用いてもよい。本発明には、例えば、ザイモモナス(Zymomonas)属に属する細菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母が使用可能である。Zymomona属細菌による発酵経路は、酵母の場合の解糖系ではなく、エントナー・ドウドロフ(Entner-Doudoroff)経路によるもので、消費グルコース当たりのエタノール収率は酵母よりも高いとされ、また発酵速度も速いことが報告されている。したがって、本発明の発酵処理工程においても好適に使用することができる。
本発明の発酵処理工程に用いることができる微生物の具体例は、本明細書の予備実験3を参考にすることができる。
発酵処理の際の、微生物の添加量、温度、pH、時間等の条件は、使用する微生物に応じ、適宜設定することができる。予備実験3のように、Zymomonas mobilisを用いる場合には、20〜40℃で、6〜72時間発酵することができる。また、発酵処理により得られた酵素処理液は、糖濃度が10〜30%(例えば20%)になるように、希釈調整して用いてもよい。酵素処理液は、必要に応じ、無機塩類を添加して用いてもよい。
また発酵処理に際しては、微生物に対して適宜酵素処理液を供給する回分式、及び微生物に対して酵素処理液を連続的に供給する連続式の、いずれも採用できる。微生物は、固定化して用いてもよい。
[他の工程]
生成したエタノールは、蒸留法、及び/又は膜分離処理法等により分離精製することができる。
通常、発酵により得られたエタノールには水が含まれるため、脱水処理を行ってもよい脱水処理は、例えば、シクロヘキサン等の第3成分を添加して混合蒸留する方法、グリコールやグリセリン等を添加して抽出蒸留する方法、ゼオライト等のようなボール状の超多孔質物質を用いて水を該超多孔質物質に吸着させる方法により行うことができる。
[エタノール含有燃料の生産方法]
本発明の製造方法により得られたエタノールは、燃料に添加することにより、エタノール含有燃料の生産に用いることができる。したがって、本発明はまた、本発明の製造方法で得られたエタノールを10%(v/v)以上の濃度となるように燃料に添加する工程を含む、エタノール含有燃料の製造方法も提供する。
発明を実施するための好ましい態様
本発明においては、原料であるヤシ科植物木材として、樹齢20年以上のオイルパームから得られたオイルパーム材を好適に用いることができる。また、本発明においては、樹齢20年以上のオイルパームから得られたオイルパーム材のうち、熱水抽出可能な糖が、脱脂木粉あたり15重量%以上含まれる部分、好ましくは20重量%以上含まれる部分、より好ましくは25重量%以上含まれる部分を好適に用いることができる。また、本発明においては、樹齢20年以上のオイルパームから得られたオイルパーム材のうち、熱水抽出可能な糖を構成する単糖の組成において、六炭糖が85重量%以上である部分、好ましくは90重量%以上である部分、より好ましくは95重量%以上である部分を、好適に用いることができる。熱水抽出可能な糖が、脱脂木粉あたり15重量%以上含まれる部分、好ましくは20重量%以上含まれる部分、より好ましくは25重量%以上含まれる部分であって、かつ熱水抽出可能な糖を構成する単糖の組成において、六炭糖が85重量%以上である部分、好ましくは90重量%以上である部分、より好ましくは95重量%以上である部分は、本発明に用いるのに特に適した部分である。
本発明においてはまた、樹齢20年以上のオイルパーム樹木の高さ3.5 m以上、好ましくはさらに好ましくは6.5 m以上、さらに好ましくは9.5m以上の樹幹部位も好適に用いることができる。特に、材先端部(樹幹部位の最上部。通常、12.0 m付近の部分)は、熱水抽出物中に含まれる糖量が高く、またその糖を構成するグルコースの割合が高いので、特に好ましい部位の一つである。
本発明に使用するに際し、オイルパーム材は、前述した部分のいずれかを含むが、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、前述した部分のいずれかを含むとよい。
本明細書において「熱水抽出可能な糖」というときは、特別な場合を除き、粉砕した木材を適切な溶媒を用いて脱脂して脱脂木粉を得て、この約2 gに対して蒸留水を100 ml加え、121 ℃で1時間オートクレーブ処理し、処理液をろ過して得られたろ液中に検出される種々の糖をいう。熱水抽出の際の条件の詳細は、本明細書の実施例1を参考にすることができる。オイルパーム材についての熱水抽出可能な糖は、例えば澱粉、スクロースである。
熱水抽出可能な糖の種類及び量は、当業者であれば従来技術を用いて適宜決定することができる。詳細な方法は、本明細書の実施例1を参考にすることができる。
本明細書で原料木材由来の成分含量に関し「脱脂木粉あたり」というときは、特別な場合を除き、脱脂された乾燥木材に対する割合を指す。
本明細書において、熱水抽出可能な糖に関して「構成する単糖の組成において、六炭糖がX重量%」というときは、特別な場合を除き、熱水抽出可能な糖全体についての単糖組成に対する六炭糖の割合を指す。熱水抽出可能な糖全体についての単糖組成は、熱水抽出した糖を、適切な方法により単糖に分解して、分解物中の単糖の種類及び量を決定することにより求めることができる。詳細な方法は、本明細書の予備実験1を参考にすることができる。
樹木の化学成分については、これまで、横方向については辺材部と心材部とでテルペン類及びフラボノイド類の含量に差異があることが知られており、また縦方向については、成分組成の差異はないと考えられてきた。しかしながら、本発明者らの詳細な検討によると、オイルパームの樹木においては、樹幹の中心部と外周部とで、また根元部分と先端部分とで、熱水抽出可能な糖が量的・質的に変化していることが分かった。すなわち、オイルパーム材に関しては、外周部より中心部のほうが、また根元部分より先端部分のほうが、熱水抽出可能な糖の含量において優れており、かつ熱水抽出可能な糖を構成する単糖中のグルコースの割合が高く、エタノール発酵のための原料として、質的にも優れていることが分かった。
本発明者らはまた、エタノールを生産する際に障害となるリグニンに関しても、オイルパーム材中においては部位により量的に変化があることを見出した。
〔予備実験1:オイルパーム材の分析〕
マレーシアで伐採直後のサンプルを入手し、直ちに乾燥後、飛行機で持ち帰った。帰国後すぐに凍結乾燥させ、木材分析を行った。
樹齢25年のオイルパームから得た長さ9.5mの木部を3本(それぞれ生育場所が異なる。伐採箇所(地上から約30cm)の直径50〜55cm)入手し、は、下図左のように0.5 mから3 mごとに切断し、高さごとに4つの円盤を得た。それぞれを下図右のように幅5 cmに切断し、A〜C(下図中、Aは中心から7.5cmより外側に位置する部分、Bは2.5〜7.5cmの部分、Cは2.5cmより内側の部分である。)をウィーリーミルで破砕した。これを篩い分けして48〜100メッシュの木粉を得た。
1)アルコールベンゼン可溶部の定量
木粉約1 gを精秤し、あらかじめ重量を測定した秤量ビンに入れた。これを105±3 ℃の乾燥器中で2時間乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、減少した重量から木粉の含水率を求めた。
さらに木粉約10 gを精秤し、含水率から絶乾重量を求めた。これを円筒ろ紙に入れ、試料の散逸を防ぐために脱脂綿を軽くのせ、ソックスレー抽出器に入れた。一級エタノール(Wako)と特級ベンゼン(Wako)(1:2 v/v)の混合溶剤(約150 ml)を加えて6時間沸騰還流した。抽出終了後、(あらかじめ重さの分かっている)フラスコに溶液を移して溶媒を留去したのち、フラスコを105±3 ℃の乾燥器中で2時間乾燥した。フラスコをデシケーター中で放冷後秤量し、増加した重量をアルコールベンゼン可溶部量とした。
2)ホロセルロースの定量
脱脂木粉(上述の混合溶剤で還流した後の残りの部分。以下同じ。)約1 gを精秤し、あらかじめ重量を測定した秤量ビンに入れた。これを105±3 ℃の乾燥器中で2時間乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、減少した重量から木粉の含水率を求めた。
脱脂木粉約2.5 gを精秤し、含水率から絶乾重量を求めた。これを300 ml容三角フラスコに入れ、蒸留水150 ml、亜塩素酸ナトリウム(Wako)1.0 g及び酢酸(Wako)0.2 mlを加え、小型三角フラスコで緩くふたをして、70〜80 ℃の湯浴上で、ときどき軽く内容物を振りながら、1時間加熱した。引き続いて、冷やさずに亜塩素酸ナトリウム(Wako)1.0 g及び特級酢酸(Wako)0.2 mlを加えて、繰り返し内容物が白くなるまで処理した。白色内容物は、あらかじめ秤量瓶に入れて恒量を求めたガラス繊維ろ紙を用いて、吸引ろ過し、冷水及び一級アセトン(Wako)で洗浄後、105±3 ℃の乾燥器中で乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、増加した重量をホロセルロース量とした。
3)酸不溶性リグニンの定量
脱脂木粉約1 gを精秤し、あらかじめ重量を測定した秤量ビンに入れた。これを105±3 ℃の乾燥器中で2時間乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、減少した重量から木粉の含水率を求めた。
脱脂木粉約1 gを精秤し、含水率から絶乾重量を求めた。これを50 ml容ビーカーに入れ、72%硫酸15 mlを加えた。時々攪拌しながら4時間静置し、内容物を560 mlの水で1 L容三角フラスコに定量的に移した(硫酸濃度3%とする)。これを121 ℃で1時間オートクレーブ処理し、多糖を単糖に加水分解した。あらかじめ秤量瓶に入れて恒量を求めたガラス繊維ろ紙を用いて、熱水及び冷水で吸引ろ過し、ろ過物を105±3 ℃の乾燥器中で乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、増加した重量を酸不溶性リグニン量とした。
4)酸可溶性リグニンの定量
3)で得たろ液の紫外部の吸光度が、0.3〜0.7の範囲になるように3%硫酸水溶液で薄めて、205〜210 nm付近の最大吸光度を測定した。酸可溶性リグニン量を次式により求めた。
5)糖の定性及び定量
1 gのイノシトール(Wako)を精秤し、50 mlの水に溶かして4)で得たろ液に内部標準物質として1 ml加えた。これに水酸化バリウム(Wako)の飽和溶液を加えpH 5.5とした。遠心分離後上澄み25 ml取り、水素化ホウ素ナトリウム(Aldrich)を約80 mg加え1時間半放置後、酢酸を加えヒドリドイオンを取り除き、エバポレーターで溶媒を取り除いた。一級メタノール(Wako)10 mlを加えエバポレーター処理する作業を数回繰り返し乾固させた。デシケーター中に3時間以上放置しで完全に乾固させ、無水酢酸(Wako)7.5 mlに硫酸(Wako)0.5 mlを加え、60 ℃で1時間温めアセチル化した。これを70 mlの氷水に投入し、ジクロロメタン15 mlで2回、10 mlで1回それぞれ抽出した。さらに抽出したジクロロメタン(Wako)層に水10 mlを加え洗浄後、抽出し、硫酸アンモニウム(Wako)で脱水後、GC/MS分析した。
6)熱水抽出物の定量
脱脂木粉約1 gを精秤し、あらかじめ重量を測定した秤量ビンに入れた。これを105±3 ℃の乾燥器中で2時間乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、減少した重量から木粉の含水率を求めた。
さらに脱脂木粉を約2 g精秤し、含水率から絶乾重量を求め、300 ml容三角フラスコに入れた。蒸留水を100 ml加え、121 ℃で1時間オートクレーブ処理した。これを、あらかじめ恒量を求めたガラス繊維ろ紙を用いて熱水及び冷水で吸引ろ過し、ろ過物を105±3 ℃の乾燥器中で乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量し、増加した重量を熱水抽出物量とした。
7) 熱水抽出物中の糖の定性及び定量
1 gのイノシトール(Wako)を50 mlの水に溶かし、6)で得たろ液に内部標準物質として1 ml加えた。これに水酸化バリウム(Wako)の飽和溶液を加え、pH 5.5とした。遠心分離後上澄み25 ml取り、水素化ホウ素ナトリウム(Aldrich)を約80 mg加え1時間半放置後、酢酸を加えヒドリドイオンを取り除き、エバポレーターで溶媒を取り除いた。特級メタノール(Wako)10 mlを加えエバポレーター処理する作業を数回繰り返し乾固させた。デシケーター中に3時間以上放置しで完全に乾固させ、無水酢酸(Wako)7.5 mlに硫酸(Wako)0.5 mlを加え、60 ℃以下の条件で1時間温めアセチル化した。これを70 mlの氷水に投入し、特級ジクロロメタン(Wako)15 mlで2回、10 mlで1回それぞれ抽出した。さらに抽出したジクロロメタン層に水10 mlを加え洗浄後、抽出し、硫酸アンモニウム(Wako)で脱水後、GC/MS分析した。
結果及び考察
結果を下表に示した。表1〜3に示した値は、アルコールベンゼン抽出物については木粉の絶乾重量に対する値、他の成分については脱脂木粉の絶乾重量に対する値である。
オイルパーム材の分析に関して興味深い結果が得られた。熱水抽出物量が材の上部(6.5〜9.5 m)や中央部に向かうほど上昇する傾向が観察され、30%以上に達する部位も見られた(図2、3)。これは以下に示すように、多くの材の熱水抽出物が5%以下であることと比較しても桁違いに多い値であった。
針葉樹:モミ、3.6;トドマツ、2.6;エゾマツ、3.6;アカマツ、5.7;スギ、3.1%
広葉樹:シラカンバ、2.1;ブナ、1.8;クヌギ、3.8;トチノキ、3.1%
(木材工業ハンドブック 丸善株式会社(2004)より)
さらに、材上部に含まれる糖の量は材ごとにバラつきはあるものの、熱水抽出物中の40〜80%、脱脂木粉中の15〜40%に達していた(図4A〜C)。また、この部位の熱水抽出物中の単糖の組成を調べたところ、80〜95%がエタノール合成に最も適したグルコースであり、通常の菌でエタノール発酵可能な六炭糖は95〜99%に達した(図5A〜C、図6A〜C)。なお、熱水抽出物中に含まれる糖以外の成分としては、タンパク質、可溶性フェノール成分などが考えられる。
3本の材について、各糖の木粉に対する割合(重量%)を、下記の表4〜6に示す。
グルコースが熱水抽出物中に見出されたこと、また、オイルパーム材の上部に向かうほどグルコースの割合が上昇し、五炭糖(キシロース、アラビノース)の割合は減少していたことなどから、澱粉由来であると考えられた。
熱水抽出物中の糖を構成するグルコースの多くが澱粉由来であるとすると、糖化酵素としてアミラーゼを使用し、セルラーゼに比べコストを下げることができる。
また、オイルパーム材の上部や中央部ではリグニン含量が減少する傾向が観察され、6.5 m付近から上部では20%以下であり、少ない部位では9%程度まで下がっていた(表1〜3、図2、図3)。このリグニン含量は、現在エタノール発酵が実用化されているバガスの18%(前掲非特許文献4、及び木材学会誌 35, 1067-1072(1989)参照)と比較しても対等もしくは有利な値であり、簡単な処理(NaOH)により、セルラーゼによる糖化が可能であると考えられる。
材の下部では熱水抽出物量も少なく、またリグニン含量も多い(表1〜3、図2)ので、引き続き脱リグニンや、木材の可溶化の検討が必要であろう。
3本の材を比較すると、熱水抽出物量、リグニン量共にばらつきが観察された。特に、2本目の材では熱水抽出物量が80%近くに達し、リグニン量が5%を切り、熱水抽出物中の糖含量が40%近くに達する部位が観察されたが、1本目の材では熱水抽出物量、熱水抽出物中の糖含量共にその半分程度しか存在しなかった。これは生育環境により化学組成が異なることを示していると考えられた。
本実験により、オイルパーム材は上部に向かうほどよりエタノール発酵原料としてふさわしいという傾向が観察されたが、今回は9.5 mまでのサンプルしか入手できなかった。オイルパーム材は12〜15 mに達する樹木であり、9.5 m以上の部位ではさらなる熱水抽出物量の増加及びリグニン量の減少が期待され、今後サンプルを入手し、分析を行う必要がある。
〔予備実験2:オイルパーム材の分析(2)〕
マレーシアで生育した樹齢25年のオイルパームを入手し、下図左のように0.5 mから3 mごとに切断し、高さごとに4つの厚さ10cmの円盤を得た。それぞれを下図右のように幅5 cmに切断し、A〜C(下図中、Aは中心から7.5cmより外側に位置する部分、Bは2.5〜7.5cmの部分、Cは2.5cmより内側の部分である。)をウィーリーミルで破砕した。これを篩い分けして48〜100メッシュの木粉を得た。
各部分について、実施例1と同様に、熱水抽出物量、熱水抽出物中の糖の構成、リグニン含量、熱水抽出物中の糖量を測定した。
結果及び考察
結果を下表及び図7〜9に示した。
熱水抽出物量が材の上部(6.5〜9.5 m)に向かうほど上昇する傾向が観察され(図7、8)、特に、材先端部は脱脂木粉に対する割合が75%以上に達した。材先端部は糖を構成するグルコースの割合も高く90%以上であった(図9)。
〔予備実験3:エタノール生産量の推定〕
これまでの実験でオイルパーム材上部の熱水抽出物中には大量の糖が含まれていることが示された。そこで、これらの糖含量から推定されるエタノール生産量を算出した。
1)計算方法
オイルパーム材上部(5〜9.5 m)の熱水抽出糖含量から推定されるエタノール生産量を以下に示す計算方法で算出した。
X = A×B×C
X : 重量当たりエタノール収量
A : 木粉に対する熱水抽出物中の糖含量
B : 発酵可能な糖の割合(0.95)
C : エタノール発酵における糖の変換効率(0.58)
Y = D×E×F×H
Y : 耕地面積当たりのエタノール収量
D : 材上部の材積(458,000cm3)
E : 平均密度 (0.4 g/cm3)
X : 重量当たりのエタノール収量
F : 植栽密度 (143本/ha)
ここで熱水抽出を仮定したのは、以下に示した材上部についてである。下記図中の斜線部分は、上記[化1]中のA〜Eに相当する。
2)結果及び考察
結果を下表に示した。
現在商業ベースで成り立っている農産物系バイオマスとオイルパーム材上部(5〜9.5 m)の熱水抽出糖含量から算出したエタノール生産量を比較すると、重量当たりのエタノール収量及び耕地面積当たりのエタノール収量共に遜色のない結果となった。つまり今回の推定により、オイルパーム材上部の熱水抽出により得られる糖からのエタノール発酵の有効性が示された。
〔予備実験4:エタノール発酵〕
実験1:材料の調製
オイルパーム材熱水抽出物からのエタノール発酵を目的として、熱水抽出、濃縮、糖化処理を行った。今回使用した材サンプルは、上図([化1])に示した4-Cの部分の材を使用した。
(実験方法)
1.1 木粉の熱水抽出
脱脂木粉約2 gを精秤し、含水率から絶乾重量を求め、500 ml容三角フラスコに入れた。蒸留水を100 ml加え、シリコ栓で蓋をし、121 ℃で1時間オートクレーブ処理した。
1.2 濾過処理
1.1の溶液を、遠心分離(3,500 rpm、10 min)し、上清をあらかじめ重量を求めたガラス繊維濾紙を用いて吸引濾過し、沈殿物も一度水で洗い、濾過した。このときの残渣物を約105 ℃の乾燥機中で乾燥し、デシケーター中で放冷後秤量した。
1.3 濃縮処理
2.の溶液をエバポレーターで約60℃、約80mmHgの条件で濃縮を行った。約40mlまで濃縮した。
1.4 糖化処理
下記の酵素液を使用した。
Kleistase T5 from Bacillus subtilis(液化酵素)5,500 AU/ml
Glucozyme from Rhizopus delemar(糖化酵素)4,200 AU/ml
1.3の濃縮液に0.2%(v/v)となるようにKleistase T5液を加え、95℃で3時間反応させた。次いで、pHを5.5に調整し、1.0%(v/v)となるようにGlucozymeを加え、55℃で24時間反応させた。
(結果)
使用した脱脂木粉の全重量(絶乾重量)27.0 gに対し、得られた熱水抽出物量の全重量は14.5 gであった(脱脂木粉に対する割合:54%)。また、エタノール発酵に重要な六炭糖は、酵素処理前はほぼ0であったが、処理後は約9g/Lに増加した。
実験操作2:発酵試験
実験操作1で調製したサンプルについて、エタノール発酵試験を行った。
(実験方法)
下記の菌株を使用した。
Zymomonas mobilisATCC10988(以下10988株)
Zymomonas mobilisNRRLB 14023(以下14023株)
-80℃で保存していた菌保存バイアルからYM培地に殖菌し、30℃、21時間培養してスターターを得た。スターターを下記の組成の培養用培地に加え、30℃、12時間培養することにより、前培養を行った。
前培養により得られた培養物 1 mlに対し、基質溶液 5 ml(上記1.3で得た濃縮後のサンプル(酵素未処理サンプル)、上記1.4で得た糖化処理サンプル、又は酵素未処理サンプルに含まれる澱粉量と同等のグルコース濃度(31.4g/L)であるグルコース溶液(コントロール))及び上述の培養用培地 4 mlを加え、30℃で本培養を行った。
(結果と考察)
結果を図10に示した。オイルパーム材由来糖質は、エタノール発酵が可能であると判断された。また、糖化処理サンプルでのエタノール収率とグルコース溶液(コントロール)のエタノール収率とがほぼ一致した。すなわち、オイルパーム材からの熱水抽出物中に含まれる糖以外の成分が、エタノール発酵において阻害的に作用する懸念はないものと判断された。
〔実施例1:酵素処理と圧搾法を併用した糖抽出法〕
実験方法
試料:マレーシアから入手したオイルパーム材No.3を用い、図1のように糖含量がほぼ同程度になるように、4個体木片(2×2×5cm)を7種類(1)〜(7))準備して(図11、表8)、下記の条件で糖の抽出実験を行った。
圧搾機:(株)マツオ製卓小型圧搾機TM-120 を使用。
(4)〜(7)については、圧搾後に水400mlの液に浸し、クライスターゼT10S(13,100Lj/g以上)は800μl、スミチームAS(1,500u/g)は5.3mgを添加して処理した。処理後に再度圧搾を行った。
1回目に圧搾して得られた搾り汁を圧搾液A、1回目圧搾後の搾りかすを浸した液と2回目の圧搾で得られた絞り汁の混合物を圧搾液Bとした。
抽出液および圧搾液に、クライスターゼT10Sを添加(0.2%(v/v))し、85℃、100 rpmで3時間アミラーゼ処理を行った。その後濾過し、イノシトール溶液(1g/50ml)を30ml加えた。((1)については、イノシトー1ml。)3%硫酸溶液にして酸加水分解(121℃・1時間)を行い、飽和水酸化バリウム溶液で中和後上清に水素化ホウ素ナトリウム80mgを加えて糖を還元させた。エバポレーターで乾固、乾燥させた後無水酢酸15ml、濃硫酸1mlを加え60℃で1時間糖のアセチル化を行った。その後ジクロロメタンで分配抽出を行い、硫酸ナトリウムで脱水し、GCMS分析に供した。
(2)〜(7)については絶乾木片当たりの抽出グルコース量を、(1)については木粉当たりの抽出デンプン量を加水分解後のグルコース量として算出した(表9)。
結果および考察
木片を微粉化しオートクレーブ処理することにより、木粉から22%のグルコースが抽出された。ただ実際のプロセスにこの条件を適用するのは、多大のエネルギーを要することから現実的ではない。そこで、木片サンプルを圧搾処理することにより、パームオイル材からの糖の抽出が可能であるか検討した。条件(2)で5%、条件(3)で7%のグルコースが抽出されたが、条件(1)の23%、33%に過ぎない。そこで、酵素処理と組み合わせたところ、条件(7)で、木片絶乾当たり15%のグルコースが抽出され、この量は、条件(1)の70%に相当した。即ち、抽出工程において、酵素処理と圧搾処理を組み合わせることにより、多大のエネルギーを要する微粉化・オートクレーブ処理に相当する抽出効率が得られる可能性が示された。圧搾機の性能、特にロール間のクリアランスを調整することにより、さらに抽出効率の向上が期待できる。
〔実施例2:アミラーゼ処理条件に関する検討〕
実験方法
オイルパーム木粉約1 gに水25 mlを加え、下記の条件で酵素処理を行った。その後濾液を250 mlにメスアップして、グルクザイムAF6を500U加えて55℃で24時間振とう(100 rpm)後、さらに遠心分離(4℃・10000 rpm・10 min)後、上清中のグルコース濃度をバイオセンサBF5により測定した。
アミラーゼ処理条件
温度(50、60、70、80、90、100℃)
時間(15 min、30 min、1 hr、2 hr)
アミラーゼ量(500U、50U、5U)
アミラーゼの種類
ビオザイムF10SD(天野エンザイム社製、α‐アミラーゼ、至適温度55℃、1,445,298 U/g)・・・表10ではFと表す
グルクザイムAF6(天野エンザイム社製、グルコアミラーゼ、至適温度58℃、103,288 U/g)・・・表10ではAと表す
クライスターゼL1(大和化成社製、α‐アミラーゼ、至適温度70℃、42,753 U/ml)・・・表10ではLと表す
クライスターゼT10S(大和化成社製、α‐アミラーゼ、至適温度90℃、149,168 U/ml)
・・・表10ではTと表す
使用する酵素と抽出温度の組み合わせは下に示すとおりである。
なお、ビオザイムF10SDとグルクザイムAF6は55℃、クライスターゼL1は70℃、クライスターゼT10Sは90℃で10分間デンプンと反応させたときに、1分あたり1 mgのグルコース相当量の還元末端を生成する酵素量を1Uとした。
結果及び考察
木粉からのグルコース溶出量を表10にまとめて示した。
50〜60℃の温度範囲では、ビオザイムF10SDとグルクザイムAF6の組み合わせ処理、80〜100℃の温度範囲では、クライスターゼT10S処理が効果的であることが、明らかとなった。
図1は、オイルパームからのエタノール生産・プロセスフローの例を示した図である。 図2は、3本目の新鮮なオイルパーム材における、高さ方向の熱水抽出物含量及びリグニン含量の変化を示したグラフである(□:熱水抽出物含量、◆:リグニン含量、3-1:0.5 m付近、3-2:3.5 m付近、3-3:6.5 m付近、3-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図3は、3本目の新鮮なオイルパーム材における、横方向の熱水抽出物含量及びリグニン含量の変化を示したグラフである(□:熱水抽出物含量、◆:リグニン含量、3-1:0.5 m付近、3-2:3.5 m付近、3-3:6.5 m付近、3-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図4Aは、1本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物又は脱脂木粉に対する熱水抽出物中の糖の割合を示したグラフである(1-1:0.5 m付近、1-2:3.5 m付近、1-3:6.5 m付近、1-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図4Bは、2本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物又は脱脂木粉に対する熱水抽出物中の糖の割合を示したグラフである(2-3:6.5 m付近、2-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図4Cは、3本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物又は脱脂木粉に対する熱水抽出物中の糖の割合を示したグラフである(3-1:0.5 m付近、3-2:3.5 m付近、3-3:6.5 m付近、3-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図5Aは、1本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物中の単糖の組成を示したグラフである(1-1:0.5 m付近、1-2:3.5 m付近、1-3:6.5 m付近、1-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図5Bは、2本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物中の単糖の組成を示したグラフである(2-3:6.5 m付近、2-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図5Cは、3本目の新鮮なオイルパーム材における、熱水抽出物中の単糖の組成を示したグラフである(3-1:0.5 m付近、3-2:3.5 m付近、3-3:6.5 m付近、3-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図6Aは、1本目の新鮮なオイルパーム材における、硫酸を用いた加水分解により得られる単糖の組成を示したグラフである(1-1:0.5 m付近、1-2:3.5 m付近、1-3:6.5 m付近、1-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図6Bは、2本目の新鮮なオイルパーム材における、硫酸を用いた加水分解により得られる単糖の組成を示したグラフである(2-3:6.5 m付近、2-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図6Cは、3本目の新鮮なオイルパーム材における、硫酸を用いた加水分解により得られる単糖の組成を示したグラフである(3-1:0.5 m付近、3-2:3.5 m付近、3-3:6.5 m付近、3-4:9.5 m付近、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図7は、オイルパーム材における、縦方向の熱水抽出物含量及びリグニン含量の変化を示したグラフである(□:熱水抽出物含量、◆:リグニン含量、1:0.5 m付近、2:3.5 m付近、3:6.5 m付近、4:9.5 m付近、5:12.0 m付近(材先端部)、6:12.5 m付近(フロンド部位)、A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図8は、オイルパーム材における、熱水抽出物又は脱脂木粉に対する熱水抽出物中の糖の割合を示したグラフである(A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図9は、オイルパーム材における、熱水抽出物中の単糖の組成を示したグラフである(A:外周部、B:外周部と中央部との間、C:中央部)。 図10は、エタノール発酵試験の結果を示したグラフである。 図11は、試料の作成方法を示した図である。 図12は、圧搾機の様子を示した図である。 図13は、圧搾液(3)の(7)の採取について示した図である。

Claims (10)

  1. 木質系バイオマスからエタノールを製造する方法において:
    木質系バイオマスとしてヤシ科植物木材を用い;
    (a) ヤシ科植物木材を圧搾して、圧搾液を生成する工程;
    (b) ヤシ科植物木材又は圧搾粕を、アミラーゼ処理上有効な温度でアミラーゼ処理して、単糖を含む処理液を生成する工程;そして
    (c) 圧搾液及び処理液を発酵処理して、エタノールを生成する工程
    を含むがこのとき
    ヤシ科植物木材が、オイルパームから得られたものであり、かつ熱水抽出可能な糖が脱脂木粉あたり15重量%以上含まれる、幹の高さ3.5 m以上の上部を含む、前記製造方法。
  2. ヤシ科植物木材が、熱水抽出可能な糖を構成する単糖の組成において、六炭糖が85重量%以上である部分を含む、請求項に記載の方法。
  3. ヤシ科植物木材が、樹齢20年以上のオイルパームから得られたものであり、幹の高さ5 m以上の上部を含む、請求項1に記載の方法。
  4. ヤシ科植物木材が、樹齢20年以上のオイルパームから得られたものであり、幹の高さ6.5 m以上の上部を含む、請求項3に記載の方法。
  5. アミラーゼ処理が、耐熱性アミラーゼを用いるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. アミラーゼ処理が、α−アミラーゼ及びグルコアミラーゼを組み合わせて用いるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  7. アミラーゼ処理が、70℃〜100℃で行われるものである、請求項5に記載の方法。
  8. アミラーゼ処理が、40℃〜70℃で行われるものである、請求項6に記載の方法。
  9. 発酵処理が、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌を用いるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法でエタノールを得て、得られたエタノールを10%(v/v)以上の濃度となるように燃料に添加する工程を含む、エタノール含有燃料の製造方法。
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