JP4372287B2 - 電波伝搬解析方法および装置ならびに記憶媒体 - Google Patents

電波伝搬解析方法および装置ならびに記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線局から送信された電波伝搬特性を計算し、その結果を表示することを可能にする電波伝搬解析方法、およびその方法を実施する装置、ならびにその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術による電波伝搬解析方法は、一般に一方の無線局から送信された電波の電界強度分布を求めるための手段として、電磁界解析手法、あるいは、幾何光学的手法を用いるものである。
【0003】
電磁界解析手法は、Maxwellの電磁界方程式を例えばFDTD法を用いて解き、その結果により電界強度分布を推定するというものである。しかし、この手法は解析対称モデルの寸法に比べて波長が短くなるUHF帯以上の周波数帯では計算処理量が膨大になってしまうというものである。
【0004】
幾何光学的手法は、電波を幾何光学的な光線と仮定して送信点から発射され受信点に到達する光線の軌跡情報から電界強度を計算するものであり、軌跡の導出方法から一般に鏡像点法とラウンチング法の2つに大別できる。
【0005】
鏡像点法は、例えば、特開平8-194029号公報に示されるように、送信点、受信点および全ての反射面の組み合わせから反射点を導出して光線の軌跡を求めるものであり、光線の軌跡を厳密に求めることができる。しかし、計算処理量は反射面数の反射回数のべき乗に比例するため、解析構造物の形状が複雑である場合には膨大となるものである。
【0006】
ラウンチング法は、例えば、REALIZE社発行(1999年)「電波伝搬ハンドブック第24章」に示されるように、送信点から送信角度間隔ごとに離散的に光線を発射して、その軌跡を逐次追跡し、受信点の回りに定義された受信空間に到達した光線の各々に対して、距離損失、偏波による損失、反射損失などの伝搬損失から複素受信レベルを導出し、各々の光線を位相合成することで受信レベルを導出するものである。よって、計算処理量は反射面数に比例するため、解析構造物の形状が複雑である場合でも鏡像点法と比較して小さい。しかし、受信点を受信空間で定義するため、厳密に光線の軌跡を導出できる鏡像点法と比較して計算精度は悪いものである。
【0007】
以下では、ラウンチング法の従来の一例を図14および図15を用いて説明する。
【0008】
図14は、電波伝搬解析法による計算結果の表示例である短区間受信レベル変動を示す。図15は、ラウンチング法を用いて図14に示す計算結果を得るためのフローチャートである。図14において、グラフ87は、送信する一方の無線局を固定し、受信する他方の無線局を移動させた場合の、他方の無線局位置による受信電界強度の変動を示しており、横軸を他方の無線局の移動距離、縦軸を受信電界強度としている。グラフ87における特性88は、受信点位置による受信電界強度の変動を示しており、一般にフェージング特性を示す。本従来例では、送信側の無線局を固定し受信側の無線局を移動させているが、受信側を固定し送信側を移動させても計算結果は同じである。
【0009】
以下、図15のフローチャートを用いて計算処理の手順を説明する。
【0010】
図15に示す計算手順は、パラメータ入力処理89、壁面方程式導出処理90、放射光線方程式導出処理91、受信球導出処理92、到達光線探索処理93、反射波方程式導出処理94、電界強度導出処理95、位相合成処理96、および結果出力処理97を有する。また、第1ループ98、第2ループ99、第3ループ100、および、第4ループ101を有する。これらのループは、各々に設定されたパラメータに対する繰り返し処理を示す。図15に示す処理を行うハードウエアは、記憶装置を有する一般的なパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)等であってよい。
【0011】
図15において、パラメータ入力処理89は、オペレータによって入力される、周波数、解析モデル形状、最大反射回数Rmax、放射光線数N、電波を送信する一方の無線局位置、電波を受信する他方の無線局の移動区間および移動点数Mをパソコンの記憶装置に記憶する。
【0012】
壁面方程式導出処理90は、解析モデル形状から、各壁面の方程式を導出しパソコンの記憶装置に記憶する。
【0013】
放射光線方程式導出処理91は、放射光線数Nと電波を送信する一方の無線局の位置情報から、送信角度間隔φと各放射光線の方程式を導出してパソコンの記憶装置に記憶する。
【0014】
受信空間導出処理92は、他方の無線局の移動番号m、放射光線番号n、反射回数Rの特定の光線(m,n,R)の伝搬距離diを導出し、受信空間を球とした受信球の受信球半径riを下記の(1)式の計算により導出し、パソコンの記憶装置に記憶する。
【数1】
Figure 0004372287
【0015】
受信球半径riは、(1)式より送信角度間隔φと伝搬距離diによって変化することが知られている。
【0016】
到達光線探索処理93は、受信する一方の無線局の位置と受信球半径riから受信球方程式を導出し、特定の光線(m,n,R)と受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば到来光線として特定の光線(m,n,R)をパソコンの記憶装置に記憶する。到達光線探索処理93は、特定の光線の反射回数Rが最大反射回数Rmaxになるまで第1ループ98により繰り返し行われ、また、特定の光線の光線番号nが放射光線数Nになるまで第2ループ99により繰り返し行われ、第1および第2ループ(98,99)処理完了後に到達光線数Hと到達光線情報をパソコンの記憶装置に記憶する。第1ループ98中の反射光線方程式導出処理94は、反射光線(m,n,R+1)方程式の導出を行う。
【0017】
電界強度導出処理95は、到達光線番号hの特定の到達光線(m,h)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置に記憶する。電界強度導出処理95は、特定の到達光線番号hが到達光線数Hになるまで第3ループ100により繰り返し行われ、全ての到達光線の電界強度をパソコンの記憶装置に記憶する。
【0018】
位相合成処理96は、各到達光線の電界強度を位相合成して受信する他方の無線局における総合受信電界強度を導出しパソコンの記憶装置に記憶する。これらの放射光線方程式導出処理91から位相合成処理96までの処理は、他方の無線局の移動番号mが移動点数Mになるまで、第4ループ101により繰り返し行われ、各他方の無線局の移動距離と総合受信電界強度をパソコンの記憶装置に記憶する。
【0019】
結果出力処理97は、図14に示すグラフ87を出力する。
【0020】
図15に示す従来の計算処理の手順において、計算処理量および計算時間は第1、第2および第4ループ処理にて処理される光線探索処理回数Sにほぼ比例する。光線探索処理回数Sは下記の(2)式によって導出される。
【数2】
Figure 0004372287
【0021】
第1例として、最大反射回数Rmax=4、他方の無線局移動回数M=100、放射光線数N=8,000とした場合、送信角度間隔φは2.15°と計算され、(2)式より光線探索処理回数S1は、S1=4,000,000と計算される。第2例として、第1例より計算精度を3倍向上するため送信角度間隔φ=0.7°とした場合に必要な放射光線数Nは約72,000本であり、第1例と同様に最大反射回数Rmax=4、他方の無線局移動回数M=100とした場合の光線処理回数S2は、S2=36,000,000と計算される。第1および第2例を比較することで、計算精度を向上させると計算量が増えることが分かり、一般には、計算精度をk倍向上すると計算量および計算時間は約k2倍となることが知られている。
【0022】
また、受信点から受信球半径ri離れている光線を到達光線と判定するために生じる判定誤差のため、送信角度間隔φが大きく受信球半径riの値が大きい場合には、計算精度が悪くなることが知られている。そのため、オペレータは、送信角度間隔φを小さくし解析に要求される計算精度を確保するため適切な放射光線数Nを選択する必要がある。
【0023】
さらに、受信球半径riが受信する無線局と壁面の距離Dより大きい場合には、受信球の一部が解析空間の外部に逸脱し、逸脱した受信空間と交わる光線を到達光線と判定するために生じる逸脱誤差のため、計算精度が悪くなることが知られている。
【0024】
図16に従来の計算処理における壁面設定方法を示す。図16は、材質の異なる特異面を壁面上に含む特定の壁面設定方法の一例を示す。図16において壁面102は例えばコンクリートなどで構成されている。特異面103は例えば窓ガラスであり、壁面102とは異なる材質で構成されている。小壁面104乃至107は、ラウンチング法による計算に必要なため壁面102を4つに細分化した壁面である。パラメータ入力処理89において、オペレータは解析モデル形状として特異面103と小壁面104乃至107の頂点座標と材質定数を入力する。このように、特異面を含む壁面の設定は、複数の壁面を設定することが必要となる。
【0025】
また、図15において反射光線導出処理94の計算時間は壁面数に比例するため、壁面数を少なくして計算時間を短縮することが望まれている。
【0026】
さらに、図15に示す従来の計算処理において、解析モデル内の特定平面の電界強度分布を表示する際に必要な計算処理量を算出する。例えば、5m×5mの平面の電界強度分布を0.05m間隔で3次元グラフ表示すると、受信する移動局の移動点数Mは101×101=10,201と計算される。計算時間は移動局移動点数Mに比例するため、特定平面の電界強度分布を導出するには膨大な時間が必要となる。このような手法による出力結果は、特定平面上のフェージング特性が詳細に分かる。しかし、基地局配置設計などで要求される結果は、特定平面上の詳細なフェージング特性より、全体的な特定平面上の電界強度の推移であり、かつ計算時間が小さいことである。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のラウンチング法を用いた幾何光学的電波伝搬解析法では、計算精度を向上すると計算時間が莫大となるという問題があった。
【0028】
また、無線局のいずれかが解析モデルの壁面近傍にある場合、逸脱誤差のために計算精度の劣化を招くという問題があった。
【0029】
さらに、位相合成処理において大きな影響を与える伝搬損失の小さい到達光線の判定誤差によって、総合受信電界の計算精度の劣化を招くという問題があった。
【0030】
そして、複数の壁面の接線に到達した接線到達光線については反射波を導出する計算ができず探索を中止するため計算精度の劣化を招くという問題があった。
【0031】
また、材質の異なる特異面を壁面上に含む特定の壁面の領域を複数の領域に分割して壁面を設定するため、壁面数が増え計算時間が大きくなるという問題があった。
【0032】
さらに、直線偏波の電波伝搬を解析する際に任意の光線の偏波方向を図によって見易く確認できないという問題があった。
【0033】
そして、解析モデル内の特定平面上の平均的な電界強度分布を3次元グラフによって確認するには、計算時間が莫大となるという問題があった。
【0034】
また、計算または測定された複数の無線局のアンテナ指向性の情報が離散値であるため活用できないという問題があった。
【0035】
本発明は、このような従来のラウンチング法を用いた幾何光学的電波伝搬解析法の問題点を総合的に解決するものであり、処理量を低減し、計算時間を削減すること、電界強度分布の計算精度がある程度確保されること、平面上の電界強度分布を分かり易く表示すること、および、アンテナ指向性を考慮して計算することを目的としている。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明の電波伝搬解析方法は、一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局近傍に定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、第1送信角度間隔で送信された複数の主光線のうち前記第1送信角度間隔により決定される第1受信空間に到達する到達主光線を特定し、前記到達主光線近傍へ前記第1送信角度間隔よりも小さい第2送信角度間隔で複数の副光線を送信し、前記副光線のうち前記第2送信角度間隔により決定される第2受信空間に到達する到達副光線を特定することを特徴とする。この構成により、高い計算精度を確保し、かつ計算時間を短縮することができる。
【0037】
また、本発明の電波伝搬解析方法は、一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局近傍に定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、第1無線局から第2無線局へ送信した光線を探索した後、第2無線局から第1無線局へ送信した光線を探索することを特徴とする。この構成により、無線局位置が構造物壁面近傍にある場合の電界強度分布の計算精度を向上させることができる。
【0038】
さらに、本発明の電波伝搬解析方法は、一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局近傍に定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、反射回数が特定の回数以下である到達光線について鏡像点法を用いることを特徴とする。この構成により、計算結果に特に大きい影響を及ぼす特定回数以下の到達光線を厳密に計算できるので、電界強度分布の計算精度を向上させることができる。
【0039】
そして、本発明の電波伝搬解析方法は、一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局近傍に定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、複数の壁面の接線に到達する接線到達光線について、前記接線到達光線の送信角度を微小角度をもって変化させ送信し探索することを特徴とする。この構成により、接線到達光線を計算可能とし、電界強度分布の計算精度を向上させることができる。
【0040】
また、本発明の電波伝搬解析方法は、一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局近傍に定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、材質の異なる特異面を壁面上に含む特定の壁面において、前記特異面の位置を微小幅をもって変化させ解析モデルを構築することを特徴とする。この構成により、構造物の壁面数を削減でき、計算時間を短縮することが可能できる。
【0041】
さらに、本発明の電波伝搬解析方法は、幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、特定の光線の偏波方向を表示することを特徴とする。この構成により、反射によって変化する特定の光線の偏波方向を確認することができる。
【0042】
そして、本発明の電波伝搬解析方法は、幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、解析モデル内の特定平面上の電界強度分布を前記特定平面上の各点の平均電界強度を算出して3次元グラフを用いて表示することを特徴とする。この構成により、特定平面上の平均的な電界強度分布を分かり易くかつ短時間で表示することができる。
【0043】
また、本発明の電波伝搬解析方法は、幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、測定または計算により得られる複数の無線局のアンテナ指向性の離散角度情報を補間して用いることを特徴とする。この構成により、複数の無線局のアンテナ指向性による減衰量を簡単に計算することができ、電界強度分布の計算精度を向上させることができる。
【0044】
さらに、本発明の電波伝搬解析装置は、前記各電波伝搬解析方法を実施する構成を有する。この構成により、高い計算精度をもって高速に解析できる電波伝搬解析装置を実現することができる。
【0045】
本発明の記憶媒体は、前記各電波伝搬解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体である。この構成により、高い計算精度を確保し、かつ計算時間の短縮が可能な電波伝搬解析をコンピュータにより実行することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1から図13を用いて説明する。
【0047】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、第1送信角度をもって探索した後に、第1送信角度より小さい第2送信角度をもって特定の到達光線の近傍を再探索することで、高い計算精度を確保し、かつ計算時間を短縮する。
【0048】
図1は、本発明の第1の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法のフローチャートを示す図である。図1の処理により、出力結果として図2に示す短区間受信レベル変動特性が得られる。
【0049】
図1に示す処理を実行するハードウェアである電波伝搬解析装置は、例えば図13に示すような、一般的なパソコンシステムであってよい。図13に示すように、このシステムは、制御装置201と、それぞれ制御装置201に接続された入力装置202、表示装置203、印刷装置204、および記憶装置205を備えている。また、着脱可能な記憶媒体206を使用することができる。
【0050】
制御装置201は、パソコンの本体であって、演算装置と内部記憶装置とを具備している。入力装置202、表示装置203、および印刷装置204は、それぞれ、一般的なパソコンシステムに使用されている、キーボードおよびマウス、CRTやLCD、およびプリンタである。記憶装置205は、例えば制御装置201に内蔵もしくは外付されたハードディスク装置である。そして、制御装置201が図1に示す処理を実行するために必要なプログラム、パラメータ、導出データ、およびその他のデータなどが記憶される。着脱可能な記憶媒体206は、例えばフロッピーディスク、CD−ROM、CD−RW等であって、記憶装置205に記憶するプログラムがあらかじめ記憶されている。また、本システムで解析された解析結果のデータを記憶することもできる。
【0051】
次に、図1のフローチャートを用いて本実施の形態における計算処理の手順を説明する。
【0052】
図1において、パラメータ入力処理1は、オペレータによって入力装置202から入力される、周波数、解析モデルの形状、主光線の最大反射回数Rsmax、主光線数Ns、副光線数Nf、電波を送信する一方の無線局位置、電波を受信する他方の無線局の移動区間および移動点数Mを記憶装置205に記憶する。
【0053】
壁面方程式導出処理2は、解析モデルの形状から、各壁面の方程式を導出し、記憶装置205に記憶する。
【0054】
主光線方程式導出処理3は、主光線数Nsと送信する無線局の位置情報とを用いて、主光線の第1送信角度間隔φ1と各主光線の方程式を導出して記憶装置205に記憶する。
【0055】
第1受信球導出処理4は、他方の無線局の移動番号m、主光線番号ns、反射回数Rsの特定の主光線(m,ns,Rs)の伝搬距離diを導出し、第1受信空間を球とした第1受信球の第1受信球半径ri1を導出し、記憶装置205に記憶する。第1受信球半径ri1は、(1)式のriをri1、φをφ1として導出される。
【0056】
到達主光線探索処理5は、受信する無線局の位置と第1受信球半径ri1とから第1受信球方程式を導出し、特定の主光線(m,ns,Rs)と第1受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば到達主光線として特定の主光線(m,ns,Rs)を記憶装置205に記憶する。到達主光線探索処理5は、特定の主光線の反射回数Rsが最大反射回数Rsmaxになるまで第1ループ6により繰り返し行われ、また、特定の主光線の主光線番号nsが主光線数Nsになるまで第2ループ7により繰り返し行われ、到達主光線数Hsと到達主光線情報を記憶装置205に記憶する。第1ループ6中の反射主光線方程式導出処理8は、反射主光線(m,ns,Rs+1)の方程式の導出を行う。
【0057】
副光線方程式導出処理9は、到達主光線番号hsの特定の到達主光線(m,hs)の近傍に第1送信角度間隔φ1より小さい第2送信角度間隔φ2隔てたNf本の副光線を送信する無線局から放射し、各副光線の方程式を記憶装置205に記憶する。
【0058】
第2受信球導出処理10は、到達主光線番号hs、副光線番号nfの特定の副光線(m,hs,nf)の伝搬距離difと第2送信角度間隔φ2から第2受信球半径ri2を導出し、第2受信空間を球とした第2受信球の方程式を導出し、記憶装置205に記憶する。第2受信球半径ri2は、(1)式のriをri2、diをdif、φをφ2として導出される。
【0059】
到達副光線探索処理11は、特定の副光線(m,hs,nf)と第2受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば到達副光線として特定の副光線(m,hs,nf)を記憶装置205に記憶する。到達副光線探索処理11は、特定の副光線(m,hs,nf)の副光線番号nfが副光線数Nfになるまで第3ループ12により繰り返し行われ、また、到達主光線番号hsが到達主光線数Hsになるまで第4ループ13により繰り返し行われ、到達副光線数Hfと到達副光線情報を記憶装置205に記憶する。ここで到達主光線数Hsと到達副光線数Hfは同じ値である。
【0060】
電界強度導出処理14は、到達副光線番号hfの特定の到達副光線(m,hf)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置205に記憶する。電界強度導出処理14は、特定の到達副光線番号hfが到達副光線数Hfになるまで第5ループ15により繰り返し行われ、全ての到達副光線の電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0061】
位相合成処理16は、各到来副光線の電界強度を位相合成して受信する無線局における総合受信電界強度を導出し、記憶装置205に記憶する。
【0062】
これらの主光線方程式導出処理3から位相合成処理16までの処理は、受信する無線局の移動番号mが移動点数Mになるまで第6ループ17により繰り返し行われ、各受信する無線局の移動距離と総合受信電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0063】
結果出力処理18は、図2に示されるように、横軸を受信する無線局の移動距離とし、縦軸を総合受信電界強度とした短区間受信レベル変動を示すグラフ19を出力する。グラフ19の縦軸は、例えば、送信する無線局の送信電力を0dBmとした場合の総合電界強度を示している。特性20は、総合受信電界強度の推移を示し、一般にフェージング特性を示す。
【0064】
第1の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、例えば、主光線の最大反射回数Rmax=4、主光線数Ns=8,000、副光線数Nf=9、移動局の移動点数M=100とした場合、副光線の送信角度間隔φf=0.7°と計算され、到達主光線の数は約120本程度である。この場合、到達主光線探索処理5の実行回数は、(4+1)×8,000×100=4,000,000回と計算され、到達副光線探索処理11の実行回数は、120×9×100=135,000回と計算され、到達探索処理回数の合計は4,135,000回となる。従来の第2例において、送信角度間隔φ=0.7°の計算精度を実現するためには、到達探索処理を36,000,000回行う必要があり、本実施の形態と従来の第2例の計算処理量を比較することにより、本実施の形態は高い計算精度を確保して計算時間を大幅に短縮できることが分かる。
【0065】
このように、本発明の第1実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法によれば、第1送信角度φ1をもって探索した後に、第1送信角度φ1より小さい第2送信角度をもって特定の到達光線の近傍を再探索することで、高い計算精度を確保して計算時間を短縮することができる。
【0066】
なお、以上の説明では、便宜上電波を送信する無線局が光線を放射するものとしたが、電波を受信する無線局が光線を放射、し電波を送信する無線局が光線を受信しても同様の効果が得られる。また、具体数値は上記に限定されるものではなく、副光線数Nfを4以上とすることで同様の効果が得られる。
【0067】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、第1および第2無線局の両方から軌跡の探索を行うことで、逸脱誤差と判定誤差を軽減し、計算精度を向上させている。
【0068】
図3は、本発明の第2の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法のフローチャートを示す図である。図3における処理により、出力結果として図2に示す短区間受信レベル変動特性が得られる。図3に示す処理を行うハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。
【0069】
以下、図3のフローチャートを用いて本実施の形態おける計算処理の手順を説明する。
【0070】
図3において、パラメータ入力処理21は、オペレータによって入力される、周波数、解析モデルの形状、放射光線の最大反射回数Rmax、放射光線数N、電波を送信する一方の第1無線局位置、電波を受信する第2無線局の移動区間および移動点数Mを記憶装置205に記憶する。
【0071】
壁面方程式導出処理22は、解析モデルの形状から、各壁面の方程式を導出し記憶装置205に記憶する。
【0072】
第1放射光線方程式導出処理23は、放射光線数Nと第1無線局の位置情報とから、第1無線局から放射される第1放射光線の送信角度間隔φと各第1放射光線の方程式を導出して記憶装置205に記憶する。
【0073】
第1受信球導出処理24は、第2無線局の移動番号m、第1放射光線番号n1、反射回数Rの特定の第1放射光線(m,n1,R)の伝搬距離diを導出し、第1受信空間を球とした第1受信球の第1受信球半径ri1を導出し、記憶装置205に記憶する。第1受信球半径ri1は、(1)式のriをri1として導出される。
【0074】
第1到達光線探索処理25は、第2無線局の位置と第1受信球半径ri1とから第1受信球方程式を導出し、特定の第1放射光線(m,n1,R)と第1受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば第1到達光線として特定の第1放射光線(m,n1,R)を記憶装置205に記憶する。第1到達光線探索処理25は、特定の第1放射光線光線の反射回数Rが最大反射回数Rmaxになるまで第1ループ26により繰り返し行われ、また、特定の第1放射光線の第1放射光線番号n1が放射光線数Nとなるまで第2ループ27により繰り返し行われ、第1到達光線数H1と第1到達光線情報を記憶装置205に記憶する。第2ループ27中の第1反射光線方程式導出処理28は、第1反射光線(m,n1,R+1)の方程式の導出を行う。
【0075】
第2放射光線方程式導出処理29は、放射光線数Nと第2無線局の位置情報とから、第2無線局から放射される第2放射光線の方程式を導出して記憶装置205に記憶する。
【0076】
第2受信球導出処理30は、第2無線局の移動番号m、第2放射光線番号n2、反射回数Rの特定の第2放射光線(m,n2,R)の伝搬距離diを導出し、第2受信空間を球とした第2受信球の第2受信球半径ri2を導出し、記憶装置205に記憶する。第2受信球半径ri2は、(1)式のriをri2として導出される。
【0077】
第2到達光線探索処理31は、第1無線局の位置と第2受信球半径ri2から第2受信球方程式を導出し、特定の第2放射光線(m,n2,R)と第2受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば第2到達光線として特定の第2放射光線(m,n2,R)を記憶装置205に記憶する。第2到達光線探索処理31は、特定の第2放射光線光線の反射回数Rが最大反射回数Rmaxになるまで第3ループ32により繰り返し行われ、また、特定の第2放射光線の第2放射光線番号n2が放射光線数Nとなるまで第4ループ33により繰り返し行われ、第2到達光線数H2と第2到達光線情報を記憶装置205に記憶する。第3ループ32中の第2反射光線方程式導出処理34は、第2反射光線(m,n2,R+1)の方程式の導出を行う。
【0078】
同一経路光線の比較処理35は、特定の第1到達光線と経路が同一である特定の第2到達光線を検出し、特定の第1到達光線と第2無線局の距離と特定の第2到達光線の距離と第1無線局の距離とを比較し、距離の小さい到達光線情報を第3到達光線として記憶装置205に記憶する。また、同一経路光線の比較処理35は、全ての第1到達光線について第3到達光線を導出する上記の処理を繰り返し行い、H3本の第3到達光線を記憶装置205に記憶する。
【0079】
電界強度導出処理36は、第3到達光線番号h3の特定の第3到達光線(m,h3)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置205に記憶する。電界強度導出処理36は、特定の第3到達光線番号h3が第3到達光線数H3になるまで第5ループ37により繰り返し行われ、全ての第3到達光線の電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0080】
位相合成処理38は、各第3到達光線の電界強度を位相合成して第2無線局における総合受信電界強度を導出し、記憶装置205に記憶する。
【0081】
これらの第1放射光線方程式導出処理23から位相合成処理38までの処理は、他方の無線局の移動番号mが移動点数Mになるまで第6ループ39により繰り返し行われ、各他方の無線局の移動距離と総合受信電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0082】
結果出力処理18は、図2に示されるように、横軸を受信する無線局の移動距離とし、縦軸を総合受信電界強度とした短区間受信レベル変動を示すグラフ19を出力する。
【0083】
このように、本発明の第2の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、第1および第2無線局の両方から軌跡の探索を行うことで、逸脱誤差と判定誤差を軽減し、計算精度を向上させることができる。
【0084】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、ラウンチング法によって計算した後、特定の反射回数以下の到達光線を鏡像点法を用いて再計算することで、計算精度を向上させている。
【0085】
図4は、第3の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法のフローチャートを示す図である。図4における処理により、出力結果として図2に示す短区間受信レベル変動特性を得る。図4に示す処理を行うハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。
【0086】
以下、図4のフローチャートを用いて本実施の形態における計算処理の手順を説明する。
【0087】
図4において、パラメータ入力処理40は、オペレータによって入力される、周波数、解析モデルの形状、放射光線の最大反射回数Rmax、鏡像点法処理最大反射回数P、放射光線数N、電波を送信する一方の無線局位置、電波を受信する他方の無線局の移動区間および移動点数Mを記憶装置205に記憶する。
【0088】
壁面方程式導出処理41は、解析モデルの形状から、各壁面の方程式を導出し記憶装置205に記憶する。
【0089】
放射光線方程式導出処理42は、放射光線数Nと送信する無線局の位置情報から、放射光線の送信角度間隔φと各放射光線の方程式を導出して記憶装置205に記憶する。
【0090】
受信球導出処理43は、受信する無線局の移動番号m、放射光線番号n、反射回数Rの特定の放射光線(m,n,R)の伝搬距離diを導出し、受信空間を球とした受信球の受信球半径riを(1)式の計算により導出し記憶装置205に記憶する。
【0091】
到達光線探索処理44は、受信する無線局の位置と受信球半径riから受信球方程式を導出し、特定の放射光線(m,n,R)と受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば到達光線として特定の放射光線(m,n,R)を記憶装置に記憶する。到達光線探索処理44は、特定の放射光線光線の反射回数Rが最大反射回数Rmaxになるまで第1ループ45により繰り返し行われ、また、特定の放射光線の放射光線番号nが放射光線数Nとなるまで第2ループ46により繰り返し行われ、到達光線数Hと到達光線情報を記憶装置205に記憶する。第1ループ45中の反射光線方程式導出処理47は、反射光線(m,n,R+1)の方程式の導出を行う。ここで、到達光線情報は受信する無線局番号、各到達光線の各反射点位置、到達光線の反射壁面番号を順次記憶した到達光線軌跡、各到達光線の線方程式を有している。
【0092】
鏡像点法処理48は、反射回数が鏡像点法処理最大反射回数P回以下のJ本の到達光線に対して、従来例に示す鏡像点法を用いて再度到達光線の軌跡と光線の線方程式を導出して、反射回数がP回以下の到来光線情報を全て書き換え記憶装置205に記憶する。また鏡像点法処理48は、到達光線軌跡情報を用いて鏡像点を順次導出していくため、処理回数は第3ループ49により繰り返し行わるJ回である。第3ループ回数J回は、解析モデル形状が複雑である場合、反射面数の反射回数のべき乗に比例して計算量が増える従来例の鏡像点法の処理回数に比べ小さい。
【0093】
電界強度導出処理50は、到達光線番号hの特定の到達光線(m,h)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置205に記憶する。電界強度導出処理50は、特定の到達光線番号hが到達光線数Hになるまで第4ループ51により繰り返し行われ、全ての到達光線の電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0094】
位相合成処理52は、各到達光線の電界強度を位相合成して受信する無線局における総合受信電界強度を導出し、記憶装置205に記憶する。これらの放射光線方程式導出処理42から位相合成処理52までの処理は、受信する無線局の移動番号mが移動点数Mになるまで第5ループ53により繰り返し行われ、各他方の無線局の移動距離と総合受信電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0095】
結果出力処理18は、図2に示されるように、横軸を受信する無線局の移動距離とし、縦軸を総合受信電界強度とした短区間受信レベル変動を示すグラフ19を出力する。
【0096】
このように、本発明第3の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析方法では、位相合成処理に大きな影響を与える伝搬損失の小さい特定の反射回数以下の到達光線を鏡像点法を用いて再計算し、反射点位置、光線の軌跡を厳密に導出することにより、計算精度を向上させることができる。
【0097】
なお、以上の説明では、便宜上電波を送信する無線局が光線を放射するとしているが、電波を受信する無線局が光線を放射し電波を送信する無線局が光線を受信しても同様の効果が得られる。
【0098】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、接線到達光線の送信角度を微小角度をもって変化させて再送信し、探索することにより、導出が困難である接線到達光線の反射波を容易に導出し、電界強度分布の計算精度を向上させている。
【0099】
図5は、本発明の第4の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法のフローチャートを示す図である。図5における処理により、出力結果として図2に示す短区間受信レベル変動特性を得る。図5に示す処理を行うハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。
【0100】
以下、図5のフローチャートを用いて本実施の形態における計算処理の手順を説明する。
【0101】
図5において、パラメータ入力処理54は、オペレータによって入力される、周波数、解析モデルの形状、放射光線の最大反射回数Rmax、放射光線数N、微小角度Δφ、電波を送信する一方の無線局位置、電波を受信する他方の無線局の移動区間および移動点数Mを記憶装置205に記憶する。
【0102】
壁面方程式導出処理55は、解析モデルの形状から、各壁面の方程式を導出し記憶装置205に記憶する。
【0103】
放射光線方程式導出処理56は、放射光線数Nと送信する無線局の位置情報から、放射光線の送信角度間隔φと各放射光線の方程式を導出して記憶装置205に記憶する。
【0104】
受信球導出処理57は、受信する無線局の移動番号m、放射光線番号n、反射回数Rの特定の放射光線(m,n,R)の伝搬距離diを導出し、受信空間を球とした受信球の受信球半径riを(1)式の計算により導出して記憶装置205に記憶する。
【0105】
到達光線探索処理58は、受信する無線局の位置と受信球半径riから受信球方程式を導出し、特定の放射光線(m,n,R)と受信球が交わるか否かを判定し、交わるならば到達光線として特定の放射光線(m,n,R)を記憶装置205に記憶する。到達光線探索処理58は、特定の放射光線光線の反射回数Rが最大反射回数Rmaxになるまで第1ループ59により繰り返し行われ、また、特定の放射光線の放射光線番号nが放射光線数Nとなるまで第2ループ60により繰り返し行われ、到達光線数Hと到達光線情報を記憶装置205に記憶する。第1ループ59は、最初に特定の放射光線(m,n,R)の反射回数がR+1回である反射点を導出する。次に、反射点が接線上に存在するかの判定を処理61にて実行し、反射点が接線上にない場合は反射光線方程式導出処理62において特定の放射光線(m、n、R+1)の方程式を導出する。反射点が接線上にある場合は、微小角度シフト放射光線導出処理63において、反射回数Rを0として送信する無線局から特定の放射光線(m,n,R)の放射角度を任意の方向に微小角度Δφだけ変えた再放射光線(m,n',0)を放射し、再放射光線に対して第1ループ59の探索処理を実行する。
【0106】
電界強度導出処理64は、到達光線番号hの特定の到達光線(m,h)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置205に記憶する。電界強度導出処理64は、特定の到達光線番号hが到達光線数Hになるまで第3ループ65により繰り返し行われ、全ての到達光線の電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0107】
位相合成処理66は、各到達光線の電界強度を位相合成して受信する無線局における総合受信電界強度を導出し、記憶装置205に記憶する。これらの放射光線方程式導出処理56から位相合成処理66までの処理は、受信する無線局の移動番号mが移動点数Mになるまで第4ループ67により繰り返し行われ、各他方の無線局の移動距離と総合受信電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0108】
結果出力処理18は、図2に示されるように、横軸を受信する無線局の移動距離とし、縦軸を総合受信電界強度とした短区間受信レベル変動を示すグラフ19を出力する。
【0109】
このように、本発明の第4の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法によれば、複数の壁面の接線に到達する接線到達光線について、接線到達光線の送信角度を微小角度をもって変化させて再送信し、探索することにより、導出が困難である接線到達光線の反射波を容易に導出し、電界強度分布の計算精度を向上させることができる。
【0110】
なお、以上の説明では、便宜上電波を送信する無線局が光線を放射するとしているが、電波を受信する無線局が光線を放射し電波を送信する無線局が光線を受信しても同様の効果が得られる。
【0111】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、特異面の位置を微小間隔変化させることで壁面設定数を軽減し、計算時間を短縮している。
【0112】
図6および図7は、本発明の第5の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法における材質の異なる特異面を壁面上に含む場合の壁面設定方法を説明した図である。第5の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法における計算手順は、基本的には図15に示した従来例と同様であるが、パラメータ入力処理89と壁面方程式導出処理90の内容が異なる。また、この計算手順を実行するハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。
【0113】
図6は特異面を含む壁面の正面図、図7は図6に示す壁面の側面図を示しており、壁面68+Y方向を解析領域としている。図6および図7において壁面68は、例えば、コンクリートなどで構成されている。特異面69は、例えば窓ガラスであり、壁面68とは異なる材質で構成されている。そして、壁面68から微小間隔Δdをもって壁面68より解析領域の内側に設置される。特定の光線70は、特異面69で反射する光線を示している。従来例では、同じ特異面を含む壁面を設定する際に4つの小壁面と1つの特異面の5つに分割して設定した。これに対して、本実施の形態では、壁面68と特異面69の2つに分割して設定でき、壁面設定数を低減できることが分かる。また、微小間隔Δdをラウンチング法の計算精度より十分小さい値とすれば、計算精度が劣化しない。
【0114】
このように、本発明の第5の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法によれば、特異面の位置を微小間隔変化させることで、従来例に示す壁面設定方法と比較して少ない壁面数で特異面を含む壁面の設定ができるため、計算時間を短縮できる。
【0115】
なお、具体的数値は一例であって、上記数値に限定されるものではない。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、反射によって変化する特定の光線の偏波方向を表示して確認できるようにした。
【0116】
図8は、本発明の第6の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法における特定の光線の軌跡と各反射点での偏波方向を表示した図を示している。本実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法における計算手順は、基本的には図15に示した従来例と同様であるが、結果出力処理97の内容が異なる。また、この計算手順を実行するハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。
【0117】
図8において、解析モデル71は直方体で定義されている。送信する無線局72は送信角度間隔φをもって光線を全方向に放射している。特定の光線73は、送信する無線局から放射される光線の一つを示しており、各壁面において鏡面反射しており0回乃至6回反射した光線を示している。反射点74は、特定の光線73が壁面で反射する反射点である。偏波方向75は、各反射点74における直線偏波の方向を示しており、電界強度導出処理95において計算された特定の光線の偏波の情報を用いて導出される。
【0118】
上記の処理によって、図8に示す図を出力結果として表示手段203の画面に表示することにより、特定の光線の偏波方向を分かり易く表示することができる。
【0119】
このように、本発明の第6の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法によれば、電界強度導出処理95において計算された特定の光線の偏波情報を用いて、特定の光線における各反射波の偏波方向を画面に表示するので、特定の光線の偏波方向が分かりやすく表示される。
【0120】
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、特定平面上の電界強度の推移を計算時間を短縮して表示する。
【0121】
図9は、本発明の第7の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法における解析モデル内の特定平面上の平均電界強度分布を3次元グラフ76を用いて表示した図を示している。また、図10は、本実施の形態のラウンチング法を用いた幾何光学的電波伝搬解析法のフローチャートを示す図である。図11は、平均電界強度のレベル導出点の定義を示した図である。
【0122】
図10における処理により、出力結果として図9に示す3次元グラフ76を得る。また、図10に示す処理を行うハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。そして、図10における各処理のうち従来例のフローチャートである図14の符号と同じ符号の処理は、同様の内容を有する。
【0123】
以下、図10のフローチャートを用いて本実施の形態の計算処理の手順を説明する。
【0124】
図10において、パラメータ入力処理77は、オペレータによって入力される、周波数、解析モデルの形状、放射光線の最大反射回数Rmax、放射光線数N、微小角度Δφ、電波を送信する一方の無線局位置、解析領域内の特定の平面、複数の平均電界強度レベル表示点、複数の電界強度計算点、複数の小平面を記憶装置205に記憶する。
【0125】
複数の電界強度計算点の総数Mは計算によって導出され記憶装置205に記憶される。ここで、複数の平均電界強度レベル表示点、複数の電界強度計算点、複数の小平面について図11を用いて説明する。図11において、送信する無線局78はパラメータ入力処理77により設定される。解析領域79は、解析モデルの形状に従って設定される。特定の平面80は、パラメータ入力処理77において平面の範囲を入力され、解析領域79内に設定される。小平面81は、特定の平面80を複数に分割して設定される。図11では、特定の平面80を48の小平面80に分割している。電界強度計算点83はパラメータ入力処理77において設定され、それぞれ受信する無線局位置となる。平均電界強度は、特定の小平面81内の複数の電界強度計算点82の電界強度の平均値を計算して導出される。平均電界強度レベル表示点82は、計算された特定の小平面81内の平均電界強度を、特定の小平面の平均電界強度として表示する位置を示す。図10における結果出力処理84は、図9に示すようにXY平面を特定平面上の平均電界強度レベル表示点とし、Z方向を平均電界強度レベルとして画面に表示する。以上の動作による計算処理量は、例えば、5m×5mの解析領域を0.5m×0.5mの小平面で分割し、各小平面内の電界強度計算点数を7個と設定した場合、複数の電界強度計算点の総数をMは、M=10×10×7=700となり、従来例に示す同面積の特定の平面の計算に対して計算量は小さい。
【0126】
このように、本発明の第7の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、小平面上の数点の電界強度の平均値を導出し、その平均値を小平面の平均電界強度として結果を3次元グラフを用いて示すことで、特定平面上の電界強度の推移を計算時間を短縮して導出できる。
【0127】
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施の形態の幾何光学的電波伝搬解析法では、測定または計算により得られる複数の無線局のアンテナ指向性の離散情報を補間して用いることで、複数の無線局のアンテナ指向性による減衰量を簡単に計算することができ、電界強度の計算精度を向上させている。
【0128】
図12は、本発明の第8の実施の形態のラウンチング法を用いた幾何光学的電波伝搬解析法のフローチャートを示す図である。図12における処理により、出力結果として図2に示す短区間受信レベル変動特性を得る。図12に示す処理を行うハードウエアは、図13に示したパソコンシステムである。図12における各処理のうち、従来例のフローチャートである図14の符号と同じ符号の処理は、同様の内容を有する。
【0129】
以下、図12のフローチャートを用いて本実施の形態の計算処理の手順を説明する。
【0130】
図12において、電界強度導出処理85は、到達光線番号hの特定の到達光線(m,h)の伝搬距離損失、反射損失、アンテナ偏波による損失、アンテナの指向性による損失などの伝搬損失を導出し、受信電界強度を導出して記憶装置205に記憶する。電界強度導出処理85は、特定の到達光線番号hが到達光線数Hになるまで第3ループ86により繰り返し行われ、全ての到達光線の電界強度を記憶装置205に記憶する。
【0131】
ここで、アンテナの指向性は、予め与えられた数式、計算や測定によって得られた離散値データを用いて示される。アンテナの指向性の離散値データは一般的に方位角φdと仰角θdと減衰量Lとによって与えられ、例えば、下記の式(3)のように示される。
【数3】
Figure 0004372287
【0132】
この離散値データは送信する無線局と受信する無線局の各々が有している。また、到達光線番号hの特定の到達光線(m,h)情報には、送信または受信する無線局における放射角度(φs、θs)または入射角度(φe、θe)情報が含まれている。この放射角度(φs、θs)または入射角度(φe、θe)に相当する減衰量Lを離散値データを補間して導出し、送信または受信アンテナにおける減衰量を導出する。補間法は、例えば、線形補間法とする。この減衰量算出方法により、形状が複雑でアンテナ指向性を数式によって表すことが困難な場合でも、測定または計算して離散角度データを得ることにより、容易にアンテナ指向性による減衰量を導出することができる。
【0133】
このように、本発明の第8の実施の形態のラウンチング法を用いた幾何光学的電波伝搬解析法によれば、複数の無線局のアンテナ指向性による減衰量を簡単に計算することができ、電界強度の計算精度を向上させることかできる。
【0134】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、第1送信角度間隔で送信された複数の主光線のうち前記第1送信角度間隔により決定される第1受信空間に到達する到達主光線を特定し、前記到達主光線近傍へ前記第1送信角度間隔よりも小さい第2送信角度間隔で複数の副光線を送信し、前記副光線のうち前記第2送信角度間隔により決定される第2受信空間に到達する到達副光線を特定することにより、高い計算精度を確保し、かつ計算時間を短縮することかできるという効果が得られる。
【0135】
また、第1無線局から第2無線局へ送信した光線を探索した後、第2無線局から第1無線局へ送信した光線を探索することにより、無線局位置が構造物壁面近傍にある場合の電界強度分布の計算精度を向上させることができるという効果が得られる。
【0136】
さらに、反射回数が特定の回数以下である到達光線について鏡像点法を用いることにより、計算結果に特に大きい影響を及ぼす特定回数以下の到達光線を厳密に計算できるので、電界強度分布の計算精度を向上させることができるという効果が得られる。
【0137】
そして、複数の壁面の接線に到達する接線到達光線について、前記接線到達光線の送信角度を微小角度をもって変化させて送信し、探索することにより、接線到達光線を計算可能とし、電界強度分布の計算精度を向上させることができるという効果が得られる。
【0138】
また、材質の異なる特異面を壁面上に含む特定の壁面において、前記特異面の位置を微小幅をもって変化させ解析モデルを構築することにより、構造物の壁面数を削減でき、計算時間を短縮することができるという効果が得られる。
【0139】
さらに、特定の光線の偏波方向を表示することにより、反射によって変化する特定の光線の偏波方向を確認することができるという効果が得られる。
【0140】
そして、解析モデル内の特定平面上の電界強度分布を前記特定平面上の各点の平均電界強度を算出して3次元グラフを用いて表示することにより、特定平面上の平均的な電界強度分布を分かり易く、かつ短時間で表示することができるという効果が得られる。
【0141】
また、測定または計算により得られる複数の無線局のアンテナ指向性の離散角度情報を補間することにより、複数の無線局のアンテナ指向性による減衰量を簡単に計算することができ、電界強度分布の計算精度を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するフローチャート、
【図2】電波伝搬解析の計算結果のグラフ、
【図3】第2の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するフローチャート、
【図4】第3の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するフローチャート、
【図5】第4の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するフローチャート、
【図6】第5の実施の形態の壁面設定方法を説明するための壁面の正面図、
【図7】第5の実施の形態の壁面設定方法を説明するための壁面の側面図、
【図8】第6の実施の形態の電波伝搬解析の表示結果を示す図、
【図9】第7の実施の形態の電波伝搬解析の表示結果を示す図、
【図10】第7の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するためのフローチャート、
【図11】第7の実施の形態の解析領域と計算点を示す図、
【図12】第8の実施の形態の電波伝搬解析の処理動作を説明するためのフローチャート、
【図13】本発明の実施の形態における処理を実行する装置の構成を示すブロック図、
【図14】従来例の電波伝搬解析の計算結果のグラフ、
【図15】従来例の電波伝搬解析の処理動作を説明するためのフローチャート、
【図16】従来例の壁面設定方法を説明するための壁面の正面図である。
【符号の説明】
2 壁面方程式導出処理
3 主光線方程式導出処理
4 第1受信球導出処理
5 到達主光線探索処理
8 反射主光線方程式導出処理
9 副光線方程式導出処理
10 第2受信球導出処理
11 到達副光線探索処理
14 電界強度導出処理
16 位相合成処理
18 結果出力処理

Claims (3)

  1. 一方の無線局から複数の光線を特定の送信角度間隔をもって送信して、他方の無線局定義した受信空間に到達する光線を探索する幾何光学的解析手法を用いた電波伝搬解析方法であって、第1送信角度間隔で送信された複数の主光線のうち、前記他方の無線局の移動番号、放射光線番号および反射回数に基づいた特定の光線の伝搬距離と前記第1送信角度間隔により算出される第1受信球半径により決定される第1受信空間に到達する到達主光線を特定し、前記到達主光線から前記第1送信角度間隔よりも小さい第2送信角度間隔で複数の副光線を送信し、前記副光線のうち前記他方の無線局の移動番号、到達主光線番号および副光線番号に基づいた特定の副光線の伝搬距離と前記第2送信角度間隔により算出される第2受信球半径により決定される第2受信空間に到達する到達副光線を特定することを特徴とする電波伝搬解析方法。
  2. 請求項1記載の電波伝搬解析方法を実施する電波伝搬解析装置
  3. 請求項1記載の電波伝搬解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体
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