JP4366788B2 - リニア駆動機構付きモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、モータに、シャフトの回転を軸線方向の変位に変換するリニア駆動機構が設けられたリニア駆動機構付きモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の複写機やカメラ等の内部に、レンズを移動させてその焦点を合わせるために、ロータの回転を直線運動に変換して当該レンズを往復移動させるリニア駆動機構を備えたステッピングモータが組み込まれている。
一般に、この種のステッピングモータにおけるリニア駆動機構としては、モータの励磁コイル内に回転自在に設けられたローターマグネットの中心にねじ孔を形成し、このねじ孔に外周面に雄ねじが形成されたシャフトを螺合させるとともに、ローターマグネットから外方に延出する当該シャフトの外周に、非円形断面部分を形成し、これを係止板に形成された同様の非円形断面の孔部に回転不能に挿通させたものが知られている。
【0003】
上記構成からなるリニア駆動機構付きモータによれば、ステッピングモータによってロータマグネットを正逆回転させると、これに対応してそのねじ孔に螺合したシャフトが軸線方向に往復移動する。この結果、上記シャフトの先端にレンズの取付部材を連結することにより、当該レンズを直線的に往復運動させて、その焦点を合わせることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年における複写機やカメラ等の光学機器の小型化あるいは軽量化に伴って、上記リニア駆動機構付きモータに付いても、一層の小型化の要請が強くなりつつある。
しかしながら、上記従来のリニア駆動機構付きモータにおいては、ローターマグネットを回転させ、当該ローターマグネットの雌ねじとシャフト外周の雄ねじとの互いのねじ山に直交する方向に生じる反力の軸線方向の分力によって、シャフトを直線的に往復移動させるものであるために、モータが小型化してシャフトが小径となった場合に、これに対応してねじ山も小さくせざるを得ないために、ねじ山が脆くなって、充分なスラスト力が得られなくなるという問題点があった。
【0005】
また、ロータマグネットの中心部の孔部に雌ねじを形成し、これにシャフトの外周に形成した雄ねじを螺合させる構成であるため、上記ステッピングモータが比較的大径である場合には容易に適用することができるものの、特にモータの径が10mm以下となった場合に、これに伴ってシャフトの外径も1mmφ程度となるために、もはやシャフトの外周や、ロータマグネットの中心孔部にねじを形成すること自体が困難になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来のリニア駆動機構付きモータが有する課題を有効に解決すべくなされたもので、極めて小径のモータに対しても、確実にその回転を当該モータの出力に対応したスラスト力によって直線運動に変換することが可能になるとともに、製作が容易なリニア駆動機構付きモータを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係るリニア駆動機構付きモータは、ケーシング内に固定された励磁コイル内に、隙間を介してロータマグネットを回転自在に設け、このローターマグネットの中心にシャフトを一体化し、このシャフトの一端部を上記励磁コイルの外方に延出させてなるモータであって、上記シャフトの延出部は、非円形断面に形成されるとともに、この延出部と係合する相似形の非円形断面を有する孔部が形成された円筒状の変位部材を備え、上記変位部材は、外周部に雄ねじが形成されるとともに、上記延出部が上記孔部内に挿入されることにより、上記シャフトの延出部に当該シャフトの軸線方向に移動自在に、かつ一体的に回転可能に設けられ、上記ケーシングは、駆動部ケーシングが一体的に設けられるとともに、この駆動部ケーシングの内周部に形成された雌ねじが、上記変位部材の外周部に形成された雄ねじと螺合されることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ケーシングは、シャフトが延出する側の端面に設けられた取付板の一側面に固定され、かつ駆動部ケーシングは、上記取付板の他側面に固定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項1〜2のいずれかに記載のリニア駆動機構付きモータにおいては、励磁コイルによってローターマグネットおよびこれと一体化されたシャフトを回転させると、シャフトの延出部に軸線方向に移動自在に設けられた変位部材も、上記シャフトと一体的に回転する。すると、この変位部材の外周の雄ねじが螺合している駆動部ケーシングは、ケーシングに一体的に設けられて回転しないために、当該変位部材が上記ねじの螺設方向に対応して、シャフトに沿って駆動部ケーシングに対し直線移動を行なう。
【0011】
したがって、上記構成からなるリニア駆動機構付きモータによれば、変位部材の外周および駆動部ケーシングの内周にねじを形成すればよいため、モータが小型化してシャフト径が小さくなった場合においても、容易に当該ねじ加工を行なうことができる。
加えて、ねじ形成部分は、シャフト径よりも大径であるために、ねじ山も大きく形成することができ、よって確実にシャフトの回転をモータの出力に対応したスラスト力によって変位部材の直線運動に変換することができる。
【0012】
なお、上記変位部材および駆動部ケーシングとしては、合成樹脂製あるいは金属製のものを用いることが可能であるが、この種のリニア駆動機構付きモータを、例えば上述したレンズの焦点合わせの駆動源として用いる場合には、熱膨張によるレンズの微細な焦点のずれに対してもその微調整を行なう必要があることから、シャフトと変位部材との間に生じるガタを極力小さく抑えることが重要になる。したがって、このような場合には、上記変位部材および駆動部ケーシングとして、温度差による変化が大きい合成樹脂に代えて、金属製のものを用いることが好ましい。
【0013】
また、変位部材をシャフトに対して軸線方向に移動自在に、かつ当該シャフトと一体的に回転自在に設けるに際しては、各種の構成が採用可能であるが、例えば請求項1に記載の発明のように、上記シャフトの延出部を非円形断面に形成し、かつ上記変位部材に、上記延出部と係合する相似形の非円形断面を有する孔部を形成して、上記延出部を孔部内に挿入すれば、シャフトの回転に伴って変位部材がシャフトと一体的に回転するとともに、当該シャフトに対して軸線方向に移動可能となる。
【0014】
この際に、上記変位部材の孔部全体を、シャフトの断面形状と相似の非円形断面に形成してもよく、あるいは孔部を円形断面に形成し、当該孔部内に軸受を嵌合するとともに、この軸受における回転自在のシャフト挿通孔を上記非円形断面に形成することにより、上記孔部の一部を同様の断面に形成するようにしてもよい。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、上記ケーシングをシャフトが延出する側の端面に設けられた取付板の一側面に固定し、駆動部ケーシングを上記取付板の他側面に固定しているので、取付板が一体化されたモータの上記取付板外方から、変位部材および駆動部ケーシングを組み立てることができ、製造が一層容易になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は、この発明に係るリニア駆動機構付きモータを、リニア駆動機構を有する小型のステッピングモータに適用した第1の実施形態を示すものである。
図1において、図中符号1が有底円筒状に形成されたステッピングモータのケーシングであり、このケーシング1の開口端部は、取付板2によって塞がれている。そして、このケーシング1の内部外周には、励磁コイル3が巻回された金属板からなる円環状のヨーク4が配設されており、このヨーク4の内周縁には、周方向に等間隔をおいて軸線方向に屈曲された極歯が形成されている。
【0017】
また、取付板2の中心部には、焼結含油軸受5が嵌合され、これと対向するケーシング1の底部にも、同様の軸受6が軸受5と軸線を一致させて嵌め込まれている。そして、これら軸受5、6間にシャフト7が回転自在に設けられており、このシャフト7の外周には、周方向に交互に異極に着磁されたローターマグネット8が一体に固定されている。これにより、シャフト7は、ケーシング1内において、ローターマグネット8と一体に回転自在に設けられている。
上記シャフト7は、取付板2側においてモータから外方に所定長さ延出する寸法に形成されており、その延出部7aは、長手方向に外周部が切りかかれることにより、断面D字状(非円形断面)に形成されている。
【0018】
そして、このシャフト7の延出部7aに、変位部材9が当該シャフト7に対して軸線方向に移動自在に設けられている。この変位部材9は、中心部に上記延出部7aが挿通される断面D字状の孔部10が形成された合成樹脂製の本体部11と、この本体部11の外周に一体化された金属製の円筒部12とから構成されたもので、円筒部12の外周には、雄ねじ12aが刻設されている。また、本体部11の基端部には、フランジ部13が一体に形成されている。そして、この変位部材9の外周には、駆動部ケーシング14が設けられている。
【0019】
この駆動部ケーシング14は、金属製の円柱部材であり、その中心部には、上記フランジ部13よりも僅かに大径の穴部15が穿設されいる。そして、この穴部15の基端部が、取付板2から突出する上記軸受5の外周によって位置決めされることにより、穴部15の軸線をシャフト7の軸線と一致させた状態で取付板2の他側面に固定されている。他方、この穴部15の先端部分は、上記円筒部12の外形寸法まで縮径されており、その内周部には、円筒部12の雄ねじ12aが螺合する雌ねじ14aが刻設されている。これにより、穴部15には、フランジ部13の過度の移動を係止して抜け止めとして機能する壁部15aが形成されている。
そして、上記変位部材9は、駆動部ケーシング14の穴部15側から挿入され、円筒部12外周の雄ねじ12aが上記雌ねじ14aに螺合されることにより、駆動部ケーシング14内に組み込まれている。
【0020】
(実施の形態2)
図2および図3は、本発明の第2の実施形態を示すもので、図1に示したものと同一構成部分に付いては、同一符号を付してその説明を簡略化する。
図2および図3に示すように、このリニア駆動機構付きモータにおいては、駆動部ケーシング20の基端部にフランジ部21が一体に形成されており、このフランジの開口端部には、ヨーク4の内径と同径の開口部が形成されている。そして、この駆動部ケーシング20は、上記開口部とヨーク4の間に嵌合された焼結含油軸受22によって、ステッピングモータのケーシング1に同軸的に取り付けられている。また、この軸受22とケーシング1底部の軸受6との間に、シャフト7がローターマグネット8とともに回転自在に支承されている。
【0021】
さらに、この駆動部ケーシング20の内部には、上記開口部より小径の穴部23が同軸的に形成されており、この穴部23の先端側内周には、雌ねじ20aが刻設されている。そして、この穴部23内に、変位部材24が設けられている。
この変位部材24は、ステンレス等の金属によって一体に形成された略円柱状部材であり、その中心部に断面円形状の孔部25が穿設されている。この孔部25の開口部には、軸受26が一体的に嵌合されており、図3に示すように、この軸受26のシャフト7が摺動自在に挿通される内周26aは、シャフト7の延出部7aが係合する断面D字状に形成されている。これにより、変位部材24は、シャフト7に対して軸線方向に移動自在に、かつ一体的に回転可能に設けられている。
【0022】
他方、変位部材24の外周面には、上記穴部23の雌ねじ20aに螺合する雄ねじ24aが刻設されている。そして、変位部材24は、駆動部ケーシング20の穴部23側から挿入され、その雄ねじ24aが上記雌ねじ20aに螺合されることにより、駆動部ケーシング20内に組み込まれている。
また、駆動部ケーシング20の外周には、フランジ部21の他側面に当接するようにして取付板27が固定されている。
【0023】
以上の構成からなるリニア駆動機構付きモータによれば、ステッピングモータの励磁コイル3によってローターマグネット8およびこれと一体化されたシャフト7を正回転または逆回転させると、シャフト7の延出部7aに軸線方向に移動自在に設けられた変位部材9、24も、シャフト7と一体的に回転する。他方、変位部材9、24の外周の雄ねじ12a、24aが螺合している駆動部ケーシング14、20は、取付板2を介して、あるいは直接ケーシング1に一体的に設けられて回転しないために、変位部材9、24がねじ12a、24aの螺設方向およびシャフト7の回転方向に対応して、シャフト7に沿って直線移動を行なう。
【0024】
このように、上記構成からなるリニア駆動機構付きモータによれば、変位部材9、24の外周および駆動部ケーシング14、20の内周に、それぞれ雄ねじ12a、24aおよび雌ねじ14a、20aを形成すればよいため、ステッピングモータが小型化してシャフト7の径が小さくなった場合においても、これに拘わらず容易に上記ねじの加工を行なうことができる。
加えて、ねじ12a、24aの形成部分は、シャフト7の径よりも大径であるために、ねじ山も大きくすることができ、よって確実にシャフト7の回転をステッピングモータの出力に対応したスラスト力によって変位部材9、24の直線運動に変換することができる。
【0025】
また、一方ではステッピングモータのケーシング1と一体化された取付板2と駆動部ケーシング14とが、軸受5によって位置決めされ、他方ではステッピングモータと駆動部ケーシング21とが直接軸受22によって位置決めされるために、容易にこれらステッピングモータとリニア駆動機構との軸線を一致させることができ、組立が容易になる。
【0026】
さらに、第1の実施の形態においては、ケーシング1をシャフト7が延出する側の端面に設けられた取付板2の一側面に固定し、駆動部ケーシング14を取付板2の他側面に固定しているので、取付板2が一体化されたステッピングモータの取付板2の外方から、予め組み立てた変位部材9および駆動部ケーシング14からなるリニア駆動機構を組み立てることができるために、製造が一層容易になる。
しかも、変位部材9を合成樹脂製の本体部11と金属製の円筒部12とによって構成しているので、機械加工の難しい非円形断面の孔部10を射出成形によって容易に形成することができるとともに、雄ねじ12aにおいては充分な強度を確保することができる。
【0027】
他方、第2の実施の形態においては、変位部材24を金属によって一体に形成し、孔部25を円形断面に穿設するとともに、この孔部25に非円形断面形状を有する軸受26を嵌合しているので、変位部材24の加工が容易になるとともに、超小型化した場合においても、充分な強度を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜2のいずれかに記載のリニア駆動機構付きモータによれば、変位部材の外周および駆動部ケーシングの内周にねじを形成すればよいため、モータが小型化してシャフト径が小さくなった場合においても、容易に当該ねじ加工を行なうことができるとともに、上記ねじの形成部分は、シャフト径よりも大径であるために、ねじ山も大きくすることができ、よって確実にシャフトの回転をモータの出力に対応したスラスト力によって変位部材の直線運動に変換することができるといった効果を奏する。
【0029】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、上記ケーシングをシャフトが延出する側の端面に設けられた取付板の一側面に固定し、駆動部ケーシングを上記取付板の他側面に固定しているので、取付板が一体化されたモータの上記取付板外方から、変位部材および駆動部ケーシングを組み立てることができ、製造が一層容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図2のIII―III線視断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2、27 取付板
3 励磁コイル
4 ヨーク
7 シャフト
7a シャフトの延出部
8 ローターマグネット
9、24 変位部材
10、25 孔部
12a、24a 雄ねじ
14、20 駆動部ケーシング
14a、20a 雌ねじ
Claims (2)
- ケーシング内に固定された励磁コイル内に、隙間を介してロータマグネットを回転自在に設け、このローターマグネットの中心にシャフトを一体化し、このシャフトの一端部を上記励磁コイルの外方に延出させてなるモータであって、
上記シャフトの延出部は、非円形断面に形成されるとともに、この延出部と係合する相似形の非円形断面を有する孔部が形成された円筒状の変位部材を備え、
上記変位部材は、外周部に雄ねじが形成されるとともに、上記延出部が上記孔部内に挿入されることにより、上記シャフトの延出部に当該シャフトの軸線方向に移動自在に、かつ一体的に回転可能に設けられ、
上記ケーシングは、駆動部ケーシングが一体的に設けられるとともに、この駆動部ケーシングの内周部に形成された雌ねじが、上記変位部材の外周部に形成された雄ねじと螺合されることを特徴とするリニア駆動機構付きモータ。 - 上記ケーシングは、上記シャフトが延出する側の端面に設けられた取付板の一側面に固定され、かつ上記駆動部ケーシングは、上記取付板の他側面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のリニア駆動機構付きモータ。
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