JP4365979B2 - 光ファイバ式ひずみセンサ及びその製造方法 - Google Patents

光ファイバ式ひずみセンサ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ式ひずみセンサ、及びそのひずみセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ファイバ式のひずみセンサとしては、例えば米国特許5202939に見られるような、所謂ファブリ・ペロー(Fabry-Perot)型のものが一般に知られている。図10にこのひずみセンサの基本構造を示す。
【0003】
図示のように、このひずみセンサAは、二本の光ファイバ100,101を有し、これらの光ファイバ100,101のそれぞれの先端面に、光の一部を反射する(残部を透過する)薄膜状の部分反射面(semi-reflective mirror)102,103が形成されている。また、光ファイバ100,101の先端部は、それぞれ細い管体104の各端部から該管体104内に挿入され、それらの先端面の部分反射面102,103が適当な間隔dを存して平行に相対向するように配置されている。これにより、両部分反射面102,103の間の空間(空洞)105が、その両端に部分反射面102,103を有する共振器(詳しくは外部共振器)として形成されている。そして、各光ファイバ100,101は、それぞれ、固定部106,107において管体104の内周部に固定されている。
【0004】
このような構造のひずみセンサAを用いて測定対象物のひずみを測定する場合には、前記管体104が測定対象物に生じるひずみと同じひずみを生じるように該測定対象物に貼着される。このとき、測定対象物にひずみが生じると、管体104の長さ、ひいては、前記固定部106,107の間隔が変化する。そして、この固定部106,107の間隔の変化量と同じ量だけ前記部分反射面102,103の間隔dが変化する。従って、部分反射面102,103の間隔の変化量を計測することによって、測定対象物に生じたひずみを測定することができる。
【0005】
より具体的には、固定部106,107の当初の間隔をX(この間隔XがこのひずみセンサAのゲージ長となる)とし、測定対象物のひずみに伴う固定部106,107の間隔の変化量(=部分反射面102,103の間隔dの変化量)をΔXとすると、測定対象物のひずみは、ΔX/Xで与えられる。
【0006】
この場合、部分反射面102,103の間隔の変化量ΔXは、次のように計測される。
【0007】
すなわち、測定対象物のひずみを測定する際に、光ファイバ100,101のいずれか一方、例えば光ファイバ100に前記共振器105に向かう光を導入する。このとき、その光の一部は、部分反射面102で反射されて光ファイバ100内を戻っていく。また、部分反射面102で反射されずに透過した光は、共振器105内を部分反射面103に向かって進行した後、その一部が該部分反射面103で反射されて、部分反射面102に向かって進行する。そして、さらにその一部が部分反射面102を透過して光ファイバ100内を戻っていくと共に、前述のように部分反射面102で反射された光との干渉を生じる。
【0008】
このとき、部分反射面103で反射されて光ファイバ100内を戻る光は、部分反射面102で反射されて光ファイバ100内を戻る光に対して、両部分反射面102,103の間隔dの二倍の光路差を与えられる。このため、両者の光の干渉によって、上記光路差(=2・d)に応じた干渉光信号が得られる。従って、その干渉光信号に基づいて、上記光路差、ひいては両部分反射面102,103の間隔dを測定することができる。
【0009】
この場合、上記の干渉光信号に基づく両部分反射面102,103の間隔dの計測手法には、所謂、白色光干渉方式や位相検出方式(ヘテロダイン法)等がある。白色光干渉方式の一例としては、例えば、前記米国特許第5202939号に見られる手法が挙げられ、位相検出方式の一例としては、例えば特開平10−170233号公報に見られる手法が挙げられる。
【0010】
このようにひずみ測定の際に、前記干渉光信号に基づいて両部分反射面102,103の間隔dを計測することによって、該間隔dの当初の間隔からの変化量、すなわち、前記ΔLを把握することができる。従って、前述のように測定対象物のひずみを測定することができる。
【0011】
しかしながら、前述のような従来構造のファブリ・ペロー型のひずみセンサでは、次のような不都合を生じるものとなっていた。
【0012】
すなわち、前記図10のような構造のひずみセンサAでは、部分反射面102を有する光ファイバ100と、部分反射面103を有する光ファイバ101とは、これらの光ファイバ100,101の先端部を挿入した管体104に固定部106,107で固定され、これらの固定部106,107の当初の間隔Xがゲージ長となる。この場合、各固定部106,107においては、各光ファイバ100,101は、通常、レーザやアーク放電によって管体104の内周部に溶接されて固定され、あるいは、接着剤によって管体104の内周部に接着されて固定される。
【0013】
ところが、この場合、その溶接部分や接着部分は一般に、管体104の長手方向にある程度の幅を有するものとなると共に、その幅や位置を高精度に管理することは極めて困難である。つまり、各光ファイバ100,101の管体104に対する固定位置を高精度に管理することは極めて困難である。また、融着部分や接着部分の幅があることから、各光ファイバ100,101を管体104に固定した後にその固定位置を正確に特定することも難しい。さらに、比較的長期間に渡るひずみ測定の際等のように、管体104に繰り返しひずみが作用すると、各光ファイバ100,101の管体104に対する固定位置がずれることがある。
【0014】
このため、従来構造のひずみセンサAでは、測定するひずみ量に係わる基準長としてのゲージ長Xを高精度に規定し、また該ゲージ長Xを高精度に把握しておくことが困難である。この結果、前記固定部106,107の間隔の変化量ΔXとしての両部分反射面102,103の間隔の変化量を精度よく測定しても、この変化量ΔXの前記ゲージ長Xに対する比として得られるひずみ測定値自体の十分な精度を確保することができない。
【0015】
また、従来構造のひずみセンサAでは、測定対象物のひずみを直接的に受ける管体104は光ファイバ100,101に外挿されるため、比較的厚いものとならざるを得ない。このため、管体104のひずみに対する高い感度を確保することが難しく、精度のよいひずみ測定を行う上で不利である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、精度のよいひずみ測定を可能とする光ファイバ式ひずみセンサを提供することを目的とする。
【0017】
さらに、そのような光ファイバ式ひずみセンサを効率よく容易に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ式ひずみセンサはかかる目的を達成するために、光の一部を反射可能な一対の部分反射面を両端に相対向させて形成してなる共振器と、前記両部分反射面の一方側から他方側に向かう光を前記共振器にその外部から導入する光ファイバとを備え、前記両部分反射面の間隔がひずみ測定対象物のひずみに応じて変化するよう前記共振器を該測定対象物に取付けた状態で前記光ファイバを介して前記共振器に光を導入したとき、各部分反射面で反射した光の干渉により両部分反射面の間隔に応じた干渉光信号を生成する光ファイバ式ひずみセンサにおいて、少なくとも先端面の中心部に軸心と略直交する直交面があらかじめ形成された第1の光ファイバと、先端面の中心部にあらかじめ凹面が形成され、且つ該凹面の底部が軸心と略直交する第2の光ファイバとを備える。さらに、前記第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とが略同心に接合されて固着されている。そして、前記第1の光ファイバの先端面の中心部と前記第2の光ファイバの凹面の底部とを前記両部分反射面として前記共振器が構成され、前記測定対象物のひずみを測定するとき、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接合部分が前記測定対象物に貼着されると共に、前記共振器の両部分反射面の当初の間隔が測定するひずみの基準長としてのゲージ長として使用されることを特徴とするものである。
【0019】
かかる本発明によれば、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバとは、それらの先端面の周縁部が略同心に接合されて固着されている。従って、両光ファイバは、一体的に連接されている。そして、両光ファイバの接合部分の内部では、第1の光ファイバの先端面と第2の光ファイバの凹面とによって密閉された空間が形成される。このとき、第1の光ファイバの先端面の中心部の前記直交面と第2の光ファイバの凹面の底部とは第1の光ファイバの軸心と略直交し、換言すれば、互いに平行となる。従って、第1の光ファイバの先端面の中心部の直交面と第2の光ファイバの凹面の底部とは前記部分反射面として機能することができる。これにより、上記の空間部分に前記共振器が形成されることとなる。
【0020】
このような本発明の構成のひずみセンサでは、第1及び第2の光ファイバは、それらの先端部同士が直接的に接合・固着されて、一体化されており、しかも、その接合部分の内部に密閉された前記共振器が形成されている。このため、前記共振器の両部分反射面の間隔がひずみ測定対象物のひずみに応じて変化するように該共振器を測定対象物に取付けるためには、第1及び第2の光ファイバの接合部分を直接的にひずみ測定対象物に取付ければよい。そして、このとき、共振器の両部分反射面の当初の間隔がゲージ長に相当するものとなる。さらにそのゲージ長は、例えば第1又は第2の光ファイバを介して前記共振器に光を導入して、前記干渉光信号を生成すれば、その干渉光信号に基づいて計測することができる。あるいは、前記凹面の深さ等に基づいて求めることもできる。従って、本発明のひずみセンサによれば、測定するひずみの基準長となるゲージ長を精度よく特定することが可能となる。
【0021】
また、本発明のひずみセンサでは、ひずみ測定に際して第1及び第2の光ファイバの接合部分を前記のように直接的に測定対象物に取付ければよいので、測定対象物のひずみに対する受感部分となる上記接合部分は、光ファイバの径程度の薄いものとなる。このため、測定対象物のひずみに対して良好な感度で前記共振器の両部分反射面の間隔が変化する。
【0022】
このように本発明のひずみセンサによれば、ゲージ長を精度よく特定することができ、また、測定対象物のひずみに対する十分な感度を確保することができるため、精度のよいひずみ測定を行うことが可能となる。
【0023】
次に、本発明の光ファイバ式ひずみセンサの製造方法は、光の一部を反射可能な一対の部分反射面を両端に相対向させて形成してなる共振器と、前記両部分反射面の一方側から他方側に向かう光を前記共振器にその外部から導入する光ファイバとを備え、前記両部分反射面の間隔がひずみ測定対象物のひずみに応じて変化するよう前記共振器を該測定対象物に取付けた状態で前記光ファイバを介して前記共振器に光を導入したとき、各部分反射面で反射した光の干渉により両部分反射面の間隔に応じた干渉光信号を生成する光ファイバ式ひずみセンサであって、少なくとも先端面の中心部に軸心と略直交する直交面があらかじめ形成された第1の光ファイバと、先端面の中心部にあらかじめ凹面が形成され、且つ該凹面の底部が軸心と略直交する第2の光ファイバとを備えると共に、前記第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とが略同心に接合されて固着されており、前記第1の光ファイバの先端面の中心部と前記第2の光ファイバの凹面の底部とを前記両部分反射面として前記共振器を構成した光ファイバ式ひずみセンサの製造方法である。そして、この製造方法は、軸心と略直交する先端面があらかじめ形成された二本の素材光ファイバのうちの一方の素材光ファイバの先端面にエッチング加工を施すことにより該素材光ファイバの中心部に前記凹面を形成して前記第2の光ファイバを得る工程と、前記二本の素材光ファイバのうちの他方の素材光ファイバを前記第1の光ファイバとし、該第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とを略同心に融着する工程とからなり、前記凹面を形成する前記素材光ファイバは、石英系マルチモード光ファイバであることを特徴とするものである。
【0024】
かかる本発明では、前記共振器の一方の部分反射面を構成する前記凹面を有する第2の光ファイバは、前記二本の素材光ファイバのうちの一方の素材光ファイバの先端面にエッチング加工を施して該先端面に凹面を形成することにより得られる。すなわち、素材光ファイバの先端部をエッチング液中に浸漬させると、該素材光ファイバの先端面が該素材光ファイバのコア部分を中心としてエッチングされ、前記凹面が形成される。このとき、該凹面は、例えばその縦断面が軸心に対して対称的な湾曲面形状となり、該凹面の底部は、素材光ファイバの軸心と略直交するものとなる。また、前記素材光ファイバが、石英系マルチモード光ファイバであるので、前記エッチング加工によって、適切な深さの前記凹面を比較的短時間で得ることができる。この場合、前記エッチング液としては、例えば弗化水素水溶液、あるいは、これに弗化アンモニウム水溶液を混合した溶液が挙げられる。
【0025】
そして、本発明では、上記のようにエッチング加工により凹面を形成してなる第2の光ファイバの先端面の周縁部と、前記二本の素材光ファイバのうちの他方の素材光ファイバの先端面の周縁部とを略同心に融着する(加熱・溶融させてくっつける)。これにより、両光ファイバの先端面の周縁部が確実に接合・固着され、その接合部分(融着部分)の内部に密閉的に前記共振器が形成される。また、このとき、第2の光ファイバの先端面の周縁部(前記凹面の周囲部分)と、第1の光ファイバの先端面(その周縁部を含む)とは、それぞれの光ファイバの軸心と略直交しているため、それらの周縁部を精度よく同心に融着することが可能となる。さらにその融着によって、第1の光ファイバの先端面の中心部及び第2の光ファイバの凹面の底部は、互いに略平行な部分反射面となる。
【0026】
このような本発明の製造方法によれば、特に前記エッチング加工によって、前記第2の光ファイバの先端面に凹面を形成するので、前記共振器の一方の部分反射面を形成するものとして適切な凹面を有する第2の光ファイバを再現性よく、しかも効率よく製造することができる。そして、この第2の光ファイバの先端面の周縁部と前記第1の光ファイバの先端面の周縁部とを融着するだけで、前述のように精度のよいひずみ測定が可能なひずみセンサを得ることができる。このため、製品毎のばらつきの少ない良好なひずみセンサを量産的に効率よく製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の光ファイバ式ひずみセンサの一実施形態を図1を参照して説明する。
【0030】
図1を参照して、本実施形態の光ファイバ式ひずみセンサ1は、その構成要素として、第1光ファイバ2及び第2光ファイバ3を具備する。第1光ファイバ2は、本実施形態では、例えば石英系のシングルモード光ファイバであり、参照符号2a,2bを付した部分がそれぞれこの光ファイバ2のコア、クラッドである。また、第2光ファイバ3は、例えば石英系のマルチモード光ファイバ(より詳しくは、石英系のグレイデッド・インデックス・光ファイバ)であり、参照符号3a,3bを付した部分がそれぞれこの光ファイバ3のコア、クラッドである。
【0031】
第1光ファイバ2の先端面は、その全面にわたって該光ファイバ2の軸心とほぼ直交する面に形成されている。また、第2光ファイバ3の先端面には、その中心部であるコア3a部分に、縦断面、略放物線形状の凹面4が形成されており、この凹面4の底部4aは、該光ファイバ3の軸心とほぼ直交する。
【0032】
そして、これらの光ファイバ2,3の先端面は、同心に突き合わされ、それらの周縁部を全周にわたって加熱・溶融して融着することによって、接合・固着されている。これにより、第1及び第2光ファイバ2,3は、実質的に一本の光ファイバから構成されているように一体的に連接されている。
【0033】
このように構成されたひずみセンサ1では、両光ファイバ2,3の接合箇所の内部で第1光ファイバ2の先端面と第2光ファイバ3の凹面4との間で形成された密閉された空間5(空洞)が、ファブリ・ペロー型のひずみセンサとしてのひずみセンサ1の共振器(詳しくは外部共振器)となり、この共振器5の一対の部分反射面は、第1光ファイバ2の先端面の中心部6(該先端面のコア2a部分)と、第2光ファイバ3の凹面4の底部4aとにより構成される。
【0034】
すなわち、両光ファイバ2,3のうち、例えば第1光ファイバ2に共振器5に向かう光を導入すると、その光の一部は、光ファイバ2の先端面の中心部である部分反射面6で反射され、該光ファイバ2内を戻る。また、第1光ファイバ2の先端面で反射されずに、共振器5内に透過した光の一部が第2光ファイバ3側の部分反射面4a(凹面4の底部)で反射されて、部分反射面6側に戻り、さらにその一部が部分反射面6を透過して第1光ファイバ2内に進入し、該第1光ファイバ2内を戻る。そして、このように部分反射面4aで反射されて、第1光ファイバ2内を戻る光と、前述のように部分反射面6で反射されて第1光ファイバ2内を戻る光とが干渉し、それらの光の光路差(=両部分反射面6,4aの間隔Dの二倍の長さ2D)に応じた干渉光信号が得られる。
【0035】
また、両光ファイバ2,3の接合部分(共振器5の箇所)を測定対象物に貼着すると、測定対象物のひずみに応じて共振器5の両部分反射面6,4aの間隔Dが変化する。
【0036】
尚、本実施形態では、上記部分反射面6,4aは、第1光ファイバ2の先端面や、第2光ファイバ3の凹面4に特別な反射皮膜層をコーティングすることなく、各光ファイバ2,3のコア2a,3bそのものにより形成されている。このため、それらの部分反射面6,4aで生じる光の反射は所謂、フレネル反射であり、その反射率は、約4%程度である。従って、本実施形態のひずみセンサ1で構成される干渉系はフィゾー干渉系である。
【0037】
次に、かかるひずみセンサ1の製造方法を図2を参照して説明する。本実施形態では、ひずみセンサ1は、図2のフローチャートに示すように製造される。
【0038】
すなわち、第1光ファイバ2の素材となる素材光ファイバ(本実施形態では石英系のシングルモード光ファイバ。以下、ここでは第1素材光ファイバという)と第2光ファイバ3の素材となる素材光ファイバ(本実施形態では石英系のグレイデッド・インデックス・光ファイバ。以下、ここでは第2素材光ファイバという)とを用意し、各素材光ファイバの先端面が軸心と直交する面となるように、各素材光ファイバの先端部を切断する(STEP1)。この切断によって、第1素材光ファイバは、そのまま、第1光ファイバ2として得られる。尚、上記のような切断は、公知の工具を用いて行うことができる。
【0039】
次いで、第2光ファイバ3の素材となる第2素材光ファイバの先端部をエッチング液に浸漬させて、該第2素材光ファイバの先端面にエッチング加工を施す(STEP2)。
【0040】
この場合、本実施形態では、例えば弗化水素水溶液、あるいは、これに弗化アンモニウム水溶液を混合したものをエッチング液として用いる。該エッチング液は、より具体的には、47%弗化水素水溶液と水と40%弗化アンモニウムとを1:1:0〜1(容積比)の比率で混合したものであることが好ましい。そして、本実施形態では、エッチング温度を室温として、上記エッチング液中に前記第2素材光ファイバの先端部を数十分、浸漬させることによって、第2素材光ファイバの先端面にエッチング加工を施す。
【0041】
このようなエッチング加工によって、第2素材光ファイバの先端面は、そのコア部分を中心にしてエッチングされ、前記凹面4が形成される。これにより、前記第2光ファイバ3が得られる。このとき、該凹面4の深さは例えば40μm程度である。
【0042】
上記のようにしてエッチング加工によって、第2光ファイバ3を得た後、前記STEP1で得た第1光ファイバ2の先端面の周縁部と第2光ファイバ3の先端面の周縁部とを同心に融着する(STEP3)。
【0043】
この場合、この融着は、両光ファイバ2,3の先端面を同心に突き合わせ、この状態で、レーザやアーク放電によって両光ファイバ3の先端面の周縁部を加熱して溶融させ、その後、冷却することによってなされる。
【0044】
このような融着によって、両光ファイバ2,3の先端面の周縁部が一体的に接合・固着され、これにより、図1のひずみセンサ1が得られる。
【0045】
次に、ひずみセンサ1を用いたひずみ測定手法の具体的な一例を図3〜図8を参照して説明する。
【0046】
ひずみセンサ1を用いたひずみ測定、すなわち、前記干渉光信号に基づくひずみ測定は、公知の白色光干渉方式や位相検出方式を用いて行うことも可能であるが、本実施形態では、以下に説明するような手法によって、ひずみ測定を行う。この手法は、本願出願人が特願2000−92088号にて提案している手法に基づくものである。
【0047】
図3に、ひずみセンサ1を用いたひずみ測定システムの全体のシステム構成を示す。尚、同図3では、ひずみセンサ1を模式化して記載している。
【0048】
本実施形態におけるひずみ測定システムでは、所定の波長分布を有する光源光を放出する光源10に、投光側光ファイバ11及び3dBカプラ12を介して、ひずみセンサ1の第1光ファイバ2が接続されている。また、カプラ12には、受光側光ファイバ13を介して分光器14が接続されている。
【0049】
尚、投光側光ファイバ11及び受光側光ファイバ13は、第1光ファイバ2と同じシングルモード光ファイバである。また、光源10は、例えば発光ダイオードにより構成され、それが放出する光源光(投光側光ファイバ11に導入する光)の波長分布は、例えば図4に実線aで示すような略正規型の分布であり、その中心波長は例えば830nmである。
【0050】
この構成により、光源10から投光側光ファイバ11に光源光を導入すると、その光は、カプラ12及び第1光ファイバ2を介してひずみセンサ1の共振器5に導かれる。そして、このとき、共振器5の部分反射面6,4aで前述のようにそれぞれ反射された二つの光の干渉光信号が、第1光ファイバ2内をカプラ12側に戻り、該カプラ12から受光側光ファイバ13を介して分光器14に導かれて受光される。
【0051】
分光器14は、受光する干渉光信号を図示しないグレーティングにより分光して、該干渉光信号の強度の波長分布データを生成するもので、各波長の強度に応じたレベルの信号を出力するCCD15を備えている。そして、このCCD15は、その各素子の出力、すなわち、受光した干渉光信号の各波長の強度を表す出力をA/D変換するA/D変換器16を介してパソコン等からなるデータ処理装置17に接続されている。
【0052】
データ処理装置17は、その主要な機能的構成として、分光器14のCCD15から得られる波長分布データに所定の変換処理を施す分布データ変換手段18と、この分布データ変換手段18により得られるデータから、所定の波長差当たりの干渉光信号の強度差の複数のデータを求める強度差データ生成手段19と、その強度差データを用いて干渉光信号の所定の位相成分を求める位相算出手段20と、その位相成分を用いてひずみを算出する等の処理を行うひずみ算出手段21とを具備している。尚、これらの各手段18〜21の処理の具体的な内容については、本実施形態のひずみ測定システムの作動の説明と併せて後述する。
【0053】
ここで、本実施形態のひずみ測定システムの作動を具体的に説明する前に、本システムによるひずみ測定の基本的原理について説明しておく。
【0054】
前述したようにひずみセンサ1の共振器5に光を導入すると、共振器5の両部分反射面6,4aの間隔D(以下、反射面間隔Dという)の二倍の光路差(=2D)を有する二つの光が生成され、それらの光を干渉させてなる干渉光信号が生成される。このとき、共振器5に導入する光源光が理想的な白色光である場合を想定する。ここで、「白色光」は、図4に仮想線bで示すように、ある波長範囲(比較的広い波長範囲)においてその範囲内の各波長の光の強度(波長分布)が均一であるような光を意味するものとする(以下、同様)。
【0055】
このとき、上記光源光(白色光)の各波長成分の強度をI(これは白色光では各波長において同一である)、上記干渉光信号を組成する二つの光の干渉度をV、その二つの光の光路差をL(=2D)とおくと、その二つの光の干渉光信号の任意の波長値λ(光源光の上記波長範囲内の波長値)における強度I(λ)は、一般的に次式(1)により表される。
【0056】
【数1】
Figure 0004365979
【0057】
さらに、所定の単位波長差Δλづつ値が異なる複数の波長値λ0、λ1(=λ0+Δλ)、λ2(=λ1+Δλ)、…、λn(=λn-1+Δλ)、……を定めると共に、その複数の波長値λn(n=0,1,2,……)のうちの一つ、例えばλ1(但し、λ1>>Δλ)を特定して、それをλaとおく(λa=λ1とおく)。以下、この所定波長値λaを基準波長値λaという。このとき、次式(2),(3)により定義するθ,αを導入すると、
【0058】
【数2】
Figure 0004365979
【0059】
【数3】
Figure 0004365979
【0060】
各波長値λn(n=0,1,2,……)における干渉光信号の強度I(λn)は次式(4)により与えられる。
【0061】
【数4】
Figure 0004365979
【0062】
ここで、式(2)により定義されるθは、干渉光信号を組成する二つの光の光路差Lに比例する位相であるので、該光路差Lに応じた位相成分としての意味をもつ。また、式(3)により定義されるαは、光路差Lに比例するものであると同時に、前記単位波長差Δλに比例する位相であるので、波長差に応じた位相成分としての意味をもつ。以下、θを光路差位相成分と称し、αを波長差位相成分と称する。
【0063】
次に、式(4)により与えられる強度I(λn)(n=0,1,2,…)の数列において、前記単位波長差Δλのある整数倍、例えば2倍の波長差(=2・Δλ)を有するものの組(I(λ0),I(λ2))、(I(λ1),I(λ3))、…、(I(λn+2),I(λn))、……を考え、それらの各組における二つの強度I(λn+2),I(λn)(n=0,1,2,…)の差(=I(λn+2)−I(λn))をΔInとおく。このとき、この強度差ΔIn(=I(λn+2)−I(λn)、n=0,1,2…)は、式(4)に基づいて、次式(5)により与えられる。
【0064】
【数5】
Figure 0004365979
【0065】
さらに、式(5)の右辺のsin(θ+n・α)(n=0,1,2,…)を複素数により表現すると、次式(6)が得られる。尚、式(6)中のexp()は、自然対数の底eの指数関数である。
【0066】
【数6】
Figure 0004365979
【0067】
ここで、次式(7)により定義する複素数Z1,Z2,A1,A2を導入すると、
【0068】
【数7】
Figure 0004365979
【0069】
前記式(6)により与えられる強度差ΔInの数列は、次式(8)の漸化式によって、自己回帰モデルの形式で表現される。
【0070】
【数8】
Figure 0004365979
【0071】
このように強度差ΔIn(n=0,1,2,…)の数列を自己回帰モデルの形式で表現したとき、強度差ΔInの複数の計測データが得られれば、その計測データから最小二乗法や、Yule-Walker法、Burg法等によって、自己回帰モデルの自己回帰係数としての前記複素数Z1,Z2,A1,A2の値を求める(同定する)ことができる。
【0072】
さらに、このように自己回帰係数Z1,Z2,A1,A2の値を求めたとき、前記式(7)の定義式によって、それらの値(複素数値)から、次式(9),(10)によって、それぞれ前記光路差位相成分θ及び波長差位相成分αを求めることができる。
【0073】
【数9】
Figure 0004365979
【0074】
【数10】
Figure 0004365979
【0075】
尚、式(9)に基づく光路差位相成分θの算出は、実際上は、複素数A1/A2の位相(=2θ)を例えば−π〜+πの範囲で求め、その位相2θの半分の値を求めることによって行われる。従って、求められる光路差位相成分θの範囲は、−π/2<θ<π/2である。このことは波長差位相成分αについても同様である。
【0076】
このように光路差位相成分θ及び波長差位相成分αが求まれば、基本的には、前記式(2),(3)の定義式に基づいて、光路差Lの半分の値である共振器5の反射面間隔Dは、光路差位相成分θを用いた次式(11)、あるいは、波長差位相成分αを用いた次式(12)によって求めることができることとなる。尚、以下の説明では、光路差位相成分θあるいは波長差位相成分αを用いて求まる共振器5の反射面間隔Dにそれぞれ参照符号Dp,Daを付することがある。
【0077】
【数11】
Figure 0004365979
【0078】
【数12】
Figure 0004365979
【0079】
ここで、光路差位相成分θ及び波長差位相成分αは、位相であるので、光路差L、ひいては共振器5の反射面間隔Dの変化に対して、周期性を有する。すなわち、光路差位相成分θは、その範囲(−π/2〜π/2)と前記式(11)とから明らかなように、図5(b)に示す如く、共振器5の反射面間隔Dが、前記基準波長値λaの1/4(=λa/4)だけ変化する毎に、同一の値を採る。また、波長差位相成分αは、その範囲(−π/2〜π/2)と前記式(12)とから明らかなように、図5(a)に示す如く、共振器5の反射面間隔Dが、λa2/(4・Δλ)だけ変化する毎に、同一の値を採る。
【0080】
このため、光路差位相成分θにより求められる反射面間隔D(=Dp)、及び波長差位相成分αの値により求められる反射面間隔D(=Da)は、より正確には、それぞれ次式(13),(14)により与えらる。前記式(11),(12)は、それぞれ式(13),(14)の「m」の値が「0」であるときに成立するものである。
【0081】
【数13】
Figure 0004365979
【0082】
【数14】
Figure 0004365979
【0083】
従って、光路差位相成分θあるいは波長差位相成分αの値から、反射面間隔Dを把握するためには、式(13)あるいは式(14)の「m」の値を特定する必要がある。
【0084】
この場合、光路差位相成分θの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa/4よりも小さい分解能で反射面間隔Dの大きさを大略的に推測できる場合(反射面間隔Dが光路差位相成分θのどの周期内に属するかを推測できる場合)には、前記式(13)の「m」の値を特定することができるため、式(13)に従って、光路差位相成分θの値から反射面間隔Dを求めることができる。同様に、波長差位相成分αの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa2/(4・Δλ)よりも小さい分解能で反射面間隔Dの大きさを大略的に推測できる場合には、前記式(14)の「m」の値を特定することができるため、式(14)に従って、波長差位相成分αの値から反射面間隔Dを求めることができる。
【0085】
尚、反射面間隔Dの変化が例えば光路差位相成分θの1周期内でのみ生じるような場合には、その反射面間隔Dの変化量は、前記式(13)のθに係る係数(λa/4)に、光路差位相成分θの変化量を乗算することにより求められるので、式(13)の「m」の値を認識する必要はない。このことは、波長差位相成分αに関しても同様である。
【0086】
また、例えば光源光が可視光であるとしたとき、その波長は、数百nmであるから、光路差位相成分θの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa/4も、概ね数百nm程度であり、比較的小さい。また、前記単位波長差Δλを数nmとしたとき、波長差位相成分αの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa2/(4・Δλ)は、概ね数十〜数百μmであり、光路差位相成分θの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa/4よりも十分に大きい。従って、光路差位相成分θを用いることによって比較的微小な反射面間隔Dあるいは該反射面間隔Dの微小な変化量を把握することが可能となる。また、波長差位相成分αを用いることによって、比較的大きな反射面間隔Dあるいは、該反射面間隔Dの比較的大きな変化量を把握することが可能となる。さらに、波長差位相成分αに基づき把握される反射面間隔Dの分解能が、光路差位相成分θの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa/4よりも小さく、波長差位相成分αに基づき把握される反射面間隔Dが光路差位相成分θのどの周期内に属するかを把握することができる(このことは式(13)の「m」の値を特定できることを意味する)場合には、波長差位相成分αに基づいて反射面間隔Dを巨視的に把握しつつ、光路差位相成分θの複数周期にわたって、該光路差位相成分θの値に基づいて、高精度に反射面間隔Dやその変化量を把握することも可能である。
【0087】
このように、光路差位相成分θや波長差位相成分αが求まれば、それらを選択的あるいは併用的に用いることによって、反射面間隔Dやその変化量を幅広い範囲で把握することが可能となる。
【0088】
上述の説明を考慮しつつ、次に、本実施形態におけるひずみ測定システムの作動を説明する。本実施形態のひずみ測定システムによるひずみ測定は、次のように行われる。
【0089】
まず、ひずみセンサ1の共振器5の部分(前記第1及び第2光ファイバ2,3の接合部分)を図示しない測定対象物に貼着しておく。この場合、第1及び第2光ファイバ2,3の接合部分は測定対象物と同じひずみを生じるように接着剤等により直接的に測定対象物に貼着される。
【0090】
そして、このようにひずみセンサ1を測定対象物に貼着した直後のひずみ測定の開始前に、光源10から投光側光ファイバ11、カプラ12及び第1光ファイバ2を介してひずみセンサ1の共振器5に光源光を導入し、前述のように干渉光信号を生成する。このとき、生成される干渉光信号は、ひずみセンサ1の測定対象物への貼着直後の状態での共振器5の反射面間隔D(この間隔Dはひずみセンサ1のゲージ長に相当するもので、以後に測定するひずみの基準長となるものである。以下、これに参照符号D0を付する)の二倍の光路差(2D0)に応じた干渉光信号である。そして、その干渉光信号を第1光ファイバ2からカプラ12及び受光側光ファイバ13を介して分光器14に導き、該分光器14で受光する。
【0091】
このとき、分光器14のCCD15から、例えば図4に実線cで示すような干渉光信号の波長分布データが得られる。そして、この波長分布データ(干渉光信号の各波長の強度データ)がA/D変換器16によってA/D変換され、データ処理装置17に取り込まれる。尚、干渉光信号の波長分布データを得るに際には、上述のような干渉光信号の生成及びその分光器14による受光を複数回行い、その各回の波長分布データの平均値を求めるようにしてもよい。
【0092】
データ処理装置17は、この取り込んだ波長分布データに対して、分布データ変換手段18により光源10の光源光の波長分布に基づく変換処理を施す。この変換処理は、光源光(共振器10に導入される光源光)が仮に白色光であったとして、前述のように干渉光信号を生成した場合に分光器14を介して得られると推定される干渉光信号の波長分布データ(以下、変換分布データという)を、実際の波長分布データから推定的に求める処理である。このような変換処理を行う理由は、前述した光路差位相成分θや波長差位相成分αに基づくひずみ測定の原理では、光源光を白色光として、干渉光信号を生成する場合を前提としているからである。
【0093】
この場合、上記変換処理は例えば次のように行われる。すなわち、データ処理装置17は、実際の光源光の波長分布(図4の実線a)のデータ(実際の光源光の各波長値における強度のデータ)をあらかじめ記憶保持している。そして、データ処理装置17の分布データ変換手段18は、実際に得られた干渉光信号の各波長の強度データ(図4の実線c)に対して、その波長値における実際の光源光の強度の逆数、あるいはこの逆数にあらかじめ定めた所定値(例えば実際の光源光のピーク強度)を乗算したものを乗算することにより、実際に得られた干渉光信号の波長分布データを変換する。
【0094】
このような変換を行うことによって、例えば図6に示すような正弦波形状の変換分布データ、すなわち、光源光が白色光である場合の干渉光信号の波長分布データが推定的に得られる。
【0095】
尚、実際の光源光の各波長の強度がほぼ均一で、その波長分布が白色光の波長分布とほぼ同一である場合には、実際の干渉光信号の波長分布データに上記のような変換処理を施しても、得られる変換分布データは、元の波長分布データとほぼ同一となる。従って、このような場合には、実際の干渉光信号の波長分布データをそのまま変換分布データとして得るようにすればよい。
【0096】
このようにして分布データ変換手段18の処理により変換分布データを得た後、データ処理装置17は、強度差データ生成手段19によって、前記式(5)の強度差ΔIn(n=0,1,2,…)のデータを次のようにして得る。
【0097】
すなわち、図7を参照して、強度差データ生成手段19は、まず、上記変換分布データから、あらかじめ定めた波長値λ0を起点として、所定の単位波長差Δλ(本実施形態では例えば2nm)づつ、値が相違する複数の波長値λ0,λ1,…,λn,…における干渉光信号の強度I(λ0),I(λ1),…,I(λn),…のデータ(これは、式(4)の強度I(λn)の計測データに相当する)を抽出する。そして、これらの強度データI(λ0),I(λ1),…,I(λn),…において、前記単位波長差Δλの所定整数倍、例えば2倍の波長差を有するもの同士(I(λ0),I(λ2)),(I(λ1),I(λ3)),…,(I(λn+2),I(λn)),…をそれぞれ組とし、その各組データの二つの強度データI(λn+2),I(λn)(n=0,1,2,…)の差ΔI0(=I(λ2)−I(λ0)),ΔI1(=I(λ3)−I(λ1)),……,ΔIn(=I(λn+2)−I(λn))…を強度差データ(これは前記式(5)の強度差ΔInの計測データに相当する)として求める。このようにして求められる強度差データΔIn(n=0,1,2,…)は、各強度差データΔInに対応する波長値をλnとしたとき、例えば図8に示すように波長値に対して正弦波状に変化するものとなる。
【0098】
尚、外乱等の影響を低減するために、上記のように求められる強度差データΔIn(n=0,1,2,…)に対して、移動平均処理等によるローパス特性のフィルタリング処理を施したものを改めて強度差データΔInとして得るようにしてもよい。
【0099】
次いで、データ処理装置17は、位相算出手段20によって、前記光路差位相成分θ及び波長差位相成分αの値を次のようにして求める。
【0100】
すなわち、位相算出手段20は、まず、上述のようにして強度差データ生成手段19により求められた強度差データΔIn(n=0,1,2,…)から、例えば最小二乗法の処理によって、前記式(8)の自己回帰モデルの自己回帰係数としての複素数Z1,Z2,A1,A2の値を求める。この場合、より具体的には式(8)の3段目の式で、(Z1+Z2)及びZ1・Z2を未知数として、最小二乗法の処理を行うことで、強度差データΔIn(n=0,1,2,…)から(Z1+Z2)及びZ1・Z2の値が求められ、それらの値から、複素数Z1,Z2の値が求められる。そして、この複素数Z1,Z2の値及び強度差データΔI1の値を式(8)の2段目の式に代入してなる式と、強度差データΔI0の値を式(8)の1段目の式ととを連立方程式とし、その連立方程式を解くことによって、複素数A1,A2の値が求められる。
【0101】
次いで、位相算出手段20は、式(9)に従って、複素数A1,A2の値から、前記光路差位相成分θの値を求めると共に、式(10)に従って、複素数Z1,Z2の値から、前記波長差位相成分αの値を求める。このようにして求められた光路差位相成分θ及び波長差位相成分αは、それぞれ、前記基準波長値λaをλa=λ1(本実施形態では例えばλa=840nm)に定めたとき、共振器5の現在の反射面間隔D(=ゲージ長D0)と前記式(13),(14)の関係を有するものとなる。
【0102】
このようにして光路差位相成分θ及び波長差位相成分αを求めた後、次に、データ処理装置17は、ひずみ算出手段21によって、前記波長差位相成分αの値から、式(14)に基づいて、共振器5の現在の反射面間隔Dを求め、それをひずみセンサ1のゲージ長D0として図示しないメモリに記憶保持する。
【0103】
この場合、本実施形態では、式(14)の演算に必要な前記基準波長値λa及び単位波長差Δλは、それぞれ例えば840nm、2nmであり、波長差位相成分αの1周期当たりの反射面間隔Dの変化量λa2/(4・Δλ)は、88.2μmである。また、本実施形態では、ひずみセンサ1の前記凹面4の深さは、おおよそ40μm程度である。従って、前記式(14)でm=0とした式によってゲージ長D0を波長位相成分αから求めることができる(図5(b)を参照)。
【0104】
尚、ゲージ長D0が88.2μm以下で、波長差位相成分αが負の値となるときには、前記式(14)でm=1とした式によって、波長差位相成分αから、ゲージ長D0を求めればよい。
【0105】
さらに、データ処理装置17のひずみ算出手段21は、前記のように位相算出手段20が波長差位相成分αと共に求めた光路差位相成分θの値を初期光路差位相成分θ0(図5(b)を参照)として図示しないメモリに記憶保持する。
【0106】
次に、測定対象物のひずみ測定を行う際には、前述のようにゲージ長D0及び初期光路差位相成分θ0を求めた場合と全く同様にして、干渉光信号を生成し、その干渉光信号の分光データから、前記データ処理装置17の分光データ変換手段18、強度差データ生成手段19、及び位相算出手段19の処理を順次行うことによって、光路差位相成分θ及び波長差位相成分αの値を求める。
【0107】
データ処理装置17は、さらに、今回のひずみ測定時に上記のように求めた光路差位相成分θの値の前記初期光路差位相成分θ0からの変化量(θ−θ0)をひずみ算出手段21によって求める。そして、この変化量(θ−θ0)から前記式(13)に基づいて共振器5の反射面間隔Dの当初の値(=ゲージ長D0)からの変化量ΔDを求める。この場合、共振器5の反射面間隔Dの現在値が例えば図5(b)に示す「Dx」であるとし、また、今回求められた光路差位相成分θの値が「θx」であるとしたとき、共振器5の反射面間隔Dの変化量ΔD(=Dx−D0)は、ΔD=(λa/4π)・(θx−θ0)という式によって求めることができる。
【0108】
そして、ひずみ算出手段21は、このようにして求めた反射面間隔Dの変化量ΔDの前記ゲージ長D0に対する比ΔD/D0をひずみ測定値として算出する。これにより、ひずみセンサ1を用いたひずみ測定がなされる。
【0109】
図10に、測定対象物をアルミニウム材として、該アルミニウム材の温度を変化させながら前述のようにひずみ測定(アルミニウム材の温度ひずみの測定)を行った場合の実測データのグラフを示す。同図10に示すように、ひずみ測定値は、温度変化に対してリニアに変化している。そして、グラフの傾き(温度変化に対するひずみ測定値の変化の割合)は20.4ppm/℃で、アルミニウム材の物理定数である線膨張係数21ppm/℃とほぼ同一の値が得られた。このことから、精度の良いひずみ測定値が得られることが判る。
【0110】
尚、本実施形態では、上述のような手法によって、ひずみ測定を行う場合を例にとって説明したが、ひずみセンサ1を用いて生成される干渉光信号から、従来の白色光干渉方式や、位相検出方式を用いて共振器5の反射面間隔Dやその変化量を検出して、ひずみ測定を行うことも可能である。
【0111】
以上説明したように、図1の構造のひずみセンサ1を用いてひずみ測定を行ったとき、前記共振器5の当初の反射面間隔D0がゲージ長となり、このゲージ長は、ひずみセンサ1毎に、干渉光信号に基づいて計測して精度よく特定することができる。このため、該ゲージ長D0に対する反射面間隔Dの変化量の比としてのひずみ測定値を精度よく得ることができる。
【0112】
また、ひずみセンサ1のセンシング部分となる共振器5は、前記第1及び第2光ファイバ2,3の接合部分(融着部分)の内部に密閉的に形成されるため、該ひずみセンサ1を測定対象物に取付けるに際して、該接合部分を実質的に直接的に測定対象物に取付けることができる。このため、ひずみセンサ1の共振器5の部分は、光ファイバ2,3の外径程度の薄肉なものとなり、測定対象物のひずみに対する反射面間隔Dの変化の良好な感度を得ることができ、ひいては、ひずみ測定値の良好な精度を確保することができる。また、ひずみセンサ1を測定対象物の曲面状の箇所にも支障なく取付けることができる。
【0113】
また、前記第1及び第2光ファイバ2,3の接合・固着は、融着によってなされているため、両光ファイバ2,3が確実に一体化し、測定対象物のひずみに対するひずみセンサ1の構造的な安定性を確保することができる。
【0114】
また、ひずみセンサ1の製造においては、図2のフローチャートに基づいて説明したように、少ない工程数で、容易にひずみセンサ1を製造することができる。特に、第2光ファイバ3の凹面4の形成に際しては、エッチング加工を用いることによって、該凹面4を再現性よく、短時間で容易に形成することができる。また、この場合、ひずみセンサ1のゲージ長である共振器5の当初の反射面間隔D0を前述のように干渉光信号に基づいて計測することができるため、前記凹面4の深さや等をさほど厳密に管理する必要がない。従って、ひずみセンサ1の大量生産を容易に行うことができる。
【0115】
尚、前記実施形態では、第1光ファイバ2として、シングルモードの光ファイバを用いたが、マルチモード光ファイバを用いてもよい。また、前記実施形態では、第2光ファイバ3として、グレーデッド・インデックス・光ファイバを用いたが、例えばステップ・インデックス・光ファイバを用いてよく、さらには、シングルモード光ファイバを用いることも可能である。但し、エッチング加工により十分な深さを有する凹面を形成する上では、第2光ファイバ3は、マルチモード光ファイバを用いることが好適である。
【0116】
また、前記実施形態では、第1及び第2光ファイバ2,3として好適なものとして石英系のものを用いたが、これ以外の材質の光ファイバを用いてひずみセンサを得ることも可能である。
【0117】
また、前記実施形態では、ひずみセンサ1の製造のし易さ等の観点から、第2光ファイバ3の凹面4をエッチング加工により形成したが、本発明のひずみセンサでは、第2光ファイバの凹面は、他の加工手法によって形成されたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ式ひずみセンサの一実施形態の構造を示す断面図。
【図2】図1のひずみセンサの製造方法を説明するためのフローチャート。
【図3】図1のひずみセンサを用いたひずみ測定システムの一例のシステム構成図。
【図4】図3のシステムで干渉光信号の生成に用いる光源光とその光源光を用いて生成される干渉光信号との波長分布を示す線図。
【図5】図3のシステムによるひずみ測定手法を説明するための線図。
【図6】図3のシステムによるひずみ測定手法を説明するための線図。
【図7】図3のシステムによるひずみ測定手法を説明するための線図。
【図8】図3のシステムによるひずみ測定手法を説明するための線図。
【図9】図3のシステムによるひずみ(温度ひずみ)の実測データを示すグラフ。
【図10】従来の光ファイバ式ひずみセンサの構造を示す断面図。
【符号の説明】
1…光ファイバ式ひずみセンサ、2…第1光ファイバ、3…第2光ファイバ、4…凹面、5…共振器、4a,6…部分反射面。

Claims (2)

  1. 光の一部を反射可能な一対の部分反射面を両端に相対向させて形成してなる共振器と、前記両部分反射面の一方側から他方側に向かう光を前記共振器にその外部から導入する光ファイバとを備え、前記両部分反射面の間隔がひずみ測定対象物のひずみに応じて変化するよう前記共振器を該測定対象物に取付けた状態で前記光ファイバを介して前記共振器に光を導入したとき、各部分反射面で反射した光の干渉により両部分反射面の間隔に応じた干渉光信号を生成する光ファイバ式ひずみセンサにおいて、
    少なくとも先端面の中心部に軸心と略直交する直交面があらかじめ形成された第1の光ファイバと、先端面の中心部にあらかじめ凹面が形成され、且つ該凹面の底部が軸心と略直交する第2の光ファイバとを備えると共に、前記第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とが略同心に接合されて固着されており、
    前記第1の光ファイバの先端面の中心部と前記第2の光ファイバの凹面の底部とを前記両部分反射面として前記共振器が構成され、前記測定対象物のひずみを測定するとき、前記第1の光ファイバと第2の光ファイバとの接合部分が前記測定対象物に貼着されると共に、前記共振器の両部分反射面の当初の間隔が測定するひずみの基準長としてのゲージ長として使用されることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサ。
  2. 光の一部を反射可能な一対の部分反射面を両端に相対向させて形成してなる共振器と、前記両部分反射面の一方側から他方側に向かう光を前記共振器にその外部から導入する光ファイバとを備え、前記両部分反射面の間隔がひずみ測定対象物のひずみに応じて変化するよう前記共振器を該測定対象物に取付けた状態で前記光ファイバを介して前記共振器に光を導入したとき、各部分反射面で反射した光の干渉により両部分反射面の間隔に応じた干渉光信号を生成する光ファイバ式ひずみセンサであって、少なくとも先端面の中心部に軸心と略直交する直交面があらかじめ形成された第1の光ファイバと、先端面の中心部にあらかじめ凹面が形成され、且つ該凹面の底部が軸心と略直交する第2の光ファイバとを備えると共に、前記第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とが略同心に接合されて固着されており、前記第1の光ファイバの先端面の中心部と前記第2の光ファイバの凹面の底部とを前記両部分反射面として前記共振器を構成した光ファイバ式ひずみセンサの製造方法であって、
    軸心と略直交する先端面があらかじめ形成された二本の素材光ファイバのうちの一方の素材光ファイバの先端面にエッチング加工を施すことにより該素材光ファイバの中心部に前記凹面を形成して前記第2の光ファイバを得る工程と、前記二本の素材光ファイバのうちの他方の素材光ファイバを前記第1の光ファイバとし、該第1の光ファイバの先端面の周縁部と前記第2の光ファイバの先端面の周縁部とを略同心に融着する工程とからなり、前記凹面を形成する前記素材光ファイバは、石英系マルチモード光ファイバであることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの製造方法。
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