JP4365696B2 - 圧縮木材の薄肉構造 - Google Patents
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図1は、実施例1に係る圧縮木材の薄肉構造を用いた電子機器の斜視図、図2は図1の電子機器のA−A矢視断面図である。これら図1、2において、電子機器1は携帯電話として構成されており、筐体10と電子部20とを備える。筐体10は、その内部に形成された保持空間に保持対象としての電子部20を収容するもので、この電子部20を、一体に保持すると共に筐体外部から保護する。さらに筐体10は、その外表面を外部に露出させることで、電子機器1の外装材としても機能する。
次に、筐体10の具体的構成について説明する。図1、2に示すように、筐体10は、一対の圧縮木材である前部パネル11及び後部パネル12を組み合わせて構成されている。これら前部パネル11及び後部パネル12の各々は、平板状の主面部11a、12aと、この主面部11a、12aの周縁に一体に形成されるものであって、これら主面部11a、12aと略直交する側面部11b、12bとを一体に備える。これら前部パネル11及び後部パネル12の形成方法については後述する。
次に、前部パネル11に設けられた押しボタン23の構成について説明する。図3は、押しボタンの拡大斜視図、図4は、図3のB−B矢視断面図、図5は、押しボタンの被押圧状態における断面図である。これら図3〜5に示すように、押しボタン23は、薄肉部30と、スイッチ31とを備えて構成されている。
このうち、薄肉部30は、圧縮木材本体である主面部11aと一体に圧縮形成されるものであって、本実施例1においては、図1、3に示すように、平面形状が略円状になるように形成されている。ここで、図4に示すように、薄肉部30は、主面部11aよりも薄肉状に形成されることにより、この主面部11aに対して弾性変形可能に形成されている。すなわち、主面部11aの厚みをT1、薄肉部30の厚みをT2とすると、T1>T2の関係にある。このように、薄肉部30の厚みを主面部11aよりも減じた場合、その減厚分に応じて薄肉部30の弾性を向上させることができ、この薄肉部30を弾性変形可能とすることができる。
特に、薄肉部30は、前部パネル11の主面部11aを形成する際の圧縮率よりも低い圧縮率で、木材を圧縮することにより形成されている。すなわち、主面部11aの圧縮前の厚みをT1a、主面部11aの圧縮後の厚みをT1bとして、主面部11aの圧縮率CR1を(T1a−T1b)/T1aと定義する。また、薄肉部30の圧縮前の厚みをT2a、薄肉部30の圧縮後の厚みをT2bとして、薄肉部30の圧縮率CR2を(T2a−T2b)/T2aと定義する。この場合、CR1>CR2の関係にある。
ここで、本実施例1に係る薄肉部30は、当該薄肉部30の厚み方向に略沿って押圧される被押圧体として形成されている。すなわち、薄肉部30は、その外側から内側に向けて、その厚み方向に沿った方向(図5に矢示する押圧方向)に押圧されることで、当該厚み方向に略沿った方向に変位する被押圧体として機能する。
このように被押圧体として機能する薄肉部30は、図5に矢示するように、その木材繊維方向を、当該薄肉部30の厚み方向に略直交させるように形成することが好ましく、このことにより、薄肉部30を容易に変形させることができる。特に、主面部11aと薄肉部30との連結部分は変形量が大きくなるために最も強度が必要になるが、この連結部分には主面部11aから薄肉部30に連続的に(切断されることなく)至る木材繊維を配置しているので、この連結部分における強度を向上させることができる。なお、このような薄肉部30の具体的形成方法については後述する。
次に、上記特徴を有する前部パネル11の形成方法について説明する。なお、後部パネル12は前部パネル11と同様の方法にて形成できるのでその説明を省略する。最初に、前部パネル11全体の形成方法について説明し、その後、薄肉部30の形成方法について詳述する。図6は、実施例1に係る木材の形取りを示す斜視図である。この図6に示すように、まず、無圧縮状態の原木40から木材41を形取る。ここでは、木材41を、その長手方向が原木40の木材繊維方向Lwに沿うような方向で、形取る。この木材41は、主面部11a及び側面部11bを一体に備え、主面部11aと側面部11bとの間は滑らかな曲面を介して連接している。なお、図6では原木40の木目を42として示す。
上記形成過程における薄肉部30の形成についてさらに詳述する。図12、13は、木材の各圧縮工程における薄肉部周辺の拡大縦断面図である。図8〜13に示すように、木材41の形取り後、この木材41の内側の一部を切削等することで凹部43を形成する。この凹部43は、圧縮によって減少する容積をあらかじめ加えた形態で切削される。具体的には、圧縮後の薄肉部30の厚みをT2b、圧縮による減少分の厚みをT2cとすれば、図12に示す薄肉部30の圧縮前の厚みT2aはT2b+T2cに決定される。
次に、本実施例1に係る薄肉部の他の利用形態について説明する。図1に示すように、前部パネル11の主面部11aにはスピーカ21が設けられている。図14は、スピーカの縦断面図である。この図14に示すように、スピーカ21は、薄肉部32および振動子33を備えて構成されている。
ここで、薄肉部34の周辺には、溝部35が形成されている。この溝部35は、図17に示すように薄肉部34がスイッチ31に向けて押圧された際、この薄肉部34の弾性変形を補助する変形補助部として機能する。すなわち、図15〜17に示すように、薄肉部34の両側方に溝部35が形成されることにより、この薄肉部34の端部36が略U字状のバネの如く機能する。したがって、このバネ状の端部36の復元力によって、薄肉部34の弾性力が向上し、薄肉部34の弾性変形を一層スムーズに行うことができると共にこの薄肉部34の耐久性を一層向上させることができる。
特に、本実施例2においては、溝部35を、薄肉部34の周辺のうち、図15に矢示する短手方向に沿った辺(短手辺)にのみ形成しており、長手方向に沿った辺(長手辺)には形成していない(なお、ここでいう短手方向および長手方向は、先の電子機器1の全体形状に基づいた定義とは異なり、図15に矢示するように、薄肉部34の形状のみに基づいた定義である)。
また、本実施例2においては、薄肉部34の木材繊維方向を、この薄肉部34の短手辺に略直交させている。すなわち、図15に矢示するように、木材繊維方向が薄肉部34の長手方向に対して略沿う方向になっている。この効果は以下の通りである。すなわち、薄肉部34が押圧された場合、押圧による荷重は、短手辺全体と長手辺全体とに均等に加わる。この場合、短手辺は長手辺よりも短いために、その単位長さ当たりの荷重は、長手辺の単位長さ当たりの荷重よりも大きくなる。したがって、短手辺の耐荷重を長手辺の耐荷重よりも大きくしておく必要が生じる。そこで、木材繊維方向を短手辺に略直交させることで、この短手辺において押圧方向と繊維方向とを略直交させて、短手辺の耐荷重を向上させている。
次に、上記説明した薄肉部34および溝部35の形成について詳述する。図18、19は、木材の各圧縮工程における薄肉部周辺の拡大縦断面図である。これら図18、19に示すように、下型枠50の凹部50bには凸部50cを設けると共に、上型枠51の凸部51bには凸部51cを設ける。そして、木材41を間に配置した状態で、図18に示すように、凹部50bに凸部51bを嵌入することにより、主面部11a、薄肉部34、および、溝部35を一体に圧縮形成することができる。
最後に、上記実施例の変更の可能性について説明する。すなわち、上記説明した本発明に係る実施例における具体的な構成及び方法は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変および改良することができる。また、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、上記に記載されていない課題を解決したり、上記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
10 筐体
11 前部パネル
11a、12a 主面部
11b、12b 側面部
12 後部パネル
20 電子部
21 スピーカ
22 液晶モニタ
23、26 押しボタン
24 押しボタン群
25 マイク
30、32、34 薄肉部
31 スイッチ
33 振動子
35 溝部
36 端部
40 無垢材
41 木材
42 木目
43 凹部
50 下型枠
50a、50b 凹部
51 上型枠
51a〜51c、50c 凸部
Claims (10)
- 木材を圧縮して形成された圧縮木材本体と、上記圧縮木材本体と一体に圧縮形成されるものであって、上記圧縮木材本体よりも薄肉状に形成されることにより上記圧縮木材本体に対して弾性変形可能に形成された薄肉部とを備えること、
を特徴とする圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部を、上記圧縮木材本体よりも低い圧縮率で木材を圧縮することにより形成したこと、
を特徴とする請求項1に記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部の木材繊維方向を、当該薄肉部の厚み方向に略直交させたこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部の周囲の少なくとも一部に、上記薄肉部の弾性変形を補助する変形補助部を形成したこと、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記変形補助部を、上記薄肉部の周囲の少なくとも一部に略沿って配置した溝部として形成したこと、
を特徴とする請求項4に記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部の平面形状を、長手辺および短手辺を有する非正方形状に形成し、
上記変形補助部を、上記薄肉部の周囲の少なくとも短手辺に形成したこと、
を特徴とする請求項4または5に記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部の平面形状を、長手辺および短手辺を有する非正方形状に形成し、
上記薄肉部の木材繊維方向を、上記短手辺に略直交させたこと、
を特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部を、当該薄肉部の厚み方向に略沿って押圧される被押圧体としたこと、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部を、当該薄肉部の一側方に配置されたスイッチを押圧するための被押圧体として形成したこと、
を特徴とする請求項8に記載の圧縮木材の薄肉構造。 - 上記薄肉部を、当該薄肉部の一側方に配置された振動子から振動を伝達されて振動する、または、当該薄肉部の一側方に配置された振動子に振動を伝達する、音響コーンとして形成したこと、
を特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の圧縮木材の薄肉構造。
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