JP4358333B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はチュクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する方法、特に成長欠陥が実用に耐えうるまで十分に低減され、最終的なIC製造までをも含めた半導体製造工程の経済的効果を十分に高めることができるシリコン単結晶製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チュクラルスキー法(以下、CZ法)により得られるCZシリコン単結晶の成長中に発生する結晶欠陥は、MOSデバイスのゲート酸化膜の信頼性やPNジャンクションリーク特性などに悪影響を及ぼすので、それをできる限り低減することが必要となる。
【0003】
CZシリコン単結晶に含まれる成長欠陥として代表的なものには、転位クラスタ、八面体状のボイド欠陥、熱酸化処理をした際に発生するリング状の酸化誘起積層欠陥部(以下OSFリングと略す)があり、ボイド欠陥はMOSデバイスのゲート酸化膜の信頼性を劣化させ、転位クラスタは半導体素子の特性を劣化させるというのは周知の事実である。また、これらの欠陥はCZシリコン単結晶中に無秩序に発生するのではなく、OSFリングを挟んでその内側にはボイド欠陥、その外側には転位クラスタが発生するということも知られている。
【0004】
ここで、OSFリングの位置には、引き上げ軸方向の結晶内温度勾配(これは、結晶の半径方向の位置によって変化する)が影響することが知られている(E.Dornberger,W.v.Ammon,J.Electrochem.Soc.Vol.143(1996)p1648)。また、宝来らは、OSFリングの外側の領域には転位クラスタを含まない無欠陥の領域が生じることがあるということを示し、更には、結晶の成長速度と引き上げ軸方向の結晶内温度勾配との関係を特殊な範囲の比となるように調整することによって成長欠陥を含まない無欠陥単結晶が得られたということを報告している(1993年(平成5年)、第54回応用物理学会学術講演会(1993年9月27日から30日)、第54回応用物理学会学術講演会講演予稿集No.1、p303、29a−HA−7: 特開平8−330316号公報 : M.Hourai,H.Nishikawa,T.Tanakaら、Semicondoctor Silicon,1998,P453)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、宝来らの方法は、結晶の成長速度と引き上げ軸方向の結晶内温度勾配との関係を特殊な極狭い範囲の比となるように調整するものであって、その制御が困難であった。そして、この操作制御の困難に起因して、それを行うためのコストの高騰を招き、成長欠陥低減による歩留まりの向上によって経済効果が高められていた場合でも、半導体製造工程全体としての経済効果は落ちてしまうという問題も生じる。
【0006】
また、無欠陥領域の発生挙動が明らかではないため、無欠陥領域を十分に含む製品が一定の割合をもって確実に得られるというわけではなく、不安定であった。
【0007】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、CZ法により生産されるシリコン単結晶ウェーハに対して広い無欠陥領域を安定して付与することができる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、種々の成長条件による無欠陥領域の発生挙動を詳細に調べることにより、CZ法により生産されるシリコン単結晶バルクにおいて、広い無欠陥領域を確実かつ低コストで作製する方法を提供し、更には、成長欠陥の少ない高品質なシリコンウェーハを低コストにて安定して供給し得る方法を提供するものである。
【0009】
本発明はまた、宝来らにより示された「OSFリングの外側の領域には転位クラスタを含まない無欠陥の領域が生じることがある」という事実を前提として、OSFリングの外側のこの無欠陥領域を拡大することにより、高品質なシリコンウェーハを得ることができることを予想し、それに基づいてなされたものである。しかしながら本発明は、無欠陥領域の発生挙動が明らかではなく、同時に不安定であったことに起因して、それまで不可能とされていた「OSFリングの外側の無欠陥領域の拡大、及び、広い無欠陥領域を含むシリコンウェーハの低コスト安定供給」ということを可能にしたものである。
【0010】
具体的には、本発明は、以下のようなシリコン単結晶バルクの製造方法を提供する。
【0011】
(1) チュクラルスキー法によりシリコン単結晶バルクを製造する方法であって、シリコン融点から1350℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値Gの結晶の外側面と結晶中心での値の比であるG outer/G centerを1.10から1.50の間とし、また引上速度Vを0.418(mm/min)から0.511(mm/min)の間にすることを特徴とするシリコン単結晶バルクの製造方法。またチュクラルスキー法によりシリコン単結晶バルクを製造する方法であって、シリコン融点から1350℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値Gの結晶の外側面と結晶中心での値の比であるG outer/G centerを1.10から1.50の間とし、また前記Gcenterと引上速度Vとの比であるV/Gcenterを0.168(mm 2 /℃min)から0.189(mm 2 /℃min)の間にすることを特徴とするシリコン単結晶バルクの製造方法。なお、シリコン融点については定説はなく、1412℃ないしは1420℃であると言われているが、シリコン融点が何℃であるかということは本発明において問題ではなく、定説となるシリコン融点が何℃であろうと、「シリコン融点から1350℃までの温度範囲」であれば、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
(2) シリコン単結晶バルクの製造の際に、シリコン単結晶バルクの成長長さが長くなるに従いチュクラルスキ一法シリコン単結晶製造装置に備え付けられている熱遮蔽体を下降させて熱遮蔽体とシリコン融液との間の距離を短くすることを特徴とする上記記載のシリコン単結晶バルクの製造方法。
【0013】
(3) シリコン単結晶バルクの製造の際に、シリコン単結晶バルクの成長長さが長くなるに従いシリコン単結晶バルクの引き上げ速度を低下させることを特徴とする上記記載のシリコン単結晶バルクの製造方法。
【0016】
[シリコン単結晶ウェーハ]
以上のような本発明は、結晶欠陥の存在を敢えて容認しつつ、成長欠陥を低減させるための条件を監視するのに要するコストを低減し、半導体製造工程全体として経済効果を高めるということを実現したものである。従って、その結晶欠陥の存在を容認した上でのコスト低減という観点から、本発明により製造されたシリコン単結晶ウェーハには、無欠陥領域とともに、必ずある程度のOSFリングが存在することになり、少なくともその割合が上記の範囲にあるのであれば、本発明の範囲に含まれることになる。
【0017】
なお、本発明に係るシリコン単結晶ウェーハは、本発明に係るシリコン単結晶バルクから切り出しを行い、常法に従って所定の加工を施すことにより製造することができる。
【0018】
[シリコン単結晶バルク製造装置]
図2は、本発明に係るシリコン単結晶バルク製造装置の要部を示すブロック図である。本発明に係るシリコン単結晶バルク製造装置は、通常のCZ法シリコン単結晶製造装置と同様に、密閉容器たるチャンバー11内に、シリコン融液12の製造・貯蔵のためのルツボ13(このルツボ13は、通常のCZ法シリコン単結晶製造装置と同様に、黒鉛ルツボ13aの内側に石英ルツボ13bが配設されたものからなる)と、このルツボ13を加熱するためのヒータ14と、このヒータ14に電力を供給する電極15と、ルツボ13を支持するルツボ受け16と、ルツボ13を回転させるペディスタル17と、を備える。チャンバー11内には適宜、断熱材21、メルトレシーブ23、内筒24が備え付けられる。また、この装置には、ヒータ14からシリコンバルク27への熱の輻射を遮蔽するための熱遮蔽体25が備え付けられている。更に、本発明に係るシリコン単結晶バルク製造装置は、特に図示していないが、この種のCZ法シリコン単結晶製造装置に通常装備される不活性ガスの導入・排気システムを備えている。そして、このようなシステム下にあって、熱遮蔽体25は不活性ガスの流通路を調整する働きも兼ね備えている。
【0019】
本発明に係るシリコン単結晶バルク製造装置において特徴的なことは、熱遮蔽体25を動かし、当該熱遮蔽体25の先端部分とシリコン融液12の液面からの距離hを調整することによって、本発明遂行のポイントとなるV/G値(mm2/℃・min)やG outer/G centerを調整することである。実際に、距離hを調整することによってヒータ14やシリコン融液12の液面からシリコンバルク27への熱の遮蔽量が変化するのと同時に、シリコンバルク27表面を流れる不活性ガスの量や速度が微妙に変化するので、これによって本発明ではシリコンバルク27表面における結晶引上げ軸方向の結晶内温度勾配、ひいてはその中心部分における結晶引上げ軸方向の結晶内温度勾配との比を調整することができるものと考えられている。
【0020】
なお、この実施の形態において、当該熱遮蔽体25の先端部分とシリコン融液12の液面からの距離hの調整は、熱遮蔽体25の高さを調整するリフター25aと、熱遮蔽体25の傾きを調整するアンギュラー25bの連動により行うこととしている。しかしながら、距離hの調整はこの機構に限られるものではない。即ち、本発明が、CZ法シリコン単結晶製造装置に装備されている熱遮蔽体を利用してV/G値(mm2/℃・min)やG outer/G centerを調整する最初のものである以上、距離hの調整を行えるものであればいかなる実施態様も本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【0021】
また、本発明においては、距離hの調整は、例えば総合電熱解析のようなシュミレーション解析による計算結果に基づいて行うようにしてもよく、実測値に基づいたフィードバック制御などによって行うようにしてもよい。
【0022】
【実施例】
種々の成長条件による無欠陥領域の発生挙動を調べた結果、引き上げ速度によるOSFリングの半径方向位置および無欠陥領域の分布範囲は、図1のようであることが解った。つまり、OSFリングは引き上げ速度の低下により収縮する一方で、OSFリングの半径が特定の値より小さくなると無欠陥領域は消滅してしまうのである。従って、一定の無欠陥領域を得るためには、引き上げ速度は大きすぎても小さすぎても不適当で、適切なある所定の範囲内になければならないことになる(図1中、V1からV2の間)。
【0023】
また、前述のように、OSFリングの位置は、引き上げ軸方向の結晶内温度勾配(これは、結晶の半径方向の位置によって変化する)が影響することが知られているので、半径方向の各位置での引き上げ軸方向の結晶内温度勾配について、最も広い範囲で無欠陥が得られるものを調査をした。この調査にあたって、結晶バルクの引き上げ速度と結晶内温度勾配の間には相関があることから、図1の例のように徐々に引き上げ速度を低下させたときの欠陥の分布を調べることによって実験結果を得た。
【0024】
ボイド欠陥及び転位クラスタは無撹拌Seccoエッチングにより調査し、OSFリングの位置は780℃で3時間とそれに続く1000℃で16時間の酸化性熱処理後のX線トポグラフにより評価した。また、半径方向の各位置での引き上げ軸方向の結晶内温度勾配は、現在確立されている成長装置内の総合伝熱解析により求めた。なお、実験は直径200mmの結晶を用いて行った。
【0025】
【実施例1】
表1は、図1で見られるような無欠陥領域がOSFリングの外側から結晶外周にまで広がった状態が維持される最小のOSFリングの外半径を各成長条件毎に示したものである。従って、この表1においては、この半径が小さいほど無欠陥部の占める面積が大きいことを意味することになる。
【0026】
ここで、表1から、シリコン融点から1350℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値Gの結晶の外側面と結晶中心での値の比Gouter/G centerが1.10から1.50の間にあるときに、最小OSFリングの外半径が小さい(つまり、無欠陥領域の占める面積が大きい)ということが解り、この範囲が適切な割合の無欠陥領域を得るための好適な成長条件であることが解った。一方、G ouer/G centerが1.10から1.50の間にないときは、ウェーハにおいて無欠陥部の占める面積が1/2以下となり、無欠陥領域を付与した効果が大きく減殺される。
【0027】
【表1】
【0028】
【実施例2】
表1にて求められた成長条件において、引き上げ速度を一定にして結晶を成長させた場合、成長中における結晶内温度勾配の変化のため、徐々に最適な成長条件からずれていき、無欠陥領域の占める領域が縮小してしまう場合がある(一例として、表2)。
【0029】
【表2】
【0030】
このような場合は、結晶の長さの変化に追従させて引き上げ速度を変化させることにより、一定の無欠陥領域を付与することができるようになる(表3)。
【0031】
【表3】
【0032】
【実施例3】
この実施例は、実施例2と同様に成長中における結晶内温度勾配の変化のために徐々に最適な成長条件からずれていってしまったときに、シリコン融液と熱遮蔽体との間の距離の変化を与えることにより、一定の無欠陥領域を付与することができるということを示すためのものである(表4)。
【0033】
【表4】
【0034】
表4に示すように、引き上げ速度一定の条件下で、シリコン融液と熱遮蔽体との間の距離を、結晶の長さの変化に追従させて変化させることにより、一定の無欠陥領域を付与することができた。ここで、この実施例3によって、シリコン融液と熱遮蔽体との間の距離を変化させれば、引き上げ速度を変化させた場合(実施例2)と同じ効果が得られることがわかる。そしてこのことから、一定の無欠陥領域を得るという観点からすれば、シリコン単結晶バルク製造装置においてシリコン融液と熱遮蔽体との間の距離を変化させることは、引き上げ速度を変化させることと等価の効果が得られるということが明らかになった。
【0035】
【発明の効果】
本発明に係る方法もしくは装置によれば、一定の無欠陥領域を確実に含むシリコン単結晶ウェーハを安定かつ低コストで製造することができる。このため、半導体製造工程全体のコストを下げ、その経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 引き上げ速度によるOSFリングの半径方向位置および無欠陥領域の分布範囲を図示した概念図である。
【図2】 本発明に係るシリコン単結晶バルク製造装置の要部を示すブロック図である。
【符号の説明】
11 チャンバー(密閉容器)
12 シリコン融液
13 ルツボ
13a 黒鉛ルツボ
13b 石英ルツボ
14 ヒータ
15 電極
16 ルツボ受け
17 ペディスタル
21 断熱材
23 メルトレシーブ
24 内筒
25 熱遮蔽体
27 シリコンバルク
h 熱遮蔽体25の先端部分とシリコン融液12の液面からの距離
25a リフター
25b アンギュラー
Claims (4)
- チュクラルスキー法によりシリコン単結晶バルクを製造する方法であって、
シリコン融点から1350℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値Gの結晶の外側面と結晶中心での値の比であるG outer/G centerを1.10から1.50の間とし、また引上速度Vを0.418(mm/min)から0.511(mm/min)の間にすること
を特徴とするシリコン単結晶バルクの製造方法。 - チュクラルスキー法によりシリコン単結晶バルクを製造する方法であって、
シリコン融点から1350℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値Gの結晶の外側面と結晶中心での値の比であるG outer/G centerを1.10から1.50の間とし、また前記Gcenterと引上速度Vとの比であるV/Gcenterを0.168(mm 2 /℃min)から0.189(mm 2 /℃min)の間にすること
を特徴とするシリコン単結晶バルクの製造方法。 - シリコン単結晶バルクの製造の際に、シリコン単結晶バルクの成長長さが長くなるに従いチュクラルスキ一法シリコン単結晶製造装置に備え付けられている熱遮蔽体を下降させて熱遮蔽体とシリコン融液との間の距離を短くすること
を特徴とする請求項1または請求項2記載のシリコン単結晶バルクの製造方法。 - シリコン単結晶バルクの製造の際に、シリコン単結晶バルクの成長長さが長くなるに従いシリコン単結晶バルクの引き上げ速度を低下させること
を特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のシリコン単結晶バルクの製造方法。
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