JP4356322B2 - 筒状部と挿入部との結合構造及びこれを用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナ - Google Patents

筒状部と挿入部との結合構造及びこれを用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状部と、この筒状部に挿入される挿入部とを結合させる筒状部と挿入部との結合構造及びこれを用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
筒状部と、この筒状部に挿入される挿入部とを結合させる筒状部と挿入部との結合構造は、従来より様々なものがあった。図12に結合構造の例を示す。
【0003】
図12(a)に示す結合構造51は、筒状部52にネジ孔53を設け、挿入部54に当該挿入部54側に向かって縮径する引き込み縮径部55を設けて、この縮径部55に止ネジ56を押圧することによって、筒状部52と挿入部54とを結合するようになっている。
【0004】
図12(b)に示す結合構造57は、筒状部58の端部とその筒状部58に挿入された挿入部59の外周面とを溶接によって固定して、筒状部52と挿入部54とを結合するようになっている。
【0005】
図12(c)に示す結合構造61は、筒状部62にネジ孔63を設け、挿入部64の外周面にネジ孔63に螺合される止ネジ65の先端が挿入される穴67を形成し、止ネジ65を穴67の底面に押圧することによって、筒状部62と挿入部64とを結合するようになっている。
【0006】
図12(d)に示す結合構造68は、筒状部69及び挿入部71にくさび部材72が挿入される貫通穴73,74をそれぞれ設け、くさび部材72の挿入による押圧力で、筒状部69と挿入部71とを固定して結合するようになっている。
【0007】
このような筒状部と挿入部との結合構造を用いるものとしては、図13に示すようにボルトの軸力を計測するボルト軸力計を内蔵したボルト軸力計内蔵式ナットランナ100が一例として挙げられる。
【0008】
例えば、結合構造51を用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナ100は、ボルト頭部103に係合するソケット104の内部に、そのソケット104に係合したボルト頭部103の端面に接触してボルト102の長さを検出する超音波センサ105が内蔵されている。
【0009】
ソケット104は、ボルト把持部の反ボルト側に貫通穴が設けられた筒状に形成されており、その貫通穴内に超音波センサ105が収容されている。超音波センサ105は、貫通穴の反ボルト側から延びるセンサ支持部材106(挿入部54を備える)に筒状のセンサ固定部材107(筒状部52を備える)を介して固定支持されている。
【0010】
ボルト軸力計は、超音波センサの先端部をボルト頭部の端面に密着させて、超音波センサによって、ボルト頭部から超音波を発振(入射)すると共にボルト軸部の先端部で反射された超音波(エコー)を検出し、その検出結果に基づいてボルトに発生した軸力を測定するものである。
【0011】
具体的には、ボルトが締め付けられて軸力が発生するとボルト軸部が伸びるため超音波の伝達時間が長くなり、反射波が検出されるまでの時間が長くなる。この長くなった伝達時間はボルトに発生した軸力に比例するため、反射波検出の延長時間からボルト軸力を求めることができる。
【0012】
このように、ボルトの締付を行うソケット内部に超音波センサを備えたボルト軸力計内蔵式ナットランナとしては、例えば、下記に示した特許文献1に示すようなものがあった。
【0013】
【特許文献1】
特許第3134658号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図12に示した従来の結合構造51,57,61,68では、止ネジ56,65やくさび部材72や溶接を用いて固定しているため、結合後の筒状部及び挿入部に大きな応力が残留してしまい、変形や部材強度の低下が発生するといった問題があった。
【0015】
従って、このような結合構造を用いた図13のボルト軸力計内蔵式ナットランナ100において、超音波センサ105とボルト頭部103との位置精度が悪化してボルト軸力の測定精度が低下してしまう問題があった。
【0016】
さらに、上述の超音波ボルト軸力計によって正確にボルト軸力を測定するためには、超音波の発振(入射)及び反射が正確に行われるようにする必要があるため、超音波センサの先端面とボルト頭部の端面とが、隙間なく密着しなければならない。
【0017】
ところが、ボルトの製造誤差等の理由により、ボルト頭部の端面が傾斜している場合があるが、この場合、超音波センサの先端と密着するために、超音波センサの接触角度を調整する必要がある。そこで、筒状部を備えたセンサ固定部材と挿入部を備えたセンサ支持部材とが相対首振り移動を許容することが求められていた。
【0018】
しかしながら、図12に示した従来の結合構造51を用いた図13のボルト軸力計内蔵式ナットランナ100や特許文献1のボルト軸力計内蔵式ナットランナでは、筒状部52と挿入部54との相対首振り機能は有しておらず、ボルト軸力の測定精度が低下してしまうといった問題があった。これは、図12に示した他の結合構造57,61,68を用いても同じである。
【0019】
また、ソケットの内部はスペースが非常に小さいので、結合構造のコンパクト化が求められている。
【0020】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、その目的は、各部に大きな応力を残留することがなく、相対首振り移動が可能であると共にコンパクトな筒状部と挿入部との結合構造及びこれを用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナを提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、筒状部と、この筒状部に挿入される挿入部とを結合させる筒状部と挿入部との結合構造であって、上記挿入部の外周面にその略周方向に延びる溝を形成し、上記筒状部に上記溝と軸方向の幅が相違するスリットを略周方向に沿って形成し、上記溝と上記スリットとが重合するように上記筒状部に上記挿入部を挿入し、これら重合した上記スリットと上記溝内に上記筒状部と上記挿入部とを係止するべく上記溝の深さ以上の厚さを有するロック部材を挿入し、上記筒状部の内周面と上記挿入部の外周面との間に、これら筒状部と挿入部との相対首振り移動を許容するためのクリアランスを形成した筒状部と挿入部との結合構造である。
【0022】
請求項2の発明は、上記ロック部材が、永久磁石にて形成され、上記筒状部や挿入部に磁着された筒状部と挿入部との結合構造である。
【0023】
請求項3の発明は、上記筒状部の外周に、上記ロック部材が上記スリットから外れることを防止する固定部材を装着し、該固定部材が、弾性を有するOリングであり、上記ロック部材を押圧しないように、上記スリットの幅よりも大きな寸法を有する筒状部と挿入部との結合構造である。
【0024】
請求項4の発明は、上記溝に、上記ロック部材が当接することによって上記筒状部と上記挿入部との相対回転を規制するための係止面を形成した筒状部と挿入部との結合構造である。
【0025】
請求項5の発明は、ボルト頭部に係合するソケットの内部に、そのソケットに係合したボルト頭部に接触してボルトの長さを検出する超音波センサを内蔵したボルト軸力計内蔵式ナットランナであって、上記超音波センサをボルト側端部で嵌合して固定する筒状のセンサ固定部材と、そのセンサ固定部材の反ボルト側端部の筒状部に挿入される挿入部を備え上記センサ固定部材を支持するセンサ支持部材とを有し、上記筒状部の内周面と上記挿入部の外周面との間に上記筒状部を備えたセンサ固定部材と上記挿入部を備えたセンサ支持部材との相対首振り移動を許容するためのクリアランスを形成し、上記挿入部の外周面にその略周方向に延びる溝を形成し、上記筒状部に上記溝と軸方向の幅が相違するスリットを形成し、上記溝と上記スリットとが重合するように上記筒状部に上記挿入部を挿入し、これら重合した上記スリットと上記溝内に上記筒状部と上記挿入部とを係止するべく上記溝の深さ以上の厚さを有するロック部材を挿入したボルト軸力計内蔵式ナットランナである。
【0026】
請求項6の発明は、上記ロック部材の外周側に、当該ロック部材を固定する固定部材を設けたボルト軸力計内蔵式ナットランナである。
【0027】
請求項7の発明は、上記溝に、上記ロック部材が当接することによって上記筒状部と上記挿入部との相対回転を規制するための係止面を形成し、上記センサ支持部材に、当該センサ支持部材が回転するのを防止するための回転防止機構を設けたボルト軸力計内蔵式ナットランナである。
【0028】
請求項8の発明は、上記溝の底部に切欠き部を形成して、その切欠き部が上記係止面を構成し、上記ロック部材が上記切欠き部に係合するボルト軸力計内蔵式ナットランナである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0030】
図1は本発明に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナの好適な実施の形態を示した要部拡大断面図、図2は図1の筒状部を示した正面図及び側面図、図3は図2の筒状部に挿入部を加えて示したIIIa−IIIa線断面図及びIIIb−IIIb線断面図、図4は図3のIVa−IVa線断面図及びIVb−IVb線断面図、図5は図1の挿入部を示した正面図である。
【0031】
まず、かかる筒状部と挿入部との結合構造を用いたボルト軸力計内蔵式ナットランナの構成を説明する。
【0032】
ボルト軸力計内蔵式ナットランナは、ボルトの締付機能とボルト軸力の計測機能とを備えたものである。
【0033】
図1に示すように、ボルト軸力計内蔵式ナットランナ1は、ボルト2の頭部3に係合するソケット4の内部に、そのソケット4に係合したボルト頭部3の端面に接触してボルト2の長さを検出するための超音波センサ5が内蔵されている。
【0034】
具体的には、ボルト軸力計内蔵式ナットランナ1は、超音波センサ5をボルト側端部で嵌合して固定する筒状のセンサ固定部材6と、そのセンサ固定部材6の反ボルト側端部の筒状部7に挿入される挿入部8を備え上記センサ固定部材6を介して超音波センサ5を支持するセンサ支持部材9とを有している。
【0035】
ソケット4は、その反ボルト側端部が当該ソケット4を回転させるための回転力伝達軸11に止ネジ12等を介して接続されている。回転力伝達軸11は、回転力を与えるナットランナ駆動機構(図示せず)に連結されている。回転力伝達軸11は、中空パイプ状に形成されており、その内部に、センサ固定部材6及びセンサ支持部材9が収容されている。
【0036】
センサ固定部材6は、筒状に形成されており、その反ボルト側端部(センサ支持部材9側端部)に筒状部7が形成されている。センサ固定部材6のボルト側端部は、その内周面が超音波センサ5の外周面と略同径に形成されており、超音波センサ5を嵌合させることによって、超音波センサ5をセンサ固定部材6に固定するようになっている。なお、図中14は、ゴム等から構成される係止リングを示す。
【0037】
センサ支持部材9は、そのボルト側端部に挿入部8が形成されている。センサ支持部材9の反ボルト側端部は、当該センサ支持部材9、センサ固定部材6及び超音波センサ5を一体でその軸方向に移動させるセンサ移動機構(図示せず)に接続されており、超音波センサ5が、ソケット4に対して相対移動可能に形成されている。センサ支持部材9は筒状に形成されており、その内部に超音波センサ5に繋がるケーブル10が挿通されている。
【0038】
なお、センサ移動機構は、ボルト2の締付時に超音波センサ5を図中上方に待避させ、ボルト2の軸力測定時に超音波センサ5を図中下方に移動させてボルト頭部3に接触させるものである。
【0039】
次に、図1から図5に従って、筒状部7と挿入部8との結合構造について説明する。なお、図1に示した断面図は、その断面線を屈曲しており、筒状部7の後述するスリット17のない部分(図中左側)とある部分(図中右側)とをそれぞれ示している。
【0040】
本実施の形態に係る結合構造の筒状部7の内周面と挿入部8の外周面との間には、筒状部7と挿入部8との相対首振り移動を許容するためのクリアランス15が形成されている。クリアランス15は、筒状部7の内周面に形成された凹部21によって構成されている。この凹部21は、筒状部7の内周面を所定長さ大径に形成して構成されており、軸方向に見て、挿入部8の先端部(ボルト側端部)22から、筒状部7の基端部(反ボルト側端部)23近傍まで形成されている。筒状部7の基端部23は、挿入部8の外周と略同等の内径を有しており、挿入部8の外周に対してリング状に接触している。
【0041】
挿入部8の外周面には、その周方向に延びる溝16が形成されている。この溝16は、周方向全周に渡って形成されている。なお、この溝16は、全周に渡って形成されるものに限られるものではなく、部分的に形成されたものであってもよい。さらに、図5に示すように、軸方向に直交して形成されるものに限られるものではなく、直交方向から若干傾斜していてもよい。
【0042】
一方、筒状部7には、その内側に挿入された挿入部8の溝16に対向する位置に、溝16と軸方向の幅が相違する(本実施の形態では幅が小さい)スリット17が形成されている。スリット17は、180°ピッチで形成された連結部18間に形成されており、略半円弧状のものが連結部18を挟んで2箇所に形成されている。
【0043】
スリット17から溝16内には、溝16の(径方向の)深さ以上の厚さ(径方向厚さ)を有するロック部材19が挿入されて、筒状部7と挿入部8とをその軸方向に係止するようになっている。ロック部材19は、スリット17の筒状部7の中心軸を中心とした開き角度と同等の開き角度を有した円弧状に形成されている。ロック部材19は、その軸方向厚さが、スリット17の(軸方向の)幅と同等に形成されている。そして、溝16は、その(軸方向の)幅が若干大きく形成されているので、筒状部7と挿入部8とが、その軸方向に若干の相対移動を許容されながら係止されている。
【0044】
ロック部材19は、永久磁石にて形成されている。これによって、ロック部材19が筒状部7や挿入部8へと磁着できるので、組立・分解時のロック部材19の紛失の確率を低減することができる。
【0045】
この軸方向への相対移動と併せて、筒状部7と挿入部8との間にクリアランス15が形成されているので、筒状部7と挿入部8とは、筒状部7の基端部23のリング状に接触した部分を中心として相対首振り移動可能となっている。
【0046】
ロック部材19の外周側には、当該ロック部材19を固定する固定部材24が設けられている。固定部材24は、ゴム等からなるOリング25にて構成されており、ロック部材19の外周を囲繞して固定するようになっている。Oリング25は、緊縛力の小さいものとなっていると共に、スリット17の幅よりも大径に形成されており、Oリング25がロック部材19を押圧することはない。これによって、ロック部材19は挿入部8の外周に押さえつけられることはなく、挿入部8に応力を残留させない。また、Oリング25の緊縛力が小さいので組立作業が行いやすい。なお、筒状部7の連結部18の外周側には、Oリング25の取付位置を規制するガイド溝20が形成されている。
【0047】
ところで、ソケット4の内周面には、センサ固定部材6のボルト側端部を案内して超音波センサ5をボルト頭部3の中心位置に案内するためのガイド部26が形成されている。ガイド部26は、ボルト側に向かうにつれて縮径するテーパ状に形成されており、その最も小径となる部分が、軸方向長さが小さい範囲でセンサ固定部材6の外周面と略同径となり、その小径部分30で、リング状にガイド部26とセンサ固定部材6とが接触するようになっている。
【0048】
次に、上記構成による筒状部7を備えたセンサ固定部材6と挿入部8を備えたセンサ支持部材9との結合組立手順と、かかる結合構造及びボルト軸力計内蔵式ナットランナ1の作用を説明する。
【0049】
センサ固定部材6とセンサ支持部材9とを結合させるに際しては、まず、センサ支持部材9内にケーブル10を挿通して、そのケーブル10の先端をセンサ固定部材6内に挿通させる。そして、そのケーブル10の先端を超音波センサ5に接続して、超音波センサ5をセンサ固定部材6のボルト側端部に嵌合して固定する。
【0050】
その後、筒状部7内に挿入部8を挿入して、筒状部7のスリット17の位置と挿入部8の溝16の位置を合わせる。そして、スリット17の外周側から、ロック部材19を溝16内に差し込む。次に、そのロック部材19の外周にOリング25を囲繞して巻き付けて固定して、組立が終了する。
【0051】
これによって、ロック部材19が、溝16とスリット17とに跨って挿入され、筒状部7と挿入部8とが軸方向に係止される。このとき、溝16の軸方向の幅がスリット17の幅よりも大きいので、筒状部7と挿入部8とは、軸方向に相対移動可能となっている。
【0052】
なお、分解する際には、上記手順と逆の手順を行えばよい。
【0053】
上記構成によれば、溝16とスリット17とにロック部材19を挿入して、筒上部7と挿入部8とを結合しているので、従来のように止ネジや溶接を用いる必要がない。従って、各部に応力や歪みが発生せず、各部の変形や部材強度の低下を防止できる。
【0054】
また、筒状部7と挿入部8との間にクリアランス15を設けると共に、筒状部7と挿入部8とをその軸方向に相対移動可能としたことによって、筒状部7と挿入部8とを相対首振り移動可能とすることができる。これと併せてソケット4の内周面のテーパ状のガイド部26が、その軸方向長さが小さい範囲の小径部分30でセンサ固定部材6の外周面と接触するようになっているので、センサ固定部材6の先端の超音波センサ5の先端面が傾斜可能となる。
【0055】
具体的には、センサ固定部材6のボルト側端部は、ガイド部26にてその位置が決定される一方、筒状部7と挿入部8との結合部分が径方向に若干揺動することによって、センサ固定部材6のボルト側端部の超音波センサ5の先端面が傾斜することとなる。
【0056】
これによって、ボルト頭部3の端面が傾斜している場合であっても、超音波センサ5の先端面をボルト頭部3の端面に追従させることができ、超音波センサ5の先端面とボルト頭部3の端面とを隙間なく接触させることがでる。これによって、正確な超音波の発振・受信を行うことができ、ボルト軸力を正確に測定することができる。
【0057】
また、センサ固定部材6は、ガイド部26によって、ボルト頭部3への接触位置を案内されるので、超音波センサ5の先端面とボルト頭部3の端面との接触位置が、測定の度に変化することはなく、ボルト軸力の測定の信頼性が向上する。さらに、本発明によれば、各部の加工が、溝16やスリット17の形成といった簡単な作業を行うだけでよいので、コンパクト化が達成されると共に安価で精度の高い結合構造を提供できる。また、組立や分解の作業を行うに際して、特に工具を必要とせず、容易且つ迅速な組立・分解作業が可能である。本発明によれば、従来のように止ネジや溶接を用いていないので、各部に応力や歪みが発生しない。よって、各部の変形や部材強度の低下を防止できる。
【0058】
また、筒状部7と挿入部8との間のクリアランス15の大きさを変えることによって、相対首振り移動の許容範囲を調整することができ、必要なアライメント(自由度)を得ることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、かかる筒状部7と挿入部8との結合構造を、ボルト軸力計内蔵式ナットランナ1に適用した例を挙げて説明したが、この結合構造は、ボルト軸力計内蔵式ナットランナ1への適用に限られるものではなく、相対首振り移動が求められる結合部分に適用可能なのは勿論である。
【0060】
ところで、図6は本発明に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナの好適な他の実施の形態を示した要部拡大断面図、図7は回転防止機構を示した水平方向断面図、図8は図6の筒状部を示した正面図及び側面図、図9は図8の筒状部に挿入部を加えて示したIXa−IXa線断面図及びIXb−IXb線断面図、図10は図9のXa−Xa線断面図及びXb−Xb線断面図、図11は図6の挿入部を示した正面図である。
【0061】
本実施の形態に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナ31は、センサ支持部材9に、当該センサ支持部材9が回転するのを防止するための回転防止機構32が設けられた構成と、筒状部7と挿入部8との結合構造が上記図1で示したボルト軸力計内蔵式ナットランナ1と異なる。なお、その他の構成については、上記ボルト軸力計内蔵式ナットランナ1と同様であるので、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0062】
回転防止機構32は、図6及び図7に示すように、センサ支持部材9の外周面からその径方向外側に延出して設けられたレバー部材33と、そのレバー部材33と回転力伝達軸11の内周面との間に架け渡して設けられたバネ部材34とを備えている。このバネ部材34は、図7に示した位置で安定するバネ材であり、センサ支持部材9が図中右回りに回転した際に、バネ材が引っ張られ、レバー部材33を元の位置に戻すことによって回転を防止するようになっている。
【0063】
この回転は、締付によって回転するボルト頭部3に接触する超音波センサ5が、ボルト頭部3の回転に引っ張られて共に回転するために発生する。
【0064】
なお、回転力伝達軸11の内周面には、レバー部材33の戻り位置を規制するための位置決めストッパ35が設けられている。位置決めストッパ35は、回転力伝達軸11の内周面から径方向中心側に延出して形成されており、レバー部材33と当接することによって、レバー部材33の戻り位置を規制する。
【0065】
本実施の形態に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナ31の筒状部7と挿入部8との結合構造は、挿入部8の外周面にその略周方向に延びる溝36を形成し、筒状部7にスリット37を形成し、溝36とスリット37とが重合するように筒状部7に挿入部8を挿入し、これら重合したスリット37と溝36内に筒状部7と挿入部8とを係止するべく溝36の深さ以上の厚さを有するロック部材38を挿入した結合構造であり、上記溝36に、ロック部材38が当接することによって上記筒状部7と上記挿入部8との相対回転を規制するための係止面39を形成したことを特徴とする。係止面39は、上記溝36の底部に切欠き部43を形成して構成される。これによって、係止面39は、上記挿入部8の円周方向と交差するように形成されている。すなわち、係止面39は、挿入部8の円周方向に沿った面とは違う面状に形成されている。
【0066】
具体的には、図8から図11に示すように、上記溝36の少なくとも一部(本実施の形態では、中心軸を中心に対称配置された2箇所)が、弓形に切り欠かれており、弓形の切欠き部43が形成され、その弦部分45が係止面39を構成している。
【0067】
上記ロック部材38は、溝36に係合する弓形に形成されている。ロック部材38は、溝36の弓形形状よりも大きい相似形に形成されており、その外周面は、筒状部7のスリット37の内部に位置する大きさとなっている。
【0068】
スリット37は、溝36の切欠き部43に相当する位置に形成されている。詳しくは、スリット37間に形成される連結部41は、その周方向両端46がロック部材38の弦部分44に当接する位置となっている。すなわち、溝36の弦部分45の延長線上に連結部41の周方向両端46が形成されている。
【0069】
要するに、溝36及びスリット37にロック部材38を挿入したときに、ロック部材38の弦部分44が、溝36の弦部分45と、スリット37間の連結部41の両端46に直線状に当接することによって、筒状部7と挿入部8とが、その周方向において一体的に固定され、相対回転するのが防止される。
【0070】
以下、上記構成のボルト軸力計内蔵式ナットランナ31の作用を説明する。
【0071】
本実施の形態に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナ31によれば、図1のボルト軸力計内蔵式ナットランナ1と同様の作用効果の他に、以下のような作用効果を得ることができる。
【0072】
すなわち、上記構成によれば、センサ支持部材9が回転するのを防止できることと、センサ固定部材6と一体の筒状部7とセンサ支持部材9と一体の挿入部8とが相対回転しないことによって、締付によって回転するボルト頭部3に接触する超音波センサ5が、ボルト頭部3の回転に引っ張られて共に回転しても、その回転が元に戻される。
【0073】
これによって、超音波センサ5に繋がるケーブル10に捩れが蓄積することがなく、ケーブル10に無理な力がかかるのを防止することができ、ケーブル10が破断することはない。
【0074】
なお、上記実施の形態では、溝36に弓形の切欠き部43が形成され、その平面状の弦部分45が係止面39を構成しているが、これに限られるものではない。係止面39は、挿入部8の円周方向に交差する面、すなわち、円周方向に沿った面と相違すれば、例えば、曲面状或いは多角面状であってもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、筒状部と挿入部との相対首振り移動が可能であると共にコンパクトで且つ各部に大きな応力を残留することがないといった優れた効果を発揮することができる。
【0076】
さらに、かかる筒状部と挿入部との結合構造をボルト軸力計内蔵式ナットランナに適用した場合、超音波センサの先端面をボルト頭部に隙間なく接触させることができ正確なボルト軸力の測定ができる。
【0077】
また、超音波センサに繋がるケーブルに捩れが蓄積することがなく、ケーブルの破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナの好適な実施の形態を示した要部拡大断面図である。
【図2】図1の筒状部を示した(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】図2の筒状部に挿入部を加えて示した(a)はIIIa−IIIa線断面図、(b)はIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】図3の(a)はIVa−IVa線断面図、(b)はIVb−IVb線断面図である。
【図5】図1の挿入部を示した正面図である。
【図6】本発明に係るボルト軸力計内蔵式ナットランナの好適な他の実施の形態を示した要部拡大断面図である。
【図7】回転防止機構を示した水平方向断面図である。
【図8】図6の筒状部を示した(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】図8の筒状部に挿入部を加えて示した(a)はIXa−IXa線断面図、(b)はIXb−IXb線断面図である。
【図10】図9の(a)はXa−Xa線断面図、(b)はXb−Xb線断面図である。
【図11】図6の挿入部を示した正面図である。
【図12】従来の筒状部と挿入部との結合構造の例を示した断面図である。
【図13】従来のボルト軸力計内蔵式ナットランナを示した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ボルト軸力計内蔵式ナットランナ
2 ボルト
3 ボルト頭部
4 ソケット
5 超音波センサ
6 センサ固定部材
7 筒状部
8 挿入部
9 センサ支持部材
15 クリアランス
16 溝
17 スリット
19 ロック部材
24 固定部材
31 ボルト軸力計内蔵式ナットランナ
32 回転防止機構
36 溝
37 スリット
38 ロック部材
39 係止面
45 弦部分

Claims (8)

  1. 筒状部と、この筒状部に挿入される挿入部とを結合させる筒状部と挿入部との結合構造であって、
    上記挿入部の外周面にその略周方向に延びる溝を形成し、
    上記筒状部に上記溝と軸方向の幅が相違するスリットを略周方向に沿って形成し、
    上記溝と上記スリットとが重合するように上記筒状部に上記挿入部を挿入し、
    これら重合した上記スリットと上記溝内に上記筒状部と上記挿入部とを係止するべく上記溝の深さ以上の厚さを有するロック部材を挿入し、
    上記筒状部の内周面と上記挿入部の外周面との間に、これら筒状部と挿入部との相対首振り移動を許容するためのクリアランスを形成した
    ことを特徴とする筒状部と挿入部との結合構造。
  2. 上記ロック部材が、永久磁石にて形成され、上記筒状部や挿入部に磁着された請求項1に記載の筒状部と挿入部との結合構造。
  3. 上記筒状部の外周に、上記ロック部材が上記スリットから外れることを防止する固定部材を装着し、
    該固定部材が、弾性を有するOリングであり、上記ロック部材を押圧しないように、上記スリットの幅よりも大きな寸法を有する請求項1又は2いずれかに記載の筒状部と挿入部との結合構造。
  4. 上記溝に、上記ロック部材が当接することによって上記筒状部と上記挿入部との相対回転を規制するための係止面を形成した請求項1〜3いずれかに記載の筒状部と挿入部との結合構造。
  5. ボルト頭部に係合するソケットの内部に、そのソケットに係合したボルト頭部に接触してボルトの長さを検出する超音波センサを内蔵したボルト軸力計内蔵式ナットランナであって、上記超音波センサをボルト側端部で嵌合して固定する筒状のセンサ固定部材と、そのセンサ固定部材の反ボルト側端部の筒状部に挿入される挿入部を備え上記センサ固定部材を支持するセンサ支持部材とを有し、上記筒状部の内周面と上記挿入部の外周面との間に上記筒状部を備えたセンサ固定部材と上記挿入部を備えたセンサ支持部材との相対首振り移動を許容するためのクリアランスを形成し、上記挿入部の外周面にその略周方向に延びる溝を形成し、上記筒状部に上記溝と軸方向の幅が相違するスリットを形成し、上記溝と上記スリットとが重合するように上記筒状部に上記挿入部を挿入し、これら重合した上記スリットと上記溝内に上記筒状部と上記挿入部とを係止するべく上記溝の深さ以上の厚さを有するロック部材を挿入したことを特徴とするボルト軸力計内蔵式ナットランナ。
  6. 上記ロック部材の外周側に、当該ロック部材を固定する固定部材を設けた請求項5記載のボルト軸力計内蔵式ナットランナ。
  7. 上記溝に、上記ロック部材が当接することによって上記筒状部と上記挿入部との相対回転を規制するための係止面を形成し、上記センサ支持部材に、当該センサ支持部材が回転するのを防止するための回転防止機構を設けた請求項5又は6いずれかに記載のボルト軸力計内蔵式ナットランナ。
  8. 上記溝の底部に切欠き部を形成して、その切欠き部が上記係止面を構成し、上記ロック部材が上記切欠き部に係合する請求項7記載のボルト軸力計内蔵式ナットランナ。
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