JP4350438B2 - 半導体熱処理用部材 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体熱処理用部材に係わり、特にSiC被覆カーボンを用いた半導体熱処理用部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にSiC被覆カーボンを用いたエピタキシャル成長用サセプタは、任意の形状に加工したカーボン基材にSiC膜を被覆して製造される。サセプタの耐食性能は、SiC膜の結晶性に大きく影響される。すなわち耐食性を高めるためには、表面が結晶性の良好なSiC膜のファセット、結晶軸、格子点で覆われている状態が好適である。一方、SiC結晶が非常に発達したサセプタでは、表面粗さが粗くなり、半導体ウェーハの裏面に傷を付け易く、スリップ発生の重大な要因の一つとなっていた。
【0003】
従来、サセプタ等の半導体熱処理用部材に用いられるSiC被覆カーボンは、塩素置換シラン類を原料としたCVDにより形成されているが、この方法ではSiC結晶の成長が不十分で、半導体ウェーハ処理において、十分な耐食性は得られない。そこで結晶性の発達を促しSiC膜を形成しているが、この方法ではサセプタの表面粗さが粗く、ウェーハ裏面に傷を発生させることがあった。これを改良するものとして、例えば特許文献1では、SiC結晶の粒径とその占拠率を制御する半導体熱処理用部材が提案されているが、粒径が5μm以上であるため、ウェーハ裏面に傷が発生する場合があり、問題が十分解消されていない。また、特許文献2では、結晶性の高いSiCの表面を一部研磨し、表面粗さを低減させているが、この方法では概ね10〜95%の研磨面が露出し、この研磨面がファセットと比較して耐食性に劣るため、シリコンボートとともに使用し、処理した場合にSiCダストを発生するという問題点があった。さらに、特許文献2のものは、不活性雰囲気下では、処理温度においてSiCからの揮発成分は極めて少ないが、シリコンウェーハと同時に処理した場合、近傍のシリコン蒸気によって、表面の反応が促進され、種々の分解ガス成分が気相中でSiCを運搬する。Si蒸気によりSiC(固体)→SiC(気体)の活性エネルギーが約30%低減する。SiC部材からのSiC汚染を抑制するために、表面を酸化する方法が考えられるが、SiCに比べてSiOの不純物拡散係数は極めて大きく、この方法では製品内部の不純物や酸化炉内の不純物を表面に凝集してしまい、高清浄度を必要とする製造工程には不適当である。
【0004】
【特許文献1】
特公平6−66265号(第2頁第3欄第15〜19行、第1図)
【0005】
【特許文献2】
特許第3094312号(明細書段落番号[0005]、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、ウェーハ裏面の傷の発生を防止して半導体ウェーハにスリップを発生させることがなく、かつ高清浄度を必要とする製造工程に適する半導体熱処理用部材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の1つの態様によれば、カーボン質基材の表面にSiC被膜を形成してなり、シリコンウェーハを載置するウェーハ受部を備えた半導体熱処理用部材であって、前記ウェーハ受部のSiC被膜の表面はSiC結晶成長面からなり、前記SiC被膜の厚さが30μm以上150μm以下であり、前記SiC被膜の表面にて観察されるSiC結晶が粒径10μm以上のものが150μm×150μm以上大きな任意の面積当り80%以上を占め、かつ、前記SiC結晶成長面の任意の位置での200μm以上の長さで測定した中心線平均粗さRaが1.2μm以上4μm以下であることを特徴とする半導体熱処理用部材が提供される。
これにより、ウェーハ裏面の傷の発生を防止して半導体ウェーハにスリップを発生させることがなく、かつ高清浄度を必要とする製造工程に適する半導体熱処理用部材が実現される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる半導体熱処理用部材の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明に係わる半導体熱処理用部材の実施形態として半導体ウェーハ熱処理用治具が組込まれた半導体ウェーハ熱処理用装置の斜視図を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の半導体ウェーハ熱処理用治具1は、ウェーハ熱処理用装置2に組込まれて使用されてウェーハボートとして使用される。
【0011】
ウェーハ熱処理用装置2は、Si材が用いられ、円板形状の基台3と、この基台3に開口部4が形成されるように立設された3本の支柱5、これら支柱5に設けられた多数の水平方向に延びる突起部6と、支柱5の安定と支柱5間の間隔保持のために支柱5の上端に設けられたほぼ馬蹄形状の上部固定板7で構成されている。
【0012】
半導体ウェーハ熱処理用治具1(以下、単に治具という。)は、開口部4から挿入され、この支柱5の各々の突起部6に載置されてウェーハ熱処理用装置2に着脱に収納、配置される。
【0013】
図1および図2に示すように、治具1は、平板状で一部が切欠されたリング状(ほぼ馬蹄形状)をなし、この馬蹄形部分に半導体ウェーハWを支持するウェーハ受部1sが形成されている。
【0014】
さらに、図3に示すように、治具1にはカーボン基材1aにSiC膜1bを形成してなるSiC被覆カーボンが用いられ、SiC膜1bの表面は、何かしらの加工が施された加工面ではなくCVDコーティング等での結晶成長によって得られたそのままの面であるSiC結晶成長面からなり、その膜厚が30μm以上150μm以下であり、SiC被膜の表面にて観察されるSiC結晶が粒径10μm以上のものが150μm×150μm以上大きな任意の面積当り80%以上を占め、その表面の任意の位置について200μm以上の長さで測定した中心線平均粗さRa(JIS−B0601−1982)が1.2μm以上4μm以下になっている。
【0015】
なお、ここで粒径とは、治具1の任意の一表面に対し垂直な方向からSiC被膜を構成する各SiC結晶をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した際のSiC結晶各頂点の外接円の直径をいい、また、加工とは、研磨等の機械的加工あるいはケミカルエッチング等の化学的加工を意味する。また、150μm×150μm以上大きな任意の面積でのSiC結晶の評価は、本発明のSiC結晶の特徴をより明確にするのに必要な観察視野の広さを特定している。
【0016】
治具1に用いられるSiC被覆カーボンを製造するには、予め当該製品形状をSiCよりも熱膨張係数の大きな基材カーボンに賦与し、SiCを少なくとも1回1500℃以上1850℃以下の温度で被覆した後、その表面の少なくとも一部を所定の表面粗さにまで研磨し、その後再度SiCを1500℃℃以上1850℃以下の温度で少なくとも1回被覆する。
【0017】
上記のようにして得られた治具1は、表面がSiCのファセット、結晶軸、格子点(SiC結晶成長)からなる結晶性が高く耐食性に優れ、従来法では達成されないような表面粗さが制御されている。
【0018】
上記表面をファセット、結晶軸、格子点(SiC結晶成長)のみで構成するのは、最表面の構造を熱力学的に最も安定な状態とするためである。ここでSiC膜厚が30μm未満では、SiC膜が薄く、基材との熱膨張係数差による熱変形に耐えられず、破損または変形し、実用に耐えない。一方SiC膜厚が150μmを超えるとSiC膜がほとんど熱変形できず、加熱時にSiC膜にクラックが発生し、実用に耐えない。SiC膜の性状として、10μm以上の粒子が80%以上を占有するとしたのは、SiC膜では粒界とファセットの耐食性が大きく異なり、粒界部を起点として侵食されるのを防ぐためである。10μm未満の粒子ではファセットの面積に対する粒界の割合が比較的高いために、粒界からSiC膜が侵食され易く、この割合が20%を超えると10μm未満の粒子付近を起点としたSiC膜の侵食が、基材近傍まで到達するのに要する時間が短くなり、部材の寿命を短縮する。
【0019】
本発明において、Raを1.2μm以上としたのは、Raが1.2μmより小さいと例えばシリコンウェーハを載置して熱処理した際のSiCとSiの固着を防止するためである。一方、Raを4μm以下としたのは、Raが4μmを超えると、鋭利な凹凸の発生が激しくなるため、ウェーハ裏面に傷(スクラッチ)を与え、スリップを引起すためである。
【0020】
図1に示すように、半導体ウェーハ熱処理用治具1が組込まれ、シリコンウェーハWがウェーハ受部1sに載置されたウェーハ熱処理用装置2を熱処理炉に入れて、熱処理を行なうが、治具1のウェーハ受部1sはその表面のSiC結晶の発達が抑制されて、SiC被膜の表面にて観察されるSiC結晶が粒径10μm以上のものが150μm×150μm以上大きな任意の面積当り80%以上を占め、その表面の任意の位置について200μm以上の長さで測定した中心線平均粗さRaが1.2μm以上4μm以下に制御されているので、半導体ウェーハの裏面に傷が付かず、スリップ発生もない。また、SiCの表面に研磨面、加工面が露出しないので、SiCダストの発生が大幅に抑制され、図4に示す従来の状態のように製品内部の不純物や酸化炉内の不純物がウェーハ表面に凝集してしまうことがなく、高清浄度の熱処理が行なえる。
【0021】
なお、上記実施形態では、半導体ウェーハ熱処理用治具をSi製の半導体ウェーハ熱処理用装置に組込んだ例で説明したが、SiC製等他の材質の半導体ウェーハ熱処理用装置に組込んでも、さらに、本発明に係わる半導体熱処理用部材を半導体ウェーハ熱処理に適するリング状、円板状等種々の形状にして用いても、本発明の効果が得られる。本発明に係わる半導体熱処理用部材を半導体ウェーハ熱処理に適する種々の形状にしたものも本発明の範囲に属する。
【0022】
【実施例】
[試験] 下記のようにSiC膜の条件を変化させた試料を作製し、シリコン製ボートに装着し、ウェーハ受部にシリコンウェーハを載置してArガス雰囲気下1300℃で2時間処理を繰返し、ウェーハ裏面傷、SiCダクト発生および耐用回数について調べた。
【0023】
[試料] (実施例1)1600〜1800℃の温度で20〜0.1トールの減圧に保持された反応室内の反応ゾーンに、ウェーハ受部が形成されたカーボン基材(C源)を配置し、一酸化ケイ素ガス(Si源)を反応室内に導入し、基材表面にSiC膜を形成した。このSiC膜を形成する一つの結晶粒は30〜180μmであった。このサセプタのウェーハ受部をRa0.9μmに研磨し、その後再び1600〜1800℃の温度で20〜0.1トールの減圧に保持された反応室内の反応ゾーンに、上記ウェーハ受部を研磨したSiC被覆カーボンを配置し、一酸化ケイ素ガスを反応室内に導入し、表面にSiC結晶を形成して、SiC被覆カーボンを得た。
なお、実施例及び比較例におけるRaとは、接触式表面粗さ計を用い、JIS−B0601−1982に基づき、算出された中心線平均粗さを意味する。
(実施例2)ウェーハ受部研磨時の表面粗さをRa0.2μmとする以外は実施例1と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。
(実施例3)ウェーハ受部研磨時の表面粗さをRa0.1μmとする以外は実施例1と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。
【0024】
(比較例1)実施例1のSiC被覆カーボンのウェーハ受部表面を研磨してSiC被覆カーボンを得た。
(比較例2)ウェーハ受部研磨時の表面の表面粗さをRa1.4μmとする以外は実施例1と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。
(比較例3)ウェーハ受部研磨時の表面の表面粗さをRa0.04μm(鏡面)とする以外は実施例1と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。
(比較例4)作製時の処理温度を1100〜1400℃にする以外は実施例1と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。なお、このときSiC膜を形成する結晶粒は10μm未満の粒子を15%含んでいた。
(比較例5)SiC膜形成時間を1/4とする以外は実施例2と同様にしてSiC被覆カーボンを得た。なお、このときSiC膜厚は20μmであった。
(比較例6)実施例1の工程を2回繰返して、SiC被覆カーボンを得た。なお、このときSiC膜厚は180μmであった。
【0025】
[結果]
【表1】
Figure 0004350438
【0026】
表1からもわかるように、本発明の範囲内のSiC膜厚、粒径10μm以上のSiC結晶粒子の占有率およびウェーハ受部表面粗さRaを有する実施例1〜3は、いずれもウェーハ裏面傷がなく、SiCダスト発生もなく、さらに、耐用回数が158〜139回と極めて多かった。
【0027】
これに対して、各条件とも本発明の範囲内であるが、研磨面の露出がある比較例1は、SiCダスト発生があり、さらに、耐用回数が実施例1〜3に比べて、32〜22%低下した。
【0028】
ウェーハ受部表面粗さの線粗さが本発明の範囲外(超)である比較例2は、耐用回数が実施例1並に優れているが、ウェーハ裏面に傷が発生した。
【0029】
ウェーハ受部表面粗さの線粗さが本発明の範囲外(未満)である比較例3は、SiCダスト発生があり、さらに、耐用回数が実施例1の60%に低下した。
【0030】
粒径10μm以上のSiC結晶粒子の占有率が本発明の範囲外(未満)である比較例4は、SiCダスト発生があり、さらに、耐用回数が実施例1の51%に低下した。
【0031】
SiC膜厚が本発明の範囲外(未満)である比較例5は、ウェーハ裏面の傷およびSiCダストの発生が共にないが、耐用回数が実施例1の12%(19回)と著しく低下した。
【0032】
SiC膜厚が本発明の範囲外(超)である比較例6は、ウェーハ裏面の傷およびSiCダストが共に発生し、さらに、耐用回数が実施例1の62%に低下した。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係わる半導体熱処理用部材によれば、ウェーハ裏面の傷の発生を防止して半導体ウェーハにスリップを発生させることがなく、かつ高清浄度を必要とする製造工程に適する半導体熱処理用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる半導体熱処理用部材の実施形態が組込まれた半導体ウェーハ熱処理用装置の斜視図。
【図2】本発明に係わる半導体熱処理用部材の実施形態の平面図。
【図3】本発明に係わる半導体熱処理用部材の実施形態の断面図。
【図4】従来のウェーハ熱処理用治具の使用状態を示す概念図。
【符号の説明】
1 治具
1a 基材
1b SiC膜
1s ウェーハ受部
2 ウェーハ熱処理用装置

Claims (1)

  1. カーボン質基材の表面にSiC被膜を形成してなり、シリコンウェーハを載置するウェーハ受部を備えた半導体熱処理用部材であって、
    前記ウェーハ受部のSiC被膜の表面はSiC結晶成長面からなり、前記SiC被膜の厚さが30μm以上150μm以下であり、
    前記SiC被膜の表面にて観察されるSiC結晶が粒径10μm以上のものが150μm×150μm以上大きな任意の面積当り80%以上を占め、かつ、前記SiC結晶成長面の任意の位置での200μm以上の長さで測定した中心線平均粗さRaが1.2μm以上4μm以下であることを特徴とする半導体熱処理用部材。
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