JP4349716B2 - ワイヤレスローカルループシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、WLL(ワイヤレスローカルループ)システムに関する。例えば、加入者回線にPHS(Personal Handyphone System )システムを使用する方式のWLLシステムに適用し得る。
【0002】
【従来の技術】
WLLシステムは、一般に電話網の普及が遅れた地域において電話局から加入者までの電話線を無線で代替えし、電話線を施設する期間・工数・費用を大幅に削減することを目的に導入される。これは、電話局には、アナログ加入者を収容する通常の電話交換機があることが前提である。
【0003】
WLLシステムは、既存のアナログ電話交換設備を変更なしに利用できるように、一般には2ワイヤーの固定電話と同様のインタフェースで接続されることが多い。通常の音声通話においては、電話線を使用した場合と何ら変化の無い利用が可能となってきている。
【0004】
しかし、この加入者がインターネットを利用するなどデータ通信を行う場合には、データ通信の実行速度は9.6Kbps程度に留まり、電話線を利用する場合に比較して明らかに性能に差がでるのを避け得なかった。これは通信信号に対するアナログ/ディジタル変換が多段に繰り返されることに起因している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、WLLシステムを利用する加入者は、音声通話の利用が大半を占めている。しかし、ごく一部の高速データ通信を必要とする加入者がいることやデータ通信の機会の少ない加入者がいることも無視できない。このため、システム全体が高価になることを避けながら、高速データ通信の提供も可能とする仕組みの構築が望まれている。
【0006】
ところで、日本におけるPHS公衆サービスは、64Kbpsによるデータ通信として標準化されており、サービスの提供が実際に始まっている。これは、無線区間における64Kbpsの確保と、基地局がISDN網に接続されていることの2つの条件が満たされることで実現されるものである。
【0007】
従って、かかるサービスをWLLシステムにそのまま適用しようとしても、局側がアナログ交換機に接続されているWLLシステムの場合には、無線区間及びWCS(WLL用基地局装置)/WAC(WLL用アクセス装置)間(ISDNインタフェース)におけるデジタル伝送の特性を生かした高速データ通信サービスを結局のところ活用できないという問題が存在する。
【0008】
特に、WLLシステムをこれから導入しようとする地域では、電気通信網の整備自体が遅れており、ISDNの普及も遅れているのが一般的であり、仮にかかる設備があるとしても十分な加入者を収容できるまでには至っていないため、結局のところ前述のようなサービスの提供を可能とするためには、コスト的にもかなり割高にならざるを得ない状況にある。
【0009】
かくして、本発明においては、通常時はアナログ交換機によるサービスの提供を受けつつも、ユーザから高速データ通信の接続要求があった場合には、ISDN回線並みのデータ通信サービスの提供を実現できる、低コストかつ既存網の改造が少なくて済むWLLシステムを提案しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、宅内にある加入者端末を無線加入者回線に接続する無線システム用加入者装置と、複数の無線加入者回線を収容する基地局装置と、当該基地局装置をアナログ通信網又はディジタル回線に接続する無線システム用アクセス装置とを備えた、音声通話を主要トラフィックとするワイヤレスローカルループシステムに、以下の装置構成を採用する。
【0011】
すなわち、無線システム用加入者装置に、加入者端末が高速データ通信を要求する場合に当該要求を明示する情報を含んだ呼設定信号を無線加入者回線に出力するデータ通信制御手段と、加入者端末がアナログ通信を要求する場合に明示の情報を含まない呼設定信号を無線加入者回線に出力するアナログ電話制御手段とを備えるようにする。
【0012】
また、無線システム用アクセス装置に、基地局装置から入力される呼設定信号に高速データ通信を要求する明示の情報がない場合、主要なトラフィックである音声通話を実現すべく、当該呼設定信号を対応する既存アナログ通信網との接続用加入者線に出力し、明示の情報が含まれる場合、例外的なトラフィックである一部加入者からの高速データ通信を伝送できる程度の容量を有する高速データ回線へ接続されるディジタル回線に出力するスイッチ手段を備えるようにする。無線システム用アクセス装置は、高速データ通信の際、当該通信を行っている加入者に対応するアナログ通信網との接続用加入者線をオフフック状態に制御し、又は、当該通信を行っている加入者に対応するアナログ通信網との接続用加入者線に当該加入者になりすまして発呼し、無料トーキに接続する。
【0013】
このように、ワイヤレスローカルループシステムを構成する無線システム用アクセス装置に、例外的なトラフィックである一部加入者からの高速データ通信を伝送できる程度の容量を有する高速データ回線を接続すると共に、当該高速データ回線を通じた通信と主要なトラフィックである音声通話との区別を可能とする仕組み、すなわちデータ通信制御手段を各加入者の宅内に配置される無線システム用加入者装置のそれぞれに内蔵することにより、高速データ回線が敷設されていないために、又は、全加入者を収容できる程に大容量の高速データ回線が敷設されていないためにアナログ通信網を通じてのデータ通信しか行えなかった地域でも、アナログ通信網を介しないデータ通信サービス、すなわち高速データ通信サービスを享受可能とできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(A)第1の実施形態
(A−1)WLLシステムの構成
図1に、本実施形態に係るWLLシステムの概念構成を示す。当該WLLシステムは、無線通信路を挟んでユーザ側に配置されるシステム部分と、運用者側に配置されるシステム部分との2つに分割することができる。
【0015】
図1の場合、ユーザ側に配置されるシステム部分には、WLL用加入者装置(WSU)と、当該装置に接続されたWLL固定電話機の部分が相当する。図1には、これらの機器がn組設けられている場合を表している。なお、PC(Personal Computer )その他の情報処理端末であってデータ通信を必要とするものに関しては、ユーザが必要に応じてWLL用加入者装置(WSU)に接続する機器であるため、図1の場合、第1のWLL用加入者装置(WSU#1)についてのみ当該装置の接続された状態を表している。
【0016】
WLL用加入者装置(WSU)が本実施形態に特有の構成である。このWLL用加入者装置(WSU)は、WLL固定電話機と一般的なアナログ回線(2Wインタフェース)を介して接続されている。WLL用加入者装置(WSU)は、このアナログ回線を介してアナログ音声信号の送受を行う。
【0017】
また、WLL用加入者装置(WSU)は、PCその他の情報処理端末(電子手帳等の携帯情報端末、データ通信機能を備えた家電機器やゲーム機等を含む。)と一般的なディジタル回線(RS232C、USB等のデータ機器接続用インタフェース)を介して接続されている。WLL用加入者装置(WSU)は、このディジタル回線を介してディジタルデータの送受を行う。
【0018】
もっとも、WLL固定電話機及びPCその他の情報処理端末とWLL用加入者装置(WSU)との接続は、図に示すように常に有線回線を通じた接続である必然性は無く、無線回線を通じた接続である場合もあり得る。なおこの場合には、高速データ通信を必要とする接続要求か音声通話のように低速でも構わない接続要求なのかの識別がWLL用加入者装置(WSU)側で可能となっていれば良い。
【0019】
WLL用加入者装置(WSU)は、入力検出部1と、アナログ電話制御部2と、データ通信制御部3と、無線制御部4と、アンテナ5を主要な構成部として有する。
【0020】
入力検出部1は、入力インタフェースを監視することよって、いずれの端末から接続要求があったかの検出を行う。すなわち、当該要求がアナログ回線への接続を要求する非データ系の要求か、ディジタル回線への接続を要求とするデータ系の要求かの検出を行う。
【0021】
なお、入力検出部1は、接続要求が非データ系の通信であると検出した場合、アナログ電話制御部2との間に通信経路を形成する。これに対し、入力検出部1は、接続要求がデータ系の通信であると検出した場合、データ通信制御部3との間に通信経路を形成する。
【0022】
アナログ電話制御部2は、既存の装置である。従って、アナログ電話制御部2は、高速データ通信を求める呼であることを網側に識別させる明示情報(呼設定要求メッセージ)を呼設定信号中に書き込むようなことはなく、通常通りの処理を行う。
【0023】
データ通信制御部3は、通常の音声通信とは異なる高速データ通信をユーザ(加入者)が求める場合の呼設定機能を提供するために設けられている。すなわち、データ通信制御部3は、高速データ通信を求める呼であることを網側に識別させる明示情報(呼設定要求メッセージ)を呼設定信号中に書き込んで送信するための機能を備えてなる。このデータ通信制御部3によって本実施形態に特有の機能が実現される。
【0024】
無線制御部4は、PHS公衆サービスの規定に従って無線区間の通信を実現する制御部であり、既存の装置が使用される。なお本実施形態では、現在実用化されている64KbpsのPHS公衆サービスを前提として説明を続けるが、より高速なデータ通信を可能とするPHS公衆サービスが実現された場合には当該サービスに適合した制御を実行する制御部を使用すれば良いし、高速データ通信が可能な次世代以降の携帯電話機の制御を実行する制御部を使用することもできる。
【0025】
他方、運用者側に配置されるシステム部分には、WLL用基地局(WCS)と、WLL用アクセス装置(WAC)と、当該WLL用アクセス装置(WAC)にアナログ回線を介して接続されるアナログ交換機やISDN回線を介して接続されるISDN交換機の部分が相当する。
【0026】
中でも重要な装置は、WLL用アクセス装置(WAC)である。WLL用基地局(WCS)、アナログ交換機、ISDN交換機については基本的に既存のものを使用するため説明を省略する。
【0027】
もっとも、WLL用基地局(WCS)に関しては、WLL用アクセス装置(WAC)から受信された呼設定信号中に高速データ通信を要求する明示の情報があるか否かを確認し、その情報をWLL用アクセス装置(WAC)に通知する機能が設けられる点で新規な構成を有する。
【0028】
以下、本実施形態に特有な構成であるWLL用アクセス装置(WAC)について説明する。WLL用アクセス装置(WAC)は、スイッチ部(SW)11と、電話線12と、ISDN用インタフェースプロトコル終端機能部13と、ISDN接続課金機能部14A、14Bを主要な構成部として有する。
【0029】
スイッチ部11は、WLL用基地局(WCS)からの通知に従って、呼設定信号の出力経路の切り替えを実行する。例えば、上りの呼設定信号が通常の音声通話(アナログ信号による通信)を求める場合には電話線12へ送出し、これに対し、高速データ通信(ディジタル信号による通信)を求める場合にはISDN用I/Fプロトコル終端機能部13へ送出する。
【0030】
なお、本実施形態におけるシステムは音声通話を専らとする地域に適用するもののため、当該スイッチ部11に接続される電話線12の本数は、当該WLL用アクセス装置(WAC)が収容するWLL用加入者装置(WSU)(又はユーザ(加入者)端末の数)の数と同じ数だけ接続されている。図1では、WLL用加入者装置(WSU)の数をnとするため、電話線12の本数もn本(WSU#1〜#n)である。当該電話線12はWLL用加入者装置(WSU)と1対1に対応している。
【0031】
因みに、当該電話線12は、通常の固定電話と同等のインタフェース(すなわち、アナログ用局線トランク(COT))を介し既存の公衆交換電話網(PSTN)の加入者交換機に接続されている。従って、アナログ交換機側からは、WLLシステムの加入者と有線システムの加入者の区別は全くなく、同様のサービスの提供がなされる。また、課金なども従来からの方法により処理できるようになっている。かかる構成により、WLL用アクセス装置(WAC)は、通常の音声通話サービスを提供可能としている。
【0032】
これに対し、ISDN用I/Fプロトコル終端機能部13は、WLLシステムの運用地域で必要とされる高速ディジタル通信の需要に見合ったものが設置される。
【0033】
ここで、当該終端機能部13が備えるべき通信能力としては、高速データ通信を要求する全加入者が時を同じくして接続要求を発した場合にも通信能力を最大限に発揮できるだけ備えられていることが望ましい。
【0034】
しかし、本システムの目的が高速データ通信を必要とする一部ユーザ(加入者)をも考慮した経済的なWLLシステムの構築にあることを加味すると、必ずしも最大通信速度を常に保証し得るものである必要は無い。
【0035】
因みに、図1においては、ISDN用I/Fプロトコル終端機能部13を1つのみ表示したが、当該機能部13で同一時刻に終端される回線は1つの場合に限らず、複数回線の場合もあり得る。勿論、想定する回線量に応じてISDN用I/Fプロトコル終端機能部13は複数設けられる。
【0036】
なお、ISDN用I/Fプロトコル終端機能部13には、通常のISDNプロトコルと、無線インタフェース上でのデータ通信用のデータ通信プロトコル(例えば、PIAFS)とを整合するための終端機能が設けられている。
【0037】
当該終端機能部13は、ISDN網上に設置されたISDN交換機とのインタフェースを実現するBRIT(ISDN BRI(Basic Rate Interface)トランク)やPRIT(ISDN PRI(Primary Rate Interface)トランク)に接続される。
【0038】
ここで、ISDN用I/Fプロトコル終端機能部13を用いたISDN通信実行時の課金処理は、ISDN接続課金機能部14A、14Bにて実行される。
【0039】
(A−2)通信動作
続いて、本実施形態に係るWLLシステムによって通信サービスがどのように提供されるかを説明する。もっとも、当該WLLシステムの目的とするところはアナログ通話を基本的な通信態様としながら、一部のユーザ(加入者)に高速データ通信を提供することにあるので、以下ではその点に重点をおいて説明する。
【0040】
(A−2−1)アナログ電話通信
▲1▼まず、ユーザ(加入者)が通常の音声通話を行うべく、WLL固定電話機の発信操作を行った場合、次のような動作が実行される。当該操作に応じた接続要求がアナログ2Wインタフェースを介してWLL用加入者装置(WSU)へ与えられる。この信号は入力検出部1へと与えられる。入力検出部1は、その入力インタフェースから音声通話が求められていると判断し、アナログ電話制御部2に当該接続要求を振り分ける。
【0041】
この後、アナログ電話制御部2では呼設定信号が生成される。当該信号は無線制御部4を通じてアンテナ5に供給され、無線回線を介してWLL用基地局(WCS)へと送信される。このWLLシステム加入者#1(WSU#1)を管轄するWLL用加入者装置(WSU#1)は、受信された呼設定要求に明示の情報があるか否かを確認し、当該要求が音声通話を求めるものかデータ通信を求めるものか判定する。ここでは音声通話であるので、その旨をWLL用アクセス装置(WAC)に通知する。
【0042】
WLL用アクセス装置(WAC)は、その通知に従ってスイッチ部11の切替えを実行し、発呼元であるWLL用加入者装置(WSU#1)用の電話線12に呼設定信号を送出する。かくして、この呼設定信号はアナログ交換機にて交換され、必要に応じて公衆交換電話網を転送されながら目的とする相手先端末へと転送される。その後、相手先端末から応答があると通話が開始され、いずれかの切断要求により通話が終了する。なお、この場合の課金はアナログ交換機側で行われる。
【0043】
▲2▼これに対し、公衆交換電話網(PSTN)に接続された固定電話網からWLLシステム加入者に対する音声通話の接続要求があった場合、局側では通常の有線加入者への通信と同様の手順で信号の転送が実行される。すなわち、該当するWLL用加入者装置(WSU)を管轄するWLL用アクセス装置(WAC)へ呼設定信号の転送が行われる。
【0044】
この信号はスイッチ部(SW)11を通じてWLL用基地局(WCS)へ送られた後、無線回線を通じて相手先であるWLL用加入者装置(WSU)へ送信される。他方、WLL用加入者装置(WSU)は、アンテナ5を介して当該呼設定信号を受信すると、その呼設定信号中に高速データ通信であることを明示する情報が存在しないことを確認することによって非高速データ通信(すなわち、音声通話)であると判定し、WLL固定電話機との間に通信路を設定する。かくして、相手先端末とアナログ電話網を介した通話が可能な状態となり、通話が開始される。そして、いずれかの切断要求により通話が終了する。
【0045】
(A−2−2)高速データ通信
▲1▼続いて、高速データ通信を行う場合の動作を説明する。まず、WLL用加入者装置(WSU)の側から高速データ通信が要求される場合の動作について説明する。この動作の内容を図2に示す。WLL用加入者装置(WSU)は、PCその他の情報処理装置から接続要求があったことをその入力インターフェースの監視結果から判定し、当該接続要求をデータ通信制御部3に振り分ける。
【0046】
ここで、データ通信制御部3は、呼設定信号中に高速データ通信を要求することを明示する情報の書き込みを行う。当該情報の書き込まれた呼設定信号は、無線制御部4、アンテナ5を通じてWLL用基地局(WCS)へ送信される。
【0047】
WLL用基地局(WCS)は、受信した呼設定要求に従って、WLL用アクセス装置(WAC)との間にデータ通信パスを設定する。その際、WLL用基地局(WCS)は、呼設定信号中の明示の情報が含まれているか否かを確認することによって当該要求が音声通話を求めるものかデータ通信を求めるものかを判定する。その後、WLL用基地局(WCS)は、判定結果に応じた通話回路の切り替えを行う。ここでは、当該呼設定信号がデータ通信である旨を明示した呼設定要求(64Kデータ通信)を行う。
【0048】
WLL用アクセス装置(WAC)は、当該呼設定要求に従ってスイッチ部11の切替えを実行し、ISDN用I/Fプロトコル終端機能部13との間に通信パスを設定する。この後、WLL用アクセス装置(WAC)は、ISDN交換機に対して発呼要求(非制限デジタル)を行い、ISDN網との接続を実現する。また、これを契機にISDN接続課金機能部14A(B)による課金が開始される。
【0049】
なお、このISDN網への呼設定完了通知は、WLL用アクセス装置(WAC)からWLL用基地局(WCS)、WLL用加入者装置(WSU)を通じてPCその他の情報処理装置へと転送され、高速データ通信が開始される。勿論、全ての通信は、WLL用加入者装置(WSU)内のデータ通信制御部3を通じて実現される。
【0050】
この後、PCその他の情報処理装置又はISDN網側からの切断要求によってデータ通信が終了する。図2では、PCその他の情報処理装置側から切断要求が発せられた場合を表している。この一連の制御信号は、データ通信制御部3を介して張られたパス上で実現される。
【0051】
▲2▼次に、ISDN網加入者の側からWLLシステム加入者へ高速データ通信の要求が生じた場合の動作について説明する。この動作の内容を図3に示す。この場合、ISDN網加入者は、WLLデータ通信専用の特別な電話番号に(WLLデータ通信加入者の電話番号にサブアドレスを付加して)発呼(非制限デジタル)を行う。この発呼は、WLLデータ通信I/Fを収容するISDN交換機を通じて、WLL用アクセス装置(WAC)に着呼される。
【0052】
WLL用アクセス装置(WAC)では、ISDN呼設定信号中のサブアドレスを用いて、WLLデータ通信加入者を特定し、呼設定信号中にデータ通信であることを明示してWLL用基地局(WCS)に着信要求を発する。WLL用基地局(WCS)はデータ通信であることを呼設定信号から判定し、64Kデータ通信の着信があることをWLL用加入者装置(WSU)に通知する。
【0053】
WLL用加入者装置(WSU)は、呼設定信号から64Kデータ通信と判定し、データ通信制御部3との間に通信パスを設定する。かくして、PCその他の情報処理装置に対する高速データ通信が実現される。
【0054】
この後、PCその他の情報処理装置又はISDN網側からの切断要求によってデータ通信が終了することは前述の場合と同じである。図3では、ISDN交換機側から切断要求が発せられた場合を表している。この一連の制御信号は、データ通信制御部3を介して張られたパス上で実現される。
【0055】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、本実施形態に係るWLLシステムによれば(すなわち、全加入者数を収容するには不十分であるが、高速データ通信需要を満たすには十分な通信帯域によるISDN通信を可能とするISDN用I/Fプロトコル終端機能部13を備えて、ISDN網又はアナログ網(公衆交換網)とWLL用基地局(WCS)との接続を中継するWLL用アクセス装置(WAC)と、高速データ通信機能部3を有するWLL用加入者装置(WSU)とを組み合せたシステムによれば)、既存電話交換設備に特殊な装置を追加することなく、WLLシステム加入者に対してデータ通信サービスを提供することができる。
【0056】
また、かかるWLLシステムの場合には、高速データ通信の需要に応じた容量のISDN回線を整備するだけで良いため、当該システムを経済的に構築できる。このことは、加入者サービスの向上とシステム管理に要する負担の軽減とが求められているシステム管理者にとって非常に有効な選択肢となり得る。
【0057】
(B)第2の実施形態
上述の第1の実施形態では、WLLシステムが構築される地域にISDN網が既に存在する場合におけるシステムについて述べたが、本実施形態ではISDN網を持たない地域で高速データ通信を実現するためのWLLシステムについて述べる。ただし、インターネット又はイントラネットへの接続は可能な地域を前提とする。
【0058】
図4に、本実施形態に係るWLLシステムの概念構成を示す。本実施形態に係るWLLシステムの特徴は、第1の実施形態のようにWLL用アクセス装置(WAC)をISDN網の端末装置とみなすのではなく、ISDN回線を収容する加入者装置とみなす点である。すなわち、本実施形態では、ターミナルアダプタ(TA)又はルータを回線終端装置(DSU)とみなし、これをBRISを通じてWLL用アクセス装置(WAC)に収容する構成を採る。
【0059】
この構成により、本実施形態では、WLL用基地局(WCS)−WLL用アクセス装置(WAC)−BRIS−ターミナルアダプタ(TA)又はルータ間の高速データ伝送を可能とする。
【0060】
なお、本実施形態におけるBRISは、スイッチ部(SW)11の高速データ通信用端子に接続されているものとする。また、ターミナルアダプタ(TA)又はルータには、インターネット又はイントラネット(IPネットワーク)への接続を可能とするための機能、すなわちISDNプロトコルをTCP/IPプロトコルに変換する機能が備えられているものとする。
【0061】
このシステム構成により、ISDN網が設けられていない地域でも第1の実施形態の場合と同様の手順にて高速データ通信が実現可能となる。
【0062】
例えば、WLL用加入者装置(WSU)の側から高速データ通信が要求される場合、呼設定要求には高速データ通信を要求する明示の情報が含まれるため、スイッチ部(SW)11が当該明示の情報に従って呼設定要求をBRIS側に出力する。当該設定要求は、ISDNインタフェースを介してターミナルアダプタ(TA)又はルータへと与えられ、その後、TCP/IPプロトコルにてインターネット又はイントラネット上の相手先へ送信される。因みに、図4ではイーサネット(商標)を通じてインターネット又はイントラネットに接続しているが、これに限られるものではない。
【0063】
一方、インターネット又はイントラネット上の端末からWLLシステム加入者へ高速データ通信の要求が生じた場合、当該端末がWLLデータ通信専用の特別な電話番号に(WLLデータ通信加入者の電話番号にサブアドレスを付加して)発呼するようにしておけば、WLL用アクセス装置(WAC)が、当該サブアドレスを用いてWLLデータ通信加入者を特定し、呼設定信号中にデータ通信であることを明示してWLL用基地局(WCS)に着信要求を発する。その後は第1の実施形態と同様である。
【0064】
なお、上述の説明においては、高速データ通信の場合についてのみ説明したが、通常のアナログ回線を通じた通話も可能なことは勿論である。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る構成のWLLシステムを適用すれば、ISDN網が存在しない地域でも、第1の実施形態と同様の64Kbps相当のデータ通信を実現できる。
【0066】
(C)第3の実施形態
続いて、第3の実施形態を説明する。上述の第1及び第2の実施形態においては、加入者が高速データ通信を実施している間でも、アナログ交換機から見た場合に、WLL用加入者装置(WSU)の加入者が「空き」状態にある(通信を行っていない)ように認識されてしまう。
【0067】
従って、この状態においてアナログ網上の第3者が当該WLL用加入者装置(WSU)に着呼した場合には、アナログ交換機は加入者の呼出動作を行うが、当該WSUは通信中であり、応答できない事象が発生するのを避け得ない。これは、アナログ2Wでの接続のため、WLLシステムからアナログ交換機に対して当該加入者がビジーであることを通知できないためである。
【0068】
このため、発信者は当該WLL用加入者装置(WSU)加入者が応答できないにもかかわらず、RBT(リングバックトーン)を聞かされることになる。そこで、本実施形態においては、かかる事態を回避するため、以下の2つの回避手段を提案する。
【0069】
▲1▼データ通信を行う際、WLL用アクセス装置(WAC)において、アナログ交換機に接続される当該加入者の加入者線をオフフック状態とし、アナログ交換機に加入者ビジーを認識させる。アナログ交換機では、加入者の受話器外しと同様の状態になる。これを、データ通信終了後、復旧することで通常の加入者状態に復帰させる。
【0070】
▲2▼データ通信を行う際、WLL用アクセス装置(WAC)において、アナログ交換機に対して当該加入者の発呼になりすまし、無料トーキに接続する。これをデータ通信終了後、復旧することで通常の加入者状態に復帰させる。
【0071】
かかる手法を適用することにより、WLLシステム加入者が高速データ通信を実施している間に、アナログ網上から発呼した加入者においても当該加入者との通話が行えないことを認識可能とできる。
【0072】
(D)他の実施形態
上述の実施形態においては、PHS方式を用いたWLLシステムを前提とした64Kbpsのデータ通信をISDN接続又はインターネット(若しくはイントラネット)接続する場合について言及したが、WLL用アクセス装置(WAC)内に対向する交換機との接続インタフェースを具備してデータ変換させる機能を設けることにより、他のデジタル方式によるWLLシステムにも適用し得る。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るワイヤレスローカルループシステムによれば、高速データ回線が敷設されていないために、又は、全加入者を収容できる程に大容量の高速データ回線が敷設されていないためにアナログ通信網を通じてのデータ通信しか行えなかった地域でも、アナログ通信網を介しないデータ通信サービス、すなわち高速データ通信サービスを享受可能とできる。
【0074】
また、当該システムにおいては既存の通信網を改造する必要が無いため、低コストで高速データ通信サービスの提供を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。
【図2】WLLシステム加入者側から高速データ通信を要求する発呼が生じた場合のシーケンスフローを示す図である。
【図3】ディジタル通信網側からWLLシステム加入者へ高速データ通信を要求する発呼が生じた場合のシーケンスフローを示す図である。
【図4】第2の実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
1…入力検出部、2…アナログ電話制御部、3…データ通信制御部、4…無線制御部、5…アンテナ、11…スイッチ部、12…WSU…WLL用加入者装置、13…ISDN用I/Fプロトコル終端機能部、14A、14B…ISDN接続課金機能部、WCS…WLL用基地局、WAC…WLL用アクセス装置、COT…アナログ用局線トランク、BRIT…ISDN BRIトランク、BRIS…ISDN BRI加入者回路、PRIT…ISDN PRIトランク。

Claims (6)

  1. 宅内にある加入者端末を無線加入者回線に接続する無線システム用加入者装置と、複数の無線加入者回線を収容する基地局装置と、当該基地局装置をアナログ通信網又はディジタル回線に接続する無線システム用アクセス装置とを備えた、音声通話を主要トラフィックとするワイヤレスローカルループシステムにおいて、
    上記無線システム用加入者装置は、加入者端末が高速データ通信を要求する場合に当該要求を明示する情報を含んだ呼設定信号を無線加入者回線に出力するデータ通信制御手段と、加入者端末がアナログ通信を要求する場合に上記明示の情報を含まない呼設定信号を無線加入者回線に出力するアナログ電話制御手段とを備え、
    上記無線システム用アクセス装置は、基地局装置から入力される呼設定信号に高速データ通信を要求する明示の情報がない場合、主要なトラフィックである音声通話を実現すべく、当該呼設定信号を対応するアナログ通信網との接続用加入者線に出力し、上記明示の情報が含まれる場合、例外的なトラフィックである一部加入者からの高速データ通信を伝送できる程度の容量を有する高速データ回線へ接続される上記ディジタル回線に当該呼設定信号を出力するスイッチ手段を備え、
    上記無線システム用アクセス装置は、高速データ通信の際、当該通信を行っている加入者に対応するアナログ通信網との接続用加入者線をオフフック状態に制御する
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
  2. 宅内にある加入者端末を無線加入者回線に接続する無線システム用加入者装置と、複数の無線加入者回線を収容する基地局装置と、当該基地局装置をアナログ通信網又はディジタル回線に接続する無線システム用アクセス装置とを備えた、音声通話を主要トラフィックとするワイヤレスローカルループシステムにおいて、
    上記無線システム用加入者装置は、加入者端末が高速データ通信を要求する場合に当該要求を明示する情報を含んだ呼設定信号を無線加入者回線に出力するデータ通信制御手段と、加入者端末がアナログ通信を要求する場合に上記明示の情報を含まない呼設定信号を無線加入者回線に出力するアナログ電話制御手段とを備え、
    上記無線システム用アクセス装置は、基地局装置から入力される呼設定信号に高速データ通信を要求する明示の情報がない場合、主要なトラフィックである音声通話を実現すべく、当該呼設定信号を対応するアナログ通信網との接続用加入者線に出力し、上記明示の情報が含まれる場合、例外的なトラフィックである一部加入者からの高速データ通信を伝送できる程度の容量を有する高速データ回線へ接続される上記ディジタル回線に当該呼設定信号を出力するスイッチ手段を備え、
    上記無線システム用アクセス装置は、高速データ通信の際、当該通信を行っている加入者に対応するアナログ通信網との接続用加入者線に当該加入者になりすまして発呼し、無料トーキに接続する
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
  3. 請求項1又は2に記載のワイヤレスローカルループシステムにおいて、上記ディジタル回線はISDN用インタフェースプロトコル終端機能部を介して高速データ回線としてのISDN網に接続される
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
  4. 請求項1又は2に記載のワイヤレスローカルループシステムにおいて、上記ディジタル回線は高速データ回線を通じてIPネットワークに接続される
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のワイヤレスローカルループシステムにおいて、上記無線システム用アクセス装置は、加入者端末が高速データ通信の要求を発した場合の課金機能を備える
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のワイヤレスローカルループシステムにおいて、上記無線システム用アクセス装置は、高速データ回線の接続された網側から基地局装置に収容された加入者を宛先とする高速データ通信の呼設定要求が入力されたとき、当該呼設定要求中のサブアドレスを基に加入者を特定する
    ことを特徴とするワイヤレスローカルループシステム。
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