JP4346562B2 - 液体移送用ポンプ - Google Patents

Description

本発明は、吸込口及び吐出口を備えるシリンダと、シリンダの内部をその軸線に沿う方向に往復駆動可能に設けたプランジャと、シリンダとプランジャとの間隙を封止する膜状封止部材とを備え、プランジャを往復駆動して吸込動作と吐出動作とを交互に行うことにより吸込口から吸込んだ移送対象液を吐出口から吐出する液体移送用ポンプに関する。特に、沈殿物質を含む液体、例えば液晶基板の製造に用いるレジスト液の移送などに好適なポンプに関する。

従来、液晶基板の製造に用いるレジスト液を液晶基板製造装置に供給する手段として、吸込口及び吐出口を備えるシリンダと、シリンダの内部をその軸線に沿う方向に往復駆動可能に設けたプランジャと、シリンダとプランジャとの間隙を封止する封止部材とを備える液体移送用ポンプを使用していた。その液体移送用ポンプでは、封止部材にオーリングを使用していた。しかしオーリングによると、摩耗から生じるパーティクルや液漏れ、または寿命の短さなどの問題が大きかったため、本発明者らは、オーリングに代えて下記非特許文献１に記載の膜状封止部材を使用した液体移送用ポンプを製作した。

図６は下記非特許文献１に記載の膜状封止部材を用いた従来の液体移送用ポンプ１０を示す正面一部断面図である。図６（Ａ）はプランジャ５が下死点にある状態を示し、図６（Ｂ）はプランジャ５が上死点にある状態を示す。

図６に示すように、従来の液体移送用ポンプ１０は、シリンダ２０、プランジャ５及び膜状封止部材６を備える。シリンダ２０の頂部には、吸込口３２０及び吐出口３３０がそれぞれ軸線Ｊ１に平行となるように穿設される。液体移送用ポンプ１０は、立設した状態で使用され、プランジャ５を往復駆動して吸込動作と吐出動作とを交互に行うことにより吸込口３２０から吸込んだレジスト液を吐出口３３０から吐出する。

膜状封止部材６は、可撓性材からなるキャップ状体から構成され（図２参照）、キャップ状体の開口端部６２をシリンダ２０の内周面上に固着させた状態で該キャップ状体の胴部６３によりプランジャ５の上部を被覆する。そしてシリンダ２０とプランジャ５との間隙Ｇで下側に折り返すことにより、断面視Ｕ字形のＵ字形折返し部６１を形成し、このＵ字形折返し部６１により該間隙Ｇを封止する。Ｕ字形折返し部６１は、プランジャ５の往復駆動とともにその駆動方向と同一方向に間隙Ｇを移動する。このときＵ字形折返し部６１は、間隙Ｇを転がるようにして移動するので、摩耗損失が少なくしかも液体や気体の漏洩がほとんどない。

藤倉ゴム工業株式会社製品カタログ ＣＡＴ．Ｎｏ．ＢＦＳ１−０６１

しかしながら、膜状封止部材６は、そのＵ字形折返し部６１が非常に狭いため、この中にレジスト液が滞留しやすい。滞留したレジスト液は、やがてはゲル化したり沈殿となったりして、液晶基板製造装置に供給されるレジスト液が不純物を含むものとなる要因の一つとなる。液晶基板製造装置には、常に純度の高いレジスト液の供給が要求されており、液置換特性の良い液体移送用ポンプ、すなわち液の滞留率が極めて少ない液体移送用ポンプが要求されている。本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、液の滞留率が極めて少ない液置換特性に優れる液体移送用ポンプを提供することを課題とする。

上述の課題を解決するために、請求項１の発明は、吸込口３２及び吐出口３３を備えるシリンダ２と、前記シリンダ２の内部をその軸線Ｊ１に沿う方向に往復駆動可能に設けたプランジャ５と、前記シリンダ２と前記プランジャ５との間隙Ｇを封止する膜状封止部材６とを備え、前記プランジャ５を往復駆動して吸込動作と吐出動作とを交互に行うことにより前記吸込口３２から吸込んだ移送対象液を前記吐出口３３から吐出する液体移送用ポンプ１において、
前記膜状封止部材６は、可撓性材からなるキャップ状体から構成され、該キャップ状体の開口端部６２を前記シリンダ２の内周面上に固着させた状態で該キャップ状体の胴部６３により前記プランジャ５の上部を被覆すると共に、前記シリンダ２と前記プランジャ５との間隙Ｇで折り返して形成されるＵ字形折返し部６１により該間隙Ｇを封止するものであり、
前記吸込口３２は、前記シリンダ２の側面に設けられ、かつ、前記プランジ
ャ５が上死点位置に達したときに前記間隙Ｇが形成される範囲Ｒに設けられている。

請求項２の発明では、前記吸込口３２は、該吸込口３２の軸線Ｊ０を前記シリンダ２の軸線Ｊ１に対して９０度以下の一定角度θ傾斜させて設けられている。
請求項３の発明では、前記吸込口３２は、該吸込口３２の軸線Ｊ０を前記シリンダ２の軸線Ｊ１と直交する直線Ｊ２に対して９０度未満の一定角度φ傾斜させて設けられている。

請求項４の発明は、前記シリンダ２の軸線Ｊ１を鉛直軸に平行となるように設置して使用される。

本発明によると、プランジャ５が下方に駆動されたとき、吸込口３２からレジスト液が噴出する。吸込口３２がシリンダ２の側面に設けられているため、この噴出流は、シリンダ２の内壁に沿って旋回流を形成しながら流れ落ちる。そしてＵ字形折返し部６１内を攪拌して洗浄するような循環流となる。これにより、Ｕ字形折返し部６１におけるレジスト液の滞留がなくなり液置換特性が良くなる。このように、液の滞留率が極めて少ない液置換特性に優れる液体移送用ポンプが提供される。

以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図１は本発明に係る液体移送用ポンプ１を示す正面一部断面図であり、図１（Ａ）はプランジャ５が下死点にある状態を示し、図１（Ｂ）はプランジャ５が上死点にある状態を示す。図２は膜状封止部材６の外観を示す斜視図、図３は本発明に係る液体移送用ポンプを示す平面一部断面図である。

図１に示すように、本発明に係る液体移送用ポンプ１は、シリンダ２、プランジャ５及び膜状封止部材６を備える。

シリンダ２は、耳部３１を備える略椀形の上側カバー体３と、これと同様に耳部４１を備える略椀形の下側カバー体４とからなる。上側カバー体３と下側カバー体４とは、それぞれの耳部３１と耳部４１との間に膜状封止部材６の開口端部６２を挟持させた状態で該耳部３１,４１同士をボルト４２により締め付けることで一体化してシリンダ本体を形成する。

上側カバー体３には、吸込口３２と吐出口３３が穿設される。吸込口３２は、上側カバー体３の側面に穿設される。また、プランジャ５が上死点位置に達したときに間隙Ｇが形成される範囲Ｒ内に穿設される。更にその軸線Ｊ０をシリンダ２の軸線Ｊ１に対して一定角度θ傾斜させて穿設される。角度θは９０度以下である。それと同時に吸込口３２は、図３に示すように、その軸線Ｊ０をシリンダ２の軸線Ｊ１と直交する直線Ｊ２に対して一定角度φ傾斜させて穿設される。吐出口３３は、上側カバー体３の頂部に、軸線Ｊ１と平行な方向に穿設される。なお、方向切替弁等を設け吸込口３２が吐出口を兼ねる形態とすることも可能である。

下側カバー体４には、真空引き口４３とロッド穴４４が穿設される。真空引き口４３は、下側カバー体４の下方位置において真空ポンプ７３に連接する。真空ポンプ７３を通じてシリンダ２の下室内を真空減圧することにより、ヘッド５１の外周面及びシリンダ２の内周面と膜状封止部材６との密着性が良くなると共に、上室への気体の混入をより一層効果的に防止することができる。ロッド穴４４は、ロッド５３が摺動可能に貫通するように設けられた貫通穴であり、下側カバー体４の底部に穿設される。

プランジャ５は、ヘッド５１、座板５２及びロッド５３を備える。膜状封止部材６により被覆されるヘッド５１は、座板５２を介してボルト５４によりロッド５３と連結する。ロッド穴４４を貫通したロッド５３は、その他端を、図示しない駆動装置に連結する。これによりプランジャ５はシリンダ２の内部を往復動作可能となる。

膜状封止部材６は、可撓性材からなるキャップ状体から構成される。可撓性材として、例えば強力なポリエステル布の上にゴムを被覆したものが使用され、膜状封止部材６は次のようにして間隙Ｇを封止する。すなわち、その開口端部６２をシリンダ２の内周面上に固着させた状態で該キャップ状体の胴部６３によりプランジャ５の上部を被覆する。そしてシリンダ２とプランジャ５との間隙Ｇで下側に折り返すことにより、断面視Ｕ字形のＵ字形折返し部６１を形成し、このＵ字形折返し部６１により間隙Ｇを封止する。

このような構成を備える液体移送用ポンプ１は、立設した状態で使用され、プランジャ５を往復駆動して吸込動作と吐出動作とを交互に行うことにより吸込口３２から吸込んだレジスト液を吐出口３３から吐出する。

プランジャ５が下方に駆動されたとき、吸込口３２からは、チェック弁７１を介して供給されたレジスト液が噴出する。この噴出流は、シリンダ２の内壁に沿って旋回流を形成しながら流れ落ちる。そしてＵ字形折返し部６１内を攪拌して洗浄するような循環流となる。これにより、Ｕ字形折返し部６１におけるレジスト液の滞留がなくなり液置換特性が良くなる。

シリンダ２内に流入したレジスト液は、プランジャ５が上方に駆動されることにより加圧されて吐出口３３から吐出され、チェック弁７２を介して液晶基板製造装置に供給される。

Ｕ字形折返し部６１は、プランジャ５の往復駆動とともにその駆動方向と同一方向に間隙Ｇを移動する。このときＵ字形折返し部６１は、間隙Ｇを転がるようにして移動するので、摩耗損失が少なくしかも液体や気体の漏洩がほとんどない。

次に、本発明に係る他の形態の液体移送用ポンプ１Ａについて説明する。図４は本発明に係る他の形態の液体移送用ポンプ１Ａを示す平面一部断面図である。

図４に示すように、液体移送用ポンプ１Ａは、液体移送用ポンプ１における上側カバー体３に代えて上側カバー体３Ａを備える。上側カバー体３Ａ以外の構成については液体移送用ポンプ１と同一であるため、それらの説明は省略する。

上側カバー体３Ａは、その中心に対して対称な位置に、液体移送用ポンプ１の吸込口３２と同一形状の吸込口３２Ａを一つ備える。この構成とすることにより、吸込動作時に吸込口３２，３２Ａから噴出するレジスト液は、図４の矢印Ｗ２のように、それぞれ同一方向に旋回するので、吸込口が一つの場合に比べて旋回流の速度が増し、上述の作用効果を更に高めることができる。

また、本発明に係る更に他の形態の液体移送用ポンプ１Ｂについて説明する。図５は本発明に係る更に他の形態の液体移送用ポンプ１Ｂを示す一部断面図である。図５（Ａ）は正面一部断面図を示し、図５（Ｂ）は平面一部断面図を示す。

図５に示すように、液体移送用ポンプ１Ｂは、液体移送用ポンプ１における上側カバー体３に代えて上側カバー体３Ｂを備える。上側カバー体３Ｂ以外の構成については液体移送用ポンプ１と同一であるため、それらの説明は省略する。

上側カバー体３Ａは、その側面に吸込口３２Ｂを備える。その軸線Ｊ０はシリンダの軸線Ｊ１に対して９０度とされる。また、シリンダの軸線Ｊ１と直交する直線Ｊ２に対しては０度とされる。この構成とすることにより、吸込動作時に吸込口３２Ｂから噴出したレジスト液は、図５（Ｂ）の矢印Ｗ３のように、両側に分かれて、シリンダの内壁に沿って旋回流を形成しながら流れ落ちる。そして、液体移送用ポンプ１の場合と同様にＵ字形折返し部６１の中が攪拌されるため液置換特性が良くなる。

以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上に開示した実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。

本発明に係る液体移送用ポンプを示す正面一部断面図である。 膜状封止部材の外観を示す斜視図である。 本発明に係る液体移送用ポンプを示す平面一部断面図である。 本発明に係る他の形態の液体移送用ポンプを示す平面一部断面図である。 本発明に係る更に他の形態の液体移送用ポンプを示す一部断面図である。 従来の液体移送用ポンプを示す正面一部断面図である。

符号の説明

１ 液体移送用ポンプ
１Ａ 液体移送用ポンプ
１Ｂ 液体移送用ポンプ
２ シリンダ
５ プランジャ
６ 膜状封止部材
３２ 吸込口
３３ 吐出口
６１ Ｕ字形折返し部
６２ 開口端部
６３ 胴部
Ｇ 間隙
Ｊ０ 軸線
Ｊ１ 軸線
Ｊ２ 直線
θ 角度
φ 角度
Ｒ 範囲

Claims (4)

1. 吸込口及び吐出口を備えるシリンダと、前記シリンダの内部をその軸線に沿う方向に往復駆動可能に設けたプランジャと、前記シリンダと前記プランジャとの間隙を封止する膜状封止部材とを備え、前記プランジャを往復駆動して吸込動作と吐出動作とを交互に行うことにより前記吸込口から吸込んだ移送対象液を前記吐出口から吐出する液体移送用ポンプにおいて、
   前記膜状封止部材は、可撓性材からなるキャップ状体から構成され、該キャップ状体の開口端部を前記シリンダの内周面上に固着させた状態で該キャップ状体の胴部により前記プランジャを被覆すると共に、前記シリンダと前記プランジャとの間隙で下側に折り返して形成されるＵ字形折返し部により該間隙を封止するものであり、
   前記吸込口は、前記シリンダの側面に設けられ、かつ、前記プランジャが上死点位置に達したときに前記間隙が形成される範囲内に設けられていることを特徴とする液体移送用ポンプ。
2. 前記吸込口は、該吸込口の軸線を前記シリンダの軸線に対して９０度以下の一定角度傾斜させて設けられている請求項１に記載の液体移送用ポンプ。
3. 前記吸込口は、該吸込口の軸線を前記シリンダの軸線と直交する直線に対して９０度未満の一定角度傾斜させて設けられている請求項１又は請求項２のいずれかに記載の液体移送用ポンプ。
4. 前記シリンダの軸線を鉛直軸に平行となるように設置して使用される請求項１から請求項３のいずれかに記載の液体移送用ポンプ。

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