しかしながら、このように従来の移動通信システムにおけるデータリンク伝送制御方法では、移動局の移動に関わらず自動再送要求制御を含んだデータリンク伝送を一連のパケット伝送が開始された基地局2のデータリンク伝送制御部3で一括して行うため、移動局の移動に伴いデータリンク伝送制御後のパケットの基地局間転送が増加するためパケットの伝送遅延時間は増大する。そして該伝送遅延時間の増大によりスループットが低下する問題があった。
このように、従来の移動通信システムにおけるデータリンク伝送制御方法では、移動局が他の基地局のセル内に移動しても1つの基地局が自動再送要求制御を含んだデータリンク伝送制御を行うことで移動局の移動性に対応できるが、伝送遅延時間の増大によりスループットが低下する問題があった。
また、移動通信システム内に、ネットワーク内の交換機の負荷軽減を図るべく、再送制御を行う回線制御局を基地局とは別に設ける技術(例えば、上記の特許文献1にも記載)も知られている。
ところが、この技術では、ネットワークから到達するパケットは、まず始めに回線制御局に到着し、該回線制御局により複製されて、配布先の基地局に配布される。配布先の基地局は、パケットを送信するべき基地局を指定する信号を、移動局から受信している。そして、配布先の基地局は、該信号に基づいて自局が送信すべきか否かを判断し、自局が送信すべきと判断した場合、移動局に対し該パケットを送信する。この時に、移動局が受信したパケットに誤りが発生した場合、移動局は、基地局経由で回線制御局に対して該パケットの再送を要求する。このように、基地局ではなく回線制御局がパケットを再送するため、再送までの遅延時間が増大し、回線制御局と基地局との間のトラヒック量が増大してしまうという問題があった。
一方、上記特許文献1に記載のシステムでは、ハンドオーバ制御量は減少するものの、1回のハンドオーバ及び再送にかかる時間は依然として従来と変わりが無いか或いは余分に時間を要するため、通信が中断するという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、移動局の移動に対応しながら、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができるデータリンク伝送制御方法、移動通信システム及びデータリンク伝送制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るデータリンク伝送制御方法は、移動局と複数の基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うデータリンク伝送制御方法であって、自動再送要求を送信する基地局は、自動再送要求を送信する基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信し、移動局が通信を行っている基地局が他にある場合に、当該基地局に対して複製したパケットを送信し、該移動局は、制御基地局識別情報に基づいて、自動再送要求を送信する基地局を判断し、基地局は、制御基地局識別情報と転送するパケットとをカプセル化し、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、制御基地局識別情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送し、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが制御基地局識別情報を含んで構成されていると判断することを特徴とする。
また、本発明に係る移動通信システムは、移動局と複数の基地局から構成され、パケットにより情報の送受信を行う移動通信システムであって、基地局は、移動局との間でパケットの送受信を行うため自動再送要求制御を行う基地局伝送制御手段と、自動再送要求を送信する基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信する送信手段と、を有し、移動局は、制御基地局識別情報に基づいて、自動再送要求を送信する基地局を認識して、基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動局伝送制御手段と、通信相手となる基地局との接続を要求する接続要求手段とを有し、送信手段は、制御基地局識別情報と転送するパケットをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、制御基地局識別情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送するカプセル化パケット転送手段と、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが制御基地局識別情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を含んで構成され、移動局が通信を行っている基地局が他にある場合に、当該基地局に対して複製したパケットを送信することを特徴とする。
また、本発明に係るデータリンク伝送制御装置は、移動局との間でパケットにより情報の送受信を行う基地局に搭載されたデータリンク伝送制御装置であって、移動局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を行う基地局伝送制御手段と、自動再送要求を送信する基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信する送信手段と、を有し、送信手段は、制御基地局識別情報と転送するパケットとをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、制御基地局識別情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送するカプセル化パケット転送手段と、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが制御基地局識別情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を有し移動局が通信を行っている基地局が他にある場合に、当該基地局に対して複製したパケットを送信することを特徴とする。
この場合、データリンク伝送制御を行う基地局が、データリンク伝送制御情報に代わり、該データリンク伝送制御を行う基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信することで、移動局は、制御基地局識別情報に基づいて、前記データリンク伝送制御を行う基地局を認識することができる。これにより、移動局は当該データリンク伝送制御を行う基地局との間で、パケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御(例えば、新たな基地局との接続要求等)を行うことができる。このように、移動局と基地局が、データリンク伝送制御情報に代わり、制御基地局識別情報を用いてデータリンク伝送制御を行うことにより、送受信される制御情報のデータ量を削減することができ、ネットワークトラヒック量を軽減することができる。更に、これらの発明では、基地局において、転送されてきたカプセル化パケットが制御基地局識別情報を含むか否かを確実に判断することができ、制御基地局識別情報に基づく制御を円滑に実行することが可能となる。
ところで、本発明は、以下のような態様を採用することもできる。
本発明に係るデータリンク伝送制御方法は、移動局と複数の基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うデータリンク伝送制御方法であって、前記移動局が一の基地局との接続中に他の基地局との接続を一の基地局に要求した場合、当該一の基地局は、データリンク伝送制御情報を前記他の基地局に転送する態様も採用しうる。
本発明に係る移動通信システムは、移動局と複数の基地局から構成され、パケットにより情報の送受信を行う移動通信システムであって、前記移動局は、前記基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動局伝送制御手段と、通信相手となる基地局との接続を要求する接続要求手段とを有し、前記基地局は、前記移動局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う基地局伝送制御手段と、他の基地局に対してデータリンク伝送制御情報を転送する転送手段とを有し、前記基地局伝送制御手段は、前記移動局からの他の基地局との接続要求があった場合、当該他の基地局にデータリンク伝送制御情報を前記転送手段により転送させる態様も採用しうる。
また、本発明に係るデータリンク伝送制御装置は、移動局との間でパケットにより情報の送受信を行う基地局に搭載されたデータリンク伝送制御装置であって、パケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御に関するデータリンク伝送制御情報を、他の基地局に対して転送する転送手段と、前記移動局からの他の基地局との接続要求があった場合、当該他の基地局に前記データリンク伝送制御情報を前記転送手段により転送させる基地局伝送制御手段と、を有する態様も採用しうる。
これらデータリンク伝送制御方法に係る発明、移動通信システムに係る発明、データリンク伝送制御装置に係る発明は、技術的思想としては同一であるため、以下、データリンク伝送制御方法に係る発明により、作用・効果を説明する。
上記データリンク伝送制御方法は、移動局と複数の基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う方法であるが、移動局が一の基地局との接続中に他の基地局との接続を要求した場合、一の基地局は、パケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御に関するデータリンク伝送制御情報を他の基地局に転送する。これにより、移動局の移動に応じて、一連のデータリンク伝送制御情報が、データリンク伝送制御を実行する基地局間で転送され、新たな基地局がデータリンク伝送制御を引継いで未到達確認のパケットのみの再送を行う。
このため、従来のように一の基地局が継続してデータリンク伝送制御を行う場合に比べ、パケットの基地局間転送の増加によるパケットの伝送遅延時間の増大を回避できるので、移動局の移動に対応しながら、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができる。
このようなデータリンク伝送制御方法では、一の基地局は、データリンク伝送制御情報を、前記他の基地局への前記移動局宛のパケットの転送タイミングと同時に他の基地局に転送しても良いし、前記移動局宛のパケットの転送タイミングと異なるタイミングで他の基地局に転送しても良い。
即ち、上記移動通信システムにおいては、基地局に設けた転送手段が他の基地局に対して前記移動局宛のパケットも転送し、前記基地局伝送制御手段は、前記データリンク伝送制御情報を、前記他の基地局への前記移動局宛のパケットの転送タイミングと同時に又は異なるタイミングで、前記他の基地局に前記転送手段により転送させるよう構成することができる。また、上記データリンク伝送制御装置においては、転送手段が他の基地局に対して前記移動局宛のパケットも転送し、前記基地局伝送制御手段は、前記データリンク伝送制御情報を、前記他の基地局への前記移動局宛のパケットの転送タイミングと同時に又は異なるタイミングで、前記他の基地局に前記転送手段により転送させるよう構成することができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、転送元となる一の基地局は、移動局からの他の基地局との接続要求に基づき、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケットとデータリンク伝送制御情報とを他の基地局に転送した後に当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットを当該他の基地局に転送する、ことが望ましい。また、上記移動通信システムでは、基地局に設けた基地局伝送制御手段が、移動局からの他の基地局との接続要求に基づき、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケットとデータリンク伝送制御情報とを他の基地局に転送させた後に当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットを当該他の基地局に前記転送手段により転送させるよう構成することが望ましい。また、上記データリンク伝送制御装置では、基地局伝送制御手段は、前記移動局からの他の基地局との接続要求に基づき、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケットとデータリンク伝送制御情報とを他の基地局に転送させた後に当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットを当該他の基地局に前記転送手段により転送させるよう構成することが望ましい。
この場合、他の基地局に転送した後に一の基地局(転送元の基地局)で受信された当該移動局宛のパケットが、もれなく当該他の基地局に転送されるので、基地局間でのデータリンク伝送制御の引き継ぎをより確実に実行でき、データリンク伝送制御の信頼性を向上させることができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、転送先となる他の基地局は、移動局からの当該他の基地局との接続要求があった直後から、一の基地局より、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケット及びデータリンク伝送制御情報を受信するまでの間に、当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットをメモリに蓄積する、ことが望ましい。また、上記移動通信システムでは、基地局に設けた基地局伝送制御手段は、移動局からの当該基地局との接続要求があった直後から、以前に接続していた基地局より、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケット及びデータリンク伝送制御情報を受信するまでの間に、当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットをメモリに蓄積するよう構成することが望ましい。また、上記データリンク伝送制御装置では、基地局伝送制御手段は、当該データリンク伝送制御装置が搭載された基地局との接続要求が、前記移動局からあった直後から、以前に接続していた基地局より、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケット及びデータリンク伝送制御情報を受信するまでの間に、当該移動局宛のパケットを受信した場合、受信したパケットをメモリに蓄積するよう構成することが望ましい。
この場合、転送先となる他の基地局において、移動局からの当該他の基地局との接続要求があった直後から、一の基地局より、当該移動局に関するデータリンク伝送制御情報、又は当該移動局宛のパケット及びデータリンク伝送制御情報を受信するまでの間に、受信された当該移動局宛のパケットは、廃棄されることなくメモリに蓄積されるので、基地局間でのデータリンク伝送制御の引き継ぎをより確実に実行でき、データリンク伝送制御の信頼性を向上させることができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、転送先となる他の基地局は、移動局からのパケットの再送要求を受信し且つ一の基地局から当該移動局宛のパケットを受信していない場合、当該一の基地局に対し当該移動局宛のパケットの転送要求を送信する、ことが望ましい。また、上記移動通信システムでは、基地局に設けた基地局伝送制御手段が、移動局からのパケットの再送要求を受信し且つ以前に接続していた基地局から当該移動局宛のパケットを受信していない場合、当該以前に接続していた基地局に対し当該移動局宛のパケットの転送要求を送信するよう構成することが望ましい。また、上記データリンク伝送制御装置では、基地局伝送制御手段は、前記移動局からのパケットの再送要求を受信し且つ以前に接続していた基地局から当該移動局宛のパケットを受信していない場合、当該以前に接続していた基地局に対し当該移動局宛のパケットの転送要求を送信するよう構成することが望ましい。
この場合、転送先となる他の基地局において、移動局からのパケットの再送要求を受信したものの、転送元の一の基地局から当該移動局宛のパケットを受信していない場合、当該一の基地局に対し当該移動局宛のパケットの転送要求を送信するので、当該移動局宛のパケットをより早く転送させることができ、引継ぎに係る処理の迅速化によりスループットを増大させることができる。
ところで、一の基地局から他の基地局へのデータリンク伝送制御の引継ぎは、移動局宛パケットとデータリンク伝送制御情報とを同時に転送する態様に限定されるものではなく、以下のように段階的に転送してもよい。即ち、データリンク伝送制御方法では、一の基地局は、移動局からの他の基地局との接続要求があった場合、当該移動局に対するデータリンク伝送制御情報のみ転送し、当該他の基地局から当該移動局宛パケットの転送要求を受信した場合、当該他の基地局に当該移動局宛のパケットを転送するようにしてもよい。また、移動通信システムでは、基地局に設けた基地局伝送制御手段が、移動局からの他の基地局との接続要求があった場合、当該移動局に対するデータリンク伝送制御情報のみ転送させ、当該他の基地局から当該移動局宛パケットの転送要求を受信した場合、当該他の基地局に当該移動局宛のパケットを転送させるよう構成してもよい。また、データリンク伝送制御装置では、基地局伝送制御手段は、前記移動局からの他の基地局との接続要求があった場合、当該移動局に対するデータリンク伝送制御情報のみ転送させ、当該他の基地局から当該移動局宛パケットの転送要求を受信した場合、当該他の基地局に当該移動局宛のパケットを転送させるよう構成してもよい。
このように、一の基地局と他の基地局との間でやりとりし、転送先の他の基地局から当該移動局宛パケットの転送要求を受信したことをもって、一の基地局から他の基地局へ当該移動局宛のパケットを転送することで、データリンク伝送制御の引継ぎをより確実に実行することができる。
なお、パケットの転送は、パケット単位のみならず、1つのパケットを分割したブロック単位で行うようにすることが望ましい。ブロック単位での転送を可能とすることで、基地局間での未到達のブロックのみの再送が可能となり、パケット転送量を削減できるという利点がある。
ところで、上記データリンク伝送制御方法では、一の基地局は、データリンク伝送制御情報と転送するパケットとをカプセル化し、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、データリンク伝送制御情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送し、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含んで構成されていると判断することが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、転送手段は、データリンク伝送制御情報と転送するパケットとをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、前記データリンク伝送制御情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送するカプセル化パケット転送手段と、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を含んで構成とすることが望ましい。
また、上記データリンク伝送制御装置では、転送手段は、データリンク伝送制御情報と転送するパケットとをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、前記データリンク伝送制御情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送するカプセル化パケット転送手段と、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を含んで構成とすることが望ましい。
これらの発明では、一の基地局において、転送されてきたカプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含むか否かを確実に判断することができ、データリンク伝送制御情報に基づく制御を円滑に実行することが可能となる。
ところで、本発明は、以下のような上記とは別の態様を採用することもできる。
本発明に係るデータリンク伝送制御方法は、移動局と複数の基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うデータリンク伝送制御方法であって、一の基地局が、前記移動局宛てのパケットに該パケットを特定するための識別情報が付加されたパケットを、蓄積するとともに複製し、前記一の基地局が、他の基地局に該複製したパケットを配布し、前記他の基地局が、該配布されたパケットを蓄積し、前記一の基地局を含む1つ又は複数の基地局が、前記識別情報が付加されたパケット又は該配布されたパケットを前記移動局へ送信する態様も採用しうる。
即ち、この方法では、複数の基地局のうち一の基地局が、移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報(例えば、一意の番号、文字、記号又はこれらの組合せなど)が付加されたパケットを、蓄積するとともに複製し、他の基地局に該複製したパケットを配布する。なお、当該識別情報が付加されたパケットについては、一の基地局が自局でパケットに識別情報を付加してもよいし、予め識別情報が付加されたパケットを他の基地局から受信してもよい。
そして、他の基地局が、該配布されたパケットを蓄積する。その後、一の基地局を含む1つ又は複数の基地局が、識別情報が付加されたパケット又は該配布されたパケットを移動局へ送信する。このように、パケットの配布を行う回線制御局を基地局とは別に設けずに、各基地局においてパケットを蓄積して、1つ又は複数の基地局がパケットを移動局へ送信するため、ネットワーク内のトラヒックを低減することができ、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、基地局(一の基地局と他の基地局を含む)が、前記パケットに対するタイマーのタイムアウトにより前記パケットを削除するか、前記パケットと同一のパケットが前記移動局に到達した旨の通知により前記パケットを削除するか、又は、削除すべきパケットを特定するための識別情報の通知に基づいて、前記識別情報に対応するパケットを削除することが望ましい。これにより、基地局において蓄積中のパケットの削除処理を円滑化することができる。
このとき、一の基地局が、前記削除すべきパケットを特定するための識別情報を前記他の基地局に通知する際には、該一の基地局がパケットを削除する度に該識別情報を通知する第1の方法、所定時間内において最後に削除されたパケットの識別情報を通知する第2の方法、又は所定の規則に基づき定められる特定のパケットが削除されたときに該パケットの識別情報を通知する第3の方法のうち1つの方法又は複数の方法の組合せを用いることが望ましい。
また、上記データリンク伝送制御方法では、一の基地局が、新たな基地局をパケット配布先の基地局とする旨の前記移動局からの要求を受信した際に、該一の基地局にて蓄積中の、前記識別情報が付加されたパケットを複製し、複製したパケットを新たな基地局に配布することが望ましい。これにより、新たな基地局は、一の基地局に蓄積されている識別情報が付加されたパケットを得ることができ、移動局からの要求に沿ってパケット配布先の基地局として動作することが可能となる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、他の基地局が、該他の基地局をパケット配布先の基地局から除外する旨の前記移動局からの要求を受信した際に、該他の基地局にて蓄積中の前記移動局宛てのパケットを削除することが望ましい。これにより、パケット配布先の基地局から除外される基地局では、蓄積中の該移動局宛てのパケットが削除され、不要となったパケットの整理を迅速に行うことができる。なお、上記他の基地局は、除外する旨の移動局からの要求を、該移動局から直接受信してもよいし、一の基地局経由で受信してもよい。
また、上記データリンク伝送制御方法では、一の基地局、他の基地局、又はこれら両方が、移動局宛てのパケットを受信して蓄積した際に、該パケットを蓄積していることを該移動局に通知し、該移動局が、該通知を受信した後に、通知した基地局の中から1つの基地局を選択し、該基地局にパケットの送信を要求し、要求された基地局が該パケットを送信することが望ましい。即ち、一の基地局のみならず、他の基地局も該移動局宛のパケットを蓄積するため、該パケットを蓄積していることを移動局に通知することで、移動局が選択してパケット送信を要求した1つの基地局から移動局への該パケットの送信が実現される。
なお、このとき、一の基地局、他の基地局、又はこれら両方が、移動局宛てのパケットを複数蓄積しているときに該移動局から送信要求を受信した場合、該移動局に該パケットを送信すると共に、該移動局宛てのパケットを複数蓄積している旨を該移動局へ通知することが望ましい。これにより、パケットを蓄積していることの移動局への通知をまとめて行うことが可能となり、該通知処理の負荷を軽減することができる。例えば、基地局から送信するパケットにピギーバックで、以降のパケットがあることを通知する態様が考えられる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、移動局が、自局宛のパケットを送信させる基地局を変更する場合、変更元の基地局に、以後送信を中止するよう通知するとともに、変更先の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求する旨と送信対象の最初のパケットの識別情報とを通知することが望ましい。これにより、変更元の基地局との通信が中止され、変更先の基地局から移動局へのパケット送信が、移動局の要求に従い、送信対象の最初のパケットの識別情報に対応するパケットから再開され、移動局宛のパケットを送信させる基地局の変更を円滑に行うことができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定し、移動局が、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択し、移動局が、選択された一の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求することが望ましい。これにより、例えば受信品質が最も高い基地局などを一の基地局として選択することが可能となり、該選択された基地局から移動局へのパケットの送信を良好な状態で実現することができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定し、移動局が、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択し、移動局が、選択した一の基地局に各基地局についての受信品質を通知し、該一の基地局が、各基地局についての受信品質に基づいて、該一の基地局から配布予定のパケットを前記移動局に送信させるか否かを、他の基地局の各々について判断し、該一の基地局が、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示することが望ましい。これにより、各基地局についての受信品質に基づく上記判断結果に応じた他の基地局の各々への動作指示に従い、他の基地局が、送信動作又は送信回避動作を適切に行うことが可能となる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、移動局が、複数の基地局から同一のパケットをそれぞれ受信する際に、該パケットに対するダイバーシチ受信を行うことが望ましく、受信品質を向上させることができる。
また、上記データリンク伝送制御方法では、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定し、前記移動局又は各基地局が、各基地局についての受信品質に基づいて、通信状態を遷移すべき基地局に、通信状態の遷移を要求することが望ましい。これにより、時間平均的な受信品質に応じた適切な通信状態の遷移要求が移動局から発せられ、基地局は適切な通信状態に遷移することが可能となる。
なお、通信状態は、移動局に対しパケットの送受信を行っていない第1の状態と、移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを移動局に送信することができる第2の状態と、移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを複製し、複製後のパケットを配布するとともに、該付加後のパケットを送信することができる第3の状態と、第3の状態にある基地局から、複製されたパケットを受信し、複製パケットを移動局に送信することができる第4の状態とを含んで構成とすることが望ましい。
また、上記データリンク伝送制御方法では、一の基地局は、識別情報と配布するパケットとをカプセル化し、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、前記識別情報の長さと配布するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを配布し、配布されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、配布するパケットのヘッダに記録された該配布するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが識別情報を含んで構成されていると判断することが望ましい。この場合、基地局において、配布されてきたカプセル化パケットが識別情報を含むか否かを確実に判断することができ、識別情報に基づく制御を円滑に実行することが可能となる。
ところで、上記データリンク伝送制御に係る発明は、以下の移動通信システムの発明として捉えることもできる。これらの発明は、技術的思想としては同一であるため、同様の作用・効果を奏する。
即ち、本発明に係る移動通信システムは、移動局と複数の基地局から構成され、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムであって、前記基地局が、前記移動局宛てパケットに該パケットを特定するための識別情報が付加されたパケットを複製する複製手段と、複製されたパケットを他の基地局に配布する配布手段と、自局にて前記識別情報が付加されたパケット又は他の基地局から配布されたパケットを蓄積する蓄積手段と、前記識別情報が付加されたパケット又は前記配布されたパケットを前記移動局へ送信する送信手段と、を備えた態様も採用しうる。
このとき、本発明に係る移動通信システムでは、基地局が、前記蓄積手段により蓄積された前記パケットを削除する削除手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
ここでは、基地局が、該基地局がパケットを削除する度に該削除されたパケットの識別情報を通知する第1の方法、所定時間内において最後に削除されたパケットの識別情報を通知する第2の方法、又は所定の規則に基づき定められる特定のパケットが削除されたときに該パケットの識別情報を通知する第3の方法のうち1つの方法又は複数の方法の組合せによって、前記削除すべきパケットの識別情報を他の基地局に通知する削除パケット通知手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、基地局が、移動局からのパケットの再送要求を受信した場合に、該再送要求に応じてパケットを再送するパケット再送手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、基地局が、移動局宛てのパケットを受信して蓄積した場合に、該パケットを蓄積していることを該移動局に通知する蓄積通知手段とをさらに備え、前記送信手段が、該移動局からの要求に応じて該移動局にパケットを送信することを特徴とし、該移動局が、該通知を受信した場合に、通知した基地局の中から1つの基地局を選択する選択手段と、選択された基地局にパケットの送信を要求する送信要求手段とをさらに備えた構成とすることが望ましい。
ここでは、基地局が、移動局宛てのパケットを複数蓄積しているときに該移動局から送信要求を受信した場合、前記送信手段により該移動局にパケットを送信させると共に、該移動局宛てのパケットを複数蓄積している旨を前記蓄積通知手段により該移動局へ通知させるよう制御する通知制御手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、移動局が、自局宛のパケットを送信させる基地局を変更する場合、変更元の基地局に、以後送信を中止するよう通知するとともに、変更先の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求する旨と送信対象の最初のパケットの識別情報とを通知する変更時通知手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択手段と、選択された一の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求する送信要求手段と、をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択手段と、選択された一の基地局に各基地局についての受信品質を通知する受信品質通知手段とをさらに備え、基地局が、一の基地局として自局が選択された場合、前記各基地局についての受信品質に基づいて、自局から配布予定のパケットを前記移動局に送信させるか否かを、他の基地局の各々について判断する判断手段と、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示する指示手段とをさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、移動局が、複数の基地局から同一のパケットをそれぞれ受信する際に、該パケットに対するダイバーシチ受信を行うダイバーシチ受信手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、移動局が、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、各基地局が所定の複数の通信状態のうち何れの通信状態にあるかを判定する判定手段と、該判定結果に基づいて、通信状態を遷移すべき基地局に、通信状態の遷移を要求する状態遷移要求手段と、をさらに備えた構成とすることが望ましい。
ここでは、所定の複数の通信状態が、移動局に対しパケットの送受信を行っていない第1の状態と、前記移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを移動局に送信することができる第2の状態と、前記移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを複製し、複製後のパケットを配布するとともに、該付加後のパケットを送信することができる第3の状態と、前記第3の状態にある基地局から、複製されたパケットを受信し、複製パケットを移動局に送信することができる第4の状態とを含む構成とすることが望ましい。
また、上記移動通信システムでは、配布手段は、識別情報と配布するパケットとをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、識別情報の長さと配布するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを配布するカプセル化パケット配布手段と、配布されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、配布するパケットのヘッダに記録された該配布するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが識別情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を含んで構成とすることが望ましい。
ところで、上記のデータリンク伝送制御に係る発明および移動通信システムに係る発明の要部については、以下の基地局の発明、移動局の発明として捉えることもできる。これらの発明は、技術的思想としては同一であるため、同様の作用・効果を奏する。
即ち、基地局は、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、移動局とともに構成する基地局であって、前記移動通信システムに複数台含まれており、前記移動局宛てパケットに該パケットを特定するための識別情報が付加されたパケットを複製する複製手段と、複製されたパケットを他の基地局に配布する配布手段と、自局にて前記識別情報が付加されたパケット及び他の基地局から配布されたパケットを蓄積する蓄積手段と、蓄積されたパケットを前記移動局へ送信する送信手段と、を備えた態様も採用しうる。
ここでは、複数の基地局から送信される信号の受信品質に基づいて該移動局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択して該一の基地局に各基地局についての受信品質を通知する移動局、によって、自局が前記一の基地局として選択された場合に、前記各基地局についての受信品質に基づいて、自局から配布予定のパケットを前記移動局に送信させるか否かを、他の基地局の各々について判断する判断手段と、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示する指示手段と、をさらに備えた構成とすることが望ましい。
また、上記基地局では、配布手段は、識別情報と配布するパケットとをカプセル化するカプセル化手段と、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、識別情報の長さと配布するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを配布するカプセル化パケット配布手段と、配布されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、配布するパケットのヘッダに記録された該配布するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットが識別情報を含んで構成されていると判断する構成判断手段と、を含んで構成とすることが望ましい。
移動局は、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局であって、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択手段と、選択された一の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求する送信要求手段と、を備えた態様も採用しうる。
また、移動局は、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局であって、各基地局についての受信品質に基づいて、自局から配布予定のパケットを前記移動局に送信させるか否かを、他の基地局の各々について判断し、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示する機能を有する複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択手段と、選択された一の基地局に各基地局についての受信品質を通知する受信品質通知手段と、を備えた態様も採用しうる。
また、移動局は、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局であって、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定手段と、各基地局についての受信品質に基づいて、各基地局が所定の複数の通信状態のうち何れの通信状態にあるかを判定する判定手段と、該判定結果に基づいて、通信状態を遷移すべき基地局に、通信状態の遷移を要求する状態遷移要求手段と、を備えた態様も採用しうる。
ここでは、所定の複数の通信状態が、移動局に対しパケットの送受信を行っていない第1の状態と、前記移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを移動局に送信することができる第2の状態と、前記移動局宛てのパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加し、付加後のパケットを複製し、複製後のパケットを配布するとともに、該付加後のパケットを送信することができる第3の状態と、前記第3の状態にある基地局から、複製されたパケットを受信し、複製パケットを移動局に送信することができる第4の状態とを含んで構成することが望ましい。
また、複数の基地局から同一のパケットをそれぞれ受信する際に、該パケットに対するダイバーシチ受信を行うダイバーシチ受信手段をさらに備えた構成とすることが望ましい。
ところで、上記の移動局に係る発明は、移動局に搭載されたコンピュータに実行させるための移動局制御プログラムとして、以下のように記述することができる。
即ち、移動局制御プログラムは、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局に搭載されたコンピュータに実行させるための移動局制御プログラムであって、図24に示すように、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定ステップS441と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択ステップS442と、選択された一の基地局に、自局宛のパケットの送信を要求する送信要求ステップS443とを、前記コンピュータに実行させる態様を採用しうる。
また、移動局制御プログラムは、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局に搭載されたコンピュータに実行させるための移動局制御プログラムであって、図25に示すように、各基地局についての受信品質に基づいて、自局から配布予定のパケットを前記移動局に送信させるか否かを、他の基地局の各々について判断し、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示する機能を有する複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定ステップS451と、各基地局についての受信品質に基づいて、自局宛のパケットを送信させる一の基地局を選択する選択ステップS452と、選択された一の基地局に各基地局についての受信品質を通知する受信品質通知ステップS453とを、前記コンピュータに実行させる態様を採用しうる。
また、移動局制御プログラムは、パケットにより情報の送受信を行うとともに自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動通信システムを、複数の基地局とともに構成する移動局に搭載されたコンピュータに実行させるための移動局制御プログラムであって、図26に示すように、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定ステップS461と、各基地局についての受信品質に基づいて、各基地局が所定の複数の通信状態のうち何れの通信状態にあるかを判定する判定ステップS462と、該判定結果に基づいて、通信状態を遷移すべき基地局に、通信状態の遷移を要求する遷移要求ステップS463とを、前記コンピュータに実行させる態様を採用しうる。
さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上述した移動局制御プログラムの何れか1つが記録された態様を採用しうる。図27に示すように、当該記録媒体62に記録された移動局制御プログラムが、移動局60に搭載されたコンピュータ61の読取部61Aにより読取可能とされている。
本発明によれば、移動局の移動に対応しながら、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができる。
本発明に係るデータリンク伝送制御方法及び移動通信システムの各種実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について図1および図2を用いて説明する。最初に、図1に基づき、第1実施形態における移動通信システムの構成を説明する。本第1実施形態の移動通信システムは、移動局131と、複数の基地局102、112、122とを含んで構成されており、各基地局はネットワーク1を介して相互に通信可能とされている。
移動局131は、移動局アンテナ32を介して、無線ネットワークからのデータの受信及び無線ネットワークへのデータの送信を行う送受信機33と、後述する自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うデータリンク伝送制御部34と、パケットデータの入出力端子としてのデータ入出力端35とを含んで構成されている。このうちデータリンク伝送制御部34は、基地局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う移動局伝送制御部34Aと、通信相手となる基地局との接続を要求する接続要求部34Bとを含んで構成されている。
基地局102は、基地局アンテナ6を介して、無線ネットワークからのデータの受信及び無線ネットワークへのデータの送信を行う送受信機5と、後述する自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うとともに基地局102内の各構成部を制御するデータリンク伝送制御部103と、基地局変更の要求を受けた場合等に変更先の基地局へデータリンク伝送制御情報を送信する転送部105と、データリンク伝送制御部103によるパケットデータ等の一時記憶域として機能する蓄積部104とを含んで構成されている。他の基地局112、122も、基地局102と同様に構成されている。
次に、本第1実施形態での動作を説明する。ここでは、移動局が最寄りの1つ以上の基地局との通信品質を監視し、現在通信中の基地局よりも他の基地局の方がより通信品質が良い通信を行えると判断した場合、該移動局は基地局変更を要求するものとする。また、当初は、移動局131は、基地局102との間で通信品質が良好であり、該基地局102とのみ通信可能な状態であるとする。
基地局102では、図2の矢印S1でネットワーク1から入力されるパケットをデータリンク伝送制御部103に入力して、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。該データリンク伝送制御部103は、はじめにパケットの識別を可能とするためにパケット番号を付与した後に、該パケットを記憶すると共に送受信機5に出力する。
また、該データリンク伝送制御部103に入力されるパケットのヘッダに記述されているパケット番号で識別可能な場合は、前記のように新たにパケット番号を付与しないで、該パケットをそのまま記憶すると共に送受信機5に出力する。そして該送受信機5は、入力されたパケットを送信信号に変調した後に基地局アンテナ6を介して該移動局131へ送信する(図2の矢印S2)。
一方、移動局131では、移動局アンテナ32からの信号を送受信機33で受信した後に、データリンク伝送制御部34に受信したパケットを入力して、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。該データリンク伝送制御部34は、入力した該パケットに対して付加されているパリティを用いて誤り検出を行う。検出の結果、該パケットに誤りがある場合、該データリンク伝送制御部34は、NACK(Negative Acknowledgment)信号を基地局102に送信することにより、該パケットの再送要求を該データリンク伝送制御部103に通知する(図2の矢印S3)。そして該データリンク伝送制御部103は、記憶していた該パケット番号のパケットを再送する(図2の矢印S4)。
また、該パケットに誤りがない場合、該データリンク伝送制御部34は、該パケットをデータ入出力端35から出力すると共に、ACK(Acknowledgment)信号を基地局102に送信することにより該パケットの到達確認を基地局102のデータリンク伝送制御部103に通知する(図2の矢印S5)。そして該データリンク伝送制御部103は、再送のために記憶していた該パケット番号のパケットを削除する。
つぎに移動局131が移動することにより、該移動局131と今まで通信していた基地局102との通信品質が劣化して隣接基地局112とのそれが良好となった場合、該移動局131は、まず基地局112を介して基地局102のデータリンク伝送制御部103に対して基地局変更の要求を送信する(図2の矢印S6、S7)。本実施形態では基地局変更の要求と共に、変更先の基地局番号を通知する方法とする。
該基地局変更の要求を受けた基地局102のデータリンク伝送制御部103は、変更先である基地局112に対して転送部105を介してデータリンク伝送制御情報を送信する(図2の矢印S8)。本実施形態では、データリンク伝送制御情報として到達確認がされていないパケット番号および最新のパケット番号を用いる方法として説明する。そして該データリンク伝送制御部103は、記憶していた該移動局131に対するパケットを全て削除してパケット送信を停止する。さらに以降において、図2の矢印S9のように該データリンク伝送制御部103に到着する移動局131宛のパケットは、矢印S10のように、そのまま転送部105により基地局112に転送させる設定とする。
変更先である基地局112のデータリンク伝送制御部113では、基地局102からのデータリンク伝送制御情報を入力する前に該移動局131宛のパケットを入力した場合は、データリンク伝送制御情報が入力されるまで該パケットを一時、蓄積部114にて蓄積する。そしてデータリンク伝送制御情報を入力した後に、該蓄積部114で蓄積しているパケットに対して、該データリンク伝送制御情報である最新パケット番号のつぎの番号を付与した後に、今まで説明してきた処理(矢印S11、S12、S13、S14)を行って送信する。
さらに移動局が他の基地局のセル内に移動しても、上記動作により本発明のデータリンク伝送制御方法が可能となる。
このように、パケット番号のリセットを行う手順を実行する必要がなく、移動局と直接通信している基地局のデータリンク伝送制御部を用いることができるので、移動局の移動に関わらず常に最短経路でのデータリンク転送制御を行うことができ、従来よりもパケットの転送遅延時間を短縮することができる。
つぎに、上記動作について図3を用いて更に具体的に説明する。
はじめに移動局131は、変更元の基地局102との通信品質が良好な状態とする。変更先基地局112が、データリンク伝送制御を行っている基地局102に対し隣接の基地局である場合、再送によるトラヒックの増加や遅延時間の増大の影響があまりないので、そのまま変更元の基地局102において自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行い、変更先基地局が、該データリンク伝送制御を行っている基地局102から離れた基地局122となった場合に、該移動局宛パケットとデータリンク伝送制御情報を変更先基地局122に転送して、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を変更先基地局122で行う実施形態として説明する。
図3の(1)の時点において、移動局宛のパケットがネットワークから基地局102に入力される。基地局102は入力された該パケットに対してパケット番号1の付与、CRCの付加をして該パケットを記憶した後に移動局131に送信する。移動局131では受信した該パケットに誤りを検出しなかったので到達確認を基地局102に送信する。そして、基地局102は該パケット番号1の到達確認により、記憶しておいた該パケット番号1のパケットを削除する。
つぎに図3の(2)の時点において、該移動局宛のパケットが基地局102に入力される。該基地局102は、パケット番号2の付与、CRCの付加をして該パケットを記憶した後に移動局131に送信する。今回は、移動局131で受信したパケットに誤りを検出したので、NACK(Negative Acknowledgment)信号を基地局102に送信することにより、基地局102に対してパケット番号2のパケット再送を要求する。基地局102は、該再送要求によりパケット番号2のパケットを再送信する。しかし、再度受信したパケットにも誤りを検出したので、移動局131は再び基地局102に対してパケット番号2の再送を要求する。またこの時点において、基地局112との通信品質が基地局102とのそれよりも良好となったため、基地局112を介して基地局102に対して基地局の変更を要求する。該基地局112は基地局102の隣接基地局なので自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御はそのまま基地局102が行うため、基地局112に対してはそのまま送信するよう制御する。そして該再送パケットであるパケット番号2のパケットを基地局112を介して移動局131へ送信する。移動局131は受信した該パケットに誤りを検出しなかったので、ACK(Acknowledgment)信号を基地局112を介して基地局102に送信することにより、到達確認を基地局102に送信する。基地局102は該パケット番号2のパケットに対する到達を確認したので、記憶しておいた該パケット番号2のパケットを削除する。
つぎのパケットが図3の(3)の時点において基地局102に入力される。基地局102は、パケット番号3の付与、CRCの付加をして該パケットを記憶した後に基地局112を介して移動局131に送信する。移動局131は受信した該パケットに誤りを検出しなかったので到達確認を基地局112を介して基地局102に送信する。基地局102は該パケット番号3の到達確認により、記憶しておいた該パケット番号3のパケットを削除する。
つぎのパケットが図3の(4)の時点において基地局102に入力される。上記と同様に、パケット番号4の付与、CRCの付加をして該パケットを記憶した後に基地局112を介して移動局131に送信する。ここでは移動局131が受信したパケットに誤りを検出したので、基地局112を介して基地局102に対してパケット番号4の再送を要求する。またこの時点において、基地局122との通信品質が基地局112とのそれよりも良好となったため、移動局131は基地局122を介して基地局102に対して基地局の変更を要求する。基地局102では変更先基地局が隣接基地局ではないので、該基地局122に対して自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御の変更を通知する。
ここで該移動局131が現在データリンク伝送制御を行っている基地局番号を通知させることにより、該基地局122は以降において該移動局131に対するデータリンク伝送制御を行わなければならないことを認識できるので、この場合は基地局102が該通知をする必要はない。そしてネットワーク内にあるパケット送信先を変更する装置に対して、以降の該移動局宛パケットを基地局122に入力するよう要求する。この装置は、移動局131の位置登録情報等を用いてパケットの送信先を変更できる機能を有したものである。また基地局102において該基地局変更の要求を受信したタイミングは、パケット番号4の再送パケットを送信した直後であるため、該パケットに対する到達確認または再送要求が移動局131から通知されていない。したがって、該再送パケットの到達確認または再送要求が通知されるまで、基地局102は基地局122に対してデータリンク伝送制御情報の出力をしない。よってこの時点での基地局122は、図3の(5)の時点で入力された該移動局宛パケットを蓄積し続けるだけの状態である。
そして移動局131では該再送パケットに誤りを検出しなかったとする。よって移動局131は、基地局122を介して基地局102にパケット番号4の到達確認を送信する。基地局102では該再送パケット番号4の到達が確認できたので、変更先基地局である基地局122に対してデータリンク伝送制御情報として最新パケット番号は4番であることのみを通知する。仮に到達確認できていないパケットがある場合は、到達確認できていないパケット番号と最新パケット番号を通知する。また以降において、基地局112を用い送受信する該移動局宛パケットはないので、基地局102は基地局112に対してこのことを通知する。これにより基地局112は、移動局131に割当てていた基地局112のリソースを解放することができる。
また基地局122は、図3の(5)の時点で入力されて蓄積されているパケットに対して、基地局102からのデータリンク伝送制御情報である最新パケット番号が4番であることよりパケット番号5を該パケットに付与して、CRCを付加した後に該パケットを記憶すると共に移動局131に送信する。移動局131は、受信した該パケットに誤りを検出しなかったので到達確認を基地局122に送信する。基地局122は該パケット番号5の到達確認により、記憶しておいた該パケット番号5のパケットを削除する。
以上、上記動作を繰返すことにより移動局131の移動に関わらず、本発明のデータリンク伝送制御方法が可能となる。
このような第1実施形態によれば、パケット番号のリセットを行う手順を実行する必要がなく、移動局131と直接通信している基地局のデータリンク伝送制御部を用いることができるので、移動局131の移動に関わらず常に最短経路でのデータリンク転送制御を行うことができ、従来よりもパケットの転送遅延時間を短縮することができ、システムのスループットを増大させることができる。
[第2実施形態]
つぎに、本発明の第2実施形態について図1および図4を用いて説明する。はじめに移動局131と基地局102との通信品質が良好な状態とする。つまり該移動局131は該基地局102とのみ通信可能な状態である。
基地局102では、ネットワーク1から入力されるパケットをデータリンク伝送制御部103に入力して、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。本実施形態では1つのパケットを無線フレームに適合するように複数のブロックに分割して送信する場合について説明する。該データリンク伝送制御部103は、図4(b)で明記したように、入力されたパケットを複数のブロックに分割して、該ブロックに、分割したブロックの順序性を保つためにブロック番号と、分割前のパケットを識別できるようにパケット番号とを付与した後に、伝送中に生じる誤りを検出できるようにCRC等の誤り検出可能なパリティを付加して送受信機5に出力する。送受信機5は、入力されたブロックを送信信号に変調した後に基地局アンテナ6を介して移動局131に送信する。なお、図4(a)には、第1実施形態のデータリンク伝送制御部でのパケット構成を示す。
一方、移動局131では、移動局アンテナ32からの信号を送受信機33で受信した後に、データリンク伝送制御部34に受信したブロックを出力する。そして該データリンク伝送制御部34は、入力した該ブロックに対して付加されているパリティを用いて誤り検出を行う。検出の結果、該ブロックに誤りがない場合、データリンク伝送制御部34は、基地局102のデータリンク伝送制御部103に、該ブロックの到達確認を通知する。また該ブロックに誤りがある場合、データリンク伝送制御部34は、該ブロックの再送要求を基地局102のデータリンク伝送制御部103に通知する。そして該データリンク伝送制御部103は、記憶していた該ブロックを再送する。このようにして、1パケット分の全ブロックが誤りなく受信されたら、データリンク伝送制御部103が各ブロックに分割するのと逆の操作により、データリンク伝送制御部34でブロックを合成して1つのパケットとした後に、データ入力端35から該パケットを出力する。
つぎに移動局131の移動により基地局の変更が生じる場合について説明する。本実施形態では、移動局と同時に通信する基地局数に制限を設けず、移動局は同時に複数の基地局からのパケットを受信可能とする。また第1実施形態で説明したように、移動局との同時通信相手基地局数が1局の場合でも当然可能である。
移動局131と今まで通信していた基地局102との通信品質が若干劣化して隣接基地局112とのそれが良好になり、基地局102と基地局112の2つの基地局と通信が可能になったとする。この場合、該移動局131は基地局102のデータリンク伝送制御部103に対して基地局の接続を要求する。通信品質が若干劣化しただけなので、第1実施形態と異なり該移動局131は基地局102と基地局112の2局と通信をしている状態である。該接続要求を受けた基地局102のデータリンク伝送制御部103は、基地局112に対して該移動局131が接続を要求していることを通知する。そしてデータリンク伝送制御部103は、以降において入力される該移動局131宛の一部のパケットをパケット番号と対応付けした後に転送部105を介して基地局112に送信する。ブロック毎の自動再送要求制御はデータリンク伝送制御部113が行うが、移動局で受信されるパケットの順序を保つためのパケット番号の対応付けは、どちらかの基地局にあるデータリンク伝送制御部で行われる。本実施形態では基地局102のデータリンク伝送制御部103が該パケット番号の対応付けを行うこととする。該基地局112のデータリンク伝送制御部113は、基地局102から入力されるパケットをブロックに分割した後に、ブロック番号とデータリンク伝送制御部103において対応付けされている分割前のパケット番号とを付与して、さらにパリティの付加を行った後に移動局131に送信する。
つぎに移動局131と基地局102との通信品質がさらに劣化して、基地局112との通信のみが可能になったとする。この場合、該移動局131は、通信品質が良好な基地局112を介して基地局102のデータリンク伝送制御部103に対して、基地局102からのパケット送信停止の要求をする。該要求を受けた基地局102のデータリンク伝送制御部103は、到達確認されていないブロックが含まれるパケットと該パケットのパケット番号、および到達確認されていないブロック番号、そして最新のパケット番号を転送部105を介してデータリンク伝送制御情報として基地局112のデータリンク伝送制御部113に送信する。そして該移動局131宛のブロックまたはパケットは、基地局112から該移動局131宛のブロックまたはパケットの転送要求があるまでそのまま蓄積する。さらに該転送要求があるまでネットワーク1から入力される該移動局宛のパケットもそのまま蓄積する。
そしてあるタイミングで基地局112は、データリンク伝送制御情報を送信した基地局102に対して該移動局宛パケットまたはブロックの転送を要求する。このあるタイミングは、移動局から送信されるデータ伝送を促進する信号が受信された時点でもよい。そして該転送要求を受けた基地局102のデータリンク伝送制御部103は、記憶している該移動局131宛のブロックまたはパケットを基地局112に転送した後に全て削除して、以降において基地局102に到着した該移動局131宛のパケットはそのまま基地局112に転送させる設定とする。該基地局112のデータリンク伝送制御部113は、基地局102から転送された到達確認できてないブロックを含むパケットを各ブロックに分割した後に、再送が要求されているブロックのみを移動局131に再送する。ブロックは固定長なので、入力されるパケットとそのパケット番号およびブロック番号が分かれば必要なブロックのみを再送することができる。また以降において基地局112に入力される移動局131宛の新たなパケットは、通知された最新のパケット番号に基づいたパケット番号を付与する。なお、データリンク伝送制御部103は、必要なブロックのみを転送することもできる。
以上のような動作により本発明のデータリンク伝送制御方法が実現可能となる。
このように、パケット番号のリセットが生じることなく移動局と通信している基地局のデータリンク伝送制御部を用いることができるので、移動局の移動に関わらず常に最短経路でのデータリンク転送制御を行うことができ、従来よりもパケットの転送遅延時間を短縮することができ、システムのスループットを増大させることができる。
なお、上記のデータリンク伝送制御情報としては、以下のような項目が考えられ、何れも採用することができる。即ち、(1)到達確認が行われていないパケット番号、(2)到達確認が行われたパケット番号、(3)再送要求がされているパケット番号、(4)最新のパケット番号、(5)到達確認が行われていないブロック番号、(6)到達確認が行われたブロック番号、(7)再送要求がされているブロック番号、(8)最新のブロック番号、(9)上記(1)〜(8)の組み合わせといった項目を採用することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。最初に、図7、図22、図23に基づき、第3実施形態における移動通信システムの構成を説明する。本第3実施形態の移動通信システムは、図7に示すように、移動局231と、複数の基地局202、212、222とを含んで構成されており、各基地局はネットワーク1を介して相互に通信可能とされている。
移動局231は、移動局アンテナ232を介して無線ネットワークからのデータの受信及び無線ネットワークへのデータの送信を行う送受信機233と、後述する自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うデータリンク伝送制御部234と、パケットデータの入出力端子としてのデータ入出力端235とを含んで構成されている。
このうちデータリンク伝送制御部234は、機能的には図23に示す機能ブロックより構成される。即ち、データリンク伝送制御部234は、基地局からのパケット蓄積通知の受信時に該基地局の中から1つの基地局を選択するとともに各基地局についての受信品質に基づいて自局宛のパケットを送信させる1つの基地局を選択する選択部234Aと、選択された基地局にパケットの送信を要求する送信要求部234Bと、自局宛のパケットを送信させる基地局を変更する場合、変更元の基地局に送信中止を通知するとともに、変更先の基地局に送信要求及び対象の最初のパケット番号を通知する変更時通知部234Cと、複数の基地局から送信される信号の受信品質を測定する測定部234Dと、受信品質に基づき選択された位置の基地局に各基地局についての受信品質を通知する受信品質通知部234Eと、各基地局についての受信品質に基づいて、各基地局が所定の複数の通信状態のうち何れの通信状態にあるかを判定する判定部234Fと、該判定結果に基づいて、通信状態を遷移すべき基地局に、通信状態遷移を要求する状態遷移要求部234Gとを含んで構成されている。また、送受信機233は、複数の基地局から同一のパケットをそれぞれ受信する際に該パケットに対するダイバーシチ受信を行うダイバーシチ受信部233Aを含んで構成されている。
一方、基地局202は、図7に示すように、基地局アンテナ208を介して、無線ネットワークからのデータの受信及び無線ネットワークへのデータの送信を行う送受信機207と、後述する自動再送制御を実行するために各パケットに対し識別情報として一意の番号を付与する等の自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うとともに基地局202内の各構成部を制御するデータリンク伝送制御部203と、パケットを複製するパケット複製部206と、複製したパケットを他の基地局に配布する配布部205と、データリンク伝送制御部203によるパケットデータ等の一時記憶域として機能する蓄積部204とを含んで構成されている。
このうちデータリンク伝送制御部203は、機能的には図22に示す機能ブロックより構成される。即ち、データリンク伝送制御部203は、移動局宛てパケットに、該パケットを特定するための識別情報を付加する識別情報付加部203Aと、タイマーのタイムアウト又は移動局からのパケット到達通知に基づいてパケットを削除する第1の削除部203Bと、タイマーのタイムアウト又は他の基地局からの削除パケットの番号通知に基づいてパケットを削除する第2の削除部203Cと、当該基地局をパケット配布先の基地局から除外する旨の移動局からの要求に基づいて自局にて蓄積中の該移動局宛てパケットを削除する第3の削除部203Dと、削除すべきパケットの番号を他の基地局に通知する削除パケット通知部203Eと、新たにパケット配布先となる基地局にパケットを配布する配布制御部203Fと、移動局からの再送要求に応じてパケットを再送するパケット再送部203Gと、移動局宛てのパケットを受信して蓄積した場合に該パケットを蓄積していることを該移動局に通知する蓄積通知部203Hと、移動局宛てのパケットを複数蓄積しているときに該移動局から送信要求を受信した場合に、該移動局にパケットを送信すると共にパケットを複数蓄積している旨を該移動局へ通知するよう制御する通知制御部203Iと、各基地局についての受信品質に基づいて、自局から配布予定のパケットを移動局に送信させるか否かを他の基地局の各々について判断する判断部203Jと、該判断結果に基づく送信動作を他の基地局に指示する指示部203Kとを含んで構成されている。なお、他の基地局212、222も、基地局202と同様に構成されている。
ところで、基地局の各々は、移動局231に対して、図8(a)に示す4つの状態のいずれかとなり、移動局231からの要求に応じてそれぞれの状態に遷移する。ここで、これら4つの状態について説明する。
1つ目は、アイドル状態である。この状態は、基地局が移動局231に対してパケットの送信または受信を行っていない状態である。
2つ目は、パケット送信可能状態である。この状態は、基地局がネットワーク1からパケットを受信した場合、該パケットに一意の番号を付加した後に、該パケットを移動局に送信できる状態である。また、この状態は、一時点では、いずれか1つの基地局のみがなり得る状態であり(同時に複数の基地局が該状態にはならない)、その他の基地局はアイドル状態となっている。
3つ目は、パケット複製および送信可能状態である。この状態は、基地局が以下の一連の動作を行う状態である。即ち、該基地局がネットワーク1からパケットを受信した場合、該パケットに一意の番号を付与した後に、該番号も含めて該パケットの複製を行い、複製されたパケット(以下、「複製パケット」という。)を、移動局231が要求した他の基地局に配布する。そして、該基地局が移動局231からパケット送信の要求を受信した場合に、該パケットを移動局231に送信する。このような動作を行う状態である。また、この状態も、一時点では、いずれか1つの基地局のみがなり得る状態であり(同時に複数の基地局が該状態にはならない)、その他の基地局は、後述の複製パケット送信状態、またはアイドル状態となっている。
4つ目は、複製パケット送信可能状態である。この状態では、基地局がパケット複製および送信可能状態の基地局から複製パケットを受信し、且つ、基地局が移動局231からパケット送信の要求を受信した場合に、複製パケットを移動局に送信できる状態である。この状態は、ある基地局がパケット複製および送信可能状態に遷移した場合に、他の基地局において発生する状態である。
次に、本第3実施形態の動作を説明する。まず、上記の各状態における基地局および移動局231の動作について説明する。
(1)パケット送信可能状態における基地局および移動局の動作
以下の式(1)が成立している場合、Ψ
i =1となる第i番目の基地局が、移動局231に対してパケット送信可能状態となり、Ψ
j =0となるその他(i≠j)の基地局は、アイドル状態となる。
ここで、Pmed(i)は、第i番目の基地局が送信する報知信号若しくは共通パイロット信号などに関する時間平均的な受信電力値(例えば、短区間受信電力中央値など)、又は当該時間平均的な受信電力と干渉電力との比(以下「時間平均的な受信電力対干渉電力比」という。)を表す。Pmed_maxは、第1番目から第N番目までの基地局についての時間平均的な受信電力値の最大値または時間平均的な受信電力対干渉電力比の最大値を表す。Ψi は、Pmed_maxとPmed(i)との差を所定の閾値Thに対して比較判定した結果の二値(1または0)を表す。また、本実施形態では、N=3の場合について説明し、図7の基地局202、基地局212、基地局222をそれぞれ、第1番目の基地局、第2番目の基地局、第3番目の基地局として説明する。
上記式(1)が成立している場合とは、図9の地点Aに移動局231が位置する場合のように、移動局231において測定される、複数基地局(本実施形態では、基地局202〜基地局222)が送信する報知信号、または、共通パイロット信号などの時間平均的な受信電力値または受信電力対干渉電力比などが1つだけ大きい場合である。これは、例えば、Ψ1 =1、 Ψ2 =0、 Ψ3 =0となっている場合であり、基地局202が該移動局231に対してパケット送信可能状態となり、基地局212および基地局222がアイドル状態となっている。
パケットが該パケット送信可能状態の基地局に到着した場合の処理について図10を用いて説明する。基地局202は、ネットワーク1から到着した該パケットに対してデータリンク伝送制御部203にて一意の番号を付与し、移動局での受信パケットの誤り検出のためにCRCなどを付加した後に蓄積する(図10のS301およびS302)。そして、データリンク伝送制御部203は、パケット複製部206に対してそのまま送受信機207に出力するように制御することにより、移動局231に対して該パケットを送信する(S303)。移動局231は、受信したパケットについて誤り検出処理(S304)を行い、誤りが検出されない場合、パケットの到達確認を該基地局202に対して通知する(S305およびS306)。また、誤りが検出された場合、移動局231はパケットの再送要求を該基地局202に対して通知する(S305およびS307)。基地局202は、移動局231からの通知が到達確認の場合、一意の番号に対応する蓄積しているパケットを削除する(S308よびS310)。また、移動局231からの通知が再送要求の場合、基地局202は、一意の番号に対応するパケットを再送する(S308よびS309)。
(2)アイドル状態における基地局および移動局の動作
前述のように、Ψj =0である第j番目の基地局は、移動局に対してアイドル状態となる。
パケットが該アイドル状態の基地局に到着した場合の処理について図11を用いて説明する。ここでは、基地局212および基地局222がアイドル状態とする。アイドル状態にある基地局212は、移動局231宛てのパケットをそのまま他の基地局又はパケット送信可能状態の基地局202に直接転送するように、データリンク伝送制御部213が配布部215を制御する。このため、パケットが基地局212に到着した場合、基地局212は、転送先である他の基地局又は基地局202にパケットを転送する(図11のS311およびS312)。
なお、基地局212、222は同様の構成をしているため、パケットが基地局222に到着した場合も、上記同様の動作が行われる。
(3)パケット複製および送信可能状態、複製パケット送信可能状態における基地局および移動局の動作
以下の式(2)が成立している場合には、Ψ
i =1となる複数基地局のいずれか1つの基地局が、移動局231に対してパケット複製および送信可能状態となり、Ψ
i =1であり且つ該パケット複製および送信可能状態でない基地局は、複製パケット送信可能状態となる。
用いられる記号は、式(1)と同様である。
式(2)が成立している場合は、図9の地点Bに移動局231が位置する場合のように、移動局231において測定される時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が複数大きい場合、例えば、本実施形態のようにΨ1 =1、 Ψ2 =1、 Ψ3 =0となっている場合であり、基地局202または基地局212のいずれか1つの基地局が、パケット複製および送信可能状態となる。このいずれか1つの基地局は、遷移前においてパケット送信可能状態であった基地局、または、時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が大きい基地局とすることが可能である。本実施形態では、基地局202をパケット複製および送信可能状態とし、基地局212を複製パケット送信可能状態として説明を続ける。
パケットがパケット複製および送信可能状態である基地局202に到着した場合の処理について図12を用いて説明する。基地局202は、ネットワーク1から到着した該パケットに対して一意の番号を付加し、移動局での受信パケットの誤り検出のためにCRCなどを付加した後に、該パケットを蓄積すると共に、該番号を含めて該パケットの複製を行う(図12のS321およびS322)。そして、基地局202は複製パケットを複製パケット送信可能状態である基地局212に配布し(S323)、基地局212は配布されたパケットを蓄積する(S324)。さらに、基地局202は、該移動局231宛てパケットを蓄積していることを移動局231に通知する(S325b)。
また、移動局231は、前述のように、時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が最大となる基地局が、パケット複製および送信可能状態となるように、状態遷移を要求する。これにより、移動局231への新たなパケットの通知を行う基地局を1つにすることができる。これは、時間平均的な受信品質が最高となる基地局から通知させるため、実現可能となる。この場合、該通知のための余分な電力を削減することができ干渉を抑制することが可能となる。
但し、該干渉の影響がさほど問題とならない場合は、図12のS325bおよびS325aに示すように、パケットを受信した基地局(パケット複製および送信可能状態の基地局、または複製パケット送信可能状態の基地局)がそれぞれ移動局231に通知する方法も可能である。
該通知を受信した移動局231は、その時点において複数基地局(本実施形態では、基地局202および基地局212の2局)から送信されている報知信号、共通パイロット信号などの信号の瞬時の受信電力または瞬時の受信電力対干渉電力比が最大となる基地局を選択し(S326)、移動局231にパケットを送信するよう該選択した基地局に対し要求する(S327)。この要求の具体的な方法は、該基地局を特定できる基地局の番号と通知されたパケットの番号を基地局に要求することで可能となる。
また、該要求の方法については、選択した基地局に直接上り回線で要求する方法、または、選択されなかった基地局で受信された該要求を選択した基地局に基地局間ネットワークを介して通知する方法を採用可能である。これは、移動局と各基地局間の瞬時の受信品質は、上り回線と下り回線では異なり、下り回線の受信品質では選択した基地局と移動局間が最高であっても、上り回線の受信品質では、他の基地局と移動局間が最高となり得るためである。
そして、該要求を受けた基地局(本実施形態では基地局202)は、移動局231に対して該パケットを送信する(S328)。このとき、基地局202は、移動局231宛のパケットを複数蓄積している旨を移動局231に通知してもよい。これにより蓄積されている以降のパケットについては、基地局は改めて通知を行う必要がなくなるためである。
移動局231は、受信したパケットについて誤り検出処理(S329)を行い、誤りが検出されない場合、パケットの到達確認をパケット複製および送信可能状態の基地局202に通知する(S330およびS331)。この通知は、基地局202に直接、または、基地局212を介して行ってもよい。また、誤りが検出された場合、移動局231は、その時点において瞬時の又は時間平均的な受信品質が最高となる基地局を選択し(S332)、該基地局に対してパケットの再送要求を通知する(S333)。
到達確認を受け取った基地局202は、一意の番号に対応する蓄積しているパケットを削除する(S334およびS337)。また、基地局202は該パケットの番号を複製パケット送信可能状態の基地局212に通知する(S336)。通知を受けた基地局212は、該通知により蓄積している複製パケットを削除する(S338)。
一方、基地局202は、再送要求を受信した場合、一意の番号に対応するパケットを再送する(S333、S334、S335)。
以上のようにして、パケットの配布を行う回線制御局を基地局とは別に設けずに、各基地局においてパケットを蓄積して、1つ又は複数の基地局がパケットを移動局へ送信するため、ネットワーク内のトラヒックを低減することができ、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができる。
なお、図12において基地局202から基地局212へのS336の複製パケット削除通知については、図14に示す3つの方法を採用することができる。
即ち、第1の方法では図14(a)のように、基地局202は、S331の移動局からの到達確認を受信する度に、基地局212へ削除すべきパケットの一意のパケット番号を通知する(A1)。このとき通知と同時に、基地局202内に蓄積された該当パケットを削除してもよい。
また、第2の方法では、基地局202が所定時間内における最新パケット番号の通知を行う。即ち、基地局202は、S331の移動局からの到達確認の受信により、図14(b)の処理を開始し、所定の削除間隔の時間が設定された削除タイマーを起動し(B1)、上記の到達確認に対応するパケット番号を記憶する(B2)。なお、このとき、同時に、基地局202内に蓄積された該当パケットを削除してもよい。その後、新たな到達確認を受信すると(B3で肯定判定)、該到達確認に対応するパケット番号を記憶していく(B2)。そして、削除タイマーがタイムアウトするに至ると(B4で肯定判定)、その時点で記憶しているパケット番号のうち最新のパケット番号、即ち、タイマーで計時された所定時間内に受信された到達確認に対応するパケットのうち最新パケットの番号を通知する(B5)。
さらに、第3の方法では、基地局202が特定パケットの削除により(例えば削除された10パケットごとに)通知を行う。即ち、基地局202は、S331の移動局からの到達確認の受信により、図14(c)の処理を開始し、カウンタn=1にリセットした後(C1)、上記の到達確認に対応するパケット番号を記憶する(C2)。なお、この記憶と同時に、基地局202内に蓄積された該当パケットを削除してもよい(C5でも同様)。その後、新たな到達確認を受信すると(C3で肯定判定)、カウンタnを1つカウントアップして(C4)、該到達確認に対応するパケット番号を記憶していく(C5)。そして、カウンタnが10になった時点、即ち、到達確認を10パケット分受信した時点でC6にて肯定判定され、その時点で記憶しているパケット番号のうち最新のパケット番号を通知する(C7)。
上記のうち第1の方法では、通知の頻度が高いため通知によるトラヒック量が多いもののバッファ管理が容易になるという利点がある。第2の方法では、一般的に、通知の頻度が低いためバッファ管理が煩雑になるものの通知によるトラヒック量が少なくなるという利点がある。第3の方法は、一般的に、トラヒック量とバッファ管理の両面につき第1、第2の方法の中間的な位置にある。
本実施形態では、上記3つの方法を適宜採用することで、トラヒック量とバッファ管理の両面をバランス良く制御することが可能となる。
ところで、図12において基地局202、212にて蓄積されたパケットを削除するトリガーとしてタイマーを採用してもよい。この例を図13に基づき説明する。
即ち、図13に示すように、基地局202は、ネットワーク1から到着した該パケットに対して一意の番号を付与し、移動局での受信パケットの誤り検出のためにCRCなどを付加した後に、該パケットを蓄積すると共に、該番号を含めて該パケットの複製を行う(図13のS321およびS322X)。また、このとき基地局202にパケットが入力されたことをトリガーとして、蓄積したパケットに関する削除タイミングを計時するための削除タイマーを基地局202が起動する。なお、基地局202は、対象のパケットを初めて送信する時点で削除タイマーを起動してもよい。
そして、基地局202は、複製パケットを複製パケット送信可能状態である基地局212に対して配布する(S323)。基地局212は、配布されたパケットを蓄積すると共に、基地局212にパケットが入力されたことをトリガーとして、蓄積したパケットに関する削除タイミングを計時する削除タイマーを起動する(S324X)。さらに、基地局202は、該移動局231宛てパケットを蓄積していることを移動局231に通知する(S325b)。
また、移動局231は、前述のように、時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が最大となる基地局がパケット複製および送信可能状態となるように、状態遷移を要求することで、移動局への新たなパケットの通知を行う基地局を1つにすることができる。これは、時間平均的な受信品質が最高の基地局から通知させるため、実現可能となる。この場合、該通知のための余分な電力を削減することができ干渉を抑制することが可能となる。
但し、該干渉の影響がさほど問題とならない場合は、図12のS325bおよびS325aに示すように、パケットを受取った基地局(パケット複製および送信可能状態の基地局、または複製パケット送信可能状態の基地局)がそれぞれ移動局231に通知する方法も可能である。
該通知を受信した移動局231は、その時点において複数基地局(ここでは基地局202および基地局212の2局)から送信されている報知信号、共通パイロット信号などの信号の瞬時の受信電力または瞬時の受信電力対干渉電力比が最大となる基地局を選択し(S326)、該基地局に対して該パケットを送信することを要求する(S327)。この要求の具体的な方法は、該基地局を特定できる基地局の番号と通知されたパケットの番号を基地局に要求することで可能となる。
また、該要求の方法は、選択した基地局に直接上り回線で要求する方法、または、選択されなかった基地局で受信された該要求を選択した基地局に基地局間ネットワークを介して通知する方法を採用可能である。これは、移動局と各基地局間の瞬時の受信品質は、上り回線と下り回線では異なり、下り回線の受信品質では選択した基地局と移動局間が最高であっても、上り回線の受信品質では、他の基地局と移動局間が最高となり得るためである。
そして、該要求を受けた基地局(ここでは基地局202)は、移動局231に対して該パケットを送信する(S328)。このとき、基地局202は、移動局231宛のパケットを複数蓄積している旨を移動局231に通知してもよい。
移動局231は、受信したパケットについて誤り検出処理(S329)を行い、誤りが検出されない場合、パケットの到達確認をパケット複製および送信可能状態の基地局202に通知する(S330およびS331)。この通知は、基地局202に直接、または、基地局212を介して行ってもよい。また、誤りが検出された場合、移動局231は、その時点において瞬時の又は時間平均的な受信品質が最高となる基地局を選択し(S332)、該基地局に対してパケットの再送要求を通知する(S333)。
その後、基地局202は、移動局231から再送要求を受信した場合には、一意の番号に対応するパケットを再送する(S333、S334、S335)。
図13の例では、基地局202において、S322Xで開始した削除タイマーがタイムアウトになった時点で、該タイマーに対応する蓄積パケットを削除する(S336XおよびS337)。また、基地局212でも、S324Xで開始した削除タイマーがタイムアウトになった時点で、該タイマーに対応する蓄積パケットを削除する(S336YおよびS338)。
このような図13の処理によれば、削除通知(図12のS336)を行う必要がなくなるので、これらの制御パケットによる基地局間ネットワークのトラヒック増加を抑制することができる。また、移動局からのパケットの到達確認(図13のS331)も必ずしも必要ではないので、さらなるトラヒック削減も図ることができる。なお、図13での削除タイマーのタイムアウト値は、該パケットに対する再送要求が到着しないと考えられる時間に設定するものとする。
ところで、本実施形態では、パケットを送信する基地局が1つの場合(図12、図13)について説明したが、干渉などがさほど問題にならない場合、または複数基地局から送信される同一パケットを移動局においてダイバーシチ受信により受信品質を向上できる場合などでは、基地局202および基地局212が、同一のパケットをそれぞれ送信することも可能である。つぎに、この例について、図15を用いて具体的に説明する。
基地局202は、ネットワーク1から到着した該パケットに対して一意の番号を付加し、移動局での受信パケットの誤り検出のためにCRCなどを付加した後に、該パケットを蓄積すると共に、該番号を含めて該パケットの複製を行う(図15のS341およびS342)。そして、基地局202は、複製パケットを複製パケット送信可能状態である基地局212に配布し(S343)、基地局212は配布されたパケットを蓄積する(S344)。
つぎに、基地局202および基地局212は、それぞれ蓄積パケットがあることを移動局に通知する(S345)。なお、移動局が、パケットを受信可能な状態である場合には、該S345の通知は省略可能である。そして、基地局202および基地局212は、それぞれ蓄積パケットを移動局に対して送信する(S346)。
移動局231は、受信したパケットについて誤り検出処理(S347)を行う。この時に、複数基地局から送信された同一のパケットに対して、ダイバーシチを行うことも可能である。また、該ダイバーシチの方法としては、受信された同一パケットの同一ビットについて、ビット毎にそのまま合成する第1の方法、または受信電力または受信電力対干渉電力比で重み付けした後にビット毎に合成する第2の方法、誤り検出後のパケットの中から誤りが検出されないパケットを選択する第3の方法などを採用可能である。そして、誤りが検出されない場合、移動局231は、パケットの到達確認をパケット複製および送信可能状態の基地局202に通知する(S348およびS349)。
到達確認を受け取った基地局202は、一意の番号に対応する蓄積しているパケットを削除する(S351およびS355)。また、基地局202は、該パケットの番号を複製パケット送信可能状態である基地局212に通知する(S354)。通知を受けた基地局212は、該通知により、蓄積している複製パケットを削除する(S356)。前述した図13のようなタイマーを使用する方法により、S354の該通知を省略することは可能である。
一方、S348で誤りが検出された場合、移動局は、基地局202または基地局212の一方に対してパケットの再送要求を通知する(S350)。基地局202は、再送要求を受取った場合、基地局212に該再送パケットを再配布するか、または該再送パケットの番号を通知する(S352)。そして、基地局202および基地局212は、それぞれ要求されたパケットを再送する(S353)。
さらに、図9において移動局231が移動して地点C付近に到着し、大きな時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比がさらに得られるような状態になった場合、例えば、Ψ1 =1、 Ψ2 =1、 Ψ3 =1となった場合も同様に、基地局202は、基地局202に到着するパケットの複製を基地局212および基地局222に配布する。
つぎに、図8(b)に示したある状態から別の状態に遷移する各種のイベントにおける基地局および移動局の動作について説明する。
(4)イベントAの説明
移動局において、上記の式(1)が成立している状態から式(2)が成立する状態に遷移することにより、移動局231が、パケット送信可能状態の基地局(Ψi =1であった第i番目の基地局)に対しパケット複製および送信可能状態に遷移するよう要求し、新たにΨi =1となったアイドル状態の基地局に対し複製パケット送信可能状態に遷移するよう要求することが、イベントAである(図8(a)、(b)参照)。
パケット送信可能状態からパケット複製および送信可能状態に遷移する基地局を基地局202とし、アイドル状態から複製パケット送信状態に遷移する基地局を基地局212として図16を用いて具体的に説明する。
移動局231は、式(1)から式(2)が成立する状態になったら、基地局202に対してパケット複製および送信可能状態に遷移することと、新たにΨi =1となった基地局212を特定する基地局の番号とを基地局202に通知する(図16のS361およびS362)。
該通知を受けた基地局202は、基地局212に対して複製パケット送信可能状態に遷移することを要求する(S363)と共に、その時点において蓄積している該移動局231宛てのパケットを複製して(S364)、複製パケットを基地局212に配布(S366)する。そして、基地局202は、パケット複製および送信可能状態に遷移する(S367)。
基地局212は、基地局202からの遷移要求により、複製パケット送信可能状態に遷移する(S365)。また、基地局212は、配布された複製パケットを蓄積する(S368)。これにより、基地局212に対して再送が要求されても、即座に再送を行うことが可能となる。
そして、以降において基地局202に到着するパケットは、前述したように基地局202により複製されて基地局212に配布される。
(5)イベントBの説明
移動局において、式(2)が成立している状態から式(1)が成立する状態に遷移することにより、複製パケット送信可能状態の基地局がΨi =0になり、パケット複製および送信可能状態の基地局のみがΨi =1(他の基地局は、Ψi =0)となった場合、移動局231が、パケット複製および送信可能状態の基地局に対してパケット送信可能状態に遷移するよう要求し、複製パケット送信可能状態の基地局に対してアイドル状態に遷移するよう要求することが、イベントBである(図8(a)、(b)参照)。
パケット複製および送信可能状態からパケット送信可能状態に遷移する基地局を基地局202とし、複製パケット送信可能状態からアイドル状態に遷移する基地局を基地局212として図17を用いて具体的に説明する。
移動局231は、式(2)から式(1)が成立する状態になったら、基地局202に対してパケット送信可能状態に遷移することと、Ψi =0 つまりアイドル状態となる基地局212を特定する基地局の番号とを基地局202に通知する(図17のS371およびS372)。2つの基地局は、該移動局宛てのパケットを扱っているので、基地局212に対して要求する方法でも可能である。この場合は、基地局212に対して、アイドル状態に遷移することを要求し、パケット送信可能状態に遷移する基地局の番号(基地局202)を通知することで可能である。本実施形態では、前者の方法として説明を続ける。
該通知を受けた基地局202は、基地局212に対してアイドル状態に遷移するよう要求し(S373)、パケット送信可能状態に遷移する(S374)。
基地局212は、アイドル状態に遷移すると共に、蓄積している該パケットを削除する(S375)。基地局202は、以降において到着するパケットは、複製を行わず、また他の基地局に配布も行わない。
(6)イベントCの説明
移動局において、式(2)が成立している状態から式(1)が成立する状態に遷移することにより、パケット複製および送信可能状態の基地局がΨi =0になり、複製パケット送信可能状態の基地局がΨi =1となった場合、移動局231が、パケット複製および送信可能状態の基地局に対してアイドル状態に遷移するよう要求し、複製パケット送信可能状態の基地局に対してパケット送信可能状態に遷移するようが要求することが、イベントCである。
パケット複製および送信可能状態からアイドル状態に遷移する基地局を基地局202とし、複製パケット送信可能状態からパケット送信可能状態に遷移する基地局を基地局212として図18を用いて具体的に説明する。
移動局231は、式(2)から式(1)が成立する状態になったら、基地局202に対してアイドル状態に遷移することと、パケット送信可能状態に遷移する基地局212を特定する基地局の番号とを基地局202に通知する(図18のS381およびS382)。
該通知を受けた基地局202は、基地局212に対して、パケット送信可能状態に遷移するよう要求する。そして、一意の番号を付与する基地局が変更になるので、基地局202は、さらに、第1実施形態にて明記したように、現在蓄積しているパケット(到達確認が得られていないパケット)の番号とパケットに付与する一意の番号の最新値とを通知する(S383a)。本イベント発生時では、基地局212もパケットを蓄積しているので、基地局212に問合せをすることにより両基地局にて蓄積されている異なるパケットのみを送信する方法でも可能である(S383b)。よって、S383aまたはS383bの何れかの方法が行われる。
そして、基地局202は、アイドル状態に遷移し、蓄積しているパケットを削除する(S384)。また、基地局202は、アイドル状態において該移動局231宛てのパケットを受信した場合は、前述の「(2)アイドル状態における基地局および移動局の動作」で説明したように、基地局212にそのまま転送するように制御する。
一方、基地局212は、基地局202からの遷移要求により、パケット送信可能状態に遷移する(S385)。
(7)イベントDの説明
移動局において、式(1)が成立している状態から式(2)が成立する状態に遷移すると共に、新たにΨi =1となった基地局からの時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が最大となること等により、移動局231が、パケット送信可能状態の基地局(Ψi =1であった第i番目の基地局)に対して複製パケット送信可能状態に遷移するよう要求し、新たにΨi =1となったアイドル状態の基地局に対してパケット複製および送信可能状態に遷移するよう要求することが、イベントDである。
パケット送信可能状態から複製パケット送信可能状態に遷移する基地局を基地局202とし、アイドル状態からパケット複製および送信可能状態に遷移する基地局を基地局212として図19を用いて具体的に説明する。
移動局231は、式(1)から式(2)が成立する状態になったら、基地局202に対して複製パケット送信可能状態に遷移することと、新たにパケット複製および送信可能状態に遷移する基地局を特定する基地局の番号とを基地局202に通知する(図19のS391およびS392)。
該通知を受けた基地局202は、基地局212に対して、パケット複製および送信可能状態に遷移するよう要求する。そして、一意の番号を付与する基地局が変更になるので、基地局202は、さらに、第1実施形態にて明記したように、現在基地局202が蓄積しているパケット(到達確認が得られていないパケット)の番号とパケットに付与する一意の番号の最新値とを通知する(S393)。これは、基地局212は、移動局宛てのパケットを蓄積していないアイドル状態から遷移するためである。そして、基地局202は、複製パケット送信可能状態に遷移する(S394)。
基地局212は、これらの通知に基づいて、パケット複製および送信可能状態に遷移し、基地局202から送出された該パケットを蓄積する(S395)。そして、基地局212は、新たに基地局212に到達するパケットを複製し、該複製パケットを基地局202に配布するように制御する。
(8)イベントEの説明
移動局において、式(2)が成立しており、時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が最大となる基地局に変更が生じたことなどにより、移動局231が、パケット複製および送信可能状態の基地局に対して複製パケット送信可能状態に遷移するよう要求し、複製パケット送信可能状態の基地局に対してパケット複製および送信可能状態に遷移するよう要求することが、イベントEである。
パケット複製および送信可能状態から複製パケット送信可能状態に遷移する基地局を基地局202とし、複製パケット送信可能状態からパケット複製および送信可能状態に遷移する基地局を基地局212として図20を用いて具体的に説明する。
時間平均的な受信電力値または時間平均的な受信電力対干渉電力比が最大となる基地局が基地局202から基地局212になったら、移動局231は、 基地局202に対して複製パケット送信可能状態に遷移するよう要求するとともに、基地局212に対してパケット複製および送信可能状態に遷移するよう要求する(図20のS401およびS402)。
該通知を受けた基地局202は、複製パケット送信可能状態に遷移する(S404)。そして、一意の番号を付与する基地局が変更になるので、基地局202は、第1実施形態にて明記したように、現在蓄積しているパケット(到達確認が得られていないパケット)の番号とパケットに付与する一意の番号の最新値とを通知する。また、基地局212もパケットを蓄積しているので、基地局202は、基地局212に問合せをすることで両基地局にて蓄積されている異なるパケットのみを送信する方法でも可能である(S403)。基地局202にて蓄積しているパケットは、そのまま蓄積されるが、タイムアウトにより削除する方法の場合は、蓄積している全てのパケットに対して、この時点で削除タイマーが起動される。
基地局212は、これらの通知に基づいて、パケット複製および送信可能状態に遷移する(S405)。そして、基地局212は、新たに基地局212に到達するパケットを複製し、該複製パケットを基地局202に配布するように制御する。
以上の第3実施形態によれば、パケットの配布を行う回線制御局を基地局とは別に設けずに、各基地局においてパケットを蓄積して、1つ又は複数の基地局がパケットを移動局へ送信するため、ネットワーク内のトラヒックを低減することができ、パケットの伝送遅延時間を短縮することでスループットを増大しシステム全体の性能を向上することができる。
[第4実施形態]
次に、図21を用いて、ハンドオーバ送信制御に関する動作を説明する。移動通信システムの構成は、第3実施形態と同様の図7の構成とする。
移動局は、複数基地局から送信される報知信号、共通パイロット信号などを受信することにより、移動局と複数基地局間の時間平均的な受信品質(ここでは例えば、伝搬損失)を求める。そして、移動局は、求めた時間平均的な受信品質を、一意の番号を付加するパケット複製および送信可能状態の基地局に通知する。該パケット複製および送信可能状態の基地局は、通知された複数の時間平均的な受信品質に基づいて、複製パケット送信可能状態の基地局のそれぞれに対してパケット単位での送信を指示する。各基地局は、該指示に従って新規のパケットを送信する。また、再送時は、移動局が再送要求した基地局のみが、パケットを再送する。
一意の番号を付加する基地局によるパケット単位での送信指示は、具体的には次のように実行される。一意の番号を付加する基地局は、複数の時間平均的な伝搬損失を用いて以下の式(3)に基づいてS
i(j)を求め、自局に入力されるパケットに対して該S
i(j)が小さい基地局順に「送信を指示する識別子」を付加する。また、該S
i(j)が同じ場合、一意の番号を付加する基地局は、時間平均的な伝搬損失がより小さい基地局に「送信を指示する識別子」を付加する。なお、以下の式(3)の伝播損失については、更に受信品質を示す指標である、希望波信号対干渉電力比(CIR)、受信信号対干渉電力比(SIR)、希望波信号対雑音電力比(CNR)、受信信号対雑音電力比(SNR)の何れであっても良い。
なお、iは基地局の番号、jはLiの更新後に入力されたパケット数を表す。
一例として、移動局に対してパケットを送信することが可能な3つの基地局(i=1〜3)が存在する状態で時間平均的な伝搬損失が更新されたとき以降の動作を説明する。また、i=1をパケット複製および送信可能状態の基地局とし、i=2および3を複製パケット送信可能状態の基地局とし、それぞれの時間平均的な伝搬損失が以下の場合とする。
第1番目基地局(i=1)と移動局間の伝搬損失:L1=1
第2番目基地局(i=2)と移動局間の伝搬損失:L2=2
第3番目基地局(i=3)と移動局間の伝搬損失:L3=3
時間平均的な伝搬損失の更新後における第1番目のパケットを第K番目パケットとする。この時点において各Si(j)は全てゼロであるので、一意の番号を付加する基地局は、最小の伝搬損失である第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
この識別子は、1ビット長で可能である。即ち、識別子が“1”とされたパケットは送信するよう動作させ、識別子が“0”とされたパケットは送信せずそのまま蓄積するよう動作させることで、1ビットの識別子による指示が可能となる。該識別子の付加後における各S
i(j)値は、以下の通りとなる。
次に、第(K+1)番目のパケットが入力される。この時点においてS
2(0)およびS
3(0)がゼロであるので、一意の番号を付加する基地局は、より小さい伝搬損失である第2番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。そして、この時点における各S
i(j)値は、以下の通りとなる。
第(K+2)番目のパケットが入力された時点において、S
3(0)のみがゼロで最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第3番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。そして、この時点における各S
i(j)値は、以下の通りとなる。
このようにして、一意の番号を付加する基地局は、入力されたパケットを複製すると共に、複製パケットを配布する際に、上記の式(3)に基づいて、ある基地局に対するパケットの送信可の識別子を有効にする。その後の第(K+3)番目から第(K+10)番目のパケットに対する式(3)の計算結果と識別子の状態が図21に示されている。
図21に示すように、その後、第(K+3)番目のパケットが入力されると、上記のようにS1(1)が最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+4)番目のパケットが入力された時点では、S1(2)およびS2(1)が“2/6”で等しいので、一意の番号を付加する基地局は、より小さい伝搬損失である第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+5)番目のパケットが入力された時点では、S2(1)が最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第2番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+6)番目のパケットが入力された時点では、S1(3)およびS3(1)が“3/6”で等しいので、一意の番号を付加する基地局は、より小さい伝搬損失である第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+7)番目のパケットが入力された時点では、S3(1)が最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第3番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+8)番目のパケットが入力された時点では、S1(4)およびS2(2)が“4/6”で等しいので、一意の番号を付加する基地局は、より小さい伝搬損失である第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+9)番目のパケットが入力された時点では、S2(2)が最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第2番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
第(K+10)番目のパケットが入力された時点では、S1(5)が最小値であるので、一意の番号を付加する基地局は、第1番目の基地局から送信するよう識別子を付加する。
そして、各基地局は、識別子が1となっているパケットのみを移動局に送信する。
なお、時間平均的な伝搬損失が更新された場合、一意の番号を付加する基地局は、j=0とリセットすることによりSi(j)をクリアした後に、上記処理の実行を継続する。
また、移動局が再送を要求する時は、移動局はその時点において最小の伝搬損失となる基地局を選択し、選択された基地局からパケットを再送するよう要求する。このように移動局により選択された任意の基地局からパケットの再送が実行できるのは、各基地局が、配布された複製パケットを蓄積しているからである。
以上説明した構成および動作とすることにより、移動局からパケット到着を報知する手順を行うことなく、各基地局は、時間平均的な伝搬損失に基づいて適切なパケット送信を行うことができると共に、再送パケットはその時点における最小伝搬損失となる基地局から即座に送信することが可能となるので、他セルまたは他移動局に対する干渉を低減しながら迅速な再送を行うことが可能となる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図28〜図31を用いて説明する。図28に示すように第5実施形態における移動通信システムは、前述した第1実施形態の移動通信システム(図1)と同様に、移動局1131と、複数の基地局1102、1112とを含んで構成されており、各基地局はネットワーク1を介して相互に通信可能とされている。
このうち移動局1131の構成は、第1実施形態の移動局131と同様である。基地局1102の構成については、第1実施形態の基地局102に対し、パケットを複製するパケット複製部1107が追加され、図1の転送部105に代わり、他の基地局への複製パケットの配布及び他のデータリンク伝送制御を行う基地局へのパケットの転送を行う転送/配布部1105が設けられている。また、データリンク伝送制御部1103は、移動局との間でパケットの送受信を行うための自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うとともに、データリンク伝送制御情報に代わり、データリンク伝送制御を行う基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信する点で、第1実施形態と異なる。また、基地局1112は、基地局1102と同様の構成とされている。
次に、本第5実施形態での動作を説明する。ここでは、当初、移動局1131と基地局1102の間の無線通信品質は良好であるが、移動局1131と基地局1112の間の無線通信品質は良好でないため、移動局1131は基地局1102とのみ通信可能な初期状態であるとする。この初期状態での動作を図29に沿って説明する。
基地局1102では、図29のS41でネットワーク1から入力されたパケットがデータリンク伝送制御部1103に入力され、データリンク伝送制御部1103は、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。ここでデータリンク伝送制御部1103は、各パケットに対して識別情報を付与する(S42)。本実施形態で用いる識別情報は、データリンク伝送制御部1103に入力されたパケットの識別を可能とするためのパケット識別情報と、該データリンク伝送制御を行っている制御基地局(即ち、識別情報の付与を行う基地局)の識別を可能とするための制御基地局識別情報とで構成される。また、データリンク伝送制御部1103は、受信したパケットの誤り検出のためにCRCなどをパケットに付加して該付加後のパケット(即ち、識別情報が付与されたパケット)を蓄積部104に記憶する(S42)と共に送受信機5に出力する。送受信機5は、該パケットを送信信号に変調した後に、基地局アンテナ6を介して移動局1131に送信信号を送信する(S43)。
一方、移動局1131は、移動局アンテナ32からの信号を送受信機33により受信・復調した後に、該復調で得られたパケットをデータリンク伝送制御部1034に入力する。データリンク伝送制御部1034は、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うとともに、入力されたパケットに対し、付加されているCRCを用いて誤り検出を行う(S44)。その検出の結果、パケットに誤りがある場合、データリンク伝送制御部1034は、付与されている識別情報に基づいて、再送を要求するパケットの番号と、制御基地局である基地局1102とを認識し、該認識結果に基づいてNACK信号を基地局1102に対して送信する(S45)。これにより、該パケットの再送要求がデータリンク伝送制御部1103に通知される。なお、この通知方法としては、基地局1102に直接通知する方法や、他の基地局を介して通知する方法等を採用することができる。そして、データリンク伝送制御部1103は、ACK信号が入力されたものでないと判断し(S47)、記憶してある該パケットを再送する(S43)。
一方、誤り検出にてパケットに誤りがない場合、デ一タリンク伝送制御部1034は、付与されている識別情報に基づいて、制御基地局である基地局1102を認識し、該認識結果に基づいてACK信号を基地局1102に対して送信する(S46)。これにより、該パケットの到達確認がデータリンク伝送制御部1103に通知される。そして、データリンク伝送制御部1103は、ACK信号が入力されたと判断し(S47)、再送のために記憶してあるパケットを削除する(S48)。
次に、移動局1131が移動することにより、移動局1131と今まで通信していた基地局1102との通信品質が劣化してきて、隣接の基地局1102との通信品質と同等程度になってきた場合、前述した実施形態で説明したように、移動局1131は基地局1102と基地局1112から同一のパケットを送信するよう、基地局1102に要求する(S49)。該要求により、基地局1102のデータリンク伝送制御部1103は、その時以降において基地局1102にパケットが入力されると(S50)、該パケットに対し上記S42と同様の処理を行って(S51)送受信機5により移動局1131へ送信する(S52)と共に、パケット複製部1107により該パケットを複製し(S53)、複製したパケットを転送/配布部1105により基地局1112のデータリンク伝送制御部1113へ配布する(S54)。
データリンク伝送制御部1113は、データリンク伝送制御部1103によって、そのまま送受信機15に配布パケットを出力するよう制御されるので、基地局1102と基地局1112から同一のパケットが送信される(S52)。
ここでデータリンク伝送制御部1113が、到着したパケットをそのまま出力するか、前述のような自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うか、の判断は、到着したパケットに識別情報が付与されているか否かを検出することで可能となる。つまり、データリンク伝送制御部1113は、入力されたパケットに識別情報が付与されていることを検出した場合、到着したパケットをそのまま送受信機15に出力する。一方、データリンク伝送制御部1113は、入力されたパケットに識別情報が付与されていないと検出した場合、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。
移動局1131は、前述と同様に受信パケットについて誤り検出を行い(S55)、NACKまたはACKを基地局1102に出力する(S56およびS57)。基地局1102では、上記と同様に、ACKが入力されたか否かが判断され(S58)、NACKであればパケットが再送され(S52)、ACKであれば、記憶しているパケットが削除される(S59)。
次に、移動局1131と基地局1102との通信品質が劣化してきて、基地局1112との通信品質が良好になってきたとする。この遷移状態で複数の基地局から移動局へパケットを送信する場合の動作を図30に沿って説明する。
移動局1131は、基地局1102のデータリンク伝送制御部1103に対して、データリンク伝送制御を実行する基地局変更の要求を通知する(図30のS61)。該通知も、前述と同様に、基地局1102に直接通知する方法や、他の基地局を介して通知する方法等を採用することが可能である。
該基地局変更の要求を受けたデータリンク伝送制御部1103は、転送/配布部1105を介し、変更先である基地局1112に移動局1131に対するデータリンク伝送制御の開始を要求する(S62)。さらに、この時以降において、データリンク伝送制御部1103に入力されるパケットは、そのまま転送/配布部1105により基地局1112に転送させる設定とする。このため、データリンク伝送制御1103にパケットが入力されると(S63)、該パケットは、そのまま転送/配布部1105により基地局1112に転送される(S64)。
変更元のデータリンク伝送制御部1103は、再送のために記憶しているパケットに対してのみデータリンク伝送制御を、図29のS52からS59までの動作と同様に、そのまま引き続き行う。つまり、これらパケットについては到達確認が終了するまで、変更元のデータリンク伝送制御部1103が、そのまま再送制御を行う。この時も、前述と同様に、基地局1102と基地局1112から同一のパケットが移動局1131へ送信されている。
一方、変更先である基地局1112のデータリンク伝送制御部1113は、到着した識別情報が付加されていないパケット(S64又はS65により到達したパケット)に対して、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う。ここでデータリンク伝送制御部1113は、各パケットに対して識別情報を付与するとともに、受信したパケットの誤り検出のためにCRCなどをパケットに付加して該付加後のパケット(即ち、識別情報が付与されたパケット)を蓄積部114に記憶する(S66)と共に送受信機15に出力する。送受信機15は、該パケットを送信信号に変調した後に、基地局アンテナ16を介して移動局1131に送信信号を送信する(S67)。
上記識別情報が付与されたパケットは複製部1117により複製され(S68)、該複製パケットは転送/配布部1115を介して基地局1102のデータリンク伝送制御部1103に配布される(S69)。該データリンク伝送制御部1103では、パケットに識別情報が付与されているので、該パケットはそのまま送受信機5に出力するように制御されるので、基地局1102と基地局1112から同一のパケットが送信される(S67)。
移動局1131は、前述と同様に受信パケットについて誤り検出を行い(S70)、基地局1112を認識し、NACKまたはACKを基地局1112に出力する(S71およびS72)。基地局1112では、ACKが入力されたか否かが判断され(S73)、NACKであればパケットが再送され(S67)、ACKであれば、記憶しているパケットが削除される(S74)。
次に、上記同様に、移動局1131と基地局1102との通信品質が劣化し基地局1112との通信品質が良好になってきた遷移状態において、単一の基地局から移動局へパケットを送信する場合の動作を図31に沿って説明する。
前述した実施形態で説明したように、基地局1112のデータリンク伝送制御部1113は、基地局1112のみからパケット送信を受ける旨の要求を移動局1131から受信したことにより(図31のS81)、パケットの複製を行わないように制御する。このため、その時以降において基地局1102にパケットが入力された場合(S82)、該パケットは基地局1112に転送され(S83)、基地局1112でのみ前述の処理が実行される(S84〜S90)。
即ち、基地局1112のデータリンク伝送制御部1113は、各パケットに対して識別情報を付与するとともに、受信したパケットの誤り検出のためにCRCなどをパケットに付加して該付加後のパケット(即ち、識別情報が付与されたパケット)を蓄積部114に記憶する(S84)と共に送受信機15に出力する。送受信機15は、該パケットを送信信号に変調した後に、基地局アンテナ16を介して移動局1131に送信信号を送信する(S85)。
移動局1131は、前述と同様に受信パケットについて誤り検出を行い(S86)、基地局1112を認識し、NACKまたはACKを基地局1112に出力する(S87およびS88)。基地局1112では、ACKが入力されたか否かが判断され(S89)、NACKであればパケットが再送され(S85)、ACKであれば、記憶しているパケットが削除される(S90)。
以上説明したように、データリンク伝送制御を行う制御基地局が、データリンク伝送制御情報に代わり、該制御基地局を識別するための制御基地局識別情報を移動局に送信することで、移動局は、制御基地局識別情報に基づいて該制御基地局を認識することができ、移動局は制御基地局との間で、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御(例えば、新たな基地局との接続要求等)を行うことができる。このように、移動局と基地局が、データリンク伝送制御情報に代わり、制御基地局識別情報を用いてデータリンク伝送制御を行うことにより、送受信される制御情報のデータ量を削減することができ、ネットワークトラヒック量を軽減することができる。
また、本実施形態では、識別情報は、常に、基地局を識別する情報とパケットを識別する情報とから構成されるものとして説明したが、1つの基地局のデータリンク伝送制御部のみが自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を実行している状態では、パケットを識別する情報のみで識別情報を構成し、2つ以上の基地局のデータリンク伝送制御部が自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を実行している状態では、パケットを識別する情報と基地局を識別する情報とで識別情報を構成することで、識別情報のビット数をさほど増加させないで本発明が可能となる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態では、一の基地局から他の基地局にデータリンク伝送制御情報のみを転送する第1の方法と、データリンク伝送制御情報とパケットを同時に転送するか又は識別情報が付加されたパケットを転送する第2の方法について順に説明する。なお、本実施形態ではIP(Internet Protocol)パケットを用いた場合について説明するが、該IPパケットと同様なパケット構成であるパケットであれば、本実施形態は適用可能である。
まず、第1の方法を説明する。図32には、この第1の方法を実行するための装置構成例を示す。図32に示す移動通信システムでは、複数の基地局2102、2112がネットワーク1を介して相互に通信可能とされている。
基地局2102は、基地局アンテナ6を介して、無線ネットワークからのデータの受信及び無線ネットワークへのデータの送信を行う送受信機5と、第1実施形態で述べた自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行うとともに基地局2102内の各構成部を制御するデータリンク伝送制御部2103と、基地局変更の要求を受けた場合等に変更先の基地局へデータリンク伝送制御情報を送信するとともに後述のカプセル化を行うカプセル化および転送部2105と、データリンク伝送制御部2103によるパケットデータ等の一時記憶域として機能する蓄積部2104と、受信されたカプセル化パケットのデカプセル化を行う(カプセルを解く)デカプセル部2106とを含んで構成されている。
このうちカプセル化および転送部2105は、機能的には図33(a)に示す機能ブロックより構成される。即ち、カプセル化および転送部2105は、データリンク伝送制御情報と転送するパケットとをカプセル化するカプセル化部2105Aと、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、データリンク伝送制御情報の長さと転送するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを転送するカプセル化パケット転送部2105Bと、転送されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、転送するパケットのヘッダに記録された該転送するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含んで構成されていると判断する構成判断部2105Cとを含んで構成されている。
なお、他の基地局2112も、上記のような基地局2102と同様に構成されている。
次に、第1の方法に係る動作を説明する。基地局2102のデータリンク伝送制御部2103は、データリンク伝送制御情報をカプセル化及び転送部2105に出力する。該カプセル化及び転送部2105は、図34に示したように、IPヘッダ部の発信元IPアドレスには基地局2102のIPアドレスを、宛先IPアドレスには基地局2112のIPアドレスをそれぞれ設定する。さらに、データリンク伝送制御情報をUDP又はTCPのデータとして基地局に転送するために、プロトコル番号にはUDP又はTCPを表す番号を設定し、パケット長にはIPヘッダ部とIPデータ部(UDP又はTCPヘッダ部とUDP又はTCPのデータ部)のそれぞれの長さの合計値を設定する。そして、UDP又はTCPのデータ部には、転送するデータリンク伝送制御情報を入力し、基地局に転送するIPパケットを構成する。構成した該IPパケットは、ネットワーク1に送出される。送出された該IPパケットは、設定した宛先IPアドレスにより基地局2112に到達する。
基地局2112では、到達した該IPパケットはデカプセル部2116に入力される。該デカプセル部2116は、図35に示した流れ図に沿って処理を行う。なお、図35は後述の第2の方法に係る処理手順も記述している。
まず始めに、入力したパケットの最も外側にあるIPヘッダ部のプロトコル番号を識別する(図35のS501)。この例の場合、識別したプロトコル番号はIPのカプセル化を表さない(S502で否定判断される)ので、IPデータ部の中にあるUDP又はTCPのデータ部を抽出してデータリンク伝送制御情報とする(S507)。抽出した該データリンク伝送制御情報は、データリンク伝送制御部2113に入力される。該データリンク伝送制御部2113では、入力されたデータリンク伝送制御情報により、前述した実施形態で説明してきたデータリンク伝送制御が実行される。
例えば、データリンク伝送制御情報に移動局のIPアドレス又は機体番号などのように移動局を特定する情報と、最新パケットのパケットを一意に識別する番号とが含まれている場合、該移動局宛てパケットの自動再送制御には、該番号の次の番号が用いられる。また、データリンク伝送制御情報に、移動局を特定する情報と、移動局からのACKの情報又は蓄積パケットの削除の情報とが含まれている場合、蓄積部2114に蓄積されている該移動局宛てのACKに対応するパケット又は削除情報に対応するパケットを削除する。
次に、第2の方法(データリンク伝送制御情報とパケットを同時に転送するか又は識別情報が付加されたパケットを転送する方法)について説明する。第2の方法は、パケット伝送中のハンドオーバ又はサイトダイバーシチなどにより、ACK待ちとして蓄積しているパケットと該パケットを一意に識別する情報とをハンドオーバ先基地局に転送する場合、送信待ちとして保持しているパケットと該パケットを一意に識別する情報とをハンドオーバ先基地局に転送する場合、ハンドオーバ先基地局から送信するために、パケットと、該パケットを一意に識別する情報と制御基地局識別情報の両方又は一方とを転送する場合、該パケットを一意に識別する情報、制御基地局識別情報、パケットを送信するか否かを示す情報又はこれらの組合せと複製したパケットとを複製パケット送信可能状態の基地局に配布する場合などに用いられる。
図36には、第2の方法を実行するための装置構成例を示す。図36に示す基地局2202は、図32の基地局2102の構成に加えて、パケットを複製するパケット複製部2206をさらに備え、カプセル化および転送部2105に代わって、複製したパケットを他の基地局に配布するとともに後述のカプセル化を行うカプセル化および配布部2205を備えている。
このうちカプセル化および配布部2205は、機能的には図33(b)に示す機能ブロックより構成される。即ち、カプセル化および配布部2205は、データリンク伝送制御情報と配布するパケットとをカプセル化するカプセル化部2205Aと、カプセル化により得られたカプセル化パケットの長さを表す、データリンク伝送制御情報の長さと配布するパケットの長さの合計値を、該カプセル化パケットのヘッダに記録して該カプセル化パケットを配布するカプセル化パケット配布部2205Bと、配布されてきたカプセル化パケットのヘッダに記録された該カプセル化パケットの長さから該カプセル化パケットのヘッダの長さを引いた長さと、配布するパケットのヘッダに記録された該配布するパケットの長さとが等しくない場合、該カプセル化パケットがデータリンク伝送制御情報を含んで構成されていると判断する構成判断部2205Cとを含んで構成されている。
なお、他の基地局2212も、上記のような基地局2202と同様に構成されている。
次に、第2の方法に係る動作を説明する。ここでは、基地局2202から基地局2212に、複製した識別情報が付加されたパケットを配布する場合について説明する。
基地局2202のデータリンク伝送制御部2103は、識別情報を付加したパケットをパケット複製部2206に入力する。該パケット複製部2206は、入力した該識別情報を付加したパケットを送受信送受信機5に出力すると共に、該パケットを複製した後にカプセル化及び配布部2205に出力する。該カプセル化及び配布部2205は、図37に示したように、IPヘッダ部(a)の発信元IPアドレスには基地局2202のIPアドレス、 宛先IPアドレスには基地局2212のIPアドレスをそれぞれ設定する。さらに、目的の移動局に転送するIP パケットを他の基地局に転送するために、プロトコル番号にはIPのカプセル化を表す番号を設定し、パケット長にはIPヘッダ部(a)と目的の基地局に転送するIPパケットと識別情報のそれぞれの長さの合計値を設定する。
そして、IPヘッダ部(a)のIPデータ部には、目的の移動局に転送するIPパケットと識別情報を入力して基地局に転送するIPパケットを構成する。構成した該IPパケットは、ネットワーク1に送出される。 送出された該IPパケットは、設定した宛先IPアドレスにより基地局2212に到達する。
基地局2112では、到達した該IPパケットはデカプセル部2116に入力される。該デカプセル部2116は、前述と同様に、図35に示した流れ図に沿って処理を行う。まず始めに、入力されたパケットの最も外側にあるIPヘッダ部のプロトコル番号を識別する(図35のS501)。この例の場合、識別したプロトコル番号はIPのカプセル化を表す(S502で肯定判断される)ので、最も外側にあるIPヘッダ部(図37のIPヘッダ部(a))のパケット長を解析することにより、基地局へ転送するパケットのパケット長X1を取得する(S503)。次に、外側から2番目のIPヘッダ部(図37のIPヘッダ部(b))のパケット長を解析することにより、目的の移動局に転送するパケットのパケット長X2を取得する(S504)。そして、得られたパケット長X1とX2と最も外側にあるIPヘッダ部の長さを用いた次の式(4)が成立する場合(S505で肯定判断される場合)、識別情報がない、つまりIPヘッダ部(a)のIPデータ部には目的の基地局に転送するIPパケットのみがあると判断される。
(X1)−(最も外側にあるIPヘッダの長さ)=(X2) ・・・(4)
この場合は、IPヘッダ部(a)のIPデータ部を抽出して目的の移動局に転送するIPパケットとして以下の処理を行う(S508)。即ち、抽出された目的の移動局に転送するIPパケットは、データリンク伝送制御部2113に入力され、該データリンク伝送制御部2113では、入力された該IPパケットに対して、前述した実施形態で説明してきたデータリンク伝送制御が実行される。
一方、式(4)が成立しない場合(S505で否定判断される場合)、識別情報があると判断して以下の処理を行う(S506)。この場合は、IPヘッダ部(a)のIPデータ部の先頭から長さX2だけの情報が、目的の移動局に転送するIPパケットとして分離して抽出され、IPヘッダ部(a)のIPデータ部の残りが識別情報として分離して抽出される。抽出された目的の移動局に転送するIPパケットと識別情報とは、データリンク伝送制御部2113に入力され、該データリンク伝送制御部2113では、入力された該IPパケットと該識別情報を用いて、前述した実施形態で説明してきたデータリンク伝送制御が実行される。
ここでは、基地局に転送又は配布するパケットとして、図34、図37に示した2つの異なる構成のIPパケットの場合についてそれぞれ説明したが、以上説明した方法を用いることにより、ある基地局から他の基地局に転送又は配布するパケットが、データリンク伝送制御情報のみを含む場合、データリンク伝送制御情報と目的の移動局に転送するIPパケットとを含む場合又は識別情報が付加されたIPパケットである場合、及び、目的の移動局に転送するIPパケットのみを含む場合を、それぞれ識別することが可能となり、データリンク伝送制御情報や識別情報に基づく制御を円滑に実行することが可能となる。
以上説明した各実施形態によれば、移動局の移動に応じて、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を実行する基地局を変更することにより、伝送遅延時間の増大を抑制して従来よりもスループットを増大することが可能となる。また、自動再送要求制御を含むデータリンク伝送制御を行う基地局が変更しても一連のデータリンク伝送制御情報を転送することにより新たな基地局が引継いで未到達確認のパケットまたはブロックのみの再送を行うので、スループットの低下を回避できる。
また、各基地局がパケットを蓄積することにより、再送の遅延時間および基地局間ネットワーク内のトラヒックの増加を低減することが可能となる。また、ハンドオーバ時でもスムーズなパケット伝送が可能となる。
また、ハンドオーバすべき所定の受信レベルの範囲に移動局が存在する場合には、複数の基地局から同じパケットを送信し、移動局が前記範囲外に移動した段階で基地局を切り替えることで、最も移動局に近い基地局でハンドオーバ制御を行うことを実現しながらハンドオーバ制御にかかる時間をなくし、再送までの遅延を短縮化することで、より効率的なデータリンク伝送を実現することができる。
1…ネットワーク、2、12、22、102、112、122、1102、1112…基地局、3、13、23、34、103、113、123、1034、1103、1113…データリンク伝送制御部、1105、1115…転送/配布部、1107、1117…パケット複製部、4、14、24…切替器、104、114、124…蓄積部、105、115、125…転送部、5、15、25、33…送受信機、6、16、26…基地局アンテナ、31、131、1131…移動局、32…移動局アンテナ、34A、1034A…移動局伝送制御部、34B、1034B…接続要求部、35…データ入出力端、202、212、222…基地局、203…データリンク伝送制御部、203A…識別情報付加部、203B…削除部、203C…削除部、203D…削除部、203E…削除パケット通知部、203F…配布制御部、203G…パケット再送部、203H…蓄積通知部、203I…通知制御部、203J…判断部、203K…指示部、204…蓄積部、205…配布部、206…パケット複製部、207…送受信機、208…基地局アンテナ、231…移動局、232…移動局アンテナ、233…送受信機、233A…ダイバーシチ受信部、234…データリンク伝送制御部、234A…選択部、234B…送信要求部、234C…変更時通知部、234D…測定部、234E…受信品質通知部、234F…判定部、234G…状態遷移要求部、235…データ入出力端、2102、2112、2202、2212…基地局、2103、2113…データリンク伝送制御部、2104、2114…蓄積部、2105、2115…カプセル化および転送部、2105A…カプセル化部、2105B…カプセル化パケット転送部、2105C…構成判断部、2106、2116…デカプセル部、2205、2215…カプセル化および配布部、2205A…カプセル化部、2205B…カプセル化パケット配布部、2205C…構成判断部、2206、2216…パケット複製部。