JP4344181B2 - 圧延ロールのオンライン研削方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧延スタンドに設けた研削装置の研削砥石で圧延ロールを研削する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧延機で鋼板を圧延するすると、圧延ロール表面において圧延鋼板の数量が増加するに従って、鋼板が接触する中央部分(鋼板圧延幅に対応)のみが摩耗し、この部分と鋼板が接触しない非圧延部分(両側部)との間に摩耗段差が生じる。摩耗段差が発生したロールを用いて摩耗幅以上の幅を有する鋼板を圧延すると、鋼板の板厚精度や平坦度を悪化させる結果となる。
【0003】
したがって、鋼板の圧延に当たっては広幅の鋼板から狭幅の鋼板の順に圧延するなど圧延スケジュールを制約する必要があった。しかし、この制約が守られない状態、すなわち、圧延スケジュールの関係で前記摩耗幅より広い幅を有する鋼板を圧延しなければならない状況になると、摩耗段差の付いていないロール(オフライン研削したもの、または新品)に交換(組み替え)して圧延を再開しなければならなかった。
【0004】
また、近年連続熱延鋼板の圧延機においては、この摩耗したロールを交換することなく、圧延機内で鋼板圧延中(鋼板がロールに噛み込んだ状態)に、この摩耗段差の発生したロールを所要のプロフィール(平滑面)に研削するオンラインでのロール研削が行なわれるようになってきた。
【0005】
このオンラインでのロール研削は、圧延量の増加に伴って増大する圧延ロールの摩耗段差部を圧延中にロールを組み込んだままの状態で、逐次研削、除去することで生産性の向上と整備コストの低減を図ることを目的としている。
しかして、オンラインでのロール研削については、前述のロール表面における摩耗段差部を逐次除去する必要もあるが、ロール表面の肌荒れ防止、表面粗度均一化等を目的としてロール全長の研削も行っている。
【0006】
上記オンラインでのロール研削については、これらを実施するための装置、方法について種々の発明が提案されており、被圧延材を圧延しながら圧延ロールの表面を研削するオンラインロールグラインダによるロール表面研削方法において、被圧延材が圧延ロールに噛み込まれる時及び圧延ロールを抜け出る時には研削を中断するオンラインロールグラインダによるロール表面研削方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−23715号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記した連続熱延鋼板の圧延においては、圧延ロールで鋼板を圧延している時間(鋼板がロールに噛込みんでいる時間)が、圧延していない時間(鋼板がロールを抜け次の鋼板が噛込むまでの時間)に対して充分長いため、鋼板噛込み後に研削砥石をロールに接触させ、鋼板圧延中にロール研削を行うことができた。
【0009】
一方、厚鋼板の圧延は、該鋼板の長さが前記連続熱延鋼板に対して大幅に短いことから、圧延している時間も短い。このため下記(1),(2)の非圧延時間中にロール研削を行っている。
(1)前鋼板の最終パスを終了し、圧延ロールから抜け出た後、次の鋼板を噛み込むまでの非圧延時間(鋼板間アイドル)。
(2)鋼板の圧延方向を変更(幅出し圧延→長さ出し圧延又は長さ出し圧延→幅出し圧延)するために鋼板をターンさせている非圧延時間。
【0010】
しかし、上記(1),(2)の非圧延時間は一定ではなく種々の条件により変化するために、圧延ロールの端部に形成した摩耗段差部と未摩耗部の全部を研削できない場合が生じ、研削できた部分と研削できなかった部分の境目には段差が生じる。特にこの段差が摩耗段差部で大きくなると圧延される鋼板の幅方向端部が薄くなり、板厚精度が悪化したり、耳波が発生する問題があった。
【0011】
例えば、リバース圧延機においては、長さの短い厚鋼板を正方向移動および逆方向移動を繰り返して往復させながら圧延するため、圧延に要する時間は短く、連続熱間圧延ロールのように鋼板圧延中に研削を行い研削を完了させることは困難である。また、ロール研削に当たって、厚鋼板圧延中に、ロール研削を目的とした時間を確保し、ロール研削まとめて行うことは、圧延の生産性を大きく低下させるため好ましくない。
【0012】
さらに、別の対応策として研削すべき1本のロールに対して、多くの研削砥石を設置したロール研削装置を導入すれば、研削砥石1個当りの研削担当範囲を少なくできるため、短い時間であっても研削を完了させられるが、多数の研削砥石を用意することは設備への投資や、維持のために多大のコストが懸かる。
【0013】
本発明は、厚鋼板圧延機の圧延ロールを研削するに当たって、限られた研削砥石によって制約された時間内でロール研削を行うことを目的とし、それに適合した圧延ロールのオンライン研削方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した従来方法における問題点を解決するためになされたものであって、その要旨するところは、下記手段にある。
(1) 被圧延材を圧延ロールにより厚鋼板圧延するに際し、該被圧延材が圧延ロールに噛み込んでいない非圧延中に、研削砥石を圧延ロールの軸方向に横行させて該圧延ロールの端部に形成される摩耗段差部と未摩耗部をオンラインで研削する方法において、前回の研削が前記摩耗段差部の中途で終了したときは、次回の研削開始位置を前回の研削終了位置とした圧延ロールのオンライン研削方法。
(2) 前記圧延ロールの摩耗段差部の研削を行うに際して、初回の研削開始位置をロールセンター側から行う圧延ロールのオンライン研削方法。
(3) 前記圧延ロールの研削を行うに際して、該圧延ロールの圧延センターラインに対して左・右対称範囲を研削する(1)ないし(2)のいずれかに記載の圧延ロールのオンライン研削方法。
(4) 前記圧延ロールの研削を行うに際して、研削砥石の周速,砥石横行速度,圧延ロールの周速のうち、1または2以上を調整する(1)〜(3)のいずれかに記載の圧延ロールのオンライン研削方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、厚鋼板圧延中(圧延の停・休止時間を含まず)にロール研削装置によって、オンラインで圧延ロールを研削するに当たって、厚鋼板の圧延スケジュールに対応して、どのような方策を用いれば適切な研削を行うことができるかと云う命題の基に、本発明者らは、研削装置を如何に操作すればよいかについて種々なる検討を重ねた。
【0016】
厚鋼板圧延でのオンライン圧延ロール表面研削に際しては、圧延中の厚鋼板が圧延ロールから抜け出た後、次に厚鋼板を噛込むまでの非圧延時間(但し厚鋼板を連続的に往復圧延している時に圧延ロールから厚鋼板が抜出ている時間は含まない)内で、ロールの表面を研削除去しなければ、研削砥石の欠損や研削装置の故障を惹起する危険性が大きい。また、研削装置については、高い研削性能(単位時間当たりの研削量)を発揮させなければ短時間に研削を完遂することができない。
【0017】
すなわち、圧延ロールの表面研削は非圧延時間に行うことが必要である。圧延機において厚鋼板の噛込み、抜出しの瞬間は、ロール自体が一時的ではあるが振動により上下動する。この時にロール研削を行っていると回転している研削砥石に大きな衝撃が加わり、砥石を破損する事態が当然起こり得るので、この時間帯を避け、この時間帯から外れたタイミングでロール研削を行う必要がある。
【0018】
厚鋼板の圧延スケジュールにおいては、非圧延時間の発生回数は圧延方法によっても異なるが、1厚鋼板の圧延につき、先行材の圧延完了後、次圧延材の圧延開始までの板間における非圧延時間(必ず発生)や、幅出し圧延・長さ出し圧延へ移行する際の厚鋼板ターン時の非圧延時間や、制御圧延時における圧延再開指定温度までの冷却時の非圧延時間等が存在するので、前述したように、このタイミング(研削許容時間)を利用してロール研削を行わなければ、圧延スケジュールの上では時間的な余裕はなく無理な状態にある。
【0019】
一方、非圧延時間には厚鋼板の圧延を行っていないため、圧延機における圧延ロールの周速を自由に選択することができる。したがって、研削砥石と圧延ロールについては研削が効率よく行える研削条件(圧延ロールおよび研削砥石の周速の調整,研削砥石横行速度の調整)に設定できる利点がある。
すなわち、圧延ロールの研削において、通常の研削条件であれば、回転する研削砥石の周速を増すほど切削面積および切削深さを増すことができ、被研削圧延ロールの研削量を増加できる。また研削される被圧延ロールについても研削時にロールの周速を早めることによって研削量を増加させることができる。
この特性を活用し高速研削を実施することにより短時間において研削量を増大することが可能となる。
【0020】
ところで、これらの非圧延時間で研削に利用できる1回当りの時間は、20秒以下と短いが、1厚鋼板の非圧延時間内で研削すべき圧延ロールの研削範囲を非圧延時間毎に行えば、効率よく研削を行うことができる。限られた研削許容時間の中で必要とする研削範囲を1回で研削しようとすると、研削砥石を高速でロール軸方向に横行させ、かつ研削砥石と圧延ロールも高速回転させなければならない。
【0021】
圧延ロール周速と研削砥石の横行速度には、均一研削する(ネジ切り状にならない)ための条件があり、ロール周速に対して砥石の横行速度が大き過ぎるとネジ切り状の研削となる。したがって、前記ロール周速または砥石の横行速度の上限を目安にロール周速と砥石の横行速度との関係から適切な条件に設定する必要がある。研削砥石の幅を大きくするとネジ切状の送り目の発生は防止できるが、研削砥石を圧延ロールへ均一に接触させることが困難となる。
【0022】
しかして、圧延ロールにおいて研削すべき範囲としては、摩耗段差のうち先ず圧延する厚鋼板がロールに当接する範囲(図1の摩耗段差部分)は勿論であるが、これに加えて、厚鋼板が当接しない範囲(図1の未摩耗部分)においても研削しておかなねば、以降で、より広幅の厚鋼板を圧延するときに圧延ロール径において中央部と端部とでバランスが執れなくなる。
【0023】
さらに、圧延ロールにおける表面の摩耗段差部の研削は、でき得る限り迅速に行う必要がある。圧延ロールの摩耗段差量は圧延量の増加(厚鋼板が圧延ロールを通過する回数の増加)するに従い漸次増大していくので、この摩耗段差部を逐次除去してやらなければ、厚鋼板圧延毎に要研削量が加算されていき、研削に当たってはより多くの研削量を必要とする。
【0024】
累積した大きな摩耗段差は厚鋼板の圧延形状や板厚精度に悪影響を及ぼす。このような観点から、研削範囲は摩耗段差が発生する位置(ロールセンター側の起点)からロール端部までを連続して設定する必要がある。研削範囲を不連続に設定したり、部分的な範囲に設定すると、摩耗段差とは別に研削によって新たな段差が生じることになる。
ロール研削において、非圧延時間は圧延条件によって変動するので、研削時間を一律に決めることはできない。
【0025】
前述したように、圧延ロールの端部に形成した摩耗段差部と未摩耗部の全部を研削できない場合が生じ、研削できた部分と研削できなかった部分の境には段差が生じる。特にこの段差が摩耗段差部で大きくなると圧延される鋼板の幅方向端部が薄くなり、板厚精度が悪化したり、耳波が発生する問題がある。
【0026】
本発明においては、このような事態を避けるため前回の研削が摩耗段差部の中途で終了したときは、次回の研削開始を前回の研削終了位置から続けて行うことによって、摩耗段差部の中途に研削による段差部の発生を極力防止することに主点をおいた。
【0027】
すなわち、初回(第1回目)の研削開始位置は、ロール摩耗段差発生部のロールセンター側から端部に向かって可能な限り研削し、若し研削範囲が摩耗段差部の全域に及ばない場合は、次回の研削を前回の研削終了位置(摩耗段差部内)から開始し、摩耗段差部をできる限り取り除くように研削し、研削後のプロフイルを滑らかにして研削による段差の悪影響は少なくする。
【0028】
また、研削範囲が狭く、短時間で完了できると予測された場合は、1回の非圧延時間で完了させても別に問題は無い。逆に研削範囲が広く、非圧延時間内に完了できないと予測された場合は、研削範囲を狭めた研削条件に設定して行う。
さらに、研削許容時間が長い場合は、砥石の周速,横行速度,ロールの周速を調整して研削行うことが好ましい。
さらに、研削許容時間が長い場合は、摩耗段差以外にロール端部の研削もプラスして研削することにより、ロール全面の研削を実施することができる。
【0029】
図1は圧延ロール表面の研削範囲を模式的に略示したもので、(a),(b)は研削許容時間が短かったため、摩耗段差発生部分からロール端部までの研削を行うことができなく、それぞれ摩耗段差部を分割研削を行った例であり、(a)は摩耗段差部のロールセンター側から開始し途中まで研削した例であり、(b)は(a)で摩耗段差部の途中で終了したので、次回に前回の研削終了位置から開始し、開始位置からロール端部側の一部まで研削した例である。(c)は研削許容時間が長かったので、摩耗段差部分を含むロール端部まで研削した例である。
【0030】
しかして、圧延ロール研削に当っては研削砥石の左右の能力バランス如何にもよるが、圧延される厚鋼板形状はできるだけロール中心に対して左右対称状態を維持しているのが好ましいことから、圧延ロール表面形状もそれに合致する形状を保持する必要がある。そこで圧延ロールの研削においてはロール中心に対し左右対称位置の研削を行えるよう、研削装置の砥石稼動条件をほぼ等しくした状態で実施するのが好ましい。そのためには研削装置に偶数個の研削砥石を用意し、ロール中心に対して研削砥石を左・右同数に分けて設置する必要がある。
【0031】
研削時での研削砥石,圧延ロールの周速および研削砥石横行速度の調整に当たっては、圧延ロールの研削必要量と研削許容時間の両者から適切な周速および横行速度を設定する。設定に際しては、研削砥石,圧延ロールの周速および砥石の横行速度と研削作業量の関係を予め過去のデータから求めておき、これら要因の増減により研削作業量をどの程度増減できるかを把握しておく。さらに、これら研削必要量,研削許容時間,研削作業量の情報は予め演算器に入力しておき、この情報に基づいて研削許容時間内での研削の可能性を判断し、前記要因のを調整し、その指令に基づき研削作業を実施する。
【0032】
なお、研削砥石の周速を低下して使用すると研削砥石の寿命が短くなり、逆に周速を増大して使用すると研削砥石の破損に繋がるので、研削砥石の標準仕様に基づいた適正な周速範囲での使用が好ましく、研削許容時間が充分に余裕がある限りにおいては、通常の回転速度で用いるべきである。
【0033】
【実施例】
本発明によるオンラインロール研削を行った実施例について以下に説明する。ロール研削砥石は左・右に1個づつ装備した研削装置を用いた。表1にロール研削での条件,表2にその実施結果を示した。なお、ロール研削範囲(距離)については、研削をロールの両端部について対象に行っているので、ロール片側の値で示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例1は、1回目の研削許容時間では摩耗段差部の途中までしか研削できなかったので、2回目は1回目の続きから研削し全体を研削した例(砥石の周速,横行速度を上げて研削能力を向上)した例である。実施例2は、1回目および2回目の研削許容時間内でも摩耗段差部の研削が完了しなかったので、次材の研削時に前回終了の摩耗段差部内位置から引き続き研削し例である。
【0037】
比較例は、1回目の研削許容時では摩耗段差部の途中までしか研削できなかったにも拘らず、2回目の研削許容時間でも1回目と同様に摩耗段差部の起点から研削した例である。
従来例1は、1回目の研削許容時内で全体(摩耗段差部と未摩耗部)の研削を完了した例である。従来例2は、1回目の研削許容時で摩耗段差部の研削を完了したので、2回目の研削許容時間で1回目の研削完了位置から引き続き研削して全体を研削した例である。
【0038】
本発明の実施例では、圧延ロールの摩耗段差部内に研削未完了による研削した部分と研削できなかった部分の境に段差が発生しないようにしたので、板厚精度が良好に保たれ、また、耳波が発生するようなこともなかった。
これに対し、比較例では圧延ロールの摩耗段差部内に研削未完了による研削した部分と研削できなかった部分の境に段差が生じ、板厚精度が悪化し、耳波が発生し、製品の歩留りの低下および矯正に向けられる鋼板が多発した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば厚鋼板圧延機において、オンラインでの圧延ロールの研削に当たって、非圧延時間内で摩耗段差部に大きな研削差部を付けることなく、該摩耗段差部を研削除去することが可能となるため、厚鋼板圧延の生産性を低下させることがなく、かつ圧延製品について形状不良品を発生するような不都合な事態を極力抑制することができるので、圧延操業において多大な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延ロール表面の研削範囲を示した概略図。
Claims (4)
- 被圧延材を圧延ロールにより厚鋼板圧延するに際し、該被圧延材が圧延ロールに噛み込んでいない非圧延中に、研削砥石を圧延ロールの軸方向に横行させて該圧延ロールの端部に形成される摩耗段差部と未摩耗部をオンラインで研削する方法において、前回の研削が前記摩耗段差部の中途で終了したときは、次回の研削開始位置を前回の研削終了位置としたことを特徴とする圧延ロールのオンライン研削方法。
- 前記圧延ロールの摩耗段差部の研削を行うに際して、初回の研削開始位置をロールセンター側から行うことを特徴とする圧延ロールのオンライン研削方法。
- 前記圧延ロールの研削を行うに際して、該圧延ロールの圧延センターラインに対して左・右対称範囲を研削することを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の圧延ロールのオンライン研削方法。
- 前記圧延ロールの研削を行うに際して、研削砥石の周速,砥石横行速度,圧延ロールの周速のうち、1または2以上を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延ロールのオンライン研削方法。
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