本発明に係る情報記録媒体として追記型光ディスク媒体を例にとり、以下に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1
図1は、本実施の形態における光ディスク媒体の模式図である。図1に示すように、光ディスク媒体101の記録面には案内溝(以下「グルーブ」と呼ぶ)がスパイラル状(螺旋状)に形成されている。情報トラック105には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報(図示せず)が記録されている。
また、図示していないが、光ディスク媒体101の記録面には有機色素記録膜が形成されており、記録装置ではレーザ光のビームスポットを絞り、記録するデータに応じてレーザパワーを変調しながら上記記録膜に照射することで、局所的な温度上昇によって記録膜の有機色素材料に変化を起こし、情報の記録を行うことができる。本実施の形態にて説明する光ディスク媒体は追記型(ライトワンス)であり、情報の追記はできるが、一度記録を行った情報トラックにおいては、記録した情報を消去したり書き換えたりはできないとする。
番地情報は、データを記録する単位である記録ブロック106の位置を特定するための情報を含み、記録装置及び再生装置において、情報トラック105を再生し番地情報を読み取ることで、記録ブロック106を特定することができる。
また、光ディスク媒体101は、データ記録領域102、内周領域103、外周領域104を含んでいる。図1に示しているように、記録装置において、ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域102であり、データ記録領域102より内周に配置されている内周領域103と外周に配置されている外周領域104はユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。
図2に、光ディスク媒体101の内周領域103の内部構成をさらに詳細に示す。内周領域103は最内周側から順に、読み取り専用情報領域201、バッファ領域202、試し記録領域203、バッファ領域204、ドライブ制御情報領域205、バッファ領域206、欠陥管理領域207、バッファ領域208を含んでいる。
読み取り専用情報領域201は、光ディスク媒体101の識別情報などの情報をディスクの製造工程で、記録面の凹凸ピット(エンボス)やグルーブの形状変化などを利用して予め記録しておく領域である。読み取り専用情報領域201は、文字通り読み取り専用の領域であり、ここに記録されている情報は基本的に改ざんされない。
試し記録領域203は、「背景技術」にて既に説明しているように、光ディスク媒体101と記録装置の組み合わせにおいて、記録再生条件の最適化を行う動作である試し記録に利用する領域である。試し記録の手順については後ほど詳しく述べる。
ドライブ制御情報領域205は、試し記録等の方法を用いて求めた記録再生条件の最適化結果をドライブ制御情報として残しておくための領域である。記録再生条件の中身やドライブ制御情報を更新方法については後ほど詳しく述べる。
欠陥管理領域207は、一般的な欠陥管理に用いる領域であり、データ記録領域102内に見つかった欠陥元の記録ブロックの番地情報や、代替先の記録ブロックの番地情報などを欠陥管理情報として残しておく領域として利用する。また、欠陥管理領域207は、一般的なデータ記録領域102の欠陥管理以外に、試し記録領域203やドライブ情報記録領域205の使用状態を管理するのにも使用するところが本発明の特徴とするところの一つである。これについても後ほど詳しく述べる。
バッファ領域202、204、206、208はそれぞれ隣接する他の領域間の緩衝領域として設けられており、情報の記録は行われない。
図3は、本発明の情報記録方法による試し記録の手順を示すフローチャートである。
試し記録の手順が開始されると、最初に、試し記録領域203が使用可能であるかどうかを調べる(ステップS301)。本実施の形態における光ディスク媒体101はライトワンスであるため、試し記録領域203が使用可能であるかどうかは試し記録領域203内に未使用(未記録)の記録ブロックが存在しているかを調べると良い。
未記録ブロックが存在すると判断されると、すなわち、試し記録領域203が使用可能であるとき、試し記録領域203内の前記未記録ブロックを用いて試し記録を行う(ステップS302)。一方、未記録ブロックが存在しないと判断されると、すなわち、試し記録領域203が使用可能でないとき、データ記録領域102内の所定の未記録ブロックを用いて試し記録を行う(ステップS303)。
試し記録領域203またはデータ記録領域102にて試し記録が実行されると、試し記録を行った記録ブロックの位置を示す番地情報をアドレスポインタとして保持し(ステップS304)、保持したアドレスポインタを含む情報を欠陥管理情報として更新し(ステップS305)、試し記録を終了する。
なお、ステップS301において未記録ブロックを探すための一方法として、記録装置にて、試し記録領域203内の全情報トラックを走査し、媒体からの再生信号を元に未記録ブロックを探す方法がある。しかしながら、この方法では、試し記録領域203のトラック本数が多くなってくると、未記録ブロックの探索に時間がかかり過ぎて効率的でない。この点を考慮し、ステップS305で、データ記録領域102の欠陥ブロックと同様に、欠陥管理領域207を利用して使用済みの記録ブロックを登録するようにしている。欠陥管理情報への登録方法については後ほど詳しく述べる。
以上説明したような手順で試し記録を行うことにより、試し記録領域203内の記録ブロックを全て使い果たして使用不能となってしまった場合にもデータ記録領域102を利用して試し記録を行うことが可能となる。従って、試し記録領域203が使用不能となっても、当該光ディスク媒体101と記録装置の組み合わせにおいて最適な記録再生条件の最適化が可能となり、結果として情報の記録信頼性を低下させたり新たな情報の追記が不能になったりすることがなくなる。
また、以上説明した方法によると、情報追記の可能回数を多くするために、試し記録の回数を見越して必要以上に試し記録領域203の容量を大きくする必要がないため、光ディスク媒体101全体として効率よく情報の追記を行うことができる。その結果、書き換え型と追記型の光ディスク媒体とを同一の物理フォーマット(領域構造)とすることが容易になり、光ディスク媒体の製造コストを低減することができる。
本発明の特徴の一つは、データ記録領域102を利用して試し記録を行うことにあるが、データ記録領域102内における試し記録の使用順序について、望ましい例を図4に示す。
図4は、光ディスク媒体101の領域構造について、特にデータ記録領域102の内部構造の望ましい例を示している。データ記録領域102を内周側から順に、第1のスペア領域402、ユーザデータ領域401、第2のスペア領域403に分割する。
ユーザデータ領域401の代替処理(公知のリニアリプレースメント法)に対しては、第1のスペア領域402の最も内周に位置する情報トラックから外周方向に向かって、光ディスク媒体101の領域を使用していく。試し記録に対しては、第2のスペア領域403の最も外周に位置する情報トラックから内周方向に向かって、光ディスク媒体101の領域を使用していく。
このように、光ディスク媒体101の半径方向で、ユーザデータの代替ブロックと、試し記録のための領域とを、互いに逆の方向から使用する順序とすることで、ユーザデータの記録ブロックと、試し記録のための領域が混在しなくなる。従って、試し記録において、オーバーパワー(最適なレーザパワーより高いパワー)で記録を行ったり、特殊な記録(例えば、変調符号に則っていない特定なデータパターンの記録)を行ったりしても、ユーザデータの記録再生に悪影響を与えることがないため、記録装置の安定性を保つことが可能となる。
なお、第1のスペア領域402及び第2のスペア領域403の容量は、いわゆる物理フォーマットの処理の中で予め決定しておいても良いし、すくなくとも一方の容量を柔軟に変更するようにしても良い。また、欠陥ブロックが多くなって第1のスペア領域402を、ユーザデータの代替処理で使い果たしてしまった場合には、第2のスペア領域403を使用するようにしても良いし、逆に第2のスペア領域403を試し記録で使い果たしてしまった場合には、第1のスペア領域402を使用するようにしても良い。この際にも、光ディスク媒体101の半径方向で、両者を逆から使用する順序としていれば、差し支えない。
また、別の方法として、ユーザデータ記録用のスペア領域と試し記録用のスペア領域とを、予め別の領域として割り付けておいても良い。この方法によると、ユーザデータの記録と試し記録とを明確に分離できるので、各記録の使用順序を必ずしも決定しておく必要はなくなる。
図5に、光ディスク媒体101のドライブ制御情報領域205の内部構成をさらに詳細に示す。ドライブ制御情報領域205は複数の記録ブロックを含んでいる(図5では合計n個の記録ブロック)。各記録ブロックは複数の記録再生条件を含むことができる(図5では1記録ブロックあたり最大32個の記録再生条件)。
記録動作の単位である記録ブロックの中に複数の記録再生条件を含み得ることにより、当該光ディスク媒体と1つ以上の記録装置との組み合わせに対して記録再生条件を残すことができる。複数の記録再生条件からなるリストを記録再生条件リストと呼ぶ。また、ドライブ制御情報領域205がn個の記録ブロックを含んでいることにより、複数の記録再生条件を含むドライブ制御情報をn回更新することができる。
光ディスク媒体が書き換え型である場合は、ドライブ制御情報領域内の記録済みの記録ブロックに対して上書きを行うことができるため、欠陥や劣化によって記録ブロックが使用不能とならない限り、同一記録ブロックのみを使用し続けることが可能である。
ところが、本実施の形態における光ディスク媒体101のように、追記型(ライトワンス)の媒体の場合、ドライブ制御情報領域205内の記録済みの記録ブロックの消去や書き換えを行うことができない。従って、記録ブロックの内容を変更したいときは、ドライブ制御情報領域205内の別の記録ブロックに新たに情報を書き込む必要があり、このため、ドライブ制御情報の更新可能回数は、ドライブ制御情報領域205に含まれる記録ブロックの数に限定される。
そこで、本発明では、ドライブ制御情報領域205が全て使用済みとなり、新たな記録再生条件の記録ができなくなる不都合を解消するために、データ記録領域をも用いてドライブ制御情報の更新を行うようにする。
図6は、本発明の情報記録方法にかかる、特にドライブ制御情報の更新処理手順を示すフローチャートである。
ドライブ制御情報の更新処理が開始されると、まず、ドライブ制御情報領域205が使用可能であるか否かを調べる(ステップS601)。本実施の形態における光ディスク媒体101はライトワンス型であるため、ドライブ制御情報領域205が使用可能であるかどうかはドライブ制御情報領域205内に未使用の記録ブロック(未記録ブロック)が存在しているかを調べると良い。
未記録ブロックが存在すると、すなわち、ドライブ制御情報領域が使用可能であると判断されると、ドライブ制御情報領域205内の前記未記録ブロックにドライブ制御情報を更新記録する(ステップS602)。未記録ブロックが存在しないと、すなわち、ドライブ制御情報領域が使用可能でないと判断されると、データ記録領域102内の所定の未記録ブロックにドライブ制御情報の更新記録を行う(ステップS603)。
ドライブ制御情報領域205またはデータ記録領域102にドライブ制御情報の更新記録が実行されると、ドライブ制御情報の更新を行った記録ブロックの位置を示す番地情報をアドレスポインタとして保持し(ステップS604)、保持したアドレスポインタを含む情報を欠陥管理情報として更新し(ステップS605)、ドライブ制御情報の更新を終了する。
なお、前記ステップ601において未記録ブロックを探すための一方法として、試し記録処理の手順で前述したのと同様に、ドライブ制御情報領域205内の全情報トラックを走査し、媒体からの再生信号を元に未記録ブロックを探す方法がある。しかしながら、ドライブ制御情報領域205のトラック本数が多くなってくると、未記録ブロックの探索に時間がかかり過ぎて効率的でない。この点を考慮し、ステップ605で欠陥管理領域207を利用して使用済みの記録ブロックを、データ記録領域102の欠陥ブロックと同様に登録するようにしている。欠陥管理情報への登録方法については後ほど詳しく述べる。
以上説明したような手順でドライブ制御情報の更新を行うことにより、ドライブ制御情報領域205内の記録ブロックを全て使い果たして使用不能となってしまった場合にもデータ記録領域102を利用してドライブ制御情報の更新を行うことが可能となる。従って、ドライブ制御情報領域205が使用不能となっても、当該光ディスク媒体101と記録装置の組み合わせにおいて最適な記録再生条件を保持できなくなることがなくなるため、記録装置の起動の度に最初から試し記録の処理をやり直すといった無駄がなくなり、記録装置の起動時間の高速化を図ることができる。
また、以上説明した方法によると、ドライブ制御情報の更新可能回数を多くするために、ドライブ制御情報領域205の容量を大きくする必要もないため、光ディスク媒体101全体として効率よく情報の追記を行うことができる。その結果、書き換え型とライトワンスの光ディスク媒体とを同一の物理フォーマット(領域構造)とすることが容易になり、光ディスク媒体の製造設備を低コスト化することができる。
なお、図3に示した試し記録処理の手順にあるステップS305と、図6に示したドライブ制御情報の更新手順にあるステップS605は、共に欠陥管理情報の更新を行うステップであり、重複した処理となる。通常システムにおいて、記録再生条件の最適化処理において、試し記録及びドライブ制御情報の記録は、一連の組み合わせで行うことがほとんどであるため、前記2つのステップを統合することが可能である。記録再生条件の最適化を行う一連の処理の中で、最後に欠陥管理情報の更新を行うようにすれば、処理の時間短縮、領域の削減につながり望ましい。
または、記録再生条件の最適化処理において、欠陥管理情報の更新を必ずしも行う必要はない。記録条件の最適化結果を不揮発性メモリに一旦保持しておき、装置の電源を落とすまでの間に情報記録媒体上に記録するようにすればよい。従って、一般的にフラッシュと呼ばれる従来の欠陥管理情報の更新処理の中で、前記管理情報をあわせて記録するようにすればよい。こうすることで、さらに必要な処理の時間短縮、領域の削減につながる。欠陥管理情報の中身に関する好ましい例は後ほど説明する。
図7は、2層記録ディスクにおいて、試し記録を行う領域として使用する領域の使用順序についての望ましい例を示した図である。
2層記録ディスク101aは追記型(ライトワンス)光ディスク媒体であり、情報の記録が可能な記録面が2層独立して存在する構造になっている。これにより2層記録ディスク1枚あたりの記録容量は、トラックピッチとビット線密度が同一である単層(記録面が1層のみ)のディスクと比較して2倍の容量にできる。
図7に示すように、光ヘッド702は2層記録ディスク101aの記録面にレーザスポットを照射することで情報の記録を行う。2層記録ディスク101aの2層の記録面を便宜上、光ヘッド702から遠い方(2層記録ディスクのレーザ照射側表面(情報読み出し面)から遠い方)の層を「レイヤA」と、光ヘッド702に近い方(レーザ照射側表面に近い方)の層を「レイヤB」と呼ぶ。レイヤA、Bそれぞれの記録面には、図示しないが光ディスク媒体101と同様に螺旋状のグルーブ(情報トラック)が形成されており、次に述べる複数の領域を含んでいる。
レイヤAは内周側から順に、試し記録領域703a、欠陥管理領域704a、スペア領域705a、ユーザデータ領域706a、スペア領域707aを含んでいる。また、レイヤBは内周側から順に、試し記録領域703b、欠陥管理領域704b、スペア領域705b、ユーザデータ領域706b、スペア領域707bを含んでいる。
以下、2層記録ディスク101aへの試し記録の使用順序について説明する。全面未記録状態から最初に試し記録を行う時は、レイヤAの試し記録領域703aから使用し始める。本実施例では試し記録領域703aを内周側から外周側に向けて記録を行うことにしている(図7の(1)に示す矢印方向)。試し記録領域703aを使い果たせば、次にレイヤBの試し記録領域703bを使用する(順序(2))。
レイヤBより先にレイヤAから使用する理由は、レイヤBでの試し記録により、レイヤAの記録再生に影響を与えるのを防ぐためである。つまり、光ヘッド702に近い方の層であるレイヤBに試し記録がなされていると、レイヤAの同一半径位置を再生する際に、レイヤBの試し記録の状態に応じてレイヤBを通過するレーザ光の透過率が微妙に変化し、レイヤAに到達するレーザ出射光量やレイヤAからの反射光量も変化してしまう恐れがある。特に試し記録の場合、通常のユーザデータ記録と異なり、オーバーパワーで記録を行ったり、データ変調則に則らないデータパターンを記録する可能性もあるため、レイヤAを用いた記録再生条件の測定に影響を及ぼす危険性がある。
次に、試し記録領域703a、703bを全て使い果たしてしまった場合の処理であるが、単層の光ディスク媒体101を例にとって説明したのと同様に、外周側のスペア領域707a、707bを利用する。本実施の形態では、先にレイヤAのスペア領域707aを外周側(図7の(3)に示す矢印)から使用し、スペア領域707aを使い果たすとレイヤBのスペア領域707bを同じく外周側(図7の(4)に示す矢印)から使用していく。レイヤBより先にレイヤAから使用していく理由は前述の通りである。
以上、図7を用いて説明したように、2層型の光ディスクを用いて試し記録を行う際には、光ヘッドから遠い方の層から使用していくようにすると、記録再生条件に影響を与えることなく最も安定である。また、2層型光ディスクにおいても、試し記録領域703a、703bを全て使い果たして使用不能となってしまった場合にも、スペア領域707a、707bを利用して試し記録を行うことが可能となる。
また、以上で説明した方法によると、情報追記の可能回数を多くするために、試し記録の回数を見越して必要以上に試し記録領域703a、703bの容量を大きくする必要もないため、光ディスク媒体101a全体として効率よく情報の追記を行うことができる。その結果、書き換え型とライトワンスの光ディスク媒体とを同一の物理フォーマット(領域構造)とすることが容易になり、光ディスク媒体の製造設備を低コスト化することができる。
なお、上記例において、試し記録の使用順序を図7に示すように、領域703a→領域703b→領域707a→領域707bとしたが、これに限定されるものではない。
2層ディスクで試し記録を行う領域の順序は、ユーザデータの記録順序に依存して決定するようにしても良い。一例として、ユーザデータの記録をレイヤA側、すなわち、ユーザデータ領域706aから始め、ユーザデータ領域706aを使い切ってから、レイヤB(ユーザデータ領域706b)で行う、といった場合には、試し記録についても、ユーザデータ記録の使用順序に合わせて、領域703a→領域707a→領域703b→領域707bの順序で行うようにしても良い。
また、別の例として、一方の記録層のみを利用するようにしてもよい。例えば、レイヤAのみで、領域703a→領域707aの順序に、またはレイヤBのみで、領域703b→領域707bの順に使用してもよい。この場合、使用できる領域の大きさは結果的に1/2となるが、他の層の記録状態に影響を全く受けることなく記録条件の最適化を行うことができる。
また、別の例として、記録層毎に試し記録を行う半径位置を分離するようにしても良い。例えば、レイヤBの試し記録には試し記録領域703bを用い、レイヤAの試し記録にはスペア領域707aを用いる。もしくは、レイヤAの試し記録には試し記録領域703aの内周側から、レイヤBの試し記録には試し記録領域703bの外周側からといった具合である。これらの方法でも試し記録に利用できる領域の大きさに制限があるが、同一の媒体でも記録層毎に記録再生条件の最適化を行う必要性のある場合にも、他の層の記録状態に影響を受けることなく記録条件の最適化を行うことができる。
なお、以上で説明した方法は3層以上の記録層を持つ多層型光ディスクにも適用可能であることは言うまでもない。
図8は、本発明の実施形態における欠陥管理リストの構成例を示すものである。
欠陥管理リストは、光ディスク媒体の欠陥管理領域(光ディスク媒体101では欠陥管理領域207、2層記録ディスク101aでは欠陥管理領域704aと704bが、これに相当)に記録される情報の一部である。一般的に、欠陥管理リストでは、欠陥と見なされた記録ブロックの絶対位置を示す欠陥元記録ブロックの番地情報と、その欠陥元記録ブロックに記録すべき情報を代替記録した先の記録ブロックの絶対位置を示す代替先記録ブロックの番地情報とが対応付けられて、リストの要素として登録される。
本実施の形態においては、図8に示すごとく、試し記録をおこなった記録ブロックや、ドライブ制御情報の記録を行った記録ブロックの番地情報も、欠陥管理リストの中に含めている。また、リストに登録した要素がどのような動作状態において登録されたものであるか判別可能にするために、種別情報識別子を設けている。
図8には、6種類の種別での登録例を挙げている。以下、各登録例を順に説明する。
1番目の登録例は、「通常(代替済)」を示す種別情報識別子”0000”で登録されている。これは、通常のユーザデータ記録に伴う欠陥登録を示し、公知のリニアリプレースメント法による代替処理を行った結果、登録されたものである。欠陥元記録ブロック番地情報には、欠陥とみなされたデータ記録領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAm1(実際には番地情報を示す数字が記入される)が記録され、代替先記録ブロック番地情報には、代替先のスペア領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAn1が記録される。
2番目の登録例は、「通常(未代替)」を示す種別情報識別子”0001”で登録されている。これは、通常のユーザデータ記録に伴い、欠陥と見なされたが代替先の決まっていない記録ブロックの登録を示す。欠陥元記録ブロック番地情報には、欠陥とみなされたデータ記録領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAm2が記録され、代替先記録ブロック番地情報にデータは記録されない(実際には、例えば、全て”0”等の、実際に存在しない番地が記録される)。
3番目の登録例は、「OPC(Optimum Power Control)」を示す種別情報識別子”0010”で登録され、前述した試し記録領域における試し記録の実行に伴い登録されたものである。欠陥元記録ブロック番地情報には、試し記録を行った試し記録領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAm3が記録され、代替先記録ブロック番地情報にはデータは記録されない。
4番目の登録例は、「OPC2」を示す種別情報識別子”0011”で登録され、前述したスペア領域を利用した試し記録の実行に伴い登録されたものである。欠陥元記録ブロック番地情報には、試し記録を行ったスペア記録領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAm4が登録され、代替先記録ブロック番地情報にはデータは記録されない。
5番目の登録例は、「DriveInformation」を示す種別情報識別子”0100”で登録され、前述したスペア領域を利用したドライブ制御情報の記録に伴い登録されたものである。欠陥元記録ブロック番地情報のデータはなしで、代替先記録ブロック番地情報には、実際にドライブ制御情報の記録を行ったスペア領域における記録ブロックの絶対番地を示すPBAn5が記録される。
6番目の登録例は、「DataInformation」を示す種別情報識別子”0101”で登録され、内周領域内または外周領域内の特定番地に含まれる特定情報を、スペア領域を利用して代替処理した結果登録されたものである。欠陥元記録ブロック番地情報には、元々特定情報が記録されていた特定番地を示すPBAm6が記録され、代替先記録ブロック番地情報には、その特定情報を代替処理した先の絶対番地を示すPBAn6が記録される。ここで、内周領域内または外周領域内の特定番地(すなわちデータ記録領域以外の領域)に含まれる特定情報(非ユーザデータ)の代替処理について詳細に説明する。
従来の光ディスク媒体の欠陥管理方法、及び欠陥管理領域の使用方法においては、通常のユーザデータを記録する領域の欠陥を管理すること以外は行われていなかったが、以下に述べる方法により、従来では行うことができなかった、データ領域以外に記録された非ユーザデータの代替処理を実現する。
図9は内周領域内もしくは外周領域内の特定番地に含まれる特定情報を代替処理する場合の手順例を示すフローである。
内外周の特定番地に含まれる情報の更新処理が開始されると、まず、内外周の特定番地を含む領域が使用可能であるか否かを調べる(ステップS1201)。例えば、ディスク媒体がライトワンス型であるとき、内外周の特定番地を含む領域が使用可能であるかどうかは、内外周の特定番地を含む領域内に未使用の記録ブロック(未記録ブロック)が存在しているかを調べることで判定できる。また、ライトワンス型であるか書換え型であるかに関わらず記録結果をベリファイし、記録再生品質を検査(当該領域が欠陥であるか否かを判定)しても良い。
特定番地を含む領域が使用可能であると判断されると、特定番地を含む領域内に情報の更新記録を行う(ステップS1202)。特定番地を含む領域が使用不能であると判断されると、データ記録領域内に情報の更新記録を行う(ステップS1203)。
内外周の特定番地を含む領域またはデータ記録領域に情報の更新記録が実行されると、情報の更新を行った記録ブロックの位置を示す番地情報をアドレスポインタとして保持し(ステップS1204)、内外周の特定番地(つまり欠陥元アドレス)及び情報の更新先のアドレスポインタを含む情報を欠陥管理情報として更新し(ステップS1205)、情報の更新を終了する。
このようにすることで、非ユーザデータを記録すべき領域が欠陥や領域の枯渇等で使用できなくなった場合にも、データ記録領域を利用した代替処理が可能となり、その代替先を登録しておくことで、通常のユーザデータ欠陥管理と同様に非ユーザデータの代替先を管理しておくことが可能となる。
なお、非ユーザデータの一例として、情報記録装置において、情報の記録を行った履歴(ログ)、記録したコンテンツの著作権保護の為の情報、ユーザデータの管理(ファイル管理)の為の情報などが挙げられる。
以上説明したように、欠陥管理領域に記録される欠陥管理情報の一部である欠陥管理リストを利用することで、本発明に係る実施形態において説明してきた試し記録やドライブ情報の更新などの実行結果を履歴として管理することが可能となる。この際、処理の種類に応じて、欠陥元記録ブロック番地情報や代替先記録ブロック番地情報を登録しておくことで、従来の欠陥管理処理の延長線上の処理で、ユーザデータ記録以外の種々の処理結果を、比較的容易な方法で管理することが可能となる。
なお、図8の登録例においては、最も好ましい例として、欠陥管理リストに種別情報識別子を設ける方法を開示したが、本発明の効果を発揮するために、前記種別情報識別子は必須でない。試し記録を行った先の記録ブロックは欠陥元に、ドライブ制御情報の更新を行った先の記録ブロックは代替先に、という様に、処理内容に応じて、欠陥元、代替先、もしくはその両方の番地情報を登録するようにすれば、処理結果の履歴を残すという一定の効果を発揮できる。
さらに多くの種別情報識別子を設けることで、記録装置もしくは再生装置が、欠陥管理リストに含まれる全ての情報を解釈しなくても良くなる場面が増え、処理の効率化を図れる利点がある。一例として、試し記録領域が使用可能などうか(未記録ブロックが存在するか否か)を判別する場面を考えてみる。
種別情報識別子があれば、「OPC2」の種別情報識別子”0011”が付与された要素が存在しているかどうかを、記録されている欠陥管理リストから探索すれば良いが、種別情報識別子がなければ、欠陥管理リストに含まれる全ての欠陥元記録ブロック番地情報を探索したり、試し記録領域内の全ての情報トラックを走査して未記録ブロックを探索すしたりといった手間のかかる処理が必要となる。また別の例として、ドライブ制御情報領域に未記録ブロックが存在するか否かを判別する際にも、種別情報識別子があれば、「DriveInformation」の識別子”0100”を探索するだけで、より効率的に判別を行うことが可能となる。
ここで、種別情報識別子を設けなくても、試し記録領域やドライブ制御情報領域に未記録ブロックが存在するか否かを容易に判別可能にする別の好ましい例を示す。図示しないが、欠陥管理領域に記録される欠陥管理情報に、試し記録領域が全て記録済みであるか否かを示す「試し記録領域フルフラグ」、ドライブ制御情報領域が全て記録済みであるか否かを示す「ドライブ制御情報領域フルフラグ」を設けるようにしても良い。
また、別の好ましい例として、図示しないが、欠陥管理領域に記録される欠陥管理情報に、試し記録が最後に実行された領域の番地情報や、ドライブ制御情報が更新された最後の領域の番地情報を含めるようにすれば、それらの番地情報から、最後に記録が行われた領域の番地情報を容易に認識することができるようになり、記録装置もしくは再生装置の処理効率化を図ることができる。
さらには、図4にて一例を挙げたように試し記録の使用順序が予め定められている場合には、過去に行った複数の試し記録の番地情報はリストに含めず、最後に使用した試し記録の番地情報のみをリストに登録するようにしても良い。こうすることで、欠陥管理リストのエントリ数を削減することができるため、欠陥管理処理の効率化が図れると共に欠陥管理に必要な領域を削減することが可能となる。このことは、ドライブ制御情報やその他特定情報に記録についても同様である。
なお、以上で述べたような管理情報を、欠陥管理領域とは別の領域に記録するようにしても良い。但し、欠陥管理を行うことができるシステム(情報記録媒体と記録装置の組み合わせ)においては、前述した方法のように欠陥管理領域の中に管理情報群を含めるようにすることで、記録装置もしくは再生装置において、欠陥管理領域にアクセスするだけで、諸々の処理を行うにあたって必要な情報を一元的に得ることが可能となり、処理の効率化を比較的に向上することを可能とするものである。
なお、本実施の形態において、光ディスク媒体101ならびに2層記録ディスク101aは共に追記型(ライトワンス)として説明したが、同一トラックに複数回情報の上書き可能な書き換え型記録媒体に対しても、適用できる。
図10は、本発明にかかる情報記録装置901の構成例を示すブロック図である。情報記録装置901は以下に説明する構成要素901〜908を備える。
光ヘッド902は光ディスク媒体101の記録層にレーザスポットを照射し、光ディスク媒体101の記録層よりの反射光を検出する。変調記録部903は、光ヘッド902に内蔵された半導体レーザ(図示せず)を電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部904は、光ヘッド902に内蔵されたフォトディテクタ(図示せず)により検出された記録層よりの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、光ディスク媒体101に記録された信号成分を分離し復調し必要な情報を再生する。バッファ905は、光ディスク媒体101に記録するための情報及び光ディスク媒体101から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータ907は光ディスク媒体101を回転させる。サーボ制御部906は、ディスクモータ907の回転駆動を制御しながら光ヘッド902を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部908は、情報記録装置901全体の制御を行う。
前述及び後述する各処理手順(試し記録、ドライブ制御情報の更新、欠陥管理情報と更新)は、システム制御部908が、バッファ905に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部903、再生復調部904、サーボ制御部906を協調動作させながら、光ヘッド902を通して、所定の情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部908は例えばマイクロプロセッサで構成され、所定のプログラムを実行することで所定の処理手順を実行する。
実施の形態2
本実施形態では、光ディスクの内外周の特性差を吸収可能な、試し記録領域の決定方法の別の例について説明する。本実施形態では、ユーザデータの記録を行う領域の半径位置に応じて、試し記録を行う領域を決定する。
最初に、情報記録層が単層である光ディスクに対する、内外周特性差を吸収可能な、試し記録領域の決定方法を説明する。
図11は、本実施形態における、光ディスク媒体101に試し記録を行う領域の決定方法を説明するための図である。図11において、光ディスク媒体101の領域構造を最内周(左側)から最外周(右側)まで模式的に示している。また、図2もしくは図4と同一の符号を付与した、試し記録領域203、欠陥管理領域207、ユーザデータ領域401、第1のスペア領域402、第2のスペア領域403については前述した通りであり、その説明は省略する。
本実施形態においては、ユーザデータ領域401にユーザデータの記録を行う半径位置に応じて、内周側、外周側のいずれで試し記録を実施するかを決定する。
ユーザデータ領域401にユーザデータの記録を行う半径位置は、光ディスク媒体101に一意に付与されている物理アドレスにより判別すれば良い。なお、本実施形態では、図11に示すようにユーザデータ領域401における最内周トラックの物理アドレスをADR_I、最外周トラックの物理アドレスをADR_K(ADR_I<ADR_K)、最内周から最外周に向けて昇順に物理アドレスが付与されているとする。
情報記録装置が外部よりデータの記録コマンドを受ける場合、情報記録装置は、前記データを所定の論理アドレスに記録するように指令される。情報記録装置はその所定の論理アドレスから、光ディスク媒体101上のデータを記録すべきアドレス(ターゲット物理アドレス)ADR_Xを割り出す。情報記録装置においてまず試し記録が必要であると判断された場合、ターゲット物理アドレスADR_Xが、ADR_X<ADR_Jの関係にあるとき内周側で試し記録を行う。ターゲット物理アドレスADR_Xが、ADR_X≧ADR_Jの関係にあるとき外周側で試し記録を行う。なお、ADR_Jは所定の物理アドレスであり、ADR_I<ADR_J<ADR_Kを満たす。
つまり、所定の物理アドレスADR_Jはユーザデータ領域401を便宜上、内周側と外周側に分ける境界となり、これからユーザデータの記録を行おうとするターゲット物理アドレスADR_Xと所定の物理アドレスADR_Jの大小を比較することで、内周側、外周側のどちらで試し記録を行うべきかを判断する基準とする。
なお、所定の物理アドレスADR_Jは予め一意に決定していても良いし、情報記録装置において適応的に設定できるようにしても良い。
また、ターゲット物理アドレスADR_Xを、外部よりの記録コマンドで指定された論理アドレスを基準に決定したが、これに限定されない。例えば、情報記録装置が最後に(最新に)記録を実施した物理アドレスを基準に決定しても良い。また、内周から外周に向けて順番にデータの追記をしていくような追記型ディスク媒体の場合には、既にデータが記録されている領域の最終物理アドレスを基準に決定しても良い。
本実施例において、内周側とは試し記録領域203もしくは第1のスペア領域402を指し、外周側とは第2のスペア領域403を指す。なお、内周側における試し記録領域203と第1のスペア領域402の使用順序は前述したように、最内周から試し記録領域203→第1のスペア領域402の順番で使用していき、試し記録領域203が使用不能となってから第1のスペア領域402を使用するようにしても良いし、試し記録領域203が使用不能となっていない段階でも、第1のスペア領域402を使用するようにしても差し支えない。また、内周側に第1のスペア領域402が存在しなくても良いし、外周側に第2の試し記録領域が別途存在していても良い。
以上説明したように、ユーザデータ領域401においてユーザデータの記録を行うときのその半径位置に応じて、試し記録を行う領域を決定することが可能であり、上述した具体的構成・手順によりこれを実現することができる。
これにより、次にユーザデータを記録する半径位置にできるだけ近い領域を選択して試し記録を行うことができるため、アクセス速度の向上が図れ、試し記録の実施による情報記録装置のスループット低下を防ぐことができる効果がある。また、これにより、内周、外周で記録再生特性に差が生じるようなディスク媒体に対しても、試し記録に基づいて効果的に記録再生条件の最適化を行うことができ、装置の信頼性を高めることもできる。
次に、2層記録ディスクに対する、内外周特性差を吸収可能な、試し記録領域の決定方法を説明する。
図12は、2層記録ディスクに試し記録を行う際の試し記録領域の決定方法を説明した図である。図11において、2層記録ディスク101aの各記録層(レイヤA、レイヤB)における領域構造を最内周(左側)から最外周(右側)まで模式的に示している。また、図7と同一の符号を付与した、試し記録領域703a,703b、欠陥管理領域704a,704b、ユーザデータ領域706a,706b、内周側スペア領域705a,705b、外周側スペア領域707a,707bについては前述した通りであり、その説明は省略する。
図12に示すようにユーザデータ領域706a,706bにおける最内周トラックの物理アドレスをそれぞれADR_Ia,ADR_Ib、最外周トラックの物理アドレスをそれぞれADR_Ka,ADR_Kb(但しADR_Ia<ADR_Ka,ADR_Kb<ADR_Ib)、光ビーム照射する光ヘッド902から遠い方の記録層であるレイヤAでは最内周から最外周に向けて昇順に、光ヘッド902に近い方の記録層であるレイヤBでは最外周から最内周に向けて昇順に物理アドレスが付与されているとする。従って、ユーザデータ領域706a,706bにユーザデータの記録を行う半径位置は、光ディスク101aに一意に付与されている物理アドレスにより判別すれば良い。
ここで、ユーザデータの記録を行おうとするターゲット物理アドレスADR_Xが、レイヤA、レイヤBのいずれにあるかは、ターゲット物理アドレスADR_Xを各々の層における最内周アドレスADR_Ia, ADR_Ib、最外周アドレスADR_Ka,ADR_Kbと大小比較することにより明らかになる。これにより、試し記録をレイヤAで行うべきか、レイヤBで行うべきかを決定することができる。
さらに、各層における所定の物理アドレスADR_Ja,ADR_Jb(但しADR_Ia<ADR_Ja<ADR_Ka,ADR_Kb<ADR_Jb<ADR_Ib)を規定し、これからユーザデータの記録を行おうとするターゲット物理アドレスADR_Xを、その所定の物理アドレスと大小比較することで、ターゲット物理アドレスADR_Xが、所定の物理アドレスADR_Ja,ADR_Jbに対して内周側にあるか外周側にあるかが明らかになる。これにより、ターゲット物理アドレスADR_Xに応じて、レイヤA,レイヤBのいずれの層で試し記録を行うべきかのみならず、内周側、外周側のどちらで試し記録を行うべきかを決定することができる。
本実施例においては、図12に示すように、ターゲット物理アドレスADR_XがADR_X<ADR_Jaの関係にあるとき、データを記録する領域がレイヤAの内周側であると判定し、試し記録領域703aもしくは内周側スペア領域705aにて試し記録を実施する。
ターゲット物理アドレスADR_XがADR_Ja≦ADR_X≦ADR_Kaの関係にあるとき、データを記録する領域がレイヤAの外周側であると判定し、外周側スペア領域707aにて試し記録を実施する。
ターゲット物理アドレスADR_XがADR_Kb≦ADR_X<ADR_Jbの関係にあるとき、データを記録する領域がレイヤBの外周側であると判定し、外周側スペア領域707bにて試し記録を実施する。
同様に、ターゲット物理アドレスADR_XがADR_Jb≦ADR_X≦ADR_Ibの関係にあるとき、試し記録領域703bもしくは内周側スペア領域705bにて試し記録を実施する。
以上のような方法により、次にユーザデータを記録する層と同一の記録層で試し記録を行うことができるため、アクセス速度の向上が図れ、試し記録の実施による情報記録装置のスループット低下を防ぐことができる効果がある。またさらには、記録層間、及び/または、内周、外周で記録再生特性に差が生じるようなディスク媒体に対しても、試し記録に基づいて効果的に記録再生条件の最適化を行うことができ、装置の信頼性を高めることができる。
なお、所定の物理アドレスADR_Ja及びADR_Jbは予め一意に決定していても良いし、情報記録装置において適応的に設定できるようにしても良い。
さらに、ターゲット物理アドレスADR_Xを決定する基準として、前述したように外部よりの記録コマンドで指定された論理アドレスとしてもよいし、情報記録装置が最後に(最も最近)記録を実施した物理アドレスを基準に決定しても良い。また、内周から外周に向けて順番にデータの追記をしていくような追記型ディスク媒体の場合には、既にデータが記録されている領域の最終物理アドレスを基準に決定しても良い。
また、本実施例においては、ユーザデータ領域を便宜上、レイヤAの内周側、レイヤAの外周側、レイヤBの内周側、レイヤBの外周側の4つの領域に分けて、試し記録領域を使い分けるようにしたが、これに限定されない。内外周の特性差及び内外周の移動に伴うアクセス時間ロスの少なくとも1つが特に問題となる場合には、レイヤA、Bを共通化して内周側と外周側のみ分けるようにしても良い。
また、上記説明では、記録しようとするデータと同じ層でかつ、それに半径方向に近い方のスペア領域に試し記録を行うとしているが、試し記録に用いるスペア領域が使用不能となっている場合は、別のスペア領域を代わりに用いるようにしても良い。例えば、レイヤAの外周側スペア領域707aが使用不能となった場合、その代わりに同じ層(レイヤA)の内周側スペア領域705aを使用してもよいし、または、別の層(レイヤB)の外周側スペア領域707bを使用するようにしてもよい。また、レイヤAの内周側スペア領域705aが使用不能となった場合、その代わりに同じ層(レイヤA)の外周側スペア領域707aを使用してもよいし、または、別の層(レイヤB)の内周側スペア領域705bを使用するようにしてもよい。代わりに使用する領域は、記録層間の、内外周の特性差及びアクセス時間ロスの少なくともいずれかを勘案して決定するのが好ましい。
実施の形態3
本実施形態では、内周から外周方向へ順番にデータの記録を行っていく、書きつなぎ(以下「リンキング」と呼ぶ)の方式が用いられる追記型光ディスク媒体(例えば、DVD−R)に対して、試し記録を行う場合の例を説明する。
図13は、リンキング方式が使用される追記型光ディスク媒体と、その情報追記手順を説明した図である。同図に示すように、追記型光ディスク媒体1301には内周から外周に向けて螺旋状に案内溝が形成されており、これを情報トラック1302と呼ぶ。情報トラック1302には案内溝の形状変化により予め物理アドレスが所定のフォーマットに基づいて記録されており、情報記録装置は、情報トラック1302に形成された案内溝の形状変化を読み取ることで物理アドレスを識別し、情報の記録を行うべき場所の特定を行っている。
図13を用いて追記型光ディスク媒体1301への記録データの追記手順について説明する。図13(b)には内周側から外周方向に物理アドレスADR_LNで示される所定のトラック位置Pまで既にデータの記録が行われている様子を示している。また、情報トラック1302において溝形状により予め記録されている物理アドレスの単位は、データ記録の実施単位に略一致しており、物理アドレスは内周から外周に向けて一意にかつ昇順の番号が割り振られることで表現されている。
上記のような状態に対して、データの追記を行う手順を説明する。データの追記を行う際、まず図13(c)に示すようにリンキングロスエリア1304を作る。リンキングロスエリア1304は、記録済データの末尾に続く物理アドレスADR_LN+1を示す情報トラックに対応している。リンキングロスエリア1304にはユーザデータを含まない特定データパターン(例えば全てのデータが00hの値となるような記録データ)が記録され、続いて図13(d)に示すように物理アドレスADR_LN+2以降に対応した情報トラックに対して追記データ1305の記録を行う。図13(c)と(d)は別の図で表現しているが、リンキングロスエリア1304に対する記録と追記データ1305の記録は連続した一連の動作として実施されることに注意されたい。
ここでリンキングロスエリア1304の役割を説明する。リンキングロスエリア1304は、追記データが記録された領域間に設けられる領域であり、後続の追記データ1305の先頭部分におけるエラーの発生を防ぐために設けられている。
リンキングロスエリア1304が存在しない場合、記録済データ1303の末尾と追記データ1305の先頭は直接連結した形となるが、実際の情報記録装置においては記録クロック生成回路位相ずれやディスクの回転ジッタなどの要因で、両者を1ビットのずれもなく書きつなぐことは非常に困難であり、少なくとも数ビットのずれが生じるのが一般的である。
もし両者のつなぎ目が不連続になっていれば、情報再生装置においてその不連続点をまたぐデータの再生をする場合に、不連続点通過後、一旦データの同期がずれて復帰するまでの期間データを正しく再生できない。記録データは通常、データの同期をとるための同期パターンが付加されたフレームと呼ばれる単位を複数連続させた形式になっていることが一般的である。このような場合、データの同期がずれてから復帰するまでの期間は少なくとも1フレーム、不連続点のずれ量に依っては複数のフレーム期間、データが正しく再生されないこととなる。
記録データには通常、エラー訂正符号が付加されていることが一般的であり、数フレーム程度の期間データがエラーであっても訂正できる場合が多いが、データ不連続点の周辺にも別要因(ディスク上の欠陥など)によるエラーが含まれている場合、訂正限界を超え、追記データの先頭が再生できないといった状態に陥る危険性もある。
このため、書きつなぎの不連続点から所定の期間はダミーデータを記録する区間(リンキングロスエリア)とし、情報再生装置において、この期間を利用してデータ不連続に伴う同期ずれの復帰を行うことで、後続の追記データでのエラー発生を防ぐものである。
図14は図13にて説明した追記型光ディスク媒体101bの領域構造の一例と、本実施形態の追記録の管理方法を説明するための図である。
追記型光ディスク媒体101bは内周から外周に向けて、内周領域1401、リードイン領域1402、データ記録領域1403、リードアウト領域1404を含んでいる。内周領域1401は、さらに試し記録領域1405と記録管理情報領域1406を含む。
リードイン領域1402もしくはリードアウト領域1404は、コントロールデータと呼ばれるディスクの属性や記録再生条件などを含む情報がディスクの出荷時に予め記録された再生専用の領域を含む。
データ記録領域1403は実際にユーザデータを含むデータの記録される領域であり、追記型の特徴として、内周側からトラックのスパイラル方向に順番に使用される。
試し記録領域1405は情報記録装置において、記録再生条件の最適化のための試し記録を行う領域として、予め用意されている領域である。
記録管理情報領域1406は情報記録装置において、データ記録領域に新たな情報の追記を行った際に、追記を行った履歴としての管理情報を記録する領域である。
ここで、情報の追記処理と管理情報の記録処理を説明する。
まず、データ記録領域1403においてデータが全く記録されていない状態から1回目の記録を行う際、記録条件の最適化が必要な場合、試し記録領域1405を用いて試し記録を行う。記録条件の最適化後、データ記録領域1403において、データの記録を開始アドレスADR_S1から終了アドレスADR_L1まで実行する。終了アドレスADR_L1までの長さは記録すべきデータ量に依存して決定されることは言うまでもない。
データの記録に応じて、所定のタイミングで記録管理情報領域1406内に記録管理情報RM_1の記録を実施する。記録管理情報RM_1の内容は、少なくともデータ記録の開始アドレスADR_S1と終了アドレスADR_L1を含む。また、記録管理情報領域1406にはリンキングロスエリアの位置に関する情報が記録されている。
情報記録装置もしくは情報再生装置は、データ記録領域1403のデータを記録または再生する前に、記録管理情報領域1406の内容を読み取ることで、データの記録履歴を効率よく把握することができ、情報の検索性能を向上することができる。
なお、記録管理情報RM_1には試し記録領域1405の試し記録の履歴を残すようにしても良い。こうすることで、情報記録装置において、試し記録領域1405の使用状況(未記録場所)を効率よく把握することができ、ためし記録領域1405を利用した記録再生条件の最適化に要する時間の短縮に繋がる効果がある。
データが既に記録された状態において追記を実施する際、同様に記録条件の最適化が必要な場合、試し記録領域1405を用いて試し記録を行う。記録条件の最適化後、データ記録領域1403において、2回目のデータの記録を開始アドレスADR_S2から終了アドレスADR_L2まで実行する。ここで、2回目のデータの記録に先駆けてリンキングロスエリアが作成されることに注意すべきである。つまり1回目の記録の終了アドレスADR_L1の次のアドレスに対応した位置から2回目のデータの記録開始アドレスADR_S2の直前の位置までがリンキングロスエリアとなり、そこにはダミーデータ(全て「00h」のデータ等)が記録される。
2回目のデータの記録に応じて、所定のタイミングで記録管理情報RM_2の記録を実施する。記録管理情報RM_2の内容は、少なくとも最新のデータ記録履歴である開始アドレスADR_S2と終了アドレスADR_L2を含む。記録管理情報RM_2には過去のデータ記録履歴を全て含むようにしても良い。
上述のようにN回のデータ記録を実施した結果、データ記録領域1403は1回目のデータ記録開始アドレスADR_S1からN回目のデータ記録終了アドレスADR_LNまで記録済となり、記録管理情報領域1406には最新の記録管理情報RM_Nが記録される。
ここで、N回のデータ記録の実施に伴い、試し記録領域1405が全て使用済みの状態になったとする。
このような状態において、更なるデータの追記をする場合、従来の方法では、記録条件の最適化が必要であっても、実施することが不可能であった。このため、ディスク一枚の記録容量に対して未だ空きがあるにも関わらずこれ以上のデータの追記が行えない、もしくは、記録条件の最適化を実施せずにデータの追記を行いデータの信頼性低下に繋がるという不都合があった。
そこで、本実施形態では、上記の不都合を解消するため、リンキングロスエリアを利用して記録条件の最適化を実施する。図15を用いて、本実施の形態においてリンキングロスエリアを利用して記録条件の最適化を行う際のデータ追記手順例を説明する。
図15(a)はN回目のデータ記録を実施した後におけるデータ記録領域1403の記録済データ末尾を示しており、データ記録終了アドレスADR_LNまで記録済み、次のアドレスADR_LN+1以降は未記録の状態となっている。
(N+1)回目のデータ記録を行うのに先立ち記録条件の最適化を行う必要があり、試し記録領域1405に使用可能な領域が残っていない場合、図15(b)に示すように、N回目のデータ記録完了後の最終アドレスADR_LNに後続するアドレスADR_LN+1の領域に、試し記録を行う。そして、この試し記録を実施した領域をリンキングロスエリア1501aとする。
リンキングロスエリア1501aにより記録条件の最適化を実施した後、図15(c)に示すように、リンキングロスエリア1501aの後続アドレスADR_LN+2にリンキングロスエリア1501bを作成し、さらに後続のアドレスADR_LN+3から追記データの記録を実施する。リンキングロスエリア1501bには所定のパターン(全て00hのデータ等)を記録する。リンキングロスエリア1501bと後続の追記データの記録は一連の動作で連続して実施する。
以上、本実施の形態における試し記録及び追記データの記録手順を詳細に説明した。記録済みデータの末尾に後続するリンキングロスエリア1501aにて試し記録を行うことで、試し記録領域1405が使用不能な状態となっていても記録条件の最適化を実施することができ、新たに試し記録専用の領域を別途設ける必要はなくなる。また、試し記録領域1405が使用不能な状態になった場合でも、さらなるデータの追記が行えなかったり、最適でない記録条件で追記データの記録信頼性を低下させることを防ぐことが可能となる。
また、試し記録を実施したリンキングロスエリア1501aに続いて、更にリンキングロスエリア1501bを作成しつつ、一連の動作で追記データの記録を開始することにより、情報再生装置によって前記追記データの先頭を再生する際に、リンキングロスエリア1501bを用いて再生同期ずれの補正を行うことができるため、追記データの先頭部分においてエラーが発生するのを防ぐことが可能となる。
つまり、リンキングロスエリア1501a及びリンキングロスエリア1501bにより、試し記録と追記データ先頭エラーの防止という二つの役割を持たせることによって、新たな領域を必要とすることなく、データ記録再生の信頼性を確保することが可能となる。
このようにして(N+1)回目のデータ記録を実施した結果、データ記録領域1403ではリンキングロスエリア1501a、1501bに続いて、図14に示すとおり、データ記録開始アドレスADR_SN+1からデータ記録終了アドレスADR_LN+1まで記録済みとなり、記録管理情報領域1406には新たに記録管理情報RM_N+1が記録される。
記録管理情報RM_N+1の内容は、少なくとも最新のデータ記録履歴である開始アドレスADR_SN+1と終了アドレスADR_LN+1を含む。記録管理情報RM_N+1には過去のデータ記録履歴を全て含むようにしても良い。
リンキングロスエリアで試し記録を行った場合でも、記録管理情報領域1406の内容には、特別な情報を追加しなくても差し支えないが、試し記録を実施したアドレスの履歴を残すようにしても良い。こうすることで、情報記録装置において、記録管理領域1406の情報を読み取るだけで試し記録領域1405の使用状況(未だ空き領域が残っているか否か)を効率よく把握することができ、記録再生条件の最適化に要する時間の短縮に繋がる効果がある。
本発明は、特定の実施形態について説明されてきたが、当業者にとっては他の多くの変形例、修正、他の利用が明らかである。それゆえ、本発明は、ここでの特定の開示に限定されず、添付の請求の範囲によってのみ限定され得る。