JP4340936B2 - 電気刺激装置及び電気刺激を用いた力触覚呈示装置 - Google Patents
電気刺激装置及び電気刺激を用いた力触覚呈示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筋肉への電気刺激を利用した医療用治療装置、あるいは筋肉への電気刺激を利用して力覚や触覚の呈示を実現する力触覚呈示装置及びこれらの装置の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療分野では、電気刺激やEMG(Electro MyoGram:筋電図=筋線維の興奮時に筋細胞膜電位が一過性に変化する際の当該膜電位を記録したもの)フィードバックによる電気刺激を対象者に与えることで、筋萎縮を緩和する療法が知られており、例えば、干渉波治療器では筋肉における所望の位置を特定して、その一ヵ所にのみ付設される効果器を通して干渉波による電気刺激を与える方法が用いられている。
【0003】
また、仮想現実(バーチャルリアリティ)や遠隔現実(テレリアリティ)等の分野では、コンピュータによって創出される仮想空間(あるいは仮想世界)や操作者からは隔絶した遠隔世界(あるいは遠隔環境、微小世界等)における力触覚(力覚と触覚)や温度感覚を、該使用者に体感させることができるようにするためのマン・マシンインターフェイスとして、力触覚グローブ等を使った力触覚呈示装置が知られている。この装置は、主に視覚や聴覚によって認知される仮想現実感を、さらに力学的な感覚(力触覚)にまで拡張したり、あるいは、遠隔世界における操作感覚に臨場感を与えるために導入されるもので、例えば、筋肉への電気刺激を利用して人間の手や腕等に作用を及ぼすものである。
【0004】
ところで、皮膚表面や筋肉への電気刺激については「機能的電気刺激」の利用が提案されている。尚、「機能的電気刺激」(Functional Electric Stimulation、略してFES」とは、明確な目的意識と作用機序の理解の上に立って生体機能の補助又は制御を行おうとする電気刺激法を意味し、主として運動麻痺患者に対して電極を介して目的の末梢神経や筋に電気的刺激を与えることにより麻痺肢を動かすといったことに用いられている。
【0005】
FESの原理について簡単に説明すると、筋肉が脳からの運動命令を電気信号として運動神経で受けることで収縮する点に着目して、脳からの電気信号に代わって電気刺激により運動神経に電位を与えることで筋肉を収縮させようとするものである。
【0006】
FESでは、筋の収縮を制御する際に、筋に対して直接的に電気刺激を与える場合と、筋を支配する神経束に電気刺激を与える場合があり、筋の収縮については2種類の形態がある。その一つは「遠心性FES」と称し、神経束内の運動神経線維を刺激することによってその支配下の筋を直接的に収縮させて目的とする機能を再建するものであり、もう一つは「求心性FES」と称し、同一神経束内の求心性神経線維を刺激することによって当該筋の共同筋が同時に収縮し、それ自身で有用な制御ができるというものである。
【0007】
例えば、総腓骨神経を強く刺激した場合に、遠心性FESで足関節の背屈が起ると同時に、股関節、膝関節の屈曲反応が生じるが、これは総腓骨神経の求心性線維を刺激することによって屈曲反射が生じたことによるものである。
【0008】
尚、筋に対する電気刺激の与え方については、生体への電極の取り付け方の違いから、「表面電極法」、「経皮電極法」、「埋め込み電極法」が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の装置にあっては、医療分野における筋萎縮の緩和を目的とした構成を有しているため、表層の筋肉や皮膚の一部を特定して対象者に疑似的な圧力の感覚を与えることが難しいという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、干渉波電気刺激を用いて対象者に力触覚を呈示することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気刺激装置は上記した課題を解決するために、下記に示す構成要素を具備したものである。
【0012】
・表層の筋肉や皮膚に対して電気刺激を与えるための効果器(皮膚表面に接触して使用される電極群からなる電極部を備えている。)。
【0013】
【課題を解決するための手段】
・対象者に干渉波電気刺激を付与するために上記電極群に対して各電極又は電極対のそれぞれに周波数の異なる電気刺激信号を供給する電気刺激発生部。
【0014】
・対象者に係る人体の骨や筋肉の配置を示すデータベースを構築するとともに、当該データベースに基づいて電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択する制御手段。
【0015】
従って、本発明によれば、対象者の人体構造に係るデータベースを予め構築しておき、装置の使用時には、電気刺激のための効果器を対象者に装着させることで電極群を皮膚表面に接触させた後、データベースから得られる対象者の筋肉配置の情報に基づいて電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択して干渉波電気刺激を付与することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る電気刺激装置は、筋肉に対して電気刺激を与えるための効果器を備えており、例えば、医療用干渉波治療器や筋麻痺疾患者の簡易的パワーアシスト、あるいはバーチャルリアリティやテレリアリティにおける力触覚呈示装置等への適用が可能である。
【0017】
図1は装置の基本構成を示したものであり、電気刺激装置1は、効果器1a、電気刺激発生部1b、形状認識部1c、制御手段1dを備えている。
【0018】
効果器1aは、皮膚表面に接触して使用される電極群からなる電極部1adと、皮膚表面の形状及び形状変化を示す情報を取得する形状情報取得部1asとを備えている。例えば、電極部1adについては、後述するように、可撓性に富んだ電気絶縁材料で形成されたシート状基材に多数の電極を配置した構成を用いることができる。また、形状情報取得部1asにおける情報取得の方法については、光学的な方法や圧力検出による方法が挙げられる。
【0019】
前者の方法には、ステレオ(式)カメラやレンジファインダーを使った方法や、CCDカメラ等の撮像手段を用いた流し撮りによる方法等が挙げられる。例えば、2台のステレオカメラを使用した形状認識方法においては、撮影対象を、異なる視線方向をもって配置した基準カメラ及び検出カメラによって撮影(動画又は静止画撮影)し、両カメラ間の視差に応じた撮影画像から対象の形状を算出することができ、エピポラーライン(Epipolar Line)を用いたエリアベースマッチング法等が知られている。また、レンジファインダーでは、例えば、レーザー照射によって得られるスリット光をガルバノミラーで反射させるとともに、その反射方向を徐々に変化させて対象者への光走査を行い、そのときの反射光を受光手段(例えば、シリコンレンジファインダ用検出チップ等)で読み取ることで形状情報を取得している。
【0020】
いずれにしても対象からの反射光や画像情報を形状の1次情報として取得してその後の画像処理等によって形状認識を行う必要があり、また、電極部とは別個の装置として設置する必要があるため、皮膚表面おける圧力の検出を利用した方法が好ましい。
【0021】
即ち、人体の皮膚表面のように滑らかな曲面を有する形状、例えば、人体表面における筋肉の隆起に伴う形状や形状変化等についてのデータを取得したい場合には、下記の(1)乃至(3)に示す手順で形状認識を行えば良い。
【0022】
(1)対象者の体に巻き付け又は装着してその皮膚表面における圧力を検出する圧力検出手段を用意する
(2)圧力検出手段によって得られる検出情報と表面形状との関係を予め取得しておいて、これらをデータテーブル又は関数式として記憶手段に格納する
(3)対象者に巻き付け又は装着した圧力検出手段からの検出情報を受けて、当該情報に対応する表面形状データを記憶手段からの情報に基づいて形状データを算出する。
【0023】
このように対象物の表面における圧力を検出するとともに、圧力検出情報と表面形状との関係を予め取得してこれらをデータテーブル又は関数式として記憶・学習させておき、実際の形状認識を行う際には、記憶・学習済の情報を参照することで形状データを求めることができる。尚、後述するように、圧力検出手段を、上記した電極部と同様にシート状基材の上に形成する方法を用いると、電極部に対して容易に圧力検出部(その構成例については後述する。)を付設することができるという利点がある。また、圧力検出に加えて皮膚表面の温度の検出部を付設すると、例えば、筋肉の発熱状態からその運動状態に関する手掛りがさらに得られるので有用である。
【0024】
電気刺激発生部1bは、電極部を構成する電極群に対して低周波電気刺激や干渉波電気刺激のための電気信号を供給するものである。尚、「低周波電気刺激」については、主に表面の筋肉に対して使用される。例えば、生体に電流を流すことで治療効果を得る際に用いられており、骨折治癒や創傷治癒の促進、排尿等の自律神経系機能や、横隔神経刺激による呼吸ペーシング等の呼吸機能、心臓ペーシング等の循環器系機能への応用が行われている。
【0025】
また、「干渉波電気刺激」は、上記電極群に対して周波数の異なる電気刺激信号を供給することで実現され、主に内部の筋肉への刺激や、ファントム・センセーション(Phantom Sensation)を利用した皮膚表面への擬似的な刺激の付与に使用される。尚、「Phantom Sensation」とは、複数(例えば、2つ)の振動子を皮膚の異なる場所に設置して、各振動子に同一周波数帯の刺激を同時に与えた場合に、振動子間における皮膚表面の中央が振動刺激されるような錯覚を感じたり、ある振動子に関して対をなす他の振動子の周波数を時間的に変化させると、その振動刺激の位置が2つの振動子間を移動しているかの如き感覚が得られる現象をいう。本発明では、これを電極群を通した生体への電気刺激によって実現することで、対象者に力覚を呈示するのに用いている。
【0026】
電気刺激発生部1bによって電極部1adに供給される電気信号については、刺激付与の対象となる筋肉毎に分けて制御するのが好ましく、また、各筋肉について複数チャンネルの刺激パターンの設定が可能であって、かつ、各チャンネルに対する同期制御を行えるようにすることが好ましい。
【0027】
形状認識部1cは、形状情報取得部1asによって得られた情報から皮膚表面の形状を認識するために設けられており、その認識結果は制御手段1dに送出される。例えば、形状認識部1cは、対象者に巻き付けられ又は装着された圧力検出手段からの検出情報を受けて、当該情報に対応する表面形状データを算出する。つまり、表面圧Pと形状S(面の法線方向における位置変化)との間の数値的関係(これを関数式「S=F(P)」で表す。)が、ある自由曲線(スプライン曲線やベヂエ曲線等)を用いて近似できる場合に、当該自由曲線を特定するために必要な情報を予め記憶手段に格納しておけば、ある特定位置での表面圧がP=Paであったときに、「S=Sa=F(Pa)」として形状データを算出することができる。尚、関数式の代わりに関数関係をデータテーブルとしてデータベース化しておいて圧力検出後にデータ参照を行う方法等、既知の参照方法や補間方法を用いることができることは勿論である。
【0028】
コンピュータ等の計算機により実現される制御手段1dは、対象者に係る人体の筋肉配置を示すデータベース(後述する。)を構築するとともに、当該筋肉配置の情報と、形状認識部1cからの筋肉の形状や形状変化の認識結果に基づいて電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択した後、当該電極に対して電気刺激信号を供給するように電気刺激発生部1bに制御信号を送出する。
【0029】
尚、図1では、制御手段1dが、制御部1dsと入出力(I/O)制御部1dtとを備えており、入出力制御部1dtから入出力(I/O)選択処理部1eに送出される信号によって、電極部1adと形状情報取得部1asとの選択及び電気刺激発生部1bと形状認識部1cとの選択の制御が時分割処理で行われるように構成されている。つまり、電気刺激の付与時には、図にスイッチの記号で示す切換部sw1、sw2において電極部と電気刺激発生部1bとがそれぞれ選択されるので、制御部1dsからの制御指令を電気刺激発生部1bが受けて電気刺激信号を発生させ、これが入出力選択処理部1eを介して電極部1adにおける所望の電極に供給される(図には電極群への信号ラインを一本の線で代表的に示している。)。また、切換部sw1、sw2において形状情報取得部1asと形状認識部1cとがそれぞれ選択された場合には、形状情報取得部1asによって得られた情報が入出力選択処理部1eを介して形状認識部1cに送出され(図にはそれらの信号ラインを一本の線で代表的に示している。)、形状認識結果は制御部1dsに送られる。
【0030】
電極部1adへの電気刺激信号の供給と形状情報の取得を、入出力選択処理部1eを通すことなく行いたい場合には電気刺激発生部1bと電極部との間及び形状情報取得部と形状認識部1cとの間を直接に接続すれば良いが、この場合には、生体に電気刺激を付与した時点と、形状変化の認められた時点との時間的な対応付けを明らかにするために時間合せの処理を基準クロック信号等を使って行う必要がある。
【0031】
図2は上記電気刺激装置の力触覚呈示装置への適用例を示したものであり、力触覚呈示装置1Aは、入力部1Aa、制御部1Ab(上記した電気刺激発生部1bを含む。)、入出力バッファ群1Ac(入力バッファ群1Aci及び出力バッファ群1Aco)、効果器1Ad、モデル構築/計算処理部1Ae、画像処理部1Af、表示部1Ag、圧力・温度認識部1Ah、圧力・温度検出部1Aiを備えている。
【0032】
入力部1Aaは、キーボードやポインティングデバイス等の一切の入力手段を含んでおり、データの手動入力又は自動入力のために必要とされ、これによって取得した情報は制御部1Ab及びモデル構築/計算処理部1Aeに送出される。
【0033】
制御部1Abは、その後段に位置する出力バッファ群1Acoを介して効果器1Adに電気信号を送出したり、あるいは、効果器1Adから入力バッファ群1Aciを介して筋電位情報(あるいは筋電図情報)を得るものである。尚、出力バッファ群1Acoを構成する各バッファの出力端子や、入力バッファ群1Aciを構成する各バッファの入力端子は、効果器1Adに設けられた電極アレイの各電極(後述する)にそれぞれ各別に接続されている。また、効果器1Adに付設された圧力・温度検出部1Aiによって検出される皮膚表面の圧力情報及び温度情報が圧力・温度認識部1Ahを介して制御部1Abに送出されるように構成されている。
【0034】
効果器1Adは、人体の皮膚に接触して使用するために、人体の手足、体の一部等の形状に適合する形状をもって作成される。例えば、その形態には、グローブ、ボディスーツ(あるいはウエットスーツ)、アームバンド、指サック、ソックス等が挙げられる。尚、図2では人体に腕に取り付けて使用する効果器が示されている。また、力触覚の他、温度感覚を併せて呈示するために、効果器1Adに多数の熱制御用素子(ペルチェ素子等)を組み込んで、該素子の熱制御により、人体にとって危険のない温度範囲で熱や温度を感じることができるように構成するとさらに効果的である。
【0035】
生体への電気刺激法については、電極の取り付け方に関して本発明では表面電極法を採用している。その理由は、当該方法が人体を傷付けることなく使用できること及び経皮電極法や埋め込み電極法では電極や配線の破損や感染等の問題ああることに依る。
【0036】
この表面電極法に適した効果器の構成例を図示したものが図3乃至図14であり、多数の電極2、2、・・・(電極アレイ)を有する電極シート3の一例を示している。
【0037】
電極シート3は人体の皮膚表面に付設して使用され、例えば、図3に簡略化して示すように、前腕Aに巻き付けて使用される。尚、本例では、電極シート3が矩形状に形成されており、一方の辺の長さが前腕Aの長さとほぼ同じで、他方の辺の長さが前腕Aの周方向の長さとほぼ同じになっている。これにより、電極シート3を前腕Aに巻き付けると、前腕Aはそのほぼ周面を電極シート3で覆われることになる。
【0038】
図4は電極シート3の積層構造について概略的に示すものであり、4層構成の電極層3Aの上に、4層構成の感圧・感温層3Bを形成し、さらにその上に絶縁層3Cを積層形成した例を有している。
【0039】
電極層3Aは、同図の左側に示すように、シート4、導通シート5、配線シート6、表面シート7を積層した構成を有している。
【0040】
シート4は最も皮膚側に位置するシートであり、これには多角形状(例えば、正方形や正六角形等)をした小さな電極孔4a、4a、・・・(図5参照。)がマトリックス状に多数形成され、該電極孔4a、4a、・・・に導電ポリマーが充填されることで、電極2、2、・・・がシート上に規則的に形成されている。各電極孔4aには、その周囲を取り囲む突条部4bがそれぞれ形成されており、該突条部4bはその厚み方向における断面形状がほぼ台形状をしており、台形の短辺に相当する端部が皮膚との接触部とされ、斜辺に相当する部分が電極孔4aの周囲に亘ってテーパー面を形成している。尚、この突条部4bは電極2と皮膚との密着性を良好にするために設けられる(図5、図13参照)。
【0041】
導通シート5は、シート4の表面側に積層され、該導通シート5のうち、上記各電極2、2、・・・に対応する位置には、該電極よりも充分に小さい相似形の通電孔5a、5a、・・・(図6参照。)が形成され、これらの通電孔5aに導電ポリマーを充填して、これを通電部5b、5b、・・・としている。尚、導通シート5は、配線シート6に形成された後述の各配線パターンと、シート4上の電極2、2、・・・とが短絡しないようにするために設けられるものである。
【0042】
配線シート6は導通シート5の表面側に積層されるものであり(図7参照。)、端子部6a、6a、・・・や配線パターン6b、6b、・・・が形成されている。つまり、配線シート6には、上記通電部5b、5b、・・・に対向してこれらと同じ大きさの端子孔が形成され、該孔に導電ポリマーを充填することでこれらを端子部6a、6a、・・・としており、更に各端子部6a、6a、・・・に対しては配線シート6の長手方向に延びる配線パターン6b、6b、・・・が形成されている。尚、これらの配線パターン6b、6b、・・・は導電ポリマーにより形成されていて、各配線パターンは互いに接触しない配置となっている(配線の形成面積をシート上に十分に確保するのが難しい場合には多層構造の採用が望ましい。)。そして、各配線パターン6b、6b、・・・のうち端子部6a、6a、・・・とは反対側の端部は配線シート6の端縁近傍まで延び、これらが電気刺激発生部の端子部(入出力バッファ群1Acの入出力端子)に接続されるようになっている。
【0043】
表面シート7(図8参照。)には、他のシート4乃至6と同じ大きさの(電気)絶縁シート、例えば、絶縁性のポリマー、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、シリコーン等の合成樹脂材料等が用いられ、上記配線シート6に貼着される。
【0044】
尚、このような構造を有する電極層3Aにおいては、例えば、シルク印刷により、各電極2、通電部5b、端子部6a及び配線パターン6b等を形成することができる。
【0045】
次に、感圧・感温層3Bの形成について説明する(図9乃至図12参照。)。
【0046】
図4に示すように、感圧・感温層3Bは、皮膚に近い方から行電極シート8、感圧・感温シート9、列電極シート10、絶縁膜11を積層した構成となっている。
【0047】
行電極シート8(図9参照。)は、ポリエステル等のフィルム上に形成される電気絶縁膜の上に導電性ポリマー製の平行電極8a、8a、・・・を所定の方向、例えば、シートの長手方向に沿って形成されており、これらの電極の間には電気絶縁膜が介在されることによって各電極が絶縁分離されている。
【0048】
感圧・感温シート9(図10参照。)は、多角形状(図では正方形)をした感圧・感温部9a、9a、・・・が一定の間隔をおいて配置された構成を有しており、これらと上記電極2、2、・・・とは互いの位置関係において1対1に対応している。尚、感圧・感温部9aに使用する材料については、感圧性材料の場合には、例えば、伸縮性を有する感圧性の導電性ゴムや圧電材料が挙げられる。導電性ゴムとしては、ゴム中に金属粉や炭素繊維等の導電性物質を分散させた感圧導電ゴムが挙げられ、また、圧電材料としては、圧電性の高分子材料(フッ化ビニリデン等)、比誘電率ポリマー等が挙げられる。また、感熱(温)性材料の場合に、例えば、マンガン(Mn)やニッケル(Ni)等を混合して作られる熱反応性の材料(サーミスタの構成材料)が用いられる。尚、各感圧・感温部9a同士は絶縁材料によって隔絶されていることは勿論である。
【0049】
列電極シート10(図11参照。)については、平行電極10a、10a、・・・の形成方向が異なるだけで行電極シート8と同様の構造を有している。つまり、導電性ポリマー製とされたこれらの電極10aは、上記行電極シート8の平行電極8aの形成方向に対して感圧・感温シート9を挟んで互いに直交するように形成方向が規定されており、両電極群の交点位置に上記感圧・感温部9a、9a、・・・が各別に配置される。これによって、互いの電極群同士が直交した関係を有するマトリックス配置(あるいは格子状配置)とされ、「i」、「j」の整数変数を指標として導入したとき第i行第j列の指定によって該当する交点位置付近での圧力検出を行うことができるようになっている。
【0050】
絶縁膜11(図12参照。)は電気絶縁材料、例えば、絶縁性のシリコーン、高分子ゲル等を用いて形成されるもので、感圧・感温層3Bの最も表層に形成されて列電極シート10の絶縁を図っている。
【0051】
絶縁層3C(図4参照。)は、前腕Aに貼着されたときに最も表面に位置しており、これにはゴム材料等が使用される。
【0052】
しかして、このような電極シート3を、前腕Aに巻き付けてこれに干渉波による刺激を与えるときは、シート4の各電極2、2、・・・を前腕Aの皮膚に当ててから(皮膚との接触状態を図13、図14に示す。)、一組の電極2、2、・・・に制御部1Abから当該電極に対応する出力バッファを介して所定の周波数電流を供給すると、前腕Aの内部において干渉波が生じ、干渉により波が強め合うところの筋肉Mの部位を刺激することができる。例えば、4000Hz(ヘルツ)の周波数電流と4010Hzの周波数電流を、各電極2、2にそれぞれ供給すると、両電極間を結んだ線上の中心近傍で干渉が生じ、干渉の部位に位置する筋肉Mが10Hz程度の周波数で刺激されて収縮する。また、皮膚表面の表層筋に対する低周波の刺激を行う場合には、使用電極を2極として、この一対の電極の各位置を特定した後、100Hz以下、例えば、10〜60Hz程度のパルス波形(負性矩形波等)を用いて刺激を与えれば良い。
【0053】
皮膚表面の圧力分布に関する検出にあたっては、上記行電極シート8及び列電極シート10のうちの所望の電極、つまり、整数変数i、jについて第i行第j列に相当する電極(行電極シート8のi番目の電極及び列電極シート10のj番目の電極)を選択した場合に、該電極の交点付近における圧力に応じて感圧材料が圧迫されると、その静電容量の変化を検出することができる。即ち、行電極シート8におけるi番目の電極と列電極シート10におけるj番目の電極との間には感圧・感温部9aを含むコンデンサが形成され、その等価静電容量値Cがその場所での圧力Pの関数となるので、等価静電容量値Cから逆算して圧力Pに係る情報を得ることができる(つまり、第i行第j列の検出データについてのマトリックス処理によって所望の位置での局部的な圧力や対象範囲を特定した圧力分布データを取得することができる。)。上記制御部1Abは、このような圧力情報を上記圧力認識部1hから得ている。
【0054】
また、皮膚表面の圧力分布に関する検出にあたっては、行電極シート及び列電極シートのうちの所望の電極、つまり、整数変数i、jを指標として導入した場合に、第i行第j列に相当する電極(行電極シートのi番目の電極及び列電極シートのj番目の電極)を選択することによって、電極の交点付近における温度に応じた感熱性材料の電気抵抗値の変化を検出することができる。即ち、行電極シートにおけるi番目の電極と列電極シートにおけるj番目の電極との間の抵抗値Rがその場所での温度Tの関数となるので、抵抗値Rの検出から逆に温度Tに係る情報を得ることができる。このようにして第i行第j列の検出データについてのマトリックス処理によって所望の位置での局部的な温度や対象範囲を特定した温度分布データを取得することができる(例えば、1≦i≦N、1≦j≦M(N、Mは自然数)とすると、温度データとしてN行M列の行列が得られるが、そのうちの特定の範囲を選択して平均温度や分散、偏差等を算出することができる。)。
【0055】
尚、上記感圧・感温シート9を多層構造にする、つまり、行電極シートと列電極シートとの間に感圧シート(上記感圧・感温部9aを感圧性材料だけで形成したもの)を挟んだ構造と、行電極シートと列電極シートとの間に感温シートを挟んだ構造(上記感圧・感温部9aを感熱性材料だけで形成したもの)とを重ね合せることで多層化した構成を採用しても良い。
【0056】
上記したように、電極部及び形状情報取得部をシート状基材の上に多層構造をもって形成した場合(例えば、圧力や温度の検出層を、電極層の上に積層形成した構成。)には、効果器を人体に着用して使用できる形状に作成したときに(例えば、ウェットスーツ形状の採用等)、装着や着脱が容易になるので、衣服を着替えるのに要する程度の準備時間で済むという利点がある。
【0057】
人体の手に装着して手部や指部の形状又は動作のデータを取得するためには、所謂データグローブを使用する。
【0058】
図15乃至図17は、データグローブにおける検出原理の説明図であり、検出方法は下記の通りである。
【0059】
(I)手部や指部の屈曲状態についての検出法=抵抗パターン(あるいは抵抗体パターン)の長さ変化に伴う抵抗値変化によって把握する方法
(II)手部や指部の温度や圧力の検出法=温度検出には感熱(温)性材料の抵抗値変化を利用し、圧力検出には感圧性材料の静電容量の変化を利用した方法。
【0060】
図15は指部の屈曲状態を検出するためにグローブの基材G(絶縁材料で形成されている。)に抵抗パターンRPを形成した構成例を示している。尚、抵抗パターンRPはその伸び量に応じて抵抗値の変化する材料(カーボン等)を用いて形成されている。
【0061】
コ字状をした抵抗パターンRPは指の背面における長手方向に沿って延びており、「L」が自然長を示し、「R」はそのときの抵抗値を示している。
【0062】
図16に示すように、手にグローブをはめて指を曲げた場合には、上記抵抗パターンRPが指の屈曲によって伸び(伸び量を「ΔL」(>0)とする。)、これによって抵抗値Rが「R+ΔR」(ΔR≠0)に変化する。つまり、この例では、DIP関節(Distal Phalangeal joint:遠位指節間関節、つまり第2乃至第5指において最も先端に位置した関節)や、PIP関節(Proximal Phalangeal joint:近位指節間関節、つまり第2乃至第5指において先端から2番目に位置した関節)の屈曲に対応した抵抗パターンRPの長さの変化(図の小円参照。)に伴って抵抗値変化ΔRが生じることになる。
【0063】
このように、上記(I)では、手部や指部の屈曲状態を抵抗値の変化として検出するための抵抗パターンが、電気絶縁材料で形成されるデータグローブの基材に形成されており、手部や指部の関節が屈曲されたときに上記抵抗パターンの長さが変化し、かつこのときに当該抵抗パターンの抵抗値が変化することを利用して関節の屈曲状態を検出することができる。尚、抵抗パターンの長さ「L」が屈曲状態の如何に応じては変化せずに(ΔL≒0)、このときの抵抗値だけが変化する材料を使用した場合には、屈曲・伸展の繰り返しに伴うストレスの影響が経時変化として問題となるので、上記のように抵抗パターンの長さ変化に伴って抵抗値が変化する材料を用いることが望ましい。
【0064】
また、上記(II)については、前記の効果器について説明したのと同様の方法を採用すれば良く、これにより温度検出と圧力検出とを同じ構造(但し、検出のための使用材料は異なる。)で実現することで薄形化や低コスト化等を図ることができる。
【0065】
図17は抵抗パターン、圧力や温度の検出部を兼ね備えたデータグローブの要部構成を概略的に示したものであり、絶縁材料で形成された図示しない基材(図の紙面を基材と考えても良い。)には、コ字状をした抵抗パターンRP(図に斜線を付して示す。)と、圧力や温度の検出素子部DP、DP、・・・(図に丸印で示す。)とが厚み方向に亘って積層された構造を有している。尚、検出素子部DPは上記したように行電極と列電極(これらの電極は抵抗パターンRPに対しても、また電極相互についても接触していない。)との間に介在される感熱性材料又は感圧性材料によって構成されており、感熱層及び感圧層を積層した構成を用いても良いし、また、各検出素子部DPを圧力検出用素子とするか又は温度検出用素子とするかを平面的なパターン配置として規定する(例えば、圧力検出用素子と温度検出用素子とを交互に配置する等)こともできる。
【0066】
図17では圧力又は温度検出用の電極パターンの一部と、抵抗パターンRPの一部RP1とを共用した構成(つまり、電極パターンを抵抗パターンとして兼用した構成)を採用しているが、これによって配線数を削減することができる。
【0067】
次に、図2に示すモデル構築/計算処理部1Aeについて説明する。これは、コンピュータやメモリあるいは所定の記録媒体によって構成される計算(処理)装置によって実現され、人体構造に関する数値モデル構築のためのデータベース(以下、「データベース」を「DB」と略記する。)の作成及びその維持・管理を行うものである。尚、人体の数値モデル構築に必要な基本データの取得に用いる周辺装置は全て入力部1Aaに含まれる。
【0068】
画像処理部1Afは、制御部1Ab及びモデル構築/計算処理部1Aeとの間で情報のやりとりを行い、映像信号を表示部1Agに送出してその画像表示を行う。例えば、CG(コンピュータ・グラフィックス)表示として現出される仮想空間内のオブジェクト(仮想物)を視覚情報として装置の使用者に伝達するために画像情報を表示したり、あるいは人体の数値モデル構築作業に必要な画面表示等を行う。尚、視覚情報に加えて聴覚情報を取り扱う場合には、音声信号処理部を画像処理部1Afに含ませ、スピーカ等の音声出力手段を通して音声情報を装置使用者に伝達すれば良い。また、情報の印字を要する場合には、画像処理部1Afに対してプリンタ等の印刷手段が付設される。
【0069】
人体に関する力学的構造の数値モデルの構築方法については、本願出願人が、既に特願平10−266号にて提案した方法を踏襲することができる。
【0070】
その要点を簡単に説明すると、数値モデルには、例えば、下記のモデルが含まれる。
【0071】
(i)骨格モデル
(ii)筋肉モデル
(iii)神経(運動神経や感覚神経等。)モデル
(iv)皮膚モデル
(v)脂肪や内臓のモデル
尚、(iii)の神経モデルには高度な情報処理を行う脳神経は含まれず、対象の力学的構造や運動に直接的な関係を有する神経が含まれ、また、(v)の脂肪や内臓のモデルについては、機能に係る具体的な構造ではなくその重量及び位置が身体のバランスや重心運動に与える影響や電気抵抗等に関心が置かれるが、以下では、本願発明において特に関係のある(i)及び(ii)を主に説明する。
【0072】
人体構造の数値モデルのうち最も簡単なものは、上記(i)の骨格モデルだけを含むものであり、これは下記の手順によって作成することができる。
【0073】
(1)体型の分類を行うとともに、分類された各基準体型について全ての骨の形状、長さや重量を含む骨格データを用意する
(2)対象者に関する身長、体重、外形形状のデータを入力する
(3)(2)の入力データから対象者の体型を特定し、各基準体型の骨格データに基づいて補間計算を行い、対象者に係る骨格データの換算比率を算出する
(4)(3)の換算比率及び対象者の身長や重量に基づいて対象者の各骨の長さや重量を決定して骨格の数値モデルを作成する。
【0074】
先ず、工程(1)では人体の基準体型を、例えば、図18に示すように、痩せ型、闘士型、肥満型に分類する。即ち、痩せ型(asthenicus。以下、「as」と略記する。)は肉細の体型、闘士型(atheticus。以下、「at」と略記する。)は胸胴部が逆3角形をした体型、肥満型(piknicus。以下、「pi」と略記する。)は腹部等の肥大した体型である。
【0075】
そして、各体型を代表する人体をそれぞれ一人ずつ選び出して、各々の対象者について、骨格データ(骨の形状、長さ、重量を含む。)を取得するか、あるいは人体教本等による既存のデータを利用する。即ち、痩せ型、闘士型、肥満型をそれぞれ代表する各人体について骨格に関する全ての情報を調べてこれらをデータベース化することにより数値モデル(以下、「基準体型モデル」という。)を作成する。尚、その際、性別の違いによって基準体型への影響が認められる場合には、これを考慮してモデル作成を行うことが好ましい。そのためには、性別毎に異なる基準体型モデルを用意する方法や、両性のうちの一方の性について各体型の基準体型モデルを用意しておき、他方の性については当該基準体型モデルに対する換算比率を示すデータから各体型の基準体型モデルを導出する方法が挙げられる。また、各骨の形状については3次元モデルのデータ(例えば、ポリゴンデータ等)としてコンピュータ上の画像表示(立体的表示等)に適した形式を用いることが好ましい。
【0076】
取得した骨格データについては、各骨の長さや重量の値自体の他、身長や体重に占める割合(比率)のデータを求めておき、後述するようにこれらの比率データに基づいて対象者に係る比率データを算出する際に使用する。
【0077】
また、各体型を代表する人体の身長が異なるのではデータの比較作業が面倒であるので、基準身長を設定して各データを当該身長に換算したときのデータを用意しておくことが好ましい。
【0078】
図19に示すモデルMにおいて、「HEIGHT_ref」は基準体型モデルの身長(基準身長)を示しており、変数「HEIGHT_xx_XX」は立位姿勢における人体各部の鉛直方向の長さを示している(「xx」が人体の部位を示し、「XX」が基準体型形を示す。)。例えば、「HEIGHT_arm_u_as」は、痩せ型の基準体型モデルにおける上腕の長さを示し、「HEIGHT_chest_at」は、闘士型の基準体型モデルにおける胸部の長さを示している。
【0079】
この場合の「HEIGHT」は骨格及び筋肉を含む人体各部の長さを示しているが、「HEIGHT」を鉛直方向若しくは長手方向における骨の長さとすれば、「HEIGHT_xx_XX」を基準身長「HEIGHT_ref」で割った比率(以下、「_hr_xx_XX」と記す。)から骨の長さ比率を計算することができる。
【0080】
また、上記「HEIGHT」を、人体の部位や各骨の重量を示す「WEIGHT」に置き換えた変数「WEIGHT_xx_XX」を、体重「WEIGHT_ref_XX」で割ることによって同様に重量の比率(以下、「_mr_xx_XX」と記す。)を求めることができる。
【0081】
図20は上記した体型形の概念を2次元座標平面(X−Y平面)上にグラフ化して示すものであり、原点Oを起点とする3軸「Ax_XX」(XX=as、at、pi)が互いに120°の角度間隔をもつように設定されている。
【0082】
そして、原点Oを中心とする円cirと各軸Ax_XXとの交点P_XXが各基準体型モデルの占める位置を示している。つまり、点「P_as」が痩せ型のモデルについてのX−Y平面上の位置を示し、点「P_at」が闘士型のモデルについてのX−Y平面上の位置を示し、点「P_pi」が肥満型のモデルについてのX−Y平面上の位置を示している。
【0083】
例えば、対象者が痩せ型と闘士型の丁度中間に位置する体型を有している場合には、原点Oを通り2軸Ax_as(図ではYの正軸に一致する軸)及びAx_atに対してそれぞれ60°の角度をなして延びる軸Bx上の点(例えば、軸Bxと円cirの交点Q等)が対象者の体型を示している。
【0084】
尚、X−Y平面に対してr軸及びθ軸からなる極座標系を設定したときの各軸の意味については後で詳述する。
【0085】
図21は図20のX−Y平面に対して直交軸(Z軸)を付与した空間(以下、「体型形座標空間」という。)を示している。
【0086】
例えば、Z軸として上記した長さの比率「_hr_xx_XX」をとった場合には、上記した各点P_XXに対して「_hr_xx_XX」の値を示す点「H_xx_XX」がそれぞれ対応する。
【0087】
今、xxの示す部位を上腕骨(humerus)とし、XXの示す体型を痩せ型(as)とすると、点「H_humerus_as」の示す値(つまり、当該点からX−Y平面に垂ろした垂線の足の高さ(Z値))は、痩せ型の基準体型モデルにおいて上腕骨の長さの基準長(身長)に対する比率を示す。
【0088】
X−Y平面上における点Pt(xt、yt)から、これに対応するZ値を算出するには次のような手順を採る。
【0089】
先ず、3点P_XX(XX=as、at、pi)のそれぞれに対する点「H_xx_XX」が決まると、これらの点を通る一つの平面(πh_xx)を決めることができる。即ち、3点「H_xx_XX」のうちの任意の2点を選び出すことによって両点を結ぶベクトルを2つ作ることができる(例えば、点「H_xx_pi」から点「H_xx_as」へ向かうベクトルと、点「H_xx_pi」から点「H_xx_at」へ向かうベクトル等。)ので、両ベクトルに直交する方向の法線ベクトルをベクトルn(a,b,c)(但し、a、b、cはそれぞれX、Y、Z軸方向の成分を示す。)とするとき、上記平面πh_xxは数式「a・X+b・Y+c・Z=d」(但し、dは定数。)で表すことができる。従って、例えば、X−Y平面上における点Pt(xt、yt)が決まれば、X=xt、Y=ytを上式に代入することによってZ値を求めることができる。
【0090】
尚、平面πh_xxは、xxに示す部位毎に多数存在し、その意味でZ軸は多変数をまとめて1軸として示す変数軸であるとみなすことができる。
【0091】
図22は、重量の比率「_mr_xx_XX」をさらに体型形座標空間のZ軸に追加したときの状況を示しており、各点P_XXに対して「_mr_xx_XX」の値を示す点「M_xx_XX」がそれぞれ対応する。
【0092】
例えば、xxの示す部位を上腕骨(humerus)とし、XXの示す体型を痩せ型(as)とすると、点「M_humerus_as」の示す値(つまり、当該点からX−Y平面に垂ろした垂線の足の高さ(Z値))は、痩せ型の基準体型モデルにおいて上腕骨が重量の体重に占める比率を示している。
【0093】
X−Y平面上における点Pt(xt、yt)からその点に対応するZ値を求めるには前記と同様の方法を採る。
【0094】
即ち、3点P_XXのそれぞれに対する各点「M_xx_XX」が決まると、これらの点を通る一つの平面(πm_xx)を決めることができる(当該面の法線ベクトルをベクトルnn(aa,bb,cc)とするとき、数式「aa・X+bb・Y+cc・Z=dd」(但し、ddは定数)で表される。)ので、X−Y平面上における点Pt(xt、yt)が決まれば、X=xt、Y=ytを上式に代入することで、これに対応するZ値を求めることができる。
【0095】
尚、図21や図22においては基準体型モデルが3つしかないため、一般には体型形座標空間内で関数式「Z=Fn(X,Y)」(但し、nは、上記_hr_xxや、_mr_xx等を示す。)で表される曲面が平面(つまり、X、Y、Zの1次式で表現される。)とされたが、基準体型モデルの数を増やしたり、あるいは、多数の対象者に係るデータ(体型形や比率等)の蓄積結果を利用して補間処理(例えば、ベヂエ(Bezier)、スプライン補間等。)を行うことで関数式(曲面表現式)について精度の向上を図ることができることは勿論である。
【0096】
また、上記した基準体型モデルの決定にあたっては、各体型に属する複数の人体を選出したり、あるいはデータの平均化処理等を行う方法もあるが、以下では説明の簡単化及び理解度を優先させるために、各基準体型を代表する人体がそれぞれ1体であるとし、また、性別については両性のうちの一方に固定し、かつ年齢の影響を無視した上で説明を行うことにする。
【0097】
次工程(2)では、対象者に関する基本データとして、身長、体重、外形形状のデータを入力する。
【0098】
入力方法としては、手動で入力する方法や、対象者の画像データ等から入力値を取得する方法がある。
【0099】
例えば、身長、体重については、対象者の知識により値が既知である場合にキーボード等の入力手段を用いて数値を直接入力する方法や、身長、体重計によって計測した値を自動入力する方法がある。
【0100】
また、形状については、対象者の画像データや3次元データを取得して(例えば、ステレオ撮影用カメラやホログラムカメラ、レンジファインダー等を用いる)、人体の各部位の形状を認識することで、形状データの自動入力を行う方法が挙げられる。例えば、光の干渉縞を用いる方法(被写体に対して単色光や3原色光による干渉縞を発生させて被写体を撮影するとともに、被写体に生じた干渉縞の形成間隔から撮影方向における被写体の奥行き(凹凸)についてのデータを得て、これに干渉縞のない被写体画像を貼り付けることによって3次元データを得る方法)を採用する場合についてその手順を簡単に示すと下記のようになる。
【0101】
(1)被写体(対象者)への重心位置検出用マーカー(画像処理上の目印又は電波発生源や通信装置等)の装着及び通信状態のチェック
(2)干渉縞発生及び形状読取装置(複数台)の初期位置設定
(3)使用する干渉縞のタイプ、色彩、形成間隔等の決定
(4)重心位置検出用マーカーの移動に合せて被写体を自動追尾で撮影する
(5)干渉縞画像に基づき、立体画像処理により3次元形状データ(ポリゴンデータ)を生成し、対象者の(外形)形状モデルを作成する
(6)形状モデルについての等精度化及び色彩補正
(7)形状モデルに対する2次元画像(表面画像)の貼付処理。
【0102】
図23は立位姿勢の対象者について取得した画像データGを概略的に示すものであり、左側に示す図において「HEIGHT_tgt」が対象者の身長を示している。また、その右側の図は、対象者の画像データを上記基準身長に縮小(あるいは伸張)したもの、つまり、画像データGについて全ての構成部分の長さに「HEIGHT_ref/HEIGHT_tgt」の比率を掛けることによって得られる画像G′を示している。尚、この比率「HEIGHT_ref/HEIGHT_tgt」については後の工程で必要となるのでメモリ等に記憶しておく必要がある。
【0103】
図24及び図25は、立位姿勢の対象者について取得した3次元データ(外形形状データ及び表面状態のデータ)に基づいて高さ方向に沿って所定の間隔「ds」でスライス処理を行った断層面のサンプリング例を示している。
【0104】
図24は対象者の正面図を概略的に示すものであり、スライス処理の起点は頭頂とされている。
【0105】
図25に示すように、頭頂に近い方から足先にかけて付与された識別番号i(i=1、2、・・・)を有する各断層面での面積素片ΔS_i(i=1、2、・・・)については、その形状と断面積だけが意味をもっており、面積素片ΔS_iに関する内部構造を示すデータは存在しない。何故なら、対象者の3次元データは、対象者の外形に係る形状データと外表面の状態に係るデータ(画像データ等)によって構成されることが必要十分条件とされ、体の内部構造は不要とされるからである。
【0106】
従って、対象者の3次元データから抽出される情報は各面積素片ΔS_iがどのような形状をしているか及び断面積の大小である(図22参照。)。尚、本例ではスライス処理から面積素片を得たが、その代わりに面積素片にスライス方向の間隔dsを掛けることで得られる体積素片を用いても良い(この場合には断面積の代わりに断面での体積を使用する。)。
【0107】
また、スライスの間隔dsについてはこれを均等に設定しても良いが、体の形状を特徴的に示す特定の部分(腹部や胸部等)についてスライスの間隔を小さくして当該部分に関してより詳細なサンプリングを行うようにしても良い。
【0108】
以上の方法により、対象者の3次元データを取得し、当該データから対象の断層面における形状及び断面積若しくは断層面間の体積についてのデータを取得することで対象者の体の形状に係るデータを効率良く取得することができ、データの入力作業を容易に行うことができる。
【0109】
次工程(3)では、先ず、対象者の体型を特定する処理を行う。
【0110】
例えば、上記工程(2)で得た各面積素片ΔS_iの形状を示すデータ(例えば、断面形状を楕円で近似したときの離心率等、形状の変形率を示すデータ)を「t_i」(i=1、2、・・・)とし、面積素片ΔS_iの面積を「s_i」(i=1、2、・・・)としたとき、図26に示すように、X−Y平面に設定した極座標(r,θ)において点PT_i(s_i,t_i)をプロットする。つまり、X−Y平面において原点Oを中心とする円の半径が断面積を示し、θ方向が面積素片の形状を表すことになる。
【0111】
図27は図26をZ軸方向から見たときのX−Y平面図を示しており、各面積素片ΔS_iについて点PT_i(s_i,t_i)(i=1、2、・・・)が対応している。
【0112】
点PT_iの位置を全てX−Y平面上にプロットした後は、各点PT_iを頂点とする多角形(凸角形や凹角形を含む。)の重心(これを点Gと記す。)を求める。例えば、図示するように、点PT_i、点PT_(i+1)、点PT_(i+2)(但し、i=1、2、・・・、n−2であり、nは自然数である。)を頂点とする3角形の重心をそれぞれ「Gi」としたとき、点Giの合成重心が上記重心Gである。つまり、原点Oを基準とする点Giの位置ベクトルをベクトル「V_Gi」とし、点Gの位置ベクトルをベクトル「V_G」とするとき、ベクトル式「Σ(V_Gi−V_G)=0」(但し、「Σ」はiについての総和を示す。)を満たす点Gの座標を計算することによって重心位置が決定される。
【0113】
尚、図27では各点PT_iがX−Y平面上の同一象限に位置しているとしたが、場合によっては、同図に点PT′や点PT′′で示すように点PT_iとは別の象限に位置していたり、あるいは多数の点がまとまって位置している領域から離れたところに孤立して存在する場合(例えば、大半の点がas軸とat軸とで囲まれた扇形領域に属しているのに、一部の点がas軸とpi軸とで囲まれた扇形領域に属している場合等。)があるが、これらの点については無視するか、あるいは、例外として取り扱うことが好ましい。
【0114】
また、上記したサンプリングの結果得られる面積素片(若しくは体積素片)については、必ずしもこれらを全て利用する必要はなく、体型を特徴的に示す特定の部分(腹部や胸部等)に係るサンプリング結果だけを選出することで処理の高速化を図るようにしても良いことは勿論である。
【0115】
以上のように、体型形についてのデータを示す座標平面(X−Y平面)上に極座標(r,θ)を設定した後、対象者の断層面における形状データ(t_i)から極角θが規定され、かつ、当該断層面における断面積のデータ(s_i)若しくは断層面間の体積データ(体積素片の体積データ)から極半径(r)が規定される点(PT_i)を座標平面(X−Y平面)上に配置して、各点の間を線分で結んでできる多角形の重心Gの位置から対象者の体型形を特定することができ、しかも、その算出に要する計算には四則演算程度の計算量で済むため、面積素片若しくは体積素片の数が増えたとしても計算上の負担が著しく増加することがない。
【0116】
重心Gの座標(これを極座標表示で「(rg,θg)」と記す。)が決まると、上記した体型形座標空間内における関数式Z=Fn(X,Y)から対象者に係る骨格データの換算比率(対象者に係るモデル作成に使用する比率)を算出することができる。即ち、上記したように関数式Z=Fn(X,Y)は各基準体型の骨格データに基づく補間計算から求められるので、極座標系から2次元直交座標系への変換式を用いて「Xg=rg・cos(θg)」、「Yg=rg・sin(θg)」を計算してこれらを関数式に代入することで、Fn(Xg,Yg)の値を求めることができる。
【0117】
図28は重心G(Xg,Yg)から関数値を求める様子を概念的に示したものであり、Fn(X,Y)については、nを「_hr_xx」に選んだ場合と、nを「_mr_xx」に選んだ場合とを併せて示している。つまり、点Q_hrの高さ(Z_hr)が長さ比率に係るFn(Xg,Yg)の値(_hr_xx)を示しており、点Q_mrの高さ(Z_mr)が重量比率に係るFn(Xg,Yg)の値(_mr_xx)を示している。
【0118】
このように骨の長さや重量について対象者の換算率が求められると、対象者の身長や重量に基づいて実際の長さや重量を計算することができ、この処理は次工程(4)において行われる。
【0119】
例えば、長さの比率に係る関数式Fn(X,Y)については、上記した各基準体型モデルの身長を基準身長に揃えるとともに、対象者の身長を基準身長に変換した場合に得られる値であるので、対象者の身長について骨の長さを計算するには、上記した比率「HEIGHT_ref/HEIGHT_tgt」が必要となる。つまり、「_hr_xx」にHEIGHT_tgtをかけることによってxxで示す部位の長さが決定される。尚、骨の太さ等、長さの次元を有する他の諸量についても_hr_xxの導出過程と全く同様に求めることができる。
【0120】
また、重量の比率については対象者の重量(体重等)を「_mr_xx」に掛けることによりxxで示す部位の重量が決定され、断面積や体積等、長さのn乗(nは2以上の自然数。)の次元を有する量について重量の導出過程と全く同様に求めることができる。
【0121】
こうして、対象者に関する全ての骨の長さや重量を求めることによって対象者の骨格(構造)に関する数値モデルを作成することができ、例えば、数値モデルの表現形態としてポリゴンデータによるモデルを採用した場合には全骨のポリゴンデータを予め用意しておき、モーフィング等の変形処理を駆使することによって骨格構造の3次元モデルを得ることができる。
【0122】
尚、上記の説明では、対象者の3次元データ(外形形状データ)を取得して対象者の体型形に係るデータを求めたが、3次元データを利用することなく対象者の2次元画像データだけを用いることによって簡易なモデルを作成する場合には、画像データから体型を特徴的に示す人体部分の長さ比率(縦横比率等)を上記した面積素片の断面積に代用しても良いことは勿論である。例えば、胸部の形状について典型的には闘士型で逆3角形(逆台形)状となり、肥満型ではほぼ台形状、痩せ型ではほぼ長方形となるといった具合に、立位姿勢の対象者の画像データから体型形に係る情報を得ることができる。
【0123】
これとは逆にモデルの精度を上げるためには、対象者の3次元データから得られる人体の各部位の長さに基づいてデータの補正を行ったり、あるいは全骨の重量和が体重を越えてしまうといった矛盾が生じないように構造モデルと実際の対象人体との間の誤差を極力低減して整合化を図る必要がある。
【0124】
次に、骨格モデルに対して上記(ii)筋肉モデルを付加した数値モデルの作成について説明する。
【0125】
この場合には、筋肉の形状、長さ、重量の他、筋肉の運動性能に関する諸量(例えば、筋肉の収縮率や、仕事率、筋収縮の反応速度等)を数値モデルの対象に含めることによって筋肉の性能を数値化することが好ましい。
【0126】
つまり、筋肉の長さや重量については、上記した「_hr_xx」や「_mr_xx」と同様の手順を踏襲することによってこれらを求めることができる。即ち、「_hr_xx」がxxに示す各筋肉の長さの比率を示し、「_mr_xx」がxxに示す各筋肉の重量の比率を示すものと考えれば良い。
【0127】
これに対して筋収縮率や仕事率等についてはこれらの値が何によって影響されるかに依存して決定される。
【0128】
例えば、筋収縮率は、筋肉の自然長に対して筋肉がどれだけ収縮するかを示す比率であり、筋肉の基準長(自然長)を変数「L」で表し、筋収縮時における筋肉長を変数「LL」で表した場合に、関数式f(L,LL)で表すことができ(単純なモデルでは「f(L,LL)=LL/L」である。)、該関数式については上記した関数Fn(X,Y)と同様に各基準体型モデルのデータから算出することができる。よって、「Lg=Fn(Xg、Yg)、LLg=Fm(Xg、Yg)」(但し、Fnは上記Z軸を変数Lにとった場合の関数を示し、Fmは上記Z軸を変数LLにとった場合の関数を示す。)から算出した値を上記関数式に代入したf(Lg、LLg)から対象者の筋収縮率を計算することができる。
【0129】
同様にして仕事率(単位時間当たりの仕事量)は作用点の重量及び作用時間の関数として求めることができ、また、筋収縮の反応速度は、末端神経から筋肉までの距離及び筋収縮の開始時間の関数として求められる。
【0130】
尚、骨格及び筋肉を含むモデルの作成過程については、上記した(1)の工程で骨の形状や長さ、重量の他、筋肉の形状や長さ、重量、筋収縮率を含む骨格及び筋肉のデータを用意するとともに、上記(3)の工程で各基準体型に係る骨格及び筋肉データに基づいて補間計算を行い、対象に係る骨格及び筋肉のデータの換算比率を算出する。そして、上記(4)の工程では(3)の工程で得た換算比率及び(2)の工程で入力した対象の体長や重量に基づいて対象の各骨や筋肉の長さ、重量、筋収縮率を決定すれば良い。
【0131】
こうして作成されるモデルによれば、例えば、骨や関節等を動かしたときの筋肉の模擬的運動を現出させることが可能となる。
【0132】
以上で骨格及び筋肉の数値モデルについて説明を終えるが、上記した方法は、数値データの如何には無関係に採用することができる普遍性を有しているので、この方法を上記した(iii)乃至(v)のモデルに適用することは容易である。
【0133】
次に、人体構造モデルを構成するデータベースについて説明する。尚、ここで「人体構造モデル」とは、人体に関する体格や体重等の基礎データからその身体的特徴を、骨格、筋肉、神経、皮膚、脂肪等を含む構造的モデルとしてコンピュータ上に構築した数値モデルを意味する。
【0134】
この人体構造モデルは多数のDBから構築され、当該DBを大別すると、概念的には下記に示すDBが挙げられる。
【0135】
(A)骨に関するDB
(B)関節や靭帯に関するDB
(C)筋肉に関するDB
(D)神経(運動神経や反射神経等)に関するDB
(E)内臓や脂肪に関するDB
(F)皮膚に関するDB
(G)身体運動に関するDB
先ず、(A)は骨の重量や重量分布、形状、破断係数等の項目を含んでおり、骨格の基本情報に関するDBである。
【0136】
また、(B)には関節の自由度や破断係数、対偶と対偶との接続関係、対偶と筋肉との接続関係、筋肉の収縮率と関節の角度との関係等についての情報が含まれる。
【0137】
(C)には、筋肉の自由長や収縮(若しくは膨張)時の長さや収縮率、破断係数、重量、反応速度、仕事率等についての情報が含まれる。
【0138】
(D)には、例えば、運動神経に関して脳幹、中枢神経、末端神経、筋収縮神経における運動神経信号と筋収縮との関係についての情報、あるいは、反射神経に関して、触覚神経、末端神経、中枢神経、脳幹における圧力、熱、痛覚の神経信号と筋収縮との関係についての情報等が含まれる。
【0139】
(E)には、内臓や脂肪の重量や重量分布についての情報が含まれ、(F)には皮膚の老化や皺の寄り方についての情報が含まれる。
【0140】
(G)は人体の力学的運動状態だけを表象するためのDBであり、これには、人体の全身運動や部分運動に係る情報をワイヤーフレームモデルとして抽出したデータと、運動に伴う重心位置の変化についての情報が含まれる。
【0141】
尚、上記のDBはそれぞれ1個のDBとして生成されるとは限らない(例えば、あるDBは複数のDBの集合として構成される。)。
【0142】
人体構造モデルの作成に関する処理の大要を箇条書きにして簡単にまとめると、以下のようになる。
【0143】
ステップSS1:身体に関する基本データの入力
ステップSS2:DBに基づくデータ加工
ステップSS3:人体についての3次元データの取得及び運動に関するワイヤーフレームモデルの生成
ステップSS4:人体についての3次元データの取得及び運動に伴う重心位置データの取得
ステップSS5:人体についての3次元データの取得及び三半規管神経によるバランス神経信号と身体バランスの取得
ステップSS6:人体についての3次元データの取得及び筋電図等による運動神経信号と筋収縮との関係の取得
ステップSS7:人体についての3次元データの取得及び反射神経テストによる筋収縮と圧力、熱、痛覚の神経信号との関係の取得
ステップSS8:伸張反射神経に関する筋電図情報の取得。
【0144】
以上のステップのうち、本願発明に関係のあるステップSS1乃至SS4について、以下に説明する。
【0145】
上記SS1は、人体構造モデルの対象となる個人の体格や性別、年齢等のデータを入力するステップであり、その後のステップSS2では各種のDBに基づいてデータを加工して対象者の身体構造に関するDBを生成する。
【0146】
尚、ここで各種のDBとは、例えば、下記(a)乃至(f)に示す通りである。
【0147】
(a)重量DB
骨、筋肉、脂肪、頭部、臓器等の重量比率(体重に占める割合)に関するDBである。
【0148】
(b)重量分布DB
骨、筋肉、脂肪、頭部、臓器等の重量分布(人体における位置や重心等)に関するDBである。
【0149】
(c)破壊係数DB
骨や靭帯、筋肉等の破壊係数(破断係数等)に関するDBである。
【0150】
(d)関節自由度DB
各関節の自由度に関するDBであり、関節の可動範囲の設定に用いられる。
【0151】
(e)接続関係DB
対偶と対偶との間、対偶と筋肉との間、対偶と靭帯との間等についての接続関係を規定するDBである。
【0152】
(f)筋運動DB
関節の駆動角度と各作用筋の駆動比率や、筋肉の自由長や収縮率、仕事率、筋収縮の反応速度等に関するDBである。
【0153】
(g)神経配置DB
人体における神経配置や長さ等に関するDBである。
【0154】
また、身体構造に関するDB(以下、「身体構造DB」という。)とは、上記(a)乃至(f)のDBのリンク(データ結合あるいは関連付け)により生成されるDBとして定義される。
【0155】
そして、上記(a)乃至(f)のDBと、上記した(A)、(B)、(C)、(E)に示すDBとの間の関係の一例を示すと、下表1の通りである。
【0156】
【表1】
【0157】
尚、表1において「○」は横欄に示す各DBが縦欄に示すDBを包含することを意味し、「−」はそのような包含関係がないことを意味している。例えば、(A)の骨に関するDBには、骨の重量や重量分布、骨の破断係数に関するDBが含まれる。また、(B)のDBについては関節の重量が主として骨部の重量から構成されるために靭帯についての重量や重量分布を無視しているが、これらについてもモデルに組み込むことでより詳細なモデル化を図ることができることは勿論である。
【0158】
そして、形状に関するDBについては、基準人体(上記基準体型モデル等。)の骨格や脂肪等の形状モデルに基づき前記した方法を用いて体型形や性別データ等から生成される。
【0159】
図29及び図30は、上記ステップSS1及びSS2について、具体例の要部を示すフローチャート図である。
【0160】
先ず、図29のステップS1において予め規定されている下記のデータ項目について、対象者の数値を入力(手動又は自動入力)したり、選択値の場合にはそれらのいずれかを指定する。
【0161】
・身長(単位:mm)
・体重(単位:Kg)
・体型形(痩せ型、闘士型、肥満型等のタイプとその度合。)
・性別(男・女)
・年齢(単位:才)。
【0162】
例えば、入力値のデータ構造について下表2に示す例が挙げられる。
【0163】
【表2】
【0164】
つまり、この場合には、身長や体重等のように連続的な数値を格納する領域を要するものや、体型形等のように、タイプを示す値(上記体型形座標空間の座標軸θの値に対応する)とその度合示す数値(上記体型形座標空間の座標軸rの値に対応する)とを組み合わせた構造、あるいは、性別のように「0」又は「1」の1ビットデータで簡単に表現できるもの等が挙げられる。
【0165】
尚、身体構造モデルの生成にあたっては、上記のような比較的少数の入力パラメーターに基づいてモデルを生成するモード(以下、「ノーマルモード」という。)と、ノーマルモードで生成したモデルに変更を加えるためのモード(以下、「特殊モード」という。)とが存在するので、ステップS2でのモード判断処理において、先ずは、ノーマルモードを選択したものとして、ステップS3乃至S8での処理について説明する。
【0166】
ステップS3では、上記(a)の重量DBを参照して重量設定処理を行う。即ち、対象者の体型形データに基づいて骨、筋肉、脂肪、頭部、臓器等についての重量比率を設定するとともに、筋肉や脂肪の重量についてはさらに胸部、腹部、上肢、下肢に区分して設定する。また、性別の如何によって筋肉脂肪のつき方が異なるので、その相違を考慮して重量比率の設定を行う。尚、設定後における総重量と上記した体重の入力値との差がほぼゼロとなるように重量の割り当てを行う必要があることは勿論である。
【0167】
次ステップS4では、上記(b)の重量分布DBを参照して、対象者の身長や体型形のデータに基づいて骨格や脂肪の形状について設定を行う。そして、骨の重量分布(重心や比重等)により骨と頭部の重量配分を設定するとともに、肉質の重量分布により筋肉や脂肪の重量配分を設定する。尚、ここで、「肉質の重量分布」について、上肢、下肢の場合と胸部の場合とに分けて説明すると、前者の場合には、骨の重量分布についての重量点を中心とした仮想の円軌道(これは立位姿勢の人体を正面から見た場合の形状であり、正確には球形状をしている。)を複数設定して、各軌道に対して重量を等間隔でもって均等に配分する。また、後者の場合には骨の重量分布における胸郭の重量点から外方へ一定の間隔をおいた距離に仮想の軌道を複数設定して、各軌道に対して重量を等間隔でもって均等に配分する。そして、性別の入力データが女性である場合には、胸部脂肪の重量分布について追加の設定を行う。
【0168】
内臓の重量分布については、頭内臓部、第1頸骨間関節と恥骨間を結ぶ内臓重量線上において等間隔で設定し、該重量分布は椎骨の運動によって変化する。また、腹部脂肪の重量分布については、内臓重量線上に沿って等間隔に設定される重量点を中心とする仮想の楕円形軌道(これは立位姿勢の人体を正面から見た場合の形状であり、正確には楕円体形状をしている。)を複数設定し、各軌道に対して重量を等間隔でもって均等に配分する。尚、この他、仮想の楕円形軌道内に、骨、筋肉、内蔵、脂肪の領域を設けて領域毎のDBを作っておき、各領域に等分布の重量をそれぞれ設定する方法がある。
【0169】
上記によって内臓や脂肪の分布が明らかとなるので、対偶の進入禁止範囲(対偶が内臓等を突き抜けて体内に進入するのを禁ずるための範囲)を設定することができる。
【0170】
ステップS5では、上記(c)の破壊係数DBから骨や靭帯、筋肉等についての破壊係数データを読み込む。これは骨や靭帯等の破損を招くような無理な力が加わる姿勢、つまり、健康体においてあり得ない人体の状態を人体構造モデルにおいて回避するために必要とされる。
【0171】
ステップS6では、上記(d)の関節自由度DBや(c)の破壊係数DBを参照して、体型形や性別のデータから関節の駆動範囲や自由度(破壊時の自由度を含む。)を設定する。尚、これは関節の構造からは健康体として許されない動きやありえない動きを排除するためである。
【0172】
ステップS7では、上記(e)接続関係DBを参照して各種の接続関係についてのデータを読み込んだ後、次ステップS8では筋運動についての設定を行う。
【0173】
筋運動については上記(f)の筋運動DBを参照して、入力データ(身長、体重、体型形、性別、年齢等)に基づいて駆動される対偶の重量を考慮して関節の駆動角度と作用筋の収縮率について設定する。
【0174】
以上のステップS3乃至S8によってノーマルモードでの身体構造モデル及びこれをデータベース化した身体構造DBが作成される。尚、上記(g)の神経配置DBについては、身体構造DBに合わせて基準人体(基準体型モデル等)の神経配置から単独の加工処理によって作成される。
【0175】
図30のステップS9では特殊モードに進むか否かを判断し、特殊モードを選択した場合にはステップS10に進み、選択しなければステップS17に進む。
【0176】
上記ステップS2又はステップS9において特殊モードを選択した場合にはステップS10に進み、比率変換モードを選択するか否かを判断する。尚、「比率変換モード」とは上記したノーマルモードにおいて生成したデータに対して腕、胴、脚部等の大きさを入力してデータ比較を行い、長さや重量の再設定を行うモードである。同ステップで比率変換モードを選択した場合にはステップS11に進み、選択しない場合にはステップS17に進む。
【0177】
ステップS11では比率変換モードを更に2つにモード、つまり、「長さ設定モード」と「比率設定モード」とに分け、両者のうちのいずれかを選択する。そして、「長さ設定モード」を選択した場合にはステップS12に進んで、腕、胴、脚部等の長さ(単位:mm)をそれぞれ入力する。また、「比率設定モード」を選択した場合にはステップS13に進んで腕、胴、脚部等の基準長(例えば、身長等)に対する比率をそれぞれ入力する。尚、これらステップS12、S13での入力データは、例えば、上記(e)の接続関係DBにおける筋肉の自由長についての補正に用いられる。
【0178】
続くステップS14では、重量モードについて2つのモード、つまり、「合わせ込みモード」と「加減調整モード」とに分け、両者のうちのいずれかを選択する。そして、「合わせ込みモード」を選択した場合にはステップS15に進み、生成データから得られる重量を体重の入力データに合わせる処理を行ってから図29のステップS2に戻る。また、「加減調整モード」を設定した場合にはステップS16に進んで生成データから得られる重量について増減量を付与する処理を行った後ステップS2に戻る。これらのステップS15、S16により、上記ステップS3やS4での重量設定や重量分布の補正をさらに行うことができるようになる。
【0179】
ステップS17では、「関節重量モード」を選択するか否かを判断し、選択する場合にはステップS18に進み、選択しなければステップS19に進む。尚、「関節重量モード」とは、例えば、対象が人体ではなく人体を模倣した2足歩行型ロボットにおいて、関節駆動用のモータ等の重量を登録する場合等に用いられ、関節毎に1点の加重値を加減算して、全体のバランスが保たれるように対偶の重量分布を設定するためのモードである。尚、ステップS18での処理後はステップS19に進む。
【0180】
ステップS19では、「筋肉重量モード」を選択するか否かを判断し、選択する場合にはステップS20に進み、ここで各対偶に付随する筋や脂肪の重量毎に所望の加重値を加減算することで筋肉等の重量バランスを保つように設定を行う。
【0181】
尚、「筋肉重量モード」を選択しなければ身体構造モデルの生成を終了するが、これまでの工程において必要なデータは体格や性別等に関する比較的少数のデータだけである。
【0182】
次に上記したステップSS3、SS4について、図31に示す要部のフローチャート図に従って説明する。尚、本工程では、上記(G)身体運動に関するDBについて下記に示すDBが作成されるが、その内容は後述する処理の説明から明らかとなる。
【0183】
(G1)運動ワイヤーフレームDB
(G2)運動重心位置DB。
【0184】
先ず、図31のステップS1において重心位置検出用マーカーを付設した対象者に対して立位姿勢を維持してもらった後、次ステップS2では3次元データの取得法を用いて対象者の3次元データを得る。尚、ここで、「3次元データ」とは、平面上に貼り付けられた2次元画像と区別されるデータであり、3次元形状を構成する曲面及びこれに貼り付けられた画像データを意味する。
【0185】
3次元データの取得法としては、被写体の形状や画像を含むデータを得ることのできる方法であれば如何なる方法を用いても構わないが、例えば、前記した光の干渉縞を用いた方法を挙げることができる。
【0186】
次ステップS3では、前ステップによって得られたモデルに対してその頭部から足先に向かって鉛直方向に沿ってスライス処理(つまり、断層断面を形成する。)を行うことで身体の各構成部分や対偶を認識する。例えば、図32に概略的に示すモデルmdlに関して矢印Rで示す方向がスライス方向であり、点Psが頭頂部を示し、領域「A1」が頭部の認識に関する領域、領域「A2」が頸椎の認識に関する領域、領域「A3」が肩部の認識に関する領域、領域「A4」が胸部及び腹部の認識に関する領域、領域「A5」が脚部の認識に関する領域を代表的に示している。尚、図32において右側に概略的に示した断層図は領域A1の下側境界面でスライスした領域の数が1個、領域A3の下側境界面でスライスした領域の数が3個、脚部を途中でスライスした領域の数が2個であることをそれぞれ示している。
【0187】
また、対偶等の認識については、対象者の身体構造モデルと3次元データから得られるモデルとを比較・対照することで行う。例えば、被写体(対象者)に取り付けた重心位置検出用マーカーに対応する重心と頭部の中心点とを結ぶ軸を身体構造モデルの背骨軸であると認識したり、上肢の両肩関節の位置については背骨軸に関して左右対象であって最も突起した箇所として認識する等、人体の身体的特徴に基づいて求めることができる。
【0188】
図31のステップS4では対象者に対して膝の屈伸運動を行ってもらい、上記ステップS2及びS3で説明したのと同様の方法によって3次元データの取得及び膝関節の認識に関する処理を行う。つまり、立位姿勢での3次元データだけでは膝関節の特定を正確に行うことができないためである。
【0189】
そして、ステップS5では対象者に対してその前腕が地面に平行になるように腕を動かしてもらって上記ステップS2、S3で説明したのと同様の方法によって3次元データの取得及び肘関節の認識に関する処理を行う。
【0190】
次ステップS6では上記ステップS2乃至S5において得られた基礎データについての補正(誤差の補正等)を行った後、次ステップS7に進み、データの確定、つまり、対象者に係る人体形状データを決定する。
【0191】
そして、ステップS8に進み、対象者の形状と上記ステップで得た人体形状データとの間に顕著な相違が生じないように形状について両者間の合わせ込み処理を行い、当該人体形状と上記身体構造モデルとの間に生じる差異を極力低減する。
【0192】
ステップS9では、対象者に所定の運動をしてもらい、上記ステップS2で説明したのと同様の方法を用いて運動状態についての3次元データを取得する。
【0193】
そして、ステップS10では3次元データにおける頭部と重心位置検出用マーカーの位置に基づいて胴体を認識するとともに、対象者の身体運動に関する情報(対偶の状態等)を表象する枠体モデルとしてワイヤーフレームモデルを生成する。そして、該ワイヤーフレームモデルをデータベース化することにより上記の運動ワイヤーフレームDBを作成する。
【0194】
ステップS11では、ワイヤーフレームモデル及び前記ステップで得られた人体形状に基づいて運動中心である重心位置及びその変化に関するデータだけを抽出して上記運動重心位置DBを作成する。
【0195】
しかして、これまでに経た処理によって身体の構造や運動に関する数値モデルを得ることができ、これら対して筋肉や脂肪の形状についてのポリゴンデータ(多角形近似あるいは多面体近似によるデータ)を付加することによって人体に関するポリゴンモデルやこれをデータベース化したもの(以下、「人体ポリゴンDB」という。)を得ることができる。
【0196】
図33は人体ポリゴンDBについて、上記した身体構造DBや運動ワイヤーフレームDB、運動重心位置DBの他、下記に示すDBとの依存関係の一例を示すものであり、図中の矢印「→」は、「X→Y」と記した場合にデータベース「Y」がデータベース「X」に基づいて生成されることを意味し、また、両矢印はリンクを意味している。
【0197】
(h)筋肉ポリゴンDB
(i)脂肪ポリゴンDB
(j)特殊脂肪ポリゴンDB
(k)皮膚老化ポリゴンDB。
【0198】
上記(h)乃至(j)のDBについて簡単に説明すると、先ず、(h)筋肉ポリゴンDBは筋肉の収縮に対応した筋肉形状のポリゴンデータ集であり、(i)脂肪ポリゴンDBは、筋肉の収縮と重心の運動に対応した脂肪形状のポリゴンデータ集である。また、(j)特殊脂肪ポリゴンDBとは、筋肉の収縮には直接関係しないが重心の運動に主として関与する脂肪(内臓脂肪や胸部脂肪等。)の形状についてのポリゴンデータ集である。
【0199】
(k)皮膚老化ポリゴンDBは、皮膚に対して人為的に老化させる処理を施す際に必要な皺の量や寄り方についてのポリゴンデータ集(あるいは2次元画像データ)であり、上記した(F)皮膚に関するDBを構成するものである。
【0200】
尚、図33に示す「筋収縮ポリゴンDB」は、筋肉ポリゴンDB、身体構造DB、運動ワイヤーフレームDB、運動重心位置DBから生成されるデータベースであり、人体の運動に伴う筋肉の収縮状態を表現するために必要とされ、概ね下記の手順に沿って生成される。
【0201】
(1)身体構造DBの生成
(2)運動ワイヤーフレームDB及び運動重心位置DBの生成
(3)筋肉ポリゴンDBと(1)や(2)のDBとのリンク。
【0202】
また、「脂肪収縮ポリゴンDB」は、筋肉ポリゴンDB、身体構造DB、運動ワイヤーフレームDB、運動重心位置DBを参照しながら脂肪ポリゴンDB及び特殊脂肪ポリゴンDBから生成されるデータベースであり、筋肉の収縮や重心運動に伴う脂肪の位置や厚さ等の変化を表現するために必要とされる。
【0203】
図34は、人体ポリゴンDBの生成について処理例の要部を示すフローチャート図であり、筋収縮ポリゴンDBの生成に関する処理と、脂肪収縮ポリゴンDBに関する処理とを並列的に示している。
【0204】
先ず、筋収縮ポリゴンDBの生成に関する処理については、ステップS1において、筋肉ポリゴンDB、身体構造DB、運動ワイヤーフレームDB、運動重心位置DBを用意した後、ステップS2では、人体の運動と各筋肉の収縮率の変化についての関係を得る。
【0205】
そして、ステップS3では全ての筋肉に関してその収縮に対応した筋肉形状を示すポリゴンデータ集、つまり、筋収縮ポリゴンDBを作成する。その際には、身体構造DBのうち特に人体形状に関するデータ及び筋肉ポリゴンDBのデータを参照する。
【0206】
次ステップS4では、運動ワイヤーフレームDBに対して筋肉部のポリゴンデータを付加した後、ステップS5に進む。
【0207】
他方、脂肪、特殊脂肪のポリゴンDBに関する処理については、ステップST1において両DBを用意した後、次ステップST2で人体の運動と各脂肪の収縮率の変化についての関係を得る。
【0208】
それからステップST3において全ての脂肪に関して筋肉の収縮や重心運動に対応した脂肪形状を示すポリゴンデータ集、つまり、脂肪収縮ポリゴンDBを作成する。その際に身体構造DBのうち特に人体形状に関するデータ及び筋肉ポリゴンDBのデータを参照する必要がある。
【0209】
次ステップST4では、運動ワイヤーフレームDBに対して脂肪部のポリゴンデータを付加した後、ステップS5に進む。
【0210】
ステップS5では、筋肉や脂肪を加味した運動ワイヤーフレームモデルについて、画像データの1フレーム毎に筋肉や脂肪のポリゴンデータを加工することにより筋肉の躍動や脂肪の揺れ等を表現する。尚、この加工にはポリゴンの表面におけるドットやパッチに対するデータ処理として行なわれ、例えば、ドットに関する結線処理やベヂエ化処理、あるいはこれらの処理を、一定表面の圧縮後に行う等の処理が含まれる。
【0211】
次ステップS6では上記皮膚老化ポリゴンDBと運動ワイヤーフレームDBとのリンクを行う(図33では両方向の矢印で示している。)。これによって、例えば、ある関節の周囲における皮膚の皺を関節角度や関節からの距離に応じて変化させることができる。
【0212】
こうして人体ポリゴンDBが作成されるが、筋肉への電気刺激にあたっては、例えば、下記の(イ)乃至(ハ)に示す手順を踏む。
【0213】
(イ)駆動の対象となる関節を特定する
(ロ)(イ)の関節を動作させるのに必要な筋肉(例えば、対をなす筋肉として伸筋及び屈筋等)又は刺激付与の対象となる筋肉を選定する
(ハ)(ロ)で選定した筋肉において、皮膚表面に近い表層の筋に対しては効果器を通して低周波による刺激(あるいは後述するファントムセンセーションによる刺激)を与え、内層の筋に対しては効果器を通して干渉波による刺激を与える。
【0214】
つまり、刺激を与える筋の位置に応じて電気刺激の態様(干渉波電気刺激又は低周波電気刺激)を使い分けることで、それぞれの筋に対して効率良く刺激を与え、違和感のない運動感覚を装置使用者に呈示することができる。
【0215】
尚、上記手順(イ)では駆動の対象となる関節を特定したが、効果器によっては当該効果器に係る対象関節が既に特定されている場合があるので、そのときには、直ちに筋肉を選定することができる。
【0216】
また、(ロ)において、関節の動作に必要な筋として伸筋及び屈筋を選定した場合には伸筋と屈筋とを同じ程度に収縮させるのではなく、関節の屈曲時には屈筋をより多く収縮させ(例えば、屈筋対伸筋の収縮比率を20:1程度の比とする。)、また、これとは逆に関節の伸展時には伸筋の方をより多く収縮させる。そして、筋肉の選定においては、関節とこれを駆動する筋肉の伸縮とを関係付けるデータベースを予め構築しておき、その後、上記(イ)の過程で、対象となる関節を特定したときに、当該関節を駆動するのに必要な筋肉を上記データベースに基づいて選定することが好ましい。尚、「関節とこれを駆動する筋肉の伸縮とを関係付けるデータベース」とは、例えば、前記した(B)関節や靭帯に関するDBと(C)筋肉に関するDBとを関連付けることによって生成することができ、(a)乃至(f)に示すDBのうち、関節や対偶と、これを補助する筋肉についてのデータ項目(例えば、関節の名称や位置、関節の駆動に要する筋肉の名称や形状データ、対偶を支えている始点の関節名称等)を含んでいる。このデータベースを用いると、例えば、肘関節を対象としたときに、その動作に応じて関与する筋肉の情報を得ることができる。
【0217】
例えば、肘関節の駆動をとりあげて説明すると、以下のようになる。
【0218】
人体における肘関節及び前腕の運動に関与する筋のうち、上腕の筋肉には、上腕二頭筋、上腕筋、上腕三頭筋、肘筋が挙げられ、また、前腕筋には、腕橈骨筋、回外筋、円回内筋、方形回内筋等が挙げられる。
【0219】
このうち上腕の筋肉についてみると、2関節筋である上腕二頭筋は、肘関節に関する屈曲作用及び前腕に関する回外作用を有しており、特に屈曲については屈筋群の中でも強力な働きをもっていることが知られている。また、上腕三頭筋は長頭が肩甲骨に起始部をもつ2関節筋であり、肘関節における前腕の伸展作用は主に内側頭に属する筋が行い、強力な伸展力を有することが知られている。
【0220】
前記した多層構造の効果器を筋肉に対して装着するにあたっては、電極群をシート面の全面に亘って一様に配置するよりは、特定の領域にのみ配置することで効率化を図ることが好ましい。これは、筋肉の場所に応じて電気刺激の影響が異なるからである。尚、「特定の領域」とは、筋肉の筋始点や筋腹、あるいはこれらの近傍領域又は筋始点と終点とに亘る範囲に対応するシート状基材上の領域をいう。例えば、上腕二頭筋を例にすると、この場合には、筋腹に対して配置される電極を陰電極とし、筋始点に対して配置される電極を陽電極とし、対をなす電極を介して低周波電気刺激を与えることによって、皮膚表面から筋肉の伸縮が目視で解るような表層筋に対して刺激を与えることができる。
【0221】
また、関節の動作によって巻き込まれてしまう皮膚表面の領域には、電極部を構成する電極群を配置しないことが好ましい。その理由はシート状基材の変形に伴う電極位置の移動が大きいこと、また、上記抵抗パターンの数、圧力や温度の検出素子の数が多い場合には、取得したデータの処理に負担がかかるためである。よって、このような不都合を避けるためには、下記(i)乃至(iv)に示すように、関節の動作時(屈曲や伸展時等)において圧力が大幅に変化する領域を予め調べておくことが好ましい。
【0222】
(i)効果器を対象者に装着する
(ii)対象者に関節の屈曲や伸展の一定動作を実行してもらう
(iii)(ii)の動作中における抵抗パターンの抵抗値変化あるいは表面の圧力の情報を取得するとともに、抵抗値や圧力値に関して所定の閾値を設定してこれを越えた位置や範囲を示す場所情報をデータ化してROM(リード・オンリー・メモリ)や補助記憶装置(あるいは外部記憶装置)等の記憶手段に格納しておく
(iv)(iii)で記憶しておいた場所情報を参照して使用電極の配置や、圧力検出を行わない(あるいは検出値を無視すべき)領域を決定する。
【0223】
尚、(ii)においては、対象者にヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の視覚表示装置を装着して、当該装置上に模倣すべき動作を映し出す方法を用いることが好ましい。つまり、カメラ撮影によって得られる画像情報を動画像として映し出した映像と、これから模倣すべき動作を示す仮想映像を視覚表示装置に表示させ、対象者には、実際の自分の動作を示す映像が仮想映像に重ね合さるように動きを追従させることで一定動作を倣ってもらうと、口頭での説明や指示者の動作をまねるよりも能率的である。
【0224】
また、効果器を人体に着用して使用できる形状にした場合には、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所に、通気性及び伸縮性を有する材料が用いることが好ましい。つまり、対象者の動作に伴う発熱や発汗に対処する(つまり、蒸れないようにする)とともに動き易さを保証するためには、通気性に富み、伸縮性に優れた材料の使用が望ましい。例えば、ダーリントン伸縮性織地と、水蒸気を通しかつ熱可塑性のフィルムを積層した布地として、リーバンド社の「ダーレックス」(DARLEXX:商標)や、吸湿性・給水性に優れた綿素材にクーリング性の高いエバール繊維(芯部分にポリエステル、鞘部分にエチエン・ビニルアルコールを用いた複合繊維:株式会社クラレの商標)を交編した機能素材として、ミズノ社の「アイスタッチ」(商標)等が挙げられるが、これらに限らず、スポーツ衣類等の分野で開発されている素材を使用することができる。
【0225】
そして、関節及びこれによって駆動される部位の全体に亘って効果器で覆うのではなく、当該関節についての対偶に対応した部分にだけ電極部を有する効果器を部分的に装着して(つまり、対偶毎に電極部を作成するとともに、各対偶の形状的特徴にあった形状の効果器を着用する。)、電気刺激を付与することにより、軽くて着用し易くなる。例えば、前腕の肘関節や手首の関節を例にすると、これらの関節の近傍領域にそれぞれの効果器を装着すれば済むことになる。尚、対偶の形状認識については後述する。
【0226】
しかして、本発明に係る制御方法の基本手順を箇条書きにしてまとめると下記のようになる。
【0227】
(1)対象者に係る人体の筋肉配置を示すデータベースを予め構築しておく
(2)効果器を対象者に装着させることで、当該効果器を構成する電極群が皮膚表面に接触されるように設定するとともに、皮膚表面の形状及び形状変化を示す情報を取得して形状認識を行う
(3)(1)のデータベースから得られる対象者の筋肉配置の情報と、(2)の形状認識結果に基づいて電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択する
(4)(3)で選択した電極に対して低周波電気刺激又は干渉波電気刺激のための電気信号を供給する。
【0228】
以上で概要説明を終え、下記に示す基本的事項について詳説する。
【0229】
(I)圧力検出を利用した形状認識法
(II)骨断面や筋及び脂肪断面の情報を利用したデータベースの構築
(III)低周波電気刺激法と干渉波電気刺激法
(IV)ファントムセンセーション
(V)筋電図を利用した動作推測法
(VI)低温火傷の防止と刺激出力の調整
先ず、前述したように、図1の形状認識部1cに関しては圧力検出を利用した認識方法について説明したが、本法では表面圧Pと形状Sとの間の数値的関係を予め取得しておく必要があり、そのための初期学習の過程を図35乃至図44に従って説明する。
【0230】
図35はシート状基材に行及び列電極シートと感圧層を積層形成して作成した圧力検出用シート12を円筒状(あるいは円錐台状)に丸めて端部同士をシリコーンやゴム材料、布等を用いて接着した状態を示している(図の斜線部が接着部分13を示す。)。また、これに限らず図36に示すように、円筒(圧力検出用シート12)の側面全体を覆うように接着領域14を形成しても良い(図に斜線を付して示す部分を参照。)。尚、円筒側面の母線に沿うように縦糸(例えば、麻等の丈夫な工業糸)を接着部あるいはシート基材の内部又は外表面に設けることが好ましい(円筒軸に平行な方向におけるシート基材の形状変化を良好なものにするため。)が、圧力検出用シートの伸張時において電極シートや感圧シートが変形したときに抵抗値や誘電率等が変化する場合があるので、変形に伴う物理量の変化率を予め測定しておき、当該変化率を考慮してデータ補正を行うことが好ましい。
【0231】
図37は圧力検出用シート上における各圧力検出素子を選択するための構成を概略的に示したものであり、マトリックス選択回路15は、上記した行電極群8a、8a、・・・に接続される接続線群「X」と、列電極群10a、10a、・・・に接続される接続線群「Y」を有しており、また、CPU16やメモリ17(RAM又はROM)に関するアドレスバス18及びデータバス19に接続されている。即ち、CPU16からマトリックス選択回路15に対するアドレス指定により、圧力検出素子群についての番地指定が為されると、当該番地に対応する行電極群、列電極群のうちの対応する電極がそれぞれ選択され、圧力検出素子の位置が特定される。そして、選ばれた圧力検出素子の検出情報が返されて、データバス19を介してCPU16やメモリ17において利用されることになる。
【0232】
図38は初期学習時に使用する基準円柱(円筒でも良いが、これを圧力検出用シートに挿入したときに当該シートから受ける力によって形状が容易に変化しないことが必要である。)を示しており、この例では、半径を異にする3つの円柱α、β、γが用意されており、円柱αの半径「r_α」が三者中で最も小径とされ、その次の円柱βの半径「r_β」が円柱αの半径よりも大きく、円柱γの半径「r_γ」が最も大径とされている。
【0233】
これらの基準円柱をそれぞれ圧力検出用シート12(図では円錐台形状をしている。)に挿入した上で圧力分布と形状(基準円柱の半径)との間の数値的関係をキャリブレーションにより取得する。つまり、基準円柱の径が大きいもの程これを筒状の圧力検出用シートに挿入したときの圧迫が大きくなる(表面圧が大きくなる)ことが明らかであり、そのときの圧力検出情報(正確には各圧力検出素子により得られるデータ群)と形状との対応関係を数値情報として得ることができる。
【0234】
尚、この例では説明を簡単にするために基準円柱を3個としたので、上記自由曲線を決める上での点の数が少ないが、半径の異なる数多くの基準円柱を用意するか又は1個の基準円柱においてその半径を連続的に可変するための機構を設ける(例えば、空圧や電磁機構等を使った人工筋肉を基準円柱に付設する。)ことによって、補間に必要なデータ数を確保できることは勿論である。また、基準円柱の形状については、円柱の他に4角柱あるいは多角柱等を用いても良い。
【0235】
図39は初期学習の手順例を示すフローチャート図であり、先ず、ステップS1で基準円柱(あるいは基準円筒、角柱等)のうちの1つを選択してこれを筒状の圧力検出用シート12に挿入する。
【0236】
次ステップS2では、圧力検出用シートにおける各圧力検出素子を上記マトリックス選択回路15により走査してこれらによる圧力検出情報を取得してメモリ(RAM)に格納する。
【0237】
尚、この場合、圧力検出素子の数が膨大な数に亘ることに起因してデータ量が増えてしまうという不都合に対処するためには、上記した「人体に関する力学的構造の数値モデル」を活用して必要最小限の数の圧力検出点を選定すると、データ量を大幅に低減することができる。つまり、データ量を削減するために圧力検出素子の数を予め必要最小限にまで少なくしておくことが考えられるが、これでは対象者の個体差(体格差や四肢の長さの違い等)によって圧力検出点を適正な位置に選択できないことになってしまうからである。
【0238】
次ステップS3では、用意した基準円柱等について、これらを筒状の圧力検出用シートに挿入して圧力分布データを取得する作業が終了したか否かを判断し、終了時には次ステップS4に進むが、そうでなければステップS1に戻る。
【0239】
ステップS4では圧力検出ポイント毎に形状Sと圧力Pとの間の関数関係を得るために、自由曲線や2次曲線等を用いて近似処理を行う。例えば、自由曲線には、ラグランジェの補間曲線、ファーグソン曲線、スプライン補間曲線、ベヂエ多項式曲線、B(ベヂエ)−スプライン曲線等が挙げられ、補間のポイント数に応じて使い分けることが好ましい。尚、補間処理については既知の方法を踏襲すれば良いのでその説明を省略する。
【0240】
次ステップS5では、前ステップで得られた関数関係を1タイムでROMにデータとして登録することで初期学習が完了するが、EPROM(消去可能プログラム可能なROM)やEEPROM(電気的消去書き込み可能なROM)等を使用することによってその後のデータ補正に容易に対処することができるし、また、前記したようにデータをファイル化して補助記憶(あるいは外部記憶)装置に保存しても良いことは勿論である。
【0241】
図40は圧力検出用シートを対象物に巻き付けた状態で得られる圧力分布情報から形状を認識する手順を示すフローチャート図であり、先ず、ステップS1では対象物を筒状の圧力検出用シートに挿入する。例えば、対象者の腕に圧力検出用シートを巻き付ける。
【0242】
次ステップS2では、圧力検出ポイントを選定後に各ポイントに対応する圧力検出素子によって圧力検出情報を取得した後、次ステップS3では、得られた情報をROMデータと比較する。
【0243】
そして、次ステップS4では、取得した圧力検出情報に対応する形状データをROMデータから求めるが、正確に符合するデータがROM内にあるとは限らないので、圧力検出情報に近いROMデータを検索してこれに基づいて予想形状データを算出する。尚、圧力情報から形状を特定するためには多種多様な形状に係るデータを数多く所有してこれをデータベース化しておくことが認識の可否や精度を決定する上で重要である。
【0244】
圧力検出用シート(圧力検出手段)を用いて人体の表面形状を認識するにあたっては、関節を如何にして判別するかが問題となるが、圧力検出用シートによって検出される表面圧の変化が大きい範囲を形状認識手段により関節部として認識し、形状モデルとしてのワイヤーフレームモデルの構成データを出力する構成を採用することが好ましい。
【0245】
図41乃至図44は、上肢を例にしてその形状認識について説明するためのものである。
【0246】
図41は形状認識の手順例を示したフローチャート図であり、スタート時点において前記した初期学習が終了していることが前提となる。
【0247】
先ず、ステップS1では圧力検出用シートを上肢表面の全体に亘って巻き付けた状態で各検出ポイントにおける圧力情報を取得する。
【0248】
次ステップS2では、対象者に一定の動作を実行してもらい、その動作が安定して行われるようにする。このためには図42に示すように、対象者にヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の視覚表示装置を装着して、当該装置上に模倣すべき上肢の動きを映し出す。つまり、図の画面W内に示すように、対象者は実際の手を示す映像RHが、模倣すべき動作の仮想映像VHに重なり合うように自分の手を仮想の手に追従させることで動作を模倣する。
【0249】
ステップS3では、各圧力検出ポイントのうち、予め規定した基準値以上の圧力が検出される領域を選択した後、次ステップS4で関節部の判別処理を行う。つまり、図43に示すように、上肢では手首、肘、肩の部分で対偶動作に伴う圧力の変化が大きいための、この部分に対応する検出ポイントでの圧力情報から関節部を認識することができる。尚、図中に「+」の丸印で示す位置が関節部を概念的に示しており、また、矢印「Ra」で示す範囲が手首部で圧力変化の顕著な範囲、矢印「Rb」で示す範囲が肘部で圧力変化の顕著な範囲、矢印「Rc」で示す範囲が肩部で圧力変化の顕著な範囲をそれぞれ示している。
【0250】
次ステップS5では、各関節部の認識結果から関節間の長さを求めることでボーンワイヤーモデル(骨格構造をワイヤーフレームモデルとして表現したもの)を作成して形状データを取得する。尚、上肢形状についての認識結果については、例えば、ポリゴンデータとして出力することができる。また、説明は省略するが、脚等の他の部位についても同様の方法を踏襲できることは勿論である。
【0251】
関節角度の認識にあたっては、上記のように関節部を認識する際に、対偶の動作に対して圧力変化が新たに加わるポイント又は範囲を探して、当該ポイント又は範囲における圧力検出情報から関節角度を求めることが好ましい。つまり、上記したように関節部周囲の表面は対偶の動作に伴う圧力変化が顕著な場所であり、関節の屈曲角度が大きくなるにつれて次第に圧力が他の場所に比べて大きくなるからである。
【0252】
尚、対偶位置の認識にあたっては、図44に示すいくつかの圧力変化のパターンを満たす検出ポイントを探し出して、その圧力変化から位置を求めることが好ましい。図44(a)乃至(c)に示すグラフ図は横軸に時間t(図41のステップS2で説明した一定動作の開始時点を時間軸の起点とする。)をとり、縦軸に検出された圧力Pをとってその時間的変化を概略的に示したものである。
【0253】
図44(a)は、グラフ線gで示すように動作開始からほぼ一定の傾斜をもって圧力Pが上昇していく様子を示しており、また、図44(b)では、グラフ線g1に示すように、ある検出ポイントでの圧力が最初の立ち上がって飽和した後、別の検出ポイントでの圧力がグラフ線g2に示すように立ち上がって飽和する様子を示している。
【0254】
図44(c)では、複数の検出ポイントでの各圧力を示すグラフ線gi(i=1、2、・・・)に示されるように、ある遅延時間をもって次々に圧力が立ち上がった後飽和していく様子が分かる。
【0255】
このような圧力の時間的変化に特徴的なパターンが認められる場所を捉えることによって対偶の位置を認識することができ、例えば、手や指、肘、肩等の認識にとって有用である。
【0256】
また、捻り動作によって形状が変化する関節部を形状認識手段によって認識する際には、圧力検出手段を構成するシート状基材において捻れに伴って生じる圧力変化から関節角度を求めることが好ましい。例えば、首や腰の回転や前腕の回内・回外動作等において筋肉の捻れを捉えることで形状変化の認識が可能になる。
【0257】
尚、皮膚表面の捻れ等に伴って圧力検出シートが体表面から離れることに起因して形成される皺の認識については、急激な圧力変化が2点以上の検出ポイントに亘って連続的に生じた場所を皺とみなすことで処理することができる。但し、形状データを、例えばポリゴンデータとして作成する場合には、多数の皺データを含むことに起因して形状が複雑化し、データ量の増加を余儀なくされることになるので、皺データを除去した表面形状データだけを得たい場合には、ポリゴンデータに関する結合処理を用いる。これはポリゴンメッシュを簡単化して点やラインを間引くことでデータ圧縮を行う時に使用される定番処理であり、エッジのもつ重要度や形状的特徴にどれだけの寄与を持つ要素であるかを考慮した方法や、エッジ除去後の体積変化あるいはエッジ除去後に設定した新頂点ともとの三角パッチの頂点との距離和等を評価量として用いる方法等、各種の方法が知られている。
【0258】
以上の形状認識法は、人体の皮膚表面の形状データを取得するのに有効であり、その際、画像認識のための撮像手段が不要であるので、例えば、図23乃至図25で説明した対象者の外形形状データを取得する際にも有用である。即ち、上記電極部や圧力検出部をシート状基材の上に多層構造をもって形成した効果器を対象者に着用してもらい、その際に圧力検出部によって得られる皮膚表面の形状データを取得して対象者の外形形状を認識すれば、前記したように対象者の体型形を特定してその筋肉配置を示すデータベースを作成することができる。
【0259】
次に、上記事項(II)骨断面や筋及び脂肪断面の情報を利用したデータベースの構築について説明する。
【0260】
これまでは対象の外形形状や表面状態に関するデータの取得方法に関心をおいて説明してきたが、ヘリカルCT(Computer Tomography)やヘリカルMRI(Magnetic Resonance Imaging)等の断層面撮像手段による画像情報を利用できる場合には、これらを積極的に活用することが好ましい。
【0261】
即ち、対象者に基準姿勢(例えば、基本的立位姿勢等)をとってもらうか又は対象部位を撮像台上にギブスで固定してから、ヘリカルCTにより得た骨断面と、ヘリカルMRIで得た筋や脂肪断面の画像情報を取得するとともに、断面位置の異なる多数の画像データを積層してデータベース化することで対象者に係る静的な人体構造のデータベースを構築する。そして、関節を動作させながら時間軸に沿って対偶を撮影した画像データを取得するとともに、当該関節の角度毎に対偶の形状に係る静的なデータベースを作成することで時間経過を含む動的な人体構造のデータベースを構築する。このデータベースを利用して対象者の筋肉配置を示すデータベースを作成すると、対象者(あるいは対象部位)の外形形状に加えて骨や筋肉、腱等の内部構造や密度分布を含む、より精密なモデルを得ることができる。
【0262】
図45乃至図47はそのような手順例を示すフローチャート図である。
【0263】
先ず、図45のステップS1で撮影対象となる対偶を選択した後、次ステップS2では対偶の状態を考慮して対象部位を撮像台上にギブスで固定する。尚、ここにいう「状態」とは、対偶の動作に影響する筋について関節角度の変化を考慮した状態を意味する。例えば、前腕についていうと、手指計測に関する動作や、尺屈、橈屈、掌屈等の動作を加味して回内・回外運動における断層撮影を行えるように対象部位についての状態設定を行う。その際、筋を緊張させた状態と緊張させない状態とを区別して撮影できるように配慮する。
【0264】
次ステップS3では、対象部位の長手方向における撮影回数を設定した後、ステップS4に進んでヘリカルCTによる骨の撮影及びヘリカルMRIによる骨及び筋の撮影を行う。即ち、骨の輪郭についてはヘリカルCTを使って識別し、また、筋肉の輪郭についてはヘリカルMRIで得た撮像データから、筋と筋との間にある潤滑膜によって識別することができる。尚、後者の場合(断層断面での筋の識別)にあたっては、潤滑膜と筋との色差を利用して画像処理で自動的に識別する方法と、画像処理用ソフトウェアを使って手動又は半手動(例えば、輪郭抽出に係る部分的なオートトレース機能等)で識別する方法があるが、いずれにしても各筋肉の区別が可能である。また、脂肪の識別については、水プロトン(陽子)と脂肪プロトンでは共鳴周波数にずれがあることを利用して検出する既知の方法が確立されている。
【0265】
次ステップS5では、ヘリカルCTで得た画像情報において明度差(白い部分と黒い部分との明るさの違い)が顕著な領域を検出する。つまり、骨の輪郭部分が白く、その周囲は黒いので白黒のコントラストが大きいところを輪郭抽出することによって骨の領域を識別することができる。
【0266】
ステップS6では、ヘリカルMRIで得た画像情報において白色領域を抽出した後、次ステップS7ではステップS5、S6で得たデータの差分演算によって骨領域を消去したデータを得る。
【0267】
そして、図46のステップS8ではヘリカルMRIで得た画像情報における白色領域(前ステップで骨領域は除去済みである。)から筋のデータ(輪郭形状の情報を含む。)を抽出して、これに筋の名称を割り振る。その際には、抽出した領域毎に手動で名称を付す方法と、前記人体構造のモデルを利用して自動又は半自動(候補名称の表示支援や、選択肢の呈示等)で筋の名称付けをする方法とがある。
【0268】
次ステップS9では、各骨や筋の輪郭データから得られる輪郭線の長さをそれぞれ計測して取得した後、ステップS10に進み、ここで対象部位の長手方向における全ての撮影作業が終了したか否かを判断する。そして、終了時にはステップS11に進むが、未終了時には残り撮影回数を1回減らした後で図45のステップS4に戻る。
【0269】
ステップS11では、前ステップまでの過程で得られている骨や筋のうちから対象を選択した後、次ステップS12では各断層断面での画像情報についてステップS9で得ている各輪郭線の比率を算出する。つまり、ある断層面における骨の輪郭線長を基準して、別の断層面における当該骨の輪郭線長の長さについて比率を割り出す。
【0270】
例えば、図48に示すように、各断層面「Sn」(n=0、1、・・・)における輪郭線の形状が三日月形状をしており、それらの輪郭線の長さを「lgn」(n=0、1、・・・)とするとき、図ではlg0=30、lg1=40、lg2=50、lg3=40、lg4=30(長さの単位は省略する。)である。よって、lg0=30を基準にすると、これを「100」とした各長さの比率を得ることができる。
【0271】
次ステップS12では、前ステップで得た比率データ(正確にはデータ群)に応じて各断面での輪郭線に対してポリゴンポイント(この時点では輪郭線データは平面的なデータであるが、後述するようにこれを3次元化してポリゴンデータを生成する際にはこのポイントがポリゴンの主要な頂点として利用される。その意味でこれを「メインポリゴンポイント」と呼ぶことにする。)の数(これを「X0」本と記す。)を指定する。例えば、輪郭線長が長いほどポイント数が多くなるようにする。
【0272】
図48に示す例では、各輪郭線長さ「lgn」(n=0、1、・・・)に対するポイント数を「X0_n」(n=0、1、・・・)とするとき、X0_0=30、X0_1=40、X0_2=50、X0_3=40、X0_4=30に規定される(説明の便宜上、lgnに対するX0_nの比率を「1:1」とした。)。
【0273】
ステップS13では各断面において尖った部位(角張った部分)を識別し、そのポイント(その数を「X1」個とする。)を抽出してメインポリゴンポイントに登録する。
【0274】
例えば、図49に示すような三日月形状では、両端部に鋭角的な部分があり、それらの頂点「MMP0」、「MMP1」が上記メインポリゴンポイントとして登録されるとともに、この場合のX1は2個である。
【0275】
そして、図46のステップS14では輪郭線で囲まれた部分(面)の重心を算出する。例えば、図50に示すようにスプライン曲線Spで囲まれた図形に対して、基準点「O」を設定したときに、当該点と点P0乃至Pn-1上によって構成される多数の三角形群(Tr0乃至Trn-1を参照。)によっ対象図形を近似した場合には、各三角形の重心(G0乃至Gn-1)の位置ベクトルを合成することによって面重心(点G)を求めることができる。
【0276】
図47のステップS15では、前ステップで求めた重心Gを中心にして輪郭線を等角で分割する。つまり、分割数を「N」とすると、「N=X0−X1」として、重心Gから「360°/N」本の直線(放射状の半直線)を引いて、これらと輪郭線(あるいはそのスプライン曲線)との交点を求めて当該交点をメインポリゴンポイントとして追加登録する。
【0277】
図51には点Gを中心としてスプライン曲線Sp(輪郭線)をN等分(等角分割)したときの分割線Ln_0乃至Ln_n-1及びこれらと輪郭線との交点Q0乃至Qn-1を示している。
【0278】
尚、図49の場合には、三日月形状(例えば、断層面S0での形状)について算出される面重心Gと、当該重心Gを通る「N=X0_0−X1=30−2=28」本の分割線(中心線)Li(i=2、3、・・・、29)によって図形分割が行われ(同図(B)参照。)、各分割線Liと図形の輪郭線(Sp)との交点「MMPi」(i=2、3、・・・)が算出されこれらがメインポリゴンポイントとして登録される。
【0279】
このように分割数NにおいてX0からX1を差し引く理由は、X1個の尖った部位に設定されるポイントは予めメインポリゴンポイントとして登録されるので、その数をX0(割り当て数)から削減することによって、分割線数を一定化するためである(こうすることによって、各断層面についての割り当て数の比率「X0_n/X0_0」(n=1、2、・・・)がくずれないように設定することができる。)。
【0280】
上記したとおり、各断層断面での骨又は筋の輪郭線から3次元形状データを作成するにあたっては、当該輪郭線の内部領域の面重心を算出した後、当該面重心から等しい角度間隔をもって放射状に延びる直線群と輪郭線との交点を求め、これらの交点を3次元形状データの基準点として用いると、図46のステップS13で仮設定されたポイントに対して、さらに詳細な情報内容をもったポイントを付加することができるので輪郭線に対する近似の程度を高めることができる。つまり、ただ闇雲にポイント数を増やすことで高次の近似を行うよりは、ポイントの位置を的確に選定することでデータ処理の負担を軽減することが好ましい(∵面重心Gを中心といして当該重心と各ポリゴンポイントとを結ぶ線分の角度間隔が不均等であるよりは、上記点Q1乃至Qnに示すように均等な角度間隔をもつようにポリゴンポイントを設定した方がデータ処理が容易であるから。)。
【0281】
尚、分割線の数「N」は面積の大きさに比例して多くすることが高精度化の観点からは好ましいが、上記した説明では、Nの決定において面積の代わりにポリゴン頂点数(X0−X1)で代用することで処理時間の短縮化を図っている。
【0282】
図47のステップS18ではメインポリゴンポイント間の距離に大きな格差が生じているか否かを判断し(ポイント間の距離の比率あるいはその平均値や分散が、基準値以上であるか否かの比較判断によって行う。)、格差が大きい場合にはステップS19に進み、格差が許容範囲内であればステップS20に進む。
【0283】
ステップS19では、メインポリゴンポイント間の距離格差を補正するために、当該格差が問題となるメインポリゴンポイントとこれに隣接するメインポリゴンポイントとの間に補助的なポリゴンポイント(以下、「サブポリゴンポイント」という。)を追加設定する。尚、あるメインポリゴンポイントと他のメインポリゴンポイントとが重なった場合あるいは両ポイント間の距離が隣り合うサブポリゴンポイントの間隔より小さい場合には、先登録のメインポリゴンポイントを優先させる(N=X0−X1ではなくN=X0として、重なり合うポイント又は間隔の狭いポイントをスキップして分割線を配置する。)。
【0284】
そして、次ステップS20では、ステップS2乃至S19に至る一連の処理が全て終了したか否かを判断し、そうであれば次ステップS21に進み、未終了時には図45のステップS2に戻る。
【0285】
ステップS21では、上記メインポリゴンポイント及びサブポリゴンポイントに基づいて3次元形状データ(ポリゴンデータ)を生成するとともに、これらによって表現される骨や筋等の名称で当該形状データを特定することでデータベースを生成する。
【0286】
尚、筋肉の動作をポリゴンデータで表現する際には(形状の動的な表現)、各断層面での面重心(重心群)を通るスプライン曲線を中心線として規定し、当該中心線の形状に合せて筋のポリゴンデータを時間的に変化させる(上記ポリゴンポイントの位置的変化による)と、筋の形状予測が可能になる。
【0287】
また、皮膚の変化については対偶の面中心を通るスプライン曲線を規定することで表現することができる。但し、皮膚についてはヘリカルCTやMRIの撮影時に対象が無負荷状態である場合も想定されるので、このためには圧力検出時の表面形状を考慮して補完処理を行うことが好ましい。そのためには、例えば、下記に示す手順を踏む。
【0288】
(1)対象者の骨格及び筋肉のモデルに対して皮膚モデルを付加したモデルを作成する
(2)表面圧力の検出によって皮膚表面の形状データを取得し、これと(1)の皮膚モデルから得られる表面形状とを比較する
(3)皮膚モデルに基づくポリゴンデータと、圧力検出に基づく表面形状のポリゴンデータとが許容誤差の範囲で一致しない場合には、ポリゴンの中心からみてどちらのデータが当該中心から遠いかを判断する(例えば、対偶の中心を基準点「O」とし、当該基準点を通る半直線が、皮膚モデルに基づくポリゴン図形と交わるポイント(ポリゴンポイント)を「PP1」、また当該半直線が、圧力検出に基づく表面形状のポリゴン図形と交わるポイントを「PP2」とするとき、線分「OPP1」の長さと、線分「OPP2」の長さを比較する等。)
(4)皮膚モデルに基づくポリゴンデータと、圧力検出に基づく表面形状のポリゴンデータとが許容誤差の範囲で一致しない場合には、両者の面的な広がりに関して相対的にどれだけ圧縮又は伸張されているかを比率計算する(つまり、線分「OPP1」の長さと、線分「OPP2」の長さとの比率を、任意のポイントについて計算することで圧縮率(又は伸張率)を求める。)
(5)(4)で求めた比率に基づいて、両モデルのデータについての大きさがほぼ同じになるように伸縮処理を行うとともに、ヘリカルCTやMRIから作成した画像についてその基準中心(対偶中心等)に関して圧縮又は伸張処理を行う(画像サイズの変更であり、データ圧縮や伸長ではない)。
【0289】
骨や筋、皮膚の名称付けにあたっては、前記した人体構造のモデルから得られる骨や筋等の配置に関するデータからその中心線を求めて、これが図47のステップS21で得たポリゴンデータにより特定される領域(つまり、骨や筋の推定領域)に含まれるか否かの包含関係をチェックすることで当該ポリゴンデータに係る名称を特定することが好ましく、これによって自動又は半自動での識別処理が可能になる。
【0290】
尚、図45のステップS4での撮影において対偶内を部分的に撮影することによって撮影回数及び処理すべきデータ量の削減を図ることができる。
【0291】
また、図46のステップS8で画像情報における筋分布の色情報から赤筋と白筋の量的な比率を求めると(断層面では各筋の面積比に相当し、赤色と白色の区別については画像処理(色フィルタをかける)によって色の違いから容易に識別できる。)、赤筋と白筋の比から対象者の反応速度や持久力を推測することができる(赤筋の割合が多い場合には持久力に優れ、白筋の割合が多い場合には瞬発力に優れている。)。
【0292】
次に(III)の低周波電気刺激法、干渉波電気刺激法についての説明に移る。
【0293】
先ず、低周波電気刺激法について説明する。
【0294】
低周波電気刺激法における基本的要素(刺激条件)は下記に示す通りである(諸量については図52を参照)。
【0295】
i)電流の強さ(強度I)
ii)刺激パルスの持続時間(パルス幅Tw)
iii)刺激パルスの極性と波形
iv)刺激周波数
v)刺激時間と休止時間(Ts)
vi)電極配置
vii)電気刺激による運動単位の発射・動員。
【0296】
上記i)に関しては、神経や筋を興奮させるにあたってその細胞膜に電位変化を惹き起こすために一定以上の電流強度、電気的エネルギーが必要となる。尚、強度が強い方が刺激効果は高いが、不快感や痛みも強くなってしまうので、刺激強度の設定にあたっては効果に対するデメリットにも配慮する必要があり、50mA(ミリアンペア)以下、例えば、20mA〜30mA程度が目安となる(医療用具では出力電流20mAが上限とされている。)。また、上記ii)の持続時間やiv)の周波数によっても刺激強度(あるいは筋収縮力)が変化することにも注意を要する。
【0297】
尚、刺激電流の(時間)平均値がゼロでないと電極と生体との間に分極現象が生じてしまい電気化学的組成の変化をもたらすので好ましくない。そのためには、容量(コンデンサ)や絶縁トランス等を用いて直流成分をカットする。
【0298】
ii)の持続時間に関しては、ある一定の電気的エネルギー量の供給により神経や筋を興奮させるための刺激パルスの持続時間をどのように規定するかが問題となる。つまり、刺激波形のエネルギー量は刺激強度Iとパルス幅Twとの積に基づいて決定されることになるが、一般にはパルス幅が長くなると筋収縮の度合が強くなるが、逆に痛みが誘発されることにもなるので、約0.2〜0.3ミリ秒程度のパルス幅が用いられる。
【0299】
尚、刺激強度とパルス幅との間には一定の関係があることが知られており(所謂、強さ・時間曲線)、刺激強度が弱い場合には長いパルス幅を必要とし、逆に刺激強度が強く場合には短いパルス幅で筋収縮が行われる。そして、パルス幅をどんなに長くしても一定の電流値以下では収縮が起らなくなったときの電流の強さを「基電流」といい、基電流の2倍の電流値でのパルス幅を時値(クロナキシー)と呼んでいる。
【0300】
また、神経や筋に加える電気刺激については持続時間の短いパルス電圧(あるいは電流)が用いられ、例えば、筋の収縮量を制御するための刺激パルス列についての変調法には、振幅変調(AM)、パルス幅変調(PWM)、周波数変調(FM)が用いられる。
【0301】
上記iii)の極性については、刺激電極を陰極にし、不関電極(電気刺激を加えた際に刺激を感じない電極)を陽極に設定する。これは、一般に筋収縮を誘発させる刺激電流が陰極下の場合に筋肉の興奮性が高いためであり、負性パルスが使用されることが多い(例えば、負性矩形波では、刺激による痛みや不快感を極力低減するとともに、筋の疲労が少なく滑らかで力強い筋収縮力が得られる。)。
【0302】
また、神経、筋を興奮させるには電気的エネルギー量とともに、一定以上の急峻な電流変化が必要であり、波形の立ち上り時の傾き(あるいは傾き角)がある程度大きいことが必要となる。即ち、大きな電流量であっても非常にゆっくりと電流強度を上げていった場合には順応によって刺激とはならないためである。尚、この「傾き」(刺激パルスの立ち上がりの角度であり、図52の「θ」を参照。)は刺激波形に関係しており(理想矩形波では90°である。)、波形には負性矩形波、補正単相・指数関数的増減波等が挙げられる。
【0303】
上記iv)の周波数に関して、「低周波」をどの範囲の周波数とするかについての考え方がさまざまであるため明確な定義はないが、200Hz以下あるいは100Hz以下の範囲が目安となる。尚、単発の電気刺激では筋が単収縮を起こすだけで強縮は起さない。つまり、強縮を惹き起こすには一定以上の刺激周波数が必要であり、正常では15Hz程度以上である(15Hz以下の低周波で刺激すると筋の震えが出現する。)。また、刺激周波数が筋の反応帯周波数に近づく程収縮力も強くなる。
【0304】
上記v)の刺激時間と休止時間については両者の比が問題となり、デューティーサイクル(あるいはデューティー比)の決定にあたっては筋の疲労を考慮する必要がある。つまり、刺激時間が長すぎると容易に筋肉疲労を来してしまうので、刺激強度や周波数の如何にもよるが、一般的には刺激時間に対して1:1以上の休止時間が必要である。尚、筋の持久力を増加させたい場合には休止時間を基準値よりも短くし、最大筋力を増加させたい場合には十分な休止時間を確保しながら強い筋収縮を引き出す刺激条件を設定する等の配慮が必要になる。
【0305】
上記vi)の電極配置については、筋収縮を誘発するために電気刺激を与える場合、最も反応性の良い部位(所謂、運動点=motor point)を考慮して決定することが好ましい。つまり、上記した形状認識部1cによって対象部位の形状や動きを認識した後、筋配置を特定して筋への刺激領域が運動点を含むように決定する。尚、運動点は神経が筋に入り込んでいく部分であり、その場所は神経筋接合部付近と考えられている。
【0306】
また、神経本幹が皮下に浅在している場合にはその部位も良好に反応するので、この運動点への刺激に付与するための電極配置や形状については通電方法を単極法、双極法、グループ刺激法に分けて規定することが好ましい。
【0307】
つまり、単極法では、大きな不関電極を、目的筋から離れた、筋の少ない部位に置き、小さな刺激電極(関電極)を運動点上に置いて刺激を行う。例えば、上記した効果器では、多数の電極によって占有面積の大きい不関電極を構成し、少数の電極によって占有面積の小さな不関電極を構成すれば良い。
【0308】
双極法では、大きさが同じで比較的大きな電極によって運動点を挟むようにして配置するか、あるいは陰極を運動点に置いて刺激が行われる。上記した効果器では、使用電極の数及び位置の選択によって刺激面積の設定を容易に行うことができる。
【0309】
グループ刺激法では、ある筋群全体を収縮させるような電極配置が使用される。
【0310】
低周波電気刺激の場合に2極1組の電極対を対象部位に複数設置する際には、各組の電極間の導通予想ライン(刺激電流路の予想ライン)が互いに交わらないように電極配置を設定することが望ましい。これは、導通予想ラインが交わる場所の筋には強力な干渉波刺激が加わってしまう虞があり、このような事態の回避が必要となる。尚、電極間の導通予想ラインの算出や判定にあたっては、電極群のうち隣り合う電極の抵抗成分を検出するとともに、前述した断層面情報から得られる対象部位の内部構造のデータについて各部の材質に応じた抵抗率(あるいは比抵抗)を設定して計算することができる。例えば、上記したように電極2、2、・・・が格子配置となっている場合には、ある電極を中心として選んだときにその周囲に8つの隣り合う電極が存在するが、これらの電極の1つと中心の電極とを選択して一定の微弱電圧をかけることで両者間の抵抗値を知ることができ、このような検出を別の電極についても同様に行うことによって表面の抵抗値分布を知ることができる。また、内部構造に係る抵抗分布については、各構成部位(骨、筋、腱、脂肪等)に係る既知の抵抗率を前記した断層面解析の結果に基づいて各部に設定した上で、有限要素法等、既知の方法を用いて求めることができる(導通予想ラインは、対をなす電極を特定したときに、両電極の間で最も抵抗の小さい場所を通る経路として算出される。)。
【0311】
上記vii)について、通常の随意筋収縮では負荷の増加に伴って発射する運動単位が、より細い神経線維に支配されている遅筋(typeI)筋線維から、より太い神経線維とその支配している速筋(typeII)筋線維の発射として参加してくる(これを「Size principle」と呼んでいる。)。
【0312】
しかし、電気刺激ではこれとは逆に刺激強度を上げていくと、より太い神経線維から刺激されるため、筋疲労が早期に出現してしまうことになるので、これに対する配慮(つまり、適切な刺激条件の設定)が必要となる。
【0313】
また、電気刺激の場合、太い神経線維(つまり、運動神経線維)から刺激され、より細い感覚神経線維がその後から刺激されることになるため、運動神経に係る刺激の閾値が通常の範囲であれば、表在感覚神経刺激による痛みを与えることなく、運動神経を刺激して筋収縮を得ることが可能である。
【0314】
次に、干渉波電気刺激法について説明する。
【0315】
この方法は、皮膚抵抗を無視できる程度の中周波電流(例えば、4000Hzと3900Hz)を使用して周波数差に相当する低周波数電流(ビート電流)を発生させるものであり、皮膚抵抗による電力損失が少なく、しかも人体内部組織の部分で低周波を発生させる方法であるため対象部位について十分な電気刺激のエネルギーを供給であるという利点がある(低周波電流を皮膚に対して直接的に流す場合には電気的エネルギーの大部分が皮膚の電気抵抗によって消費されてしまうため、内部組織に十分なエネルギーを供給するのが困難である。)。また、皮膚表面から筋肉の収縮が目視で認識できないような内層筋(例えば、指伸筋等)に対しては干渉波電気刺激が望ましい。
【0316】
干渉波電気刺激の基本的要素(刺激条件)は、下記の通りである。
【0317】
i)刺激周波数差(干渉周波数)
ii)ビート電流のエネルギー量。
【0318】
筋刺激に適した刺激条件としては、例えば、パルス波形として立体導体波(三極干渉波)を用いた場合に、出力電流100ミリアンペア以下、搬送周波数5000Hz、干渉周波数0.5〜200Hz程度である。また、皮膚刺激に適した刺激条件としては、例えば、パルス波形を負性矩形波とした場合に、出力電流50ミリアンペア以下、搬送周波数4000〜4150Hz、干渉周波数150Hz以下である。
【0319】
効果器における使用電極の設定にあたっては、干渉波刺激の様子を実験的に調べる方法もあるが、干渉波シミュレーター(携帯電話のアンテナ設計等において使用する電磁界シミュレーターを用いて、人体の骨や筋等に対して異なる伝搬係数を決定して複数の運動点に関する干渉波のシミュレーションを行うための装置)を利用することが好ましい。
【0320】
その際、骨や筋、脂肪、腱に対してそれらの材質毎に減衰率(σ)を設定して、皮膚表面のうち各部までのエネルギー損失が少ない場所に電極を設定すると、エネルギー消費に関して効率的である。つまり、前述した方法により対象部位の断層面情報から内部組織の情報(つまり骨や筋等)が得られている場合には、それらの3次元形状データ(ポリゴンデータ)に対して材質毎の減衰率を設定を設定して干渉波シミュレーションを行うことができる。
【0321】
図53は皮膚表面S上の任意の点Sa(Sax、Say)と、骨や筋等の部位XPの内点Pとが距離「r」だけ離れており、部位XPに対して波の減衰率「σ」を与えたときのエネルギー損失「L」が、点Saの位置座標の関数L(Sax、Say)として表されることを示している(図では単に「L(Sa)」と記す。)。つまり、内点Pについて関数値の小さい場所をシミュレーションで探知することで当該場所に位置する電極あるいは当該場所に最も近い場所の電極を使用電極として設定することができる。尚、使用電極が決まると、そのときの対象部位の内点Pが干渉ポイントとなるが、このポイントついては関節の駆動角度毎に設定することが望ましく、また、指筋群のように密集した筋配置については対偶の長手方向においてそれぞれ異なる位置に干渉ポイントを設定することが望ましい(干渉ポイントが狭い領域に集中しないようにするため。)。
【0322】
さらに、各部位XPに対してそれらの材質毎に物質密度あるいは質量密度(ρ)を設定して、皮膚表面のうち各部までの波の位相ずれが小さい場所に電極を設定すると、干渉波刺激にとって効果的な場所を選定することができる。尚、物質密度(ρ)は材質に応じた質量密度(単位体積当たりの質量)から決定できる。
【0323】
そして、部位XPの内点Pでの理想的な干渉波を取得するためには、電極位置の設定についてさらに下記の手順(1)乃至(4)を採ることが好ましい。
【0324】
(1)骨や筋、脂肪、腱に対してそれらの材質毎に波の反射率(α)及び屈折率(β)をそれぞれ設定する
(2)骨や筋、脂肪、腱に対してそれぞれ設定された減衰率(σ)や物質密度(ρ)に基づいて上記したように最小エネルギー損失の場所、最小の位相ずれの場所での電極候補から複数の電極を選び出す(図54には表面S上に電極候補位置を3点「Sa1」、「Sa2」、「Sa3」で示す。)
(3)(2)で選んだ電極位置から対象部位XPの内点Pに向かう搬送波の時間的推移について当該部位XPによって反射あるいは屈折される波形を平面的にシミュレートすることで、当該平面上における干渉波の周波数分布を求める
(4)内点Pでの理想的な干渉波が得られるまで、(2)及び(3)の手順を繰り返した後、最終的に使用電極位置を決定する。
【0325】
尚、上記(2)の手順において、始めから減衰率(σ)や物質密度(ρ)を考慮した電極候補の選出を行うよりも、初期の試行では減衰率(σ)や物質密度(ρ)を考慮せずに電極候補を選出した後、電極場所についての見通しがある程度ついてから減衰率(σ)や物質密度(ρ)の設定及びこれに基づく電極候補の選定を行う方がシミュレーションの効率アップにとって好ましい。
【0326】
また、こうして設定された電極についてはその出力電流値を変更して対象部位XPの内点Pへの電気刺激の出力設定を行うことができるように装置を構成することが好ましい(干渉波における電極配置について適切な出力設定を行うためである。)。また、筋の配置領域は時として関節の動作(例えば、前腕の回内・回外動作等)によって著しく変化することがあるので、各関節の動作毎にシミュレーションを行う(つまり、上記動的な人体構造のデータベースに基づいて時間経過を考慮した干渉波シミュレーション)を行って使用電極位置を決定することが好ましい(∵対象部位の時間経過を含まない静的な干渉波シミュレーションだけでは、関節動作に対応した筋への干渉波のための電極を適切に設定することが難しいから。)。尚、その際、対偶の運動状態を示す情報(ポリゴンデータ等を含む。)と、これに対する理想的な刺激領域及び使用電極位置の情報とを関連付けたデータベースを構築しておいて、データの再利用に供する(例えば、各使用電極に優先度を付けたり、使用電極に不具合が生じた場合に別の候補電極で代用するための属性データをデータベースに含める等。)ことが望ましい。そのために、複数の電極候補を取得した後、これらの位置情報をメモリや補助記憶装置等の記憶手段に保存しておき、実際に電極として使用する際に電極候補の位置情報を読み出してこれらの中から電気刺激の対象領域に適した電極を選択する。
【0327】
上記の説明ではシミュレーションの対象を内点Pとしたが、内層筋群への電気刺激にあたっては、点ではなく一定(幅)の周波数帯域をもつ領域内の面を対象としてシミュレーションを行う方法と、さらには面を拡張して立体(例えば、球や円柱、多面体、角柱等)を対象にシミュレーションを行う方法とが挙げられ、次元数が大きくなる程に処理が複雑となる。
【0328】
前者の方法では、図53や図54において点Pの代わりに対象部位XPの内部や境界に面を設定すると、複数の筋肉を同時に刺激したり、電気刺激に反応する領域の面積を大きくした干渉波シミュレーションを実現することができる。
【0329】
面設定にあっては、下記の場合分けが挙げられる。
【0330】
a)隣り合う筋への同時刺激
b)動作させたくない筋と動作させたい筋とが入り交じっている場合。
【0331】
先ず、a)では、複数の筋のうち隣り合う筋が同時に刺激されるように対象面を設定すると、ある特定の筋とその付近の筋への干渉波シミュレーション結果を同時に得ることができる。例えば、隣接する複数の筋肉の同時動作については、隣接する筋の各中心に対して理想的的な周波数帯域の領域が複数の筋の範囲に含まれるように広範囲な干渉領域に対して電気刺激を行うことが好ましい。そして、実際の電気刺激を付与する際には、干渉波シミュレーション時に設定した面を刺激領域とし、当該刺激領域に適した電極候補の中から使用電極を選定して電気刺激を付与する。
【0332】
また、b)では対象部位XPについて内点Pを設定するか又は面を設定するかを領域毎に使い分けることで動作させたくない筋を刺激対象から除外できる。つまり、動作の対象となる筋と不動作の対象となる筋とが入り交じっている場合には、これらの筋に対して点状又は面状の刺激領域を複数設定して干渉波シミュレーションを行うことが好ましい。
【0333】
内層筋群への電気刺激にあたっての電極選定時に、一定(幅)の周波数帯域を有する刺激領域を立体領域として干渉波シミュレーションを行う場合、つまり、シミュレーションを対象部位XP内の立体領域について行う場合には、例えば、複数の面を「SPi」(i=1、2、・・・)とするとき、「ΣSPi」(Σはiについての和を表す。)として決まる境界面とその内部領域における任意の点によって立体領域が決定されて干渉波シミュレーション結果が得られるので、電気刺激に反応する領域(の体積)を面の場合よりもさらに大きくとることが可能になる。
【0334】
尚、低周波電気刺激と干渉波電気刺激について同時にシミュレーションを行う場合には、低周波刺激の予想領域を想定した上で干渉領域についてのシミュレーションの演算処理を行うことで、対象部位について同時に低周波及び干渉波による刺激を与える場合の刺激領域について適切な電極位置の選定が可能になる(つまり、低周波電気刺激については前記したように導通予想ラインの交錯を避けることが必要である。)。
【0335】
以上のような干渉波シミュレーションに必要な計算量は、候補電極の数が多くなるほど顕著になってくるのでシミュレーターの負担を軽減して処理速度を向上させるためには、下記の手順を踏む。
【0336】
(1)駆動対象となる関節の角度及び当該関節角度毎の3次元形状データ(骨、筋、脂肪、腱等のポリゴンデータ)と、当該データに基づく各部位の位置関係に基づいて得られる使用電極位置の候補を関連付けてこれを予めデータベースとして構築しておく
(2)ある関節角度について(1)で候補とした使用電極位置で実際に電気刺激を行う
(3)(2)の電気刺激によって得られた対偶の駆動量と、(1)の関節角度に対応する対偶の駆動量とを比較して両者の一致、不一致を判別する
(4)関節角度を変えて(2)及び(3)の手順を繰り返す。
【0337】
尚、手順(3)において駆動量の一致が認められない場合には、その相違を補正するために必要な情報(例えば、関節角度の差)をデータ登録したり、あるいは使用電極位置や刺激強度を変更する等して誤差補償を行う必要がある。つまり、対偶の駆動が期待した通りにいかない場合には、該電極への刺激出力の設定値を変更する方法又は別の電極を選定する方法、両者を併用する方法が挙げられる。
【0338】
また、シミュレーションに際してポリゴンデータの簡略化も有効であり、例えば、筋についてはポリゴンの断層断面での重心を結合したワイヤーフレームモデルを採用したり(例えば、筋形状を示す3次元ポリゴンデータをワイヤーフレームデータとして簡略化した上でデータベースを作成する。)、各種パラメータを各筋について一律に規定する等の方法が挙げられる。
【0339】
複数の筋を同時に動作させるにあたっては、これらの筋に対して電気刺激を同時に与える方法の他、収縮させたい筋に対して、筋が収縮して再度伸張しない時間内で時分割で電気刺激を付与する方法(干渉波の刺激領域として点状又は面状又は立体状の領域を設定して、これらの領域に対して時分割処理で電気刺激を付与する方法)がある。後者の方法では、皮膚の同じ場所について継続的に電気刺激を与えない点で低温火傷の防止にも有利である。
【0340】
尚、筋への電気刺激を実際に与えるときに、干渉波領域を点状、面状又は立体状として干渉波が発生されることになるが、筋が密集した部位において各筋を独立に動作させる場合には、お互いの干渉波領域が重複により干渉し合わないように設定する(∵領域が重複した場合には筋の独立動作が保証されない虞があるから。)。また、重力による対偶や関節への影響を無視することはできないので、関節や対偶の位置と、これらにかかる重力との関係を考慮した上で筋肉への刺激を行うことが好ましい(例えば、関節や対偶がある位置や姿勢をとった場合に、これらにどの位の重量がどのような角度をもって加わっているかに応じて、伸筋と屈筋との間の収縮比率を変化させることで、重力の影響によって対偶の動作が不安定になる等の不都合を防止することができる。)。
【0341】
次に(IV)ファントムセンセーションの説明に移る。
【0342】
この場合には、表層の皮膚に対して複数の電極から周波数の異なる電気刺激が与えられ、これによって触覚を付与することができる。つまり、上記した干渉波電気刺激を皮膚表面について応用することで対象者への触覚刺激の呈示が可能となる。
【0343】
その際、下記の呈示が挙げられる。
【0344】
i)点触覚
ii)線触覚
iii)面触覚
iv)点触覚から面触覚への変化あるいはその逆
v)点触覚や線触覚の移動による刺激領域の変化。
【0345】
先ず、i)点触覚の呈示については、上記した干渉波領域を点(干渉ポイント)として表現することで実現することができる。つまり、対象部位の内点P(点状領域)を指定して当該領域内で選択された電極を通して干渉波電気刺激を付与することで皮膚表面を尖ったもので押されたかのような感触が得られる。
【0346】
また、ii)線触覚については、干渉波領域を線(つまり、複数の干渉ポイントを繋いだ線)として表現することで実現することができる。この場合には線状の領域を指定して当該領域内で選択された電極を通して干渉波電気刺激を付与することで、皮膚表面を板の側面で押されたかのような感触が得られることになる。
【0347】
iii)面触覚については、干渉波領域を面として表現することで実現できるので、この場合には面状の領域を指定して当該領域内で選択された電極を通して干渉波電気刺激を付与することで、皮膚表面を平面板や曲面板で押されたかのような圧力の感触が得られることになる。
【0348】
尚、ii)やiii)については、線が点の集合であり、面が線の集合であることに着目すると、点状(あるいは線状)の干渉波領域を高速に移動させる(対象者の点や線の移動を意識させない程短い時間内での領域移動が必要である。)ことで線触覚(あるいは面触覚)を擬似的に実現する方法が挙げられる。つまり、点状領域や線状領域であってもこれらを高速で移動させながら干渉波電気刺激を付与する場合には、タイムラグを感じさせることなく、あたかも線や面で押されたかのような感触が得られる。
【0349】
iv)については、点状の領域に対する干渉波電気刺激の付与と、面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を交互に行うことで実現できる。つまり、干渉波領域を点から面、あるいは逆に面から点へと時間的に変化させることで電気刺激を付与する。例えば、仮想現実を利用したゲーム機等への適用において仮想空間上に視覚的に現出される敵からの攻撃を受けたときに着弾の感触を実現するためには、点状領域から始めてこれを徐々に拡大しながら面状領域に対する干渉波電気刺激の付与を行った後、当該領域を徐々に縮小しながら再び点状領域へと戻すように干渉波電気刺激を付与する(刺激領域を点から円に拡げた後、円から点へと刺激領域を収束させるという様な形態が挙げられる。)ために、電極位置及び範囲を選定すれば良い。
【0350】
v)については、点状の領域又は面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を、直線又は曲線状の軌跡に沿って移動させながら行うことで実現でき、これは点触覚や線触覚をゆっくりと移動させたときの刺激領域の変化に伴う感触である。例えば、仮想現実を利用したゲーム機等への適用において仮想空間上に視覚的に現出される敵からの攻撃を受けて刀傷を負ったときの感触を実現するために、点状あるいは線状の刺激領域を、刀傷に沿う線(刀先の軌跡を示す。)に沿って移動させることで電極位置又は範囲を時間的に変更しながら電気刺激を対象者に与えれば良い。
【0351】
尚、干渉波とファントムセンセーションについて同時にシミュレーションを行う場合には、ファントムセンセーションにより刺激を付与する部位に係る干渉波の刺激領域と、干渉波による内層筋への刺激領域を想定した上で干渉領域についてのシミュレーションの演算処理を行うことで、対象部位への同時刺激を付与する場合の刺激領域について適切な電極位置の選定が可能になる。
【0352】
次に(V)筋電図を利用について説明する。
【0353】
従来よりEMGフィードバックを用いた電気治療器が知られているが、筋トーヌス(muscle tonus:筋緊張=力を加えていない筋を被動的に伸展した際に被験者が感じるかすかな抵抗であり、その本質は筋伸展反射であるが、中枢神経、末梢神経(α、γ−系)、筋自身によって複雑な制御を受けている。尚、筋伸展反射とは筋が受け身で引き伸ばされると、その筋が脊髄からの運動指令によって収縮する結果、力を出す反射のことをいう。)についてはATP(アデノシン三リン酸)による多筋線維の動作集合信号とともにEMGに現れるため、筋の動作前に動作予測を行うことができなかった。尚、この「多筋線維の動作集合信号」については、中枢神経から末端神経に指令が伝達される際の神経興奮により筋トーヌスによる筋細胞の収縮に伴って発生されるものであり、体調や体格、血糖値、筋疲労によって変動する。
【0354】
そこで、以下のようにして筋トーヌスを予測するとともに、この予測筋トーヌスと表面筋電図との間の相対関係を習得することで、動作予測を行う。
【0355】
図55はATPによる多筋線維の動作集合信号を取得するための装置例を示しており、この場合の対象部位は上腕二頭筋(2関節筋であり、肘関節に関する屈曲作用及び前腕に関する回外作用を有する。)である。
【0356】
上腕二頭筋の筋腹には陰(極)電極20Nと検出用電極20Dが配置され、筋始点には陽(極)電極20Pが配置され、これらの電極には電気刺激発生装置(例えば、医療用低周波治療器等)21からの電気刺激信号が供給される。
【0357】
筋電波形の周波数解析のために用意された2チャンネルFFT(高速フーリエ変換)アラナイザー22には、陽電極20Pへの供給信号が点Aで分岐した後でアンプ23を介して第1ch(チャンネル)のFFT部22aに送出される。また、検出電極20Dからアンプ24を経て取り出された信号が第2chのFFT部22bに送出されるようになっており、各FFT部の出力は後段の差分演算処理部22cに送出され、その出力はディジタル化の後、コンピュータ25に取り込まれる。尚、コンピュータ25からFFTアラナイザー22にはタイミング制御等に必要な制御信号が送出されるようになっている。
【0358】
電気刺激発生装置21から陽電極20Pに送られる信号の周波数成分がFFT部22a、22bで解析されるが、これは電気刺激の原信号となるものであって筋の応答を含んではいない。
【0359】
筋への電気刺激によって発生した周波数成分は、検出用電極20Dからアンプ24を介してFFT部22bで解析される。つまり、電気刺激に対する筋の追従により生じた応答についての周波数解析が行われる。
【0360】
差分演算処理部22cにおいて周波数成分を帯域毎に比較して差分演算の結果得られる差分データは、電気刺激発生装置21による電気刺激によって筋から発生した周波数成分(原信号の周波数成分を除いたもの)である。つまり、電気刺激の付与だけによって筋が収縮すると、筋トーヌスは出ずに筋細胞の収縮に伴う電位情報を取得することができるので、筋トーヌス及び筋細胞の収縮を含むEMGのデータから上記差分データ(ATPによる多筋線維の動作集合信号)を差し引くことで筋トーヌスの予測が可能となり、これによって対象者個人の筋特性を取得することができる。
【0361】
図56はFFT後の周波数特性を概略的に示したグラフ図であり、横軸に周波数(f)、縦軸にパワースペクトルをとって筋電図周波数特性図を示したものである。
【0362】
図中のグラフ曲線gaが筋トーヌスと筋細胞収縮を含むFFT解析の結果を示しており、グラフ曲線gbが上記差分データから得られる筋細胞収縮の周波数成分を示している。つまり、グラフ曲線gaに示す周波数成分からグラフ曲線gbの成分を差し引いた部分(図の斜線参照。)が筋トーヌスの成分を表している。
【0363】
このように、筋に付与する電気刺激の波形を各種変更した場合の上記差分データに基づいて予測される筋トーヌスと、そのときの表面筋電図の情報とを関連付けて記憶・学習を行うことで、動作予測が可能となる。
【0364】
以上に説明した手順を箇条書きにしてまとめると次のようになる。
【0365】
(1)筋への電気刺激信号についての周波数成分の解析結果と、電気刺激によって筋から発生した周波数成分を含む信号の周波数成分の解析結果とを取得して両者を比較することで、電気刺激により筋から発生した周波数成分(つまり、筋トーヌスによらない筋細胞の収縮に伴う波形成分)だけを差分データとして抽出する。
【0366】
(2)(1)で得た差分データと、実際の筋電波形(筋トーヌスを含む。)のデータから予測される筋トーヌス(予測筋トーヌス)を取得する。つまり、FFT解析による周波数特性に基づいて「EMGデータ(周波数成分)−ATPによる多筋線維の動作集合信号(の周波数成分)=予測筋トーヌス(周波数成分)」という概念的図式に従ってデータを取得する。
【0367】
(3)電気刺激信号波形を変更して(1)及び(2)の手順を繰り返すことで、その時々の予測筋トーヌスと表面筋電波形データとの関係を記憶・学習する(例えば、ニューラル・ネットワークの利用等。)。
【0368】
(4)対象部位についての表面筋電波形データを得たときに、(3)で習得した情報に基づいて予測される筋トーヌスから筋の動作を予測する。つまり、実際に筋が動作する前に予測筋トーヌスを知ることで筋の動作予測が可能となる(筋トーヌスのデータは動作毎に異なった特徴をもつ周波数成分を含んでいるため、例えば、対象者がこれから重量物を握ろうとしているといった動作をその直前に知ることができる。)。
【0369】
尚、図55では電気刺激発生装置21の電極を例に挙げて説明したが、前記した効果器においては電気刺激に適した電極位置(つまり、上記干渉波シミュレーターによって選定した位置)と同じ位置の電極から筋電波形データを取得することができる。つまり、効果器の電極2、2、・・・を通して筋に電気刺激を付与するだけでなく、これらの電極を、筋電図情報の取得にも活用することができる(つまり、筋電計として利用できる。)。
【0370】
図57は入出力インターフェイス部(入出力選択処理部1e)における切換制御によって電極を通した電気刺激と、電極からの筋電位情報の取得を時分割処理で行う場合の構成例を概念的に示したものである(図では1個の電極についての等価回路を示す。)。
【0371】
電気刺激発生部1bから供給される信号は出力バッファ26を経た後、切換部27(図にはスイッチの記号で示す。)から電極部1adに送出される。また、電極部1adから切換部27を経た信号は、入力バッファ28を介して筋電位情報取得部29(上記FFT部22a、22bや差分演算処理部22cを含む。)に送られる。切換部27の状態は図示しない制御部から送られてくる制御信号によって規定され、切換部27において出力バッファ26側が選択された場合に電極を通して電気刺激が筋に付与され、また、入力バッファ28側が選択された場合に電極を通して筋電波形の情報が取得される。
【0372】
このように時分割処理によって入出力(I/O)を切り替えることで同一の電極を通した電気刺激の付与と筋電位情報の取得を行うことができるように構成するか、あるいは、両者について同じ使用電極がかち合わないようする(選択した電極を通した電気刺激の付与と、当該電極を検出電極とした筋電位情報の取得とが同時刻に同じ電極で行われないように別々の電極を選択する)必要がある。
【0373】
尚、前記した方法で選択した使用電極を通して電気刺激を筋に与えたときに得られる実際の動作が、干渉波シミュレーションの結果と食い違う場合には使用電極の位置を別の候補電極(候補登録済の電極)の位置に変更することで実際の動作に最も合う電極位置を選択することが好ましい。
【0374】
しかして、上記した手順(4)における予測筋トーヌスと表面筋電波形データとを関連付けるデータベースと、前記した動的な人体構造のデータベースとを用いることで対象部位について次に予測される動き(モーション)に関する情報を、表面筋電波形データに基づいて習得することが可能になる。例えば、これを利用するとモーションキャプチャー装置(コンピュータによって創出される仮想空間等において、操作者を模擬した人物像、あるいは架空の人物像を動画処理で現出させるにあたって当該人物のモデルとなる現実の人体や体の一部の形状あるいはその動きをコンピュータ処理に適したデータとして取得するための入力装置)を実現できる。
【0375】
尚、壁を手で押すときのように、対偶が動作することなく筋収縮が起る場合(静止性収縮)の筋の仕事量や、対偶の動作速度の取得に際しても筋電図の利用が好ましく、例えば、対象者にヘッドマウントディスプレイ等の視覚表示装置を装着してもらった上で当該装置上に映し出される動作を模倣したり、あるいは関節を装具で一時的に固定しあるいは一定の負荷をかけながら筋電パターンについてのデータを取得する。
【0376】
次に、(VI)低温火傷の防止と刺激出力の調整について説明する。
【0377】
絶縁接触抵抗による低温火傷を防止するには、下記の方法が挙げられる。
【0378】
a)ある一定の時間以上に亘って同一の電極を使用して電気刺激の付与が行われないように使用時間を制限して、使用電極を変更する方法
b)皮膚表面の絶縁抵抗が予め決められた閾値以上である場合には、その電極の使用を禁ずる方法。
【0379】
先ず、a)における使用電極を変更については電極の配置パターンの変更による方法、時分割処理によって各電極への通電時間の持続を制限する方法(例えば、隣接する電極群同士が同時に使用されることがないように、各グループに属する電極群を時分割処理に従って使用すると、皮膚表面の同じ領域に対する長時間の刺激付与を避けることができる。)、両者を併用する方法等が挙げられる。
【0380】
また、b)については使用電極群の間の抵抗値を測定して、当該抵抗値がある一定値以上(予め規定した閾値以上)であることが判明したときに電気刺激を強制的に停止させる。尚、電極の使用禁止については、一時的な禁止(解除条件つきの禁止。例えば、電源の再投入時に絶縁抵抗値を測定してこれが閾値以下であれば使用禁止を解く等。)と、永続的な禁止(解除条件をつけることのない禁止)とが含まれる。
【0381】
尚、このように使用禁止を宣告された電極については、これを除外して再度干渉波シミュレーションを行って候補電極を選定して禁止電極の代替電極を見つけるか、あるいは既に登録済の候補電極のうちから優先度等を考慮して禁止電極の代替電極を選定する必要があり、これらによって安全な使用電極を保証することができる。また、低温火傷は、あかや汚れ等の付着によって皮膚抵抗が大きくなったときにも起こり易いので、皮膚の絶縁抵抗が許容範囲を越えたことを検出したときに、電気刺激を禁止することが必要である。
【0382】
人体の脂肪はそのまま電気刺激における絶縁抵抗となるため、刺激による不快感に深く関わっている(つまり、低温火傷は抵抗値に比例したジュール熱に起因するため。)。
【0383】
そこで、対象者をその体脂肪率によってクラス分けを行い、各クラスごとに刺激強度と不快感についての有限段階(例えば、快、不快を含む5段階)での主観評価を行うことが好ましい(∵体脂肪率だけでは脂肪の付き方に関する情報が不足するため。)。この結果を利用することで低温火傷に関する個体差を識別して電気刺激の出力調整を行うことができる。
【0384】
図58及び図59は人体の脂肪と刺激による主観評価法の一例を示すフローチャート図であり、本例では評価対象部位を屈曲筋である上腕二頭筋とし、刺激強度に対する評価を被験者の両腕の間隔で表現する(例えば、両腕をまっすぐ前にのばした状態において、不快感が大きい程、両腕で手先間隔を大きくしてもらう。)ことにより、刺激がどの程度の不快感として被験者に認識されているかを個々の被験者について相対的に認識する方法を用いている(∵不快感についての絶対的指標による評価は困難であるため。)。
【0385】
先ず、図58のステップS1では、被験者に前記した効果器を上腕に装着してもらった上で、当該効果器を通して複数の電気刺激(例えば、3段階の刺激A、B、C)を個々に与えた後、次ステップでS2では、被験者に、刺激Aを最小、刺激Bを中間、刺激Cを最大の刺激としてそれぞれ認識してもらうように口頭で説明を行う。
【0386】
次ステップS3では被験者に刺激Cがどの程度の不快感を与えるかを両腕の間隔によって表現してもらった後、ステップS4に進んで刺激A、B、Cをランダム(無作為)に選択して被験者に対して付与する。尚、その回数は所定回数(例えば、15回程度)とする。
【0387】
次ステップS5では、各刺激(A、B、C)がどの程度の不快感を与えるかを被験者に両腕の間隔で表現してもらう。これによって、刺激Cの場合における両腕の間隔を基準とした相対値により評価する(例えば、刺激Cの場合の間隔を100とし、刺激Bが50%、刺激Aが25%等というように百分率で評価する等)。
【0388】
次ステップS6において所定回数に亘るランダムの刺激付与が終了したか否かを問い、終了時には図59のステップS7に進むが、未終了時にはステップS4に戻る。
【0389】
ステップS7では刺激Cの強度をこれまでより1段階増加して被験者に付与し、次ステップS8で当該刺激がどの程度の不快感を与えるかを被験者に両腕の間隔で表現してもらう。
【0390】
そして、ステップS9では被験者の両腕が所定の間隔以上に大きく開いたか否かを判断し、そうであれば次ステップS10に進み、そうでなければステップS7に戻る。
【0391】
ステップS10では、効果器の電極群から得られる筋電位情報に基づいて変化の顕著な場所を特定してその上位から所定数の電極位置及び筋電パターンのデータを取得する。
【0392】
こうして被験者について刺激強度と不快感との関係を個人的特性として相対的に評価することができる。
【0393】
尚、被験者の筋肉に対する最大印加電流(最大強度)の決定にあたっては、被験者に筋肉を緊張させてもらって刺激電流を徐々に増加していき、下記の状態が認められた時の電流値に安全率を乗じた値又はこれが刺激電流の上限値(最大電流値あるいは許容上限値)を越える場合には当該上限値とする。
【0394】
i)関節が電気刺激によって降服したとき
ii)痛いと感じたとき。
【0395】
尚、関節角度と電気刺激との関係については、一定の刺激出力を対象筋に与えてそのときの関節角度に応じて出力設定や調整を行えば良い。
【0396】
本発明に係る電気刺激装置を医療分野において使用する場合には、上記とは異なる側面についての配慮が必要である。例えば、筋電パルスの強度が弱かったり、健常者とは違った波形を示す疾患者に関して、健常時に作成した対象者の人体構造のモデルをそのまま用いて電気刺激を付与する訳にはいかない。
【0397】
そこで、以下に示す手順を踏む。
【0398】
(1)関節動作毎に電極部から表面筋電位情報を取得する
(2)対象者の人体構造のモデルを用いた場合に対偶の動作についての各筋肉の動作を示す情報と、その動作時に推測される(正常な)筋電位情報を(1)で得た筋電位情報とを関連付けたデータベースを作成する
(3)皮膚の各所における表面筋電位情報を取得するとともに、対偶の動作に伴う表面筋電パターンの変化を示すデータを取得してデータベース化する
(4)(2)と(3)で作成したデータベースをリンクし、対象部位における皮膚の表面筋電位情報から実際の筋電位情報を推測し、正常な筋電波形が得られるように電気刺激を調整して筋肉に出力する。つまり、このときの正常な筋電パルスは、当該パルスと実際の筋電パルスとの差分を取り出してこれを補正用パルスとして筋に刺激を付与することによって得られ、これによって実際の筋電パルスによる異常運動(例えば、筋ジストロフィーによる筋動作不良や筋トーヌス異常による異常動作等)を抑制することができる。
【0399】
尚、刺激位置の設定(あるいは使用電極の選定)にあたっては、対象者について筋配置を示す3次元データ(ポリゴンデータ等)を作成した上で手動で行う(これは、例えば、リハビリテーションの対象となる筋及び刺激位置の選択を明確化するためである。)。例えば、以下の手順を踏む。
【0400】
(1)対象部位のポリゴンデータの生成及びポリゴンの画像表示
(2)(1)の画像表示を参照しながら1箇所又は複数箇所の刺激位置を手動入力により設定する
(3)刺激場所に電気刺激を付与する。つまり、点刺激の場合には当該刺激ポイントに対して電気刺激を与え(その際、同じ場所が長時間に亘って刺激されないように刺激ポイントを時間的に変更する。)、また刺激領域を線や面、立体として指定した場合には、点状、線状又は面状の刺激領域を時間的に移動させることによって次元拡張(次元数を1増やす)を図る(例えば、点の移動により線を、線の移動により面を、面の移動により立体を表現する。)。
【0401】
【実施例】
図60乃至図65は本発明に係る電気刺激装置の実施の一例について説明するための図であり、電気刺激装置は、I/O処理部(機構部)100、電気刺激発生部300、統括制御部500を備えている。
【0402】
各構成要素は以下の通りである(括弧内は符号を示す)。
【0403】
※I/O処理部(100)
・電極部(101)
シート状基材に配置・形成された多数の電極群から構成され(図4乃至図8参照。)、後述の電気刺激発生部300から電極選択部104を通して送られてくる電気信号が各電極に供給される。
【0404】
・圧力及び温度検出部(102)及び素子選択処理部(103)
シート状基材において上記電極部101の上層に配置・形成された多数の検出素子部(図9乃至図12参照。)から構成され、圧力や温度の検出素子の選択については素子選択処理部103におけるマトリックス処理により行われる。
【0405】
・電極選択部(104)
出力系統については、電気刺激発生部300からの信号群(例えば、「チャンネル数」×2個の信号)が出力用セレクタ104oに送出され、ここで制御信号「Sel_o」を受けて選択される電極に対してバッファアンプ104bを通して出力信号が供給される。尚、バッファアンプ104bについては、制御信号「Sc」によって出力電流の設定が行われるように構成されている。また、入力系統については各電極からの信号が入力用セレクタ104iに送出され、ここで制御信号「Sel_i」を受けて選択される情報が後述する筋電検出部201に送出される。
【0406】
・3軸位置検出部(105)
対象者についての基準原点位置を検出するための検出部であり、対象者に関する座標系(3次元直交座標系、あるいは円筒座標系や関節構造に応じた軸座標系等)の設定に必要とされる。尚、検出方法には光学式、磁気式、ジャイロセンサー方式等が知られている。
【0407】
※筋電検出部(201)
電極選択部104において指定された電極で取得した筋電位情報をアナログ信号からディジタル信号にA/D変換して認識する部分である。尚、この検出については常時行っても良いし、タイマー割り込み等によって規定のタイミングで行ったり、あるいは検出命令を受けたときに行うようにしても良い。また、A/D変換後のデータ処理形態については、筋電波形のパルスについて規定される閾値を越えたときの単位パルス当たりの立ち上がり数だけを用いても良いし、また筋電波形を実効値変換のために時間積分した積分筋電図(Integrated ElectroMyogram:IEMG)から得たり、あるいは筋電波形をFFT処理した後スペクトル互換法を適用してデータを得る等、各種の方法がある。
【0408】
※形状認識部(202)
圧力及び温度検出部102から素子選択処理部103を経て入手される圧力検出情報を受けて圧力分布情報から表面形状を認識する部分である。尚、圧力検出情報の処理については全てマトリックス処理を経て行われる。
【0409】
※個性認識部(203)
筋電検出部201及び形状認識部202からの情報に基づいて対象者の個性を認識する部分であり、認識結果は後述の統括制御部500に送られる。尚、「個性の認識」においては、筋電図情報の周波数解析により所定帯域(例えば、200〜300Hz)の成分から識別する方法や、複数の対偶動作について得られる筋電位情報又は形状認識情報を合成して、この構成情報と個人情報との差分情報を個性として認識する方法(音声認識技術を筋電位情報等に応用した方法)等を用いることができるが、その方法の如何は問わない。
【0410】
※電気刺激発生部(300)
低周波刺激発生部301及び干渉波刺激発生部302が必要なチャンネル数に応じて設けられており、これらは後述する統括制御部500の指令下に置かれている。
【0411】
※対偶位置認識部(401)
3軸位置検出部105、筋電検出部201、形状認識部202からの情報に基づいて対偶の位置情報を認識する部分である。つまり、3軸位置検出部105からの情報を原点位置情報とし、対象者に特定の動作を実行してもらいながら、その時々の形状認識結果や対偶運動との関係、運動時の筋電位情報や運動速度等の関係に基づいて対偶の位置を認識する。
【0412】
※骨格筋配置認識部(402)
対偶位置認識部401からの情報に基づき、人体構造モデル処理部602からの3次元の人体形状データ(対偶内の骨や筋肉の配置をポリゴンデータでモデル化したもの。)を利用して骨や筋肉の配置を認識する部分であり、その際、人体形状データについてはモニター装置403上に表示して視覚的に認識できるようにすることが好ましい。
【0413】
※統括制御部(500)
制御の主要な機能を司る部分であり、これには以下の要素が含まれる。
【0414】
・刺激選択機能処理部(501)
電気刺激の種類を選択するための制御信号を電気刺激発生部300に送出する部分である。即ち、電気刺激を行う対象部位の筋肉について皮膚からの深さに応じて低周波電気刺激を行うか又は干渉波電気刺激を行うかを規定し、低周波については2つの電極を1組みして電気刺激を発生させ、干渉波については、例えば、4つの電極を組みして電気刺激を発生させる。尚、電気刺激にあたっては、前記したように干渉波シミュレーター(又はその簡易版干渉波シミュレータ)からの解析結果が利用される。
【0415】
・F.S.(ファントムセンセーション)刺激機能処理部(502)
皮膚表面への擬似的な刺激を付与する際に使用する電極の選定及び刺激強度等の信号パターンを生成する部分であり、この場合には前記したように干渉波が使用される。また、後述する力触覚パターン認識部505からの指令情報に応じた触覚呈示を行うために、制御出力を後述の使用電極変更処理部507に送出する。尚、ファントムセンセーション刺激によって機能的電気刺激が妨害される場合には、使用電極パターンの配置を変更して、速やかに他の電極パターン配置を採用する必要がある。
【0416】
・低温火傷防止処理部(503)
絶縁接触抵抗による低温火傷を防止するために設けられており、一定時間以上に亘って同じ電極を使って電気刺激が付与されないように使用電極のパターンを適時に変更したり、あるいは皮膚表面の抵抗値が閾値以上である場合や電極の汚損状態がひどい場合に電極の使用を禁止する。そして、そのための制御指令を後述する使用電極変更処理部507に送出する。尚、図58、図59で説明したように筋電検出部201からの情報を参照し(図には破線で示す。)、個人差に応じて刺激に対する不快感の発生防止対策を講じることが好ましい。
【0417】
・筋配置変化への追従機能処理部(504)
筋の移動に伴って使用電極の配置等を変化させるための制御を行う部分である。例えば、前腕の回内・回外動作時における筋肉の移動はとても大きいため、その際の筋肉移動を考慮して使用電極配置を時間的に変更する必要がある。よって、骨格筋配置認識部402によって得られる筋肉配置の情報、筋電検出部201から予測された対偶の駆動量(前記予想筋トーヌスに基づく動作予測を参照。)、そして、実際の対偶位置情報の変化に基づいて対偶の駆動量をリアルタイムで認識し、対偶間の位置関係に応じて使用電極位置及び電気刺激波形を変化させる。
【0418】
・力触覚パターン認識部(505)
対象部位にどのような力触覚を付与するかを認識する部分であり、その制御法は力触覚フィードバック制御(つまり、指令値に対してどれだけの力触覚が付与されているかを認識して両者についての差分処理から求まる誤差がゼロとなるような制御)に依る。その際には、後述の人体構造モデル処理部602からの3次元人体形状データを利用する。尚、認識結果については、ファントムセンセーション刺激機能処理部502、筋配置変化への追従機能処理部504等に送出される。
【0419】
・選択処理/出力設定処理部(506)
使用電極の選択(電極位置、使用又は不使用若しくは禁止の選択を含む。)、選択した電極を使って電気刺激を付与するのか又は当該電極を使って筋電位情報を取得するのか、あるいは電極をグランドにとるか等を規定する。また、選択電極を通して電気刺激を付与する場合の出力設定を行う。尚、選択処理/出力設定処理部506からセレクタ部512を介して上記制御信号Sel_o、Sel_i、Scが各所に送出されるが、当該セレクタ部512が完全に選択処理/出力設定処理部506の支配を受けるのは、後述する使用電極変更処理部507からの指令を受けないことが条件とされる(つまり、セレクタ部512にとっては当該指令が優先されるということである。)。
【0420】
・使用電極変更処理部(507)
各種の条件によって使用電極を変更するための部分であり、その出力はセレクタ部512に送出される。尚、本処理部の出力はセレクタ部512に対して優先的に作用する。また、使用電極の変更指令については、上記したファントムセンセーション機能処理部502、低温火傷防止処理部503、筋配置変化への追従機能処理部504、後述の信号補正処理部508等から送られてくるが、各処理部のもつ機能に応じて各種の電極配置パターンが用意されている。
【0421】
・信号補正処理部(508)
骨格筋配置認識部402から得られるデータに基づいて予期される力触覚フィードバック(状態)と、実際に起きている力触覚フィードバック(状態)とを比較し、両者が一致するか又は差異が少なくなるように、刺激パターン設定部510や使用電極変更処理部507に対して補正信号を送出する部分である。
【0422】
・個性適応機能処理部(509)
対象者の個性認識用データに基づいて電気刺激波形をその標準形から変化させるための機能をもった部分であり、個性認識部203からの情報を受けて刺激パターン設定部510に対して制御信号を送出する。
【0423】
・刺激パターン設定部(510)
統括制御部500内の各部(502〜504、508、509)からの指令に基づいて刺激パターン(前記した刺激条件を異にする各種の刺激信号パターン)に関する制御信号を電気刺激発生部300に送出し、波形等を変化させる。
【0424】
・簡易版干渉波シミュレータ(511)
干渉波シミュレーター603で得られた情報を用いて電極候補の位置、対偶駆動量等を予めデータベース化しておくことで干渉波シミュレーションの使用頻度を低減するためのものであり、使用時には、予想される対偶駆動量と、実際に候補電極を通して電気刺激を付与したときの対偶駆動量とが一致するか否かを判別して使用電極を決定する。
【0425】
※入出力処理部
力触覚パターン(指令パターン)を設定したり、3次元ポリゴンデータを画像表示する等に必要な一切の装置を含む。例えば、コンピュータの入力装置601(キーボードやマウス等)、モニター装置403やヘッドマウントディスプレイ装置、プリンタ等の出力装置の他、前記した人体構造(モデル)のデータベースに係るデータ入出力処理に必要な手段も含まれる。
【0426】
※人体構造モデル処理部(602)
前記したモデル構築/計算処理部1Aeに相当する。尚、モデル構築にあたっては、既述したとおりヘリカルCTやMRIによって得られる断層面情報から対象部位の骨格や筋肉配置のデータを得ることが可能である。
【0427】
※干渉波シミュレーター(603)
前記したように干渉波電気刺激の付与に際して使用電極候補の選出等に用いられる。
【0428】
尚、力触覚呈示装置への適用にあたっては、仮想現実空間におけるオブジェクトの生成や力触覚呈示の指令に関する処理が必要となり、例えば、ゲーム機への応用にあたっては図64、図65に示すように前記の構成要素に加えて、ゲーム機700内に以下の要素が必要になる(括弧内の数字は符号を示す。)
【0429】
・ステレオ映像出力部(701)
ストーリー展開に従ってステレオ映像(信号)を出力する部分であり、当該映像信号は、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(あるいは3Dスコープ)等の視覚表示装置702に送出されて対象者に提供される。尚、効果音等の音声信号についても視覚表示装置に組み込まれたヘッドフォンやスピーカー等の音声出力手段を使って対象者に提供されるが図示は省略する。また、ゲームの進行に必要なデータ等は図示しない情報記録媒体によって提供される。
【0430】
・力触覚発生の命令部(703)
力触覚の発生について命令を下す部分であり、ストーリー展開において力触覚の呈示を必要とする場面で力触覚の呈示命令を発してこれを上記力触覚パターン認識部505に送出する。これにより力触覚パターン認識部505で呈示命令の内容が解釈される。また、命令部から対偶位置認識部401に送出される指令によって力触覚呈示の対象部位について対偶位置の認識及び位置情報の取得が行われる。
【0431】
次に機能的電気刺激による力触覚呈示装置の制御方法について、図66乃至図71に示すフローチャート図に従って説明する。
【0432】
図66は制御全体の流れについてその大筋を示したものであり、対象者の人体構造に関するデータベースに対して対偶の動作や筋電図によるデータをリンクしたデータベースが構築済であること、そして、該データベースを利用した干渉波シミュレーションの結果がやはりデータベース化されていることが前提となる。尚、関節角度に応じた人体の骨格や筋肉の配置データについては前記したようにヘリカルCTにより骨格データを取得し、またヘリカルMRIで筋肉配置のデータを取得してこれをデータベース化しておく。
【0433】
処理の開始にあたっては、先ず、電極部101や圧力及び温度検出部102を含む効果器や、ヘッドマウントディスプレイを対象者に装着する。その際、電気刺激の対象部位について皮膚全体が効果器によってしっかりと被覆される必要がある。
【0434】
ステップS1では基準面圧力情報の取得にあたって必要なキャリブレーション処理(その詳細については図67で説明する。)を行う。
【0435】
そして、次ステップS2では関節角度による面圧力変化についての情報取得にあたって必要なキャリブレーション処理を行う(これは求心性収縮及び遠心性収縮に関する認識のために必要となり、その詳細については図68で説明する。)。
【0436】
次ステップS3では筋の仕事量についてのキャリブレーション処理(その詳細については図69、図70で説明する。)を行った後、次ステップS4では前ステップS1乃至S3で得られたデータと、前述した人体構造モデルのアルゴリズムに従って生成されたデータ、そしてヘリカルCTやMRIの情報を用いて生成したポリゴンデータ(関節の動きによって筋の中心線や形状がどのように変化するかの認識に必要とされ、その詳細については図45乃至図47やその関連説明を参照。)についてリンクを行う。尚、この場合にリンクの基準とするのは関節角度であり、その際、対偶の形状から推測される関節角度も考慮する。
【0437】
そして、ステップS5で力触覚呈示命令を解釈する。つまり、当該命令は力触覚発生の命令部703から力触覚パターン認識部505に送出されてその内容が解釈される(上位の命令は下層の構成部にいくに従って、より低次元の命令に還元されていく。)。
【0438】
例えば、力触覚パターンの設定条件については運動パターン、スピード、仕事量等が挙げられ、これに基づいて皮膚表面の刺激位置、強度、種別(例えば、刀傷や着弾等を受けたり、バウンドしたといった感触の違いに応じた類型)等、各種のパラメーターが規定される。尚、刺激位置の設定にあたってはゲーム機の場合にそのストーリー展開の応じて指定する必要があり、そのためのデータを予め情報記録媒体に記憶させておく。
【0439】
次ステップS6では対偶位置と重力との関係や荷重を考慮して制御を行う。つまり、力触覚発生の命令部703から対偶位置認識部401に送出される指令によって対偶位置の認識が行われるが、その際に対象者への重力の影響が問題になる。
【0440】
制御方法には以下の3種類が挙げられる(ここでは、一つの関節を複数の筋肉で駆動する場合、例えば上腕等を想定する。)。
【0441】
・関節とその駆動を補助する筋肉の収縮に関するデータベースを予め構築しておき、電気刺激に際しては当該データベースを用いて、常に対をなす筋肉を特定してこれらを緊張させるように制御する方法
・関節及び対偶の位置と重力との関係についてのデータベースを予め構築しておき、電気刺激に際しては当該データベースを用いて、重力に対する関節位置に応じて対をなす筋肉を特定してこれらを緊張させるように制御する方法
・荷重(例えば、手にもった重量物等による。)に対しては、刺激対象とする駆動筋をデータベースに追加しておき、電気刺激に際しては当該駆動筋を選択してこれを緊張させるように制御する方法。
【0442】
次ステップS7では力触覚呈示命令に従って使用電極の選択や刺激条件の設定が行われて電気刺激が付与される(その詳細については図71で説明する。)。
【0443】
図67は基準面圧力情報の取得(キャリブレーション)に関するフローチャート図であり、先ず、ステップS1では、磁気センサー等を用いた3軸位置検出部105からの情報に基づいて基本となる対偶位置の情報を取得した後、次ステップS2では3軸位置検出部105からの情報を用いて視覚表示装置(ヘッドマウントディスプレイ等)上の映像において対象者の目視位置(視点)情報を取得する。
【0444】
次ステップS3では、前ステップS1で得た対偶位置に基づいて当該対偶からその末端部までの人体部位についての3次元ポリゴンデータを、前記人体構造モデルのアルゴリズムに従って生成した後、次ステップS4に進んで当該ポリゴンデータに対応する映像を上記視覚表示装置702に映し出す。
【0445】
そして、ステップS5において、対象者にはポリゴンデータの映像に対して自身の対偶(の映像)が重なり合うように動作状態を模倣してもらう。尚、その際には音声によるナビゲートも同時に行う。
【0446】
次ステップS6では映像の重なり具合から動作の模倣が完了したか否かを判断し、完了時には次ステップS7に進んでそのときの圧力分布を効果器の圧力検出素子群の情報から取得した後ステップS8に進むが、模倣が完了していない場合にはステップS5に戻る。
【0447】
ステップS8では、前ステップS7で取得した数値データを基準値(例えば、百分率表示を採用した場合の「100」)として記憶・登録し、これに基づいて基準面圧力情報のデータベースを作成する。
【0448】
図68は関節角度に応じた面圧力情報の取得(キャリブレーション)に関するフローチャート図であり、ステップS1、S2については図67のステップS1、S2と同じである。
【0449】
ステップS3では、前ステップS1で得た対偶位置と関節角度に基づいて当該対偶からその末端部までの人体部位についての3次元ポリゴンデータを、前記人体構造モデルのアルゴリズムに従って生成した後、次ステップS4に進んで当該ポリゴンデータに対応する映像を視覚表示装置702に映し出す。
【0450】
そして、ステップS5において、対象者にはポリゴンデータの映像に対して自身の対偶(の映像)が重ね合わさるように動作を模倣してもらい(尚、その際には音声によるナビゲートも同時に行う。)、次ステップS6では映像の重なり具合から動作の模倣が完了したか否かを判断し、完了時には次ステップS7に進んでそのときの圧力分布を効果器の圧力検出素子群の情報から取得した後ステップS8に進むが、模倣が完了していない場合にはステップS5に戻る。
【0451】
ステップS8では、図67のステップS8で作成した基準面圧力情報のデータベースのデータを基準として前ステップS7で得た圧力情報のうち変化の大きな場所及び圧力値を取得する。例えば、基準面圧力情報と比較した場合に圧力検出値の変化に富む場所を上位から所定箇所だけ選び出してそれらの位置及び圧力値を記憶・登録し、これに基づいて関節角度と当該角度についての面圧力情報のデータベースを作成する。
【0452】
そして、ステップS9では関節の全ての角度について上記ステップS3乃至S8の処理を終了したか否かを判断し、未終了時にはステップS3に戻って関節角度をこれまでの値とは変更した上でステップS3乃至S8の処理を繰り返す。
【0453】
このようにして関節角度をパラメータとして変化させたときの面圧力の変化を基準面圧力に対する相対値として取得することができる。
【0454】
図69及び図70は筋の仕事量による筋電(パターン)情報の取得(キャリブレーション)に関するフローチャート図であり、図69のステップS1乃至S6については図68の各ステップと同じである。
【0455】
図70のステップS7では、効果器の電極部101を通して筋電位情報を取得できるように設定した後、筋電波形のパターンを複数回に亘って取得する。
【0456】
そしてステップS8では、前ステップで得た情報が既に記憶・登録済か否かを判断し、そうであればステップS9に進み、未登録の場合にはステップS10に進む。
【0457】
ステップS10では、前ステップで得たデータについて平均処理を施した上でこれを基準値(例えば、百分率表示を採用した場合の「100」)として記憶・登録し、これに基づいて無負荷時の筋電パターン情報に係るデータベースを作成する。そして、次ステップS11に進んで対象部位に所定の負荷を与えるための装具を装着した後、ステップS3に戻る。
【0458】
ステップS9では、ステップS10で作成した無負荷時の筋電パターン情報を基準として前ステップS7で得た筋電位情報のうち変化の大きなデータを取得する。例えば、無負荷時の筋電パターンと比較した場合に電位の変化が顕著なデータを上位から所定の数だけ選び出してそれらを記憶・登録し、これに基づいて負荷時の筋電パターン情報に係るデータベースを作成する。
【0459】
このようにして対象部位の無負荷時における筋電位情報に対して負荷(付与)時の筋電位情報を相対値として取得することができる。
【0460】
図71は電気刺激の発生による力覚呈示の手順例を示すフローチャート図である。
【0461】
先ず、ステップS1で関節の駆動角度を設定した後、次ステップS2で圧力検出に基づいて対偶形状を把握する。そして、ステップS3では対象部位の3次元ポリゴンデータ(あるいは断層解析結果に基づく内部構造の形状データ)を生成した後、次ステップS4では駆動させたい筋肉について刺激領域(前記した干渉波シミュレーションの説明における点や面、立体)を設定して電気刺激を付与する。
【0462】
これによって、ステップS5では実際に対偶が駆動されるが、次ステップS6では前ステップS1で設定した駆動角度が達成したか否かを判断し、達成時にはこれまでの処理を終了するが、当該角度が達成されない場合にはステップS2に戻る。
【0463】
尚、人体の動作において上腕や手部では多数の筋が互いに協調しているため、全ての筋について干渉波電気刺激を個別に付与するのは非常に困難である。そこで、対偶を動作させている筋の配置に応じて低周波電気刺激と干渉波電気刺激(触覚呈示のためのファントムセンセーションを用いた刺激法を含む。)を併用することが望ましい。
【0464】
図72乃至図77は肘関節を対象にして電気刺激を付与した場合の説明図であり、骨ポリゴンデータだけを使って動作を表現している。
【0465】
肘関節は上腕骨と尺骨の間に位置する1自由度の関節であり、その屈曲筋である上腕二頭筋と、伸展筋である上腕三頭筋に対して電気刺激が付与するにあたって、先ず、効果器を装着した対象者に、図72のように立位無負荷状態の姿勢を保ってもらい、この状態で屈曲筋に対して最低出力での電気刺激を付与する。これによって、図73に示すように前腕が多少動作するので、対象者が筋の痛みを訴えるまで出力調整を行う(電流値を10mA以下の範囲内とする。)。
【0466】
対象者の個人差にもよるが、最後には図74に示す肘の屈曲状態を得ることができる。
【0467】
次に、図75に示すように、肘を曲げて上方に挙げた状態(バレーボールにおけるスパイク直前の姿勢)を対象者に保ってもらい、伸展筋に対して最低出力での電気刺激を付与する。すると、図76に示すように前腕が多少動作する(伸展により肘の屈曲が戻る)ので、対象者が筋の痛みを訴えるまで出力調整を行う(電流値を10mA以下の範囲内とする。)。これによって、対象者の個人差にもよるが、最後には図77に示す状態を得ることができる。
【0468】
しかして、上記の力触覚呈示装置によれば、下記に示す利点が得られる。
【0469】
・従来のシャフトアーム等を使った外骨格型の機構を必要としないので、軽量化にとって有利であり、対象者はあたかも洋服を着用する感覚で使用することができる。
【0470】
・外力発生のための消費電力が少ない。つまり、サーボモータ等の動力源やエアシリンダの空圧源等が不要であり、対象者の筋肉への刺激付与によって関節の駆動や触覚呈示が可能である。
【0471】
・駆動時の雑音がなく、無音での力触覚呈示が可能になるので、例えば、ゲーム機への利用における効果音や環境音への悪影響がない。
【0472】
・ファントムセンセーションの利用により皮膚表面への擬似的な刺激を表現できる。
【0473】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1に係る発明によれば、干渉波電気刺激を利用して表層の筋肉や皮膚に触覚を与えることができる。さらに、カメラ等の撮像手段を要することなく、着用した効果器による圧力検出情報に基づいて対象者の外形形状を把握することができる。
【0474】
請求項2に係る発明によれば、骨や筋等の内部構造を含むデータベースを得ることによりモデル精度の向上を図ることができる。
【0475】
請求項3に係る発明によれば、色差の違いに基づく画像処理によって筋の識別を容易に行うことができ、筋の区別を自動化し易い。
【0476】
請求項4に係る発明によれば、骨や筋等の形状を規定する点情報を容易に取得することで3次元形状データを作成することができる。
【0477】
請求項5、6に係る発明によれば、使用電極の選定にあたって干渉波のシミュレーションを事前に行うことで対象部位の刺激領域に適した電極位置を把握することができ、これによって実際の電気刺激付与時に理想的な干渉波刺激を得ることができる。また、汚損等によって使用が好ましくない電極が生じた場合に、事前に再シミュレーションを実行することで適正な代替電極の位置を取得することができる。
【0478】
請求項7に係る発明によれば、電極候補を事前に保存・登録しておくことで、実際の電気刺激付与時に電極候補から使用電極を直ちに選択することができる。
【0479】
請求項8、24に係る発明によれば、皮膚を尖ったもので押されたかのような触覚を呈示することができる。
【0480】
請求項9、25に係る発明によれば、皮膚を線状のもので押されたかのような触覚を呈示することができる。
【0481】
請求項10、26に係る発明によれば、皮膚を面で押されたかのような触覚を呈示することができる。
【0482】
請求項11、27に係る発明によれば、点状の刺激領域を高速で移動させることによって、あたかも皮膚を線状のもので押されたかのような触覚を呈示することができる。
【0483】
請求項12、28に係る発明によれば、線状の刺激領域を高速で移動させることによって、あたかも皮膚を面で押されたかのような触覚を呈示することができる。
【0486】
請求項13、29に係る発明によれば、点から面あるいは面から点への刺激領域の変化によって、面積の時間的変化を伴う触覚を呈示することができる。
【0487】
請求項14、30に係る発明によれば、点状又は線状の領域を所定の軌跡に沿って移動させることによって、刺激位置が移動を伴う触覚を呈示することができる。
【0488】
請求項15乃至18、31乃至34に係る発明によれば、シート状基材の上に電極群を効率的に配置することができる。
【0489】
請求項19乃至22、35乃至38に係る発明によれば、効果器の人体への装着が容易になるとともに、装着時の蒸れを防止することができる。
【0490】
請求項23に係る発明によれば、干渉波電気刺激を用いることによって表層の筋肉や皮膚に対してファントム・センセーションによる触覚を呈示することができる。さらに、カメラ等の撮像手段を要することなく、着用した効果器による圧力検出情報に基づいて対象者の外形形状を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気刺激装置の基本構成を示す図である。
【図2】機能的電気刺激を利用した力触覚呈示装置の構成例を示す図である。
【図3】図4乃至図14とともに効果器に使用する電極シートの構成について説明するための図であり、本図は電極シートを腕に巻き付ける様子を示す図である。
【図4】電極シートの分解斜視図である。
【図5】電極層3Aを構成する最も皮膚側のシート4を部分的に示す図である。
【図6】電極層3Aを構成する導通シート5を部分的に示す図である。
【図7】電極層3Aを構成する配線シート6を部分的に示す図である。
【図8】電極層3Aを構成する表面シート7を部分的に示す図である。
【図9】感圧・感温層3Bを構成する行電極シート8を部分的に示す図である。
【図10】感圧・感温層3Bを構成する感圧・感温シート9を部分的に示す図である。
【図11】感圧・感温層3Bを構成する列電極シート10を部分的に示す図である。
【図12】感圧・感温層3Bを構成する絶縁膜11を部分的に示す図である。
【図13】電極シートの一部を拡大して示す断面図である。
【図14】腕に巻き付けた状態の電極シートを示す概略的な断面図である。
【図15】図16とともにデータグローブにおける指の屈曲状態を検出について説明するための図であり、本図はデータグローブの指部の背面を示す。
【図16】指を曲げた状態を示す図である。
【図17】抵抗パターン、圧力や温度の検出部を具備するデータグローブの要部構成を概略的に示す図である。
【図18】人体の体型分類についての説明図である。
【図19】基準体型モデルにおける諸量の定義を示す図である。
【図20】体型形座標空間を構成する2次元座標平面についての説明図である。
【図21】体型形座標空間におけるZ軸に長さ比率の変数を設定した様子を示す図である。
【図22】体型形座標空間におけるZ軸に長さ比率及び重量比率の変数を設定した様子を示す図である。
【図23】対象者から取得した画像データ及びその伸縮操作についての説明図である。
【図24】図25とともに対象者の3次元データについてのスライス処理に関する説明図であり、本図は立位姿勢の対象者(画像)とスライス間隔を示す。
【図25】対象者の3次元データについてスライス処理と断層面との関係を示す図である。
【図26】体型形座用空間を構成するX−Y平面に設定した極座標系(r,θ)において点の配置例を示す図である。
【図27】多角形の重心計算によって対象者の体型形を特定する処理についての説明図である。
【図28】重心G(Xg,Yg)からこれに対応する関数値を求める様子を示す図である。
【図29】図30とともに、身体に関する基本データの入力及びデータ加工に係る処理例を示すフローチャート図であり、本図は処理の前半部を示す。
【図30】処理の後半部を示す。
【図31】人体についての3次元データの取得及び運動に関するワイヤーフレームモデルの生成、運動に伴う重心位置データの取得に係る処理例を示すフローチャート図である。
【図32】対象者の3次元データに関するスライス処理についての概略的な説明図である。
【図33】人体ポリゴンDBとその構成DBとの依存関係を示す図である。
【図34】人体ポリゴンDBの生成に係る処理例を示すフローチャート図である。
【図35】図36乃至図40とともに初期学習について説明するための図であり、本図は筒状に巻いた圧力検出用シートを示す。
【図36】筒状に巻いた圧力検出用シートの別例を示す図である。
【図37】圧力検出用シートについての素子選択について説明するための図である。
【図38】圧力検出用シートに挿入して使用する基準円柱の組みを示す図である。
【図39】初期学習の手順例を示すフローチャート図である。
【図40】圧力検出用シートによる圧力分布情報から形状を取得する手順例を示すフローチャート図である。
【図41】図42乃至図44とともに、上肢の形状認識について説明するためのものであり、本図は形状認識の手順例を示したフローチャート図である。
【図42】対象者に視覚表示装置を装着して当該装置上に模倣すべき上肢の動きを映し出した状態を示す説明図である。
【図43】人体の上肢を概略的に示す図である。
【図44】圧力パターンの数例を示すグラフ図である。
【図45】図46及び図47とともに断層面データから対象部位の内部構造を含む形状モデルを作成する処理例について説明するためのフローチャート図であり、本図は処理の始めの部分を示す。
【図46】処理の中間部を示す。
【図47】処理の終盤部を示す。
【図48】各断層面とその面上の図形(三日月形状)について、輪郭線長に対するポリゴンポイント数の割り当てを示す説明図である。
【図49】三日月形状及びその面重心Gと、当該重心Gを中心とする等角分割線によって輪郭線上にポリゴンポイントが生成される様子を示す説明図である。
【図50】面重心位置の計算処理についての説明図である。
【図51】面重心を中心とする等角分割線と輪郭線との交点として求まるポリゴンポイントを示す説明図である。
【図52】刺激条件について諸量の定義を説明するための波形図である。
【図53】図54とともに干渉波シミュレーションについて説明するための図であり、本図は皮膚表面S上の1点と内部の対象部位XPとの関係を示す概略図である。
【図54】皮膚表面S上の3点と内部の対象部位XPとの関係を示す概略図である。
【図55】図56とともに、ATPによる多筋線維の動作集合信号を取得する方法について説明するための図であり、本図は装置例を概略的に示す図である。
【図56】FFT後の周波数特性を概念的に示すグラフ図である。
【図57】電極を通した電気刺激と、電極からの筋電位情報の取得処理とを時分割処理で行う場合の構成例を概念的に示す図である。
【図58】図59とともに人体の脂肪と刺激による主観評価法の一例を示すフローチャート図であり、本図はその前半部を示す。
【図59】処理の後半部を示す図である。
【図60】図61乃至図77とともに、本発明の実施例を示すものであり、本図は電気刺激装置の全体構成を示すブロック図である。
【図61】I/O処理部を主に示す図である。
【図62】統括制御部の構成を示す図である。
【図63】統括制御部とその周辺部との関係を示す図である。
【図64】図65とともに力触覚呈示装置としてゲーム機への適用例を示すものであり、本図は装置の全体構成を示すブロック図である。
【図65】要部の構成だけを取り出して示す図である。
【図66】図67乃至図71とともに、機能的電気刺激による力触覚呈示装置の制御方法について説明するためのフローチャート図であり、本図は制御の全体的な流れを示すフローチャート図である。
【図67】基準面圧力情報の取得に関するフローチャート図である。
【図68】関節角度に応じた面圧力情報の取得に関するフローチャート図である。
【図69】図70とともに、筋の仕事量による筋電情報の取得に関するフローチャート図であり、本図は処理の前半部を示す。
【図70】処理の後半部を示す。
【図71】電気刺激発生による力覚呈示の手順例を示すフローチャート図である。
【図72】図73乃至図77とともに、肘関節を対象にして電気刺激を付与した状況例を、骨ポリゴンデータを使って動作で表現したものであり、本図は立位無負荷状態を示す図である。
【図73】屈曲筋に対する最低出力での電気刺激付与によって前腕が少し動作した状態を示す図である。
【図74】最終的な肘の屈曲状態を示す図である。
【図75】肘を曲げて上に挙げた状態を示す図である。
【図76】伸展筋に対する最低出力での電気刺激付与によって前腕が少し動作した状態を示す図である。
【図77】最終的な肘の伸展状態を示す図である。
【符号の説明】
1…電気刺激装置、1a…効果器、1as…形状情報取得部、1ad…電極部、1b…電気刺激発生部、1c…形状認識部、1d…制御手段、1A…力触覚呈示装置、1Ad…効果器、2…電極
Claims (38)
- 表層の筋肉や皮膚に対して電気刺激を与えるための効果器を備えた電気刺激装置において、(イ)上記効果器が、皮膚表面に接触して使用される電極群からなる電極部と、(ロ)対象者に係る人体の骨や筋肉の配置を示すデータベースを構築するとともに、上記データベースから得られる対象者の人体の骨や筋肉の配置の情報に基づいて上記電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択する制御手段と、(ハ)上記対象者に干渉波電気刺激を付与するために上記電極群に対して各電極又は電極対のそれぞれに周波数の異なる電気刺激信号を供給する電気刺激発生部とを備え、
上記効果器は上記電極部と対象者に巻き付けられた圧力検出部とをシート状基材の上に多層構造をもって形成され、
上記圧力検出部によって得られる皮膚表面の形状データから対象者の外形形状を認識する形状認識部を備え、
上記データベースには対象者の上記外形形状を認識して得られた筋肉配置の情報が構築されている
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項1に記載した電気刺激装置において、(イ)対象者に基準姿勢をとってもらうか又は対象部位をギブスで固定してから、そのときの骨格断面及び筋や脂肪断面の画像情報を取得するとともに、断面位置の異なる多数の画像データを積層してデータベースが構築され、(ロ)関節を動作させながら時間軸に沿って対偶を撮影した画像データを取得するとともに、当該関節の角度毎に対偶の形状に係る静的なデータベースが構築され、(ハ)(ロ)で得たデータベースから対象者の筋肉配置を示すデータベースが構築される
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項2に記載した電気刺激装置において、
上記制御部は、断層断面での筋の識別にあたっては、筋と筋との間にある潤滑膜と筋との色差によって識別する
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項2に記載した電気刺激装置において、
上記制御部は、各断層断面での骨又は筋の輪郭線から3次元形状データを構築するにあたっては、当該輪郭線の内部領域の面重心を算出し、当該面重心から等しい角度間隔をもって放射状に延びる直線群と上記輪郭線との交点を求め、これらの交点を3次元形状データの基準点として用いることを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項2に記載した電気刺激装置において、
上記制御部は、骨や筋、脂肪、腱に対してそれらの材質毎に減衰率又は物質密度を設定して、皮膚表面のうち各部までのエネルギー損失又は位相ずれが小さい場所を求め、その場所に干渉波電気刺激ための電極を設定する
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項5に記載した電気刺激装置において、
上記制御部は、
(イ)骨や筋、脂肪、腱に対してそれらの材質毎に波の減衰率、物質密度の他、反射率及び屈折率をそれぞれ設定し、(ロ)(イ)で設定された減衰率又は物質密度に基づいて皮膚表面から対象部位までのエネルギー損失が少ない場所又は位相ずれが小さい場所を求めるとともに、その場所での電極候補のうちから複数の電極を選び出し、(ハ)(ロ)で選んだ電極位置から対象部位に向かう搬送波の時間的推移について当該部位で反射され又は屈折される波形を平面的にシミュレートすることで、当該平面上における干渉波の周波数分布を求め、(ニ)対象部位における理想的な干渉波が得られるまで、(ロ)及び(ハ)の手順を繰り返す
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項5に記載した電気刺激装置において、
上記制御部は、複数の電極候補を取得し、これらの位置情報を保存しておき、実際に電極として使用する際には電極候補の位置情報を読み出してこれらの中から電気刺激の対象領域に適した電極を選択する
ことを特徴とする電気刺激装置。 - 請求項1に記載した電気刺激装置において、点状の領域を指定して干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項1に記載した電気刺激装置において、線状の領域を指定して干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項1に記載した電気刺激装置において、面状の領域を指定してこれに干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項8に記載した電気刺激装置において、点状の領域を高速で移動させながら干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項9に記載した電気刺激装置において、線状の領域を高速で移動させながら干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項1に記載した電気刺激装置において、点状の領域に対する干渉波電気刺激の付与と、面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を交互に行うことを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項1に記載した電気刺激装置において、点状の領域又は面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を、直線又は曲線状の軌跡に沿って移動させながら行うことを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項1に記載した電気刺激装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項8に記載した電気刺激装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項9に記載した電気刺激装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項10に記載した電気刺激装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項15に記載した電気刺激装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項16に記載した電気刺激装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項17に記載した電気刺激装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激装置。
- 請求項18に記載した電気刺激装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激装置。
- 表層の筋肉や皮膚に対して電気刺激を与えることで力覚や触覚を呈示するための効果器を備えた、電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、(イ)上記効果器が、皮膚表面に接触して使用される電極群からなる電極部を備え、(ロ)対象者に係る人体の骨や筋肉の配置を示すデータベースを構築するとともに、上記データベースから得られる対象者の人体の骨や筋肉の配置の情報に基づいて上記電極群のうち電気刺激信号を供給すべき電極を選択する制御手段と、(ハ)上記対象者に干渉波電気刺激を付与するために上記電極群に対して各電極又は電極対のそれぞれに周波数の異なる電気刺激信号を供給する電気刺激発生部とを備え、
上記効果器は上記電極部と対象者に巻き付けられた圧力検出部とをシート状基材の上に多層構造をもって形成され、
上記圧力検出部によって得られる皮膚表面の形状データから対象者の外形形状を認識する形状認識部を備え、
上記データベースには対象者の上記外形形状を認識して得られた筋肉配置の情報が構築されている
ことを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。 - 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、点状の領域を指定して干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、線状の領域を指定して干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、面状の領域を指定してこれに干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項24に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、点状の領域を高速で移動させながら干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項25に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、線状の領域を高速で移動させながら干渉波電気刺激を付与することを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、点状の領域に対する干渉波電気刺激の付与と、面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を交互に行うことを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、点状の領域又は面状の領域に対する干渉波電気刺激の付与を、直線又は曲線状の軌跡に沿って移動させながら行うことを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項23に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項24に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項25に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項26に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、電極部がシート状基材の上に多層構造をもって形成されていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項31に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項32に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項33に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
- 請求項34に記載の電気刺激を用いた力触覚呈示装置において、効果器が人体に着用して使用される形状を有しており、シート状基材のうち電極部を構成する電極群が配置されていない場所には、通気性及び伸縮性を有する材料が用いられていることを特徴とする電気刺激を用いた力触覚呈示装置。
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