JP4339562B2 - イオンプレーティング方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオンプレーティング方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空下で成膜する方法として、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等が、用途に応じて使い分けられている。
【0003】
スパッタリング法は、プラズマ中のアルゴンイオンがターゲット材料に衝突することによってターゲット材料から叩き出された粒子が数eVの運動エネルギーを持って基板に入射して基板の表面に堆積することで成膜が行われる。
【0004】
一方、真空蒸着法やCVD法の場合、成膜される粒子の持つ運動エネルギーは、1eV以下であり、スパッタリング法に比べて小さい。
【0005】
成膜過程では、基板表面での粒子のマイグレーションが活発に行われるほど結晶性が向上するため、高品質の膜を得る観点からは、これらの各方法のうちでスパッタリング法が好適に用いられている。
【0006】
ここで、高品質の膜とは、例えば、良好な結晶性を有し、比抵抗が小さく、応力も小さな膜をいう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スパッタリング法の場合、上記した数eVの運動エネルギーを持つ成膜材料の粒子のほかに、中性のアルゴン粒子がターゲット材料に衝突してターゲット材料の電位に応じた数百eVという極度に大きな運動エネルギーが付与されて生成する反跳アルゴン粒子が僅かに存在する。そして、この反跳アルゴン粒子が成膜中の基板に衝突することにより膜の結晶性が損なわれる。このことが、スパッタリング法により成膜した膜の品質に限界を与えている。なお、この不具合を避ける方法として入射エネルギーを下げることが考えられるが、この場合、反跳アルゴン粒子の存在を完全に解消することは難しく、また、成膜速度の著しい低下を招くことになる。
【0008】
ところで、成膜方法の一種であるイオンプレーティング法は、例えばアークプラズマを用いて、加熱して蒸発させた粒子をイオン化するとともに電界で加速して数十eV程度の運動エネルギーを粒子に与えるものである。このイオンプレーティング法は、成膜速度が大きくまた大面積に成膜することができるとともに、得られる膜の密着性に優れるという特徴を持つ。また、イオンプレーティング法の場合、スパッタリング法の場合のような極度に大きな運動エネルギーを持つ反跳粒子は存在しない。
【0009】
しかしながら、イオンプレーティング法では、成膜条件によっては、通常の数十eV程度よりも大きな運動エネルギーを持つ粒子が多数生成し、基板に入射されることがある。この大きな運動エネルギーを持つ粒子の存在は、良好な結晶性を有する膜品質を得る上では障害となるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、結晶性に優れ、良好な品質の膜を得ることができるイオンプレーティング方法およびその装置を提供することを主な目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るイオンプレーティング方法は、成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、該蒸着材料と対向して配置された基板の表面に該蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング方法において、該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに該基板を含む領域に、該ハースと該基板とを最短距離で結んだときの直線または該直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成し、前記成膜室中に設けられた電極又は鉄心に電源によって電圧が印加されることによって、前記基板または該基板の近傍で、前記磁力線の方向に沿って電位を略等しくし、前記電極又は鉄心に前記電源によって電圧が印加されることによって、前記基板または該基板の近傍と前記ハースとの間に、前記蒸着物質のイオンが前記基板に衝突するときの運動エネルギーを減少させるような電界を生成することを特徴とする。
【0012】
また、上記のイオンプレーティング方法を実現するために、本発明に係るイオンプレーティング装置は、成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、該蒸着材料と対向して配置された基板の表面に該蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング装置において、該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに該基板を含む領域に、該ハースと該基板とを最短距離で結んだときの直線または該直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成する磁界生成手段と、前記成膜室中に、前記基板を中心として前記磁力線の方向に沿って互いに反対の位置に対向して設けられ、互いに等しい電位に制御される一対の電極を含み、前記基板または該基板の近傍と前記ハースとの間に、前記蒸着物質のイオンが前記基板に衝突するときの運動エネルギーを減少させるような電界を生成する電界生成手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の上記の構成により、イオン化した蒸着物質に同伴した電子が磁界に捕捉されてハースに対して逆バイアスの電位の電界を生成することで、蒸着物質の基板への衝突エネルギーが緩和され、良好な結晶性を有し、比抵抗および応力が小さな膜を得ることができる。また、電子が磁界に捕捉されて基板に到達しないため、電子が基板に到達することによる基板への入熱が軽減され、基板の温度上昇を軽減することができる。したがって、本発明は、基板が耐熱温度の低い樹脂で形成されている場合に、より効果的である。
【0014】
この場合、基板材料が導電性の場合は、上記の本発明の構成を採ることなく、基板自体に電圧を印加してハースに対して逆バイアスの正の電位の電界を生成することも考えられるが、このとき、基板が高温となるため、現実的ではない。
【0015】
また、基板自体に逆バイアスの電位が付与される場合においても、磁界とのバランスを考慮することで、プラズマ中の電子が基板に衝突することなく、磁界を介して成膜室の壁に衝突して消滅するため、基板の温度上昇が抑制される。
【0016】
また、本発明に係るイオンプレーティング方法において、前記磁界は、前記基板と平行な平面内において周期的に方向を変更され、本発明に係るイオンプレーティング装置において、前記磁界生成手段は、前記基板と平行な平面内において周期的に前記磁界方向を変更するように構成されてなると、電界の電位勾配に起因するJ×Bドリフトによって蒸着物質の進路が曲げられるおそれがある場合であっても、磁界方向が常に変化するため、蒸着物質の進路が曲げられることがない。
【0017】
このとき、磁界は、交番磁界であってもよく、さらにまた回転磁界とするとより好適である。
【0018】
また、本発明に係るイオンプレーティング装置において、前記電界生成手段は、前記成膜室中に設けられ、前記電極と前記ハースとの間に配置され、前記蒸着物質の該電極への衝突を防ぐ遮蔽部とを含むと、電極への蒸着物質の堆積を防止することができる。また、電極の過熱も防止することができる。
【0019】
また、本発明に係るイオンプレーティング方法において、前記基板は、前記蒸着物質の蒸発方向に対して直交する方向に搬送され、前記磁界生成手段は、該基板に付着される蒸着物質の均一な成膜分布を得るために設けられる膜厚補正板と一体的に設けられていることを特徴とする。
【0020】
磁界生成手段を格別に設ける場合は磁界生成手段の配置位置、形状等によっては基板の成膜が阻害されるおそれがある点を配慮する必要があるが、本発明の構成によれば、膜厚補正板が磁界生成手段と一体的に設けられているため、そのおそれがない。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係るイオンプレーティング方法およびその装置の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0022】
まず、本実施の形態例に係るイオンプレーティング装置について図1〜図4を参照して説明する。
【0023】
イオンプレーティング装置10は、成膜室である真空容器12と、真空容器12中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン(プラズマビーム発生器)14と、真空容器12内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材16と、成膜の対象である基板Wを保持する基板保持部材WHを陽極部材16の上方で適宜移動させる搬送機構18とを備える。なお、ハース16aとハース16aの上方に対向して配置される基板Wとの間に進入する位置に、真空容器12の側壁に突設して膜厚補正板19が設けられている。膜厚補正板19については、他の実施例のところで説明する。
【0024】
プラズマガン14は、圧力勾配型であり、その本体部分は真空容器12の側壁に備えられる。プラズマガン14の陰極14a、中間電極14b、14c、電磁石コイル14dおよびステアリングコイル14eへの給電を調整することにより、真空容器12中に供給されるプラズマビームPBの強度や分布状態が制御される。なお、参照符号20aは、プラズマビームPBのもととなる、Ar等の不活性ガスからなるキャリアガスの導入路を示す。
【0025】
陽極部材16は、プラズマビームPBを下方に導く主陽極であるハース16aと、その周囲に配置された環状の補助陽極16bとからなる。
【0026】
ハース16aは、適当な正電位に制御されており、プラズマガン14から出射したプラズマビームPBを下方に吸引する。ハース16aは、プラズマビームPBが入射する中央部に貫通孔THが形成されており、貫通孔THに蒸着材料22が装填されている。蒸着材料22は、柱状若しくは棒状に成形されたタブレットであり、プラズマビームPBからの電流によって加熱されて昇華し、蒸着物質を生成する。ハース16aは蒸着材料22を徐々に上昇させる構造を有しており、蒸着材料22の上端は常に一定量だけハース16aの貫通孔THから突出している。
【0027】
補助陽極16bは、ハース16aの周囲に同心に配置された環状の容器で構成され、容器内には、永久磁石24aとコイル24bとが収容されている。これら永久磁石24aおよびコイル24bは、磁場制御部材であり、ハース16aの直上にカスプ状磁場を形成し、これにより、ハース16aに入射するプラズマビームPBの向きが制御される。
【0028】
搬送機構18は、搬送路18a内に水平方向に等間隔で配列されて基板保持部材WHを支持する多数のコロ18bと、コロ18bを回転させて基板保持部材WHを所定の速度で水平方向に移動させる図示しない駆動装置とを備える。基板保持部材WHに基板Wが保持される。この場合、基板Wを搬送する搬送機構18を設けることなく、図2に示すように、真空容器12の内部の上方に基板Wを固定して配置してもよい。
【0029】
なお、参照符号20b、20cは酸素等の雰囲気ガスを供給するための供給路を示し、また、参照符号20dはAr等の不活性ガスをハース16aに供給するための供給路を示し、また、参照符号20eは排気系を示す。
【0030】
イオンプレーティング装置10は、さらに、図1または図2中、破線で囲った部分(矢印AまたはBで示す。)に本発明の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部が設けられる。
【0031】
図2中矢印Bで示す本発明の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部の具体的な構成について、さらに図3を参照して説明する。なお、以下に説明する本発明の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部は、図1の搬送型の基板Wに対しても適用できることは勿論である。また、必要に応じて、電界生成手段あるいは遮蔽部は省略することができる。
【0032】
図3のイオンプレーティング装置10は、図2のイオンプレーティング装置を図2中右側から見た状態を示す。すなわち、図3の紙面の表側の上方、真空容器12の手前側にプラズマガン14が位置する。
【0033】
イオンプレーティング装置10は、磁界生成手段として、真空容器12の基板Wが水平に配置された箇所の外側に、対向して1対の磁界生成用の電磁石26a、26bが設けられる。電磁石26a、26bは、対向する向きに相互に異なる磁極が生成されるように、図示しない電源によって電圧が印加され、基板Wの周辺に基板Wと平行な磁力線を有する磁界が生成される。
【0034】
真空容器12の内部には、電界生成手段として、基板Wを挟んで対向する位置に1対の電極28a、28bが設けられる。この電極28a、28bは、同時に電磁石26a、26bの間に位置する。電極28a、28bには、バイアス調整用電源30によって電圧が印加され、磁界の磁力線に沿った空間に電極の電位を有する等電位の電界が生成される。
【0035】
電極28a、28bの図3中下方、電極28a、28bとハース16aとの間には、遮蔽部として1対の遮蔽板32a、32bが設けられる。
【0036】
上記のように構成したイオンプレーティング装置10を用いたイオンプレーティング方法を、さらに図4を参照して説明する。
【0037】
まず、真空容器12の下部に配置されたハース16aの貫通孔THに蒸着材料22を装着する。ここで、蒸着材料22は、例えば、SiOである。
【0038】
一方、ハース16aの上方の対向する位置に基板Wを配置する。ここで、基板Wは、導電性を有する金属基板等であってもよく、また、絶縁性のプラスチック基板や無機基板等であってもよい。後者の絶縁性の基板を用いる場合、基板への異物の付着を防止する等の観点から、基板を接地し、蒸着物質のイオンが基板に堆積することで生じうる帯電を防止することが好ましい。
【0039】
つぎに、成膜条件に応じて適宜のプロセスガスを真空容器12の内部に導入する。
【0040】
プラズマガン14の陰極14aが例えば−40V程度、およびハース16aが例えば+20V程度の電位になるように、陰極14aおよびハース16a間に直流電圧を印加する。なお、このとき、真空容器12の壁12aは接地されている(図3参照)。
【0041】
また、電磁石26a、26bに電圧を印可して、図4に模式的に示すように、基板Wと平行な磁力線が例えば5〜10mT程度の磁束密度を有するように磁界を生成する。磁界は、基板Wの周囲および特にハース16aに対向する側の基板Wの表面近傍に生成される。一方、電極28a、28bに例えば+10V程度の電位を持つように電圧を印加する。これにより、磁力線に沿って+10V程度の等電位の電界が、ハース16aに対向する側の基板Wの表面近傍に生成される。なお、蒸着材料22がITOの場合は、電極28aの電位を例えば+15V以下程度とすることが好ましく、また、蒸着材料22がZnOの場合は、電極28aの電位を例えば+30V程度とすることが好ましい。
【0042】
そして、プラズマガン14の陰極14aとハース16aとの間で放電を生じさせ、これにより、プラズマビームPBを生成する。プラズマビームPBは、ステアリングコイル14と補助陽極16b内の永久磁石24a等とによって決定される磁界に案内されてハース16aに到達する。この際、蒸着材料22の周囲にアルゴンガスが供給されるので、容易にプラズマビームPBがハース16aに引き寄せられる。
【0043】
プラズマに曝された蒸着材料22は、徐々に加熱される。蒸着材料22が十分に加熱されると、蒸着材料22が昇華し、蒸着物質が蒸発(出射)する。蒸着物質は、プラズマビームPBによりイオン化され、基板Wに付着(入射)する。
【0044】
このとき、プラズマ中の蒸着物質のイオンに同伴する質量の小さな電子は、基板Wに到達する前に磁界に捕捉される。一方、質量の大きな蒸着物質のイオンは磁界を通過して基板Wに到達する。これにより、上記の電子の挙動のみで、磁界が生成された空間には例えば+数V程度の、ハース16aに対して逆バイアスの電位の電界が生成するため、蒸着物質のイオンが基板Wに衝突するときの運動エネルギーは、磁界がない場合に比べて緩和(減少)される。
【0045】
基板Wの周囲、特に、ハース16aに対向する側の基板Wの表面近傍には、さらにハース16aに対して逆バイアスとなる電位の電界が生成されているため、蒸着物質のイオンが基板Wに衝突するときの運動エネルギーは、大きく緩和(減少)される。
【0046】
図4に示すように一定方向のみの磁界を設ける場合、電界の電位勾配に起因するJ×Bドリフトによって蒸着物質の進路が曲げられるおそれがあるため、より好ましくは、周期的に磁界方向を逆転させる。
【0047】
これにより、成膜過程において過大な運動エネルギーを持った蒸着物質のイオンが基板Wに衝突することなく、適度な運動エネルギーに制御された蒸着物質のイオンが基板に付着して成膜が進行するため、結晶欠陥が少なく、比抵抗が小さく、さらに応力の小さい、良好な品質の膜を形成することができる。
【0048】
このとき、電極28a、28bの下方に設けられた遮蔽板32a、32bにより、上昇する蒸着物質が電極28a、28bに付着することが抑制される。
【0049】
また、上記の本実施の形態例に係るイオンプレーティング方法およびその装置によれば、ハース16aからは、通常と同様にイオン化された蒸着物質が+20V程度の大きな電界によって加速されるため、通常と同様に高い成膜速度で成膜を行うことができる。
【0050】
なお、永久磁石24aおよびコイル24bによってハース16aの上方の磁場を制御することにより、蒸着物質の飛行方向を制御することができるため、ハース16aの上方におけるプラズマの活性度分布や基板Wの反応性分布に合わせて基板Wの上の成膜速度分布を調整でき、広い面積にわたって均一な膜質の薄膜を得ることができる。
【0051】
つぎに、本発明の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例において、上記本実施の形態例と同一の構成要素については、本実施の形態例と同じ参照符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0052】
図5に示す第1の変形例において、コ字状の鉄心34が、基板Wの下側表面のみを露出するように上方から基板Wを取り囲むように配置される。鉄心34の直線部34aには、コイル36が巻回される。
【0053】
鉄心34に電圧が印加されることにより、基板Wの周囲に等電位の電界が生成される。すなわち、鉄心34は、電磁石の鉄心としての役割とともに電界生成手段としての電極の役割を有する。
【0054】
コイル36に図示しない電源より電圧が印加されることにより、鉄心34の両先端部34b、34cの間に、言い換えれば、基板Wの下側に磁界が生成される。すなわち、コイル36および鉄心34で構成される電磁石は、磁界生成手段として作用する。
【0055】
上記第1の変形例においても、本実施の形態例と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
図6に示す第2の変形例において、基板Wを挟んで、基板の平面方向の対向する位置に、本実施の形態例と同様に1対の電極28a、28bが設けられる。電極28a、28bに電圧が印加されることにより、基板Wの周囲に等電位の電界が生成される。
【0057】
真空容器12の上方に、1対の電磁石38a、38bが配置される。図示しない電源より電圧が印加されることにより、電磁石38a、38bのそれぞれ基板Wに向いた側の面を相互に異なる磁極として、基板Wの周囲に磁界が生成される。
【0058】
上記第2の変形例においても、本実施の形態例と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
図7に示す第3の変形例において、前述した膜厚補正板19は、磁界生成手段を兼ねている。すなわち、磁界生成手段は、膜厚補正板19と一体的に設けられている。
【0060】
膜厚補正板は、搬送される基板Wに付着される蒸着物質の均一な成膜分布を得るために、蒸着物質の移動を干渉することにより、基板保持部材WHによって搬送される基板Wに付着する蒸着物質の量を加減するのが本来の役割である。
【0061】
但し、第3の変形例の膜厚補正板19は、基板の進行方向に3分割された磁石部21、23、25が設けられ、各磁石部21、23、25には複数の永久磁石21a〜21n、23a〜23n、25a〜25nが配列されている。この場合、膜厚補正板19は、磁石部21、23、25を連結部材によって連結した構造であってもよく、また、通常用いられる膜厚補正板上に磁石部21、23、25を分離形成した構造であってもよい。なお、図7中、参照符号27は、膜厚補正板19の面積を調整するとともに磁力線を通すために各磁石部21、23、25間の膜厚補正板部分に形成した開口を示す。
【0062】
上記第3の変形例においても、本実施の形態例と同様の作用効果を得ることができる。また、磁界生成手段を格別に設ける場合は磁界生成手段の配置位置、形状等によっては基板Wの成膜が阻害されるおそれがある点を配慮する必要があるが、第3の変形例の場合、膜厚補正板19が磁界生成手段を兼ねており、磁界生成手段を格別に設けるための占有面積を必要としないため、そのような配慮は必要がない。
【0063】
なお、第3の変形例において、基板Wの成膜分布状態を勘案した望ましい形状に考慮しつつ基板Wの全面を覆う大きさに膜厚補正板19の外形を形成し、膜厚補正板19の全体に各磁石部を配置すると、基板Wの全面を覆う磁界を形成することができて好適である。
【0064】
以上説明した本実施の形態例および第1〜第3の変形例において、磁界生成手段は、一方向の磁界を生成するものであってもよく、また、交番磁界を生成するものであってもよいが、さらに回転磁界を生成するものであるとより好適である。また、磁界生成手段として、電磁石および永久磁石を相互に置換して用いることを排除するものではない。
【0065】
【発明の効果】
本発明に係るイオンプレーティング方法によれば、成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、蒸着材料と対向して配置された基板の表面に蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング方法において、該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに基板を含む領域に、ハースと基板とを最短距離で結んだときの直線または直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成し、また、本発明に係るイオンプレーティング装置において、成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、蒸着材料と対向して配置された基板の表面に蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング装置において、ハースと基板との間の領域に、または、さらに基板を含む領域に、ハースと基板とを最短距離で結んだときの直線または直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成する磁界生成手段を有するため、蒸着物質の基板への衝突エネルギーが緩和され、良好な結晶性を有し、比抵抗および応力が小さな膜を得ることができる。
【0066】
また、本発明に係るイオンプレーティング方法によれば、さらに、基板または基板の近傍にハースに対して逆バイアスの電位の電界を生成し、また、本発明に係るイオンプレーティング装置によれば、さらに、基板または基板の近傍に前記ハースに対して逆バイアスの電位の電界を生成する電界生成手段を有するため、蒸着物質の基板への衝突エネルギーをより効果的に緩和することができる。
【0067】
また、本発明に係るイオンプレーティング方法によれば、磁界は、基板と平行な平面内において周期的に方向を変更され、また、本発明に係るイオンプレーティング装置によれば、磁界生成手段は、基板と平行な平面内において周期的に磁界方向を変更するように構成されてなるため、蒸着物質の進路が曲げられることがない。
【0068】
また、本発明に係るイオンプレーティング装置によれば、電界生成手段は、成膜室中に設けられ、等電位の電界を生成する電極と、電極とハースとの間に配置され、蒸着物質の電極への衝突を防ぐ遮蔽部とを含むため、電極への蒸着物質の堆積を防止することができる。
【0069】
また、本発明に係るイオンプレーティング方法によれば、基板は、蒸着物質の蒸発方向に対して直交する方向に搬送され、磁界生成手段は、基板に付着される蒸着物質の均一な成膜分布を得るために設けられる膜厚補正板を兼ねているため、磁界生成手段を設けることによる基板の成膜への影響を考慮する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態例に係るイオンプレーティング装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】 図1とは基板の配置形態が異なる本実施の形態例に係るイオンプレーティング装置の概略構成を説明するための装置の部分図である。
【図3】 図2の本実施の形態例に係るイオンプレーティング装置の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部の構成を示す装置の部分図である。
【図4】 図3の装置の作用を説明するための模式図である。
【図5】 第1の変形例の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部の構成を示す装置の部分図である。
【図6】 第2の変形例の磁界生成手段、電界生成手段、遮蔽部の構成を示す装置の部分図である。
【図7】 第3の変形例の磁界生成手段の構成を示す装置の部分図である。
【符号の説明】
10 イオンプレーティング装置
12 真空容器
14 プラズマガン
14a 陰極
14b、14c 中間電極
14d 電磁石コイル
14e ステアリングコイル
16 陽極部材
16a ハース
16b 補助陽極
18 搬送機構
19 膜厚補正板
21、23、25 磁石部
22 蒸着材料
21a〜21n、24a、23a〜23n、25a〜25n 永久磁石
24b、36 コイル
26a、26b、38a、38b 電磁石
28a、28b 電極
30 バイアス調整用電源
32a、32b 遮蔽板
34 鉄心

Claims (8)

  1. 成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、該蒸着材料と対向して配置された基板の表面に該蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング方法において、
    該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに該基板を含む領域に、該ハースと該基板とを最短距離で結んだときの直線または該直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成し、
    前記成膜室中に設けられた電極又は鉄心に電源によって電圧が印加されることによって、前記基板または該基板の近傍で、前記磁力線の方向に沿って電位を略等しくし、
    前記電極又は鉄心に前記電源によって電圧が印加されることによって、前記基板または該基板の近傍と前記ハースとの間に、前記蒸着物質のイオンが前記基板に衝突するときの運動エネルギーを減少させるような電界を生成することを特徴とするイオンプレーティング方法。
  2. 前記磁界は、前記基板と平行な平面内において周期的に方向を変更されることを特徴とする請求項1記載のイオンプレーティング方法。
  3. 成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、該蒸着材料と対向して配置された基板の表面に該蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング装置において、
    該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに該基板を含む領域に、該ハースと該基板とを最短距離で結んだときの直線または該直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成する磁界生成手段と、
    前記成膜室中に、前記基板を中心として前記磁力線の方向に沿って互いに反対の位置に対向して設けられ、互いに等しい電位に制御される一対の電極を含み、
    前記基板または該基板の近傍と前記ハースとの間に、前記蒸着物質のイオンが前記基板に衝突するときの運動エネルギーを減少させるような電界を生成する電界生成手段と
    を有することを特徴とするイオンプレーティング装置。
  4. 成膜室中に陽極として配置されたハースに装填された蒸着材料に向けてアーク放電による高密度プラズマビームを供給して蒸着物質を蒸発させてイオン化し、該蒸着材料と対向して配置された基板の表面に該蒸着物質を付着させてイオンプレーティングを行うイオンプレーティング装置において、
    該ハースと該基板との間の領域に、または、さらに該基板を含む領域に、該ハースと該基板とを最短距離で結んだときの直線または該直線の延長線に対して略垂直方向に伸びる磁力線を含む磁界を生成する磁界生成手段と、
    前記成膜室中の前記基板の近傍に設けられ、該成膜室と独立した電位に制御される鉄心を含み、
    前記基板または該基板の近傍と前記ハースとの間に、前記蒸着物質のイオンが前記基板に衝突するときの運動エネルギーを減少させるような電界を生成する電界生成手段と
    を有し、
    前記基板を中心として前記磁力線の方向に沿って互いに反対の位置に前記鉄心の両先端部が配置され、一の先端部から他の先端部にかけて、前記磁力線が前記鉄心の内部を貫通することを特徴とするイオンプレーティング装置。
  5. 前記電界生成手段は、前記成膜室中に設けられ、前記電極と前記ハースとの間に配置され、前記蒸着物質の該電極への衝突を防ぐ遮蔽部とを含むことを特徴とする請求項3記載のイオンプレーティング装置。
  6. 前記電界生成手段は、前記成膜室中に設けられ、前記鉄心と前記ハースとの間に配置され、前記蒸着物質の該鉄心への衝突を防ぐ遮蔽部とを含むことを特徴とする請求項4記載のイオンプレーティング装置。
  7. 前記磁界生成手段は、前記基板と平行な平面内において周期的に前記磁界方向を変更するように構成されてなることを特徴とする請求項5または6記載のイオンプレーティング装置。
  8. 前記基板は、前記蒸着物質の蒸発方向に対して直交する方向に搬送され、
    前記磁界生成手段は、該基板に付着される蒸着物質の均一な成膜分布を得るために設けられる膜厚補正板と一体的に設けられていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のイオンプレーティング装置。
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