JP4339459B2 - 土のう袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、仮設の堤防や防水壁、道路迂回路、造成地の法面等を構築する土のうに用いられる土のう袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、仮設の堤防や防水壁、道路迂回路、造成地の法面等を構築するために土のうが用いられている。そして、土のうは工事現場に土のう袋を運搬し、現場に存在する土砂を人力で袋に投入して土のうを作り、これを人力で積み上げて前記堤防や防水壁、道路迂回路、造成地の法面等を構築するケースが多い。
【0003】
上記のような土のう袋としては、従来は俵、麻袋等が使用され、現在は、ポリエチレンもしくはポリプロピレンからなるフラットヤーンを織成して製造された土のう袋が主流であるが、土のう袋としては下記のような条件を満たしている必要がある。
1.土のう袋に腰があり、土砂を袋詰めする際に袋に自立性があること。
2.土のう袋に柔軟性があり、その結果、土砂を袋詰めする際には袋の口を折り返し口を開いて土砂を投入するが、折り返す際に折り返しが楽で折り返した後は口が塞がり難いもの、また、土砂を充填後、口紐を締める際は織り目付けがより少なく口締まりがよいもの、さらに、土のうを積み上げる際は、土のう同士の密着性がよいものなどが好ましい。
3.土のう袋表面の滑性が小さく、土のうを運ぶ際は滑り難く持ちやすいもの、土のうを積み上げ後土のう袋の表面同士が滑り難く土のうが崩れ難いものが好ましい。
4.土のう袋の経緯糸に目ズレを起こし難く、目ズレを起こしても積み上げ後に自己復元性にすぐれ、土砂が土のう袋の目地の隙間から脱落することなく、かつ適度に目地の隙間があり、排水性のよいものがよい。
5.ミシン縫製部において劣化が少ないものがよい。
6.土のう袋は、耐候性にすぐれている方がよい。
7.美観上すぐれているものがよい。
8.安価であること。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
現在、土のう袋としてポリエチレンまたはポリプロピレンからなるフラットヤーンを円形織機を用いて織成したサーキュラ袋が多数流通しているが、円形織機で織成されるフラットヤーンには、平織機で織成される場合に比較して割れ防止のために多量の炭酸カルシウムが配合されており、そのために、袋の自立性の点ではすぐれているものの、柔軟性、滑性、目ズレの自己復元性、ミシン縫製の際の劣化性などの点で劣っているとともに、とくにポリプロピレンからなるフラットヤーンは耐候性に劣り、更なる改良が要望されていた。
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、袋の自立性、柔軟性、滑性、目ズレの自己復元性、ミシン縫製時の劣化性などにすぐれた低廉な土のう袋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を考慮してなされたもので、ポリエチレンフラットヤーンを経緯糸とした織布を用いた土のう袋において、前記ポリエチレンフラットヤーンが下記式(1)、(2)を満足するものであり、かつ前記織布が、経糸および/または緯糸の少なくとも一部を少なくとも2本の前記ポリエチレンフラットヤーンからなる引揃糸としてなる構成であることを特徴とする土のう袋を提供して、上記課題を解消するものである。
(1)....(3.0)(25.4)/H≧W≧(1.2)(25.4)/H
(2)....12≧H≧5
(W:ヤーン幅[mm]、H:打込密度[本/25.4mm])
【0006】
このとき、前記引揃糸の配列方法が、引揃糸でないフラットヤーン1〜3本に対して引揃糸1条を配列する方法であることが好適である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリエチレンとしては高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどの単独または2種以上組み合わせた樹脂が用いられる。これらのうちでは、延伸効果にすぐれ、高強力の得られる高密度ポリエチレンが好ましい。
上記ポリエチレンのメルトフローレート(以下、MFRと記載する)は0.1〜2g/10min.が好ましく、0.2〜1.2g/10min.がより好ましい。
【0008】
上記ポリエチレンフラットヤーンを形成する方法としては、原料ポリエチレンを押出機にて溶融混練し、Tダイ法またはインフレーション法にてフィルムを成形する。冷却固化したフィルムは、スリットした後延伸し、次いで熱処理してフラットヤーンを形成し、必要に応じて割繊処理を施してスプリットヤーンを形成する。割繊処理方法は公知の方法が採用できる。延伸処理はポリエチレンの融点以下、軟化点以上の温度下に行われ、加熱法としては、熱ロール式、熱板式、熱風式等の方法が採用できる。
スリットされたポリエチレンフィルムは加熱され、前後ロールの周速度差により延伸を行う。延伸倍率は好ましくは3〜15倍、より好ましくは5〜10倍である。
【0009】
上記ポリエチレンフラットヤーンは、その単糸繊度が500〜3000デニール(以下、dと略す)が好ましく、800〜1500dがより好ましい。500d未満では土のう袋としての強力が十分でなく、3000dを越えると柔軟性が劣るうえに土のう袋として排水性が劣り好ましくない。
【0010】
こうして得られたポリエチレンフラットヤーンを織成して織布を形成する。織組織はとくに限定するものではなく、平織、綾織、もじり織などが採用されるが、高強力で目ずれ等のない平織が好ましい。
【0011】
本発明においては、ポリエチレンフラットヤーンのヤーン幅=Wmmと打込密度=H本/25.4mmとの関係が下記式(1)、(2)を満足するものであることが肝要である。
(1)....(3.0)(25.4)/H≧W≧(1.2)(25.4)/H
(2)....12≧H≧5
【0012】
上記(1)式は、ポリエチレンフラットヤーンを織布の経緯糸として(2)式のように25.4mm当たり12〜5本を配置したときに、ヤーン幅は経緯糸が配置された幅の3.0〜1.2倍であることを示すものであり、この倍数分のヤーンは折り畳まれるか、またはしわ寄せされた状態となっている。この倍数が3.0回を超えると織布が柔軟性を失うとともに排水性が低下するので好ましくなく、1.2回未満では、目ズレの自己復元性が劣り、充填した土砂が脱落し好ましくない。
【0013】
図1には、フラットヤーン2を並列に並べた従来の織布の概略を示し、図2は本発明にかかる織布1であって、(イ)は、W=(1.2)(25.4)/H幅のフラットヤーン3を配置したもの、(ロ)は、W=(3.0)(25.4)/H幅のフラットヤーン4を配置した状態を模式的に示したものである。
【0014】
上記(2)式は、打込密度が12〜5本/25.4mmであることを意味し、打込密度が12本/25.4mmを超えると織成効率が低下して好ましくなく、5本/25.4mm未満では、目ズレが発生し易く、また目ズレの自己復元性が低下して好ましくない。
【0015】
前記織布において、経糸および/または緯糸の少なくとも一部を少なくとも2本の引揃糸とする構成とするのが好ましい。引揃糸の配列方法として具体的には、1本毎交互に、フラットヤーン2本に対して引揃糸1条、フラットヤーン3本に対して引揃糸1条など部分的、かつ規則的に配列するのが好ましい。
図3は、本発明に係る織布1の一部を示す説明図で、経糸の一部を2本の引揃糸5とし、フラットヤーン2本に対して引揃糸1条の配列としたものである。
このように引揃糸を配列することにより、土のう袋の柔軟性を保持しつつ、かつ自立性を向上させることができる。引揃糸の代わりに、その位置に2倍の高デニールの糸を打ち込むことも出来るが、実生産面において2種類の糸を準備する必要性が生じるうえ、経糸の整経、織機におけるオサ通しなどでの作業性の悪さなどのため好ましくない。
【0016】
本発明において、ポリエチレンには耐候性を向上させるために下記ヒンダードアミン系光安定剤を添加して用いるとよい。
【0017】
ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸ジエチルの重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサンと2,4-ジクロロ-6-第3オクチルアミノ-s-トリアジンの重縮合物などが挙げられ、また、エチレンと環状アミノビニル化合物とを共重合させて得られたヒンダードアミンを側鎖に有する高分子系ヒンダードアミン系光安定剤も使用できる。
上記光安定剤の配合割合は、ポリエチレンに対して好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。
【0018】
本発明においては、上記ポリエチレンフラットヤーンからなる織布を折り重ねてLソーイングにより袋体を形成し、開口部の1辺の周囲を折り返して縫製して筒状体を形成し土のう袋とする。この筒状体に紐体を挿通して、土のう袋に土砂を充填後、紐体で開口部を閉じて土のうとするものである。
【0019】
上記ポリエチレンには、耐候性を向上させる目的でカーボンブラックを配合しても差し支えない。カーボンブラックについて特に限定はないが、平均粒径が0.01〜1.0μmの範囲にあるものが好ましい。カーボンブラックの配合量は0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜2重量%がより好ましい。
【0020】
またポリエチレンには、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、無機充填剤、難燃剤、架橋剤、発泡剤、核剤等の添加剤を配合して用いることができる。
【0021】
【実施例】
高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10min.、密度=0.957g/cm3、Tm=129℃)中に、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートを主成分とするヒンダードアミン系光安定剤10.0重量%を含有する組成物を用いて、インフレーション法を用いてフィルムに押出し、空冷式で冷却してフィルムを形成した。このフィルムを熱板接触延伸法で延伸倍率7倍で延伸し、幅5mm、繊度850dのフラットヤーンを形成した。
このフラットヤーンを経緯糸として用い、打込密度を経緯糸として8×9本/インチとし、経緯ともフラットヤーン2本に対して引揃糸1条を交互に配列した平織の織布を得た。
【0022】
上記織布を用いて、幅1600mm、長さ1000mmを裁断し、幅方向に二重に折畳みLソーイングにより袋体を形成し土のう袋とした。
得られた土のう袋は引張強力84kgf/5cm、引張伸び15%、引裂強力22kgf、剛軟度64mm、ウエザオメーター照射1600H後引張伸び残率が90%で、機械的性質、柔軟性、耐候性にすぐれ、自立性を備え、目ズレ自己復元性も良好で土のう袋として好適に用いられた。
【0023】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明は、ポリエチレンフラットヤーンからなる織布を用いた土のう袋であって、ヤーン幅が経緯糸が配置された幅の3.0〜1.2倍であり、この倍数分のヤーンは折り畳まれるか、またはしわ寄せされた状態となっており、打込密度が12〜5本/25.4mmの範囲で形成されるものである。その結果、織布に柔軟性があり、目ズレを起こしても自己復元性にすぐれ、土砂の脱落がなく、かつ排水性もよい土のう袋として好適に用いられる。
【0024】
また、上記織布は、経糸および/または緯糸の少なくとも一部を少なくとも2本のポリエチレンフラットヤーンからなる引揃糸としたものである。その結果、織布に起伏が生じて滑性を低下させるため持ち運びやすく積み上げ後崩れ難く、また、柔軟性があり、かつ強度にすぐれている、などのすぐれた効果を有した土のう袋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の土のう袋に用いる織布のフラットヤーンが並列に配置された状態の説明図である。
【図2】本発明にかかる土のう袋に用いる織布のフラットヤーンの概略を示す説明図であって、(イ)は、W=(1.2)(25.4)/H幅の状態、(ロ)は、W=(3.0)(25.4)/H幅の状態を模式的に示したものである。
【図3】本発明に係る土のう袋の一部を示す説明図であって、経糸の一部を2本の引揃糸としたものである。
【符号の説明】
1 織布
2 従来のフラットヤーン
3 W=(1.2)(25.4)/H幅のフラットヤーン
4 W=(3.0)(25.4)/H幅のフラットヤーン
5 引揃糸
Claims (2)
- ポリエチレンフラットヤーンを経緯糸とした織布を用いた土のう袋において、前記ポリエチレンフラットヤーンが下記式(1)、(2)を満足するものであり、かつ前記織布が、経糸および/または緯糸の少なくとも一部を少なくとも2本の前記ポリエチレンフラットヤーンからなる引揃糸としてなる構成であることを特徴とする土のう袋。
(1)....(3.0)(25.4)/H≧W≧(1.2)(25.4)/H
(2)....12≧H≧5
(W:ヤーン幅[mm]、H:打込密度[本/25.4mm]) - 前記引揃糸の配列方法が、引揃糸でないフラットヤーン1〜3本に対して引揃糸1条を配列する方法である請求項1記載の土のう袋。
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