JP4338468B2 - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents
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前記R2T14B相は、前記R2T14B相全体について酸素を0.3原子%〜1.3原子%含有する。
組成式RxTyBz(0.05≦x≦0.30、0.50≦y≦0.90、0.01≦z≦0.30,x+y+z=1.00)の希土類合金を作製する工程と、
水素ガスを含む雰囲気中で前記希土類合金を加熱する水素吸蔵工程と、
大気圧よりも低い圧力雰囲気で前記希土類合金を加熱する水素放出工程と、
酸素ガスを含む雰囲気中で前記希土類合金を加熱する酸素拡散工程と
を含む。
本発明の実施の形態1に係る希土類磁石について説明する。この希土類磁石は、(Nd,Dy)2(Fe,Co)14B相を主相として有しており、主相よりも希土類元素の含有量が高いR−rich相を第2相として有している。希土類磁石全体の組成比は、組成式Nd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08で表される。また、主相の(Nd,Dy)2(Fe,Co)14B相に含まれる酸素の含有量は、(Nd,Dy)2(Fe,Co)14B相において0.3〜1.3原子%の範囲である。このように主相に含まれる酸素量が0.3〜1.3原子%の範囲にあることによって、図3に示すように、保磁力が高い希土類磁石を得ることができる。この希土類磁石の具体例を試料1−1から試料1−6として後述する表1に示す。なお、この希土類磁石には、主相、第2相の他に主相よりもホウ素(B)の含有量が高いB−rich相を第3相として含んでいてもよい。
(a)高周波真空溶解炉にてNd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08合金を溶解し、水冷鋳型に鋳込んで厚さ10mmの板状の鋳造合金を作製した(S01)。
(b)上記鋳造合金をジョークラッシャーにより粗粉砕後、水素炉を用いて水素分圧約1気圧(約102kPa)の水素ガス雰囲気中、100℃で5時間の水素吸蔵処理を行った(S02)。なお、ここでは1気圧は概ね100kPaと概算している。
(c)その後引き続き炉内を排気し、1Paの真空中、500℃で10時間の水素放出処理を行った(S03)。
(d)その後炉内に酸素ガスを導入して酸素分圧を100Paとし、処理温度として150℃〜650℃の範囲で、表1に示す試料1−1から試料1−6の各条件下で10時間の酸素拡散処理を行って、種々の酸素含有量を有する希土類合金を得た(S04)。
(e)各合金を窒素雰囲気中でディスクミルおよびジェットミルにより粉砕を行い、平均粒径4μmの粉末とした(S05)。
(f)次に磁場プレス機を用いて成形圧力49MPa(500kgf/cm2)、印加磁場15kOeの条件で外径15mmφx高さ15mmの円柱形に成形した(S06)。
(g)成形品を真空加熱炉を用いて、1080℃で2時間の焼結処理を行った後、600℃で2時間の熱処理を行った(S07)。
(h)以上の各処理によって希土類磁石を得た(S08)。
比較例1の希土類磁石の製造方法について説明する。比較例1の希土類磁石の製造方法では、実施の形態1の希土類磁石の製造方法において酸素拡散処理を行わなかった場合(比較1−1)、酸素拡散処理を行ったものの1.3原子%を超える過剰な酸素がR2T14B相内に導入された場合(比較1−2,比較1−3)についての酸素拡散処理条件と磁気特性の調査結果を表1に示す。表1から分かるように、比較1−1〜1−3では、保磁力が14.8〜16.4kOeと小さい。
本発明の実施の形態2に係る希土類磁石の製造方法について表2を用いて説明する。この希土類磁石の製造方法は、実施の形態1に係る希土類磁石の製造方法と比較すると、酸素拡散工程を除く各工程について同一の条件で行われているが、酸素拡散工程における酸素分圧と処理温度を表2に示すように種々変化させた点で相違する。
(a)高周波真空溶解炉にてNd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08合金を溶解し、水冷鋳型に鋳込んで厚さ10mmの板状の鋳造合金を作製した(S01)。
(b)上記鋳造合金をジョークラッシャーにより粗粉砕後、水素炉を用いて水素分圧約1気圧(約102kPa)の水素ガス雰囲気中、100℃で5時間の水素吸蔵処理を行った(S02)。
(c)その後引き続き炉内を排気し、1Paの真空中、500℃で5時間の水素放出処理を行った(S03)。
(d)その後炉内に酸素ガスを導入して酸素分圧を30〜500Paとし、150℃〜650℃で2時間の範囲で酸素拡散処理を行って、種々の酸素含有量を有する希土類合金を得た(S04)。
(e)上記各希土類合金を窒素雰囲気中でディスクミルおよびジェットミルにより粉砕を行い、平均粒径4μmの粉末とした(S05)。
(f)次に磁場プレス機を用いて成形圧力49MPa、印加磁場15kOeの条件で外径15mmφx高さ15mmの円柱形を成形した(S06)。
(g)成形品を真空加熱炉を用いて、1080℃で2時間の焼結処理を行った後、600℃で2時間の熱処理を行った(S07)。
(h)以上の各工程によって希土類磁石を得た(S08)。
比較例2の希土類磁石の製造方法について説明する。この比較例2の希土類磁石の製造方法では、実施の形態2に係る希土類磁石の製造方法において酸素分圧が30Paよりも低い場合(比較2−1)、処理温度が150℃よりも低い場合(比較2−2)、酸素分圧が500Paよりも高い場合(比較2−3)、処理温度が650℃よりも高い場合(比較2−4)、酸素分圧が30Paより低いと共に処理温度が150℃より低い場合(比較2−5)、酸素分圧が30Paより低いと共に処理温度が650℃より高い場合(比較2−6)、酸素分圧が500Paより高いと共に処理温度が150℃より低い場合(比較2−7)、酸素分圧が500Paより高いと共に処理温度が650℃より高い場合(比較2−8)について、R2T14B相内の酸素量の関係を調べた結果を表2に示す。表より比較2−1、2−2、2−5、2−7の場合、R2T14B相内に導入される酸素が不足することがわかる。また、比較2−3では、R2T14B相内に導入される酸素が過剰となる。また、比較2−4、2−6、2−8では著しい酸化が生じてR2T14B相に多量の酸素が入り込む。
本発明の実施の形態3に係る希土類磁石の製造方法について説明する。この希土類磁石の製造方法では、実施の形態1に係る希土類磁石の製造方法と比較すると、酸素拡散処理工程以外の各工程の条件は同じであるが、酸素拡散処理工程における条件が表3に示すように種々変化させている点で相違する。
(a)高周波真空溶解炉にてNd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08合金を溶解し、水冷鋳型に鋳込んで厚さ10mmの板状の鋳造合金を作製した(S01)。
(b)上記鋳造合金をジョークラッシャーにより粗粉砕後、水素炉を用いて水素分圧約1気圧(約102kPa)の水素ガス雰囲気中、100℃で5時間の水素吸蔵処理を行った(S02)。
(c)その後引き続き炉内を排気し、1Paの真空中、500℃で5時間の水素放出処理を行った。
(d)その後、雰囲気条件として、加熱炉内を1Pa以下まで排気した後、次の4種類の条件についてそれぞれ400℃で2時間の酸素拡散処理を行って、種々の酸素含有量を有する合金を得た(S04)。
(試料3−1)窒素と酸素を99.9:0.1の割合で合わせた混合ガスを炉内に導入し、全圧1気圧(酸素分圧:100Pa)の状態で毎分0.5リットルの量を炉内に連続的に流す。この場合には窒素分圧は101200Paである。
(試料3−2)アルゴンと酸素を99.9:0.1の割合で合わせた混合ガスを炉内に導入し、全圧1気圧(酸素分圧:100Pa)の状態で毎分0.5リットルの量を炉内に連続的に流す。この場合にはアルゴンの分圧は101200Paである。
(試料3−3)酸素を炉内に導入し、炉内の圧力を調整して酸素分圧を100Paとする。この場合には雰囲気ガスとして酸素以外の成分を含まず、全圧も100Paである。
(試料3−4)窒素と酸素を1:9の割合で合わせた混合ガスを炉内に導入するとともに、炉内の圧力を調整して酸素分圧を100Paとする。この場合には窒素分圧は約11.1Paであり、全圧111.1Paとなる。
(e)各合金を窒素雰囲気中でディスクミルおよびジェットミルにより粉砕を行い、平均粒径4μmの粉末とした(S05)。
(f)次に磁場プレス機を用いて成形圧力49MPa、印加磁場15kOeの条件で外径15mmφx高さ15mmの円柱形を成形した(S06)。
(g)成形品を真空加熱炉を用いて、1080℃で2時間の焼結処理を行った後、600℃で2時間の熱処理を行った(S07)。
(h)以上の各処理によって希土類磁石を得た(S08)。
本発明の実施の形態4に係る希土類磁石の製造方法について説明する。この希土類磁石の製造方法は、実施の形態1に係る希土類磁石の製造方法と比較すると、表4に示すように、水素吸蔵工程の条件を種々変化させている点で相違する。この希土類磁石の製造方法では、水素吸蔵処理条件が適当であるため、R2T14B相内に生じるマイクロクラックが適当に分布し、その後の酸素拡散工程において、酸素を効率よくR2T14B相内に導入することができる。
(a)高周波真空溶解炉にてNd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08合金を溶解し、水冷鋳型に鋳込んで厚さ10mmの板状の鋳造合金を作製した(S01)。
(b)上記鋳造合金をジョークラッシャーにより粗粉砕後、水素炉を用いて水素分圧約3kPa〜1気圧(約102kPa)の水素ガス雰囲気中、表4に示すように100℃〜650℃の範囲の種々の条件下で5時間の水素吸蔵処理を行った(S02)。
(c)その後引き続き炉内を排気し、1Paの真空中、500℃で5時間の水素放出処理を行った(S03)。
(d)その後炉内に酸素を導入して酸素分圧100Paとした後、400℃で1時間、上記希土類合金を加熱した(S04)。
(e)各合金を窒素雰囲気中でディスクミルおよびジェットミルにより粉砕を行い、平均粒径4μmの粉末とした(S05)。
(f)次に磁場プレス機を用いて成形圧力49MPa、印加磁場15kOeの条件で外径15mmφx高さ15mmの円柱を成形した(S06)。
(g)成形品を真空加熱炉を用いて、1080℃で2時間の焼結処理を行った後、600℃で2時間の熱処理を行った(S07)。
(h)以上の工程によって希土類磁石を得た(S08)。
比較例4の希土類磁石の製造方法について説明する。比較例4では、実施の形態4の希土類磁石の製造方法の水素吸蔵工程において、水素分圧が3kPaよりも低い場合(比較4−1)、処理温度が100℃よりも低い場合(比較4−2)、水素分圧が1気圧(約102kPa)より高い場合(比較4−3)の各場合について行った。得られた希土類磁石のR2T14B相内の酸素量の関係を調べた結果を表4に示す。表4より、比較4−1、4−2では水素脆化の力が弱くR2T14B相に充分な量のマイクロクラックが入らないため、酸素拡散処理工程においてR2T14B相内に酸素が充分に行き渡らない結果となる。また、比較4−3では、水素脆化の力が強すぎてR2T14B相に過剰なクラックが発生し、後の粉砕工程において著しく微粉化してしまい、所定の粒径(平均4μm)の粉末を得ることができなかった。
本発明の実施の形態5に係る希土類磁石及びその製造方法について説明する。この希土類磁石は、実施の形態1に係る希土類磁石と比較すると、表5に示すように、各試料5−1〜5−4の組成式が異なっている点で相違する。各試料の組成は、次の通りである。
(試料5−1)Nd0.14Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08
(試料5−2)Nd0.13Pr0.01Dy0.01Fe0.76Co0.01B0.08
(試料5−3)Nd0.14Dy0.01Fe0.77B0.08
(試料5−4)Nd0.13Pr0.01Dy0.01Fe0.77B0.08
(a)最初に原料を高周波真空溶解炉により溶解し、水冷鋳型に鋳込んで厚さ10mmの板状の鋳造合金をそれぞれ作製した(S01)。
(b)次に上記鋳造合金をジョークラッシャーにより粗粉砕後、水素炉を用いて水素分圧約1気圧(約102kPa)の水素ガス雰囲気中、100℃で5時間の水素吸蔵処理を行った(S02)。
(c)その後引き続き炉内を排気し、1Paの真空中、500℃で5時間の水素放出処理を行った(S03)。
(d)その後炉内に酸素ガスを導入して酸素分圧を100Paとし、400℃で1時間の酸素拡散処理を行った(S04)。
(e)得られた希土類合金を窒素雰囲気中でディスクミルおよびジェットミルにより粉砕を行い、平均粒径4μmの粉末とした(S05)。
(f)次に磁場プレス機を用いて成形圧力49MPa、印加磁場15kOeの条件で外径15mmφx高さ15mmの円柱形を成形した(S06)。
(g)成形品を真空加熱炉を用いて、1080℃で2時間の焼結処理を行った後、600℃で2時間の熱処理を行った(S07)。
(h)以上の各処理によって希土類磁石を得た(S08)。
比較例5の希土類磁石について説明する。この比較例5の希土類磁石では、実施の形態5の製造方法において、Nd0.14Dy0.01Fe0.77B0.08合金について酸素拡散処理を行わなかった場合(比較5−1)の磁石の耐蝕性を調べた結果を表5に示す。表より、錆に由来する環境試験後の重さの増加量が比較5−1では55.2mgと多いことがわかる。
Claims (11)
- R2T14B相(RはNd,Pr,Dy,Tb,Hoの元素群から選ばれる1種以上、TはFe,Co,Niの元素群から選ばれる1種以上)を有する希土類磁石であって、
前記R2T14B相は、前記R2T14B相全体について酸素を0.3原子%〜1.3原子%含有することを特徴とする希土類磁石。 - 前記R2T14B相は、RTBO化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石。
- 前記希土類磁石は、前記R2T14B相を主相として含み、その他の相として少なくともRの含有率が前記R2T14B相より高いR−rich相を含み、該R−rich相は、その一部にCoを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類磁石。
- 前記希土類磁石は、焼結型磁石であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
- R2T14B相(RはNd,Pr,Dy,Tb,Hoの元素群から選ばれる1種以上、TはFe,Co,Niの元素群から選ばれる1種以上)を有する希土類合金の製造方法であって、
組成式RxTyBz(0.05≦x≦0.30、0.50≦y≦0.90、0.01≦z≦0.30,x+y+z=1.00)の希土類合金を作製する工程と、
水素ガスを含む雰囲気中で前記希土類合金を加熱する水素吸蔵工程と、
大気圧よりも低い圧力雰囲気で前記希土類合金を加熱する水素放出工程と、
酸素ガスを含む雰囲気中で前記希土類合金を加熱する酸素拡散工程と
を含むことを特徴とする希土類磁石の製造方法。 - 前記酸素拡散工程は、酸素分圧が30〜500Paの範囲内の雰囲気中で、150〜650℃の温度で前記希土類合金を加熱する工程であることを特徴とする請求項5に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記水素吸蔵工程は、水素分圧が3kPa〜1気圧の範囲内の雰囲気中で50〜650℃で前記希土類合金を加熱する工程であって、
前記水素放出工程は、全圧が10Pa以下で、100〜650℃の範囲内の温度で前記希土類合金を加熱する工程であることを特徴とする請求項5又は6に記載の希土類磁石の製造方法。 - 前記酸素拡散工程では、雰囲気ガスの90%以上が酸素であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。
- 前記酸素拡散工程では、雰囲気ガスに含まれている酸素以外のガスであって、前記希土類合金と反応性を有する不純物ガスの前記酸素に対する割合が10%以下であることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の希土類合金の製造方法。
- 前記酸素拡散工程を行った後、前記希土類合金を粉砕して希土類合金粉末とする粉末製造工程と、
前記希土類合金粉末を磁場中で加圧成形して希土類合金成形体を形成する成形工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。 - 前記希土類合金成形体を焼結して希土類合金焼結体とする焼結工程と、
前記希土類合金焼結体を熱処理する熱処理工程と
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の希土類磁石の製造方法。
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