JP4336812B2 - 細胞に発現する表面抗原を迅速に同定するための分析方法 - Google Patents

細胞に発現する表面抗原を迅速に同定するための分析方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞を分析する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、抗体およびマーカーを用いて、細胞内状態と細胞の表面の状態とを精確に対応付けて分析する方法に関する。本発明の方法は、たとえば、細胞生物学研究、臨床検査、診断等に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
細胞は機能、形態などによって幾つもの種類に分類されるが、これらの細胞はそれぞれの分類に応じて特定の表面抗原を発現している。細胞に発現する表面抗原を同定し、その発現量、発現時期などを調べることによって、細胞の種類、分化の程度、異常の度合いなどを知ることができる。また、同定された表面抗原を使って、特定の細胞を単離することが可能である。このように、表面抗原に関する情報は、細胞生物学的な重要性のみならず、細胞を利用する工学分野においても重要な意味をもっている。
【0003】
従来、表面抗原の同定ならびに分析には、それらを特異的に認識するような抗体を用い、膜画分の結合試験、免疫染色法などを行うことによって調べられてきた。また、蛍光標識された特異的抗体を細胞に結合させた後、フローサイトメトリーによって分析することで表面抗原の発現頻度を調べることも、近年、頻繁に行われるようになった。このようなタンパク質レベルでの膜抗原の分析には、モノクローナル抗体の作製技術が大きな貢献をなしてきた。それと同時に、フローサイトメーター、各種の顕微鏡の進歩およびに普及によって表面抗原の同定を行うことが可能になった。しかしながら、表面抗原の同定は手間と時間のかかる作業であり、多種類の抗原について網羅的かつ迅速に調べたり、未知の表面抗原を探索しようとする場合には困難が伴う。
【0004】
従来の分析技術は、発現する表面抗原がすでに知られている場合であったり、また分析対象となる表面抗原の種類が小数に限られている場合にのみ有効な手段である。ところが、表面抗原が未だに知られていない場合、多種類の表面抗原について分析を行う必要のある場合なども少なくない。例えば、近年、生体のさまざまな組織で見出されてきた体性幹細胞、初期胚から樹立される胚性幹細胞などでは、いまだに表面抗原に関する知識が十分に得られていないのが現状である。これらの幹細胞は再生医療を行うための細胞源としてきわめて重要であるが、表面抗原に関する情報が乏しいため、必要とする幹細胞の分離、精製、同定、あるいは、分化状態を正確に把握するための手段の確立が遅れている。このような問題が、幹細胞を利用する再生医療の実現にとって大きな障壁となっている。
【0005】
未知の表面抗原を同定しようとする場合、これまでは、発現することが予測される表面抗原に対する抗体を一つ一つ用意し、それらの抗体を使って各々独立なアッセイを行うことによって調べなければならなかった。ところが、このような方法によって、十分な情報がない表面抗原を見つけ出すことは、手間と時間がかかり、きわめて困難である。
【0006】
一方、同時に発現されている多種類の抗原を一度に分析したい場合にも、従来の分析技術には困難が伴う。免疫染色、フローサイトメトリーで同時に分析できる抗原の数は、同時に使用可能な蛍光染料の種類ならびに検出装置の制約を受け、一般には、数種類が限度である。たとえば、白血病のような造血器腫瘍細胞の分類が臨床検査として行われ、それに基づく診断結果が治療成績ならびに予後を大きく左右すると云われている。そこで、多数のモノクローナル抗体を用いた詳細な表面抗原タイピングが免疫血清学的検査として行われている。指標とする抗原の種類は、国あるいは医師によって異なるが、一般には、数種類〜60種類程度の抗体パネルを選定する。現在、フローサイトメトリーによって一つ一つの抗原あるいは多くても2、3種類の抗原を同時に分析することが行われるのみであり、多数の抗体を指標に、しかも多数の検体を分析するような臨床検査の現場では、より簡便にしかもより多くの表面抗原を分析できる手法が求められる。さらに、サイトグラムから適切な測定条件を設定するさい、検査を行う者の経験的な判断によるところが大きい上に、最適な分析条件を検体ごとに決定しておく必要があり、検査結果の客観性にも問題がある。また、著しい細胞形態の変化を伴うような場合に細胞間の比較が困難であったり、蛍光強度の定量的な比較が難しいなど、多くの問題を抱えている。
【0007】
また、細胞の表面の状態(例えば、表面抗原の発現の有無/量など)と細胞内部の状態とを相関付ける試みがなされているが、従来の方法では、2種類以上のプローブを別々の時期に用いてアッセイする必要があることから、それら複数のプローブに基づくデータが必ずしも1対1に対応するとは言えず、正確な相関付けが困難であった。したがって、複数のプローブまたはマーカーに由来する情報を精確に相関付けることができるアッセイ方法の開発が待ち望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、細胞の表面抗原を簡便におよび/または大量に分析することができる方法を提供することを課題とする。本発明はまた、細胞に関連する複数の情報を精確に1対1で相関付けることができる分析方法を提供することも課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プレート(例えば、マイクロアレイ)に表面抗原に対する抗体を固定し、プレート上での抗体と細胞との反応を観察することによって上記課題を解決した。さらに、プレート上で抗体に結合した細胞の状態に関連するマーカーを検出し、そのマーカーと抗体とを相関付けることによって上記課題を解決した。
【0010】
従って、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1) 細胞を分析する方法であって、
(a)表面抗原に対する抗体が固定されたプレートを提供する工程;
(b)上記プレート上の上記抗体と、細胞とを、上記細胞の表面抗原と上記抗体とが特異的な相互作用をするに十分な条件下で接触させる工程;および
(c)上記抗体と上記細胞との相互作用のレベルを分析する工程、
を包含する、方法。
【0012】
(2)
(d)上記細胞の状態に関連するマーカーを検出し、上記マーカーと上記抗体とを相関付ける工程、
をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【0013】
(3) 上記プレートはマイクロアレイである、請求項1に記載の方法。
【0014】
(4) 上記(b)工程において、上記抗体と相互作用する上記細胞が単一の細胞で存在するように処理される、請求項1に記載の方法。
【0015】
(5) 上記表面抗原は、CD、細胞接着因子、膜内輸送タンパク質、細胞増殖因子レセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【0016】
(6) 上記マーカーは、mRNA、タンパク質、改変タンパク質、糖鎖および代謝産物からなる群より選択される物質に対して特異的に相互作用する因子である、請求項1に記載の方法。
【0017】
(7) 上記マーカーは、細胞の内部状態に関連する、請求項1に記載の方法。
【0018】
(8) 上記マーカーは細胞内に存在する、請求項1に記載の方法。
【0019】
(9) 上記マーカーは、生化学的手段、化学的手段、可視光、紫外線、赤外線、蛍光、化学発光、燐光、放射能、磁気および電気信号からなる群より選択される手段で検出される、請求項1に記載の方法。
【0020】
(10) 上記プレートは、金属、ガラス、高分子、セラミックスなどの一種以上を含む基板上に複数の抗体が10μm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されたマイクロアレイである、請求項1に記載の方法。
【0021】
(11) 上記細胞は同種または異種である、請求項1に記載の方法。
【0022】
(12) 上記細胞は、複数種類の細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【0023】
(13) 上記細胞は、各種臓器の正常細胞、疾患をもつ細胞のような分化細胞ならびにそれらの前駆細胞、胚性幹細胞、胎児由来幹細胞、未分化細胞、樹立系細胞または遺伝子の改変された細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【0024】
(14) 上記細胞の検出は、目視、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置のいずれかあるいは複数種、あるいは化学的または生化学的マーカーを手段として行われる、請求項1に記載の方法。
【0025】
(15) 上記方法により表面抗原がタイピングされる、請求項1に記載の方法。
【0026】
(16) 上記分析は、未知の細胞表面抗原を見出すためおよび/または既知の表面抗原の発現プロファイルを調べるために行われる、請求項1に記載の方法。
【0027】
(17) 上記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【0028】
(18) 細胞を分析するための、抗体が固定されたプレート。
【0029】
(19) 上記プレートは、マイクロアレイである、請求項18に記載のプレート。
【0030】
(20) 請求項18に記載のプレートと、上記プレートを測定する装置とを含む、細胞分析システム。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0032】
(用語および一般技術)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および一般的技術を説明する。
【0033】
(基板/プレート/チップ/アレイ)
本明細書において使用される「プレート」とは、抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明では、プレートは、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面にもつガラス基板を基材とすることが好ましい。
【0034】
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0035】
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
【0036】
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0037】
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の生体分子(例えば、DNA、抗体のようなタンパク質)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望の抗体のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される抗体は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の抗体が固定され得る。
【0038】
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の生体分子(例えば、抗体のようなタンパク質)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子まで生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える生体分子が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、生体分子(例えば、抗体のようなタンパク質)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞と特異的に結合する因子は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
【0039】
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある生体分子のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
【0040】
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
【0041】
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
【0042】
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
【0043】
マイクロアレイについては、秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」、M.F.Templin,et al.,Protein microarray technology, Drug Discovery Today, 7(15), 815−822(2002)に広く概説されている。
【0044】
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
【0045】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0046】
抗体マイクロアレイの作製には、ガラス、金属、高分子、セラミックスなどの材料あるいはそれらの組み合わせたものを基板として用いることができる。たとえば、セルロース、酢酸セルロース、キトサンのような多糖類、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)など合成高分子からなる膜の表面には水酸基が高密度に存在するため、抗体の固定化に用いることができる。一方、アルカンチオールのマイクロパターン化単分子膜などを表面にもつ金蒸着ガラス基板は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などの適当な官能基をマイクロパターン配置することが可能であり、これらを使って抗体の化学固定が可能である。これらの基板表面を活性化したり、縮合剤等を併用することで抗体を固定化する。多種類の抗体を微小なスポット状に固定することで抗体マイクロアレイが得られる。
【0047】
(細胞)
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
【0048】
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した細胞(たとえば、本明細書において記載される融合細胞、再プログラム化された細胞など)もまた、幹細胞であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある。組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。従って、組織幹細胞は多能性のレベルが低い。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。本明細書において使用される場合は、幹細胞は好ましくは胚性幹細胞であり得るが、状況に応じて組織幹細胞も使用され得る。
【0049】
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
【0050】
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないをいう。従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
【0051】
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。本発明では、樹立された幹細胞を使用することは、宿主から新たに幹細胞を採取するという工程を回避することができるので好ましい。
【0052】
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。
【0053】
本明細書において細胞の「表面抗原」とは、細胞の表面に存在する、抗原性を有する物質またはその改変体をいう。本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。表面抗原としては、例えば、タンパク質、糖タンパク質、糖脂質、糖鎖、リポ多糖などが挙げられるがそれらに限定されない。そのような例としては、例えば、CD、細胞接着因子、細胞増殖因子レセプター、細胞外マトリクス、サイトカインレセプターなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0054】
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。
【0055】
本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
【0056】
サイトカインには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類が含まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
【0057】
本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質をいう。細胞外マトリクスは、組織の支持だけでなく、すべての体細胞の生存に必要な内部環境の構成に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞、内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖−タンパク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオグリカンを含む軟骨基質が産生され、骨では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。本発明において用いられる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられるがそれに限定されない。本発明において用いられる場合、細胞外マトリクスは、好ましくは、宿主の自己細胞を呼び寄せる活性を持っていることが有利である。
【0058】
本明細書において「細胞接着分子」(Cell adhesion molecule)または「接着分子」とは、互換可能に使用され、2つ以上の細胞の互いの接近(細胞接着)または基質と細胞との間の接着を媒介する分子をいう。一般には、細胞と細胞の接着(細胞間接着)に関する分子(cell−cell adhesion molecule)と,細胞と細胞外マトリックスとの接着(細胞−基質接着)に関与する分子(cell−substrate adhesion molecule)に分けられる。本発明の組織片では、いずれの分子も有用であり、有効に使用することができる。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞−基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞側のタンパク質(例えば、インテグリンなど)も包含され、タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介する限り、本明細書における細胞接着分子または細胞接着分子の概念に入る。
【0059】
細胞の結合試験には、対象となる細胞を細胞培養用培地、酸緩衝溶液などの適当な媒体に浮遊させ、これをマイクロアレイ上に滴下することで表面抗原と固定化抗体の抗原−抗体反応を生起させる。数分から1時間程度の後、相互作用していない細胞を洗浄により除去する。このようにして得た抗体マイクロアレイに細胞の結合したスポットを種々の計測法を利用して検出する。
【0060】
被検体に種々の細胞の混在が想定される場合には、分析対象となる細胞の結合したスポットを見極めるため、既に知られている細胞内マーカーに対する抗体を用いて各スポット上の細胞を免疫染色する。これによって染色される細胞がどのスポットに結合しているかを知ることで、対象とする細胞種に発現する表面抗原を同定する。
【0061】
(生化学および免疫化学)
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0062】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0063】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。
【0064】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0065】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
【0066】
本明細書において用いられる用語「抗体」とは、免疫反応において,抗原の刺激により生体内に作られ抗原と特異的に結合するタンパク質またはその改変体をいい、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含むがそれらに限定されない。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
【0067】
したがって、本明細書において「表面抗原に対する抗体」とは、少なくとも目的とする表面抗原に対して親和性を示す抗体をいう。そのような抗体は、通常、下記に説明するように、表面抗原を適切な動物に投与して免疫することによって生成されるが、下記に説明するように、既知の情報を元に化学的または遺伝子工学的に合成してもよい。あるいは、そのような抗体は一部、市販されており、そのような市販された抗体を用いてもよい。
【0068】
本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」は、同質な抗体集団を有する抗体(組成物)をいう。この用語は、それが作製される様式によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子ならびにFab分子、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、およびもとのモノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当該分野で周知である。
【0069】
(抗体を産生する方法)
本発明において用いられる抗体の作製は、当該分野において周知である。抗体には、市販のものを用いてもよい。例えば、ポリクローナル抗体の作製は、ポリペプチドの全長または部分断片精製標品、タンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチド、複合糖鎖(例えば、表面抗原)などを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
【0070】
抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに2〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)]等で確認する。
【0071】
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクローナル抗体を分離、精製することができる。モノクローナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリドーマの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。このようにして得たハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体は、本発明の細胞分析などの種々の目的に使用することができる。
【0072】
抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から作製することができる。ある抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリーまたは抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリドーマ細胞)から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリARNA))から、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、その配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、またはその特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得ることができる。PCRによって作製された増幅された核酸は、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
【0073】
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,MolecularCloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,CurrentProtocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照のこと。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生成するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し得る。
【0074】
さらに、適切な抗原特異性のマウスなどのある動物抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851−855(1984);Neubergerら、Nature312:604−608(1984);Takedaら、Nature 314:452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
【0075】
単鎖抗体を製造する場合、単鎖抗体の産生に関する記載された公知の技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science242:423−42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら、Nature334:544−54(1989))が、利用され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraら、Science242:1038−1041(1988))。
【0076】
本発明において用いられる抗体は、当該分野で公知の任意の抗体合成方法によって、化学合成または好ましくは組換え発現技術によって産生され得る。
【0077】
本発明において用いられる抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明において用いられる抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターの構築のために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)をコードするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクターにクローニングされ得る。
【0078】
この発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移入され、次いで、このトランスフェクトされた細胞は、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
【0079】
本明細書において「特異的な相互作用をするに十分な条件」とは、ある2つの分子が存在した場合に、一方の分子と他方の分子との間の相互作用が生じる条件をいう。そのような条件は、通常、抗体および細胞の場合、その抗体と、その細胞の目的とする表面抗原との間の抗原抗体反応が生じるに十分な条件であり得る。そのような条件は、当業者が容易に決定することができ、通常用いられる緩衝液(例えば、塩を適量含むPBSなど)を室温で用いることなどが挙げられるがそれらに限定されない。そのような条件を設定する際には、例えば、緩衝剤の種類および濃度、塩の種類および濃度、温度、界面活性剤の有無および濃度、pH、時間などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0080】
(検出)
本発明の細胞分析方法では、細胞またはそれに相互作用する物質に起因する情報を検出することができる限り、種々の検出方法および検出手段を用いることができる。そのような検出方法および検出手段としては、例えば、目視、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング、電気信号、化学的または生化学的マーカーのいずれかあるいは複数種を用いる方法および手段を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0081】
本発明において「抗体と細胞との相互作用」とは、抗体と細胞上の表面抗原との相互作用をいい、そのレベルおよび頻度を測定することによって、その細胞がある特定の表面抗原を発現しているかどうかおよびその量を調べることができる。表面抗原の作用が既知の場合は、そのような表面抗原の有無および/または量を調べることによって、細胞の特定の情報を知ることができる。そのような情報の相関性は、例えば、生体機能分子データブック(中外医学社)上出利光 他編著(2001)などを参照して決定することができる。そのようなレベルの表示単位は、測定装置または測定方法によって変動し、物理学的(例えば、電気信号強度)、化学的(例えば、反応した物質の濃度など)または生化学的(生化学的アッセイに使用した酵素の濃度、Ki値など)あるいはそれらの組み合わせで表示することができる。
【0082】
本明細書において「抗体上に細胞が単一の細胞で存在するような処理」は、抗体と細胞とが相互作用した後で、相互作用しなかった細胞をリンスして除くことによって達成され得る。本発明では、驚くべきことに、通常のリンスの工程により、抗体と相互作用した細胞が単一の層の状態で存在することが明らかになった。したがって、本発明は、細胞が単一の層で並ぶような方法およびそれによって調製される細胞チップも包含する。
【0083】
(マーカー)
本明細書において「マーカー」とは、目的とする物質または状態についてレベルまたは頻度を反映する因子(例えば、物質、エネルギーなど)をいう。そのようなマーカーとしては、例えば、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物、代謝産物、レセプター、リガンド、抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0084】
したがって、本明細書において「細胞の状態に関連するマーカー」とは、細胞の状態を示す細胞内因子(例えば、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物(例えば、mRNA、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質)、代謝産物、レセプターなど)に対して相互作用する因子(例えば、リガンド、抗体など、相補的な核酸)などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなマーカーは、好ましくは、目的とする因子に対して特異的に相互作用することが有利であり得る。そのような特異性は、例えば、類似の分子よりも目的の分子に対する相互作用の程度が有意に高い性質を言う。本発明では、好ましくは、そのようなマーカーは、細胞内部に存在する。本発明では、細胞内に存在するマーカーが細胞外にある表面抗原と相関付けて分析することができるようになったという格別の効果が奏される。
【0085】
本明細書において「相互作用」には、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0086】
本明細書において「相互作用のレベル」とは、抗体と細胞との相互作用について言及する場合、細胞の表面上に存在する表面抗原と抗体との抗原抗体反応を含む相互作用の程度または頻度をいう。そのような相互作用のレベルは、当該分野において周知の方法によって測定することができる。そのような方法としては、例えば、実際に相互作用し固定状態にある細胞の数を、例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡などを利用して、直接または間接的に(例えば、反射光強度)計数すること、細胞に特異的なマーカー、抗体、蛍光標識などで染色しその強度を測定することなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような測定値から、例えば、あるスポットにおいて実際に抗体に結合する細胞の個数または頻度を算出することができる。
【0087】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、細胞分析法を使用することができる。
【0088】
そのようなスクリーニングとしては、例えば、ある表面抗原および必要に応じてある内部情報を有することが判明したプレート上の細胞に対して、調べる対象である物質またはそのライブラリーを相互作用させて、目的の結果が現れる物質を選択するような方法が企図される。
【0089】
(発明の要旨)
以下に本発明の要旨を記載する。
【0090】
各種の幹細胞、分化細胞に発現する未知の表面抗原を見つけ出したり、分化段階に応じて発現することが知られている多種類の表面抗原を指標に細胞の分析を行うための方法を提供するため、数種類から数千種類の多種類の抗体を微小な基板上に配列固定することで抗体マイクロアレイを作製する。このとき用いる基板は細胞の検出に適したものが選択される。次に、抗体マイクロアレイの表面で被検細胞の結合試験を行う。固定化された抗体との親和性をもつ抗原が細胞表面に発現している場合には、そのスポットに細胞の結合が起こる。細胞の結合したスポットを各種の方法で検出し、各スポットに固定化した抗体の種類と対応させることで、その細胞に発現する複数の表面抗原を同時に同定する。分析対象となる被検細胞が複数種類の細胞からなる混合物であるような場合には、既知の細胞内マーカーを免疫染色することで、細胞表面抗原との対応付けを行う。
【0091】
本発明の特徴でとりわけ強調すべき点は、上述のように、細胞内マーカーと未知の細胞表面抗原の対応付けが可能なことであり、同様の分析を他の方法によって簡便に行うことは不可能である。
【0092】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0093】
1つの局面において、本発明は、細胞を分析する方法に関する。この方法は、(a)表面抗原に対する抗体が固定されたプレートを提供する工程;(b)該プレート上の該抗体と、細胞とを、該細胞の表面抗原と該抗体とが特異的な相互作用をするに十分な条件下で接触させる工程;および(c)該抗体と該細胞との相互作用のレベルを分析する工程、を包含する。
【0094】
ここで、表面抗原に対する抗体は、市販のものを用いてもよく、所望の表面抗原に対する抗体を調製してもよい。そのような表面抗原もまた、市販のものを用いてもよく、所望の表面抗原を調製してもよい。そのような調製は、化学合成、生化学的生産、遺伝子工学的生産などの任意の方法を用いて行うことができる。
【0095】
抗体をプレート(例えば、マイクロアレイ)に固定する工程もまた当業者は容易に実施することができる。例えば、基板表面を活性化したり、縮合剤等を併用することで抗体を固定化することができる。
【0096】
表面抗原と抗体とが特異的な相互作用をするに十分な条件下で接触させることもまた、当業者は、本明細書の記載を元に容易に実施することができる。例えば、抗体が固定されたチップを緩衝液(例えば、PBSなど)に浸し、それに細胞を加えることによってそのような接触条件が達成され得る。
【0097】
抗体と細胞との間の相互作用のレベルの分析は、当該分野において公知の方法または装置を用いて行うことができる。分析手段としては、例えば、生化学的手段、可視光、表面プラズモン共鳴(SPR)、紫外線、赤外線、蛍光、化学発光、燐光、放射能、磁気または電気信号などを手段として検出する方法が挙げられるがそれらに限定されない。生化学的手段としては、酵素−基質、抗体抗原反応、リガンドレセプター反応などを利用する手段が挙げられるがそれらに限定されない。化学的手段としては、例えば、特定の官能基との反応性などが挙げられるがそれらに限定されない。可視光、紫外線、赤外線などの測定は、通常光の測定に用いられる手段(センサー)を用いて行うことができる。蛍光、化学発光、燐光などは、そのような信号を発する化学物質で細胞などの標的を標識し、その光を測定することができる。放射能、磁気、電気信号などもまた、種々の機器(ガイガーカウンター、電磁気測定器、電流測定器など)を用いて測定することができる。
【0098】
好ましい実施形態において、本発明の細胞分析方法は、(d)前記細胞の状態に関連するマーカーを検出し、該マーカーと前記抗体とを相関付ける工程をさらに包含する。細胞の状態に関連するマーカーは、既知のものでもよく、未知のものでもよい。既知のものを使用する場合は、当該分野において知られた情報を利用することができる。そのような情報については、本明細書の記載および/または生体機能分子データブック(中外医学社) 上出利光 他編著(2001)などの書籍を参照することができる。相関付けは、当業者は、その目的に応じ適宜行うことができる。例えば、ある表面抗原とあるマーカーとがほぼ同じ挙動を示す場合、一方の因子(例えば、表面抗原)について細胞の状態がわかっている(例えば、分化の方向など)場合、他の因子(例えば、マーカー)についてもそのような状態を表すマーカーであるか否かを同定することができる。あるいは、一方の因子がある状態(分化の方向など)を示すことがわかっている場合であって、他の因子についてもある状態を示すことがわかっている場合(例えば、ある特定の代謝物を分泌する)、それら2つの因子が同じ挙動を示している場合は、2つの事象を相関付けることができる。
【0099】
好ましい実施形態において、本発明のプレートは、マイクロアレイの形態をとる。マイクロアレイを用いることによって、多数の細胞についての情報を同時に調査することができる。マイクロアレイの製造方法および使用方法は、当該分野において知られており、そのような方法は、本明細書において上述しており、下記非限定的実施例に具体的に説明される。
【0100】
好ましくは、本発明の(b)工程において、前記抗体と相互作用する前記細胞が単一の細胞で存在するように処理される。単一層を構成するような処理は、本発明において予想外なことに、通常の緩衝液中での接触およびリンスによって達成されることがわかった。したがって、そのような単一層の細胞がアレイのようなプレート上で達成されたことは、細胞の均一な分析および精確な分析を行うことにおいて有利であり得る。
【0101】
好ましい実施形態において、本発明において用いられる表面抗原は、CD、細胞接着因子、細胞増殖因子レセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択される。1つの好ましい実施形態では、表面抗原は、その正体が既知であるものが用いられる。別の好ましい実施形態では、表面抗原は、その正体が未知のものが使用される。未知のものを使用することによって、本発明の細胞分析方法により、その正体を解明することができる。そのような解明方法は、従来にはなく、本発明によって初めて達成することができたといえる。
【0102】
1つの実施形態において、本発明において用いられるマーカーは、mRNA、タンパク質、改変タンパク質、糖鎖および代謝産物からなる群より選択される物質に対して特異的に相互作用する因子であり得る。mRNAに対する因子としては、例えば、相補配列を有する核酸分子(例えば、DNA、RNAなど)などが挙げられ、タンパク質または改変タンパク質(改変タンパク質とは、タンパク質の改変体であり、例えば、糖鎖、脂質などで修飾されたものを含む)に対する因子としては例えば、抗体、レセプター、リガンド、基質などが挙げられ、糖鎖に対する因子としては、例えば、抗体、レクチンなどが挙げられ、代謝産物に対する因子としては、特異的に相互作用する物質(例えば、色素)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0103】
好ましい実施形態において、本発明において意図されるマーカーは、細胞の内部状態に関連するものであり得る。そのようなマーカーとしては、シグナル伝達カスケード上の分子、転写因子、核内レセプター、染色体、細胞骨格、微小管、それらの代謝物もしくは分泌物などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0104】
マーカーの検出手段としては、例えば、上記因子のほかに、例えば、生化学的手段、可視光、紫外線、赤外線、蛍光、化学発光、燐光、表面プラズモン共鳴(SPR)、放射能、磁気および電気信号などが挙げられるがそれらに限定されない。このような手段は、当業者に公知であり、本明細書において上述したような方法を適宜用いるか組み合わせて用いることができる。
【0105】
好ましい実施形態において、本発明において用いられるプレートは、金属、ガラス、高分子、セラミックスなどの一種以上を含む基板上に複数の抗体が10μm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されたマイクロアレイである。基板の材料は、上述のように抗体が固定され得る限りどのような材質でもよい。固定される抗体の数は、通常多いほうが好ましいが、測定技術の限界および物理的限界などの限界により、ある一定の上限があり得る。通常、少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含むことが好ましい。スポットの大きさは、通常10μm〜10mmであり得るが、細胞の大きさを考慮して適宜決定することができる。抗体固定の方法は、共有結合または他の相互作用が挙げられる。共有結合が好ましい。リンスなどによって解離することがほとんどないからである。
【0106】
好ましい実施形態において、使用される細胞は、同種または異種であり得、目的に応じて使い分けることができる。同種の細胞を用いる場合としては、例えば、異なる抗体に対する反応性を網羅的に観察する場合などが挙げられる。異種の細胞を用いる場合としては、例えば、実際の検体などの医療サンプルの分析をする場合などが挙げられるがそれらに限定されない。あえて複数種類の細胞を含ませることも可能である。そのような場合、複数の細胞の間の相互作用を観察することも可能である。
【0107】
好ましい実施形態において、本発明において用いられる細胞は、各種臓器の正常細胞、疾患をもつ細胞のような分化細胞ならびにそれらの前駆細胞、胚性幹細胞、胎児由来幹細胞、未分化細胞、樹立系細胞または遺伝子の改変された細胞を含む。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明の細胞分析における検出は、目視、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージングのいずれかあるいは複数種、あるいは化学的または生化学的マーカーを手段として行われる。そのような方法は、当該分野において周知であり、本明細書において上述したような方法を適宜使用して行うことができる。
【0109】
本発明の細胞分析方法を用いると、表面抗原がタイピングされる。ここで、「タイピング」とは、表面抗原のタイプを分類することを言う。したがって、本発明の細胞分析方法は、新たな表面抗原を分類すること、既知の表面抗原のさらなる解析などに用いることができる。そのような解析、同定は、従来技術では達成不可能であった。したがって、好ましい実施形態において、本発明の細胞分析は、未知の細胞表面抗原を見出すためおよび/または既知の表面抗原の発現プロファイルを調べるために行われる。ここで、「発現プロファイル」とは、ある遺伝子について言及するとき、その発現の挙動を表すプロファイルをいう。そのような発現プロファイルは、発現の挙動を複数点において調べることによって作成することができる。
【0110】
使用される抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。目的に応じてこれらの抗体は使い分けることができる。モノクローナル抗体が好ましい。ある特定の表面抗原のみを標的とすることができるからである。しかし、ポリクローナル抗体もまた、ある実施形態では有利に用いられる。例えば、いくつかの抗原を網羅的に1つのアドレスまたはスポットで観察したい場合には、ポリクローナル抗体の使用が有利であり得る。
【0111】
別の局面において、本発明は、細胞を分析するための、抗体が固定されたプレートを提供する。好ましくは、プレートは、マイクロアレイである。このようなプレートまたはマイクロアレイは、当該分野において公知の方法で製造することができ、そのような方法は、本明細書において上述した方法または引用した文献に記載されている。当業者は、そのような記載を参酌して適宜所望のプレートまたはマイクロアレイを製造することができる。そのようなプレートおよびマイクロアレイは、スクリーニング、医療用途(臨床検査、診断など)において有用である。
【0112】
本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法またはシステムを用いることによって、細胞状態に関連する情報を得ることができ、その情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態などの種々のパラメータを特定することができる。
【0113】
本発明はまた、本発明のプレートと測定装置とを含む細胞分析システムに関する。そのようなプレートおよび測定装置は、本明細書において上述したようなものを適宜組み合わせて利用することができる。
【0114】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0115】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0116】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
T細胞系急性リンパ性腫瘍細胞に発現することの知られているCD7に対する抗体をマイクロスポット状に固定したセルロース膜を作製した。まず、再生セルロース膜を0.12Mトレシルクロライド溶液に浸漬し、室温で1時間反応させることでトレシル基を導入した。これによって活性化された膜上に直径0.5mmのステンレス針を用いて抗体溶液をスポッティングすることで抗体の固定化を行った。比較のため、免疫グロブリンG(IgG)および免疫グロブリンM(IgM)も固定化した。それらの配置を図1(a)に示す。抗体を固定化したセルロース膜は、ウシ血清アルブミンでブロッキングした。次に、蛍光染料であるローダミンで予め染色されたT細胞系急性リンパ性腫瘍細胞(CCRF−CEM:(財)ヒューマンサイエンス財団より分譲)を0.53mM EDTAを含むリン酸緩衝液に分散させ、この分散液を上記の抗体マイクロアレイに滴下した。30分後、浮遊する細胞を除去した後、蛍光顕微鏡を用いて各スポットを観察した。
【0118】
図1(b)に示すように、CCRF−CEM細胞は抗CD7抗体を固定化したスポットのみに再現性よく結合した。一方、IgGおよびIgMを固定したスポットならびに各々のスポット周囲のバックグラウンド領域への細胞の非特異的な結合はまったく認められなかった。この結果は、本発明の抗体マイクロアレイを用いることによって表面抗原の有無を簡便に調べることができることを示す。
【0119】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で抗体マイクロアレイを作製した。そのさい、一枚のセルロース膜上に固定化する抗CD7抗体のスポット数を増やし、同時に分析できるスポット数を増加させた。また、細胞の結合試験には、蛍光標識されたCCRF−CEM細胞、および、非標識かつCD7を発現していないことが確認されたBurkittリンパ腫細胞(Ramos:(財)ヒューマンサイエンス財団より分譲)を種々の割合で混合して用いた。
【0120】
抗体マイクロアレイの抗CD7抗体スポット上に結合した細胞の明視野光学顕微鏡像と蛍光顕微鏡像を図2に示す。また、各スポットに接着した全細胞数に対するCCRF−CEM細胞の割合を図3に示す。これらの図からわかるように、スポットに結合した細胞はすべてがCD7を発現するCCRF−CEM細胞であり、その結合細胞密度は、被検体におけるCCRF−CEM細胞の組成と一致した。このことは、本発明の手法が、母集団における細胞組成を反映した結果をもたらすものであることを明確に示す。
【0121】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で抗体マイクロアレイを作製した。ここでは、表面抗原のよく知られていない神経幹細胞の分析を目的として、O4、CD57、CD44、CD90、CD105、CD115に対するモノクローナル抗体を固定した。また、陰性コントロールとしてIgGおよびIgM、陽性コントロールとしてフィブロネクチンも固定化した。この抗体マイクロアレイ上でラット胎児の線条体から単離した神経細胞の接着試験を行った。妊娠16日目のラット胎児の線条体から神経細胞を単離し、線維芽細胞増殖因子および上皮細胞増殖因子を含む培地中で培養することによってニューロスフェアを形成させた。これらの細胞を分散させ、5×10cells/mlの細胞浮遊液を調製した。抗体をスポッティングしたセルロース膜上に細胞浮遊液を滴下した後、37C、5%COの培養器中に1時間静置し、細胞を結合させた。
【0122】
図4に、各種の抗体をスポッティングしたセルロース膜上に結合した未分化神経細胞の光学顕微鏡写真を示す。比較として用いたフィブロネクチンのスポット上に最も多くの細胞が接着していた。抗CD57抗体およびO4抗体を固定したスポット上には比較的多くの細胞が接着し、抗CD44抗体のスポット上にも僅かではあるが細胞の接着がみられた。一方、IgG、IgM、抗CD105抗体, 抗CD115抗体、抗CD90抗体の各スポット上には細胞の接着は認められなかった。
【0123】
次に、セルロース膜上に接着した細胞を4%パラホルムアルデヒドにて固定し、未分化神経細胞の細胞内マーカーであるnestinおよびvimentin、成熟神経細胞の細胞内マーカーであるTuJ1、成熟アストロサイトの細胞内マーカーであるGFAPに対する抗体をそれぞれ結合させた。次に、ローダミンで標識された2次抗体を用いて細胞を処理し、染色された細胞を蛍光顕微鏡を用いて観察した。免疫染色された細胞の割合を図5に示す。図からわかるように、抗O4抗体および抗CD57抗体の各スポット上の細胞は、神経幹細胞内に発現することが知られているnestinおよびvimentinを高値に発現していた。これらの細胞は、成熟ニューロンおよび成熟アストロサイトの細胞内マーカーであるTuJ1およびGFAPでは染色されなかった。以上の結果は、未分化神経細胞上にCD57およびO4が発現していることを強く示唆するものである。
【0124】
本実施例が示すように、本発明の方法を用いることによって、被検細胞に発現する表面抗原と細胞内マーカーとの対応付けが可能であり、単一ではない細胞集団内のある特定の細胞種に関して、その表面抗原を同定することができる。
【0125】
(実施例4)
実施例3と同様に、各種の抗体を固定した抗体マイクロアレイを作製し、ラット胎児線条体由来の神経細胞の結合試験を行った。ただし、細胞の結合試験に先立って、ポリ−L−オルニチン/ラミニンコーティングした培養皿上にニューロフェアを接着させ、1%ウシ胎児血清含有培地で1週間培養(分化培養)することで、神経細胞への分化を進行させた。
【0126】
図6に示すように、分化を進行させた細胞では、未分化な細胞を用いた場合(実施例3)に比べ、抗CD44抗体および抗CD90抗体の各スポットに接着する細胞の数が増加した。CD44およびCD90は成熟アストロサイトおよび成熟ニューロンの表面抗原として知られていることから、分化培養の結果、ニューロスフェア中に含まれていた未分化細胞が、アストロサイト、ニューロンへ分化誘導されたものと考えられる。これらの細胞では、nestinおよびvimentinに対する免疫染色ではほとんど染色されなかったが、この結果も、分化培養によって分化の進行したことを支持する。以上の結果は、本発明の手法が細胞の分化段階を迅速に調べる方法としても応用できることを示している。
【0127】
(実施例5)
抗体アレイの作製には、アルカンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用した。すなわち、片面に金薄膜を蒸着したガラス基板に、メチル基をもつアルカンチオール(n−ヘキサデシルメルカプタン)の単分子膜を形成させた。この単分子膜に、直径1mmのスポットを5×5のマトリックス状に配置したフォトマスクを重ね、紫外線を照射した。これにより、照射部のアルカンチオールをスポット状に除去した。次に、露出した金スポット内にカルボキシル基をもつアルカンチオール(11−メルカプトウンデカン酸)の単分子膜を形成させた。スポット表面のカルボキシルをN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性エステルに変換した後、約100nlの抗体溶液を各スポットに滴下することで、抗体の固定化を行った。スポット周囲のバックグラウンド領域への細胞接着を抑えるため、ウシ血清アルブミンによるブロッキングを行った。
【0128】
実施例3と同様に、ラット胎児線条体から単離した細胞をもとにニューロスフェアを形成させることで未分化神経細胞を得た。ニューロスフェアを分散させた後、上記と同様の方法で抗体アレイへの細胞接着試験に供した。この細胞を培地に浮遊させ、その0.2mlを抗体アレイに滴下した。これを37Cおよび5%COの雰囲気下に静置することで、細胞を接着させた。2時間30分後、抗体アレイをリン酸緩衝液で洗浄し、非接着細胞を除去した。その後、スポットに接着した細胞を4%グルタルアルデヒド溶液を用いて固定した。
【0129】
固定化した抗体の種類ならびに細胞の接着した抗体アレイの実体顕微鏡像を図7に示す。図からわかるように、O4、CD44、CD57に対する抗体を固定したスポットには多くの細胞が接着していた。一方、GD2、CD90、CD133に対する抗体および陰性コントロールである免疫ブロブリンG(IgG)および免疫ブロブリンM(IgM)を固定したスポット上には細胞の接着はほとんど認められなかった。これらの結果より、本接着試験に用いた細胞にはO4、CD44、CD57の発現されていることがわかった。また、CD44は成熟アストロサイトに発現することが知られており、用いた細胞はある程度分化の進行した細胞集団であることが示唆される。このように、本発明の方法を用いることで、迅速な分析を行うことが可能である。
【0130】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0131】
(本発明の有用性)
本発明は細胞表面マーカータイピング法に関するものであり、この方法は、まず第一に、幹細胞を用いた再生医療研究の現場で用いられることが予想される。本発明の方法によって、各種の幹細胞に関する理解が深まり、幹細胞の同定ならびに選別などの操作がより簡便に行えるようになる。ひいては、再生医療の進歩を大きく促し、医療、福祉への多大な貢献をなすことと期待される。
【0132】
また、本発明は、幹細胞を対象とした表面マーカータイピングにとどまらず、各種の分化細胞にも同様に適用することができる。たとえば、血液関連細胞および癌細胞の表面マーカーの免疫形質タイピングに用いることで、これまでより迅速で簡便な臨床検査が可能になる。いずれの場合においても、フローサイトメーターが既往の技術として上げられるが、本発明の方法は、簡便性、網羅性、経済性の観点で優位性の高い分析システムを提供するものである。
【0133】
【発明の効果】
本発明により、細胞の表面抗原を簡便および/または大量に迅速に分析することが達成された。また、本発明により、細胞に関連する複数の情報を精確に1:1での相関が達成された。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗CD7抗体を固定化した抗体マイクロアレイへのCCRF−CEM細胞の結合。(a)抗CD7抗体および陰性コントロールとして固定化したIgGおよびIgMの配置。(b)CCRF−CEM細胞の結合した抗体マイクロアレイの蛍光顕微鏡写真。
【図2】抗CD7抗体固定化マイクロアレイへのCCRF−CEM細胞の結合。結合試験は蛍光標識したCCRF−CEM細胞と非標識のRamos細胞の混合分散液を用いて行った。被検体中のCCRF−CEM細胞の割合を図の左に示す。写真の左列は位相差顕微鏡像であり、すべての細胞が可視化されている。一方、右列は蛍光顕微鏡像であり、蛍光標識されたCCRF−CEM細胞のみが可視化されている。
【図3】被検体中のCCRF−CEM細胞の割合と、各スポットに結合したCCRF−CEM細胞数の関係。
【図4】各種の抗体をスポッティングしたセルロース膜上に結合した未分化神経細胞の位相差顕微鏡写真。スポットに固定した抗体あるいはタンパク質:(a)フィブロネクチン、(b)抗O4抗体、(c)抗CD57抗体、(d)抗CD44抗体。
【図5】フィブロネクチン、抗O4抗体、抗CD57抗体を固定化した各スポットに結合した細胞について、nestinおよびvimentinを免疫染色したときの陽性細胞の割合。白四角:nestin、黒四角:vimentin。
【図6】各種の抗体をスポッティングしたセルロース膜上に結合したラット胎児脳由来神経細胞の位相差顕微鏡写真。細胞は分化培養を行った後に試験に供した。スポットに固定した抗体およびタンパク質:(a)フィブロネクチン、(b)抗O4抗体、(c)抗CD57抗体、(d)抗CD44抗体、(e)抗CD90抗体。
【図7】アルカンチオールのパターン化単分子膜を利用して固定化した抗体の種類ならびにラット胎児線条体由来神経細胞の接着した抗体アレイの実体顕微鏡像。

Claims (15)

  1. 細胞を分析する方法であって、
    (a)表面抗原に対する抗体が固定されたプレートを提供する工程;
    (b)該プレート上の該抗体と、細胞とを、該細胞の表面抗原と該抗体とが特異的相互作用をする条件下で接触させる工程;
    (c)該抗体と該細胞との相互作用のレベルを分析する工程;および
    (d)前記細胞の内部状態に関連するマーカーを検出し、該マーカーと前記抗体とを相関付ける工程、
    を包含する、方法。
  2. 細胞を分析する方法であって、
    (a)表面抗原に対する抗体が固定されたプレートを提供する工程;
    (b)該プレート上の該抗体と、細胞とを、該細胞の表面抗原と該抗体とが特異的相互作用をする条件下で接触させる工程;
    (c)該抗体と該細胞との相互作用のレベルを分析する工程;および
    (d)前記細胞の状態に関連し、細胞内に存在するマーカーを検出し、該マーカーと前記抗体とを相関付ける工程、
    を包含する、方法。
  3. 前記プレートはマイクロアレイである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記(b)工程において、前記抗体と相互作用する前記細胞が単一の細胞で存在するように処理される、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記表面抗原は、CD抗原、細胞接着因子、膜内輸送タンパク質、細胞増殖因子レセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記マーカーは、mRNA、タンパク質、改変タンパク質、糖鎖および代謝産物からなる群より選択される物質に対して特異的に相互作用する因子である、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 前記マーカーは、生化学的手段、化学的手段、可視光、紫外線、赤外線、蛍光、化学発光、燐光、放射能、磁気および電気信号からなる群より選択される手段で検出される、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 前記プレートは、金属、ガラス、高分子及びセラミックスからなる群から選択される一種以上を含む基板上に複数の抗体が10μm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されたマイクロアレイである、請求項1又は2に記載の方法。
  9. 前記細胞は同種または異種である、請求項1又は2に記載の方法。
  10. 前記細胞は、複数種類の細胞を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  11. 前記細胞は、各種臓器の正常細胞、疾患をもつ分化細胞ならびにそれらの前駆細胞、胚性幹細胞、胎児由来幹細胞、未分化細胞、樹立系細胞または遺伝子の改変された細胞を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  12. 前記細胞の検出は、目視、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置のいずれかあるいは複数種、あるいは化学的または生化学的マーカーを手段として行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  13. 前記方法により表面抗原がタイピングされる、請求項1又は2に記載の方法。
  14. 前記分析は、未知の細胞表面抗原を見出すためおよび/または既知の表面抗原の発現プロファイルを調べるために行われる、請求項1又は2に記載の方法。
  15. 前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の方法。
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