JP4336597B2 - 固相重合法によるポリマーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は固相重合法によるポリマーの製造方法に関する。さらに詳しくは、重合反応槽内の原料層下部における粉体圧を特定の数値範囲に制御することができる構造を有する重合反応槽を用いて固相重合を行う芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルの製造方法に関する。
汎用プラスチックスやエンジニアリングプラスチックスの製造方法としては、ポリマーを溶融状態で重合せしめる「溶融重合法」を始め、種々の手法が一般的に知られているが、比較的単純な設備で高重合度品が得られるという利点があるので、結晶化状態にある低重合度ポリマーを固相状態のまま昇温、重合せしめる「固相重合法」を採用したプロセスが増加傾向にある。
固相重合法で用いる重合反応槽として代表的なものはホッパー型の重合反応槽である。ホッパー型重合反応槽は、原料の貯蔵を目的とした通常のホッパーと形状が酷似しており、その内部には原料層の流動に対して特に障害となるような構造物を有しておらず、また攪拌軸および攪拌翼も有していない。重合反応槽下部は逆円錐形となっており、逆円錐の頂点となる排出口より原料が排出される構造となっている。また、原料層の昇温を目的として、重合槽下部に加熱された不活性ガスを導入させるための構造物を有しているものもある。反応重合槽の断熱処理として、汎用の断熱材で反応重合槽外壁を包囲する方法や、反応重合槽外壁を螺旋状配管で包囲するかもしくは当該部位にジャケットを設け、これに液体加熱媒体や高温水蒸気を流通させる方法等、種々の方策が為されている場合が多い。
このように、溶融重合法で用いられる高粘度に対応した大きな攪拌動力を必要とする重合反応装置とは異なり、ホッパー型重合反応槽はその構造が比較的単純であるので、重合反応工程の大幅な低コスト化を可能とする。他の重合反応槽として、流動層型重合反応槽や水平式回転輸送型重合反応装置等を挙げることができるが、設備の単純化および低コスト化を意図した場合、やはりホッパー型重合反応槽を利用することが望ましい。
しかし、ホッパー型重合反応槽を用いて固相重合を行う場合、重合に長時間を要するので、これに使用される重合反応槽の鉛直方向の長さは一般的に大きな値となる。重合に要する時間は、原料の供給排出能力と重合反応槽の鉛直方向の長さで決まるため、原料の供給排出装置の能力下限値に限界があることを鑑みると、当該数値が肥大化することは避けられない。その結果、重合反応槽内の原料層下部に大きな粉体圧がかかることとなり、この粉体圧が原因で当該部位での原料層の流動が著しく阻害されることがある。
原料層の流動が阻害された結果、固結層形成による製品排出口の閉塞が起こることが知られている。
また固相重合法に用いられる原料の形状は、ペレット状、フレーク状、または粉状のものであることが多いが、当該形状を有した原料を高重合度化する際には、昇温の影響で原料層の体積膨張が起こり、その影響でも固結層が形成されて閉塞が起こり、原料層の流動が阻害されることがある。
さらには、原料層にて融着が発生し、原料層の流動が完全に停止することもある。融着が発生した場合、原料層の流動が阻害されるだけでなく、重合反応槽の大規模なメンテナンスが必要となり、製造行為全般に大きな影響を及ぼす。
また、原料層高さの肥大化は、原料層内の一様な温度分布を阻害する要因となり得る。温度分布に偏りが生じると、原料層内で局部的に熱履歴が異なるため、得られる製品に重合度斑が発生する。当然、重合度を揃えるか、または所望の重合度に到達している製品のみを類別するという工程が必要となるが、工程の複雑化を招くだけでなく、工程コストの増大を避けることができない。
特許文献1(特開2000−248056号公報)では、液晶性ポリマーの製造方法として、ホッパー型重合反応槽を用いた固相重合法が教示されている。この重合方法は、溶融重合工程で得られた低重合度の液晶性ポリマーを2mm以上の大きさに小粒子化し、これをホッパー型重合反応槽にて高重合度化するという方法であり、溶融粘度、融点、および粒径を特定化することで、溶融重合工程、小粒子化工程、および固相重合工程から成る高重合度液晶性ポリマー製造における種々の課題を解消している。しかしホッパー型重合反応槽における固結層形成による製品排出口の閉塞や融着また温度分布の偏りによる重合度斑に関しては解決策を示していない。
特許文献2(特開2001−122954号公報)では、固相重合法による脂肪族ポリエステルの製造方法が教示されている。本法においても、固相重合工程に固定層型反応器(縦型反応器)を使用しているが、やはり上記の課題を解消することはできない。
一方、特許文献3(特開平5−287080号公報)では、静置トレー方式で粉粒状ポリマーを固相重合する手法について述べられている。この方法では、原料層内の伝熱効率を向上させるべく、トレー中に伝熱体を設け、製品の重合度斑を解消している。しかし、工業的規模の生産を想定した場合、粉体圧によるポリマーの固結や融着という課題は依然として解消できないだけでなく、反応副生成物が効率的に除去できない点でも課題が残る。
特開2000−248056号公報 特開2001−122954号公報 特開平5−287080号公報
既述のような原料層下部での粉体圧の増大、および原料層自体の体積膨張等の影響により、原料層の流動性維持が困難となることは、安定した連続生産を阻害する大きな問題点である。
また重合槽内における温度分布の偏りによる重合度斑も製品の安定的な生産および製品の品質という点で問題を生じる。
よって本発明の課題は、固相重合によるポリマーの製造方法に関し、原料層内のポリマーの固結や融着を防ぎ、さらには、当該原料層内の温度分布の均一化を図り、製品の重合度斑を解消するポリマーの製造方法を提供することにある。
発明者らは上述の問題点を解消するために鋭意検討し、原料層下部におけるポリマーの固結や融着は原料層下部におけるポリマーの粉体圧を一定の数値以下に制御することによって低減出来ることが判り本発明に至った。
そこで、先ず重合反応槽内の原料層下部における粉体圧を数値化し、その数値を一定の数値以下に制御することを検討した。このためには重合反応中の原料層下部における粉体圧を実測することが望ましいが、特に工業的規模の重合反応槽の当該部位への計測機器の設置は困難であるので実測することは難しい。
そこで発明者らは実測の代替として、日本を始め欧米諸国においても広く利用されているJanssen式を用いて粉体圧を数値化することとした。Janssen式は静置粉体の貯層壁の摩擦効果を考慮したつりあい式から導かれたもので、実測値と比較的よい一致を示している(化学工学便覧改訂六版、p883-p885)。
Janssen式は下記式(1)で表される。
Figure 0004336597
(式中、Pは原料層の自由表面から深さxにおける原料層水平単位断面積当たりの鉛直方向圧力(以下の記載では静置粉体圧と称す)、ρは原料の嵩密度、gは重力加速度、rωは水圧半径、μは槽壁摩擦係数、KはRankine定数を意味する。rωおよびKは下記式(2)および(3)
Figure 0004336597
Figure 0004336597
で算出される値である。式中、φは原料の内部摩擦角、Aは重合反応槽水平断面積(原料層水平断面積と同義)、lは重合反応槽内のり周長(原料層内のり周長と同義)を意味する。)
ただし、本式を用いて得られたPは、重合反応槽内の原料層の静置粉体圧である。原料層流動時の動的粉体圧算定の際には、本式で得られた静置粉体圧の値に適当な係数を乗ずることが必要となる。
重合反応槽内の原料層を取り扱う場合、動的粉体圧を実際の粉体圧として取り扱うことが好ましいが、先に述べた通り、動的粉体圧の値は静置粉体圧の値に適当な係数を乗じて得られる値であり、いずれを用いて粉体圧の値を定義しても差し支えはない。本発明では静置粉体圧を指標として用いることとした。
以下の記載では、静置粉体圧を「粉体圧」と称することとする。
また「原料層下部」とは、原料が充填されている部分の内、重合反応槽直胴部の最下点を意味する。したがって「原料層下部における粉体圧」とは、原料が充填されている円筒管部の最下点での静置粉体圧を意味する。
本式によると、重合に用いる原料の物理的性質が既知であれば、粉体圧は原料層の自由表面からの深さxと重合反応槽内径(原料層直径と同義)Dに強く依存することが理解できる。
発明者らは、本式で得られる粉体圧の値と原料層の流動状態の関係を鋭意検討した結果、粉体圧の値がある特定の範囲内にあるような原料層では、その流動を阻害するような現象が見受けられないことを見出した。
また発明者らは、重合反応槽の鉛直方向長さを長くすることで長時間の固相重合が可能であるというホッパー型重合反応槽の利点を有しつつ、かつホッパー型重合反応槽を使用した場合に得られる製品量を大凡確保しつつも、原料層水平断面積Aと原料層内のり周長lの値を小さくすることで、粉体圧が低減できる方策がないか鋭意検討を重ねた。その結果、多管式熱交換器を改良して得られた新規の重合反応槽を用いることで、既述の課題が全て解消されることを見出した。
即ち、本発明の第1は、ガラス転位温度(Tg)以上、融点(Tm)以下の温度範囲で固相重合反応を行う、芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルの製造方法において、重合反応槽内の原料層下部における粉体圧、即ち式(1)で計算されるPが、静置粉体圧にして150〜9500N/mの範囲であることを特徴とするポリマーの製造方法に関する。本発明の第2は、当該固相重合反応に供される重合反応槽が多管式熱交換器型重合反応槽であることを特徴とする上記第1の発明の製造方法に関する。本発明の第3は、当該重合反応槽内の原料層の鉛直方向長さ(L)と直径(D)の比(L/D)が10〜100の範囲であることを特徴とする上記第1または第2の発明の製造方法に関する。本発明の第4は、当該重合反応槽内の原料層を構成する原料粉粒体の嵩密度が290〜930kg/mの範囲であることを特徴とする上記第1または2の発明の製造方法に関する。本発明の第5は、当該重合反応槽内の原料層を構成する原料粉粒体の安息角が15〜53度の範囲であることを特徴とする上記第1または2の発明の製造方法に関する。本発明の第6は、当該重合反応槽に導入する不活性ガスの空塔線速度が毎秒0.05m以上、原料粉粒体の流動開始速度の値未満であることを特徴とする上記第1または2の発明の製造方法に関する。
本発明によると、ガラス転位温度(Tg)以上、融点(Tm)以下の温度範囲で固相重合を行う、芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルの製造方法において、重合反応槽内の原料層下部における粉体圧を、静置粉体圧にして150〜9500N/mの範囲とすることで、原料層の円滑な流動を妨げることが皆無となり、安定したポリマーの製造が可能となる。また、当該重合反応槽として多管式熱交換器型重合反応槽を用いれば、粉体圧が軽減され、原料層が円滑に流動する上、原料層の温度分布が小さくなり、重合度斑の少ない製品ポリマーの製造が可能となる。
以下に本発明について詳述する。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネートは、主たる繰り返し単位が下記構造式(1)
Figure 0004336597
[上記式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、Wは炭素数2〜10のアルキリデン基、炭素数1〜15のアルキレン基、炭素数7〜20のアリール置換アルキレン基、炭素数3〜15のシクロアルキリデン基、炭素数3〜15のシクロアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、又はスルホン基である。]で表わされる。
また、本発明で用いられるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
さらに、本発明で用いられる原料の形状としては、粉体状、粒状、ペレット状、フレーク状、タブレット状等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
上記ポリマー原料粉粒体を重合反応槽に供給し、ガラス転位温度(Tg)以上、融点(
Tm)以下の温度範囲に至らしめ、固相状態で高重合度化反応を行う。係る固結層の形成
や配管閉塞の課題を解消するため、重合反応槽内の原料層下部における粉体圧は、静置粉
体圧にして150〜9500N/mの範囲とする。
また本発明では、重合反応槽における熱分布の偏りにより生じる重合度斑を解消すべく、重合反応槽として多管式熱交換器を改良して得られる多管式熱交換器型重合反応槽を使用する。
ここでいう多管式熱交換器とは、隔壁式の熱交換器の一種であり、胴体管内部に複数の伝熱管を設け、胴体管もしくは伝熱管のいずれか一方に高温流体を、そしてもう一方に低温流体を流通させることにより熱交換を行うものである。一般的に使用される多管式熱交換器は、固定頭部、胴部、および後頭部の3部分から成り、各々の部位に対して数種類の形式があり、これら3部分を適宜組み合わせることが可能である。(基本構造については、例えば化学工学便覧改訂六版p388に記載されている。)
しかし、多管式熱交換器をそのまま重合反応槽として用いることは不可能である。ポリマーの連続生産を想定した場合、重合反応槽に原料を連続的に投入し、かつ連続的に排出する必要がある。また、主たる加熱媒体として用いられる加熱不活性ガスの供給、および排出も必要である。そこで、多管式熱交換器を重合反応槽として機能させるために、当該機器を改良することが必要となる。
本発明の多管式熱交換器型重合反応槽を、図1を用いて以下に説明するが、図1に限定されるものではない。
先ず、後頭部(図1中の符号9)は製品排出に係る部位(図1中の符号11)であるため、一般に用いられる円筒管や鏡板は使用せず、逆円錐形の管を用いる。また、当該部位より不活性ガスを連続的に導入する必要があるため、管側面には不活性ガス導入口(図1中の符号12)を設ける。
同様に、固定頭部(図1中の符号3)は原料投入に係る部位(図1中の符号1)であるため、円錐形の管を用いる。当該部位からは不活性ガスを連続的に排出する必要があるため、管側面に不活性ガス排出口(図1中の符号15)を設ける。
胴部(図1中の符号5)については、液体加熱媒体供給口(図1中の符号13)および出口(図1中の符号14)やジャケット(図1中の符号7)等の基本的な構造を改良する必要はないが、投入された原料、および導入された不活性ガスを複数の伝熱管(図1中の符号6)に分散させるための構造を有した分散板(図1中の符号4および8)を、胴部上下に設けることができる。
原料の投入、および製品の排出(図1中の符号2および10)については、汎用の粉粒体輸送装置を使用することができる。例えば、ロータリーフィーダー、テーブルフィーダー、ベーレフィーダー、ベルトフィーダー、チェーンフィーダー、スクリューフィーダー、バイブレーティングフィーダー等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
当該多管式熱交換器型重合反応槽を使用することで、長時間の固相重合が可能であるというホッパー型重合反応槽の利点を有しつつ、かつホッパー型重合反応槽を使用した場合に得られる製品量を大凡確保しつつも、原料層水平断面積Aと原料層内のり周長lの値を小さくすることが可能となり、原料層下部における粉体圧を大幅に低減できる。
尚、原料層水平断面積Aは重合反応槽内径(原料層直径と同義)Dに依存しており、原料層水平断面積Aを小さくすることは、原料層直径Dを小さくすることと同義である。また、原料層の自由表面からの深さxは、原料層最上点から最下点までの距離と考えた場合、原料層の鉛直方向長さLと同義である。
原料層直径Dを小さくすれば、当然得られる製品量は減少する。これを回避するには、原料および製品の供給排出能力を向上させるか、原料層の鉛直方向長さLを大きくする策が有効であるが、粉粒体輸送装置の供給排出能力の限界を考慮した場合、原料層の鉛直方向長さLを大きくするのが得策である。
しかし、原料層直径Dを小さくして原料層断面積Aを小さくすることにも限界がある。
極端に原料層断面積Aが小さくなると、原料層の鉛直方向長さLが極端に大きくなり、原
料層の良好な流動性の維持、設備の簡略化および設備費の低コスト化を目的とする本発明
の趣旨に反する。よって本発明において、重合反応槽内の原料層の鉛直方向長さLと原料
層直径Dの比(L/D)の好適な範囲は10〜100の範囲であり、好ましくは10〜5
0の範囲である。
好適とされるL/Dの範囲内の円筒管を複数配設させた多管式熱交換器型重合反応槽にて重合反応を行うに当たり、製品量に直接影響を与える因子として原料粉粒体の嵩密度が挙げられる。
原料層の鉛直方向長さLと原料層直径Dの値を一様に固定した場合、嵩密度が大なる原料粉粒体を使用する場合、原料層自体の重量が重くなり、原料層下部における粉体圧が大きくなる。逆に嵩密度が小なる原料粉粒体を使用する場合、原料層下部における粉体圧は低減されるものの、得られる製品量が少なくなり、これを回避するために重合反応槽の規模が肥大化する。よって、本発明における原料粉粒体の嵩密度の好適な範囲は290〜930kg/mであり、好ましくは400〜900kg/m、さらに好ましくは500〜800kg/mの範囲である。
また、原料粉粒体の安息角が原料層下部の粉体圧に与える影響も大きい。安息角が大な
る原料粉粒体を使用する場合、原料粉粒体が接する円筒管内壁と原料粉粒体間の摩擦係数
が増大し、引いては原料層下部の粉体圧を増大させる。原料粉粒体の安息角を極力小さく
することが必要となるが、そのためには原料粉粒体をさらに微細化する必要があり、当該
工程で発生する微粉が係る固結層の形成や配管閉塞の問題を助長する可能性がある。よっ
て、本発明における原料粉粒体の安息角の好適な範囲は15〜53度の範囲である。
また、本発明においても、不活性ガスは主たる加熱媒体として原料の昇温に使用される。高重合度の製品を、重合度斑のない状態で得るためには、融点(Tm)に近い高温の不活性ガスを大量に流通させる必要がある。
その量については、重合反応槽規模により異なるため、好適とする範囲を一様に規定はできないが、流量の値を重合反応槽断面積Aの値で除することで得られる空塔線速度の値で大凡規定することができる。
不活性ガスの空塔線速度が極端に遅い場合は、原料層内の温度分布が大きくなるため、得られる製品の重合度斑が大きくなる。また、反応副生成物の効率的除去も行えないため、係る固結層の形成や配管閉塞の問題を助長する結果となる。逆に空塔線速度が極端に速い場合は、原料層内の温度分布や製品の重合度斑、および固結層の形成や配管閉塞の問題は解消されるものの、原料粉粒体が不活性ガス中に浮遊し、原料層を維持できなくなる可能性がある。また、空塔線速度が上昇することで、重合反応槽内と製品排出後の輸送工程の間に差圧が生じ、単位時間当たりの製品排出量の定量性が維持できなくなる可能性もある。よって本発明において、重合反応槽に導入する不活性ガスの空塔線速度の好適な範囲は、原料の粒径や嵩密度等の原料の性状にも依存するが、好ましくは毎秒0.05以上、原料の流動開始速度の値未満、さらに好ましくは0.1〜1mの範囲である。
以下に実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]、ガラス転位温度(Tg)、融点(Tm)、結晶化度、および粘度平均分子量(Mv)は以下に挙げる方法で求めた。
(1)固有粘度[η]
ジクロロメタン中、20℃でウベローデ粘度管にて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
パーキンエルマーDSC7により、昇温速度10℃/分で測定してガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)を求めた。また、結晶融解のエンタルピー(ΔHm)は、結晶融解に対応する部分の面積より算出した。
(3)結晶化度
100%結晶芳香族ポリカーボネートのΔHmを109.8J/g(J. Polym. Sci. :B :Polym. Phys., 25, pp1511-1517, 1979 )とし、DSC測定によって得られたΔHmの値を109.8で除し、得られた値を百分率表記することで算出した。
(4)粘度平均分子量(Mv)
上記(1)によって求められた固有粘度[η]を、マーク−ホーウインクの粘度式と呼ばれる下記式
Figure 0004336597
に代入することで算出した。尚、マーク−ホーウインク定数Kおよびαの値は、シュネル氏の値(K=1.23×10−4、α=0.83)を採用した。
[参考例1:非晶低分子量芳香族ポリカーボネートの合成例]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228重量部、ジフェニルカーボネート223重量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部、およびビスフェノールAジナトリウム塩0.00014重量部を、攪拌、減圧、および蒸留塔等の各装置を備えた反応装置に仕込み、180℃窒素雰囲気下で1時間攪拌し、原料全てを溶解させた。次いで、最終温度が220℃、最終圧力が20mmHgに到達するまで、段階的に昇温および減圧操作を行うことで非晶低分子量芳香族ポリカーボネートの重合反応を行った。得られた非晶低分子量芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]は0.17、粘度平均分子量(Mv)は6078、ガラス転移温度(Tg)は120℃であった。
[参考例2:非晶低分子量芳香族ポリカーボネートの結晶化操作例]
上記の参考例1で得られた非晶低分子量芳香族ポリカーボネートを粉砕・分級し、2〜3mmの範囲の粒径を有するものを採取した。採取した粉砕物を、フェノール/水=2/8(重量比)からなる100℃の混合溶液中に30分間浸漬させ、当該非晶低分子量芳香族ポリカーボネートの結晶化処理を行った。浸漬後、混合溶液を濾別し、100℃で16時間乾燥させた。得られた結晶低分子量芳香族ポリカーボネートの固有粘度[η]は0.17、融点(Tm)は221℃、結晶化度は24.3%、嵩密度は632kg/m、安息角は34度であった。
[実施例1]
図1に示したような多管式熱交換器型重合反応槽を用いて、上記の参考例で得られる結
晶低分子量芳香族ポリカーボネートを原料とする、結晶低分子量芳香族ポリカーボネート
の高重合度化反応を実施した。当該多管式熱交換器型重合反応槽の胴部(図1中の符号5
)の外径は216.3mm、内径は208.3mm、高さは4000mmとし、伝熱管(
図1中の符号6)の外径は60.5mm、内径は52.7mm、高さは胴部と同じとし、
胴部内に8本設けた。また、後頭部(図1中の符号9)は逆円錐形の管とし、不活性ガス
を連続的に導入できるよう、管側面には不活性ガス導入口(図1中の符号12)を設けた
。同様に、固定頭部(図1中の符号3)は円錐形の管とし、不活性ガスを連続的に排出で
きるよう、管側面に不活性ガス排出口(図1中の符号15)を設けた。さらに、胴部上下
には、投入された原料および導入された不活性ガスを複数の伝熱管に均一に分散できるよ
う、分散板(図1中の符号4および8)を設けた。原料の投入(図1中の符号2)にはロ
ータリーフィーダーを、製品の排出(図1中の符号10)にはスクリューフィーダーを用
いた。先ず、伝熱管内温度が220℃で一定となるように、胴部内部に液体加熱媒体を循
環させ、次いで220℃に加熱された窒素ガスを、既述不活性ガス導入口より胴部に導入
した。伝熱管内温度が一定となったことを確認し、原料供給口(図1中の符号1)より2
8kgの原料を投入した。投入された原料は、既述の分散板により8本の伝熱管に均等に
分配され、原料層の鉛直方向長さLと原料層直径Dの比(L/D)は48.2、また、各
伝熱管内の原料層下部における粉体圧を算出したところ、静置粉体圧にして427.9N
であった。各伝熱管内における不活性ガスの空塔線速度が0.15mとなるよう、
不活性ガスの導入量を調節し、原料の連続投入、および製品の連続排出を開始した。尚、
排出量と投入量は同量とした。製品排出口(図1中の符号11)より製品の排出が確認で
きたが、ここで排出される製品は十分な熱履歴を受けた製品ではなく、重合度が低い製品
であるため、原料の連続投入、および製品の連続排出の開始後10時間の時点を運転開始
と定義した。運転開始後は、得られる製品を2時間毎に採取し、固有粘度[η]、粘度平均
分子量(Mv)、融点(Tm)の測定を実施した。尚、運転は、運転開始後10時間継続
させた。結果を表−1に示す。
Figure 0004336597
[実施例2]
伝熱管の外径を48.6mm、内径を41.2mm、胴部内に設ける伝熱管の本数を1
3本、投入する原料の量を22kgとする以外は、実施例1と同様の運転を実施した。投
入された原料は、既述の分散板により13本の伝熱管に均等に分配され、原料層の鉛直方
向長さLと原料層直径Dの比(L/D)は48.7、また、各伝熱管内の原料層下部にお
ける粉体圧を算出したところ、静置粉体圧にして334.5N/ であった。得られた
製品の固有粘度[η]、粘度平均分子量(Mv)、融点(Tm)の測定結果を表−2に示す
Figure 0004336597
[実施例3]
伝熱管の外径を89.1mm、内径を83.1mm、胴部内に設ける伝熱管の本数を3
本、投入する原料の量を21kgとする以外は、実施例1と同様の運転を実施した。投入
された原料は、既述の分散板により3本の伝熱管に均等に分配され、原料層の鉛直方向長
さLと原料層直径Dの比(L/D)は24.6、また、各伝熱管内の原料層下部における
粉体圧を算出したところ、静置粉体圧にして674.8N/ であった。得られた製品
の固有粘度[η]、粘度平均分子量(Mv)、融点(Tm)の測定結果を表−3に示す。
Figure 0004336597
[実施例4]
既述の参考例で得られる結晶低分子量芳香族ポリカーボネート原料をさらに粉砕し、0
.5〜1mmの範囲の粒径を有するものを採取した。原料の固有粘度[η]、融点(Tm
)、および結晶化度は同様であったが、嵩密度は744kg/m、安息角は24度であ
った。当該粉砕物を原料とし、その量を33kgとする以外は、実施例1と同様の運転を
実施した。投入された原料は、既述の分散板により8本の伝熱管に均等に分配され、原料
層の鉛直方向長さLと原料層直径Dの比(L/D)は48.2、また、各伝熱管内の原料
層下部における粉体圧を算出したところ、静置粉体圧にして511.6N/ であった
。得られた製品の固有粘度[η]、粘度平均分子量(Mv)、融点(Tm)の測定結果を表
−4に示す。
Figure 0004336597
[実施例5]
各伝熱管内における不活性ガスの空塔線速度を0.05mとする以外は、実施例4と同様の運転を実施した。得られた製品の固有粘度[η]、粘度平均分子量(Mv)、融点(Tm)の測定結果を表−5に示す。
Figure 0004336597
[比較例1]
胴部上下の分散板を取り外し、伝熱管の外径を165.2mm、内径を158.4mm
、胴部内に設ける伝熱管の本数を1本、投入する原料の量を15kgとする以外は、実施
例1と同様の運転を実施した。原料層の鉛直方向長さLと原料層直径Dの比(L/D)は
7.6、また、各伝熱管内の原料層下部における粉体圧を算出したところ、静置粉体圧に
して1282.3N/ であった。得られた製品の固有粘度[η]、粘度平均分子量(M
v)、融点(Tm)の測定結果を表−6に示す。
Figure 0004336597
[比較例2]
胴部上下の分散板を取り外し、伝熱管の外径を27.2mm、内径を21.4mm、胴
部内に設ける伝熱管の本数を52本、投入する原料の量を33kgとする以外は、実施例
1と同様の運転を実施した。原料層の鉛直方向長さLと原料層直径Dの比(L/D)は1
30.5、また、各伝熱管内の原料層下部における粉体圧を算出したところ、静置粉体圧
にして173.8N/ であった。運転開始直後、製品の排出を開始したが、製品排出
口にて製品の排出が確認できず、運転を中止した。当該多管式熱交換器型重合反応槽を解
体し、伝熱管内部を観察したところ、伝熱管の中央部にて原料が固結層を形成していた。
本発明で使用することができる多管式熱交換器型重合反応槽の一例の鉛直方向断面模式図である。
符号の説明
1. 原料ポリマー供給口
2. 回転式粉粒体輸送装置
3. 円錐形固定頭部
4. 原料ポリマー分散板
5. 胴部
6. 原料ポリマー流通管(伝熱管)
7. ジャケット
8. 不活性ガス分散板
9. 逆円錐形後頭部
10. 回転式粉粒体輸送装置
11. 製品排出口
12. 不活性ガス供給口
13. 液体加熱媒体供給口
14. 液体加熱媒体出口
15. 不活性ガス出口

Claims (5)

  1. ガラス転位温度(Tg)以上、融点(Tm)以下の温度範囲で固相重合反応を行う芳香族ポリカーボネートの製造方法において、重合反応槽内の原料層の鉛直方向長さ(L)と直径(D)の比(L/D)が10〜100の範囲であり、重合反応槽内の原料層下部における粉体圧が、静置粉体圧にして150〜9500N/mの範囲であることを特徴とするポリマーの製造方法。
  2. 当該重合反応槽が多管式熱交換器型重合反応槽であることを特徴とする請求項1に記載
    の方法。
  3. 原料層を構成する原料粉粒体の嵩密度が290〜930kg/mの範囲であることを
    特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 原料層を構成する原料粉粒体の安息角が15〜53度の範囲であることを特徴とする請
    求項1または2に記載の方法。
  5. 重合反応槽に導入する不活性ガスの空塔線速度が毎秒0.05m以上、原料粉粒体の流
    動開始速度の値未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
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