JP4328051B2 - 膝蓋骨支持インプラント - Google Patents

Description

【０００１】
（発明の簡単な説明）
本発明は、特に関節線に関して低い膝蓋骨位置の状態の膝において、インプラントを有する膝蓋骨（膝頭）の突然の後方回転「ゴツン」を減じ或いは除去する、人工膝関節用の改良された膝蓋骨支持体に関する。
【０００２】
（発明の背景）
病気やけがにより、膝関節の関節面が十分にきかなくなったり、痛く（関節炎に）なったりしたとき、これらの関節面は、普通は、外科手術を用いて、全部か一部が、補綴インプラントによって置換される。最も普通に行われるこの種の手術は、膝の関節面全部の置換であり、全膝置換と呼ばれる。時には、損傷は、膝関節の片側だけに、即ち、内側区画（身体の中線に向かう側）か外側区画（身体の中線から離れた側）のいずれかに限定される。そのとき、大腿骨と脛骨との間のこれらの損傷した側だけを置換する手術は、単区画置換（unicompartmental replacement）と呼ばれる。単区画置換は、内側か外側かのいずれかである。時には、損傷は、膝蓋骨（膝頭）と、膝蓋骨が関節でつなぐ大腿部溝との間の関節面に限定される。この場合、これらの関節面を置換する手術は、膝蓋大腿部置換と呼ばれる。
【０００３】
全体膝置換法又は部分膝置換法の多くの異なる設計が、支持面として種々の金属、プラスチック及びセラミックを使用して、時間が経つのにつれて発展してきた。当然、あらゆるこれらの支持面は、時間が経つのにつれて、支持体の破損、支持体の破断、又はインプラントのゆるみを生じさせる摩耗を受ける。これが起きると、インプラントを置換し或いは修正するために、別の手術が要求される。これは、修正置換（revision replacement）と呼ばれる。これは、関節を構成する、既に直した骨、腱、靱帯又は筋肉に実施される二回目の手術であるから、結果は、最初の又は初回の置換手術ほど良くはない。したがって、全ての関節置換法の重要な共通の目的は、患者の存命の間持ちこたえる、機能する快適な関節を提供することである。
【０００４】
膝蓋骨に関して報告された最低の合併症率に加えて、最も良く報告された長命を明らかに有する全膝置換補綴設計は、ビュシェル（Buechel）及びパパス（Pappas）による米国特許第４３０９７７８号（１９８２年）、第４３４０９７８号（１９８２年）及び第４４７０１５８号（１９８４年）による設計である。優れた長命及び低い合併症率に寄与しているこの膝蓋骨補綴物の設計の特徴には、（１）後部関節支持体が関節でつなぎする、大腿部溝からの変位又は転位に抵抗する、後部関節支持体の（他の膝蓋骨補綴物設計に比べて）深いＶ字形の輪郭、（２）接触応力を減らし、かくして摩耗を減らす、（他の膝蓋骨補綴設計におけるような二点接触重荷又は線接触重荷とは対照的に）領域接触重荷をもたらす広い接合支持面、（３）金属のベースプレートの円錐形のトラニオンを中心に回転させる、プラスチックの膝蓋骨支持体を設けることによって、この回転する膝蓋骨支持体を、自動調心法で働かせて、応力、摩耗及びゆるみを更に減ずることである。この膝蓋骨補綴物は、低接触応力（low contact stress）即ちＬＣＳの回転する膝蓋骨として知られている。
【０００５】
図１Ａ及び図１Ｂは、膝蓋骨１２に植え込まれた先行技術のＬＣＳの膝蓋骨支持体１１を用いている全膝蓋大腿部インプラントを示す。滑車構成部分１３が、大腿骨１４に植え込まれて示されている。図１Ａは、約４５°曲げた膝を示す。図１Ｂは、約１２０°まで曲げた膝を示す。膝蓋骨が、植え込まれた補綴物とともにＬＣＳ膝蓋骨支持体の鋭い斜めの上縁１７で突然振れる（矢印１６）ことが分かる。
【０００６】
先行技術のＬＣＳの回転する膝蓋骨支持体の特徴は、有害であり、不利であり、かつ不都合である。この膝蓋骨補綴物が、全膝置換かモジュラー全膝蓋大腿部置換（０９／０４／９８出願の米国特許出願第０９／１４８１１０参照）のいずれかのために患者に植え込まれ、患者が、大腿骨と脛骨との間の関節線から参照して、低く重なり合う膝蓋骨を有するときには、患者によって「ゴツン」と述べられる不快な痛い症状がおそらく起こるであろう。膝蓋骨が平均よりも低く位置した患者は、「膝蓋骨低位」、即ち先天的又は後天的状態を有するといわれる。反対の状態は、「膝蓋骨高位」と呼ばれる。上述の不快な痛い「ゴツン」は、膝蓋骨低位の患者が、手術後、彼等の正常な運動範囲を回復したときに起こり始める。患者が膝を直角以上に曲げると、既に低い膝蓋骨が、先ず大腿骨の下端の湾曲の周りに更に滑り、そして、膝蓋骨がプラスチック膝蓋骨支持体の鋭い斜めの上縁で突然後に振れる点に到達する。膝蓋骨及びそのインプラントのこの突然の後方回転は、その膝蓋骨の横軸線を中心に起こり、突然の不快な痛い「ゴツン」と患者によって感じられる。
【０００７】
前述した膝蓋骨補綴支持体の鋭い斜めの上縁はまた、補綴物が完全膝蓋大腿部置換のために植え込まれたときに、膝の正常な関節軟骨を損傷させる可能性がある。全膝蓋大腿部置換手術が行われるとき、膝蓋関節面全体が置換されるが、大腿骨の下端の関節面全体ではなく、大腿骨（滑車）の正面の前方の溝だけが置換される。大腿骨の端に残っている正常な軟骨は、脛骨の上端に残っている正常な軟骨と関節でつなぎをするようにわざとそのままにしておく。全膝蓋大腿部置換後、患者が膝を直角以上に曲げたとき、膝蓋骨補綴物は、大腿骨の下端の曲線の周りに更に移動し、次第に、金属の滑車インプラントとの接触をし、残っている正常な軟骨とますます接触する。ＬＣＳの補綴膝蓋骨支持体の鋭い斜めの上隅は、より柔らかい正常な関節軟骨に押し入り、突っ込み、或いは損傷させることがある。
【０００８】
患者が「ゴツン」音として経験する突然の不快な痛い症状を除去し、或いは減ずる、前述した膝蓋骨支持体の改良は有益であり、かつ望ましい。前記改良はまた、膝関節支持体が全膝蓋大腿部置換のために使用されたときに、正常な関節軟骨の損傷のリスクを少なくするであろう。
【０００９】
（発明の目的及び概要）
本発明の目的及び利点は、
（ａ）全膝置換又は全膝蓋大腿部置換の際に植え込まれた低接触応力（ＬＣＳ）膝蓋骨補綴物を有していたある患者によって経験された、突然の膝蓋骨の回転「ゴツン」音を減少させ或いは除去すること、及び、
（ｂ）全膝蓋大腿部置換の際に膝蓋骨補綴物が植え込まれたとき、前述の膝蓋骨補綴物の鋭い斜めの上縁によって引き起こされる関節軟骨の損傷を減少させ或いは除去すること、である。
【００１０】
改良した膝蓋骨支持体は、大腿部補綴構成部分か滑車補綴構成部分のいずれかと関節でつなぐ、その膝関節面の上縁及び下縁に丸みのある輪郭を備えた、長い上下寸法形状を有する。
【００１１】
（発明の好ましい実施形態の説明）
本発明の前述の目的又は他の目的は、添付の図面と関連して読むとき、以下の説明からより明瞭に理解されるであろう。
【００１２】
先行技術のＬＣＳ膝蓋骨支持体を図２Ａ及び図２Ｂに示す。図２Ａは、後面図、即ち関節面の図であり、図１Ｂは側面図である。膝蓋骨インプラント１１は、金属のベースプレート２２に取り付けられたプラスチックの支持体２１を有する。特に注目すべきは、鋭い、斜めの縁１７である。本発明の好ましい実施形態を、図３Ａ（後方図、即ち関節面の図）及び図３Ｂ（側面図）に示す。プラスチックの支持体２１を、金属のベースプレート２２上に示す。好ましい実施形態では、ベースプレートは、クロム−コバルト−モリブデン合金で作られ、支持体は、高密度ポリエチレン（high-density polyethylene（ＨＤＰＥ））で作られる。支持体の上寸法及び下寸法が増加させてある（２３）。全膝置換における大腿部構成部分に、又は全膝蓋大腿部弛緩における滑車構成部分に係合する関節支持面の鋭い斜めの上縁１７及び下縁１７は除去されている。その代わり、上下寸法が増加され、かつ、上関節支持面及び下関節支持面は、平滑な丸みのある輪郭を有するように作られられる。平滑な丸みのある輪郭は、膝蓋骨インプラントの大腿構成部分に、又は滑車構成分に係合する軸線凹面３０の両側の直線状の接合部に沿って配列される。平滑な丸みのある輪郭は、平坦部なしで接合部から関節支持面の底まで延びる。全ての補綴構成部分は、小から特大まで患者の様々な寸法に合わせるために様々な寸法で作られるから、追加した上寸法及び下寸法、及び丸みのある輪郭の曲率半径は、寸法に従って比例的に変化する。
【００１３】
他の実施形態が、セラミック、異なる金属合金、及び、異なるプラスチックのような他の材料を使用して、現在又は将来、可能である。補綴物及びそれらの関節支持面の主な特徴は周知であり、膝蓋骨インプラントの製作は説明されない。
【００１４】
本発明は、膝蓋骨補綴物が全膝置換手術か全膝蓋大腿部置換手術のいずれかに使用されるときに、古いＬＣＳ支持体に取って代わる。図４は、膝蓋骨１２に植え込まれた、先行技術のＬＣＳの膝蓋骨支持体１１及びベースプレート２２を示す。大腿部構成部分２７、脛骨構成部分２８が、大腿骨、脛骨にそれぞれ植え込まれて、全膝置換を完了した状態で示される。前述した図１Ａ及び図１Ｂは、古いＬＣＳの支持体１１及びベースプレート２２を膝蓋骨１２に植え込み、滑車構成部分１３とを大腿骨に植え込んで、全膝蓋大腿部置換を完了した状態を示す。
【００１５】
図１Ａは、膝蓋骨に植え込まれた、先行技術の膝蓋骨支持体１１及びベースプレート２２の側面図を示し、ここでは、膝を４５°曲げている。図１Ｂは、膝を更に約１２０°まで曲げたときに何が起こるかを示す。その植え込まれた補綴物を有する膝蓋骨は、突然、不快な痛い「ゴツン」を伴って、ＬＣＳ支持体の鋭い斜めの縁で後に振れる。図１Ｂの矢印１６は、膝蓋骨を通る仮想の横軸線を中心に起こる、膝蓋骨インプラントの突然の回転方向を図示する。
【００１６】
図５Ａは、膝蓋骨１２に植え込まれた新しいＬＣＳの膝蓋骨インプラント１１及びそのベースプレート２２を示し、この図では、膝が４５°曲げられている。図５Ｂは、膝を更に１２０°まで曲げたときに何が起こるかを示す。改良した支持体の上縁の平滑な丸みのある輪郭２４により、膝蓋骨を滑らかに回転させて、突然の不快な痛い「ゴツン」を徐々に除去し又は減少させる。
【００１７】
膝蓋骨補綴物を、右膝か左膝のいずれにも使用することができるから、上縁部と下縁部の両方を延長させ、かつ輪郭付けする。
【００１８】
膝蓋骨低位を有する傾向を有する患者の、全膝置換と全膝蓋大腿部置換の両方において、この改良された支持体を、回転する古いＬＣＳのプラスチック支持体と交換して、不快な痛い突然の膝蓋骨の「ゴツン」を除去し或いは減少させることができることが分かる。
【００１９】
本発明はまた、古いＬＣＳの膝蓋骨支持体の鋭い斜めの縁を除去し、それを、平滑な丸みのある輪郭を有する本発明と置き換えることによって、全膝蓋大腿部置換後に膝に残っている正常な関節軟骨の損傷を減じ、かつ最小にする。
【図面の簡単な説明】
【図１Ａ】 先行技術の膝蓋骨支持体を用いた膝蓋大腿骨置換を有する膝の側面図である。
【図１Ｂ】 先行技術の膝蓋骨支持体を用いた膝蓋大腿骨置換を有する膝の図１Ａと異なる曲げ角度での側面図である。
【図２Ａ】 先行技術の膝蓋骨支持体の前面を示す。
【図２Ｂ】 先行技術の膝蓋骨支持体の端面を示す。
【図３Ａ】 本発明による膝蓋骨支持体の前面を示す。
【図３Ｂ】 本発明による膝蓋骨支持体の端面を示す。
【図４】 全膝置換における先行技術のＬＣＳの膝蓋骨支持体を示す
【図５Ａ】 本発明による膝蓋骨支持体を用いた膝蓋大腿骨インプラントを有する膝の側面図である。
【図５Ｂ】 本発明による膝蓋骨支持体を用いた膝蓋大腿骨インプラントを有する膝の図５Ａと異なる曲げ角度での側面図である。

Claims (2)

1. ベースプレートと、
   全膝置換における大腿構成部分に、又は全膝蓋大腿部置換における滑車構成部分に係合するための前記ベースプレートに回転可能に取り付けられた関節支持面と、
   を有する膝蓋骨インプラントにおいて、
   前記膝蓋骨インプラントの前記関節支持面は、上関節面と下関節面とを有し、前記上下関節面は、大腿構成部分に、又は滑車構成分に係合するようになっている軸線凹面（３０）の両側の直線状の接合部に沿って配列された平滑な丸みのある輪郭（２４）を有し、前記平滑な丸みのある輪郭は、平坦部なしで前記接合部から前記関節支持面の底まで延びる、
   ことを特徴とする膝蓋骨インプラント。
2. ベースプレートはクロム−コバルト−モリブデン合金で作られ、関節支持面は、高密度ポリエチレンである、請求項１に記載の膝蓋骨インプラント。

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