本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、液体燃料の粘性や装置内部の温度条件などに大きく左右されず、液体燃料の燃焼性を良好とし、また燃焼開始に要する時間も短縮することが可能な燃焼装置、およびこれを備えた湯水加熱装置を提供することを課題としている。
本発明は、マイクロ波を液体燃料に対して直接照射し、液体燃料を効率良く、かつ局所的に加熱することにより、液体燃料の粘度を低くし、あるいは気化を促進し、上記課題を解決しようとするものである。具体的には、本発明は、次の技術的手段を講じている。
本発明の第1の側面により提供される燃焼装置は、液体燃料を噴霧するための噴霧ノズルを終端部に有する燃料供給路と、前記噴霧ノズルから噴霧された燃料を燃焼させるための燃焼部と、を備えている、燃焼装置であって、マイクロ波発振手段と、このマイクロ波発振手段により発振されたマイクロ波を伝送するためのマイクロ波伝送路としての同軸ケーブルと、を備えており、前記噴霧ノズルは、前記燃料供給路の末端に位置するノズル口の上流側近傍位置に、前記同軸ケーブルの終端部が進入して設けられていることにより、この同軸ケーブルの終端部が前記液体燃料中に浸漬し、これら同軸ケーブルの終端部と液体燃料とが直接接触する構成とされており、前記同軸ケーブルの終端部から前記液体燃料にマイクロ波を照射させることによって、前記液体燃料の温度および圧力を前記ノズル口の上流側近傍位置において上昇させることが可能に構成されていることを特徴としている。
このような構成によれば、マイクロ波の照射により液体燃料が加熱されるために、この液体燃料が粘度の高いものであっても、この加熱により粘度を低くし、噴霧ノズルから噴霧された際の燃料の粒子径を小さくして、その燃焼性を良好にすることができる。したがって、常温において粘度が高い液体燃料も有効に利用することができる。また、前記液体燃料の加熱は、マイクロ波を利用して行なわれているが、このマイクロ波を利用した加熱によれば、もともと加熱効率が良いことや、急速加熱が行なえるといった種々の利点を有することに加え、本発明では、マイクロ波伝送路の終端部を液体燃料に直接接触させた状態でのマイクロ波照射が可能であるため、前記終端部から出力されるマイクロ波の全量を液体燃料に照射させることができ、その加熱効率はより高いものとなる。また、液体燃料の加熱は、燃料供給路の末端のノズル口の上流側近傍位置において行なわれるために、加熱温度の立ち上がり速度をさらに速くすることができるなどの利点も得られる。このようなことから、たとえば電熱ヒータを用いて液体燃料を加熱する場合と比較すると、その応答性、制御性、および経済性などの種々の面において格段に優れたものとなる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記液体燃料の粘度を判断するためのセンサと、このセンサを用いて判断された前記液体燃料の粘度が所定値よりも高いときに前記マイクロ波発振手段を駆動させる制御手段と、を備えている。ここで、前記粘度を判断するためのセンサは、液体燃料の粘度を直接検出可能なものである必要はない。液体燃料の粘度は、その温度に大きく依存するため、たとえば液体燃料の温度を検出すれば、その液体燃料に固有の粘度を判断することが可能であり、このような温度を検出するためのセンサも、前記センサに含めることができる。前記構成によれば、液体燃料の粘度が高い場合には、マイクロ波を利用した加熱が行なわれて粘度の低下が図られることとなり、粘度が高いまま噴霧ノズルから噴霧されることが適切に回避される。
本発明の第2の側面によって提供される燃焼装置は、液体燃料を気化するための気化部と、この気化部において気化したガスを燃焼させるための燃焼部と、前記気化部に液体燃料を供給する燃料供給路と、を備えている、燃焼装置であって、マイクロ波発振手段と、このマイクロ波発振手段により発振されたマイクロ波を伝送するためのマイクロ波伝送路としての同軸ケーブルと、を備えており、前記燃料供給路の末端に位置するノズル口の上流側近傍位置に、前記同軸ケーブルの終端部が進入して設けられていることにより、この同軸ケーブルの終端部が前記液体燃料中に浸漬し、これら同軸ケーブルの終端部と液体燃料とが直接接触する構成とされており、前記同軸ケーブルの終端部から前記液体燃料にマイクロ波を照射させることによって、前記液体燃料の温度および圧力を前記ノズル口の上流側近傍位置において上昇させることが可能に構成されていることを特徴としている。
このような構成によれば、マイクロ波の照射により液体燃料が加熱されるため、気化器の温度が低い場合であっても、液体燃料の気化が促進され、燃焼性が良好となる。とくに、運転開始時において液体燃料の気化が促進されれば、気化が十分になされるまでの待機時間を短くし、燃焼運転を早期に開始することができる。また、液体燃料の加熱は、マイクロ波を利用して行なわれているが、この加熱方式は、本発明の第1の側面によって提供される燃焼装置と同様であり、前述したとおり、加熱効率が良く、また急速加熱が行なえ、応答性、制御性、および経済性などに優れる利点が得られる。さらに、マイクロ波加熱により燃料の気化促進を十分に図ることができるために、従来用いられていた気化促進用の電熱ヒータや攪拌ロータなどを不要にすることも実現可能である。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記気化部の温度を検出するための温度センサと、この温度センサにより検出された温度が所定値よりも低いときには前記マイクロ波発振手段を駆動させる制御手段と、を備えている。このような構成によれば、気化部の温度が低く、液体燃料の気化が適切に行なわれない虞れがある場合には、液体燃料がマイクロ波加熱により昇温するために、そのような虞れが適切に回避される。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御手段は、前記燃焼部における燃焼号数を決定する機能を有しているとともに、前記温度センサにより検出される温度が、燃焼号数に対応して予め定められている温度よりも低いと判断したときには、前記マイクロ波発振手段を駆動させる制御を行なうように構成されている。このような構成によれば、燃焼号数を上げるように制御する場合に、気化部の温度が低いことに起因してその燃焼号数に必要なだけの燃料の気化量が不足する事態を回避することが可能となる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記燃料供給路内における液体燃料の流量を検出する流量検出手段を備えており、この流量検出手段により検出される流量が多いほど前記マイクロ波の発振出力を高くする制御手段を備えている。このような構成によれば、液体燃料の流量が変動することに起因して液体燃料の加熱に過不足が生じるといった不具合を生じないようにし、安定した加熱が可能となる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記液体燃料の温度を検出する温度センサを備えており、この温度センサにより検出される温度が低いほど前記マイクロ波の発振出力を高くする制御手段を備えている。このような構成によれば、液体燃料の温度に応じてマイクロ波の発振出力が調整され、液体燃料の温度の一定化などを図るのに好適となる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記燃料供給路の途中には、流路サイズが部分的に大きくされ、かつその周囲がマイクロ波を反射可能な金属により囲まれたチャンバが設けられており、前記マイクロ波伝送路の終端部は、前記チャンバ内に配されている。このような構成によれば、チャンバ内に流入した液体燃料の全体を効率良く一斉加熱することが可能であり、前記チャンバを適当な容積にすることによって、液体燃料の燃焼量とチャンバ内において加熱される液体燃料の量とのバランスをとり、液体燃料の加熱制御を容易にするなどの効果が得られる。また、前記チャンバの周囲がマイクロ波を反射可能な金属により囲まれているために、マイクロ波が電磁ノイズとして外部に放出されることがない。さらに、マイクロ波は減衰するまで反射を繰り返して液体燃料内を進行する効果も得られるために、加熱効率がさらに高められる。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記燃料供給路の終端部またはその近傍には、ノズル口が開口した加熱用のチャンバが形成されており、このチャンバ内において前記液体燃料がマイクロ波によって加熱されて気化し、前記チャンバ内の圧力が上昇することによって、前記液体燃料が前記ノズル口から噴射されるように構成されている。このような構成によれば、たとえば単にポンプ圧によって圧送されるだけの場合よりも、液体燃料の噴射圧を高めることができ、ノズル口からは液体燃料を微粒子化した状態に噴霧することが可能となる。また、ノズル口は、燃料供給路の終端部に設けられているために、液体燃料を高温のまま噴霧することもできる。したがって、燃料の気化がより促進され、燃焼性を高めるのに一層好適となる。
本発明の第3の側面により提供される湯水加熱装置は、燃焼装置と、この燃焼装置により発生された燃焼ガスによって水管内の水を加熱するための熱交換器と、を有する湯水加熱装置であって、前記燃焼装置として、本発明の第1の側面または第2の側面によって提供される燃焼装置が用いられていることを特徴としている。
このような構成によれば、本発明の第1の側面または第2の側面によって提供される燃焼装置について述べたのと同様な効果が得られ、効率の良い適切な温水加熱が可能となる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1〜図5は、湯水加熱装置の一実施形態を示している。本実施形態の湯水加熱装置A1は、燃焼装置B1、熱交換器TH、および排気用ダクト57を備えている。
燃焼装置B1は、噴霧方式のものであり、噴霧ノズル10、燃焼部11Aを形成する燃焼筒12、制御部13A、マイクロ波発振装置3、およびマイクロ波伝送用の同軸ケーブル4を備えている。噴霧ノズル10は、液体燃料を燃焼部11Aに噴霧するためのものであり、この燃焼装置B1においては、下向きに燃料を噴射して燃焼させる逆燃式とされている。噴霧ノズル10には、燃料供給用および燃料戻し用の配管20A,20Bが接続されている。配管20Aの内部、およびこれに繋がった噴霧ノズル10内の流路が、本発明でいう燃料供給路の一例に相当する。図5に示すように、配管20Aは、噴霧ノズル10と貯留タンク21とを接続しており、その途中に電磁ポンプ22、電磁弁23、および逆止弁24Aを有している。配管20Bは、配管20Aの電磁ポンプ22よりも上流部分と噴霧ノズル10とを接続しており、逆止弁24B、アキュムレータ25、流量調整弁26を有している。この燃焼装置B1においては、流量調整弁26を制御し、配管20B内の流量を調整することにより、噴霧ノズル10からの液体燃料の噴射量を調整できるようになっている。
図2によく表われているように、噴霧ノズル10は、熱交換器THの上部に載設された缶体50Aの内部に装着されており、その近傍には点火プラグ51が設けられている。燃焼筒12は、噴霧ノズル10の周囲およびその下方領域を囲んでおり、この燃焼筒12の内部が、噴霧ノズル10から噴霧された燃料を燃焼させる燃焼部11Aとなっている。缶体50A上には、缶体50A内に燃焼用空気を送り込む送風ファン52Aが載設されており、燃焼用空気は、燃焼筒12の周壁部や段部などに形成された複数の孔12aを通過して燃焼部11に進入するようになっている。燃焼筒12の複数の孔12aの形成箇所には、いわゆる切り起こし加工が適宜設けられており、この部分を通過した燃焼用空気は、その切り起こし部分にガイドされて、燃焼部11Aにおける旋回流となるように構成されている。この旋回流の作用により、燃焼部11Aにおいて噴霧された燃料と燃焼用空気との混合が効率良く行なわれる。缶体50A内には複数の孔12aに燃焼用空気を適切に導くための複数の通路53a〜53cなどが形成されている。
図1において、マイクロ波発振装置3は、たとえばマグネトロンを用いて構成されており、2.45GHzのマイクロ波を発振可能である。このマイクロ波発振装置3は、インバータ回路を内蔵しており、マイクロ波の出力が可変である。同軸ケーブル4は、本発明でいうマイクロ波伝送路の一例に相当するものであり、その始端部4aはマイクロ波発振装置3に接続され、かつ終端部4bは燃料供給配管20Aに形成されたチャンバ29内に進入している。
同軸ケーブル4は、たとえば図4に示すように、たとえば内部導体40が銅線、その周囲の絶縁樹脂41がポリエチレン、外部導体42が銅編組、外部被覆材43が塩化ビニルとされたいわゆるポリエチレン充填ケーブルであり、フレキシブル性(可撓性)を有している。もちろん、これ以外の材質の同軸ケーブルを用いることができる。燃料供給用の配管20Aには、図3に示すようなチャンバ29が設けられており、同軸ケーブル4の終端部4bは、このチャンバ29内に挿入されていることにより、このチャンバ29内の液体燃料にマイクロ波を直接照射できるようになっている。チャンバ29は、噴霧ノズル10の近傍に位置しており、その周囲壁の全体がマイクロ波を反射可能な金属製である。このチャンバ29の流路サイズは、このチャンバ29の上流側および下流側において隣接する管体部分の流路サイズよりも大きく形成されている。同軸ケーブル4の終端部4bにおいては、外部被覆材43や絶縁樹脂41が適宜除去されて、内部導体40が外部導体42よりも適当な寸法だけ剥き出し状態で突出した構造となっている。また、内部導体40の剥き出しとされた部分は、先端部を除き円柱状であり、またその先端部は略半球状となるように丸みが付された形状とされている。
図1において、制御部13Aは、マイクロコンピュータを用いて構成されており、メモリに記憶されているプログラムや各種のデータ類、およびスイッチ操作により入力されたデータなどに応じて燃焼装置B1の各部の制御や信号処理を行なう。この制御部13Aは、後で詳述するように、燃料供給用の配管20Aに設けられた温度センサSaや、噴霧ノズル10に供給される液体燃料の流量を検出する流量センサSbからの信号に基づき、液体燃料に対するマイクロ波の照射による加熱が好適に行なわれるようにマイクロ波発振装置3の出力制御を実行するように構成されている。
熱交換器HTは、入水口55aおよび出湯口55bを有する管体55内に供給される水と燃焼ガスとの熱交換を行なうためのものであり、缶体50Aの下部に連結された筒状の缶体56を有している。この缶体56の上部においては、その外周壁に管体55の一部が巻き付けられた1次熱交換部が構成されている。缶体56の下部においては、管体55の他の一部がこの缶体56の内部を通過し、かつ複数枚のフィン55cを備えた2次熱交換部が構成されている。排気用ダクト57は、熱交換器HT内を通過して缶体56の底部開口部から下方に排出されてきた燃焼ガスを排ガスとして開口部57aから外部に排出させるためのものである。
次に、燃焼装置B1およびこれを備えた湯水加熱装置A1の作用について説明する。
まず、マイクロ波による液体燃料の加熱の作用について説明する。マイクロ波発振装置3によって発振されたマイクロ波は、同軸ケーブル4中を伝搬し、終端部4bから液体燃料に直接照射される。終端部4bは、液体燃料10中に浸漬し、これらは直接接触しているために、終端部4bから出力されるマイクロ波の全量が液体燃料に対して効率良く照射されることとなる。マイクロ波が照射されると、液体燃料は誘電加熱作用により、短時間で昇温することとなる。この昇温により、液体燃料の粘性は低くなり、噴霧ノズル10によって噴霧されたときの微粒子化が図られ、燃焼性がよくなる。
マイクロ波は、同軸ケーブル4中においては、内部導体40と外部導体42との間の部分を伝搬し、終端部4bに到達する。内部導体40の一部は外部導体42よりも突出しているために、マイクロ波の一部はこの突出部分により反射されて、四方に進行する。内部導体40の突出部分の各所の断面形状は円形であり、またその先端もその周方向において均一な丸みを帯びているために、前記突出部分からのマイクロ波の反射が一方向に偏って行なわれることも抑制される。したがって、終端部4bからは、その周囲や上方などの種々の方向に対してマイクロ波が均一な状態で進行することとなり、チャンバ29内の液体燃料の全体をまんべんなく加熱するのに好適となる。同軸ケーブル4は、このようにマイクロ波をその終端部から種々の方向に均一に出射させるのに適している。また、同軸ケーブル4は、フレキシブル性を有しているために、一般の金属製導波管とは異なり、そのとり回しが容易となる。また、平行2線路方式のケーブルとは異なり、同軸ケーブル4の外部に電磁界が発生しないために、マイクロ波の外部への放射損も少ない。
チャンバ29の周囲は、マイクロ波を透過させない金属で囲まれているために、マイクロ波がいわゆる電磁ノイズとして外部に放出されないようにすることができる。また、液体燃料内を一旦通過してチャンバ29の周囲の壁面に到達したマイクロ波は、この壁面によって反射されることにより、液体燃料内を再度通過する効果も期待できるために、このことによっても加熱効率が高くなる。チャンバ29は、配管20Aの他の部分よりも大きな流路サイズとされているために、ある程度纏まった量の液体燃料をマイクロ波照射によって一斉に加熱することができる。したがって、終端部4bのサイズにもよるが、液体燃料のごく微量ずつにマイクロ波を照射する場合と比較すると、加熱の効率がよい。
次に、制御部13Aの動作処理手順の一例を、図6に示したフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、制御部13Aは、運転が開始されると、温度センサSaからの信号に基づき、液体燃料の温度を検出し、その粘度を判断する(S1:YES,S2)。制御部13Aには、液体燃料の粘度と温度との関係を示すデータが予め入力されており、このデータと温度センサSaを利用して検出される液体燃料の温度により、粘度を判断することが可能である。むろん、粘度と温度との関係は、液体燃料の種類や成分が異なるごとに固有のものである。
次いで、制御部13Aは、液体燃料の粘度が予め定められた粘度よりも高いと判断したときには(S3:YES)、その粘度を所望の粘度まで低下させるのに必要な加熱量、およびこれに対応したマイクロ波の照射出力を演算などにより求める(S4)。そして、この求めた値でマイクロ波照射がなされるようにマイクロ波発振装置3を駆動させる(S5)。このマイクロ波発振装置3の駆動により、液体燃料は加熱され、微粒子化に好適な粘度まで低下する。
噴霧ノズル10からの燃料噴射は、継続的に行なわれており、前記マイクロ波発振装置3の駆動も原則的にはそれに伴って継続して行なわれこととなる。ただし、制御部13Aは、流量センサSbからの信号に基づいて液体燃料の流量を検出し、その流量が多いほどマイクロ波の出力を高くするようにマイクロ波発振装置3を制御する(S6,S7)。これにより、液体燃料の流量が変動しても、液体燃料を一定の温度に加熱することができる。このような一連の制御は、液体燃料の温度が所定温度よりも低く、粘度が高いと判断される期間中は継続して行なわれ、運転停止になるとマイクロ波の発振を終了する(S8:YES,S9)。前記とは異なり、液体燃料の温度が所定値よりも高く、粘度が低いと判断される場合には、マイクロ波の照射は行なわれない(S3:NO)。したがって、不必要なマイクロ波発振が回避され、ランニングコストを低くすることができる。
前記した動作手順では、液体燃料の粘度が高いと判断された場合に限り、マイクロ波の照射を行なっているが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、液体燃料の粘度が低い場合にマイクロ波の照射を行なってもかまわない。マイクロ波を照射して液体燃料の温度を高くすると、未加熱の場合よりも微粒子化が促進され、また高温であることに起因して噴霧後の気化が促進され、燃焼性を高めることができるからである。
図7〜図9は、湯水加熱装置の他の実施形態を示している。本実施形態の湯水加熱装置A2は、燃焼装置B2、熱交換器TH、および排気用ダクト57を備えている。熱交換器THおよび排気用ダクト57は、先に説明した湯水加熱装置A1のものと同様であり、その説明は省略する。
燃焼装置B2は、気化方式のものであり、気化部7、燃焼部11B、制御部13B、マイクロ波発振装置3、およびマイクロ波伝送用の同軸ケーブル4を備えている。図8によく表われているように、気化部7は、カップ状の容器70と、攪拌用ロータ71とを有している。容器70の底部には、加熱用のヒータ72が設けられている。ただし、後述するように、本発明によればヒータ72や攪拌用ロータ71を不使用にすることが可能である。燃料供給用の配管20Cは、その終端寄り部分がL字状に屈曲されて容器70の内部まで導入され、その端部から液体燃料を滴下できるように設けられている。攪拌用ロータ71は、滴下される液体燃料を飛散させて気化を促進するためのものであり、缶体50Bの内部に設けられたモータMの第1の回転軸73aに支持され、かつ容器70内において回転自在である。
容器70の外周囲には、複数の炎孔74aを有する炎孔プレート74が配されている。容器70内において気化した燃料は、その上部開口部を炎孔プレート74の上方空間に流れるように構成されている。一方、モータMの上方には、このモータMの第2の回転軸73bによって回転され、かつ缶体50Bの上部開口部80から缶体50B内に燃焼用空気を流入させるファン52Bが設けられている。炎孔プレート74の上方空間においては、この燃焼用空気と前記気化した燃料とが混合されてから複数の炎孔74aを下向きに通過するようになっている。この部分において燃料は燃焼され、この部分が燃焼部11Bに相当する。この燃焼装置B2も、燃焼装置B1と同様に逆燃式である。
燃料供給用の配管20Cのうち、容器70に近い部分には、図9に示すようなチャンバ29が設けられ、このチャンバ29内に同軸ケーブル4の終端部4bが挿入されている。この構成は、図3を参照して説明した構成と実質的に同一である。
制御部13Bは、容器70またはその近傍に取り付けられた温度センサScからの信号に基づいて気化部7の温度を検出し、その検出結果により後述するようなマイクロ波発振装置3の駆動制御を行なうように構成されている。また、制御部13Bは、一定の条件に基づいて、燃焼号数を決定するが、この燃焼号数と前記温度との関係においても後述するような制御を行なうように構成されている。
次に、燃焼装置B2およびこれを備えた湯水加熱装置A2の作用について説明する。
まず、燃焼装置B2は、燃料供給用の配管20Cに設けられたチャンバ29内において液体燃料がマイクロ波の照射により加熱されてから、気化部7に供給される。したがって、加熱により温度上昇を生じている分だけ、気化部7における気化が迅速になされ、燃焼を早期に開始することができる。また、気化が迅速になされれば、燃焼に必要な気化ガスを燃焼部11Bに多く供給できることとなるため、火力を強くし、燃焼号数を大きくするのにも好適となる。マイクロ波を利用した加熱作用は、燃焼装置B1において述べたのと同様であり、加熱効率が高く、また短時間で液体燃料を昇温させることができる。とくに、この気化方式を採用した燃焼装置B2においては、その運転開始時の待機時間を短くするのに最適となる。さらに、液体燃料をマイクロ波により十分に加熱させることにより、気化が促進されるために、電熱ヒータ72や攪拌用ロータ71を不要とし、装置の構造を簡素にすることも可能となる。
次いで、制御部13Bの制御動作手順の一例を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、制御部13Bは、運転開始になると、温度センサScからの信号に基づき、気化部7の温度を検出する(S21:YES,S22)。次に、制御部13Bは、気化部7の温度が予め設定されている所定の温度よりも高いか否かを判断する(S23)。その結果、気化部7の温度が低温であって、所定の温度以下であると、制御部13Bは、その気化部7の温度条件に見合ったマイクロ波の出力値(気化部7の温度条件において液体燃料を適切に気化させることができると考えられる温度まで加熱するのに必要なる出力値)を演算し、かつこの演算した出力値でマイクロ波が出力されるように、マイクロ波発振装置3を駆動させる(S24,S25)。この場合、液体燃料の温度も検出しておき、この温度も考慮することが好ましい。このような制御によれば、運転開始時において気化部7の温度が低く、本来ならば、液体燃料の気化が早期に行なえない場合であっても、制御部13Bの制御によりマイクロ波を利用した液体燃料の加熱が迅速になされることにより、そのような虞れは適切に解消される。また、気化部7の温度に対応してマイクロ波の出力値は変更されるため、液体燃料の加熱に過不足を生じないようにすることもできる。
前記したような運転開始初期の制御が終了すると、制御部13Bは、燃焼号数を決定する(S26)。この燃焼号数の決定は、熱交換器HTにおける入水温度、目標出湯温度、および目標出湯量などに基づいてなされる。次いで、制御部13Bは、この決定した燃焼号数を得るための条件として、気化部7の温度が適正か否かを判断する(S27)。この判断は、具体的には、燃焼号数ごとに予め定められている所定の温度と気化部7の温度とを比較して、気化部7の温度が高いか否かにより行なう。その結果、気化部7の温度が低いと判断した場合には(S27:NO)、制御部13Bは、気化部7の温度および燃焼号数に見合ったマイクロ波の出力値を演算してから、その演算した出力値が得られるようにマイクロ波発振装置3の制御を行なう。これに対し、気化部7の温度が高い場合には、マイクロ波の出力が停止される(S28)。このような燃焼号数と気化部7の温度との関係に対応したマイクロ波の出力制御は、運転が停止されるまで継続して行なわれる(S26〜S29)。このような制御によれば、気化部7における燃料の気化量に不足を生じて所望の号数の燃焼が得られなくなるといった不具合を防止し、制御部13Bにおいて決定した燃焼号数通りの燃焼を適切に実現することができる。
前記したような制御を行なう場合、電熱ヒータ72を駆動させて気化部7を加熱するようにしてもかまわない。この場合、電熱ヒータ72による加熱では不足する熱量分だけ、マイクロ波の照射によって補うといった制御を行なうようにすることもできる。また、この気化方式の燃焼装置B2においても、燃焼装置B1において適用されていたように、液体燃料の流量に対応してマイクロ波の出力を変更する制御を行なうこともできる。ステップS27においては、号数に対して気化部7の温度が高いか否かを判断しているが、気化部7の温度としては、気化器70の温度をそのまま用いてもよい。この気化器70の温度が液体燃料の気化温度以上であれば、マイクロ波の出力制御を細かく制御する必要を無くすことが可能である。さらに、気化部7の温度に代えて、液体燃料自体の温度に基づいてマイクロ波の照射制御を行なう構成とすることもできる。この場合、液体燃料の温度が低いほど、マイクロ波の出力を高めることとなるが、このようにすると、液体燃料の温度の一定化を図ることが可能となり、液体燃料の温度をやや高めにすれば、気化部7の温度が多少低い場合であっても、優れた燃焼性を得ることができる。
図11〜図13は、本発明に係る燃焼装置の他の実施形態を示している。
図11に示す燃焼装置B3においては、燃料供給用の配管20Cの終端部近傍にチャンバ29が設けられており、かつこのチャンバ29よりも配管20Cの終端部寄りの部分は、内径が先細りのノズル口29aとなっている。
このような構成によれば、同軸ケーブル4の終端部4bから出射するマイクロ波の出力を高めに設定し、ポンプ22Aにより液送されてくる液体燃料をチャンバ29内において沸騰させ、またはそれに近い状態となるように高温に加熱すると、このチャンバ29内における燃料の気化により、急激な圧力上昇を生じる。したがって、この圧力を利用して、ノズル口29aからは液体燃料をポンプ圧よりも高い圧力で噴射させることができる。その一方、ノズル口29aは、先細りのオリフィス状であるため、このノズル口29aから液体燃料が高い圧力で噴射するときには、噴霧状態となる。気化部7に対して高温の液体燃料がそのような状態で噴霧されると、即座に気化する。したがって、本実施形態の液体燃料の噴射方式を採用すれば、攪拌用ロータ71や加熱用のヒータ72を用いる必要性がより無くなる。なお、本実施形態の噴射方式は、気化方式の燃焼装置に限らず、図1に示した加熱装置B1のような噴霧方式のものにも採用することができる。この場合、図11に示されたチャンバ29がそのまま噴霧ノズル10に代わるものとなる。
図12に示す構成においては、同軸ケーブル4の終端部4bが、配管20Cの先端の先細りのオリフィス部としてのノズル口29aに接近し、またはノズル口29a内に進入するように設けられている。このような構成によれば、ノズル口29a内に存在する微小量の液体燃料に対してマイクロ波を極めて効率良く照射し、省エネ化を一層図りつつ、液体燃料の吐出の迅速化を図ることができる。加えて、上記構成によれば、ノズル口29a内の液体燃料をマイクロ波照射による強い静電場の雰囲気中におくことが可能であるため、静電霧化現象の原理によって液体燃料が噴霧吐出する効果も期待できる。
図13(a)に示す構成においては、同軸ケーブル4の終端部4bにおける内部導体40と外部導体42との先端高さが略同一に揃えられている。同図(b),(c)においては、先に述べた実施形態とは反対に、外部導体42の方が内部導体40よりも同軸ケーブル4の長手方向に突出している。同図(b)においては、内部導体40の一部が絶縁樹脂41から露出しているのに対し、同図(c)においては、そのような構成にはなっていない。
これらの実施形態においては、同軸ケーブル4内の内部導体40と外部導体42との間を伝搬してきたマイクロ波は、先に述べた実施形態の場合とは異なり、内部導体40の四方に向けて直接広がることはない。したがって、マイクロ波を広い領域に向けて照射するのではなく、たとえば液体燃料の流路内の比較的狭い領域においてマイクロ波を集中的に照射させるのに好ましいものとなる。これらの実施形態から理解されるように、マイクロ波伝送路として同軸ケーブルを用いた場合には、その終端部の形状を変えるだけで、液体燃料に対するマイクロ波の照射の仕方を簡単に変更し、最適な加熱が行なえるように設定することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係る燃焼装置および湯水加熱装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
マイクロ波発振手段としては、マグネトロンを用いたものに限らない。クライストロンや進行波管などの他の種類のマイクロ波電子管やデバイス類を用いてもかまわない。また、マイクロ波発振手段としては、出力可変のものを用いることが好ましいが、発振出力の可変は、マイクロ波の出力値そのものを変更する場合と、出力値は一定であるものの、間欠的にマイクロ波を発振し、かつその発振周期を変更することによってマイクロ波のトータルの発振量が変更される場合とのいずれであってもかまわない。いずれの場合においても、状況に応じてマイクロ波の出力を調整し、目標となる加熱条件に適合した加熱、あるいはそれに近い加熱が可能である。発振周波数は、2.45GHzに限らず、これ以外の周波数であってもよく、周波数可変のものを用いることもできる。
本発明においては、噴霧ノズル、気化部、および燃焼部の具体的な構造なども限定されず、また燃焼方式は、逆燃式でなくてもよい。本発明に係る燃焼装置は、湯水加熱装置の加熱源として用いるのに好適であるが、やはりこれに限定されない。