JP4326250B2 - 量子エネルギー効率の高い端窓x線管 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過型X線管用ターゲット、高効率で高励起エネルギーの透過型X線管、高効率で低エネルギーの透過型X線管、ターゲットと高効率の透過型X線管との組み合わせ、及びこのようなX線管を使用する用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線管においては、金属ターゲットへ電子ビームを入射し、入射電子が金属ターゲットによって停止される際にX線フラックスが発生する。固体ターゲットの場合には、典型的に、X線フラックスは電子ビームの方向から約90°の角度で放出されるが、透過型ターゲットの場合には、電子ビームの方向に沿って放出される。透過型ターゲットの場合、ターゲットの設計仕様に応じて、X線フラックスは、エネルギーがターゲット素子の特性を示すライン放射か、又はエネルギーが広いエネルギースペクトルに亘って広がる制動放射フラックスのどちらかが支配的になる。
【0003】
最新のX線管の設計において、所定の出力X線フラックスを発生させるための電気エネルギー量は非常に大きく、ターゲット材料が加熱されるので、回転式ターゲット、ターゲットの液体冷却、又はターゲットのヒートパイプ冷却といったターゲットの冷却を考慮する必要がある。
【0004】
現在入手できるX線管から発生されるX線のエネルギースペクトルは、制動放射が支配的であり、ターゲットに衝突する電子ビームのエネルギーを変えることにより、X線のエネルギースペクトルを変えることができる。電子ビームのエネルギーが高くなると、ピークの制動放射のフラックスばかりでなく、連続的な制動放射のX線エネルギースペクトルは、より高いエネルギー出力へシフトする。
【0005】
造影X線管はこの特徴を利用してX線に対してより不透明な物体又は身体部分を透過するように、高エネルギーX線を供給するようになっている。例えば、医療用造影X線管では、乳房撮影のためには約23〜28kV、歯科用途及び整形外科用途造影のためには約60kV、胸部造影のためには約130kV、及び腹部とGIX線のためには約80〜85kVの電子ビームエネルギーを使用している。制動放射スペクトルの低エネルギー部分は望ましくないX線を作り出すが、患者への有害な残留放射線量を低減するためにフィルタで除去する必要がある。それでも、蛍光透視、コンピュータ断層撮影、断層撮影、及び乳房撮影といった用途には、X線放射線量が多すぎるという重大な問題がある。フィルタは、有害なX線を低減するが、それにより造影に必要な高エネルギーX線が犠牲になり、X線の強度も低下してしまう。さらに、病巣のスポットを生成するX線からある距離に配置されたフィルタは、“フィルタのぼやけ(filter blur)”(輪郭のボケ)として知られている二次蛍光放射を通して更に品質の低下を生じる。
【0006】
現行のX線管ターゲットには高い熱負荷がかかるので、深刻なターゲットの過熱を考慮せずにターゲット上の電子ビーム衝突点を小さくすることはできない。従って、電子ビームの衝突点のサイズは大きくなり、その結果として得られる影像の解像度は低下する。実質的に予め選択された特性エネルギーをもつX線を発生させる非常に薄い金属箔を有する高効率の端窓形X線管が知られているが、このX線管の出力効率は、その潜在能力には達していない。
【0007】
特性X線を発生する高効率な端窓形X線管に単一のターゲット材料を使用すると、造影用の制動放射管に対して従来から行われていたようなX線のエネルギー変動を与えることができない。電子ビームのエネルギーが高くなると総X線フラックスは増えるが、X線管の出力スペクトルと、結果として生じるX線光子エネルギー分布とは実質的に同じになる。従って、単一の高効率ターゲット材料を使用して、密度及び吸収作用が異なる物体の影像を得るために必要な、いろいろなX線エネルギーを得ることができない。
【0008】
1991年8月27日に発行されたWangの米国特許第5,044、001号には、ベリリウム等の基板上に銀等の薄い金属被膜を含むターゲットを有する透過型X線管が説明されており、その開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれる。1997年5月6日に発行されたWangの米国特許第5,627、871号には、ベリリウム等の基板上に薄い金属被膜を含むターゲットを有する透過型X線管が説明されており、その開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれる。この特許において、高効率な透過管は、電子ビームのピークエネルギーがターゲット材料のK−吸収限界の約1.5倍に、ターゲットの厚さが約0.1から2ミクロンになるように設計されている。Wangのこれら2つの特許には、高いX線フラックス密度の単色又は特性X線が発生することが開示されている。しかし、これらの単色X線は多くの用途において重要な利点をもたらすが、出力X線フラックスの量が制限され、このX線管を広範な用途に使用することを依然として制限している。
【0009】
Hershynの米国特許第4,870,671号には、マルチターゲット型X線管が説明されており、その開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。マルチターゲット型X線管に関するこの特許において、複数の電子ビームが別のターゲット材料を励起するのに使用される。この特許の他の形態によるマルチターゲット型X線管は、各々のターゲット材料毎に異なる方向へ向けられたX線放射面を有しており、発生したX線は個々に平行にされる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、所定の電気エネルギー消費量に対する増大されたX線フラックスの発生及びその結果生じるターゲットの発熱を高効率な透過型X線管と、不要な放射量を低減して最適な造影に必要な出力エネルギーに集束する予め選択された特性エネルギーのX線と、単一のX線管から異なる制動放射と予め選択されたKラインエネルギーと単一電子ビームの組合せを発生させる複数のX線ターゲットと、制動放射のピーク出力が衝突電子エネルギーの増加に伴って増加しない制動放射を発生する方法と、解像度の高い影像を得るための小さな電子ビーム衝突点サイズと、低価格で軽量なX線発生装置と、予め選択された特性エネルギーをもつX線の使用を必要としない用途のための非常に明るい高効率の制動放射X線とを提供する必要がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、X線に対して透明であり実質的に平らな基板の個別の領域上に、薄い箔で作られた複数のターゲット材料を有する透過型X線管用ターゲットが提供される。単一の電子ビームは、異なるターゲット材料または異なる厚さの同じ箔に衝突して、少なくとも部分的に箔の特性によって、少なくとも部分的に箔の厚さによって、及び少なくとも部分的に衝突する電子ビームのエネルギー及び焦点サイズによって、決定される、異なるエネルギー及び特性をもつX線を発生する。また、ターゲットは、一方を他方の上に順次積層されているか、またはX線に対して実質的に透明な基板上に順次積層されている少なくとも2つの異なる箔を備える。電子ビームは、電子ビームに最も近いターゲット箔に衝突して、少なくとも部分的にターゲット材料によって、及び少なくとも部分的に衝突する電子ビームのエネルギー及び焦点サイズによって決定されるX線を発生する。低い電子ビームエネルギーでは、箔の1つだけから特性X線が発生し、高い電子ビームエネルギーでは、全ての箔層から特性X線が発生し得る。
【0012】
また、本発明は、真空ハウジングと;該ハウジング内に配置され、少なくとも1つの薄い箔のターゲットまたはX線に対して実質的に透明な基板材料上に蒸着された薄い箔のターゲットを有する端窓陽極と;ハウジング内に配置され、該ハウジング内のビーム経路に沿って進み、前記陽極の一点に衝突して端窓を通ってハウジングを出るX線ビームを発生する電子ビームを放出する陰極と;明るい予め選択されたエネルギーのX線ビームを発生させるために、選択された電子ビームエネルギーを発生する前記陰極に接続されている電源とを備える端窓X線管であって、電子ビームエネルギーは、出力X線の予め選択されたk-αエネルギーより2倍(100%)以上、且つ出力X線の予め選択されたk-αエネルギーの20倍程度まで高く、そして箔の厚さは、2μmから50μmの間の、X線の明るい発生源となるように選択されている。X線ビームは、端窓ターゲット表面の上、上方、又は下方に随意的に集束できる。
【0013】
また、本発明は、真空ハウジングと;該ハウジング内に配置され、少なくとも1つの薄い箔、またはX線に対して実質的に透明な基板上に堆積された少なくとも1つの薄い箔のターゲットから成る端窓陽極と;ハウジング内に配置され、該ハウジング内のビーム経路に沿って進み、前記陽極の一点に衝突して端窓を通ってハウジングを出るX線ビームを発生する電子ビームを放出する陰極と;ターゲット箔のX線特性の明るい制動放射を発生させるために、選択された電子ビームエネルギーを与える前記陰極に接続された電源を有し、ターゲット箔の厚さは、ターゲットに衝突する電子の透過深度の2倍以下であり、ターゲット箔の厚さは、発生された制動輻射のX線の明るいソースを生成するために、好ましくは、2μm〜50μmの間に選択される端窓X線管である。
【0014】
また、本発明は、真空ハウジングと;該ハウジング内に配置され、自立できる箔またはX線に実質的に透明な基板上に堆積された箔のいずれか一方の薄い箔からなる端窓陽極と;ハウジング内に配置され、該ハウジング内のビーム経路に沿って進み、前記陽極の一点に衝突して端窓を通ってハウジングを出るX線ビームを発生する電子ビームを放出する陰極と;明るい予め選択されたエネルギーのX線ビームを発生させるために、必要なスレッショルドエネルギー以下のエネルギーの電子ビームエネルギーを発生する前記陰極に接続されている電源と;X線の明るい発生源となるように選択され、好ましくは、2μm〜25μmの箔の厚さを備える端窓X線管である。X線ビームは、端窓ターゲット表面の上、上方、又は下方に随意的に集束できる。基板は、ベリリウム、アルミニウム、またはそれらの合金から選択的に作られる。
【0015】
前述のターゲット及び端窓X線管において、電子ビームのターゲットへの衝突点は、随意的に移動させることができ、衝突位置を変更できる。
【0016】
更に、X線撮影、X線透視、断層撮影、コンピュータ断層撮影、及び影像を取得するための複数エネルギーX線技術を利用した、一般的な医療用X線造影、乳房造影、血管造影、心臓血管造影、骨密度測定、歯科用造影、電子回路基板造影、放射線療法、及び集積回路造影に使用されるX線を発生する端窓X線管が提供される。端窓X線管は、Cアーム型及び携帯型X線装置に組み込むために提供される。端窓X線管は、集積回路や回路基板の検査、荷物や輸送コンテナを含む物体の非破壊検査(NDT)、及び非破壊検査に用いる一般的なX線透視に使用するために提供される。さらに,生物学上のサンプルを死滅したり、改変したりすることによって病気を治療するのに有用な端窓X線管が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの実施形態において、X線ターゲットは、X線に対して実質的に透明であり実質的に平らな基板の個別の領域上に被覆された電気的に導電性の材料の複数の薄い箔を有する。このような箔は、通常金属または金属合金から作られるけれども、本発明によるX線を発生することができる素子には導電性ポリマーもある。導電性ポリマーの例として、ポリアセチレンまたはメラミン、ポリアニレン及びポリ-o-アニシディン(poly-o-anisidine)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明によるX線を発生するために、ある形状の基板に堆積されることができる全ての素子を用いることができる。これらの堆積は、アルミニウムまたはベリリウム基板上にスパッタリングによって堆積されたホウ素の縮退したp型ドーピング、または砒素、アンチモンまたはリンのn型ドーピングを有するシリコンを含むが、これに限定されない。電子ビームが種々の箔のターゲットに衝突する点の位置を切り換えて異なるエネルギーのX線フラックスの選択的な放出を得るために、透過型X線管にターゲットを使用できる。単一のエネルギースペクトルが望まれる場合、又は異なるX線エネルギースペクトルでもって同一物体の複数の影像を作り出すために電子ビームが1つの位置から別の位置へ連続的に移動できる場合には、X線管への電力供給に先立って、電子ビームが衝突する箔を選択することができる。
【0019】
図1は、単一のターゲット上に堆積又は蒸着された4つの異なる箔を有する円形ターゲットの平面図を示す。ターゲット材料は、典型的には領域1で示すように、単一の箔を4等分した同一の幾何学形状で例示されているが、電子ビームスポットを集束するのに十分な大きさの任意のサイズの幾何学形状、及び任意の数の異なる箔を使用できる。各々の箔の厚さ及び各々の箔内の厚さの変動値は、用途に応じて変わり得る。箔を堆積するための1つの方法は、マスクを用いて、他の領域を堆積から保護しながら、当業者には公知の任意の技術を用いて、ターゲット材料が堆積される基板の各々の領域を露出させる方法である。各々の箔は同様の方法で堆積できる。
【0020】
箔の厚さは、箔の材料、電子ビームの衝突エネルギー、X線管の寿命、箔による出力フラックスの自己フィルタリング、及び、ライン放射、制動放射、又はそれらの組み合わせといった所望のX線放射の形式に応じて様々である。図10は、金及びタングステンのターゲット中に電子が透過する深度を、電子ビームエネルギーの関数として示す。ターゲットの厚さを選択することによって、制動放射及び特性X線生成の混合比を調節できる。
【0021】
エネルギーEの電子が本発明の単一箔のターゲット、またはマルチ箔のターゲットの1つへ入ると、ターゲットへの電子の透過深度は、以下の公知の公式によって与えられる。
R=4120×E(1.265−0.0954lnE)/ρ
ここで、Rは透過深度(μm)である。Eは一次電子のエネルギー(MeV)である。そして、ρはターゲットの立方センチメートル当たりの吸収密度(グラム)である。この公式は、10keV〜3MeVの電子エネルギーに対して当てはまる。
【0022】
本発明の目的のために、薄い箔のターゲットの厚さが電子の透過深度の2倍以下であるときを定義することによって、X線管は主に制動放射を発生する。
【0023】
図6を参照すると、高いエネルギーの電子が、“制動輻射X線発生領域”と呼ばれる領域においてターゲットに入る。この領域は、“特性X線発生領域”と呼ばれる“制動輻射X線発生領域”に続く領域より薄い場合、図9に示されるプロセスによって入射源制動放射X線を特性X線に変化するために利用できる充分なターゲット材料がある。もし、特性X線を発生する領域が制動放射X線を発生する領域より薄いならば、特性X線の発生は不充分であり、X線管の出力は上記の定義によって主に制動放射になると考えられる。
【0024】
図10は、電子ビームのエネルギーの関数としてプロットしたニッケル、タングステン及び金の透過深度を示している。図16は、電子ビームに対して加速エネルギーを与えるいろいろな管電圧に対する出力エネルギーのスペクトラムを示す。ターゲット厚は25μmである。管電圧が80kVを越えると、ニッケルターゲットにおける電子の透過深度は約12.5μm、即ちターゲット厚の1/2である。定義によって、約80kV以上のこのターゲット構成からのX線出力は、主に制動輻射である。図16D〜図16Hは、ターゲットからの特性Kライン出力において非常に僅かな増加があるが、全放射は、50μアンペアの同じ管電流を用いて、80kVの管電圧において371mRad/minから110kVの管電圧において703mRad/minまで増加することを示している。この放射の増加は、スペクトラムの制動放射部分の増加となっている。
【0025】
150kVの電子エネルギーに対して、金またはタングステンターゲットのいずれかへの電子の透過深度はほぼ10μmである。したがって、20μmより薄いターゲットおよび150kVの加速電圧に対して、主に制動放射が発生する。この制動放射の例は図14Bに示されている。100kVの電子の透過深度は、5μmより大きい。単一箔のターゲットは、電子の透過深度の2倍以下である僅か5μmのターゲット厚を有しており、従って、放射は主に制動放射である。
【0026】
多くの用途に対して、Kライン放射の高い割合を有するX線は、制動放射が望まれる。
【0027】
図4、図5、図16A〜D、図17及び図18は、ターゲット材料、箔の厚さ、管電圧及びその結果生じる5つのX線管からのX線エネルギーの例を示し、これらのターゲットは、予め選択された特性Kライン放射を与えるために選択されている。この種のKライン放射は、以下に説明されるように多くの用途において有用である。
【0028】
Lライン放射がKライン放射より有用である場合、多くの用途がある。例えば、X線リソグラフ及び医学的治療への応用を含むがこれに限らない用途のために臭素原子を励起してオージェ電子(Auger electron)を発生するために、最大数のオージェ電子は、励起エネルギーが臭素のK吸収(13.475keV)より僅かに大きいときに発生される。ウラニウムのL-α1ラインは、13.613で、臭素のK吸収の僅かに上であり、臭素からオージェ電子を発生させるためにX線の高効率源を提供する。臭素からオージェ電子をリリースする場合、同じ効率を有するKライン放射を発生する実用的なターゲット材料がないので、ターゲット箔に対してウラニウムを使用することは非常に有利である。
【0029】
ターゲット材料の予め選択されたエネルギー特性のX線を発生するために必要なスレッショルドエネルギーは、上述の機器で測定される最も強い制動放射のフラックスの強さの2倍であるk-αフラックス密度を発生する電子ビームエネルギーとしてここで定義される。定義によって、衝突する電子のエネルギーがスレッショルド以下であると、その結果生じるX線放射は、主に制動放射である。
【0030】
図15を参照すると、固体の銀ターゲットk-α特性ラインに対する計数の相対的フラックスは、22.162keVの銀のk-αエネルギーにおいて3900を数える。最も強い制動放射のエネルギーは、ほぼ12keVにおいて生じ、それは約1900カウントの相対的フラックス密度を有する。このデータは35kVの電子加速電圧に対して得られた。したがって、このターゲット構成に対する予め選択されたエネルギーのX線を発生するスレッショルドエネルギーは、35kVより僅かに小さい。
【0031】
図14Cと図14Dを参照すると、25μ厚の単一のタングステンターゲットからX線を得るために用いられる加速エネルギーは、このターゲット構成に対するスレッショルドエネルギーより明らかに小さく、その結果生じる放射は主に制動放射である。図14Dと図14Bを比較すると、図14Dの25μmの厚いターゲットは、5μmの薄いターゲットに見られるLラインや他の低いエネルギーのX線を自己フィルターリングしており、従って、厚いターゲットから出力されるフラックス密度は、薄いターゲットからのフラックス密度よりも少ないけれども、低いエネルギーのX線が必要でない用途においては有用である。本発明によるフィルタリングは、ターゲットの厚さによってなされる。
【0032】
従って、本発明は、従来のフィルターを必要とせず、従来X線を発生するターゲット上のスポットからある距離に配置されたフィルターからの二次電子によって引き起こされる“フィルターのぼやけ”を除去することができる。これは、低いエネルギーのX線放射が動物や人間の組織に損傷を引き起こす医療上の撮像、及び高レベルの低いエネルギー放射がディジタルセンサの飽和を引き起こすNDT(これに限定されるものではないが)に用いられた場合、本発明の大きな利点である。
【0033】
箔の厚さが薄すぎる場合には、ターゲットは、電子が最初にターゲットに入ると、発生する低いエネルギーのX線は箔の連続する厚さによって吸収されるときに得られる自己フィルタリングを備えないであろう。従って、ターゲットの厚さは、種々のファクターの中で、必要な全X線フラックス、使用する電子ビームエネルギー、低エネルギーX線の箔による自己フィルタリング、所望の特性X線放射に対する制動放射の割合、及びX線管の寿命を考慮して選択される。例えば、50kVpの電子ビームエネルギーにおいて、金及びタングステン内への電子透過深度は約2.5μmであり、250kVpでは約30μmである。ターゲット箔の厚さは50μm以上から約0.25μm又はそれ以下の範囲にある。
【0034】
実質的に特性KラインのX線をもたらすのに必要な厚さは、材料及び電子ビームエネルギーによって様々である。例えば、図4B、図4C及び図4Dに示されるように、実質的に特性KラインのX線は、40kVより大きい電子ビームエネルギーで厚さ25μmの薄いモリブデン(17.478のk-α)箔を使用することによって得られる。図18は、2.1μm厚のモリブデンターゲットから発生されたフラックスを示す。低いX線管電圧で、2.1μm厚のターゲットに対するフラックス密度は、25μm厚のターゲットに対するよりもかなり高い。X線管の輝度は、選ばれた管電圧における光子エネルギーに対して、厚さ10μmの箔は厚さ25μmの箔よりも約35%明るい。
【0035】
本発明の1つの実施の形態において、ターゲット材料、電子ビームの加速エネルギー及びターゲットの厚さは、図1に示されるように、マルチターゲット材料の少なくとも1つに対して選択され、電圧は、ターゲット箔の予め選択されたKラインエネルギーのX線を発生するのに必要なスレッショルド以下であるが制動放射の広いスペクトラムを発生する。他の実施の形態では、多数の個別の領域の少なくとも2つは同じ材料であるが、異なる厚さで作られている箔を含む。
【0036】
さらに他の実施の形態において、マルチターゲット領域の少なくとも1つに対して、加速電子電圧は、ターゲット箔の厚さがターゲットに衝突する電子の透過深度の2倍以下であるように選ばれ、主に制動放射を発生する。同様に、単一のターゲットのみが本発明のX線管と共に用いられると、上述した制動放射の出力を得ることができる。
【0037】
本発明のターゲット構造を使用する透過型X線管の用途には、これに限定されるものではないが、マルチターゲット材料またはターゲット厚を有する1本のX線管を使用して、実質的に特性ラインのX線または人体又は動物の多くの異なる部分の実質的に特性ラインのX線または実質的に制動放射との組合わせによる医療用影像を提供するものを挙げることができるが、現在のところ異なる特有の造影プロトコルのため種々のX線管が必要である。
【0038】
他の用途としては、実質的に同じエネルギースペクトラム、一般的には実質的に制動放射を有する小さな効率のX線管を同じ管電流に対する現在の管より非常に多くの出力フラックスを生成することができる管で置き換えることができる。
【0039】
他の用途としては、医療用造影及び非破壊検査のためのデュアルエネルギー造影を挙げることができる。実質的に1つ又はそれ以上の制動放射X線発生管から出力される2つの異なるエネルギーによって行われるデュアルエネルギー造影は、臨界吸収エネルギーにおけるX線光子の不足に陥り、両方の電子ビームエネルギーから出力されるX線エネルギーの明瞭なエネルギー分離が悪くなる。
【0040】
本発明のターゲットを使用した透過型X線管は、臨界吸収エネルギーで集束されたエネルギーを提供し、非常に明瞭なエネルギー分離を有する実質的に特性X線エネルギーを提供する。本発明によれば、2つ以上のX線エネルギーを使用することが可能であり、任意の方法で影像を加減して改善された影像を作り出すことが可能である。例えば、これらに限定されるものではないが、乳房造影において潜在的ガン病巣の影像から不要な脂肪組織の影像を差し引くこと、胸部X線影像から骨格影像を除去すること、標準的な二光子吸収法を用いる骨密度測定、サブトラクション血管造影、及び非破壊検査及び医療用造影において当業者には公知の他の多くのデュアルエネルギー造影の用途を挙げることができる。この形式のターゲットは、電子回路基板及び集積回路の非破壊検査のための複式エネルギー造影において特に有用である。
【0041】
乳房造影の用途において、図1に示すような基板上に蒸着された2枚以上の薄い箔を組み合わせたものを使用することができ、使用可能な箔としては、Mo、Y、Rh、及びAgを挙げることができる。これらの箔の各々は、異なる密度の胸部を撮影するのに使用できる。胸部密度の各々のカテゴリに対する適切なターゲット材料に電子ビームを衝突させることができる。
【0042】
別の用途としては、医療用造影に関する一般的なX線撮影用途がある。例えば、医療撮像用X線管は、乳房撮影用には約23〜28kV、歯科用または成形外科用には60kV、胸部造影には約130kV、及び腹部とGIX線には約80〜85kVの電子ビームを使用する。電子ビームエネルギーが高くなると、制動放射スペクトルは大きく変化する。図3は、加速電圧が5kVから25kVまで増加すると、出力X線フラックスがどのように変化するかを示している。図4は、電子ビームエネルギーを30、40、50、及び60kVとした場合の厚さ25μmのモリブデンターゲットの出力を示す。このターゲットは、基板を用いることなく薄いモリブデン箔のみを用いて作られる。出力X線のエネルギースペクトルは、電子ビームエネルギーが2倍になってもそれ程は変化しない。
【0043】
図5、図6、図17及び図18は、X線スペクトラムのピークエネルギーが増加する電圧によってシフトしないX線スペクトラムの他の例である。多数の異なる箔を備えている単一のターゲットを使用することによって、実質的に単色のX線を発生させることができる。この単色X線は、相当明るく、小さな点サイズに集束させて高解像度の医療用影像を提供でき、低X線エネルギーでのX線フラックスが大幅に低減されているので患者への放射線量を減らすことができ、単一のX線管を多数の異なる医療用造影用途に使用することが可能になる。
【0044】
一般のX線撮影用の低価格で高解像度のX線管を提供することに加えて、かかるX線管は、一般のX線撮影用X線管に特別な機能を付加できる。特別な機能としては、これらに限定されるものではないが、乳房造影、血管造影、及び「デュアルエネルギー」胸部、乳房、及び他の造影用途、及び一般のX線撮影用途に用いるのと同じX線管を備える用途を挙げることができる。とりわけ、電子回路を含むいろいろな物体の非破壊検査用の撮像について同様の用途が考えられる。
【0045】
デュアルエネルギー用途に関して説明すると、所望の箔を有するターゲットの1つの領域に集束させた電子ビームを用いて第1の影像を取得し、次に電子ビームを異なる所望の箔を有するターゲットの別の領域に集束させて、第2の影像を取得する。また、第3の影像は、第3の箔を有するターゲットの第3の領域を使用して取得できる。各影像は、部分的に又は全体的に差し引いて必要な特徴は残し、不要な特徴は除去する。本ターゲットを使用した透過型X線管は、各々の影像内の不適当な光子、各影像の各々を生成する各X線間のエネルギー分離、及び影像ノイズによって阻害される現行のデュアルエネルギー影像を改善できる。電子ビームがターゲットに衝突する位置を変化させるだけでなく、単一の箔に衝突する電子ビームのエネルギーを変化させるか、又はその箔からのX線スペクトルのピークフラックスの出力エネルギーを変化させることなく出力X線フラックスを高めることによって、各影像の各々の強度を個別に調節できる。
【0046】
本発明の別の実施形態において、X線ターゲットは、X線に対して実質的に透明な基板上に積層された複数の異なる薄い箔を有する。代わりに、陰極から最も遠い箔の厚さは充分であり、強度が充分強くて、大気から管内の真空を保つことができる場合は、基板は必要ない。ターゲットは、電子ビームの衝突エネルギーが変化する透過型X線管に使用して、実質的に異なる特性ラインエネルギーを有するX線を発生するようになっており、これは少なくとも部分的に、ターゲット材料、箔の厚さによって、及び電子ビームの衝突エネルギーによって決まる。
【0047】
図2はターゲットの側面図を示し、第2の積層材料は非常に薄い箔2であり、基板4の上面に積層されている厚い箔3の上面に積層されている。図示のため、基板が示されている。そして、全ての用途に基板が必要とされない2つの層のみが示されているが、用途に応じて別の層を付加してもよい。電子ビームの衝突エネルギーが全ての箔の特性ラインエネルギーに関する吸収限界よりも低い場合には、線エネルギー放出は起こらない。複数の積層箔の1つのみが特性X線を発生する電子ビームエネルギーが存在する。同様に、全ての箔層が特性X線を発生する高エネルギーの電子ビームが存在する。
【0048】
同じX線焦点から、例えばイットリウム(14.9keVのk-α)及びモリブデン(17.4keVのk-α)の2組以上のライン放出が望まれる場合には、ベリリウム又はアルミニウム基板上の厚さ10μmのモリブデン箔上に被覆された厚さ0.4μmのイットリウム箔は、20kVの電子ビームエネルギーに対してはイットリウムのk-αラインを、60kVの電子ビームエネルギーに対してはイットリウム及びモリブデンラインの両方を放出できる。イットリウム及びモリブデンの同一の両k-αラインは、電子ビームエネルギーが60kVの時、同じX線焦点から放出できる。
【0049】
図13は、X線フラックス強度を、本発明の積層ターゲットを備えたX線管からの出力X線フラックスエネルギーの関数としてプロットした図である。厚さ2.0μmのタングステン層がベリリウム基板上に置かれている。厚さ0.5μmの銀から成る第2の層がタングステン層上に積層されている。電子ビームを70kVのエネルギーでターゲットに衝突させた場合に発生するX線フラックスの強さが、出力X線エネルギーの関数としてプロットされている。約8.4keVに見られるピークは、タングステンの特性Lラインを表しており、約22keVに見られるピークは、銀の特性Kラインを表している。約10keVよりも小さい衝突電子ビームエネルギーは、特性X線を全く発生させない。しかし、電子ビームエネルギーが増大するにつれて、タングステンの特性Lラインが現れる。エネルギーが約31keVより高くなると、タングステンのLラインと銀のKラインの両方が現れる。
【0050】
X線影像は、タングステンのLラインのみを使用して、又はタングステンのLラインと銀のKラインの両方を使用して取得できる。従って、この種のターゲットは、銀の高エネルギーKラインから非常に高いX線フラックス流量と、銀のKラインとタングステンのLラインとの間でエネルギーの非常に明確な分離とを提供するので、デュアルエネルギー造影に非常に有用である。図示のため、1つの材料のK-ラインと他の材料のL-ラインが使用されたけれども、両方の材料のK-ラインを同様に、効果的に使用することができる。
【0051】
単一のX線管を使用して、異なるエネルギースペクトルを用いて物体の2つの影像を生成し、不要な信号を除去するために一方の影像から他方を差し引く場合には、本発明の積層ターゲットは特に有用である。電子ビームを移動することは必要ないので、両方の撮像が同じ位置のスポットから作られる。幾つかの例を挙げると、乳房造影法において潜在的ガン病巣の影像から不用な脂肪組織の影像を差し引くこと、胸部X線影像から骨格影像を除去すること、標準的な二光子吸収法を用いる骨密度測定、デュアルエネルギー血管造影、及び非破壊検査及び医療用造影において当業者には公知の他の多くのデュアルエネルギー造影の用途を挙げることができる。
【0052】
他の用途としては、X線造影装置を用いて検査しようとしている特徴部が、検査官にとっては各々が重要である、異なる吸収スペクトルをもつ2つ又はそれ以上の特徴部を含むX線造影に関する用途がある。この形式のターゲットは、電子回路板や集積回路の非破壊検査のための複数エネルギー造影において有用である。一般的な放射線撮影において、電子ビーム電圧を調節することによって、同じX線管で、これらに限定されるものではないが、整形外科、胸部、GI、及び頭部造影といった身体の種々の部分の造影が可能になる。随意的に、不要な低エネルギー放射を低減するためのフィルタを使用してもよい。
【0053】
X線に対して実質的に透明であり実質的に平らな基板の個別の領域を被覆する、複数の薄い箔を有するターゲットにおける単層の箔は、積層箔と置き換えることができる。積層箔領域は、電子ビームの衝突エネルギーを変化させることで、複数の特性エネルギーをもつX線を発生できるが、他の領域は用途に応じて必要とされる他の任意の構成であってもよい。
【0054】
本発明の別の実施形態において、従来の制動放射X線管よりも相当に高い電子ビームエネルギーを使用する透過型X線管が説明されており、電子ビームの加速電圧が高くなるにつれて、電子移動の順方向での制動放射の割合が高まる。しかし、2つの異なる加速電圧によって発生する総X線フラックスの割合は、従来から1.7乗にまで高くなった各加速電圧の割合に比例しているが、高められた制動放射の大部分は熱としてターゲット内に分散される。従来のX線管は、X線フラックスにおける潜在的増加の大部分を失うのみならず、同時に多量の熱を発生する。適正な箔の厚さを選択することによって、単一ターゲットまたはマルチターゲットを使用する本発明のX線管の場合には、高い電子ビームエネルギーを使用することで、線放出のための出力X線フラックスは、約2.5乗にまで高くなった各電子ビームエネルギー電圧の割合に比例して大きくなる。
【0055】
図5は、実質的に予め選択されたエネルギーのKラインの特性X線をもたらすように選択された銀ターゲット厚での本発明の実際の測定値を示す。図8は、X線管のkV単位で表した加速電圧に対する、mR/min単位で表した出力X線フラックスの対数をプロットしたものであり、傾きは2.5である。先行技術では、電子ビームエネルギーは、ターゲット素子のK吸収限界より約50%高い必要があることを教示している。例えば、モリブデンは、20kVのk-α吸収限界をもち17.5kVのk-α放射を発生する。
【0056】
従って、電子ビームエネルギーは、ターゲットの最大厚2.0μmに対して約30kVに選択される。ターゲット厚は、高められた電子ビームの衝突エネルギーに対応して増大させる必要がある。同時に、モリブデンターゲットをもつX線管からの出力エネルギースペクトルは、30keVから60keVまでの電子ビームエネルギーで作動させても事実上同じである(図4参照)。本発明の電子ビームエネルギーを30keVから60keVへと2倍にすることで、予め選択したX線エネルギーの出力X線フラックスは、出力X線のエネルギースペクトルは事実上変化しないのでX線影像の質を低下させることなく、6倍以上高めることができる(図5参照)。
【0057】
明るいX線ビームは、現行のX線管と比べて、被撮像物体又は被放射物体に到達する単位面積当たりの総X線光子数が多い。市販の典型的X線管の輝度は、焦点から60cmの距離で測定すると20mRem/mAより低い。本発明のX線管は何倍もの輝度を提供できる。10μm厚のモリブデンターゲットを使用するX線管の1つの構成において、60kVの電子ビームエネルギーを用いて焦点から60cmの距離で、約232mRem/mAの管輝度を生じた。
【0058】
本発明による出力X線フラックスの増加の大部分は、電子の衝突エネルギーが充分に高い場合は速度が光速に近づくので、順方向の制動放射に起因する。図11は、様々な速度で移動する加速粒子の放出パターンを示している。曲線は5、15、50、及び150keVの電子エネルギーに対する曲線である。電子の速度が高くなるにつれて、相対論的効果によって制動放射の方向は順方向へシフトする。本発明の透過型X線管は、制動放射X線を効率的に利用することによって、この相対論的効果を利用し、有用な特性X線をターゲットのより深い位置で発生させるが、この特性X線は端窓を通して放出される。厚い金属ターゲットを有する従来のX線管において、フラックス分布のこの順方向シフトは熱としてターゲットによって吸収される。
【0059】
本発明の他の実施の形態において、制動放射がより有用である場合、X線を特性X線に変換する代わりに、X線が直接用いられ、同じX線管の電流及び電圧で従来のX線管より著しく高いフラックス密度を得る。
【0060】
衝突する電子のエネルギーが主として単一の予め選択されたエネルギーのX線を発生するのに必要なスレッショルドエネルギー以下である場合、またはターゲット箔の厚さがターゲットに衝突する電子の透過深度の2倍以下である場合、その結果得られるX線は、今日の医療の造影X線管と同様な実質的に広い制動放射エネルギースペクトラムである。
【0061】
箔ターゲットの厚さが薄すぎると、その結果生じる放射フラックスの殆どは低いX線エネルギー範囲に集中される。図14A、図14Cおよび同様に図14B、図14Dを比較すると、5μmのターゲットの厚さと比較して厚さ25μmのタングステンのターゲットでは高いネルギー範囲へX線の集中がシフトされている。多くの用途において低いエネルギーのX線は有用では無く、物体の放射の害を避けるために除去されなければならない。本発明の厚いターゲットは自己フィルターとして作用し、厚い箔によって吸収されるようになる低いエネルギーのX線を除去する。したがって、5μmのターゲットのフラックス密度が25μmのターゲットのそれよりもかなり高いにも拘わらず、幾つかの応用では、25μm厚のターゲットは、5μm厚のターゲットよりも有用である。
【0062】
一方、5μm厚のターゲットは、25μmのターゲットと比較して、8〜14倍の量のフラックス密度を発生する。幾つかの用途では、低いエネルギーのX線は、影像の生成において高いエネルギーより有用である場合(身体の末端、例えば、手足)、5μmの厚さのターゲットは、フィルタリングの後であっても、25μmのターゲットより有用なX線を発生する。適性な厚さ及び所望の出力フラックスを選択することによって、多くのX線スペクトルのいずれをも発生することができることが明らかになる。
【0063】
衝突する電子の加速電圧がタングステンとプラチナに対して約160kV以上に上昇されるにしたがって、出力スペクトラムは主に特性kライン放射へと徐々に変化する。タングステンのkラインは59.3、57.9及び67.2kVである。加速電圧がこれらのエネルギーより100%以上に増加されると、特性kラインはだんだん広がり、加速エネルギーが十分高いと、ついには優勢な出力X線エネルギーになる。しかし、加速エネルギーが予め選択されたエネルギーのX線を生成するのに必要なスレッショルドエネルギー以下であると、広い制動放射のスペクトラムが発生する。
【0064】
本発明の他の実施の形態において、管電圧がターゲットに用いられる箔の種類及びその厚さに依存して、ターゲット材料に対するk-αエネルギーの何倍にも増大されると、ピークのk-αフラックスとピークの制動放射フラックスの比は、管電圧の増大と共に減少する。箔ターゲットの厚さはターゲットに衝突する電子の透過深度の2倍以下になり、主に制動放射が発生する。
【0065】
図16E〜図16Hは、k-α放射はそれほど増加しないが、制動放射は増加していることを示す。図16D〜図16Hに示されるように、制動放射のピークエネルギーは比較的一定の約22kVにとどまっていることは本発明の重要な他の特徴である。管電圧の連続した増加に伴うフラックスのこの不変性は、図3に見られるように増加する電子制動放射エネルギーと共にエネルギーが高い制動放射エネルギーへシフトすることなく制動放射のフラックスを増加するのは特に注目に値する。
【0066】
図16Eの80kVから図16Hの110kVへ電圧が増加するに従って、出力フラックスの増加は、上昇した電圧の比の1.6〜1.7乗に比例する。管電圧を上昇することは、ピークの制動放射を高いエネルギーへ著しくシフトすることなく、管電流のみのを増加することによるよりも、ターゲットが著しく加熱されることなくフラックスを増加することを可能にする。本発明のこの特徴は、ボールグリッドアレイ(Ball Grid Arrays)を用いて作られる回路を含むが、これに限定されない電子回路基板の撮像に特に有用である。
【0067】
図5は、単一ターゲットを有する本発明のX線管において、増大する電子エネルギーがどうして25μmの厚さを有する銀箔のターゲットから強い特性X線放射を生成するかを示している。銀に対する予め選択された、またはk-α特性X線放射ラインは22kVである。図5Cと図5Dに見られるように、電子の加速電圧が22kVより100%大きい、即ち44kVであると、k-α特性X線と制動放射X線ののピークフラックス密度の比は、図5Cではほぼ5:1、図5Dではほぼ8:1である。
【0068】
低いエネルギー範囲のk-α特性X線を発生するターゲット箔、例えば、チタン(4.5kV)、クロム(5.4kV)、マンガン(5.9kV)、コバルト(6.9kV)、ニッケル(7.5kV)、銅(8kV)または図17に示されるように高い銀(22kV)が用いられると、ターゲットの厚さは50μm程度の厚さにされ、電子に対する加速電圧はk-αエネルギー(160kVが一般的な加速電圧である)の20倍またはそれ以上にすることができる。
【0069】
図16は、基板を用いない25μm厚のニッケルターゲットを有するX線管から得られたデータを示す。ニッケルに対するk-αエネルギーは、7.477keVである。図16Hは、110kVの加速電子電圧が用いられたときの出力スペクトラムを示す。これはニッケルに対するk-αエネルギーのほぼ15倍であるが、150kVのエネルギー(k-αエネルギーの20倍以上)の電圧でも同様な出力スペクトルが得られることはこの分野の当業者に容易に理解されるであろう。
【0070】
図17は、41μm厚の銀ターゲットを有するX線管から得られたデータである。これを25μmの銀箔を用いた図5と比較すると、41μm厚のターゲットは、高い割合のkライン放射を与える。さらに、データを得るために41μmのターゲット厚が用いられたけれども、当業者は、明らかに、50μmのターゲット厚を用いた場合でも、僅かに低いX線フラックスが測定され、及びあらゆる制動放射のフィルタリングが生じることを理解するであろう。
【0071】
図6において、ターゲットの厚さは、所望の放射の種類を暗示する。制動放射及び特性放射を発生する領域の間の境界は鮮明なラインで表されているが、実際には、非常に薄い被膜内で発生するライン放射ばかりでなく、厚い薄膜ターゲット内で発生する制動放射が存在する。電子がターゲットに入ると、一般的にはターゲット材料の最初の数μm以内で停止してしまう。電子は、ターゲット材料の原子の原子核によるクーロン散乱か、又は特性X線を発生する軌道電子との置換のいずれかによって停止してしまう。衝突電子が発生する特性X線が幾らか存在するが、大多数の電子は制動放射X線を発生する。制動放射X線は、順方向(衝突する電子の方向)へ進み、図9に示すようにターゲット材料の原子の内側の軌道電子と置換される。これらのX線の平均自由行程は大きいので、大部分の制動放射X線はこの散乱メカニズムによって特性X線に変換される。従って、図6に示すように、電子が最初にターゲットに入る際に大部分の制動放射が発生する。
【0072】
用途が実質的に予め選択されたエネルギーのX線を必要としない場合、衝突電子のエネルギー及びターゲット圧を調整することによって制動放射が発生されて、多くの用途に対して非常に低いコストで、高効率のX線源を提供することができる。
【0073】
図12は、20kVのエネルギーの電子がターゲットに入射する場合に、それらがどのように散乱されるかのモンテカルロ・シミュレーションの結果を示す。ターゲット内での電子の散乱は様々であるが、大部分の制動放射X線は、初期の散乱の際に発生する。その後、これらの制動放射X線の大部分は、ターゲット材料の厚さにもよるが特性X線に変換される。制動放射はターゲット材料内を移動する際にK、L、及びMライン放射を発生する。
【0074】
図9は、K、L、及びMライン放射が発生するメカニズムを示す。制動放射は、殻電子(通常K及びL殻)と相互作用して、それらの電子を放出させる。次のエネルギーレベルからの電子が、低エネルギーの内側殻の電子の空孔を満たし、空孔を満たす際に特性X線が放出される。
【0075】
本発明の他の重要な特徴点は、大部分の電子ビームはターゲット被膜の厚さの最初の数μmの範囲で停止するが、ターゲット被膜の厚さの残りの部分は、ターゲット元素の特性吸収限界よりも大きいエネルギーをもつ制動放射光子を非常に効率良く吸収し、蛍光ライン放射として光子を高収率で再放出するフィルタとして機能する。フィルタ機能はターゲットと結び付いているので、透過型ターゲットからのライン放射は非常に強化されており、ライン放射はターゲットの同一焦点から発生する。従って、多くの用途において、有害な低エネルギー光子は、ターゲットによって効率的に濾過され、追加的なフィルタの必要性及びそれに続くフィルタのぼやけは除かれる。
【0076】
60kVの電子ビームエネルギーと、ベリリウム基板上に厚さ10μmのモリブデン箔を堆積して構成したターゲットとを有する乳房造影用に構成された透過X線管は、現行の乳房造影用X線管に比べて、電子ビーム電力1W当たり約5倍も大きな効率をもたらす。電子ビームの加速電圧を2倍の120kVにすることによって、出力X線フラックスはさらに約6倍だけ大きくなる。これらの結果を組み合わせると、本発明のX線管に約5%以下の電力を供給することで、従来の乳房造影用X線管と同等のX線フラックスを発生させることができる。この電力低減は、X線管及び電源装置の重量及びサイズを低減すると同時に本発明を組み込んだX線発生装置の製造コストも低減する。
【0077】
更に、このことはターゲットの熱負荷を低減し、電子ビームの衝突点サイズを小さくできるので、結果的に影像の解像度が改善される。X線管の出力X線フラックスは、管電流に比例する。陽極ターゲットに分散する熱は、管電流と電子ビーム電圧とに比例する。本発明において、電子ビーム電圧を2倍にすると、約6倍の特性ラインX線フラックスが発生するが、電流を2倍にしても発生する特性ラインX線フラックスは2倍になるに過ぎない。従って、本発明に従って電子ビームの加速電圧を高くすることは、電流を増加させるよりも、出力X線フラックスをより効果的に高めることができる。
【0078】
図12は、アルミニウムのターゲット材料に20kVのエネルギーをもつ電子を衝突させた場合の、電子のモンテカルロ・シミュレーションの結果を示す。本シミュレーションは、電子がターゲットに入射すると多数回散乱されることを示す。電子は散乱されるたびに、熱の形でターゲット材料にエネルギーを与える。横方向において有意な散乱が起るので、熱は衝突する電子ビームの方向へ散乱するのみならず、横方向へも拡がる。
【0079】
図10に示すように、電子ビームエネルギーが高くなるほど、横方向への広がりが増すと同時に透過深度も高くなる。米国特許第5,627,871号には、約2.0μm未満の非常に薄いターゲットの場合には、電子の衝突に起因する温度上昇を、ターゲットの等温線が2πr2(rは点サイズである)の面積をもつ半球であると仮定して計算することが開示されている。黒体放射、発生したX線エネルギー、及びオーガ放射は無視する。その計算の核心は、電子ビームの全衝突エネルギーが、焦点内のX線ターゲット表面の近傍で散乱すると仮定する点にある。本発明においては、焦点内のX線ターゲット表面の近傍で電子が衝突することによって発生する熱よりは、高い電子ビームエネルギーで電子がそのエネルギーを失う相当大きな容積がある。つまり、ターゲット材料の電子ビームの衝突エネルギーの単位ワット当たりの温度上昇は、高いエネルギーの電子ビームに対しては相当に小さいので、ターゲットの過熱という重大な問題は一層低減する。
【0080】
被膜の厚さは、箔の材料に応じて、ライン放射、制動放射、又はそれらの組み合わせといったX線放射の所望の形式に応じて、X線管の所望の輝度に応じて、及び電子ビームの加速電圧に応じて選択する。箔のターゲットに必要な厚さを決定するために、電子ビームエネルギーを実験的に数倍し、予め選択されたX線エネルギー、結果として得られたX線スペクトル、及び出力X線フラックスを測定する。
【0081】
図16は、ニッケルのk-αエネルギーの何倍にも増加した電圧に対するフラックススペクトラムの変化を示す。厚いターゲット材料では、透明性は低下するが管寿命は長くなるので、X線管の寿命と輝度との兼ね合いを考慮してターゲットの厚さを決定する。ターゲットの厚さは、一般的に約50μmより薄く約2μmよりも厚いが、特に高エネルギーの電子ビームを使用する場合は、図10の電子ビーム透過深度に示すように50μmよりも厚くできる。図16に示されるように、加速電圧があらゆるターゲット厚に対するk-αエネルギーの何倍にも増加されると、k-αと制動放射のピークエネルギーの比は実際に減少し始める。したがって、50μm厚のターゲットは、強い制動放射を発生するために用いることもできる。衝突する電子のエネルギーがk-αのX線放射を生成するためにスレッショルドエネルギー以下であると、図14C、図14D及び図13に示されるように、ターゲットは2μmから25μmの厚さにすることができる。
【0082】
本発明の透過型X線管においては、電子ビームが発生され、この電子ビームが端窓に衝突してX線フラックスを発生するように設計されている。図7には、本発明によるX線管が示されている。X線管9は、外囲容器11によって取り囲まれた真空チャンバ10を備える。チャンバ10の一端は、高電圧電源12に接続されており、これはライン13で高電圧電源を制御するための電子装置(図示せず)に接続されている。
【0083】
チャンバ10には、高電圧電源12に接続されている陰極電子ビームエミッタ19が収容されている。電子ビームエミッタは、多数の異なるフィラメント材料及び当業者には公知の構成で作ることができる。
【0084】
端窓14は、その内側面に電子ビームが衝突する箔ターゲット15を有している。典型的に、箔ターゲットは、低Z元素からなり、発生するX線の少なくとも幾つかのX線に対して実質的に透明な基板窓に取り付けられている。基板窓は、電流及び熱を伝導しX線フラックスを伝達するが真空密閉する。しかし、ターゲット材料が充分な厚さ及び硬さを有し、多孔性でない場合、基板は必要性でなく、ターゲット材料自体が、大気が真空チャンバに入らないように障壁を備える。
【0085】
基板上に蒸着された箔に関して、自立した箔はX線を発生することができるあらゆる電気的に導電性の材料であればよい。このような箔は金属または金属の合金から通常作ることがでるけれども、本発明によるX線を発生することができる素子を含む導電性ポリマーがある。この種の機械的特徴を備えるターゲット材料には、モリブデン、銅、ニッケル、タングステン、プラチナ、アルミニウム、ガドリニウム、金、ランタニウム、銀、スリウム、イットリウム及びそれらの合金が含まれるが、これらに限定されない。また、導電性ポリマーは、基板を必要としない箔のターゲットを提供することができる。
【0086】
基板が用いられた場合、熱を大気に面した基板側から容易に取り除くことができる。これは、回転陽極か固定された固体陽極のいずれかを使用する管について、本発明の他の大きな利点である。ベリリウム及びアルミニウムの基板材料は、急速な熱移転をする。基板が用いられない場合、電子がターゲット上に衝突し、熱を発生するスポットの約50μm厚のターゲット内で熱を除去することができる。強制空冷、水冷、及びこの分野の当業者によく知られた他の手段による冷却によって、X線管を製造するコストを減少することができる。
【0087】
端窓は管陽極を備えている。端窓は外囲容器11の延長部に装着できる。電源12は、一体式又は外部制御装置を用いて調節できる。調節としては、これらに限定されるものではないが、陰極から陽極に印加される電圧の調節、電子ビームのターゲットへの衝突時間の調節、ターゲットに衝突する電子ビームの点サイズの調節、及び管を流れる電流の調節を挙げることができる。同様に、出力X線フラックス、又はX線管によって取得される影像の測定値からのフィードバックを自動制御に利用できる。
【0088】
1つの実施形態において、電子ビームは集束手段によって集束させることができる。焦点は、ターゲットの異なる領域上に置くことができる。集束機構の1つとして静電レンズ17を挙げることができる。この静電レンズは、電子を任意的に発生するフィラメントの電位、即ちフィラメント電圧に対して負の電圧にある。電源12は、エミッタ19に電流を供給するための、エミッタ(陰極)から出て端窓ターゲット(陽極)に衝突する電子ビームに加速電圧を作用させるための、電子ビームの集束手段に電圧を任意に供給するための、及び必要に応じて焦点を移動させる手段に電流を任意に供給するための、並びにX線管の作動に必要な他の機能をもたらすための変圧器及び回路素子を備えている。他の実施形態において、静電レンズはなくてもよい。電源12の少なくても幾つかの構成要素は、絶縁用の油、ゲル、又はエポキシ樹脂で充填された容器内に収納してもよい。
【0089】
ここで示されたフラックス密度の測定は、最も高い可能な出力フラックスを与えるのに最適でなかった静電レンズによって生成された。最近のレンズ設計は、これら初期の測定の少なくとも4〜5倍だけ出力フラックスを増加した。フォーカシング機構の改善によって、さらにフラックスの改善を実現することが予想される。
【0090】
1つの実施形態において、磁界集束はリング磁石によって行われる。磁界集束は、当業者であれば、Suzukiのプリコンデンサー対物レンズ、4重極二重レンズ、4重極三重レンズ、又は永久磁石等の素子を使用して達成できる。静電レンズ17及び任意の磁界集束装置は、組み合わせて又は個別に使用してもよく、当業者には公知の任意の方法を用いて調節してターゲット材料上に異なる焦点サイズをもたらしてもよい。熱管理等の必要性に応じて、焦点サイズはナノメートルからミリメートルまでの範囲にあるが、これに限定されるものではない。
【0091】
X線を用いる全ての造影の重要な特徴点は、撮影される物体内の2つの異なる物質の間のX線の相対吸収度が、異なるエネルギーのX線に対して異なる点にある。例えば、肺臓の軟組織は、骨組織とは非常に異なる吸収度をもつ。骨組織は、医療用造影に使用されるX線の高い割合を吸収する。一方で、軟組織は高エネルギーX線では見えない。X線フィルム又はデジタルX線センサからの影像を観察すると骨は白く見えるが、このことはX線フラックスの大部分が骨に吸収されてフィルム上に達しないことを意味する。高エネルギーX線は軟組織に僅かしか吸収されないので、高エネルギーX線では軟組織は黒く見える。
【0092】
撮影される2つの異なる物質内の異なる吸収度はコントラストを生じさるので2つの物質を見分けることができる。異なる種類の軟組織に対しては、組織間の最大吸収差を実現できる特定のエネルギーが存在する。医療用造影において、このようなエネルギーだけを含むX線を使用するのが理想的である。エネルギーが低すぎると有害放射線として患者に吸収され、高すぎるとX線検出器が焼けてしまう。本発明のX線管から出力される実質的に特性X線を使用して、適当なターゲット材料を選択することによって、撮影に不要なX線を殆ど発生させることなく最大のコントラストをもたらすX線エネルギーを選択できる。つまり、X線管は、同じ管電力でもって非常に高いX線フラックスを発生するだけでなく、同じ影像コントラストをもたらすのに必要なX線管の総出力X線フラックスを低減できるようX線フラックスエネルギーを選択できる。この利点は、全ての造影に適用可能である。
【0093】
高効率、小さな焦点サイズ、低い必要電力、低エネルギーX線が大幅に低減されることに起因する患者へのX線放射量の低減、高い解像度、X線管及び電源の小形軽量化、及びX線管の安価な製造コストによって、本発明のX線管は、特に、一般的な医療用X線造影、医療用X線透視造影、心臓血管造影、乳房造影、血管造影、歯科用造影、荷物及び輸送コンテナの非破壊検査、電子回路基板造影、集積回路造影、コンピュータ断層撮影、骨密度測定、及び放射線療法を含む数多くの用途に適しているが、これらに限定されるものではない。
【0094】
本発明のX線管は、軽量でX線フラックス出力が高いので、Cアーム式及び携帯式X線装置のX線源として特に好都合である。Cアーム式X線装置の用途において、X線源と画像受容器とは、X線ビーム軸に沿って互いに対向するように反対側の端部に取り付けられている。Cアームは、多数の異なる角度から撮影対象物の影像を取得するために、撮影対象物の周りで回転可能である。X線源全体は機械式Cアーム構造によって支持されて、撮影対象物の周りで物理的に移動される必要があるので、本発明による軽量な透過X線管及び電源装置は、他のX線管に比べてコスト的に非常に有利である。
【0095】
携帯式X線装置は、運搬時に少なくとも1人のオペレータが地面をころがして移動可能であるか又は運ぶことができ、患者又は動物の走査時に選択的に固定できるX線源を必要とする。本発明による軽量、低コスト、及び高X線フラックス出力のX線管は、現行のX線管の制約によりこれまで不可能であった造影用途に対する携帯式X線装置の用途を拡げることができる。
【0096】
本発明による透過型X線管は、実質的に平らな基板の個別の区域上に被覆された複数の薄い箔ターゲット、又は同じターゲット上に積層された箔のいずれかと組み合わせることができ、それ自体これらのターゲットの利点及び用途を組み込むこともできる。
【0097】
本発明によるX線管の高光子フラックス出力、及び/又は予め選択されたエネルギーのX線を発生する性能は、このようなX線フラックスを生物試料に照射して、X線ビームのイオン化放射、二次的蛍光X線、又はそのX線フラックスが発生するオージェ電子を用いて生物試料の全て又は一部を死滅または著しく改変させる用途において、X線管は特にコスト効果が高い。
【0098】
焦点は同一ターゲット上の異なる位置を選択的に動くことができる。特定の用途において、衝突電子ビームは、同一ターゲット上の特定の箔材料から他の箔材料へ移動される。別の用途において、焦点での熱負荷を低減するために、又は薄い箔が使用中に損傷するのを防いで透過型X線管の寿命を延ばすために、電子ビームを同一箔上の異なる位置へ移動させる。このような衝突電子ビームを移動させる技術の例としては、これに限定されるものではないが、当業者には公知の受像管及び走査型電子顕微鏡における電子ビームの移動技術が含まれる。
【0099】
透過型ターゲットは固定式であってもよく、又は電子ビームによる熱負荷を分散させるために機械的に回転する円板の一部であってもよい。ターゲットに生じる熱を消散させるために、ターゲット液冷装置又はヒートパイプ冷却装置を用いることができる。
【0100】
別の好適な実施形態において、電子放出フィラメントの形状及びデザインは、電子ビームをターゲット上に限定的に集束させるための当業者には公知の方法で作ることができる。電子を集束させることが必要でない多数の非造影用途がある。この用途の例としては、これらに限定されるものではないが、殺菌及び非破壊X線透視分析の用途を挙げることができる。
【0101】
本発明のターゲット及び透過型X線管用の箔は、単一の金属元素で作ることもでき、又は金属と、これに限定されるものではないが、合金、セラミックス、ポリマー及び複合材料を含む他の元素との組み合わせで作ることもできる。例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、イットリウム(Y)、ロジウム(Rh)、金(Au)、ランタン(La)、ツリウム(Tm)等から選択される従来のターゲット材料として使用されている金属を含む。基板の材料は、これに限定されるものではないが、ベリリウム、アルミニウム、及びこれらの金属の合金である。もしくは、約0.5μmのタングステン(W)、白金(Pt)又は金(Au)等の高Zターゲットの非常に薄い箔を、ランタン又はツリウム等の現在のところ適当なターゲット材料とは考えられていない別のターゲット箔の上に積層してもよい。高Zターゲットは、主に制動放射を発生させ、これが下層のターゲットからの線放射を励起する。
【0102】
なお、本発明において用いられているデータ及び定義のためのフラックス強度の測定は、Radical CorporationのModel 20x6-6検出器を有するModel 2026Ratiation Monitorで行われた。X線管のいろいろな形状からのX線出力のエネルギースペクトラムの測定は、Amtek Inc.のModel XR-100T-CTZ検出器を有するModel PXZT-CTZスペクトルメータによってなされた。
【図面の簡単な説明】
【図1】同一平面の4つの異なる領域内でターゲット上に配置された4つの異なる箔を備えている円形ターゲットの平面図である。
【図2】基板上の2層の箔で構成されたターゲットの側面図である。
【図3】従来のX線管の加速電圧が5kVから25kVまで増加する場合に、制動放射がどのように変化するかを示すグラフである。
【図4】モリブデンターゲットに衝突する電子ビームに関する4つの異なる加速電圧を使用することによって得られるX線の線放射特性を示すグラフである。
【図5】ターゲット材料が銀である場合に、同一の露光時間及び同一のX線管電流を使用し、ターゲットに衝突する電子の加速電圧を変化させることによって得られる線放射X線フラックスの相対的な強度を示すグラフである。
【図6】本発明による薄いターゲットを示す模式図である。
【図7】本発明によるX線管の概略的な断面図である。
【図8】電子ビームの加速電圧の関数として出力X線フラックスの変化を表すグラフである。
【図9】X線がターゲット材料の原子と相互作用する場合に、X線がどのように線放射を発生させるかを示す図である。
【図10】電子ビームエネルギーの関数として、ニッケル、金及びタングステンターゲット内への電子ビームの透過深度を表すグラフである。
【図11】減速された電子のエネルギーの関数として、制動放射の放射方向を表す図である。
【図12】20kVのエネルギーでアルミニウムターゲットに衝突する電子の散乱のモンテカルロ・シミュレーションを表す図である。
【図13】銀とタングステンの層で作られたターゲットを備えるX線管からの出力X線フラックスエネルギーの関数として、出力X線フラックスの強度を表すグラフである。
【図14】加速電子エネルギーを変えた場合の、異なる2つの厚さのタングステンターゲットから生成されるX線放射の出力エネルギースペクトラムを示し、X線のエネルギーは増加するX軸と共に増加する。
【図15】銀の固体ターゲット及び35kVの励起電圧を有する従来のX線管から生成されるX線放射の出力エネルギースペクトラムを示すグラフである。
【図16A】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、40kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16B】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、50kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16C】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、60kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16D】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、70kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16E】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、80kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16F】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、90kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16G】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、100kVのX線管電圧を用いた制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図16H】基板のない25μm厚の自立したニッケル箔に衝突する電子ビームに対して、110kVのX線管電圧を用いる制動放射と比較したX線出力エネルギーのスペクトラムライン放射のグラフである。
【図17A】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、30kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17B】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、40kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17C】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、50kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17D】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、60kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17E】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、70kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17F】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、80kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17G】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、90kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図17H】ベリリウム基板上に蒸着された41μm厚の銀ターゲットに衝突する電子ビームに対して、100kVの加速電圧を用いたX線のライン放射のグラフである。
【図18A】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して30kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【図18B】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して40kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【図18C】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して50kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【図18D】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して60kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【図18E】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して70kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【図18F】ベリリウム基板上に蒸着された2.1μm厚のモリブデンターゲットに衝突する電子ビームに対して80kVの加速電圧を用いることによって得られたX線のライン放射のグラフである。
【符号の説明】
1 ターゲット
2 箔
3 箔
4 基板
9 X線管
10 チャンバ
11 外囲容器
12 高電圧電源
14 端窓
17 静電レンズ
19 陰極電子ビームエミッタ

Claims (13)

  1. 密封された真空ハウジングと、
    前記ハウジング内に配置され、少なくとも1つの薄いターゲット箔を有する端窓陽極であって、前記ターゲット箔は、X線を実質的に透過する基板材料の上に設けられている端窓陽極と、
    前記ハウジング内に配置され、前記ハウジング内のビーム経路に沿って進み、前記陽極に衝突して前記陽極を通って前記ハウジングを出るX線ビームを発生させる、電子ビームを放出する陰極と、
    電子ビームが衝突する少なくとも1つの前記ターゲット箔の、少なくとも1つの予め選択されたエネルギー特性の明るいX線ビームを発生させるために、選択された電子ビームエネルギーをもたらす、前記陰極に接続されている電源と、
    を備える端窓X線管であって、
    前記電子ビームエネルギーは、前記ターゲット箔のk-αラインX線特性の最も高いエネルギーより2倍以上、20倍まで高く、
    前記ターゲット箔の厚さは、発生されるX線の明るい発生源となるように2〜50μmの間に選択され、且つ
    前記電子ビームは、集束レンズによって、前記ターゲット箔の表面上、上方、又は下方に集束することを特徴とする端窓X線管。
  2. 医療用画像の取得に用いられるX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管
  3. 電子回路板の画像の取得に用いられるX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  4. 集積回路の画像の取得に用いられるX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  5. X線透視法で物体の非破壊検査に用いられることを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  6. コンピュータ断層撮影による画像の生成に使用されるX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  7. X線ビーム軸に沿って互いに対向するように反対側の端部にX線源と画像受容体とを有するCアームにおいて使用することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  8. 断層撮影による画像を取得に用いられるX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  9. 歯科用影像を取得するのに使用するX線を発生することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  10. 生物試料の全体又は一部分を破壊するX線フラックスを発生するために使用することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  11. 骨密度測定に使用することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  12. 乳房造影に使用することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
  13. 血管造影に使用することを特徴とする請求項1に記載の端窓X線管。
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