JP4324651B2 - Firアクティブ・サーモグラフィ検査装置 - Google Patents
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Description
しかし、近年開発された第2世代赤外線撮像システムでは、マイクロボロメータ(microbolometer)の利用により冷却が不要となり、システム全体の小型化・軽量化が進み、病院外における乳癌の検診・スクリーニングに利用できるほど携帯性が改善しており、解像度および時間分解能も向上している。
初期のサーモグラフィ検査は静的な状態で体表面の温度分布を測定する場合が多かったが、Ohashiらは体表面の温度を下げ、体温が上昇する過程を比較して差分画像を作る手法(dynamic thermography)により、乳癌の正診率を54%から82%に向上させることが出来たと報告している(非特許文献1を参照)。
また、Anbarらは、悪性腫瘍細胞(malignant cells)から生じる一酸化炭素(NO)により生体組織の温度変化の減衰量に差が生じる現象を科学的根拠として、高感度、高時間分解能赤外線撮影システムを用いて体表面の温度変化を計測し、FFTにより周期的な温度変化を画像化して乳癌の存在を検出するDAT(dynamic area tele-thermometry)技術を開発している(非特許文献2を参照)。
生体加熱に関する過去の研究において、遠赤外線(FIR)による輻射加熱では、熱伝導及び温風による対流熱伝達加熱と比べ血管の拡張が少ないため、加熱停止後でも組織に熱が蓄熱しやすい(保温性が高い)ことが報告されている(非特許文献3,4,5を参照)。
前記発信器と測定対象物との間に遠赤外線放射の開始・停止を実現するためのシャッター機構を設けたものである。
前記シャッター機構と測定対象物との間に前記サーマルカメラによる温度分布を撮影するためのハーフミラーを設けたものである。
本発明のFIRアクティブ・サーモグラフィ検査装置では、FIR帯域の電磁波が体表面で吸収され熱エネルギーに変換される特徴を活かし、従来のサーモグラフィ検査では得られない体表面付近の熱容量、比熱等の違いを熱画像から収集するための検査システムを提唱する。
図1は本発明のFIRアクティブ・サーモグラフィ検査装置の一実施例を示すもので、遠赤外線(FIR:波長数μm〜数mm)領域の光源又は電磁波の発信器1と、測定対象物の温度分布を測定するサーマルカメラ2及び熱画像解析用コンピュータ(画像処理装置)3と、前記発信器1と測定対象物との間に遠赤外線放射の開始・停止を実現するためのシャッター4及びシャッター開閉制御ユニット5(シャッター機構)と、前記シャッター4と測定対象物との間に前記サーマルカメラによる温度分布を撮影するためのハーフミラー6とから構成される。
前記遠赤外線(FIR)放射体は、天然ゼオライトとバインダーを0.7:1.0の重量比で混合したペーストをベースとなるアルミニウム板に塗布した後、常温で24時間乾燥させて作製した。
温度分布画像は30秒間隔で測定され、コンパクトフラッシュ(登録商標)メディアに記録される。
なお、温度分布画像の撮影間隔を短くできると、つまりサンプリングレートを上げることが出来ると、FIRヒータの照射開始・停止に同期した過渡的な温度変化を計測できるため確実に分析の精度を向上させることができる。
前記サーマルカメラ2にはデジタルビデオカメラを接続しており、リアルタイム(30枚/秒)にNTSC信号経由で録画した。
被験者(測定対象物)には仰臥姿勢を保ち、可能な限り動かないように教示し、脱衣後、体温が室温と平衡状態に達するまで5分間待機した後、FIRヒータ(発信器1)で1分間、30秒間のインターバルを置き2回加熱した後、連続してさらに6分間加熱する。
これらの過程をサーマルカメラ2で撮影する。
サーマルカメラ2での測定時間は35分であり、脱衣直後からの5分間は室温と体温が平衡状態に達する過程であり、その後、送風機(図示せず)により5分間体表面を冷却した。
再度、室温と体温が平衡状態に達するまで5分間待機した後、FIRヒータ(発信器1)で8分加熱した。
加熱停止後は体表面が冷えるまでの過程を8分間測定した。
ρ+α+τ=1・・・・・・(1)
なお、生体組織の場合、遠赤外線の波長帯域ではτ=0であり、一般に放射率ε=αが成立することから、以下の式が成り立つ。
ρ=1-ε ・・・・・・(2)
一般にヒトの皮膚の放射率εは約0.98であり、反射率ρは0.02程度になる。
加熱中に測定している温度分布画像には体表面(skin)の真の温度Tsに加えて、皮膚で反射されたFIRヒータの放射(radiation)エネルギーがノイズとして含まれるため、測定された温度はTs+dTrとなる。
ここでノイズ分として加算されるdTrは、測定部位におけるFIRヒータのエネルギーの近似値に比例した値となる。
したがって、FIRヒータによる加熱過程において、dTs/dTrを計算することで、各測定点に届いたFIRヒータからの放射エネルギーで正規化した組織の温度変化分を求めることができる。
以下に、dTs/dTrの計算の一例を示す。
加熱直前の体表面温度をTs0、加熱して1分間経過した時の温度をTs1+dTr1、その直後FIRヒータを外して測定した温度をTs1’とすると、以下の式が成立する(なお、Ts1’=Ts1と近似した)。
dTs/dTr=(Ts1’-Ts0)/((Ts1+dTr1)-Ts1’)・・(3)
各測定部位におけるFIRヒータによる加熱1分後、2分後のdTs/dTrを計算することで、体表面付近の組織の熱容量の違いを画像化できる。
図2(a)は脱衣直後(測定を始めて0分後)、同図(b)は送風による冷却時(6分後)、同図(c)はFIRヒータによる加熱時(20分後)、同図(d)は加熱停止後(26分後)の温度分布画像である。
この一例では、円形リングで囲まれている左胸部上方に悪性腫瘍がある。
図4に上記各部位における温度の経時変化を表し、横軸が経時時間、縦軸が表面温度を示す。
図4に示すように測定を始めてから5分から10分まで強制的に体表面を冷却(Cooling)しているが、悪性腫瘍部(malignancy)では温度低下が少ないことがわかる。
これは悪性腫瘍の内部及び周辺には栄養血管が増殖するため、正常組織に比べ血流が多いためと考えられる。
また、15分から25分までFIRヒータにより加熱(Heating)しているが、いずれの測定点においても平熱を上回る38℃以上に加熱できたことが確認できる。
なお、加熱を開始してからの1分後および3分後にFIRヒータを1分間外し、温度分布を測定した。
太い実線は悪性腫瘍部(malignancy)の温度変化パターン、破線部は体幹中央部(center region)の温度変化パターンを示す。
正常組織(opposite region)との温度差は、体表面冷却(Cooling)時に広がり、加熱(Heating)時に温度差が接近もしくは逆転することがわかる。
このプロファイルは悪性腫瘍部位に多く見られる栄養血管によるものであり、悪性腫瘍を自動的に抽出する画像処理プログラムを作成する際のマーカーとして利用できることが確認できる。
加熱初期の加熱1分の時点では悪性腫瘍部(malignancy)の温度変化が小さく、血管(blood vessel)の温度が高くなっている。
生体組織の熱伝導率は脂肪で0.0005cal/(s・cm2・℃)、筋肉で0.001cal/(s・cm2・℃)、直径0.1mm程度の血管を流れる血流で0.24cal/(s・cm2・℃)であり、血管は他の組織に比べ数百倍の熱量の輸送能力がある。
周辺組織で温められた血液が血管(blood vessel)に流入したために、短時間に血管(blood vessel)の温度が急上昇したものと考えられる。
一方、2分を過ぎると血管(blood vessel)と悪性腫瘍部(malignancy)との差は少なくなるが、血管が少なく脂肪の多い組織は蓄熱されやすいため、温度が上昇している。
血管が豊富な組織は血流により冷却されるため、一定温度に収束していく。
加熱の初期段階において血管(blood vessel)と悪性腫瘍部(malignancy)の昇温特性が異なるとの知見は本発明の根幹となる考えであり、赤外線画像から悪性腫瘍部(malignancy)を自動抽出するプログラムを作成する上で必要不可欠な知見になっている。
2 サーマルカメラ
3 熱画像解析用コンピュータ(画像処理装置)
4 シャッター
5 シャッター開閉制御ユニット
6 ハーフミラー
Claims (2)
- 遠赤外線領域の光源又は電磁波の発信器と、該発信器と測定対象物との間に遠赤外線放射の開始・停止を実現するためのシャッター機構と、前記測定対象物の温度分布を測定するサーマルカメラ及び画像処理装置とで構成されたことを特徴とするFIRアクティブ・サーモグラフィ検査装置。
- 前記シャッター機構と測定対象物との間に前記サーマルカメラによる温度分布を撮影するためのハーフミラーを設けたことを特徴とする請求項1記載のFIRアクティブ・サーモグラフィ検査装置。
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