JP4323901B2 - 沸騰水型原子炉のボイド率 - Google Patents
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Description
図1は沸騰水型原子力発電所における従来の計算機の主要な性能計算項目である。計測値を元にして、プラント性能計算と炉心性能計算を実施し表示、記録する。
プラント性能計算は、火力発電所で計算されているものと類似している。給水加熱器性能等の原子力発電所を構成している諸機器の性能、熱収支等の計算を実施し表示、記録する。
炉心性能計算は、原子炉運転を安全に管理するために原子炉熱出力等を計算し表示、記録する。核燃料であるウランやプルトニウムの中性子との反応は中性子の速度によって変わり、中性子の速度は減速材である水の量により変わる。沸騰水型原子炉では図2に示すように核燃料を内包する核燃料棒(1)の下部から流入した液体の水(11)は核燃料棒(1)の上部の冷却材出口に行くにつれ核燃料から熱を受けて液体の一部は蒸気(12)になる。液体である水(11)と気体である蒸気(12)が共存して流れている二相流の流路断面における単位高さ当たりの(蒸気が占める面積)÷(蒸気と液体である水が占める流路断面積)をボイド率と呼びαと表されている。ボイド率αは核燃料棒(1)の下部ではゼロであり核燃料棒(1)の上部では70%にもなり、高さzが増加するにつれ大きくなるからボイド率分布α(z)を持っている。ボイド率の違いは水の量の違いであるから核燃料と中性子との反応の結果生じる出力に変化をもたらし、逆に出力の変化はボイド率に違いをもたらす。冷却材流量が多く冷却材出口側も水だけであれば、上下端からの中性子漏洩により出力Pの高さzに関する出力分布P(z)は中央が最大になる上下対称なコサイン分布状である。しかし、冷却材入口側である核燃料棒(1)の下部ではボイド率がゼロであるため核燃料の反応が活発であるが、冷却材出口側である核燃料棒(1)の上部ではボイド率が高いため核燃料の反応が不活発である。したがって、出力分布P(z)の最大は核燃料棒(1)の中央から下方に移動する。核燃料棒最高温度は当然核燃料棒(1)の下方で生じる。
このような挙動をする原子炉の運転では、核燃料棒最高温度等が設定値と比べて余裕があることを確認しながら運転する必要がある。また経済的な原子炉を設計するには、核燃料棒最高温度等の安全性にかかわる値が設定値内で、炉心の大きさをできるだけ小さくすることが必要である。そのためには、炉心内出力分布を平坦化して、最大出力と平均出力の比を小さくするようにする必要がある。
このように炉心全体でボイド率に分布の存在する沸騰水型原子炉では、ボイド率分布α(z)と出力分布P(z)の計算は取分け重要である。
図3は従来の計算機に内蔵されている従来のボイド率式を組み込んだソフトウエアを示すフローチャートである。
ステップ1
二相流の全質量流量GTは冷却材循環ポンプ性能等により決まる一定の値とし、高さゼロからの総熱出力Qを一定の値とする。出力分布はどの高さzでも一定と仮定する。
ステップ2
高さzでの出力分布P0(z)が求まる。
ステップ3
高さzでの熱出力分布q(z)=Q×P0(z) が求まる。
ステップ4
二相流の流路断面に含まれる蒸気流量を表す蒸気含有率χの高さzでの蒸気含有率分布χ(z)は、水が下部から高さz迄流れる間に核燃料から得た全熱量にほぼ比例するからGTと熱出力分布q(z)とで求まる。流路断面を通る単位時間当たり高さzでの質量流量において、飽和蒸気の質量流量Gg(z)、飽和水の質量流量Gl(z)から、流路断面を通る単位時間当たりの二相流の全質量流量GTはGT=Gg(z)+Gl(z)であるから、蒸気含有率はχ(z)=Gg(z)/GTと表される。
ステップ5
χ(z)に対する従来のボイド率分布α(z)の相関式。飽和蒸気の速度Vgと飽和水の速度Vlとに差があるため、すべり比R=Vg/Vlを実験により定め、この定数を使って、
α(z)を計算する。
ステップ6
高さzでの核燃料の組成が決まっていると、水の組成はボイド率分布α(z)により決められるため、高さz位置毎の物質反応断面積が求まる。
ステップ7
拡散方程式を解いて出力分布P1(z)を計算する。
ステップ8
新たに計算された出力分布P1(z)と前回の出力分布P0(z)を比較して所定の誤差d1内でなければ、このP1(z)をP0(z)と置き換えてχ(z)を計算し再度出力分布P1(z)を計算する。新たに計算された出力分布P1(z)と前回の出力分布P0(z)を比較して所定の誤差d1内になったらそれが最終出力分布であるとする(非特許文献1)。
ステップ9
核燃料棒(1)の健全性の指標となる核燃料棒(1)の温度や限界出力比等を計算表示する。核燃料棒(1)の温度は熱伝達率から計算される。
核燃料棒(1)を多数本結束しチャンネルボックスで包囲してなる核燃料集合体(特許文献1)が多数ある場合は、ボイド率と抵抗係数との関係式等から核燃料集合体毎の圧力降下を計算し核燃料集合体毎の全質量流量を配分する繰り返し計算する部分がある。
α=1/( 1- R×M×(1 - 1/χ) ) (非特許文献2)
と表される。Mは運転圧力が一定であるから蒸気表から求められ、χはGTと当該位置までの総出力から求まる。しかし、すべり比Rは今までαとχに関する実験により定数を定めていた。したがって、運転状態が大きく変わりボイド率が大きくなった場合には新たな実験をしてすべり比Rを求めねば適切なボイド率αが求まらないし、式そのものが適用できるとは実証されていない。したがって、出力分布が正しく求まるとは限らない。
沸騰水型原子炉の最近の動向として、ウランとプルトニウムの混合酸化物MOX燃料を導入しようとしている。プルトニウムを有効に利用するためには中性子速度を落とさないで燃焼させるほうがよいとされている。そのために、ボイド率αが高くなるような運転を想定した原子炉が望ましいとされている。ボイド率αの適切な求め方が求められている。
以下に、説明に使われる記号の一覧を示した。
ρl:飽和水密度。規定されている運転圧力と蒸気表から求まる。
ρg:飽和蒸気密度。規定されている運転圧力と蒸気表から求まる。
M:ρgとρlの比。M=ρg/ρl。
A:流路断面積。
GT:流路断面を通る単位時間当たりの二相流の全質量流量。ポンプ性能等で求まっている液体の水の流入質量流量に等しい。
Vlh:飽和水初速度。Vlh=GT / (ρl×A)と求められる。
Vg100:二相流が蒸気100%になった時の飽和蒸気の速度。Vg100=Vlh / M。
Gg:飽和蒸気の質量流量。
Gl:飽和水の質量流量。
χ:蒸気含有率。χ=Gg/GT。
α:ボイド率。流路断面を通る単位時間当たりの二相流における単位高さ当たり、(蒸気が占める面積)÷(蒸気と液体である水が占める流路断面積)。
Vg:飽和蒸気の速度。
Vl:飽和水の速度。
k:飽和蒸気の速度Vgにおけるαに対するχの重み。最適値を50とする正の値。
記号一覧終了。
E1=( M-1 ) / ( k+1 ) とし、重みkをパラメータとしてχが0から1.0の範囲で本発明のボイド率αを、
α= ( ( M - E1×χ×k ) - ( ( M - E1×χ×k )2 - 4×χ×E1 )1/2 )/ ( 2×E1 )
とする。
飽和蒸気の速度Vgをαとχ両方に依存するとして、
Vg=Vlh+((α+k×χ)/(k+1))×(Vg100 - Vlh)
とする。
飽和水の速度Vlを、
Vl = ( Vlh - M×Vg×α ) / ( 1 - α )
とする。αが1では無限大になるがαが0.9999程度であれば有限な値になる。
飽和蒸気の質量流量Ggと飽和水の質量流量Glを、
Gg = ρg×Vg×α×A
Gl = ρl×Vl×(1-α)×A
とする。
図4は計算機に内蔵せる、本発明のボイド率式を組み込んだ本発明のソフトウエアを示すフローチャートである。図3に示す従来との違いは、計算ステップ5では以下のようにした。
E1=( M-1 ) / ( k+1 ) とし、重みkをパラメータとしてχが0から1.0の範囲で蒸気含有率分布χ(z)から、二相流のボイド率分布α(z)を、
α(z)=( ( M - E1×χ(z)×k ) - ( ( M - E1×χ(z)×k )2 - 4×χ(z)×E1 )1/2 )/ ( 2×E1 )
とした。
飽和蒸気の速度分布Vg(z)を、
Vg(z)=Vlh+((α(z)+k×χ(z))/(k+1))×(Vg100-Vlh)
とした。
ステップ9では以下のようにした。最終結果のα(z)とχ(z)から、
飽和蒸気の速度分布Vg(z)を、
Vg(z)=Vlh+((α(z)+k×χ(z))/(k+1))×(Vg100-Vlh)
飽和水の速度分布Vl(z)を、
Vl(z) = ( Vlh - M×Vg(z)×α(z) ) / ( 1 - α(z) )
とした。αが1では無限大になるがαが0.9999程度であれば有限な値になる。
飽和蒸気の質量流量分布Gg(z)と飽和水の質量流量分布Gl(z)を、
Gg(z) = ρg×Vg(z)×α(z)×A
Gl = ρl×Vl(z)×(1-α(z) )×A
とした。
核燃料棒(1)の健全性の指標となる核燃料棒(1)の温度や限界出力比等は従来通りに限界出力比を表示するか、飽和水の速度分布Vl(z)と( 1 - α(z) )から変換した水膜厚さとによる実験から限界熱流束に関わる式を定め最小限界熱流束比(MCHFR)を求め表示する。核燃料棒(1)の温度は熱伝達率から計算される(非特許文献3)。
核燃料集合体が多数ある場合は従来同様圧力降下を従来通りに、α(z)と抵抗係数との関係式等から求めるか、飽和水の速度分布Vl(z)から水のみの単相流から求めることにより各核燃料集合体毎の全質量流量GTも繰り返し計算により求める。
図5は、蒸気含有率χに対する本発明のボイド率αの相関式による、重みkをパラメータとしたボイド率αの計算結果である。k=1000は従来のボイド率の相関式ですべり比が1.0に相当する。k=50は従来の相関式ですべり比が2.0に相当する(非特許文献4)。k=0はα増加による蒸気流路断面積の増加による蒸気流動抵抗の減少により蒸気流速が速くなると想定した場合の計算結果である。
図6,7,8は上記本発明の計算式による、運転圧力が70気圧、飽和水初速度Vlhが1m/sの場合の、重みkによる蒸気含有率χ対飽和蒸気の速度Vg、飽和水の速度Vlの挙動を示す。縦軸速度の単位はm/sである。χが大きくなればVlもVgも速くなるため除熱効果は高いように見受けられる。
図9は、図1に示す沸騰水型原子力発電所における計測値を元にした従来の計算機での主要な性能計算項目(非特許文献5)のうち、炉心性能計算を図4に示した本発明のボイド率の計算式を組み込んだ本発明のソフトウエアを内蔵した本発明の計算機の主要な性能計算項目である。
従来のボイド率相関式は、原子炉実運転時と同程度の出口蒸気含有率χが0.2近傍での実験により約2.0と定めた、すべり比R=Vg/Vlを用いていた。低減速炉のように平均ボイド率が60%にもなるとχが0.5以上にもなり新たに大掛かりな実験をしてすべり比Rを求めねばならない。その上Rを一定としても良いのかどうか不明であった。また、VgやVlは顕には表されていなかった。
本発明のボイド率相関式では、100%蒸気での蒸気の理論的速度を考慮しているため、χが0から1.0の範囲で正確に、αは元より飽和蒸気の速度Vg、飽和水の速度Vl、飽和蒸気の質量流量Gg、飽和水の質量流量Glを求めることができる。その結果出力分布P(z)も精度良く求めることができるため、プルトニウムを効率よく燃焼させることができて、経済性向上に役立つ低減速炉を精度よく設計することができる。VgやVlの値は熱水力に関する種々の物理的解釈に役立ち、新たな原子炉設計や高度な原子炉運転に役立つ。
特に、Vlが顕に表されるため核燃料棒(1)の表面からの除熱が精度良く計算されるため核燃料棒(1)の健全性に関して精度良く検討できるため、低減速炉の経済性向上に役立つ。
原子炉の運転に関しても計算精度が向上するため、信頼性が増し原子炉運転員の負担が減るため人員減が可能となり管理コストが下がり、結果として発電コスト低下になる。
ρlin :未飽和水密度。
ρl:飽和水密度。規定されている運転圧力と蒸気表から求まる。
ρg:飽和蒸気密度。規定されている運転圧力と蒸気表から求まる。
M:ρgとρlの比。M=ρg/ρl。
A:流路断面積。
GT:流路断面を通る単位時間当たりの二相流の全質量流量。ポンプ性能等で求まっている液体の水の流入質量流量に等しい。
Vlin:未飽和液体の水の流入速度。
Vlh:飽和水初速度。Vlh=GT / (ρl×A)と求められる。
Vg100:二相流が蒸気100%になった時の飽和蒸気の速度。Vg100=Vlh / M。
GH :流路断面を通る単位時間当たりの二相流が蒸気100%になった時の飽和蒸気の質量流量。GH=ρg×Vg100×A。
Gg:流路断面を通る単位時間当たりの飽和蒸気の質量流量。
Gl:流路断面を通る単位時間当たりの飽和水の質量流量。
χ:蒸気含有率。χ=Gg/GT。
α:ボイド率。流路断面を通る単位時間当たりの二相流の流路断面における単位高さ当たり、(蒸気が占める面積)÷(蒸気と液体である水が占める流路断面積)。
Vg:飽和蒸気の速度。
Vl:飽和水の速度。
k:飽和蒸気の速度Vgにおけるαに対するχの重み。
記号一覧終了。
規定されている運転圧力と蒸気表から飽和水密度ρl 、飽和蒸気密度ρgが求まる。
二相流の全質量流量GTはポンプ性能等で求まっている液体の水の流入質量流量に等しく流路断面積Aは一定の値で決まっているから、液体の水の流入速度をVlin とし液体の水が飽和温度まで上昇したときの飽和水初速度をVlhすると、
GT=ρlin×Vlin×A=ρl×Vlh×Aと表せるから飽和水初速度は、
Vlh=GT / (ρl×A)と求められる。
二相流が蒸気100%になった時の飽和蒸気の速度をVg100その質量流量をGHとすると、
GH=ρg×Vg100×Aと表せる。質量保存則からGH =GTであるから、
ρg×Vg100×A=ρl×Vlh×AよりVg100=Vlh×ρl/ρg=Vlh / MであるからVg100は求められる。
飽和蒸気の質量流量GgはGg=ρg×Vg×α×Aであるから蒸気含有率χは、今までは、
χ=Gg/GT=ρg×Vg×α×A/(ρg×Vg×α×A+ρl×Vl×(1-α)×A)から変形してα=1/( 1-R×M×(1-1/χ) )としていた。本発明では、
χ=Gg/GT=ρg×Vg×α×A/(ρl×Vlh×A)=(ρg/ρl)×α×(Vg/ Vlh)と表せるからχ=M×α×(Vg/ Vlh)と表せる。
Vgは今まであらわには表されていなかったが第一の近似として、
Vg=Vlh+χ×(Vg100 - Vlh)=Vlh+χ×(Vlh / M -Vlh)とχに関する線形近似とした。蒸気は燃料棒(1)を覆う液の表面から蒸発する近似とした。核燃料棒(1)の下部で飽和蒸気の初速度を飽和水初速度と同じVg=Vlhとし、核燃料棒(1)の上部でχが100%蒸気になるとVg=Vg100になるとした。
Vg=Vlh+χ×(Vlh / M -Vlh)=Vlh×(1-χ×(1-1/ M) )と表せるから、
χ=M×α×(Vg/ Vlh)=M×α×Vlh×(1-χ×(1-1/ M) )/ Vlh
χ=M×α×(1-χ×(1-1/ M) )。これを変形すると、
α=1/( 1 - M×( 1 - 1/χ ) )となる。これは、従来のボイド率に関する相関式において飽和蒸気の速度Vgと飽和水の速度Vlの比であるすべり比R=Vg/Vl=1としたことになる。核燃料棒(1)の下部でχがゼロの時α=0で、χが1になるとα=1となり、χが0.5になるとαは約0.96である。
第二の近似として、
Vg=Vlh+α×(Vg100-Vlh)=Vlh×(1-α×(1-1/ M) )とαに関する線形近似とした。蒸気は蒸気通路が広くなれば抵抗が少なくなり速度を増すとした近似とした。すると蒸気含有率χは、
χ=M×α×(Vg/ Vlh)=M×α×Vlh×(1-α×(1-1/ M) )/ Vlh
χ=M×α×(1-α×(1-1/ M) )。これを変形すると、
α=( M - ( M2 - 4×χ×( M - 1 ) )1/2 )/ ( 2×( M - 1) )となる。これは核燃料棒(1)の下部でχがゼロの時α=0で、χが1になるとM<1だからα=1となり、χが0.5になるとαは約0.7である。
実際の飽和蒸気の速度Vgは、上記2つの近似を同時に含むと想定できるため重みをkとしたαとχの線形近似とした。
Vg=Vlh+((α+k×χ)/(k+1))×(Vg100-Vlh)これを変形すると、
Vg=Vlh×( 1+ ((α+k×χ)/(k+1))×( (1/M) -1 ))
上記と同様に、
χ=M×α×(Vg/ Vlh)だからE1=( M-1 ) / ( k+1 ) と置くと、
α= ( ( M - E1×χ×k ) - ( ( M - E1×χ×k )2 - 4×χ×E1 )1/2 )/ ( 2×E1 )
となる。
飽和水の速度VlはGg+Gl=GTより、
ρg×Vg×α×A+ρl×Vl×(1-α)×A =ρl×Vlh×A だから、
Vl = ( Vlh - M×Vg×α ) / ( 1 - α ) と求められる。
したがって、飽和蒸気の質量流量Ggと飽和水の質量流量Glは、
Gg = ρg×Vg×α×A
Gl = ρl×Vl×(1-α)×A
と求められ、和は常にGTになる。
図5に示す本発明のボイド率αの相関式においてk=50の場合は、従来のボイド率αの相関式において蒸気含有率χが0.3以下の運転時ボイド率が低い原子炉において比較的良く合うとされているすべり比が2.0の場合に相当する。本発明のボイド率αの相関式は、蒸気含有率が低い状態でも従来のボイド率αの相関式と同等の値を示し、高蒸気含有率でも精度の良い相関式であることは100%蒸気になった時の飽和蒸気の速度Vgが理論値Vg100になることが保証されていることからわかる。
図6,7,8は本発明のボイド率αの相関式において同時に求められる飽和蒸気の速度と飽和水の速度のk=0,50,1000の場合の挙動である。蒸気含有率χが1.0の時飽和蒸気の速度Vgは理論値になり、χが0.3以上になっても精度が保証されている。ボイド率αの相関式が保証されているということは、出力分布のボイド率に依存する計算も保証されるということであるから、原子炉挙動を高精度に解析できることが期待できる。したがって、運転状態の監視に高い信頼が持てる。計算された出力分布と炉心内核計側装置との比較において差が生じた場合においてもkの値を修正することにより精度が向上する。
プルトニウムを沸騰水型原子炉に適用する場合、ボイド率αが高い状態を想定した低減速炉の設計が望ましく、設計計算の際、ボイド率αの高い時にも高精度である式を使うことが必須である。
本発明のボイド率αの相関式において同時に求められる飽和蒸気の速度と飽和水の速度は、核燃料棒(1)の温度を求める際重要な熱伝達率を検討するのに使われる。核燃料棒(1)表面は液体の水で覆われているとして熱伝達率が求められる。ボイド率が1.0に近い場合でも高速な飽和蒸気と飽和水により除熱できることが計算可能になったため高度な炉心設計が可能となる。
また、多数の核燃料集合体を持った原子炉において、流速が解れば流動抵抗が解り流量分布も正確に求めることができて、炉心設計計算精度の向上につながる。
本発明のボイド率αの相関式中のパラメータkは、予め実験により定めることができる。即ち、想定した核燃料棒(1)の材料、配列形状、寸法を模擬した熱流動実験
によりkを定めることができる。
ボイド率の問題は沸騰水型原子炉だけでなく、加圧水型原子力発電所の蒸気発生器にもでてくる。また、火力発電所においてもボイラーで発生した熱を水管で蒸気にすることによりタービンを回転させるわけであるから、ボイド率の問題は重要である。
11 沸騰水型原子炉の二相流の液体である水
12 沸騰水型原子炉の二相流の気体である蒸気
Claims (3)
- 水と蒸気とからなる二相流において、以下の記号を使って、
ρl:飽和水密度。
ρg:飽和蒸気密度。
M:ρgとρlの比。M=ρg/ρl。
A:流路断面積。
GT:流路断面を通る単位時間当たりの二相流の全質量流量。
Vlh:流路断面を通る単位時間当たりの飽和水初速度。Vlh=GT / (ρl×A)。
Vg100:流路断面を通る単位時間当たりの二相流が蒸気100%になった時の飽和蒸気の速度。Vg100=Vlh / M。
Gg:流路断面を通る単位時間当たりの飽和蒸気の質量流量。
Gl:流路断面を通る単位時間当たりの飽和水の質量流量。
χ:蒸気含有率。χ=Gg/GT。
α:ボイド率。
Vg:流路断面を通る単位時間当たりの飽和蒸気の速度。
Vl:流路断面を通る単位時間当たりの飽和水の速度。
k:飽和蒸気の速度Vgにおけるαに対するχの重み。
記号一覧終了。
χに対するボイド率αの相関式を、E1=( M-1 ) / ( k+1 )として、
α= ( ( M - E1×χ×k ) - ( ( M - E1×χ×k )2 - 4×χ×E1 )1/2 )/ ( 2×E1 )
とし、
飽和蒸気の速度Vgを、
Vg=Vlh+((α+k×χ)/(k+1))×(Vg100-Vlh)
とし、
飽和水の速度Vlを、
Vl = ( Vlh - M×Vg×α ) / ( 1 - α )
とし、
飽和蒸気の質量流量Ggと飽和水の質量流量Glを、
Gg = ρg×Vg×α×A
Gl = ρl×Vl×(1-α)×A
として導出する方法。 - 沸騰水型原子力発電所における炉心性能計算において、水と蒸気とからなる二相流に関わる式として請求項1における式を組み込んだことを特徴とするソフトウエア及び当該ソフトウエアを内蔵する計算機。
- 水と蒸気とからなる二相流に関わる式として請求項1における式を使ったことを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心設計方法。
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