JP4322049B2 - 熱電変換モジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための熱電変換モジュールに係り、とくに、高出力に対応可能でありながら信頼性を高め、しかも比較的低温度の使用条件に適する技術に関する
【0002】
【従来の技術】
熱電変換素子を用いた熱電変換モジュールによる直接発電システムは、構造が簡単で可動部分がないため、信頼性が高く保守点検が容易であるという利点があるが、現状の出力密度およびエネルギー変換効率は未だ低いため、宇宙用など特殊な用途でしかも低い出力規模に限って開発が行われてきた。しかしながら、昨今の環境対策の観点から、ゴミ焼却炉などの廃熱を利用した発電システムへの適用が期待を集めており、発電単価の低減や熱電変換モジュールシステムの耐久性の向上などが望まれている。
【0003】
熱電変換素子には、BiTe系、BiSn系、FeSi系、SiGe系などがあり、それぞれ熱電変換の目的や用途、設置環境によって素子を使い分けている。図1に従来の熱電変換モジュールの一例を示す。この図に示す熱電変換モジュールは、たとえばBiTe等からなる熱電変換素子11の両側に、銅等からなる電極12を積層し、電極12の一面に、雲母等からなる電気絶縁層13を介して冷却ダクト14および加熱ダクト15をそれぞれ積層して構成されている。このような熱電変換モジュールでは、冷却ダクト14に送風するとともに加熱ダクト15に高温の廃ガス等を供給することにより、熱電変換素子11に熱伝導を発生させて発電し、発生した電気を電極12から取り出すことができる。
【0004】
上記のような熱電変換モジュールでは、熱電変換素子11、電極12、電気絶縁層13および冷却、加熱ダクト14、15の各部材は、加圧して圧着状態にしたりハンダなどのロウ材を用いて接合し、一体化するのが一般的であった。しかしながら、圧着による一体化では、各部材の接触界面における接触熱抵抗により熱電変換モジュールの温度落差が大きく、熱電変換素子11の出力が損なわれるという欠点があった。なお、圧着の加圧力を増加すると接触熱抵抗をいくらか緩和できるが、その加圧力に熱電変換素子11の熱応力が加わり、熱履歴により脆弱な熱電変換素子11が破損するという懸念があった。
【0005】
一方、ハンダなどのロウ材により各部材どうしを接合した場合には、接合のためにロウ材を溶解状態とするため、200〜300℃程度に加熱する必要があり、その加熱温度によっては熱電変換素子11を劣化させてしまうおそれがある。また、ロウ材の溶解温度以上の環境下に熱電変換モジュールを設置すると、ロウ材が溶解・流出してしまうので、設置場所が制限され、熱電変換モジュールの用途に制限を受けるという欠点があった。
【0006】
また、ハンダは鉛を含むため、環境保護の観点で既に製造および使用が禁止されている国や地域もあり、将来、我が国においてもハンダが使えなくなる可能性がある。この対策として鉛を含まない接合材(Lead Free Solder)の開発が各国で行われているが、接合強度およびコストの点で従来のハンダを凌ぐものはまだ得られていないのが現状である。したがって、将来、ハンダの生産および使用が中止になった場合には、熱電変換モジュールの組立にも重大な支障をきたすおそれがある。
【0007】
熱電変換素子から大きな出力を取り出すには、熱電変換素子の両面にできるだけ大きい温度差を与える必要がある。そのためには、図1に示すように、熱電変換素子を加熱および冷却ダクトではさみ、伝導により熱を伝える方式(Conduction Coupling)が効果的である。しかしながら、熱電変換素子の上下面の温度差があまりに大きいと、熱電変換素子に永久歪が生じたり破損するおそれがある。そのため、熱電変換素子の破損を予防するために、熱電変換素子と加熱、冷却ダクトの間に、熱伝導性が良好で熱応力の緩和の作用を有する熱応力緩和パッドを介在させて接合する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
具体的には、特許文献1に開示されているように、熱伝導率が大きく弾性定数の小さい材料と電気絶縁材料とを接合せずに、両者の組成を徐々に変化させた傾斜機能材料を採用した熱応力緩和パッドがある。この熱応力緩和パッドと熱電変換素子および加熱、冷却ダクトを接合すると、従来の圧着型に比べ接触熱抵抗を格段に低減することができる。また熱応力緩和パッドがクッションの役割をするため、加熱、冷却ダクトの熱膨張差に起因する熱応力を緩和することができ、熱電変換素子の破壊を防止することができる。
【0009】
【特許文献1】
特許第3056047号公報
【0010】
【発明が解決すべき課題】
前述したように、熱電変換モジュールシステムを広く普及させるためには、熱電変換特性に優れながら、環境依存が少なく、しかも環境影響へも配慮した接合形態とした熱電変換モジュールシステムを提供する必要がある。この場合、当然ながら、熱電変換素子等の各部材を一体化する際の工程で、熱電変換素子に悪影響を及ぼさないことも考慮しなければならない。しかしながら、そのような技術は未だ提供されていないのが実情である。
【0011】
よって本発明は、上記事情に鑑み、熱電変換特性に優れながら、環境依存が少なく、また環境影響へも配慮し、しかも熱電変換素子等の各部材を一体化する際の工程で、熱電変換素子に悪影響を及ぼさない熱電変換モジュールを提供することを目的としている
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱電変換モジュールは、熱電変換素子の両側に、冷却手段および加熱手段を中間部材を介して接合し、一体化した熱変換モジュールにおいて、中間部材と熱電変換素子との接合のための接合介在内層を、炭素系物質と結着剤物質とからなる炭素系接合材とし、中間部材と冷却手段または加熱手段との接合のための接合介在外層を、結着剤物質のみからなる非炭素系接合材とし、中間部材が、導電接続部材、または、熱電変換素子側へ向かうに従って熱伝導率が徐々に大きくなるとともに弾性定数および電気絶縁性が徐々に小さくなる熱応力緩和パッドであり、導電接続部材または熱応力緩和パッドが、銅焼結体であることを特徴としている。
【0013】
上記構成の熱電変換モジュールにあっては、熱電変換素子と中間部材とを接合する接合介在内層を主として炭素系物質と結着剤物質とからなる炭素系接合材としているので、ハンダ材料において懸念された設置環境温度によって接合介在層が溶解したりすることがなく、環境依存がなく広範な用途に用いることができるとともに、環境への影響がなく、しかも、各部材の一体化に際して熱電変換素子への悪影響も防止することができる。
【0014】
また、上記構成の熱電変換モジュールにあっては、中間部材と冷却手段または加熱手段とを接合する接合介在外層を、主として結着剤物質のみからなる非炭素系接合材としているので、電気絶縁性を確保することができるため、とくに、加熱ダクトまたは冷却ダクトが金属製である場合には、中間部材と冷却手段または加熱手段との間において十分な絶縁性を実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
熱電変換素子には、BiTe系、BiSn系、FeSi系、SiGe系など、任意のものを用いることができる。中間部材は、通常の導電接続部材とすることもできるが、熱電変換素子側へ向かうに従って熱伝導率が徐々に大きくなるとともに弾性定数および電気絶縁性が徐々に小さくなる熱応力緩和パッドであることが望ましい。またこれらの中間部材を銅焼結体とすると、優れた電気伝導性および熱伝導性が確保されるため好適である。さらに、このような銅焼結体の接合予定面を研磨等により凹凸面とし、あるいは少なくとも多孔質面とすると、後述する接着剤が凹部または気孔に入り込むので、銅焼結体と他の部材との接着をより強固なものとすることができる。このように、銅焼結体の接合予定面を多孔質面とする一の手段としては、粉末成型の際に、多孔質予定面を押圧する金型面に脂肪酸等の粉末を塗布して圧縮成形することが挙げられる。この場合には、圧粉体表面にその加熱揮発性粉末が埋め込まれ、焼結するとその部分が多孔質となる。また、他の手段としては、銅焼結体の接合予定面を形成する部分の粉末粒度を他の部分の粉末粒度に比して粗くして圧縮成形することが挙げられ、この場合にも、所望の多孔質面が得られる。
【0016】
ここで、上記した熱応力緩和パッドは、熱伝導率が大きく弾性定数の小さい材料と電気絶縁材料とを接合せずに、両者の組成を徐々に変化させた傾斜機能材料であり、接触熱抵抗を格段に低減するとともに、加熱、冷却手段の熱膨張差に起因する熱応力を緩和することを可能とする。また、熱応力緩和パッドの熱電変換素子側の端部は電気電導率が高いから、その部分を電極として用いることができる。あるいは、接合介在内層も炭素系物質を含み電気伝導率が高いから、その部分を電極として用いることも可能である。
【0017】
上記のような熱応力緩和パッドは、電極と絶縁層とを兼ね備えたものであるが、それに代えて電極と電気絶縁層とをそれぞれ設けることができる。この場合、電極と熱電変換素子との間に接合介在内層を設けることが必須となるが、電極と電気絶縁層、あるいは電気絶縁層と冷却、加熱手段との間にも接合介在中間層あるいは接続介在外層を設けることができる。また、電極や電気絶縁層以外の中間部材を設ける場合にも、それら中間部材の間または中間部材と冷却、加熱手段との間に種々の接合介在層を設けることができる。さらに、熱応力緩和パッドと冷却、加熱パッドとの間に接合介在外層を設けることもできる。
【0018】
また、冷却手段および加熱手段の代表的なものとしては、内部に気体を流通させるダクトがあるが、本発明では他の任意の手段を用いることができる。なお、種々の接合介在層を設けない部材どうしの接合には、たとえば熱電変換モジュールの両側から加圧して圧着状態にする等任意の手段を用いることができる。
【0019】
接合介在内層のシート抵抗値は、1〜100Ω/□であることが望ましい。シート抵抗値(R)は被膜の導電性を表すものであり、値が小さいものほど電気伝導性に優れている。このシート抵抗値は以下の式により算出することができる。
【0020】
【数1】
Figure 0004322049
【0021】
ここで、シート抵抗値が100Ω/□を越えると電気伝導性が高くなり、熱電変換モジュールのシステム全体としてみると、従来の技術で挙げたレベル(電気抵抗)と変わらないものとなってしまう。一方、シート抵抗値が低い、すなわち電気伝導度に優れたものであれば、熱電変換のロスが少ないものとなり望ましいものとなるが、接合介在内層を本発明のような炭素系接合材とした場合には、1Ω/□が下限と考えられる。
【0022】
本発明における熱電変換モジュールの接合介在内層は、主として炭素系物質と結着剤物質から構成される炭素系接合材である。炭素系物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、カーボンブラック、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)およびメソフェーズカーボンファイバー(MCF)のいずれか1つ以上を単体あるいは混合物とした形態で用いることができる。なかでもリン状またはリン片状の天然黒鉛と導電性カーボンブラックとを混合したものが好適である。また、炭素系物質として、現在はまだ高価であるため商用性の観点で実用的ではないが、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系ナノ材料も使用できると考える。また、電気伝導性をさらに向上させるために、Ni、Al、Cu、Agなどの金属粒子を添加しても良い。この場合、シート抵抗値は0.01〜0.1Ω/□程度となる。
【0023】
なお、炭素系物質は、固定炭素分が90%以上、すなわちできる限り純度の高いものが望ましく、平均粒子径は0.02〜100μmの範囲のものが良い。また、材料単体の電気伝導特性を示す指標の粉体抵抗値が0.001〜1Ω・cmの範囲のものが良い。なお、この粉体抵抗値は、黒鉛材料では圧縮密度が2.0g/cm程度の場合であり、カーボンブラックでは圧縮密度が1.2g/cm程度の場合である。
【0024】
接合介在内層を構成する結着剤物質は、樹脂系材料またはアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物であることが望ましい。樹脂系材料としては、フェノール樹脂、フタル酸樹脂、アルキッド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等を適用することができる。このような樹脂系材料を結着剤物質として使用することができるのは、熱電変換素子がBiTe系のように耐熱温度が240℃程度の場合や、熱電変換素子が耐熱性のある場合であっても、熱電変化モジュールを使用する環境が300℃程度までの場合である。
【0025】
結着剤物質としてのアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムが挙げられる。結着剤物質としてアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物を結着剤を選択するのは、熱電変換モジュールの使用環境温度が300〜750℃になる場合である。このような高温環境下ではロウ材や本発明の樹脂系材料による炭素系結合材では、接合介在内層が熱変化してしまうが、アルカリ物質含有ケイ酸塩化合物とした場合には熱変化が起こらないので、安定した性能を提供できる熱電変換モジュールとなる。したがって、アルカリ物質含有ケイ酸塩化合物にこだわらず、高温環境下で熱変化しない材料、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、エチルシリケート、重リン酸カリウム、重リン酸アルミニウムおよび低融点ガラスなども使用することができる。
このように、この発明による熱電変換モジュールの接合介在内層は、ハンダ材料のように鉛を含んだ材料ではない炭素系接合材であるので、環境に及ぼす影響が少ない。
【0026】
本発明では、上記した炭素系物質並びに結着剤物質を主たる構成物質とした炭素系接合材で熱電変換モジュールの接合介在内層を達成するが、この接合介在内層は、これら主構成物質を含んだ接着剤を塗布・熱処理することで形成することができる。熱電変換モジュールに適用する接着剤としては、炭素系物質および結着剤物質を適当な溶媒中に分散させたものが好ましい。溶媒は、結着剤物質が樹脂系材料の場合は樹脂系材料と相溶性のある有機溶剤を用い、結着剤物質がアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物の場合は水またはエチルアルコール、好ましくはイオン純水または蒸留水を用いる。また、接着剤中に炭素系物質を安定的に分散させるため、セルロース類やアクリル樹脂、天然樹脂などの分散剤、カップリング剤や界面活性剤などの分散助剤、防腐剤、粘性調整剤などの添加剤を適宜添加することが望ましい。これらの材料を投入して、分散処理により塗料化することで熱電変換モジュールに適用する接着剤が得られる。
【0027】
一方、本発明における熱電変換モジュールの接合介在外層は、主として結着剤物質のみから構成される非炭素系接合材である。接合介在外層を構成する結着剤物質は、上記した樹脂系材料またはアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物に加え、水ガラスであることが望ましい。これらの結着剤物質のうち、樹脂系材料またはアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物についての使用条件、種類、および製法等については、上記した接合介在内層を構成する結着剤と同様である。水ガラスについては、アルカリ物質含有ケイ酸塩化合物の場合と同様に水に溶解され、塗布し易い粘度に調整される。なお、本発明において使用する接合介在層のうち、接合介在内層および接合介在外層以外の接合介在層(例えば、上記接合介在中間層)については、接合介在内装と同じものを使用することができる。
【0028】
以上に示した各種接合介在層を熱電変換素子、電極、電気絶縁層および周辺構造材の接合すべき面に塗布し、熱処理または自然乾燥により接着剤中の溶媒を蒸発または揮発させることで、個々の部材を炭素系接合材または非炭素系接合材とした各接合介在層を介して接合し、一体化することで熱電変換モジュールとする。なお、接着剤の各部材への塗布は、接着剤の形態により適宜選ぶことができ、例えば、スクリーン印刷、ヘラや刷毛塗り、ローラー塗布、ディッピング、シリンジ注入等の手法で行うことができる。
【0029】
次に、図2および図3を参照して、本発明の具体的な構成を説明する。図2に示す熱電変換モジュールは、熱電変換素子1の両側に、接合介在内層2を介して銅焼結体からなる中間層3が接合されており、中間層3の外側一面に、接合介在外層4を介して冷却ダクト(冷却手段)5または加熱ダクト(加熱手段)6がそれぞれ積層されている。このような熱電変換モジュールでは、冷却ダクト5に送風するとともに加熱ダクト6に高温の廃ガス等を供給することにより、熱電変換素子1に熱伝導を発生させて発電し、発生した電気を中間層3から取り出すことができる。
【0030】
次に、図3(a)〜(c)は、上記図2に示した熱電変換モジュールの中間層3、接合介在外層4および加熱ダクト6の接合部分についての好適例である。図3(a)に示す例においては、中間層3は、通常の導電接続部材である銅焼結体であり、その接合介在外層4側の表面部分は、他の部分に比して粉末粒度が粗い粉末を使用して圧粉体を成形したことにより、粗くなっている。また、図3(b)に示す例においては、中間層3は、通常の導電接続部材である銅焼結体であるが、その接合介在外層4側の表面部分は、圧粉体成形時に押圧する金型表面にステアリン酸亜鉛粉末を塗布して成形したことにより、多数の気孔が見られる。これら図3(a),(b)に示す中間層3には、凹部または気孔が多数存在することから、上記凹部または気孔に接着剤である接合介在外層4が十分に浸透し、加熱ダクト6との接続を十分なものとすることができる。
【0031】
また、図3(c)に示す例においては、中間層3は、熱電変換素子1側へ向かうに従って熱伝導率が徐々に大きくなるとともに弾性定数および電気絶縁性が徐々に小さくなる傾斜機能材料(Functionally Graded Material)で構成されている。この傾斜機能材料3は、熱電変換素子1側から銅焼結体3a、アルミナ3b、銅焼結体3cという構造となっており、銅焼結体3cの接合介在外層4側の表面部分は、圧粉体成形時に銅粉充填層の表面に粉末粒度の大きい銅粉を充填圧縮成形したことにより、多数の気孔が存在し、この気孔に接着剤である接合介在外層4が十分に浸透し、加熱ダクト6との接続を十分なものとすることができる。このような熱電変換モジュールにおいても、冷却ダクト5に送風するとともに加熱ダクト6に高温の廃ガス等を供給することにより、熱電変換素子1に熱伝導を発生させて発電し、発生した電気を中間層3から取り出すことができる。
【0032】
【実施例】
次に、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例で限定されるものではない。
[実施例1]
〔接着剤の調整〕
炭素系接合材Aを調整するにあたり、炭素系物質を天然のリン状黒鉛(日立粉末冶金製)とアセチレンカーボンブラック(東海カーボン製)を50/50の配合割合で混合物とし、結着剤物質をレゾール型フェノール樹脂(昭和高分子製)、溶媒をブチルカルビトールアセテート(試薬)とし、これら材料を混合・分散処理して接着剤Aとした。
【0033】
炭素系接合材Bを調整するにあたり、炭素系物質をメソフェーズカーボンファイバー(ペトカ製)、結着剤物質をケイ酸カリウム(日産化学製)とし、カルボキシメチルセルロースを含んだ蒸留水中に分散処理して、接着剤Bとした。
【0034】
非炭素系接合材Cを調整するにあたり、結着剤物質をレゾール型フェノール樹脂(昭和高分子製)、溶媒をブチルカルビトールアセテート(試薬)とし、これら材料を混合・分散処理して接着剤Cとした。
【0035】
熱電変換素子をBiTe系として図1、並びに図2(中間層3については、図3(a)〜(c)に相当するものを用いた。)に示す熱電変換モジュールを組み立てた。ここで、図1のモジュールは比較例としての従来技術であり、熱電変換素子11と電極12間の接合に本発明の接合介在層は使用せずに、すべての部材どうしを加圧により圧着したものである。
【0036】
また、図2のモジュール(中間層3については、図3(a)、(b)に相当するものを用いた。)では、冷却ダクト5および加熱ダクト6と熱電変換素子1の間に、中間層3として、各々厚さ0.1mmの銅電極(Cu)を介在させ、熱電変換素子1と中間層3との接合に接着剤Bを使用し、中間層3と冷却ダクト5および加熱ダクト6との接合に接着剤Cを使用した。
【0037】
さらに、図2のモジュール(中間層3については、図3(c)に相当するものを用いた。)では、熱電変換素子1と熱応力緩和パッド3との接合には、接着剤Aを使用し、熱応力緩和パッド3と冷却ダクト5および加熱ダクト6との接合には、接着剤Cを使用し、一体化させた。
【0038】
〔評価結果〕
図1の従来技術による熱電変換モジュールでは、合計6カ所の圧着部分があり、これらの接触熱抵抗により熱電素子本体に負荷される温度落差は、熱電変換モジュール全体の温度落差の32%であった。これに対し、図2に示す熱電変換モジュール(中間層3については、図3(a)、(b)に相当するものを用いた。)では、接着剤Bの採用により接触熱抵抗が低減し、熱電変換素子1に負荷される温度落差は熱電変換モジュール全体の温度落差の39%となった。さらに、図2の熱電変換モジュール(中間層3については、図3(c)に相当するものを用いた。)では、熱応力緩和パッド3の採用による改善効果と炭素系結合材による熱伝達係数(Gap Conductance)の向上により、熱電変換モジュール全体の温度落差の84%が熱電素子1に負荷されることが分かった。
【0039】
すなわち、図2に示す各熱電変換モジュールは、図1に示した従来のものと比べ、熱電素子1に1.7倍の温度落差を負荷することができ、1.7倍の熱流束を流せることになる。これに伴い、熱電変換素子1の変換効率が同一であると仮定すると、図2の熱電変換モジュールは、1.8倍となる。熱電変換モジュールの出力は熱流束と変換効率との積で与えられるため、図2のものと対比すると3倍の出力が期待できる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したとおり本発明によれば、中間部材と熱電変換素子との接合のための接合介在内層を、主として炭素系物質と結着剤物質とからなる炭素系接合材としているから、ハンダ材料において懸念された設置環境温度によって接合介在層が溶解したりすることがなく、環境依存がなく広範な用途に用いることができるとともに、環境への影響がなく、しかも、各部材の一体化に際して熱電変換素子への悪影響も防止することができる等の効果が得られる。また、中間部材と冷却手段または加熱手段とを接合する接合介在外層を、主として結着剤物質のみからなる非炭素系接合材としているので、電気絶縁性を確保することができるため、とくに、加熱ダクトまたは冷却ダクトが金属製である場合には、中間部材と冷却手段または加熱手段との間において十分な絶縁性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の熱電変換モジュールを示す側面図である。
【図2】 本発明の実施形態の熱電変換モジュールを示す側面図である。
【図3】 (a)〜(c)は、図2に示す本発明の熱電変換モジュールに使用する中間層の各好適例を示す側面図である。
【符号の説明】
1…熱電変換素子、2…接合介在内層、3…中間層、4…接合介在外層、5…冷却ダクト、6…加熱ダクト

Claims (9)

  1. 熱電変換素子の両側に、冷却手段および加熱手段を中間部材を介して接合し、一体化した熱変換モジュールにおいて、
    前記中間部材と前記熱電変換素子との接合のための接合介在内層を、炭素系物質と結着剤物質とからなる炭素系接合材とし、前記中間部材と前記冷却手段または加熱手段との接合のための接合介在外層を、結着剤物質のみからなる非炭素系接合材とし
    前記中間部材が、導電接続部材、または、上記熱電変換素子側へ向かうに従って熱伝導率が徐々に大きくなるとともに弾性定数および電気絶縁性が徐々に小さくなる熱応力緩和パッドであり、
    前記導電接続部材または熱応力緩和パッドが、銅焼結体であることを特徴とする熱電変換モジュール。
  2. 前記銅焼結体の接合予定面が、凹凸面または多孔質面であることを特徴とする請求項に記載の熱電変換モジュール。
  3. 前記接合介在内層のシート抵抗値が、1〜100Ω/□であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換モジュール。
  4. 前記接合介在内層を構成する前記結着剤物質が、樹脂系材料またはアルカリ物質含有ケイ酸塩化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
  5. 前記接合介在外層を構成する前記結着剤物質が、樹脂系材料、アルカリ物質含有ケイ酸塩化合物、または水ガラスであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
  6. 前記銅焼結体の接合予定面を押圧する金型表面に粉末を塗布して成形した銅焼結体を用いることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
  7. 前記銅焼結体の接合予定面を形成する部分の粉末粒度を他の部分の粉末粒度に比して粗くした銅焼結体を用いることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換モジュール。
  8. 前記接合介在内層は、溶媒、炭素系物質および結着剤物質からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱電変換モジュール
  9. 前記接合介在外層は、溶媒および結着剤物質からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱電変換モジュール
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