JP4320484B2 - 改変グルコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子、その遺伝子組換え体及びグルカンの製造方法 - Google Patents

改変グルコシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子、その遺伝子組換え体及びグルカンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高いグルカンの合成速度を有する改変グルコシルトランスフェラーゼ(改変GTF)、この改変GTFを効率よく生産し得る遺伝子組換え体、及び該遺伝子組み換え体から産生された改変GTFを用いたグルカンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
グルカンは、澱粉、グリコーゲン、デキストリン、デキストラン、及びプルラン等のグルコースから構成される多糖類の総称である。これらグルカンは医薬品、化学品及び食品などの種々の分野で幅広く利用されている。例えば、デキストランは血漿増量剤として広く用いられており、血液不足や輸血による疾病などの発生により需要が増大している。プルランは工業用フィルム、シート、プラスチック成型物を始めとして、化粧品、香料等のカプセル化、医薬品の錠剤及び食品用原料として利用されている。澱粉は食品、香粧品、及び化粧品の成分として一般的に用いられており、また、製紙工業や繊維工業でのサイジング剤や濃厚剤、更に、石油採掘における二次・三次回収用の増粘剤としても用いられている(総合多糖類科学;原田篤也、講談社サイエンティフィク、12996の化学商品;化学工業日報社)。
【0003】
近年、これらのグルカンに加えてグルコースがα−1,6又はα−1,3結合でつながった水溶性又は水不溶性のグルカンが注目を集めている。
【0004】
例えば、水溶性のグルカンは歯垢形成抑制効果を有する口腔用組成物としての用途(特開平10−182382号公報)、及び保湿剤としての用途(特願平10−157884号)などが見出されている。一方、水不溶性グルカンは、その性質から各種担体等への応用も見込まれる極めてユニークな素材として着目されており、このようにグルカンは、極めて広い用途範囲をもっていることから、産業上重要な化合物として位置づけられている。
【0005】
また、これらグルカンは、従来、植物からの抽出法や微生物を用いた発酵法などにより生産されてきた。例えば、澱粉はイモ、とうもろこし及び小麦などの穀物類を磨砕することによって粗澱粉乳を得た後、沈殿・分離などの精製工程を経て製造されていた。プルランはオウレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を用いた発酵生産を行った後、メタノールなどの有機溶媒を発酵液中に添加することにより、プルランを回収し、製造していた。デキストランはロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)を用いて発酵生産を行った後、メタノールなどの有機溶媒を発酵液中に添加することにより、デキストランを回収し、製造していた。
【0006】
一方、グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を用いた酵素法に基づくグルカンの製造法も行われている。具体的には、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)の増殖に伴って産生されるスクロース6−GTF(デキストランスクラーゼ)を発酵生産により調製し、この酵素を用いてデキストランを合成することができることが知られている。この場合、酵素法では発酵法に比べて純度の高いデキストランが得られるなどのメリットがある(多糖生化学2;江上不二夫ら、共立出版、総合多糖類科学;原田篤也、講談社サイエンティフィク)。
【0007】
また最近、バイオテクノロジーの飛躍的な進歩に伴って、遺伝子組換え技術を応用した効率的なグルカンの生産法が開発されつつあるが、う蝕の原因菌として知られているストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcusmutans)やストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)などが生産するグルカンの場合は、一般的には発酵法が用いられてきた。
【0008】
しかしながら、これら発酵法では生きた菌体を用いるために、生産量に最も影響を与えるショ糖濃度が菌の生育に対し制限条件となり、高濃度のショ糖を添加することができず、培地当たりの収量が低いという問題点があった。
【0009】
かかる問題点を解決すべく、本発明者らは、従来から酵素の凝集、吸着及びプロテオリシス等の問題により極めて調製が困難であったGTFだけを分離精製できる、遺伝子組換え技術を応用して製造した酵素を用いた効率の良いムタンの合成法を開発した(特願平10−274310号)。
【0010】
しかしながら、一般に、GTFの遺伝子組換え体は、発酵生産性の低さや保存安定性の悪さなどの面で充分なものではなく、グルカンの製造効率をより一層向上させるために、発酵生産性及び保存安定性を高めるべく、更なる有効な方策の開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、遺伝子組換え技術を応用することにより、高いグルカンの製造効率を有する改変グルコシルトランスフェラーゼ(改変GTF)、この改変GTFを効率よく生産できると共に、優れた発酵生産性と保存安定性を有する遺伝子組換え体、及び該遺伝子組換え体から産生された改変GTFを用いたグルカンの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)のC末端側に存在するグルカン結合領域及びその近傍のアミノ酸配列のうち、遺伝子組換え技術により10個以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する改変GTFが、高いグルカンの合成速度を有すること、また、この改変GTFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を挿入したプラスミド等のベクターを大腸菌等の宿主に取り込むことにより形質転換された遺伝子組換え体が、意外にも改変GTFを効率よく生産できると共に、高い発酵生産性と優れた保存安定性を備えており、従来の課題を効果的に解決し得ることを知見した。
【0013】
そして、上記遺伝子組換え体から産生された改変GTFを用いることにより、ムタン、デキストラン、澱粉、グリコーゲン、デキストリン、及びプルラン等を初めとする産業上有用な種々のグルカンを極めて効率よく生産できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の改変グルコシルトランスフェラーゼ(改変GTF)は下記に示すものである。
[1].下記塩基配列(1)、(2)、(3)又は(4)でコードされたアミノ酸配列からなり、ムタンを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
(1)配列番号1に示されるストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、4495ベースより下流の500ベースを欠失し、配列番号6に示される塩基配列
(2)配列番号1に示されるストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、4751ベースより下流の244ベースを欠失し、配列番号7に示される塩基配列
(3)配列番号6に示される塩基配列
(4)配列番号7に示される塩基配列
[2].下記塩基配列(5)、(6)、(7)又は(8)でコードされたアミノ酸配列からなり、ムタンを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
(5)ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、3346ベース位置に108ベース付加し、配列番号8に示される塩基配列
(6)ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、3346ベース位置に351ベース付加し、配列番号9に示される塩基配列
(7)配列番号8に示される塩基配列
(8)配列番号9に示される塩基配列
[3].下記塩基配列(9)、(10)、(11)又は(12)でコードされたアミノ酸配列からなり、デキストランを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
(9)配列番号2に示されるロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロース6−GTFの塩基配列において、4561ベースより下流の346ベースを欠失し、配列番号10に示される塩基配列
(10)配列番号2に示されるロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロース6−GTFの塩基配列において、3657ベース位置に96ベース付加し、配列番号11に示される塩基配列
(11)配列番号10に示される塩基配列
(12)配列番号11に示される塩基配列
また、下記グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子、遺伝子組換え体、グルカンの製造方法を提供する。
[4].上記(1)〜(12)のいずれかに示される塩基配列からなるグルコシルトランスフェラーゼ遺伝子。
[5].[4]記載の遺伝子を挿入したベクターを宿主に取り込むことにより形質転換された[6].[5]記載の遺伝子組換え体から産生された改変グルコシルトランスフェラーゼを用いたグルカンの製造方法。
【0015】
ここで、本発明の改変GTFを取得するには、まず、改変していないGTF(ネイティブなGTF)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、この遺伝子を発現したベクターを取り込んだGTFを保持した遺伝子組換え体を作成する。
【0016】
この場合、GTFのアミノ酸配列をコードする遺伝子は、GTFを産生可能な菌株から通常の方法により染色体DNAを抽出し、既知のGTFの遺伝子配列情報をもとにしてPCR法等により、取得することができる。
【0017】
具体的には、ムタンの場合には、GTFとしては公知のものを使用することができ、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcusmutans)、ストレプトコッカス・ラッタス(Streptococcus rattus)、ストレプトコッカス・クリセタス(Streptococcus cricetus)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・フェラス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・マカカエ(Streptococcus macacae)、ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)などに由来するGTF−I,SIが挙げられる。
【0018】
また、デキストランの場合には、GTFとしては公知のものを使用することができ、例えばストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcusmutans)、ストレプトコッカス・ラッタス(Streptococcus rattus)、ストレプトコッカス・クリセタス(Streptococcus cricetus)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・フェラス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・マカカエ(Streptococcus macacae)、ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)などに由来するGTF−S、S1、S2、S3、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・デキストラニカム(Leuconostoc dextranicum)由来のスクロース6−GTF(デキストランスクラーゼ)などが挙げられる。
【0019】
これらGTFのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は公知であり、例えば下記文献に記載されている。
・ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)Mfe28のGTF−I遺伝子配列(Journal of Bacteriology, Sept. 1987 p4271−4278 ROY R. B. RUSSELら)
・ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)のスクロース6−GTF遺伝子配列(Gene,1996 vol.182(1−2) p23−32 Monsan,P.ら)
・ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)GS5のGTF−I遺伝子配列(Journal of Bacteriology, Sept.1987 p4263−4270 H.K. KURAMITSUら)
・ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)MT8148のGTF−I遺伝子配列(FEMS Microbiol.Lett. 161, 1998 p331−336 S.HAMADAら)・ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)6715のGTF−I遺伝子配列(特開平5−23188号公報)
【0020】
そして、GTFのアミノ酸配列をコードする遺伝子は、上記公知の遺伝子配列情報をもとにして、上記菌株から抽出した染色体DNAをテンプレートとしてPCR法を行うことにより取得することができる。
【0021】
具体的には、上記目的とするGTFの遺伝子配列情報からGTF遺伝子配列の上流と下流について30ベース程度の長さの一対のプライマーを作成し、この一対のプライマーを用いて菌株から抽出した染色体DNAをテンプレートとしてDNAポリメラーゼを用いてPCR法を行うことにより、目的とするGTF遺伝子を増幅し、取得することができる。なお、PCR法は、特に制限されず通常の方法を採用することができる。
【0022】
次に、得られたGTF遺伝子をプラスミド等のベクターに挿入し、このGTF遺伝子が挿入されたプラスミド等のベクターを大腸菌等の宿主に取り込み形質転換することにより、GTF遺伝子を保持した遺伝子組換え体が得られる。
【0023】
ここで、ベクターとしては、特に制限されないが、プラスミドが好適であり、宿主が大腸菌の場合はpBR系、pUC系等のプラスミド、宿主がバチルス属細菌の場合はpUB110系、pC194系等のプラスミド、宿主が酵母の場合はYIp系、YRp系、YEp系等のプラスミドなどが発現性の点から好適に用いられる。また、ベクター(プラスミド)の宿主細胞への導入(形質転換)は、コンピテントセル法、プロトプラスト化法、及び電気パルス法(エレクトロポレーション)等の方法で行うことができる。
【0024】
上記ベクターを組み込む宿主細胞としては、特に制限されないが、例えばエシェリシア・コリ(Escherichia coli)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)等のバクテリア、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クリビロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)等の酵母、アスペルギルス・ニードランス(Aspergirus nidulans)等のカビ、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)等の放線菌を使用できる。中でも基礎情報の充実しているエシェリシア・コリ(Escherichia coli)が好ましい。
【0025】
本発明においては、上述したように、GTF遺伝子を保持した遺伝子組換え体を用いて、この遺伝子組換え体に対して遺伝子組換え技術を応用することにより、GTFのC末端側に存在するグルカン結合領域及びその近傍のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列を欠失、置換又は付加することにより、該欠失、置換又は付加した塩基配列に対応するアミノ酸配列が欠失、置換又は付加した改変GTFを得ることができるものである。
【0026】
ここで、上記GTFのグルカン結合領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列は、GTFの種類、産生菌種などにより異なり一概には規定できないが、例えばムタンの場合(ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来)は、配列表の配列番号1に示したように、GTF−Iをコードする遺伝子の塩基配列の3300ベースより下流、具体的には3300〜4995ベースまでの領域をいう。また、デキストランの場合(ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides))は、配列表の配列番号2に示したように、スクロース6−GTF(デキストランスクラーゼ)をコードする遺伝子の3500べースより下流、具体的には3500〜4907ベースまでの領域をいう。
【0027】
本発明の遺伝子組換え技術によるグルカン結合領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の欠失、置換又は付加は、GTF遺伝子を保持した遺伝子組換え体に対し制限酵素を用いた遺伝子(DNA)の切断、結合技術及び遺伝子クローニング技術等の遺伝子組換え技術を応用することにより、行うことができる。
【0028】
この場合、GTF遺伝子のグルカン結合領域の塩基配列を欠失する場合には、グルカン結合領域及びその近傍のアミノ酸をコードする塩基配列を制限酵素を用いて切断し、これらを結合させることにより行うことができる。また、グルカン結合領域に塩基配列を付加する場合には、特にグルカン結合能を持つ塩基配列(グルカン結合領域をコードする塩基配列)の一部を切り取った塩基配列をグルカン結合領域内に付加することが好ましい。更に、グルカン結合領域の塩基配列を置換する場合にはグルカン結合領域内の所定の塩基配列部分を置換することが好ましい。
【0029】
上記制限酵素としては、特に制限されず、5’末端型、3’末端型、ブラントエンド型のいずれでもよく、例えばBlnI、HindIII、PstI、NaeI、NspI、NspV等を目的に応じて用いることができる。
【0030】
具体的には、GTF遺伝子のグルカン結合領域の塩基配列を欠失する方法としては、ネイティブなGTF遺伝子をプラスミドベクターに挿入し、この発現型プラスミドベクターを大腸菌等の宿主に取り込ませることにより形質転換を行い、GTF遺伝子を導入した組換え大腸菌(遺伝子組換え体)を得る。この遺伝子組換え体のGTF遺伝子(発現型pUC118)を制限酵素(例えばBlnI、HindIII、PstI、NaeI、NspI、NspV等)を用いて切断し、結合させることにより、グルカン結合領域及びその近傍の塩基配列が欠損した改変GTF遺伝子を保持した組換え体を得ることができる。
【0031】
また、GTFの結合領域の塩基配列を付加する方法の一例としては、ネイティブなGTF遺伝子のグルカン結合領域をコードする所定長さの塩基配列からなるDNA断片を作成し、このDNA断片をPCR法により増幅した後、平滑化し、平滑化DNA断片を作成する。次に、GTF遺伝子が発現している組換え体のGTF遺伝子のグルカン結合領域を制限酵素で切断した後、平滑化し、この切断した組換え体と上記平滑化DNAとをライゲーションすることにより、GTF遺伝子のグルカン結合領域内にグルカン結合領域をコードする塩基配列が付加した改変GTF遺伝子を保持した遺伝子組換え体を得ることができる。なお、平滑化の際に、平滑化DNA断片に数個の塩基が付加されることがあるが、本発明の目的及び作用効果を達成する上で問題とはならない。
【0032】
なお、GTFのグルカン結合領域の塩基配列を置換する方法としては、ODA法、LA PCR法、Kunkel法などにより、GTF遺伝子のグルカン結合領域内の塩基配列が置換した改変GTF遺伝子を保持した遺伝子組換え体を得ることができる。
【0033】
この場合、欠失、置換又は付加する塩基配列の数(アミノ酸の数)は、目的とするGTFの種類などにより異なり一概には規定できないが、通常30ベース(アミノ酸10個)以上、好ましくは30〜2400ベース(アミノ酸10〜800個)、より好ましくは90〜1800ベース(アミノ酸30〜600個)、更に好ましくは90〜1200ベース(アミノ酸30〜400個)である。
【0034】
具体的には、例えばムタンを生産する場合には、ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のGFT−Iが好適に用いられるが、発酵生産性及び保存安定性を高めるためには、グルコシルトランスフェラーゼのC末端側に存在するグルカン結合領域の近傍において、遺伝子組換え技術により10〜800個のアミノ酸(30〜2400ベース)を欠失、置換又は付加することが好ましく、より好ましくは30〜600個のアミノ酸(90〜1800ベース)、更に好ましくは50〜530個のアミノ酸(150〜1590ベース)を欠失、置換又は付加することが好ましい。
【0035】
また、デキストランを生産する場合には、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロース6−GTFが好適に用いられ、発酵生産性及び保存安定性を高めるためには、同酵素のC末端側に存在するグルカン結合領域にグルカン結合能を持つ10〜600個のアミノ酸(30〜1800ベース)を遺伝子組換え技術により欠失、置換又は付加することが好ましく、より好ましくは30〜400個のアミノ酸(90〜1200ベース)、更に好ましくは30〜200個のアミノ酸(90〜600ベース)を欠失、置換又は付加することが好ましい。
【0036】
なお、ムタン、デキストラン以外の澱粉、グリコーゲン、デキスリン、プルラン等のグルカンにおいても、これらグルカンを合成する酵素の遺伝子配列情報をもとにして、上記同様に適用できることは勿論である。
【0037】
このようにして得られるグルカン結合領域及びその近傍のアミノ酸をコードする遺伝子の塩基配列が改変されたGTFを保持した遺伝子組み換え体を、通常の方法により培養することにより、本発明の改変GTFが得られる。
【0038】
本発明の改変GTFは、そのグルカン結合領域及びその近傍のアミノ酸を欠失、置換又は付加することにより、グルカンの合成速度が飛躍的に向上するという優れた特性を備えたものである。
【0039】
また、本発明の遺伝子組換え体は、改変GTFを効率良く生産できると共に、高い発酵生産性と優れた保存安定性を備えており、従来のGTFの遺伝子組換え体における発酵生産性の低さや保存安定性の悪さなどの諸問題を解決し得、グルカンの製造効率をより一層向上させることができるものである。
【0040】
次に、本発明のグルカンの製造方法は、上記改変GTF遺伝子組換え体を用いて、GTFの酵素法で行われている培養条件により、菌体から産生される改変GTF酵素を用いて通常の酵素法により、グルカンを製造するものである。
【0041】
具体的には、遺伝子組換え体として大腸菌(宿主)を用いた場合には、例えばジャーファメンターに所定量のブレイン・ハート・インヒュージョン培地(BHI培地、BBL社製)を仕込み、オートクレーブで滅菌後、この培地に大腸菌組換え株を接種し、温度37℃、回転数300rpm、通気量1vvmの条件で4〜24時間培養する。
【0042】
培養後菌体を遠心分離(8000rpm×20分)により回収した後、菌体に対し、100mlの6Mウレア−EDTA溶液(6Mウレア、10mMEDTA、0.1Mトリス塩酸)加えて、室温で1時間放置する。放置後、遠心分離(18000rpm×20分)により上清を回収することにより、改変GTF酵素液を得ることができる。
【0043】
そして、この改変GTF酵素液を用いて、通常のGTFの酵素法と同様の方法で、効率良く、グルカンを製造することができるものである。
【0044】
本発明のグルカンの製造方法によれば、従来の酵素法と同じ方法で、極めて効率良く有用なグルカンを製造することができるものである。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、高いグルカンの合成速度を有する高純度の改変グルコシルトランスフェラーゼ(改変GTF)を得ることができる。
また、本発明の改変GTF遺伝子組換え体は、上記高品質な改変GTFを極めて効率よく生産できると共に、高い発酵生産性と優れた保存安定性を有するものである。
そして、本発明の遺伝子組換え体から産生された改変GTFを用いることにより、ムタン、デキストラン、澱粉、グリコーゲン、デキストリン、及びプルラン等を初めとする産業上有用な種々のグルカンを極めて効率よく生産できるものである。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0047】
[実施例1](ムタンの場合)
ムタンの製造に用いる改変GTF酵素の作製方法について以下に示す。
【0048】
(1)染色体DNAの調製
ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)をトッドヘウィトブロス(Difco社製)に接種し、37℃で一晩培養し、菌体を得た。湿潤菌体1gに対してTEバッファー(10mMトリス塩酸、1mMEDTA、pH8.0)1mlを加え、懸濁後、リゾチーム8mgを添加し、37℃で30分間インキュベートした。続いてN−アセチルムラミダーゼを0.1mg添加し、50℃で30分間インキュベートして完全に溶菌させた。常法によりフェノール処理を行いDNAを抽出し、エタノール沈殿によりストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)の染色体DNAを得た。
【0049】
(2)PCR法によるGTF−I遺伝子の取得
既知のストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)のGTF−I遺伝子配列(Journal of Bacteriology, Sept. 1987 p4271−4278 ROY R. B.RUSSELら)をもとにして、GTF−I遺伝子の上流と下流それぞれ30ベースからなる下記一対のプライマーを作成した。この一対のプライマーを用いて上記(1)で得られた染色体DNAをテンプレートとして長鎖長用DNAポリメラーゼKOD・dash(東洋紡)を用いたPCR法によりGTF−I遺伝子を得た。この遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。
【0050】
プライマー
配列表の配列番号3
5’−CTAGCAGATACCATTTTGTCTCTTCTTTGT−3’
配列表の配列番号4
5’−AAGCTTTTTGACTTGGTCGAGATAGGTTTA−3’
【0051】
(3)遺伝子組換え体の取得
上記(2)で得られたGTF−I遺伝子をプラスミドベクター(pUC118)に挿入し、この発現プラスミドベクター(発現型pUC118)を大腸菌JM109株(宿主菌)に取り込ませることにより形質転換し、GTF−I遺伝子を導入した組換え大腸菌(遺伝子組換え体)を得た。
【0052】
上記(3)で得た遺伝子組換え体(発現型pUC118)のGTF−I遺伝子を制限酵素(BlnI、HindIII、及びPstI)を用いて切断し、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域近傍の3’末端側の塩基配列が欠失した下記3種の改変遺伝子組換え体(GTF−D7(参考例)、GTF−D3、GTF−D2)を作成した。
【0053】
GTF−D7改変組換え体
GTF−D7改変組換え体は、制限酵素BlnIを用いてGTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3300ベースより下流の3’末端、具体的には3346ベースより下流の1649ベースを欠損させた。
得られたGTF−D7のGTF−I遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号5に示す。
GTF−D3の改変組換え体
GTF−D3改変組換え体は、制限酵素HindIIIを用いてGTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3300ベースより下流の3’末端、具体的には4495ベースより下流の500ベースを欠損させた。
得られたGTF−D3のGTF−I遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号6に示す。
GTF−D2の改変組換え体
GTF−D2改変組換え体は、制限酵素PstIを用いてGTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3300ベースより下流の3’末端、具体的には4751ベースより下流の244ベースを欠損させた。
得られたGTF−D2のGTF−I遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号7に示す。
【0054】
また、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3300ベースより下流に所定の長さの塩基配列を付加して下記2種の改変遺伝子組換え体(GTF−A1、GTF−A2)を作成した。
【0055】
GTF−A1改変組換え体
GTF−A1改変組換え体は、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3452〜3555ベースの104ベース部分からなるDNA断片を作成し、このDNA断片をPCR法により増幅した後、平滑化し、平滑化DNA断片を作成した。なお、平滑化DNA断片には平滑化の際に4塩基付加されている。
次に、上記(3)で得た組換え体をGTF−I遺伝子の制限酵素BlnIを用いて切断した後、平滑化し、この切断した組換え体と上記平滑化DNA断片とをライゲーションすることにより、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域の3346ベース位置に108ベース付加した改変組換え体(GTF−A1)を作成した。
得られたGTF−A1のGTF−I遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号8に示す。
GTF−A2改変組換え体
GTF−A2改変組換え体は、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域をコードする3452〜3798ベースの347ベース部分からなるDNA断片を作成し、このDNA断片をPCR法により増幅した後、平滑化し、平滑化DNA断片を作成した。なお、平滑化DNA断片には平滑化の際に4塩基付加されている。
次に、上記(3)で得た組換え体をGTF−I遺伝子の制限酵素BlnIサイトで切断した後、平滑化し、この切断した組換え体と上記平滑化DNA断片とをライゲーションすることにより、GTF−I遺伝子のグルカン結合領域の3346ベース位置に351ベース付加した改変組換え体(GTF−A2)を作成した。
得られたGTF−A2のGTF−I遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号9に示す。
【0056】
(5)組換え体による改変GTF酵素の調製
3L容のジャーファメンターに2リットルのブレイン・ハート・インヒュージョン培地(BHI培地、BBL社製)を仕込み、オートクレーブで滅菌した。
この培地に上記(4)方法で取得したGTF−D7、GTF−D3、GTF−D2、GTF−A1、及びGTF−A2の大腸菌組換え株を接種し、温度37℃、回転数300rpm、通気量1vvmの条件で16時間培養した。
培養後菌体を遠心分離(8000rpm×20分)により回収した後、菌体に対し、100mlの6Mウレア−EDTA溶液(6Mウレア、10mMEDTA、0.1Mトリス塩酸)加えて、室温で1時間放置した。放置後、遠心分離(18000rpm×20分)により上清を回収し、これを酵素液とした。
【0057】
(6)発酵生産性の比較
上記(5)で得られた各酵素液を用いてGTF−I活性を下記方法により測定した。結果を図1に示す。
【0058】
GTF−Iの活性測定
ショ糖10%(W/W)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6)を0.1ml分取し、これに上記(5)で得られた各酵素液を0.1ml加え、35℃で10分間インキュベートして反応させた。反応終了後、ジニトロフタル酸溶液を0.4ml加え、反応を停止させてジニトロフタル酸法により、遊離した還元糖量を測定した。対照には反応時間0分の反応液を上記同様にして定量した。なお、当該酵素の1単位とは上記条件下において1分間にショ糖1μgを分解する酵素の量と定義した。
【0059】
図1の結果から、グルカン結合領域の塩基配列の一部が欠失した改変GTF−I組換え体(GTF−D2、GTF−D3、GTF−D7)から得たGTF−I、及びグルカン結合領域に塩基配列を付加した改変GTF−I組換え体(GTF−A1、GTF−A2)から得たGTF−Iは、いずれもネイティブなGTF−I(GTF)に比べて高い酵素活性を示し、GTF−Iのグルカン結合領域の塩基配列を欠失又は付加することにより、発酵生産性が高くなることが認められた。
【0060】
(7)保存安定性の比較
上記(4)で作成した改変組換え体(GTF−D2、GTF−A1)、及びネイティブなGTF−Iを導入した組換え体(GTF)について、−80℃で3ヶ月間保存した後、これら組換え体を上記同様の方法で培養し、得られた酵素液を用いて上記(6)と同様の方法によりGTF−I活性を測定した。
得られたGTF−I活性値から組換え体の保存安定性を下記式より、保存前のGTF−I活性に対する保存後のGTF−Iの残存活性(%)として求めた。結果を表1に示す。
【0061】
【数1】
Figure 0004320484
【0062】
【表1】
Figure 0004320484
表1の結果から、ネイティブなGTF−I組換え体(GTF)は保存安定性が極めて低いことが認められる。これに対して、グルカン結合領域を欠失又は付加したGTF−I改変組換え体(GTF−D2、GTF−A1)は保存安定性が高いことが分かった。
【0063】
(8)ムタン合成速度の比較
上記(4)で作成した改変組換え体(GTF−D2、GTF−A1)及びネイティグなGTF−Iを導入した組換え体(GTF)を上記(5)と同様の方法で培養し、得られた酵素液を用いて下記ムタンの定量法に従ってムタン合成速度を測定した。結果を図2に示す。
【0064】
ムタンの定量法
2%のショ糖を含むリン酸緩衝液(pH6.5)1mlに対し150U相当量の上記各酵素液を加え、35℃で0〜90分間反応させた。加熱して酵素を失活させることにより反応を停止させ、酵素反応の結果生成したムタンを遠心分離(8000rpm×20分)により回収し、よく洗浄した後、フェノール硫酸法でムタン量を測定した。
【0065】
図2の結果から、グルカン結合領域を欠失したGTF−I(pGty−D2)及びグルカン結合領域に付加したGTF−I(pGty−A1)は改変していないGTF−I(pGty)と比較して、90分間の合成反応でそれぞれ2.1倍量及び1.6倍量のムタンを合成できることが分かった。
【0066】
以上のように、GTF−IはそのC末端のグルカン結合領域のアミノ酸配列を改変することにより、発酵生産性が高まり、保存安定性の高いGTF−I組換え体が得られること、また、これら改変GTF−I組換え体から産生された改変GTF−Iは極めて効率良くムタンを合成できることが分かった。
【0067】
[実施例2](デキストランの場合)
(1)スクロース6−GTF遺伝子の取得
既知のロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)のスクロース6−GTF遺伝子配列(Gene,1996 vol.182(1−2) p23−32 Monsan,P.ら)をもとに、上述の遺伝子クローニング手法に準じてスクロース6−GTF遺伝子を調製した。この遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
【0068】
(2)遺伝子組換え体の取得
上記(1)で得られたスクロース6−GTF遺伝子をプラスミドベクター(pUC118)に挿入し、この発現プラスミドベクター(発現型pUC118)を大腸菌JM109株(宿主菌)に取り込ませることにより形質転換し、スクロース6−GTF遺伝子を導入した組換え大腸菌(遺伝子組換え体)を得た。
【0069】
(3)改変組換え体の取得
スクロース6−GTF−D6改変組換え体
上記(2)で得た組換え体のグルカン結合領域をコードする3500ベースよりも下流の3’末端、具体的には4561ベースより下流の346ベースを制限酵素BamHIで消化することにより欠失させた。
得られたスクロース6−GTF−D6のスクロース6−GTF遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号10に示す。
スクロース6−GTF−A1改変組換え体
スクロース6−GTF遺伝子のグルカン結合領域をコードする3808〜3901ベースの94ベース部分からなるDNA断片を作成し、このDNA断片をPCR法により増幅した後、平滑化し、平滑化DNA断片を作成した。なお、平滑化DNA断片には平滑化の際に2塩基付加されている。
上記(2)で得た組換え体をスクロース6−GTF遺伝子の制限酵素NspVサイトで切断した後、平滑化し、この切断した組換え体と上記平滑化DNA断片とをライゲーションすることにより、スクロース6−GTF遺伝子のグルカン結合領域の3657ベース位置に96ベース付加した改変組換え体(スクロース6−GTF−A1)を作成した。
得られたスクロース6−GTF−A1のスクロース6−GTF遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号11に示す。
【0070】
次に、得られた各組換え体を上記実施例1と同様に培養して酵素液
を作成し、下記の通り発酵生産性、保存安定性、及びデキストラン合成速度を測定した。
【0071】
(4)発酵生産性の比較
スクロース6−GTF−A1を上記実施例1と同様の方法で培養し、得られた酵素液を用いてスクロース6−GTFの活性を下記方法で測定した。結果を図3に示す。
【0072】
スクロース6−GTFの活性測定
ショ糖10%(W/W)を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6)を0.1mlとり、これに上記酵素液を0.1ml加え、35℃で10分間インキュベートして反応させた。反応終了後、ジニトロフタル酸溶液を0.4ml加え、反応を停止させてジニトロフタル酸法により、遊離した還元糖量を測定した。対照には反応時間0分の反応液を上記と同様にして定量した。なお、当該酵素の1単位とは上記条件下において1分間にショ糖1μgを分解する酵素の量と定義した。
【0073】
図3の結果から、グルカン結合領域の塩基配列を付加した組換え体(S6−GTF−A1)から得たスクロース6−GTFは、ネイティブなスクロース6−GTF(S6−GTF)から得たスクロース6−GTFに比べて高い酵素活性を示し、グルカン結合領域に塩基配列を付加することにより発酵生産性が高くなることが分かった。
【0074】
(5)保存安定性の比較
各種組換え体(S6−GTF,S6−GTF−D6、S6−GTF−A1)を−80℃で3ヶ月間保存後、これらの組換え体を培養し、スクロース6−GTF活性を上記(4)と同様の方法で測定することにより、各組換え体の保存安定性を保存前に対する残存活性(%)で評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
Figure 0004320484
表2の結果から、ネイティブなスクロース6−GTF組換え体(S6−GTF)は保存安定性が低かったが、グルカン結合領域の塩基配列を付加又は欠失した組換え体(S6−GTF−A1、S6−GTF−D6)は、保存安定性が向上することが認められた。
【0076】
(6)デキストラン合成速度の比較
組換え体(S6−GTF、S6−GTF−A1)由来のスクロース6−GTFを用いて下記方法によりデキストラン合成速度を測定した。結果を図4に示す。
【0077】
デキストランの定量法
2%のショ糖を含むリン酸緩衝液(pH6.5)1mlに対し150U相当量の上記各酵素液を加え、35℃で0〜90分間反応させた。加熱して酵素を失活させることにより反応を停止させ、酵素反応の結果生成したデキストランを遠心分離(8000rpm×20分)により回収し、よく洗浄した後、フェノール硫酸法でデキストラン量を測定した。
【0078】
図4の結果から、グルカン結合領域を改変したスクロース6−GTF組換え体(S6−GTF−A1)由来のスクロース6−GTFは、ネイティブな組換え体(S6−GTF)由来のスクロース6−GTFと比較して、90分間の合成反応で1.7倍量のデキストランを作ることが分かった。
【0079】
以上の結果から、スクロース6−GTFは、そのC末端のグルカン結合領域を改変することにより、発酵生産性が高く、保存安定性も高い改変スクロース6−GTF組換え体が得られること、また、これらの改変スクロース6−GTF組換え体から産生された改変スクロース6−GTFは、極めて効率よくデキストランを合成できることが分かった。
【0080】
【配列表】
Figure 0004320484
Figure 0004320484
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【図面の簡単な説明】
【図1】GTF−I活性の差異を比較したグラフである。
【図2】ムタンの合成速度を比較したグラフである。
【図3】S6−GTF活性の差異を比較したグラフである。
【図4】デキストランの合成速度を比較したグラフである。

Claims (6)

  1. 下記塩基配列(1)、(2)、(3)又は(4)でコードされたアミノ酸配列からなり、ムタンを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
    (1)配列番号1に示されるストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、4495ベースより下流の500ベースを欠失し、配列番号6に示される塩基配列
    (2)配列番号1に示されるストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、4751ベースより下流の244ベースを欠失し、配列番号7に示される塩基配列
    (3)配列番号6に示される塩基配列
    (4)配列番号7に示される塩基配列
  2. 下記塩基配列(5)、(6)、(7)又は(8)でコードされたアミノ酸配列からなり、ムタンを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
    (5)ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、3346ベース位置に108ベース付加し、配列番号8に示される塩基配列
    (6)ストレプトコッカス・ダウネイ(Streptococcus downei)由来のグルコシルトランスフェラーゼ−Iの塩基配列において、3346ベース位置に351ベース付加し、配列番号9に示される塩基配列
    (7)配列番号8に示される塩基配列
    (8)配列番号9に示される塩基配列
  3. 下記塩基配列(9)、(10)、(11)又は(12)でコードされたアミノ酸配列からなり、デキストランを生産する改変グルコシルトランスフェラーゼ。
    (9)配列番号2に示されるロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロース6−GTFの塩基配列において、4561ベースより下流の346ベースを欠失し、配列番号10に示される塩基配列
    (10)配列番号2に示されるロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のスクロース6−GTFの塩基配列において、3657ベース位置に96ベース付加し、配列番号11に示される塩基配列
    (11)配列番号10に示される塩基配列
    (12)配列番号11に示される塩基配列
  4. 上記(1)〜(12)のいずれかに示される塩基配列からなるグルコシルトランスフェラーゼ遺伝子。
  5. 請求項4記載の遺伝子を挿入したベクターを宿主に取り込むことにより形質転換された遺伝子組換え体。
  6. 請求項5記載の遺伝子組換え体から産生された改変グルコシルトランスフェラーゼを用いたグルカンの製造方法。
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